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    ヘイトを逆手に取る「差別ビジネス」から沖縄を護れ

    依田啓示(カナンファーム代表) 私は幼い時から毎年、慰霊の日に生中継される厳かな慰霊祭を見てきました。小さいころは、学校が休みになるのでうれしくて外に遊びに行った記憶もありますが、戦地としての沖縄県を知るにつれ、戦争や平和について深く考えるようになりました。沖縄全戦没者追悼式で、演台に向かう安倍首相(手前)を見つめる沖縄県の翁長雄志知事(左端)ら=6月23日、沖縄県糸満市の平和祈念公園 沖縄県は、これまで「保守」と「革新」の間で熾烈(しれつ)な選挙が戦われてきましたが、少なくとも、この「慰霊の日」については、どちらの陣営も非常に中立的で、ともに心を合わせて、その日を迎えていたと鮮明に記憶しています。 ところが、2年前くらいから、本土の活動家が慰霊祭に顔を出すようになり、テレビで報道された通り、厳粛な慰霊祭の最中に現職の総理大臣に向かって罵声を浴びせたり、会場入り口では「反原発」「反差別」など慰霊祭に全く関係のないのぼりやプラカードを持ったデモ隊が騒ぐようになり、心を合わせてともに祈る場であるはずの慰霊祭が「政治利用」されるようになりました。これは非常に残念なことだと多くの県民は心を痛めています。 沖縄県の「被害感情」や「平和を希求する心」がうまく利用され、民主党政権の鳩山由紀夫元総理の「最低でも県外」というウソの公約がきっかけとなり、「沖縄県民をバカにするな!」と火がついてしまったのです。その元総理は現在、平気な顔をして何度も沖縄の過激な抗議現場を激励に訪れ、何食わぬ顔で基地反対を叫んでいますが、もともと「やっぱり県内」と言って、基地を沖縄に押し付けてきた張本人であり、ロシアによるクリミア併合を支持しています。そんな「言行不一致」な人物がいま、平和の象徴として祭り上げられているのです。 慰霊の日を迎えるにあたり、今年はどんな騒ぎがあるのかと非常に不安を抱えています。戦死された多くの魂に安らかに眠ってもらうための慰霊祭がまるで戦場と化してしまう現在の「平和活動」に全く賛同できません。 さて、基地反対派ですが、厳密に分けると「暴力肯定派」と「暴力反対派」がいます。ただし、暴力的でない対話派は非常に少数であり、100かゼロかの議論に終始せず、相手の立場に配慮し、現実的な事情を把握するような、冷静に議論できる反対派の「左派」が少なくなったような気がします。 実は、「辺野古移設」だけを見ると保守層の中にもそれなりの反対派が存在し、本土で報道されている「反対派」と言ってもひとくくりにすることはできません。例えば、辺野古移設が実現すると、職や借地料が無くなる「普天間基地」周辺の人たちは当然反対します。 普天間基地周辺の不動産業界は、広大な土地の返還に伴う返還前の危険物の調査や除去などの整備、そして区画や名義の確認などにかかる空白期間が10年近く及ぶことを知っています。その空白期間は土地の有効利用されず、一切お金を生みません。また、それだけ広大な土地が返還されるということは、不動産の価格、または賃料が劇的に下がるということが確実視されています。翁長知事の街づくりは失敗 翁長雄志知事は、現在の「那覇新都心」が過去に米軍基地として利用されていた時代と比較して、返還前の52億円に対して、返還後は1634億円と経済効果で32倍も上昇したというような趣旨の発言をしていますが、普天間基地返還後の跡地利用について、那覇新都心と同じような開発プランしかありません。どう考えても、大型ショッピングセンターやオフィスビルを整備することくらいしか案はなく、県民と来訪する観光客のキャパシティーを考えても、互いに少ない客を奪い合う現象しか想像できません。 実際に、返還された米軍施設「泡瀬ゴルフ場跡」の跡地に国内有数の規模を誇る「イオンモール沖縄ライカム」が建設されましたが、テナントの出入りが激しく、当初の売上目標に及ばないばかりか、地元零細産業に大きな打撃を与えています。つまり、町づくりに失敗していると断言せざるを得ません。 さて、反対派について話を戻します。経済的な理由で反対している保守側を除き、沖縄県では社民党(社会大衆党含む)系と共産党系に別れますが、一般的に「革新勢力」と呼んでいます。 この「革新」というのは、非常に便利な言葉で、本来、全く連携や連帯をすることがない共産党と社民党が沖縄県では共闘するファジー(曖昧)な関係を構築しています。沖縄の革新系反対派(以後、反対派)に聞くと、そのほとんどは、自分が「革新系」だと答えるくらいで、本土で言うところの共産主義や社会主義のイデオロギーはほとんど浸透しておらず、自分がなぜ共産党または社民党を支持するのか説明できる人はほとんどいません。革新という呼称は、沖縄左派にとっては非常に便利な名称だったわけです。2016年12月21日、沖縄県東村高江の米軍高江ヘリパッド建設に抗議する反対派とにらみ合う機動隊員ら。反対派による通行妨害や機動隊員に対する挑発行為も目立った これまではそれでうまくやってきたのですが、最近、本土の政党本部からの影響力が増したせいか、そのイデオロギーをハッキリさせるという風潮が強化され、狭い島の「物事を白黒ハッキリとさせない」という処世術、知恵のようなものを否定するような圧力を受けています。 つまり、「おまえは共産党員なのか社民党員なのか?」という踏み絵を踏まされるのです。沖縄県民独特の「ハッキリさせない」融和主義が崩壊し始めたことにより、最近の首長選挙では「保守」対「革新」という構図から、「共産党」対「社民党」という風に移り変わっています。 翁長知事も「オール沖縄」という共産党主体の枠組みの中で、自身と支援候補の当選のためには、共産党との共闘を意識せねばならず、東京の「都民ファースト」や「民進党」と同じように、共産党の方針に引きずられた政策を打ち出していくような姿へと変化してきています。反対派の暴力 反対派の活動ですが、社民系の活動家がどんどん本土から流入していく中で、「山城博治」というリーダー(現在は複数の暴力事件で保釈中の被告)の下、過激さが日ごとに増し、昨年夏の東村高江地区でのヘリパッド建設(着工は約10年前)の集中工事に伴って、現地を完全に無法地帯と変えてしまいました。 その抗議団体の構成もさまざまで、労働組合を始め、宗教団体、同和系反差別団体、在日朝鮮系、韓国系団体、反原発系など大小100以上の団体が名を連ねています。特に際立って暴れたのがいわゆる「しばき隊(レイシストしばき隊)」と言われる暴力組織です。本土においても「十三ベース事件」など身内同士の暴力事件を数々起こしている団体であり、在日朝鮮、韓国系の構成員を多く含み、辛淑玉(シンスゴ)氏を頂点とする「のりこえねっと」などの協力で、沖縄県に闘争という目的を持って沖縄に上陸してきました。 当然、先述の「穏健非暴力派」からは活動参入後、非常に大きな抵抗にあい、「日本人でもないのにここで何をしているんだ」という声を浴びせられたと辛淑玉氏本人が証言しています。そういうこともあり、その過激運動は山城被告周辺で行われるようになり、カンパ資金を集めるために、機動隊員にケンカを仕掛けたり、検問している様子をネット配信するなど組織的な活動を開始しました。この抗議行動は全国に知られるようになりましたが、同時に彼らの蛮行が配信されるようになりました。「平和運動」そのものにも疑問符が付くようになり、元山口組組員を自称する、しばき隊の「男組」組長、添田充啓被告の逮捕と同時に、現場での彼らの影は急激に薄れ始めました。 ただし、どういう理由からなのか、地元新聞の琉球新報と沖縄タイムスにいたっては、辛淑玉氏や添田被告、そして山城被告を英雄視し、逮捕された後も「容疑者」起訴後の「被告」を付けずに報道して全面的にバックアップしています。 もうすでにネットなどでご覧の方に説明は不要ですが、車が違法に公道上でバリケードにされ、地元住民が全く往来できない時期が長期間発生し、過激派による違法な検問が行われ、住民がいちいち身分証明を見せないと通してもらえないほど現状が悪化していたにもかかわらず、それらの報道は皆無でした。「警察を呼べばいい」といった声を多く頂きましたが、沖縄県の現状は非常に複雑で、当初は政府の過激派に対する遠慮もあり、山城被告の独壇場でした。 そもそも地元の人間による反対運動というのは「高江住民の会」として存在していましたが、共産党主体で非常に穏健的だったものが、辺野古の過激グループが運動を乗っ取ったというのが僕の見立てです。その証拠に、住民の会のメンバーは、山城被告と行動を共にしていないし、一緒に逮捕されたメンバーもいません。僕も個人的に親しい共産党の村議がいますが、彼の口癖は「地元民から抗議を受けるような反対活動は絶対に支持されない」というもので、僕もそれに賛同していました。自称「人権の専門家たち」 さて、今回の国連での直接行動に至った背景やわが国をおとしめる集団について、私がこれまでに観察してきた、誰がどのように「ヘイトジャパン運動」を画策し、主導してきたかということをお話したいと思います。 まず、国連人権理事会の「特別報告者」ですが、通常は大学教授など民間の学者が選任される場合が多く、最近の日本に対する代表的な報告を行ったものとして、クマラスワミ(スリランカ)、ブキッキオ(オランダ)、マクドゥーガル(アメリカ)、ビクトリア・コープス(フィリピン)、カナタチ(マルタ)、そしてデービッド・ケイ(アメリカ)といった、自称「人権の専門家たち」がとんでもないウソで日本をおとしめてきました。記者会見するデービッド・ケイ国連特別報告者=6月2日、東京都千代田区(佐藤徳昭撮影) これらの報告者は、日本語を全く話さず、日本について、ほとんど知識が乏しい中、わが国が国費で招待し、必要な調査に対して100%協力しているにも関わらず、派遣される前のブリーフィング段階で、国連の認定NGOの反日活動家による「悪魔のイニシエーション」を受けています。 クマラスワミは、その報告の根拠を「吉田証言」に頼り切っており、国連において、日本の「慰安婦強制連行」は認定されたままとなっています。吉田証言が覆され、あの朝日新聞まで謝罪に追い込まれた後でも、クマラスワミはその報告の修正は必要ないと断言しています。 ブキッキオは、それに輪をかけたとんでもない人物で「日本の中高生の13%が少女売春を行っている」と報告し、大問題を引き起こした人物です。 マクドゥーガルは慰安所は「レイプセンター」であり、20万人以上のアジア女性を強制的に性奴隷にし、その多くが11歳〜20歳、毎日数回強制的にレイプされ、肉体的な虐待、性病罹患(りかん)の虐待を受け、生き延びたのは25%だったなどと報告。また、個人的に米国ジョージア州における慰安婦像の設置に積極的に協力しています。 コープスは、フィリピンにおける自国民の差別や殺人について一切発言せず、あの有名な翁長知事の国連スピーチを実現させ、辺野古の抗議団体の前で激励のスピーチを述べるなど、報告者としての中立性を完全に無視した行動で知られています。「沖縄県民は差別され、自己決定権はある」と無責任にけしかけた張本人でもあります。 カナタチとケイは、最近出没するようになりましたが、「報道や表現の自由」という担当分野の自称エキスパートで、日本におけるテロ対策法「共謀罪」や「表現の自由」の制約について、以下の国連反日活動エキスパートたちの意見を「うのみ」にして、日本政府に警告文を送ったり、国連で報告を行いました。組織的「差別ビジネス」 今回の「山城博治被告」の国連人権理事会のスピーチを実現させたのは、NGOヒューマンライツナウの伊藤和子氏と反差別国際運動(IMADR)の藤田早苗法学博士の両名であり、ここでも、「慰安婦」「在日朝鮮韓国活動家」「同和」「社民党」のキーワードですべてがつながってきます。ちなみに、平成10年に3人の女子高校生が同じ場所で「制服強制は人権弾圧だ!」と叫んだのもこういう人たちのお膳立て。国連では「甘ったれ!」と相当なひんしゅくを買っていました。伊藤和子弁護士(NGOヒューマンライツナウ) 13%の少女売春について情報提供を行ったと言われ、本人は否定していますが、ブキッキオと唯一の接触者であったことは認めています。また、その前後の特別報告者とも密接な関係を持っていることから、そう言われても仕方が無い。藤田早苗法学博士(英エセックス大学、IMADR) 伊藤和子弁護士が表に出ている中で、国連のキーマンと内通し、非常に巧妙にそして戦略的に日本をおとしめている陰の立役者。私も目撃しましたが、「さなえ」「デービッド!」とハグをするくらい特別報告者と親密で、本来必要のなかった来日を実現させたのも彼女だと言われています。政府の共謀罪法案をすぐに英訳し、特別報告者に送ったり、とにかく国連人権屋界隈では日本政府をしのぐ力を持っています。 ヒューマンライツナウの理事長は、青山学院大学教授で在日朝鮮人の申惠丰(シンヘボン)氏。その申氏が同じくIMADRの理事にしっかり入っているし、在日活動家の名前と同和団体(部落解放同盟)の幹部もIMADRの役人に名を連ねています。 この二つの組織を連携させた功績を持っているのが先述の「のりこえねっと」辛淑玉氏だと言われています。その彼女が「沖縄ヘイト」という言葉を生み出し、「沖縄人も日本人じゃない」「琉球人として差別されてきた」「一緒に戦おう」などと沖縄に介入し始めてから沖縄県がおかしくなり始めました。 つまり、陳腐化し、マンネリ化してきた彼らの組織活動にとって、沖縄県は、これら差別ビジネス、被害者ビジネスの一番ホットな「稼ぎ頭」または「存在意義」となりつつあり、これについては、本来反戦平和の運動を担ってきた地元の共産党員のほとんどがかなり困惑している状態なのです。 社民系は手段を選びません。「暴力を平気で使う」「言葉や態度が汚い」「対話ができない」といった共産党幹部が吐いた言葉からそれが分かります。 上記組織を簡単に説明すると、組織的「差別ビジネス」の在日版と同和版。つまり沖縄県をこれらの「魔の手」から護ることは、わが国日本を守ることなのです。 彼らの得意な戦略(手口)は、国連に自ら「告げ口」しておいて、日本のメディアの取材を受けて「日本政府の独裁体制は国連で問題視されている」と喧伝すること。日本に対して国際基準に合わせた人権意識をしっかり持ってほしいと言います。海外に一歩出れば分かりますが、こんなに人権が保障された国は世界でも珍しいくらいです。これだけねつ造された事実で日本をおとしめた特別報告者だって、自分の国については一切言わない。「国連は自分以外の国の恥部をさらけ出し、辱めるところだ」と表現する人もいるくらいです。国連人権委で行ったスピーチの内容を説明する我那覇真子さん(右)。左はともに国連人権委に出席した筆者=6月16日、日本記者クラブ 日本国民の国連に対する「公共的な国際機関」に対する信頼が逆手に取られ、国内の反日団体のスピーカーとして利用されているのです。国際社会での風評を落としたくないという政府の寛容な態度が逆に反日活動家たちの格好のステージを用意してしまっていると言えます。 私たちの先祖が護ってきた誇りある日本を取り戻す必要があると強く信じています。そのためにも「ダメなものはダメ」と毅然と対処する政府を作らなければなりませんし、そのための政治家を育てていかなければなりません。

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    沖縄の民意に裏切られた「翁長王国」崩壊の危機

    篠原章(評論家・批評.COM主宰) 昨年12月20日、翁長雄志沖縄県知事による「埋め立て承認取り消し」をめぐる訴訟の上告審で、知事側の上告が棄却され、国(沖縄防衛局)による辺野古沿岸埋め立ては適法とされた。翁長知事側の全面的な敗訴である。 知事はこれに反発し、今年3月24日にキャンプ・シュワブのゲート前で開かれた抗議集会で「埋め立て承認を撤回する」と明言した。以前から「撤回」を求めていた琉球新報、沖縄タイムスなどの地元メディアは、この撤回発言を大きく報道している。 「取り消し」は、過去の行政行為(この場合は、2013年12月の仲井眞弘多前知事による埋め立て承認)に違法性があったと判断する場合に行われるものだが、「撤回」は、その後の諸事情の変化を受けて、過去の行政行為が正当性を失ったと判断する場合に行われるものである。 簡単にいえば、「取り消し」は前知事のミスを根拠とするものだが、「撤回」は現知事の「意思」を根拠とする。翁長知事側は、辺野古移設に反対する県民の「民意」が強まったこと(すなわち自分自身が知事に選ばれたこと)を「諸事情の変化」に挙げて、「埋め立て阻止」のための闘いを続けるつもりだといわれている。 ところが、3月の撤回発言から3カ月経っても、翁長知事は埋め立て承認を撤回する気配はない(6月20日現在)。一説では、翁長知事の発言を受けた菅義偉官房長官が3月27日午前の定例記者会見で、「(知事個人に対して)国家賠償法に基づく損害賠償請求を検討中」と述べたことが、翁長知事や県当局を慎重にさせているという。だが、翁長知事が撤回に踏み切らない理由はそこにはない、というのが筆者の見立てである。沖縄県の翁長雄志知事 たしかに国家賠償法には、「第1条  国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。第2条  前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する」と定められている。 筆者の推計では、翁長知事の法的手段を駆使した抗議行動のために、警備費用や一部工法変更のための経費としてすでに50億円以上の国費が失われている。これはあくまで直接的な経費であり、移設遅延に関わる総経費を算出すれば、おそらく数百億円にのぼる「遅延損害金」が発生しているだろう。このうちどの程度の金額が翁長知事個人に請求されることになるのかはわからないが、少なくとも数億円に上ることは十分予想される。 しかしながら、国が知事個人に直接損害賠償を求めた例はこれまで見あたらない。手続きとしては、(1)国が沖縄県に対して損害賠償を要求する(2)沖縄県が国に対して支払った賠償額を、翁長知事個人が負担するよう求める訴訟を起こす、という2段階のプロセスを経るのが常識的である。だが、沖縄県が翁長知事に対する求償権を行使しない(訴えない)可能性もある。この場合は、国家賠償法や地方自治法に基づき、住民が求償を求めて提訴する必要が生ずる。最終的には住民訴訟になる可能性が高いということだ。 たとえ県当局による求償権の行使や住民訴訟で賠償金を払うことになっても、翁長知事はその資金を十分調達できる。調達先が、一般支援者からの寄付になるのか、支援企業からの借り入れなるのかはわからないが、支援者は翁長知事を支えるだろう。ただし、資金調達の方法によっては、その合法性・適法性が問われる可能性はある。「オール沖縄」は3連敗 いずれにせよ、賠償金云々の話はまだまだ先のことであり、実際に訴訟が行われるかどうかもわからないのだから、「翁長知事は菅官房長官の恫喝に怯えて撤回に踏み切れない」という観測は必ずしも適切ではない。 菅官房長官の賠償発言に、沖縄県の財政当局は大きな不安を抱えているだろうが、知事個人には「自分は沖縄県民の民意を後ろ盾に闘ってきた」という思いがあろうから、「賠償請求の可能性がある」程度の話で弱腰になるとは考えにくい。 だが、問題はその「民意」だ。「沖縄県民の民意」が翁長知事を支えているという構図は大きく揺らいでいる。しかも、その揺らぎを生みだしたのは、翁長知事自身と「オール沖縄」なのである。その証拠はいくつもある。 証拠の一つ目として挙げたいのは、沖縄における首長選の連敗である。沖縄県政界は、目下翁長派(オール沖縄)と反翁長派に大別されるが、今年に入ってから行われた3つの首長選(宮古島市長選、浦添市長選、うるま市長選)で、「オール沖縄」は3連敗を喫している。 市長選の場合、当該自治体固有の課題や地域固有の政治力学が色濃く反映するので、「翁長派VS反翁長派」という対立の構図がそのまま当てはまるわけではないが、「翁長支持・オール沖縄」で凝り固まった地元メディアが対立の構図をいたずらに強調しすぎたきらいがあり、県民のあいだに「翁長派敗北」が必要以上に強く印象づけられてしまった。その結果、県民の「翁長離れ」が進み始めている。いわば「自殺点」である。沖縄県民大会でメッセージボードを一斉に掲げる参加者=2016年6月、那覇市(竹川禎一郎撮影) 第2に、翁長知事やその支援者、そして地元メディアなどが繰り返し述べてきた「沖縄VS日本」という構図もまた「沖縄の民意」を動揺させている。「沖縄は差別されている」「沖縄は虐げられている」という彼らの主張は一時県民を刺激し、反対運動も盛り上げたが、辺野古や高江などの闘争の現場で、県民以外の活動家が次々に逮捕される現状が明るみになるにつれ、翁長知事を支援する保守層のあいだにも、「一体誰のための反対運動なのか。『沖縄VS日本』ではなく『反政府運動VS政府』が実態ではないのか。沖縄はその構図に巻き込まれているだけではないのか」といった疑問が浮上している。 第3に、辺野古埋め立て承認訴訟での翁長知事の敗訴も民意に影響を与えている。敗訴に直面して、「やっぱり国にはかなわないのか」という諦めを感じた県民も多いというが、県民のあいだには「知事は勇ましいことをいってきたが、成果は何もない」といったように翁長知事自身の責を問う声も少なくない。敗訴によって、保守層から共産党まで広く支持を集めていた「オール沖縄」に大きな軋みが生じたということだ。 第4に、国による「懐柔策」が功を奏しているという側面がある。実はこれがもっとも重要なポイントである。「埋め立て承認」を撤回しない理由 菅官房長官は、5月に入ってから沖縄に対する特例的な財政支援の枠組みである「沖縄振興計画」の延長を数回にわたり示唆した。1972年の復帰以来、計画期間10年の沖縄振興計画は5度にわたり実施されており、これまで投入されてきた沖縄振興予算は累計12兆円に上るが、政府はこれを現行計画が終了する2022年度以降も継続するというのである。 振興計画延長は翁長知事の「悲願」だった。私見だが、翁長知事はそのために日の丸保守という立場を捨て、「辺野古反対」まで訴えて政府に圧力をかけたと推量している。筆者は、振興計画の継続は沖縄経済を蝕むだけの愚策だと考えているが、翁長知事を始め、振興計画こそ沖縄経済の屋台骨だと考える政治家・財界人はいまだに数多い。菅官房長官が延長を示唆したことで、「振興計画継続」の旗頭だった翁長知事は、これまでのように強力な「反政府姿勢」を取れなくなってしまったのである。 知事が「埋め立て承認」を撤回しない最大の理由はここにある、と筆者は読んでいる。要するに「辺野古反対」は、翁長知事にとってあくまで振興計画継続を勝ち取るための手段にすぎなかったのだ。 もっとも、自身の体面を保つために、知事が政府に対する「矛」を完全に収めることはないだろう。実際、翁長知事は、勝ち目の薄い「訴訟合戦」をまだまだ続ける意向を持っているようだ。が、すでに目的は達してしまったのだから、知事の「矛先」は以前よりもはるかに鈍いものになるに違いない。 誤解を恐れずにいえば、翁長知事は事実上政府にすり寄ったのである。共産党、社民党などの移設反対派からみれば、これははっきりいって「裏切り」だが、彼らはまだその事実を認めようとしてはいない。とはいえ、翁長派のあいだでも翁長知事に対する不信感が広がり、「民意」は大きく揺らぎつつある。本土復帰45年の「平和とくらしを守る県民集会」=2017年5月 以上見てきた通り、翁長知事はもはや求心力を失い、「翁長王国」は音を立てて崩壊し始めている。基地負担の問題、日米同盟の問題、沖縄経済の脆弱性の問題など複数の問題をきちんと整理しないまま、「辺野古反対」だけに県民の民意を集約させようとした「オール沖縄」の戦略は、ここにきて完全に破綻したといえる。 翁長派・反翁長派を問わず、沖縄の政治的リーダーの中にも、「オール沖縄は終わった」「辺野古は終わった」という認識を持つ者は少なくない。両派ともすでに「ポスト辺野古」の県内政局を睨んだ生臭い動きに関心を寄せ、2018年11月に行われる沖縄県知事選に焦点は移り始めている。崩壊しつつある「翁長王国」 反翁長陣営からは、西銘恒三郎衆院議員(自民党)、安里繁信シンバホールディングス代表取締役会長、古謝景春南城市長、我喜屋優興南学園理事長(元興南高校野球部監督)などといった候補者名が聞こえてくるが、候補者選びは始まったばかりだ。反翁長陣営から複数の候補が正式に名乗りを上げる可能性も否定できない。演説する沖縄県の翁長雄2016年6月、那覇市 いちばん問題が大きいのは、翁長知事以外に有力候補が見あたらない翁長派だ。政府との「対決」で事実上力負けしてしまった翁長知事は、健康問題も抱えているといわれ、出馬を見合わせる可能性がある。二階俊博自民党幹事長は、翁長派・反翁長派に分かれている保守を「手打ち」させようという思惑を抱いているようだが、翁長知事と仲井眞前知事のあいだの根深い確執もあり、今のところ先行きは不透明だ。 これまで翁長知事を載せた御輿を、保守系翁長派とともに担いできた共産党、社会民主党、社会大衆党(沖縄の地域政党)の動きも大いに気になる。彼らは表面的にはまだ「オール沖縄の崩壊」を認めていないが、崩壊を認めたとしても候補者探しは難渋しそうだ。 行き過ぎた抗議活動で逮捕された山城博治沖縄平和運動センター議長の名前も浮上しているが、山城氏のように保守票を集められない候補では苦戦を強いられることになる。彼らが「民意の揺らぎ」を正面から受けとめながら、仕切り直す意思があるのかどうか不明だが、少なくとも「辺野古反対」だけでは県民生活の安定は得られないことをしっかり認識すべきである。 波乱はまだまだ続くだろうが、現状では、あれだけ盛り上がったかのように見えた「辺野古反対」「オール沖縄」とは一体何だったのかという反省や総括を欠いたまま、「県内政局」への関心だけで次の知事が選ばれることになりそうだ。 誰が当選しても、それは県内の利害対立と利害調整の結果にすぎず、「基地」に対する県民の意思とは異なるレベルで雌雄が決するという意味である。「普天間飛行場の辺野古移設」が決着に向かい、基地縮小プロセスが着々と進むのは結構なことだが、県民・国民を翻弄し、莫大な税を投入してきた「辺野古移設」をめぐる大混乱が、責任者不在のまま「政治的駆け引き」のようなものによって幕を引かれるとしたら、何か釈然としない思いが残される。 要するに「何事もなかったかのように曖昧に済ませてよいのか」というのが筆者の疑問である。県民や国民を不幸にするだけの、あのような混乱は二度と起きてほしくないが、曖昧に済ませれば問題は必ず再燃する。「翁長王国」は崩壊しつつあるが、火種はまだ残されたままなのである。

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    いま沖縄で起こっている「異変」

    本土復帰から45年の節目の年でもある。基地問題に揺れる民意は今も本土と大きく隔たり、中国がもくろむ「沖縄独立」の危機はいまだ燻り続ける。いま沖縄で何が起こっているのか。慰霊の日に考えたい。

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    中国の「沖縄包囲網」は最終段階に入った

    仲村覚(日本沖縄政策研究フォーラム理事長) 米軍普天間基地(宜野湾市)の名護市辺野古移設阻止を最大の公約とし、「オール沖縄」「イデオロギーよりアイデンティティー」「保革を乗り越えて」をスローガンとして2014年の沖縄県知事選で当選した翁長雄志氏は、就任以降、新聞、テレビで連日報道され、圧倒的な存在感を放っていた。マスコミを介した翁長氏の姿は、沖縄県民の期待を一身に担うヒーローであり、応援しない人は沖縄県民ではないと言わんばかりの勢いだった。 しかし、現在の翁長氏に当時のような勢いは感じられない。その最大の理由は知事の支持母体「オール沖縄」が推薦した候補が県内の市長選で連敗しているからだ。今年1月に側近中の側近だった安慶田(あげだ)光男副知事が教員採用口利き疑惑で引責辞任したことももう一つの理由だろう。 では、「オール沖縄」はそのまま勢いを失い、来年1月の名護市長選、11月の県知事選でも自民党擁立候補が当選して、沖縄問題が収束していくのだろうか。一見すると、そのような期待感も漂っているが、手放しで喜べる状況にはない。沖縄の現状をつぶさに見ると、中国による沖縄工作が既に始まっているからだ。4月10日、北京の人民大会堂で中国の李克強首相(右)と握手する沖縄県の翁長雄志知事(共同) 昨年12月28日、東京都内のホテルで沖縄県と中国・福建省が「経済交流促進に係る覚書」(MOU)を締結し、福建の自由貿易試験区での規制緩和や手続きの簡素化に向けた協議を進めることなど6項目の取り組みを約束した。締結式には翁長氏や中国の高燕商務次官のほかに、日本国際貿易促進協会(国貿促)の会長、河野洋平元衆院議長も出席した。沖縄県は、県産品や沖縄を中継した国産品の輸出拡大を図る絶好の機会とみている。 さて、辞任した安慶田氏の後任として副知事に就任したのが、沖縄国際大学元学長の経済学者で、県政策参与を務めていた富川盛武氏である。富川氏は、参与時代からさまざまな沖縄経済の発展構想を県のホームページで発信しており、その構想に期待を示す県民も少なくないだろう。 実は、富川氏が示しているプランは、沖縄県が福建省と締結した覚書と同じ路線にある。それが「福建-台湾-沖縄トライアングル経済圏」構想である。沖縄県の経済特区、福建省の自由貿易試験区、台湾の経済特区のトライアングルをつないだ経済圏を構築するものだ。それは、沖縄県産品のみならず、那覇空港をハブと位置付けて日本全国の特産品を福建省に送る「沖縄国際物流ハブ」構想だ。 確かに沖縄は「アジアの玄関口」として物流の中継点に好立地である、という発想は正しい。 しかし、少し立ち止まって考えていただきたい。経済的視点から、沖縄が「アジアの玄関口」であることは、軍事的に見れば「日本侵略の要所」「日本防衛の最前線」でもあるということだ。現に、昨年度の航空自衛隊のスクランブル発進は1168回(前年比295回)と過去最高であり、そのうち、中国機に対する発進が851回(前年比280回)で7割超を占めている。前年比から増加したのはほぼ中国機である。沖縄自民党にすりより始めた中国 そして、ここで忘れてはならない重要なことは、中国は尖閣諸島を福建省の一部と位置付け、天気予報まで行っているということだ。つまり、沖縄県はあろうことか、海と空から尖閣実効支配の既成事実を作ろうとしている中国の、一地域と主張する福建省の経済圏に自ら入り込もうとしているのだ。 中国との経済交流を進める動きは行政だけではない。今年2月3日、那覇市内のホテルで、「沖縄県日中友好協会」の設立を記念した祝賀会が開催され、中国の程永華駐日大使の講演会も行われた。駐日大使の講演があったということは、この組織が中国共産党、中国政府の肝いりということがうかがえる。 この祝賀会には、日中友好協会の丹羽宇一郎会長も参加し、乾杯の音頭をとっている。だが、参加した政治家は翁長氏を応援する「オール沖縄」系ではなく、自民党などの保守系がほとんどだった。中国の一部メディアは、沖縄県日中友好協会が「沖縄県議会議員の提唱によって、官民ともに設立した一般社団」と報じている。その県議会議員とは特別参与に就任した県議会議員を指していると推測されるが、彼もやはり自民党所属議員だ。 沖縄県と福建省の経済的な動きは既に加速度的に進み始めている。県内企業の中国貿易を支援する琉球経済戦略研究会(琉経会、方徳輝会長)は2月23日、中国国際貿易促進委員会の福建省委員会と貿易や投資促進を目指す覚書を交わした。会長の方氏は貿易業のダイレクトチャイナ社長であり、中国現地の会社と連携して県産品を中国に送り込むビジネスを展開している人物である。県と福建省が昨年12月から規制緩和や手続きの簡素化に取り組む中、企業間交流を加速させ、具体的な取引を始めさせる算段だ。中国・福建省の中心都市、廈門(アモイ)の海岸 3月には新たな福建省に進出が決まった企業のニュースも報じられた。沖縄本島南部にある与那原町の合同会社「くに企画」が7月から県産化粧品7商品を福建省のドラッグストアで販売することが決まったというのだ。この実現には県と中国政府の手厚い支援がある。中国では化粧品を輸入する会社は、政府の国家食品薬品監督管理局の許可を得ることが必要である。「くに企画」の商品を輸入するケースでは、「上海尚肌(しょうき)貿易有限公司」が許可を取得し、福建省内のドラッグストア十数店と契約を締結した。 一方、沖縄県のほうでも、くに企画に政府系金融機関の「沖縄振興開発金融公庫」から1000万円の融資が行われたという。くに企画を調べると、2015年10月設立された法人の存在は確認できるが、会社のホームページすら存在しない。その実態は、くに企画によるビジネスというより、中国の会社が沖縄からの仕入れを計画し、くに企画にたまたま白羽の矢が立って、沖縄振興開発金融公庫が融資を行ったようにしか見えないのだ。人民解放軍の軍人が潜伏? 日本では日中国交正常化以来、中国に進出した企業の多くは、人件費の高騰や政策変更などリスクがつきまとい、撤退を始めている。しかし、現在の沖縄では、福建省に進出するといえば誰でももうけさせてもらえるような、上げ膳据え膳のサポート態勢が整いつつある。沖縄では20年以上遅れて、中国と福建省の合作で人為的な中国進出ブームが起きようとしているのだ。 一方、観光客のみならず、さまざまな切り口で沖縄に中国人を呼び込むプロジェクトも進められている。昨年3月、中国で高齢者福祉などを支援する中国老齢事業発展基金会(李宝庫理事長)が、中国への介護技術の普及に向けた「沖縄国際介護先端技術訓練センター」建設のために、本島南部の南城市にある約4300平方メートルの土地を買収したのだ。 沖縄をモデル地域に位置付け、中国からの研修生が日本の介護技術を習得し、中国国内約300都市に設置予定の訓練センターで介護技術普及を図るという。この案件を進めたのも、前述した河野洋平氏が会長を務める国貿促だ。国貿促の担当者は沖縄を選んだ理由に、アジアの中心に位置し国家戦略特区であることを挙げたという。 その訓練センターの事業体として、昨年9月13日、東京都赤坂のアジア開発キャピタル(網屋信介社長)と中国和禾(わか)投資(周嶸、しゅうえい代表)が共同出資を行い、新会社「アジア和禾投資」を設立した。新会社はアジアキャピタルの連結子会社となり、所在地もアジアキャピタルと同じビルとなっている。新会社への出資比率はアジアキャピタルが55%と多いが、社長は中国に多くの人脈を持つ中国和禾投資の周代表が就いている。沖縄に中国人が社長を務める巨大な介護訓練センターが出現するのだ。 もう一つ、気になるプロジェクトがある。航空パイロットの育成を手がけるFSO(玉那覇尚也社長)が中国の海南航空学校と業務提携の覚書を締結し、今年から70人程度の訓練生を受け入れるというのだ。FSOは沖縄県にフライトシミュレーターと実際のフライトを組み合わせた訓練場を、宮古諸島にある下地島空港の活用策として提案しており、県から空港利活用の候補事業者としても選定されている。中国人訓練生の中には人民解放軍の軍人が潜り込んでいる可能性もあり、かなり危険なビジネスである。有事の際、下地島空港で破壊活動や工作活動をされるリスクを招くのではないだろうか。翁長敗北で起こる「最悪のシナリオ」 沖縄は既に、多くの中国人観光客が訪れ、街も変貌してきたが、これら2つの事業が本格化しただけで沖縄のビジネス界も様変わりしてしまう。沖縄は既に中国経済に飲み込まれるレールが敷かれているのだ。米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する集会で演説する沖縄県の翁長雄志知事=3月25日午前、沖縄県名護市 以上、中国による官民一体となった沖縄経済の取り込み工作の実態を確認してきた。このままいけば、沖縄では中国人観光客があふれるだけではなく、「社員が中国人」という会社が多くなり、「私の会社の社長は中国人」というケースも増えていくことになるだろう。そんな中、来年の県知事選で辺野古移設阻止に失敗した翁長氏を自民党系候補が破り、県政奪還に成功しても、新知事も福建省との経済交流推進者にならざるを得ない「最悪のシナリオ」が起こる可能性は大きい。自民党にターゲットを定めたかのような沖縄県日中友好協会の設立はそのための伏線ではないだろうか。そうなれば、沖縄が後戻りすることはもはや不可能になってしまう。 また、尖閣諸島で紛争が起きたとき、中国政府は中国進出企業との取引を停止する制裁を科すだろう。「中国依存度」の高い会社からは、政府や沖縄県に取引再開の交渉を求める声が当然上がってくる。会社が倒産したら、社員の明日の生計が立たなくなるからだ。琉球新報や沖縄タイムスには「政府は無人の尖閣諸島より県民の生活を守れ!」という趣旨の見出しが掲載されるだろう。そこで、中国は紛争の解決策として「尖閣諸島の共同管理」を提案してくることは間違いない。そのとき「沖縄は中国と経済交流してここまで豊かになってきた。中国と戦争して貧しくなるより、尖閣諸島を共同管理、共同開発して豊かな生活をしたほうが良い」という声が上がったら否定するのは極めて困難になってくる。 現代の戦争は軍事衝突だけではない。平時においても戦争は行われている。それは外交戦、経済戦、歴史戦、国際法律戦など、ありとあらゆる手段を使った戦争が行われているのだ。武力戦が始まるときにはほぼ勝負は決まっている。今、東シナ海の真ん中にある沖縄は、その総力戦のまっただ中にある。 沖縄をハブ空港として発展させるビジョンは正しいが、その背後に経済・防衛政策がなければならない。なによりも、沖縄を日本の経済圏の中に断固として組み込み、中国にコントロールされるような隙をつくらないことが必要だ。沖縄防衛は自衛隊だけでは不可能な時代である。手遅れにならないためにも、日本政府は経済や歴史、文化侵略など、あらゆる側面から沖縄防衛計画の策定を急がなければならない。

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    怒声は関西弁ばかり 「ウチナーンチュ」不在の基地反対運動の真実

    仲新城誠(八重山日報編集長) 今月、沖縄のある自民党関係者と話す機会があり「『オール沖縄』はもうそろそろ終わりでしょう」という話題で盛り上がった。「オール沖縄」は翁長雄志知事を支持し、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設に反対する勢力だ。翁長知事が誕生した知事選以降、沖縄でのあらゆる国政、県政選挙を制し、沖縄の政界を席巻した。 しかし、ここへ来て明らかに潮目が変わりつつある。政府が4月、辺野古の護岸工事に着手したためだ。今後、移設工事は後戻りできない段階まで進む。「オール沖縄」には共通の政治理念もなく、さまざまな政党や団体が移設反対という一点だけで結集しているに過ぎない。今後も民意をつなぎとめられるか、正念場である。 だが、当の沖縄で「オール沖縄」の終焉(しゅうえん)を感じている県民は、どれほどいるだろうか。沖縄メディア、全国メディアを問わず、相変わらず辺野古移設問題で「沖縄が政府にいじめられている」と印象操作する報道があふれかえっている。 県紙「沖縄タイムス」「琉球新報」を開けば、正義の「オール沖縄」が負けるはずがない、と言わんばかりの強気の記事ばかりだ。最近では、近く工事の差し止め訴訟を起こす翁長知事の主張が、法的にいかに正当であるか力説する記事をよく見かける。しかし、実際のところ移設反対運動は、現場レベルで県民にどこまで支持されているのか。 辺野古の米軍キャンプ・シュワブ前では、工事を実力で阻止しようと反対派が座り込んでおり、機動隊から連日のように排除されている。私の見たところ、反対派は20~30人と言ったレベルであり、機動隊を押し返すほどの勢いはない。米軍キャンプ・シュワブのゲート前で、機動隊員に排除される普天間飛行場の辺野古移設反対派=2017年4月 反対派リーダーは、辺野古での集会で「現場に多くの人が集まることで工事を遅らせることができる。毎日200人、300人集めたい」と呼びかけているが、一般県民が平日の朝から、仕事を休んでまで反対派に呼応するはずがない。 過激な反基地運動が一般県民のレベルで広がるきざしはなく、最前線で活動しているのは一握りの特殊な人たちである。多くはリタイヤ組と思われる高齢者たちだ。話すと一応は沖縄出身者だが、現役時代から労働組合運動に打ち込んできたような、バリバリの思想傾向の人たちが中心のようだ。「職業的活動家」がほとんど 沖縄という土地の特徴は、現地の住民と少し話しただけで、この人が沖縄出身の「ウチナーンチュ」か、本土出身の「ヤマトーンチュ」か、容易に判断できるケースが多いということだ。言葉のイントネーションが大きく違うからだ。 辺野古で機動隊による強制排除の現場を取材すると、明らかに本土出身者のイントネーションで「美(ちゅ)ら海を守れ」「警察権力の乱用だ」などという絶叫が聞こえる。叫ぶ元気がある比較的若い世代は、県外から流入したと思われる職業的活動家がほとんどのようだ。 辺野古に行って反対派の話を聞いたり、リーダー格の演説に耳を傾けると、それは歴然となる。最前線の反対運動は間違いなく、本土出身者が一翼を担っている。沖縄出身者はもちろんいるが、辺野古住民はほとんどいない。しかし、それは反対派もメディアも決して発信したがらない「不都合な真実」だ。 反対派のリーダーというと公務執行妨害容疑などで逮捕、起訴された山城博治氏が有名だが、彼がやたらと表に出るのは、恐らく沖縄出身だからだろう。本土出身者は用心深く、スポットライトに当たらないようにしている。メディアもそこは心得ており、新聞やテレビを見ると基地反対運動の現場で、意識的に沖縄出身者を取材する傾向があるように見受けられる。スイス・ジュネーブで開かれた国連人権理事会で演説する沖縄平和運動センター議長の山城博治氏=2017年6月 沖縄出身者と本土出身者の微妙な関係をめぐっては、沖縄メディアにも同じような状況が存在する。実際、反基地を発信する県紙の基地担当記者には、本土出身者が目立つ。 沖縄の人材の市場はもともと狭い。県紙のように、ある程度大きな企業になると、沖縄出身者だけでは到底支えられず、優秀な本土出身者が登用されるのは当然だ。八重山日報は中小零細企業だが、本土出身者はいる。 沖縄の基地反対運動の現場で飛び交う「クソ」「ボケ」などという反対派の怒号は関西弁。「これが沖縄の民意だ」と県紙に書く記者も関西人、「辺野古住民の多くは移設容認」と、県紙とは違う視点で取材する八重山日報の記者も関西出身、というコメディのような事態も現実に起こっている。 ついでに言うと、沖縄に駐在して基地問題の記事を書いている全国紙の記者も、もちろん数年単位で転勤を繰り返す本土出身者である。こうした記者たちの特徴は「ステレオタイプの記事を書く」ということだ。印象操作を重ねる地元メディア 安倍政権に不祥事が起きれば「安倍一強の緩み」という決まり文句の記事が氾濫するように、彼らに沖縄の記事を書かせれば、ほとんど「政府が沖縄の民意を踏みにじり、基地建設を強行している」という例文通りになる。本質的に、当事者ではなく傍観者なのである。 もう一つ、現場に行くと一目瞭然なのは、辺野古移設の反対運動というのが一般県民のレベルで浸透するような平和運動ではなく、特定の政治勢力に奉仕する政治運動だということだ。米軍普天間飛行場の辺野古移設阻止へ気勢を上げる集会の参加者ら=2017年5月 私は4月以降、辺野古で開かれた抗議集会を3カ月足らずで3度取材した。登壇した国会議員や県議は共産党、社民党、自由党など、いずれも国政野党である。参加者が手にするのぼりはほとんどが労働組合の赤旗であり、参加者に配布されるチラシには「革マル派」と明記してある。沖縄では「オール沖縄」と称しても、国政では「反自公」「反安倍政権」を掲げる野党連合の運動に過ぎないことは、これだけでも明らかだ。 しかし、全国メディア、沖縄メディアを問わず、辺野古反対が平和運動であるかのように報道されているのが、私には奇怪なのである。沖縄は6月23日に「慰霊の日」を迎えたが、この日に向け、地元のある民放テレビ局がニュース枠で特集を組んだ。 それは辺野古で座り込む一人の高齢者に焦点を当てた番組で、彼は「戦争につながるすべてのものに反対する」と言い切る。アナウンサーは「辺野古には、この人のように戦争を体験した多くの高齢者が座り込みに参加しています」とナレーションを入れる。県民の負担軽減策である辺野古移設が、戦争準備の新基地建設であるかのような印象操作番組だ。 とはいえ、沖縄ではこのような番組に対する批判の声を全く聞かない。作り手も受け手もあまり違和感がないようだ。沖縄では県紙2紙の寡占状態となっている新聞をはじめ、あらゆるメディアがこうした状態であり、おそらく慣れてしまっているのだろう。

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    百田尚樹氏 中国は尖閣どころか本気で沖縄まで狙っている

     中国の脅威は日に日に増し、2017年中にも尖閣諸島が奪われる懸念がある。今年は、国を守るために重要な憲法改正論議も山場を迎える可能性がある。が、いざ憲法改正となると“内なる敵”がいるという。注目の2人が、90分にわたって論じ合った。* * *櫻井よしこ:今年は日本にとって正念場の年になります。中国がいつ尖閣諸島を奪いに来てもおかしくありません。百田尚樹:本当ですね。ひとつのシナリオとして、中国の偽装漁民がエンジントラブルを装って尖閣に上陸する。そこで中国の軍艦が自国民保護の名目で尖閣にやってくる。もちろん日本側も急いで尖閣に向かいますが、中国軍の上陸を阻止できるかどうか。ここが勝負の分かれ目になります。櫻井:中国の軍拡の速度と規模はすさまじいものがあります。領海侵入するのは主に中国海警局所属の艦船と漁船です。海警の船は、軍艦に白いペンキを塗っただけのものもあり、実質的には軍艦です。彼らの背後には、いつも中国海軍所属の軍艦が2隻、控えています。 気がかりなのは、これまで北緯27度のラインより南には入らなかった中国軍艦が、最近ではそのラインを突破してきている。極めて危険な段階に入ってきたと思います。作家の百田尚樹氏百田:空でも、中国軍の戦闘機に対する自衛隊機のスクランブル発進が急増しています。昨年12月には、中国国防部が「妨害弾」を受けたと主張しました。 妨害弾とは自動追尾ミサイルをかわすための「フレア」のことで、ロックオンされるなど、よほど危険が迫らないかぎり使わないものです。相手がいきなり殴り掛かってきたので身構えたら、「安全を脅かした! 危ないやないか!」というのと同じで、おかしな話ですよ。櫻井:領空侵犯されたら、他の国なら撃墜してもおかしくありません。日本はそれができないうえ、相手から攻撃を受けない限り手を出せない。現行憲法下では、もし領空侵犯機を撃墜したら、自衛隊のパイロット個人が刑事罰を科せられてしまう可能性が高いのです。百田:本当にアホな話です。昨年12月に自衛隊がフレアを撒いたと思われる中国機の編隊の一部は、そのまま台湾に向かいました。台湾は戦闘機を出して中国機をロックオンしたら、すぐに中国機は帰って行ったそうです。自衛隊機もロックオンすればいいんですよ。櫻井:それができないというのはかえって危険ですね。百田:中国機は、自衛隊機が手を出せないのを知っているから、好き勝手し放題。かたや自衛隊のパイロットはいつ撃ち落とされるかもわからない極限の緊張状態を強いられる。中国機によって、自衛隊は1年に500回以上もスクランブル発進させられています。自衛隊のパイロットを疲弊させることも、中国の狙いのひとつだと思います。櫻井:中国の空軍力の増強も尋常ではありません。すでに第四世代の戦闘機の数でも自衛隊を大きく上回り、さらに宇宙にまで軍拡を進めています。百田:それでも、「戦わずして尖閣を奪いたい」というのが中国の本音でしょう。尖閣の局所戦だとしても、もし中国側が負けたら習近平はエラいことになりますからね。 鍵は米軍が尖閣に出てくるかどうか。もし米軍が100%出てこないと確信したら、中国はすぐに来ます。必ず来ます。だからトランプ大統領が就任したら、あの手この手で探りを入れてくるでしょう。そこで米軍が来ないと確信したら、1か月、2か月のうちに行動を起こしてもおかしくありません。私は中国は、尖閣どころか、本気で沖縄まで狙っていると思います。櫻井:中国は以前から、沖縄も「中国領」と主張していますからね。そうならないためには、日本人の覚悟が問われます。【PROFILE】さくらい・よしこ/新潟県長岡市出身。ハワイ州立大学卒業。元日本テレビ「きょうの出来事」キャスター。95年、『エイズ犯罪 血友病患者の悲劇』で大宅賞受賞。執筆・講演活動を続ける一方、インターネット放送「言論テレビ」を運営中。【PROFILE】ひゃくた・なおき/1956年、大阪市生まれ。同志社大学中退。放送作家として「探偵!ナイトスクープ」などの番組構成を手がける。2006年、『永遠の0』で作家デビュー。近著に『カエルの楽園』『幻庵』などがある。関連記事■ イラクで活躍「ヒゲの隊長」 震災後の自衛隊の活躍を報告■ 尖閣侵略時の自衛隊出動は集団的自衛権ではなく個別的自衛権■ 元防衛大臣・北澤俊美氏が震災時の自衛隊の働きを解説した書■ 人命救助2万人、遺体収容1万体 自衛隊の災害派遣の実績■ 【中国人のジョーク】尖閣でTwitterやFB開かなければ中国領

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    慰安婦像の制作者夫婦が沖縄を訪問してやっていたこと

     昨年、本誌・SAPIOが先駆けて報じた「慰安婦像アーティスト」とでも言うべき夫婦。その後も釜山総領事館前をはじめ、像を供給し続けたことで慰安婦像問題における夫婦の存在感が高まっている。そんななか、2人が今年1月末、沖縄を訪れていたことが判明した。  夫婦はキム・ウンソン氏(52)とキム・ソギョン氏(51)だ。ソウルの日本大使館前や釜山の日本総領事館前に設置された慰安婦像をはじめ、夫婦の手による像は、韓国全土に広がっている。いまや慰安婦問題の伝道者と言わんばかりだ。この夫婦が1月24日から27日にかけて沖縄を訪れていた。 次は沖縄か。新たな懸念が生まれるなか、ジャーナリスト・織田重明氏が訪沖の真意を探る。* * * 今回の訪問にあたって、引率役を担った人物がいる。現在は、関西の某大学で教鞭を執るA氏である。 韓国に留学中の70年代、北朝鮮の指示を受けて工作活動をしていたとして、KCIA・韓国中央情報部に国家保安法違反で逮捕された過去を持つ。今回、先導役を務めた理由についてA氏に取材を試みたが、返答はなかった。 夫婦訪沖の意図は判然としない。そこで夫婦が辿った道をトレースしてみた。彼らが訪問したのは、沖縄で“反戦彫刻家”として知られる金城実氏(78)の工房の他に、夫婦は沖縄戦の追悼施設である糸満市摩文仁の平和祈念公園へ。普天間飛行場を望むことができる宜野湾市嘉数の高台、そして名護市辺野古が面する大浦湾を訪れた。大浦湾では、海中が見えるグラスボートに乗り、珊瑚礁やカヌーによる反対派の抗議活動の様子を見学したという。米軍普天間飛行場の移設に向け沖縄県名護市辺野古で始まった護岸工事で、波打ち際に置かれた石材の入った袋(下)=4月25日午後(小型無人機から) いずれも戦争や米軍に関連する場所ばかり。今回、夫婦が取材に応じた数少ないメディアである沖縄タイムスの記事によると、夫婦は、〈韓国民として芸術家として(慰安婦の)被害の実相を明らかにしようと少女像を造り、さらに視野を広げるため初めて沖縄に足を運んだ。沖縄戦の激戦地やガマ、米軍基地の現状を見て回り、(妻の)ソギョンさんは「非常につらいことを経験した人の魂を感じた」〉という。その上でソギョン氏はこう述べている。「朝鮮半島も沖縄も戦争が続いている。芸術家として、平和の懸け橋になるための活動をしていきたい」韓国人が沖縄に特別な関心を払う理由 南北の睨み合いが続く朝鮮半島はともかく、沖縄でも「戦争が続いている」とは、米軍基地があることを指しているようだ。韓国と沖縄は同じ状況にあるというのが夫婦の認識。だからこそ、「連帯」が可能だという考えは、実は二人に限ったものではない。 筆者が前号(2017年3月号)で述べたとおり、元慰安婦の支援団体である挺身隊問題対策協議会(挺対協)は、傘下の学生団体である平和ナビのメンバーらを一昨年に沖縄に派遣し、反基地運動に参加させている。 済州島では2016年、軍事基地が完成した。表向きは韓国・海軍が利用しているが、実態は米軍の東アジアの拠点として利用される。住民は建設に反対したが政府が強行。沖縄と済州島をリンクさせる日韓の市民活動家も多く、学生たちにも浸透しやすい。例えば、カヌーを使った海上抗議活動のやり方を伝授するため済州島に出向く沖縄の活動家もいる。 さらに、韓国人が沖縄に特別な関心を払う理由がもうひとつ存在する。 沖縄において慰安婦問題は、本土とは異なる深刻さを伴う。太平洋戦争で、唯一の地上戦の舞台となった沖縄では、全島にわたって慰安所が設置されていた。その数、百数十箇所。朝鮮人慰安婦の存在も明らかになっている。 2008年には、挺対協の初代代表である尹貞玉氏らの運動によって宮古島の上野原地区に慰安婦の祈念碑が建てられた。2013年にも尹氏らが参加して建立5周年の集まりが開かれている。碑が建てられた場所は、慰安所の慰安婦らが洗濯から帰る途中に休憩した場所だった。 米軍基地に慰安婦問題。韓国と沖縄が共鳴する余地は大きい。「反戦運動」というフレームからみた日韓交流に、筆者は異議を申し立てたいわけではない。だが、挺対協は慰安婦問題では、常に過激な手法をもって日韓交渉を妨げてきた。日韓合意では元慰安婦46人中、34人が交付金を受け取っているにもかかわらず、「しっかりとした謝罪も賠償も後続措置もない。日本政府は責任逃れしている」という理由で、合意破棄を主張する。彼らが設置した慰安婦像は、「反日」思想を育むモニュメントとなっている。 また同団体は、北朝鮮とも交流する“親北団体”として韓国当局から監視されている。彼らの思想が沖縄に伝播することを警戒する日本の公安関係者は多い。 夫婦が言った「平和の懸け橋としての活動」が何をさすのか。今後も注視したい。関連記事■ 慰安婦像の制作者夫婦が沖縄の“反戦彫刻家”を訪れていた■ 朝鮮日報「韓国はみんな狂っている」の警告は韓国民に届くか■ 小川彩佳アナから櫻井翔へのバレンタインの贈り物は?■ 18kg減の愛子さま 宮内庁は報道陣に「アップ写真使うな」■ 「喜び組」の定年は25才 口にするのも…な酷い罰ゲームも

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    オスプレイの飛行再開でメディアの偏向報道は続く

    山田順(ジャーナリスト) 12月19日のNHK「ニュース7」のトップニュースは、オスプレイの飛行再開だった。なんで、この程度のことが、トップニュースになるのかまったく理解できない。先日のオスプレイの墜落は、1人も死者を出さず、事故原因が機体にないことはすでに米軍によって公表されている。とすると、これ以上、なにが問題なのだろうか? ところが、NHKをはじめとする日本の大メディアは、「100パーセント安全でないとダメ」というオールオアナッシングの非科学(宗教)に染まっていて、それを主張する人間のコメントしか報道しない。それをいいことに、たとえば沖縄の翁長知事は「原因究明をしっかりやって説明を果たしてもらわないと認められない。とんでもないことだ」などと現地視察で記者団にコメントした。しかし、前記したように、事故原因はすでに公表されている。それ以上なにが知りたいのだろうか。1月6日、米軍普天間飛行場に駐機する新型輸送機オスプレイ=沖縄県宜野湾市 じつは、この方は、米軍がどんな報告を出そうと聞く耳を持っていない。そればかりか、沖縄は米国の従属国・日本の一地方だという事実を受け入れられないという、現実無視メンタリティの持ち主である。 だから、自分の行動を「植民地の王」としてふさわしいと信じているようだ。ところが、沖縄の人々で、自分たちの状況に不満を持っている人は、大メディアと現地メディアが騒ぐほど多くないだろう。 ただ、それがバレてしまうとメディアは困るので、基地反対派、オスプレイ反対派のインタビューコメントばかりを取り上げる。 NHKニュースは、「アメリカ軍がオスプレイの飛行を再開させたことについて、普天間基地がある沖縄県宜野湾市の住民からは、批判や不安の声が聞かれました」などと、嘘ではない程度にナレーションして、たとえば40代の男性の「小さい子どもがいるので、飛行を再開すると聞いて非常に不安です。こんなに早く飛行を再開することは許されることではありません」などいう声を伝えた。 しかし、ここであえて言いたいが、もし日本のメディアが伝えるようにオスプレイが本当に危険な飛行機なら、いちばん不安なのは、それに搭乗するパイロットなどのクルーたちだろう。次に、そうした兵士を送り出した親や家族たちだ。万が一の事故で巻き込まれる可能性がある地上にいる住民より、彼らのことを心配する方が、たとえメディアとしても先に来なければならない。沖縄住民を本当に危険にさらしているのは誰だ 在沖縄米軍トップのニコルソン中将(四軍調整官)は、飛行再開に先立ち、現地を訪れて住民らに事故について謝罪し、「MV22の安全性と信頼性に米軍が最大級の自信を持っていることを日本国民に理解していただくことが重要だ」とする声明を発表した。そして、「この4年間、ここを飛んでいるが事故は1度もなかった」と言った。 日本のメディアの論理で行くと、この司令官は部下の命を顧みない、人命無視の非情な軍人ということになる。2016年12月22日、沖縄県名護市で開かれたオスプレイ不時着事故への抗議集会に参加した翁長雄志知事(奥中央)。同市内で開かれた北部訓練場返還式には欠席した(恵守乾撮影) 不思議なことに、この国では翁長知事のような考えが正義だと考える人間が少なくない。たとえば、民進党の蓮舫代表は、オスプレイの飛行再開より、事故原因の説明が先だと指摘し、「安全を担保した、 どのように担保したのかを、しっかり政府は説明する責任があると思います」と述べた。 オスプレイが飛ぶこと自体に反対なので、いくらコメントを求めてもこうなるという程度のことしか、この人は言わない。 おそらく、この日本には、オスプレイが飛ぶことを歓迎している人もいっぱいいるだろう。私は、沖縄と同じように米軍基地が多い神奈川県民だが、小さい頃から基地に遊びに行ったりしたこともあり、米軍に出て行ってほしいと思ったことは1度もない。本当にほとんどの沖縄県民が、今度のことで怒っているのか? メディアはちゃんと世論調査して、その結果を公表してほしいと思う。 沖縄の住民を本当に危険にさらしているのは、じつは米軍であるわけがない。それは、尖閣諸島に押し寄せ、しばしば領海侵犯する中国の艦船と、最近、領空侵犯寸前を繰り返すようになった中国軍機のほうだ。 民兵が乗っている中国の「偽装漁船」、あるいは中国空軍の戦闘機「スホイ30」や戦略爆撃機「轟&K」とオスプレイでは、どちらがより潜在的な脅威か考えてみたほうがいい。米軍は、日本の同盟軍である。 これまで、翁長知事はワシントンDCやスイスに出向き、「県民の人権が侵害されている」などと訴えてきた。しかし、この人は行く場所を間違えている。彼が本当に抗議しに行くべきなのは、アメリカ政府、国連、日本政府ではない。それは、北京だろう。それをしなければ、この知事は、県民の安全を平気で無視できる偽善者と言わざるをえない。(Yahoo!ニュース個人より2016年12月19日分を転載)

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    あばよ米軍、トランプに媚売る翁長氏の下心

    「沖縄の基地問題にどう対応するか、期待しつつ注視したい」。米軍普天間基地の名護市辺野古への移設に反対する沖縄県の翁長雄志知事が、トランプ氏との面会を求め来年2月にも訪米する意向を示した。トランプ政権で強まる米軍の「日本撤退論」に乗っかり、ここぞとばかりに媚を売る翁長知事の下心やいかに。

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    トランプ政権に媚売る翁長知事と沖縄メディアの思惑

    仲新城誠(八重山日報編集長) 米大統領選で、米軍軍基地の撤退に言及した実業家、ドナルド・トランプ氏が当選し、沖縄では翁長雄志知事や主要な沖縄メディアから「米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設を阻止できるかも」と新大統領の決断に期待する声が上がり始めている。しかし今後、米新政権で問題になりそうなのは辺野古移設の是非どころか、米軍が沖縄から全面的に撤退する可能性だ。そうなれば、中国の脅威に対する処方箋を持たない翁長知事こそ窮地に陥る。米大統領選でトランプ氏が勝利したことを受け、記者団の取材に応じる沖縄県の翁長雄志知事=11月9日午後、沖縄県庁 トランプ氏による選挙期間中の発言のうち、日本にとって最も衝撃的だったのは、米軍駐留経費の負担増に応じない場合、米軍を撤退させる方針を示したことだ。 新大統領がこの方針を実行すれば、日米同盟は希薄化してしまう。もはや辺野古移設とか駐留経費がどうのという話ではなく、日本が米国抜きで、自分の国は自分で守らなくてはならない時代が来るかもしれないということだ。 次期大統領は「世界の警察官」の役割放棄、自国の国益最優先主義に言及している。国際社会に冷戦終結以来の大規模な地殻変動が起こるかもしれない。沖縄が備えなくてはならないのは、そのような事態だ。 しかし米大統領選の結果を受け、翁長知事は11月9日、報道陣にこうコメントした。「(普天間飛行場問題で)政府は『辺野古が唯一』、私は『ありとあらゆる手段を駆使して基地を造らせない』と言っている。膠着状態の中、私どもの意見も聞いていただいて、どのような判断をされるのか期待したい」 沖縄は尖閣諸島を抱えており、恒常的に中国の脅威にさらされている。日米同盟が機能しなくなれば、沖縄は圧倒的な中国の軍事力を前に、最前線で突然、しかもたった一人で放り出されることになる。翁長知事のコメントには、そうした問題意識がまるで感じられない。「辺野古」以外は何も見えない「辺野古」以外は何も見えない 翁長知事は、トランプ氏に次のような祝電も送った。「大統領就任後は米国と沖縄との関係について話し合う機会をつくっていただき、双方にとって良い結果となるよう、強力なリーダーシップを発揮されますことをご期待申し上げます」 真に県民の生命や財産に責任を持つ知事であれば、次期大統領への祝電では沖縄の基地負担軽減に言及しつつ「日米同盟の重要性を再確認してほしい」と念を押すのが筋だろう。「米国と沖縄の関係について話し合いたい」などという幼稚で無内容な文章を一体誰が考えたのか、県民として理解不能だ。 しかし翁長知事は、来年2月に訪米する意向も示すなど、なお日本政府の頭越しに独自外交を展開する気満々だ。国益を超越する県益が存在するかのようである。 翁長知事を支える県紙2紙は、社説でこう主張した。「知事は早期に米国を訪れ、政権交代前、新政権の対沖縄政策が固まる前に、辺野古新基地建設の断念を求めるべきだ」(琉球新報)「米軍普天間飛行場の辺野古移設問題を見直す絶好の機会にすべきだ」(沖縄タイムス) こちらも翁長知事と同じく「辺野古」以外は何も見えない視野狭窄状態に陥っている。安倍政権やオバマ政権に対して繰り返してきた「辺野古断念を」という旧態依然とした訴えを、そのままトランプ政権にぶつけようとしているだけだ。 米軍の全面的撤退が現実化するなら、それは普天間飛行場問題とは無関係に、新政権が米国のあり方そのものを見直す流れの中で、将来的に起きるだろう。だから普天間だけを切り離し、トランプ氏に「辺野古断念」を訴えても恐らく徒労に終わる。 しかし、実は私は、米軍の全面的撤退という事態を必ずしも悲観的には捉えていない。むしろ、沖縄にとっての好機だという考え方は、翁長知事や沖縄メディアと共通している。 米軍が撤退すれば日本は当然、自衛隊を強化し、自主防衛を確立する道を選ぶほかなくなる。まさにそこれこそ、沖縄の米軍基地問題を抜本的に解決する唯一の道であると考えてきたからだ。 米軍基地問題で本土住民と意見交換した際、私はこう話したことがある。「県民が最も憤っているのは、事件・事故を起こした米兵が保護される日米地位協定の不平等性です。しかし米軍の代わりに自衛隊が配備されれば、この問題はなくなります。自衛隊員は日本の公務員であり、事件・事故を起こせば間違いなく処分されるからです」 本土住民は「そんな考え方は初めて聞いた」と目を丸くした。その表情から、本土住民が漫然と「米軍基地は沖縄にあればいい」と思っているのではないかと感じた。翁長知事に「自主防衛」なし翁長知事に「自主防衛」なし とはいえ、翁長知事の脳裏には「自主防衛」の四文字はない。翁長知事の著書「戦う民意」で、興味深いエピソードが紹介されている。 翁長氏は知事選出馬直前、当時の自民党幹事長だった石破茂氏と面会した。石破氏は国土防衛に関する持論である「郷土部隊」について語り始めた。 「辺野古には将来、自衛隊による海兵隊をつくったらどうかと思っているんですよ。それは沖縄の若者で百パーセント編成をする。そうすると日米地位協定の問題もなくなり、沖縄の人たちは喜んでくれるんじゃないでしょうか」 石破氏の構想は「自分の国は自分で守る」という独立国家の理想を体現しており、もっともな話であると思う。しかし翁長氏は「即座に反論」した。 「とんでもないですよ。もともと私たちは基地そのものに反対しているんですよ」 翁長知事は、尖閣問題で中国に毅然とした態度を示したことは一度もない。これまでの尖閣危機でも右往左往するだけだった。米軍の全面的撤退が現実化すれば、こうした危機管理能力のない県政を、県民が信認し続けることは有り得ない。 辺野古移設に限定して考えると、トランプ新政権は当面、日米合意を堅持するだろう。米国の損得勘定からすれば、日米合意を破棄してまで普天間飛行場を県外・国外に出す米国自身のメリットは想定しにくい。 軍関係者からは「あえて移設しなくても、現在の普天間のままがいい」という声もあると聞いたことがある。知事が新政権に「日米合意破棄」「移設反対」の圧力をかけ過ぎると、やぶ蛇で普天間の固定化という最悪の決断が飛び出さないとも限らない。 米新政権は短期的には辺野古推進であり、長期的には、あるいは米軍の全面的撤退を決断するかもしれないが、いずれの場合でも、翁長県政がピンチに陥ることに変わりはない。理由は一つ、中国の脅威を直視する勇気を持たないからだ。 トランプ氏が米軍の全面的撤退を決断するかどうかは、現時点では分からない。ただ指摘すべきことは「いずれにせよ、日本はその日に備えなくてはならない」ということだ。動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開されたビデオメッセージで、TPPから離脱する意向を表明するドナルド・トランプ氏=11月21日 中国は尖閣諸島周辺に連日、公船を派遣しているが、尖閣への軍事的な侵攻には踏み切っていない。それは日米同盟があるからだ。中国は、日本はともかく米国の軍事力には到底かなわないと考えており、現時点では米国との融和に懸命だ。 だが、中国は驚異的なスピードで軍拡を続けている。数年後か十数年後、「もはや単独で日米に勝てる」と確信する日が来るかもしれない。それが尖閣侵攻、さらには沖縄侵攻のXデーになる可能性は十分にある。だから日本の「米国頼み」がいずれ限界に達するのは時間の問題だろう。 この期に及んで、相も変わらず「辺野古阻止」だけ連呼し続ける翁長県政と沖縄メディアは、思考が20世紀の時点で停止している状態に見える。 それは両者が、反基地イデオロギーで築き上げてきた沖縄「主流派」の地位を今後とも維持したいという、誠に現実的な理由があるからだ。20世紀的な表現で言うと、翁長知事と沖縄メディアは「わかっちゃいるけどやめられない」のだ。

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    「基地反対すればカネを生む」トランプ歓迎で墓穴を掘った翁長知事

    篠原章(評論家・批評.COM主宰) 「ドナルド・トランプ候補が次期米国大統領に当確した」との報道に接して、筆者はジョークのつもりで「トランプ当選。翁長知事、オール沖縄は祝電を打たないと」とSNSに書き込んだ(11月9日)。この書き込みに刺激を受けたからではないとは思うが、数時間後、翁長知事はトランプ氏に祝電を打ち、「2月に訪米して新大統領と会談する」と発表した。 翁長知事がトランプ大統領の誕生を歓迎しているのは、選挙期間中のトランプ氏が「米軍が日本に駐留する必要性はないのだから、日本側が米軍駐留経費を全額負担しないかぎり、在日米軍基地は撤去する」といった趣旨の発言を繰り返していたからである。在日米軍基地の必要性を認めない大統領の誕生は、翁長知事とオール沖縄の「基地反対」にとって「好機」との判断が働いたのかもしれない。トランプ次期米大統領(ロイター) しかしながら、トランプ氏は「日米同盟」そのものを軽視しているわけではない。そのことは選挙期間中の発言を精査すれば明らかで、選挙後におけるトランプ陣営の関係者の発言から見ても、問題はあくまで「駐留経費の日本側負担の増額」に限られている。 トランプ氏は、同盟国との関係を今後も維持するためには、各国による軍事的経費の適正負担が不可欠だと訴えているにすぎない。他方で「強いアメリカ」を確固たるものにするために、最新の軍事技術への投資額を増やす意向だともいわれている。在日米軍駐留経費の米国側負担の削減は、軍備強化のための財源捻出の一環だと考えるのが妥当である。 もっといえば、トランプ氏の発言は、米国の軍事力にすっかり依存した日本の安保政策に変更を迫るもので、日米同盟下における日本側の財政的・軍事的な役割の増大を促すものと受けとめるべきだろう。「憲法改正による自立」を目指す安倍政権にとって、トランプ氏の方針はむしろ「追い風」となるものだ。トランプ時代を迎えて日米同盟が新しい段階に入ったことは間違いない。真意は「カネ」にあり真意は「カネ」にあり 翁長知事がトランプ氏に送った「秋波」は、果たして日米同盟のこうした転換期を認識した上でのものだろうか? 結論からいえば、それはきわめて怪しい。 日米同盟を認めつつ普天間飛行場の辺野古移設や東村高江のヘリパッド移設に反対する翁長知事の「真意」は、そもそも「カネ」にある。つまり、沖縄振興予算と防衛費に依存する沖縄の補助金漬け経済の維持・拡大こそ、翁長知事の最大の目標である。「基地反対」「沖縄差別反対」を唱えて政府に圧力をかければ、政府はその懐柔策として巨額の補助金を沖縄に与える。 「負担と見返り」のこの構造は大田昌秀県政(1990ー1998年)以来変わることなく続いている。「沖縄のこころ」「県民の平和への意思」を前面に出して基地反対・沖縄差別反対を唱えれば、政府からカネを引き出すことができるのである。 仲井眞弘多前知事は、「辺野古埋立承認」という切り札を使うことで、この構造に楔(くさび)を打ち込もうとしたから知事の座から追われた、と筆者は考えている。 辺野古移設を是認してしまえば、「基地反対運動の最大の拠点」が失われる。「辺野古」は、知事が先頭に立って「基地反対」「沖縄差別反対」の圧力を政府にかけ続けるために不可欠の闘争地点だったからである。 「辺野古」が失われれば、沖縄に対する特別な補助金の法的根拠である沖縄振興計画(計画期間10年/現在は5期目で2021年度終了)はもはや延長されない恐れがある。そうなれば沖縄は「特別扱い」を受けない他の46都道府県と同列になる。いってみれば「格下げ」である。 仲井眞前知事の埋め立て承認は、翁長知事にとって沖縄をおとしめるものに等しかったのである。仲井眞氏を下して当選した翁長知事は、「辺野古移設反対」を唱えることにより、沖縄振興計画の延長をもくろんでいるのである。 先に述べたようにトランプ氏の安保観は、日米同盟を弱体化させるものでもなければ、米軍撤退に直結するものでもない。あくまでも財政的な問題である。筆者は必ずしも賛成しないが、日本政府が国防費の対GDP比1%を2%に引き上げ、米軍駐留経費を全額負担すれば済むことともいえる。 政治的巧者の翁長知事がそんなことに気付かないわけがない。翁長知事にとって駐留経費を日米両政府のどちらがどの程度負担するかはどうでもよいことである。日本側の国防費がどうなろうが、沖縄振興予算に影響が及んで減らされることがなければそれでいい。カネと反対の悪循環カネと反対の悪循環 翁長知事がトランプ新大統領に面会したがるのは、失言も多いトランプ氏から「日本政府の努力が足りない」あるいは「沖縄県民の負担は多とする」といった言質を引き出したいがためだろう。「日本政府=悪、沖縄=善」という構図に資する発言を期待しているのである。 そうした言質が取れれば、「基地反対」「沖縄差別反対」という政府批判を補強することができる。要するに、沖縄振興計画の延長に利用できる発言なら何でもいいのだ。鶴保沖縄北方担当相に「平成29年度税制改正要望書」を手渡し、記者の質問に答える沖縄県の翁長雄志知事(中央)=11月24日、東京・永田町の内閣府 (代表撮影) 「そんなことはない。翁長知事は米軍基地をなくしたいという沖縄の民意をトランプ新大統領に正しく伝えようとしているだけだ」という反論もあろう。しかしながら、本気で「基地撤去」あるいは「辺野古移設反対」を望むなら、翁長知事は「米軍駐留経費の日本側負担増大反対」というスローガンを日本政府に突きつけるべきである。 新大統領には「どうか撤退してください。それが県民の総意です」ないし「県民は駐留経費の日本側負担増に反対です」と伝えるべきだ。トランプ氏は、日本側が駐留経費を全面負担しない限り撤退すると言っているのだから、それが辺野古移設を阻止するためのいちばんの近道である。 翁長知事は「在日米軍が撤退するわけがない」という大前提に立った上で、あの手この手の「反対」を繰り返しているだけだ。そうした姿勢が「カネを生む」と信じているからである。「カネと反対の悪循環」に終止符を打つためには、安倍政権が「これ以上の駐留経費負担はできない」という姿勢を取り、トランプ新大統領が「在日米軍の全面撤退」を決断する必要があるが、今のところその可能性は薄い。 だが、翁長知事の基地とカネをめぐる「政略」は、すでに国民に知られつつある。ネット上にあふれる「沖縄切り捨て論」がその兆候だ。オール沖縄寄りの識者は、こうした沖縄切り捨て論を「沖縄差別」「沖縄に対するヘイトスピーチ」だと非難するが、トランプ新大統領誕生を機に、日米安保体制の見直しがより広汎に議論されるようになれば、翁長知事とオール沖縄の立ち位置の矛盾はいっそう明確になるはずだ。 日米同盟や国民や県民の安全保障とほとんど無関係な「基地反対」はやがて破綻するだろう。その意味で、トランプ新大統領の誕生はやはり歓迎すべきことだ。翁長知事とオール沖縄は、トランプ新大統領を歓迎することで実は自ら墓穴を掘っているのである。

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    実現性はゼロ? それでも翁長・トランプ会談を熱望する沖縄2紙の魂胆

    仲村覚(ジャーナリスト、沖縄対策本部)知事早期訪米を煽る沖縄メディア 11月8日に投開票の行われた米国大統領選挙において、トランプ氏が当選を果たした。翌9日、沖縄県の翁長雄志知事は、記者会見でトランプ氏への祝電を送ることを明らかにした。総理大臣でも外務大臣でもない一つの県の首長が他国の国家元首へ祝電を打つことはおそらく前代未聞であろう。祝電の送付は事務方からの提案ではなく、翁長氏からの指示とのことだ。9月16日、米軍普天間飛行場の移設を巡る訴訟で沖縄県側が敗訴し、沖縄県庁で記者会見する翁長雄志・沖縄県知事 翁長氏は記者会見で、「新しい発想の政治を考えており、沖縄の基地問題にどう対応するか注視したい。(日本政府は)『辺野古が唯一』と、(沖縄県側が)ありとあらゆる手段を駆使して造らせないと、(政府と県が)こう着状態。私どもの意見を聞いていただき、どのように判断するか沖縄側としては期待したい」と述べた。 さらに祝電には、「大統領就任後は、米国と沖縄との関係について話し合う機会をつくっていただきたい」と面談の申し込みも行い、訪米時期はトランプ氏が2017年1月20日に大統領に就任し、関係閣僚が決まる2月ごろとしている。 今後の日本の安全保障政策の成否は、沖縄県石垣島、宮古島への自衛隊の早期増強配備と日米同盟強化にかかっているといっても過言ではない。そのうちのひとつ、日米同盟強化はひとえにトランプ大統領との関係構築にかかっている。 トランプ氏は選挙期間中に在日米軍の撤退も口にしたため、沖縄からの米軍基地の撤去を唱えている勢力にとっては、トランプ大統領の誕生が大きなチャンスと捉えることも出来る。その代表のひとりが翁長氏で、祝電まで送り面談まで申込んだのだ。 仮に安倍総理がトランプ氏と安全保障政策で足並みを揃える事に成功したとしても翁長氏が背後から妨害をする可能性は大きい。よって、日本政府は今後の翁長氏のトランプ氏への対応を把握して適切に処理しすることが重要になってくる。沖縄ではマスコミが主で政治が従 通常、新聞の政治報道というのは政治家の言動を取材してそれを正確に報道するものだ。しかし、沖縄の2紙はそうではない。まず、新聞が(彼らなりの)沖縄の政治のあるべき姿を報道する。 例えば、「世界一危険な航空機オスプレイの配備撤回の声をオール沖縄であげるべきだ」と報道すれば、自民党から共産党まで一体となってオスプレイ配備阻止の運動が湧き起こり、「翁長雄志知事待望論」を唱えれば、不思議なことに自民党の政治家だった翁長氏が革新統一候補として担がれ、県知事選に出馬してくるのである。 その後はシナリオに一致した政治家、県民の声を報道し、そうでない声は報道しない自由を最大限に行使する。これが、沖縄の政治とマスコミの関係だ。マスコミが主で政治が従なのである。よって、今後の翁長氏が辺野古移設阻止に向けてどのようなトランプ対応に動くかは、沖縄2紙の関連記事をチェックすれば概ね把握できるはずである。 沖縄タイムスは、11日「[トランプ氏と日米安保]今こそ辺野古見直しを」というタイトルをつけた社説で、「翁長雄志知事は、トランプ氏との面会を求め来年2月にも訪米する考えを示した。辺野古の新基地建設に反対する沖縄の民意を伝え、米側に計画断念を要請する意向だ。敵意に囲まれた基地は機能しない。日本政府はトランプ氏に対し『辺野古が唯一』との考え方を懸命に吹き込むはずだが、辺野古埋め立て工事を強行すれば激しい反対行動に遭い、沖縄基地全体が不安定化するのは確実である。県はそのような厳しい現実を、あらゆるチャンネルを使って新政権に伝えるべきだ」と訪米してトランプ氏を脅す必要性を説いた。 10日の琉球新報の社説は更に踏み込んでいる。「米大統領にトランプ氏 辺野古新基地断念せよ 知事は直ちに訪米すべきだ」というタイトルで「トランプ氏の辺野古新基地建設への対応は未知数だ。米有力シンクタンクのアジア専門家は「辺野古移設について、トランプは全くの『白紙』状態だ。今後、判断していくことになるだろう」と指摘している。それならば、翁長雄志知事は早期に米国を訪れ、政権交代前、新政権の対沖縄政策が固まる前に、辺野古新基地建設の断念を求めるべきだ」と2月の訪米では遅いと早期訪米の注文を付けた。首相に先手を打たれた焦り首相に先手を打たれた焦り 安倍総理の動きは早かった。10日、午前7時55分から約20分間、ドナルド・トランプ次期米国大統領と電話会談を行い、APECの前にニューヨークで会談を行う方向で調整することを決めると、17日夕(日本時間18日朝)にはトランプ氏とニューヨークで約1時間半にわたり会談した。 当初45分間だった予定が倍の1時間半に延長され、公開された写真でもお互いに和やかな笑顔を見せ、会談が大成功だったことを伺わせている。会談内容は非公開のため詳細は不明だが、殆どのメディアは関係構築に成功したと報道している。 19日、沖縄タイムスは平安名純代・米国特約記者の署名で、安倍・トランプ会談のレポートを掲載し、次の解説で締めくくっている。 「アジア太平洋地域における米軍の重要性を強調しながら日本の責任としての自衛隊配備と米軍との共同訓練などを力説する安倍氏の姿に、トランプ氏は『目指す方向は同じようだ』と笑顔で答えたという。トランプ氏は、日米同盟の重要性を強調し、両国が信頼関係を構築して協力し合うことが双方の国益につながるとの安倍氏の主張に耳を傾け、ペンス氏も『信頼できそうな人物だ』と好感を示していたという。米軍撤退の可能性を指摘したトランプ氏が強硬姿勢を改めるかどうかは今回の会談では判明しなかったが、安倍氏を歓迎して受け入れたことから、今後は両者の間に信頼関係が築かれ、在沖米軍基地の増強や先島の自衛隊配備を巡り協力する可能性も出てきた」 続いて翌20日には、「[安倍首相・トランプ氏会談]県は働き掛けを強めよ」というタイトルの社説を掲載した。 「トランプ政権が正式発足してからの交渉によっては日本の軍事的役割の増加を求めてくる懸念も消えない。そうなれば、沖縄は負担軽減どころか、さらなる負担を押しつけられることになりかねない。(中略)翁長雄志知事は大統領就任後の来年2月に訪米を計画しているが、むしろ政権移行期の今こそ県ワシントン事務所などあらゆるチャンネルを活用して辺野古新基地建設に反対する沖縄の民意と、仮に強行することがあれば日米安保全体がリスクにさらされることをトランプ氏側に正確に伝える必要がある」 続いて、21日の琉球新報では「[安倍トランプ会談]辺野古見直す柔軟性持て」というタイトルで、「翁長雄志知事は来年2月にも訪米し、トランプ氏らとの面談を求め、辺野古新基地断念を訴える考えだが、就任前にこそ、政権要職の布陣にらみ沖縄の実情を理解させる戦略を練り、実践すべきだ」と主張した。 当選直後は琉球新報のみが政権交代前の訪米を主張していたが、安倍総理とトランプ氏の会談後の社説では両者とも就任前の訪米を要求している。おそらく、知事の背後にいる様々な勢力はすでに訪米の前倒しに向けて、国内外で動き出しているのではないだろうか? ちなみに、翁長氏が就任してから沖縄県知事の国外出張の日程調整は、県議会も知事公室の秘書も全く知らないところで組み込まれるようになっている。「島ぐるみ会議」等の民間人が調整してから知事が判断し、慌てて県庁職員が動くしくみになっている。つまり、県庁は知事を背後で操る特定の団体に乗っ取られているのだ。翁長知事の対米外交の真意翁長知事の対米外交の真意 さて、翁長氏は安倍総理と対米外交を競っているかのようだが、現時点では圧倒的に安倍総理に軍配が上がっている。6月23日、国立沖縄戦没者墓苑で献花に向かう安倍晋三首相(左)。右奥は沖縄県の翁長雄志知事 筆者は翁長氏がトランプ大統領に面会できる可能性はほぼゼロだと見ている。何故なら、トランプ氏が国家安全保障問題担当の大統領補佐官への就任を打診したのが、元国防情報局のマイケル・フリン氏だからだ。フリン氏は沖縄の反基地運動の背景に中国共産党などの工作があることは重々承知なはずだ。 では、沖縄の基地問題は手放しで喜ぶことが出来るかというとそうではない。次の大きな火種は仕込まれている。沖縄県に派遣された大阪府警機動隊員の「土人」「シナ人」との発言が沖縄県民全員に対する差別発言だとされている事件である。 この問題で10月28日には沖縄県議会で臨時議会が開催され、社民党、共産党などが中心となって提出された抗議の意見書は賛成多数で可決された。一方、自民党会派はこの問題の本当の目的は沖縄県民と日本国民を分断するためのマッチポンプだと見抜き、機動隊員の発言はエスカレートした抗議活動が招いたものであり、県民に対して向けられたものではなく差別ではないとして現場警察官の負担軽減と十分な休養と心のケアを求める独自の意見書を提出した。 事実、ヒューマンライツ・ナウという国際人権NGOは、9月13日から30日まで開催された第33回国連人権理事会に声明「沖縄県における米軍基地問題に反対する平和的抗議活動に対する抑圧と琉球/沖縄の先住民族の権利の侵害」を提出した。 その中には「琉球/沖縄の人々が先住民族であることを認めた上で、国連先住民族権利宣言26条及び18条に基づき、琉球/沖縄の人々の「伝統的な土地及び天然資源に関する権利」及び「影響を受ける政策に事前に情報を得た上で自由に関与する権利」を保障すること」という勧告も含まれている。要は沖縄県民を国際的に先住民族だと認めさせることで、先住民族の土地と資源に対する特別な権利を利用して合法的に米軍基地を撤去させようという魂胆である。 沖縄県民を先住民族だと認めさせる最も効果的な手段は、翁長氏が国連人権理事会で差別被害を訴えることであるが、それにはプロセスを経る必要がある。「日本政府に訴えても駄目だった」「米国に訴えても駄目だった」というプロセスである。このプロセスを経て、初めて政府から弾圧を受けていると主張することが出来、先住民族が国連に駆け込むことが出来るのだ。 つまり、沖縄2紙は翁長氏の早期訪米を煽っているが、会談を成功させることが目的ではなく、無視されて失敗することが成功だと考えているのだ。つまり、翁長氏の訪米と土人問題のマッチポンプは、国連に差別を訴えるためのセットとなった環境づくりだということである。鶴保大臣を槍玉に挙げる本当の目的参院内閣委の理事懇談会後、取材に応じる鶴保沖縄北方相=10日午前、国会 現在、国会の野党議員は、沖縄が政府から差別を受けているという構図を作るために、鶴保沖縄北方相を槍玉に挙げて騒いでいる。鶴保氏は、8日の参議院内閣委員会で、「人権問題であるかどうかの問題を第三者が一方的に決めつけるのは非常に危険なことだ。言論の自由はどなたにもある」「個人的に『これは差別である』という風には断定はできない」と答弁したことから、沖縄担当大臣にふさわしくないと国会で追及されている。 さらに19日の琉球新報では、佐藤優氏が「うちなー論評」という自らのコラムに「鶴保弾劾闘争宣言、沖縄差別への無自覚露呈」という記事を掲載した。このように機動隊「土人」発言は本来火のないところに火をつけたマッチポンプだが、一過性のものではなく、大阪府や永田町までも飛び火をさせて大きく燃え上がらせようとしている。それは、沖縄を日本から引き離し奪い取るための革命闘争である。 彼らの本当の目的は、沖縄差別を認めさせ謝罪させることでも、鶴保氏を辞任に追い込むことでも辺野古移設を断念させることでもない。差別という言葉を利用して沖縄と日本との対立構図をつくり、亀裂を入れることである。 現在の沖縄問題は単なる基地問題でも安全保障問題ではない。国内外の共産主義勢力及びその関連団体による沖縄分断工作との戦いである。 よって、今後日本政府は、工作の実態と理論を隅々まで把握し整理しトランプ陣営と共有する必要がある。何故なら、そのルーツをたどれば共通の敵である中国共産党に辿り着くからだ。新たな日米同盟には軍事同盟だけではなく、中国の対日工作、対米工作への共同対処も含まれることを願っている。それが、日米離間工作に対する最大の防御であり、中国への最大の攻撃でもあるからだ。

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    トランプ当選で沖縄に漂う微妙な空気

    織田重明 (ジャーナリスト) 「これで普天間問題に劇的な変化が起きてしまうのだろうか。だとすると、喜ぶべきなのかも知れないが、この20年間はいったいなんだったのだろうとも思えてくる」 大方の予想に反する米大統領選挙でのトランプ氏の勝利。その晩に飲んだ沖縄県の幹部はそうぼそりつぶやいた。米大統領選で勝利したトランプ氏(左)と大統領首席補佐官への起用が決まったプリーバス氏=11月9日、米ニューヨーク20年間の迷走 1996年の日米政府によるSACO合意で、米海兵隊が使用する普天間飛行場の代替施設を沖縄本島の東海岸沖に建設するとして以来、20年にわたって迷走が続いてきた普天間問題。2013年12月に当時の仲井真弘多知事が名護市辺野古沖の埋め立てを承認したことで、安倍政権は埋め立ての工事に着手したものの、仲井真氏に代わって沖縄県知事となった翁長雄志氏は埋め立て承認の取り消しに踏み切り、これを不服とする国が県を提訴するなど、普天間問題は沖縄の過剰な基地負担の象徴として、沖縄県民のみならず私たち日本国民の眼前に広がり続けてきた。 ところが、まさかのトランプ氏当選である。 大統領選のキャンペーンの間、トランプ氏は在日米軍の駐留費や米軍の体制をめぐって物議を醸すような発言を繰り返してきたことはよく知られている。 「日本の防衛は続けたいが、公平な支払いが必要だ。日本は自分自身で防衛しないといけないだろう」 「米国は巨額の資金を日本の防衛に費やす余裕はもうない」 日米安保条約では、日本に米国を防衛する義務はなく、日本は安全保障で「フリーライダー(タダ乗り)」となっている、もっと駐留費の負担を増やすべきだとトランプ氏は主張してきた。日本だけでなく韓国やドイツも引き合いに出しながら、負担増に応じなければ、米軍撤退も辞さないというトランプ氏の発言が喝采を受けてきたのは事実だ。翁長知事の期待  「(米軍駐留経費の負担を日本が増やさなければ在日米軍を撤退させるかとの問いに)喜んではいないが、答えはイエスだ」 トランプ氏のこれらの発言は、日本などの各国からより多くの駐留経費(いわゆる思いやり予算)を取りつけるために言っているだけで、本気で米軍の撤退を考えているわけではない、あるいは大統領になれば、もっと現実的な対応を取るようになるとの楽観論もあるが、在日米軍を取り巻く環境に不透明感が高まっていることは否めない。 そうしたなかで、沖縄ではトランプ氏当選に対する、戸惑いとも期待感ともつかぬ微妙な空気が漂っている。トランプ氏の当選確実が明らかになった11月9日午後、翁長知事はトランプ氏への祝電を送ることを明らかにし、普天間の辺野古移設への影響を記者から問われて、こう答えている。 「トランプ氏は破天荒な人だ。基地問題がどういうふうに動くかは分からないが、膠着状態の政治はしないのではないか。できるだけ早く私の考えを伝える」トランプ当選への期待感の裏で 翁長知事は、トランプ氏について触れる前に、大統領選で敗れたクリントン氏については、「今日までの政治を背負っている。ある意味では(当選すれば)今の膠着状態がそのままになると思っていた」と述べており、トランプ政権の誕生で、現行の在日米軍再編計画を決め、日本政府以上の岩盤として沖縄側の要求をはねつけてきたホワイトハウスやペンタゴンが変化することへの期待感を示したものだ。移設反対派の集会で話す沖縄県の翁長雄志知事=8月5日、福岡高裁那覇支部前 翁長知事は12月の訪米を予定しており、その時にトランプ氏との会談を申し入れるつもりだという。これを受けて、翌日11月10日付の地元紙・琉球新報は社説でこう書いている。 「(米国の)政権交代は日本の国土面積の 0.6%に74.46%の米軍専用施設が集中する沖縄にとって現状を変更する好機である。(中略)翁長雄志知事は早期に米国を訪れ、政権交代前、新政権の対沖縄政策が固まる前に、辺野古新基地建設の断念を求めるべきだ」 冒頭の県幹部のつぶやきは、20年にわたって難航を極めてきた普天間問題が大統領の交代によって劇的な変化が起きるかも知れないことへの喜びの反面、沖縄県としての無力感も滲ませたものだ。だが、この県幹部はそう楽観もできないばかりか、懸念材料はたくさんあるという。「海兵隊を4大隊増やす」「海兵隊は撤退を」と書かれた紙を一斉に掲げる参加者 =6月19日、沖縄県那覇市の奥武山陸上競技場 「在沖海兵隊の移転に『待った』がかかったりしないか」 沖縄の基地負担の軽減のために2006年の米軍再編ロードマップでは、1万5000人の在沖海兵隊のうち8000人をグアム移転するとされたが、2012年に計画の見直しがされ、現行の計画では在沖海兵隊9000人を2020年代から順次、グアムやハワイなどに移転するとされている。問題はこの移転にかかる巨額の経費(2012年の価格で総額86億ドル。日本円にして9000億円以上)の支出にトランプが同意するかだ。 これまでのところ、トランプは在沖海兵隊の移転に関しては言及していないようだ。というか、恐らく彼はまだこの計画を知ってもいないだろう。安全保障や外交についての知識はまだかなり浅そうだ。ただ、米軍の増強には熱心な様子である。こんな発言をしたこともある。 「米軍は枯渇している。陸軍兵力を54万人(現在は48万人弱)に増やし、36歩兵大隊の海兵隊を構築し(現在32大隊)、2020年までに350(現在272隻。現行計画では308隻)の海軍軍艦と潜水艦を導入する」海兵隊を4大隊増やす 海兵隊を4大隊増やすという発言が普天間飛行場の辺野古移設や在沖海兵隊の国外移転計画にどう影響するのか。 先月、来日し菅義偉とも会談した、トランプ氏の外交アドバイザーであるマイケル・フリン元米国防情報局長は、与野党の国会議員との会合で、「米国の安保政策は変わらない」と伝える一方で、「むちゃくちゃにはしないが、継続ではなく新しいものをつくりたい」と述べたという。フリン氏は、トランプ政権の国防長官にも名前が挙がっている。 トランプ政権がどんな手を打ってくるのか。沖縄だけでなく、日本全体もその動向に目を離すべきではない。

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    自主防衛強化の好機となるトランプ大統領の誕生

    【WEDGE REPORT】川上高司 (拓殖大学海外事情研究所長) ドナルド・トランプが唱える日本の安全保障タダ乗り論は、日本に向けた一種のディール(取引き)であり、慌てる必要はない。むしろ、彼の在日米軍撤退発言を機に、日本の安全保障を米国に依存して経済成長に専念してきた「吉田ドクトリン」を白紙ベースで考え直し、自主防衛を強める良い機会だと捉えるべきである。 自主防衛を強化すると、現在GDP比1%の防衛予算を少なくとも2~3%にしなければ対中抑止は困難だと思われる。(*2015年ストックホルム国際平和研究所が発表したGDP比では米国3・3%、中国1・9%)。航空自衛隊のCH47大型輸送ヘリコプター(空自提供) そもそも、トランプ次期大統領の発言にかかわらず、在日米軍の縮小とそれに伴う日本の自主防衛の強化は既定路線であり、不可逆的な流れである。 財政赤字が深刻な米国は、オバマ大統領が「米国は世界の警察官ではない」と表明したように、国防予算も13年から10年間で約5000億ドルの削減を行っている最中だ。またそれに従って14年のQDR(4年ごとの米国防計画の見直し)でも、米軍の前方展開兵力の削減が示された。ロードマップに基づく一連の在日米軍の再編事業でも、在沖海兵隊の大部分がグアムに移転する計画である。 一方、日本も在日米軍の縮小や中国の海洋進出に備え、14年度から「中期防衛力整備計画」(5年ごとの防衛計画)に沿って、南西地域の島嶼部における防衛態勢の強化に着手している。オスプレイや第5世代ステルス戦闘機F-35Aの配備もその一環である。米国は横須賀を手放さない ただし、トランプが言及する「在日米軍撤退」は0か100かの議論ではない。米国の国益の観点から完全撤退はありえない。 米国にとって地政学上重要な海域は、太平洋からインド洋、中東へと続くシーレーンだ。特に太平洋の西端を押さえないと、太平洋の西半分が中国のものになる。 中国が自由に太平洋へ進出するようになれば、米国本土が潜水艦発射弾道ミサイルの危機にさらされるため、米第7艦隊を中心に監視活動を強化している。艦隊の母港でもある横須賀海軍基地は、地政学的要因からも、良質なドックで有能な日本の整備員によるメンテナンスを受けられることからも絶対手放したくないはずだ。 なお、共和党のある有力議員は、米シンクタンクの提言に賛成し、本来、東太平洋に展開する第3艦隊を西太平洋に展開させ、両艦隊で護衛艦を相互運用しながら、中国の海洋進出を阻止する構想を描いている。そうすれば第7艦隊の原子力空母ロナルド・レーガンのメンテナンスによる半年間の空白期間がなくなる。そうなると、第3艦隊も横須賀に入る可能性もあり、横須賀の価値は高まるはずだ。 さらには台湾有事に備えて、在沖海兵隊は沖縄からの完全撤退は考えにくい。また、極東最大の米空軍基地である沖縄の嘉手納はなおさら撤退しづらい。仮にトランプが在日米軍撤退を命じたとしても米議会の反対にあい最悪の場合でも有事駐留となるだろう。 こうした米国からみた在日米軍基地の価値を見極め、米軍の抑止力を補完するかたちで自衛力を強化するべきだ。

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    安倍氏とトランプ氏はケミストリーが合うと外交関係者

     一部メディアのようにいたずらにドナルド・トランプ次期大統領を“危険人物視”したり、先行きを必要以上に悲観視したりするのはミスリードになりかねない。むしろ、トランプ政権の閣僚候補の具体的な名前が浮上すると「トランプで良かった」という声が次第に大きくなっている。(ロイター)「米国の経済・金融政策を担う財務長官候補とされているのはJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)など、ウォール街出身者ばかりとあって金融界は歓迎ムードが高まっている」(米メディア関係者) 日本経済にとってインパクトが大きいのは、エネルギー長官にトランプ氏のエネルギー政策顧問のハロルド・ハム氏の就任が有力視されていることだ。ハム氏は米国を世界最大の産油国にしたオイルサンド(油砂)から原油や天然ガスを汲み上げるシェール革命の立役者として知られる。経済アナリストの中原圭介氏が語る。「クリーンエネルギーを推進したオバマ政権はシェールの掘削に厳しい環境規制をかけたため、コスト高になったシェール業界は生産調整を余儀なくされた。原油価格が1バレル=50ドルより下がれば生産を縮小し、上がれば拡大するかたちになっていた。 しかし、ハム氏がエネルギー長官候補ということは、トランプ政権は規制を大幅に緩和してシェールオイル増産に転換する可能性が高い。そうなると採掘コストが大幅に下がり、40ドルでも生産できるケースが増え、供給量が増える。原油価格は低いまま上がりにくくなる」 米国、日本、中国をはじめ石油の大量消費国には大きなメリットだという。「米国や欧州では自動車販売が伸びています。それは年初からの原油安のメリットが大きい。米国では実質所得が過去20年で最高の伸びです。日本でも下がり続けていた実質賃金が2月から上昇に転じ、原油安のメリットがようやく出てきている。米国のシェール増産はこの流れに勢いをつけるはずです」(同前) 経済が好転なら、安全保障はどうなるのか。安倍首相は米大統領選翌日の電話会談でトランプ氏から、「安倍首相の経済政策を高く評価している。今後数年間、共に働くことを楽しみにしている」という言葉を引き出した。自民党総裁任期まで1年半あまりの首相にわざわざ「数年間」といったのは総裁3選を意識した言い方だろう。 さらに安倍首相は11月17日、ペルーで開かれるAPEC首脳会議の前に米国に立ち寄り、外国首脳では初めてトランプ氏と会談した。「就任前の大統領との“首脳会談”は外交上異例だが、受け入れたトランプ氏側もそれだけ日米関係を重視していることを示している。1月には安倍首相が再訪米して一緒にゴルフをする案も調整が進んでいる。外交用語で馬が合うことをケミストリーというが、理詰めではなく直感タイプの2人はやはりケミストリーが合うようだ」(外務省筋)関連記事■ 「シェール革命」の進展で遠心分離機の需要増を見込む注目株■ 米国産シェールガス対日輸出容認 「日本商社奮闘のお陰」説■ オバマ大統領絶賛のクリーンエネルギーは「シェールガス」■ トランプ氏がグローバリズムに歯止め 日本にはプラスか■ 原油価格暴落など、世界市場の乱高下の仕掛け人は誰なのか

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    トランプ大統領は日本経済に不利、憲法改正の動き強まる観測

     大統領選に勝利し、アメリカの新リーダーとなったドナルド・トランプ氏(70才)。今後、私たちに最も大きな影響を与える可能性があるのは安全保障面だろう。 選挙中、トランプ氏は何度も「日米安保条約は不公平だ」と繰り返し、日本が安保条約に「ただ乗り」していると強調して、在日米軍の駐留経費を全額負担しないと「米軍撤退」もあると訴えた。日本から米軍が撤退すれば、中国や北朝鮮などの脅威にこれまで以上にさらされることへの不安の声も上がっている。 元外務相主任分析官で作家の佐藤優さんは、現在沖縄で進行中の基地移転は中止になる可能性があると指摘する。「米軍普天間飛行場の辺野古移設や米軍ヘリパッド建設は地元住民の反対運動が強く、流血事件まで起きています。現実主義のトランプ氏なら、『米軍兵士の居心地が悪い基地なら必要ない』とスパッと中止するかもしれません」 産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久さんは、全面的な撤退は現実的ではないと言う。「トランプ氏は日米同盟堅持を公言しており、米軍全面撤退はありえない。実は日本は『思いやり予算』など、在日米軍の駐留費を年間5000億円以上負担しており、トランプ氏にその事実を説明する必要がある。 一方で、日米同盟はいざという時に米国が一方的に日本を守るが、日本には同様の義務がない、世界でもめずらしい片務的な同盟です。 今後は米国民の不満の高まりとともに、同盟国として公平な軍事的負担を担うため、足かせとなっている憲法9条を改正する動きがトランプ旋風を機に国内でさらに強まるかもしれません」 佐藤さんが指摘する意外な恩恵は北方領土問題だ。「この問題のネックの一つは、日本の施政が及ぶ領域では米軍が活動できることです。ロシアは米軍の動きを警戒しているので、今後トランプ氏が日本固有の問題として領土問題への干渉をやめ、北方領土が米軍の活動地域外となれば、日露間で返還交渉が一気に進む期待があります」 経済面では、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の問題が深刻だ。日本は与党が今国会での関連法案成立を目指しているが、トランプ氏は「大統領の就任初日に離脱する」と断言してきた。外国の輸入攻勢から米国産業を守ることが目的だ。 安倍首相はそれでもTPPに前向きな姿勢を崩していないが、早稲田大学大学院教授の浦田秀次郎さんは「米国脱退でTPPは崩壊する」と言う。「TPPは米国が離脱すれば、発効できない仕組みです。TPPが消滅すれば、アベノミクスが思い描く成長戦略は実現が難しくなる。本来なら外国産の食料品や製品が安くなって消費者が潤うはずでしたが、TPPの崩壊で消費が伸びなくなり、日本の景気に悪影響が出るはずです」 トランプ氏が掲げる“内向き”の経済政策により、一層円高に向かう可能性がある。「輸出産業への依存が大きい日本経済にはマイナス。輸出品が売れなくなりやがて雇用や給料にも影響が出るでしょう」(浦田さん)関連記事■ 『SAPIO』人気連載・業田良家氏4コマ「米軍撤退」■ 大前研一氏 「トランプ大統領なら横田空域の返還求めよ」■ トモダチ作戦の見返りはおもいやり予算1880億円×5年■ 中国でトランプ氏支持者急増!? 現地ファンクラブ管理人を直撃■ 【ジョーク】米国防長官がシリア攻撃計画に関し説明した内容

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    沖縄ヘイトの現実

    「沖縄はゆすりの名人」。基地問題で揺れる沖縄だが、差別と偏見によるバッシングはいまだ後を絶たない。その一方で高江のヘリパッド建設をめぐり地元住民と機動隊が衝突を繰り返している事実を本土の人間はどれほど知っているだろうか。そう、この「温度差」こそが沖縄蔑視の現実なのである。

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    右派の攻撃にさらされる沖縄の新聞の現状

    安田浩一(ジャーナリスト) 辺野古の問題をめぐって緊迫する沖縄だが、地元の新聞に対する右派の攻撃も激しさを増している。地元の記者たちはこの現状をどう捉えて報道を行っているのか。機動隊が住民を暴力的に排除 6月22日、国はついに高江(沖縄県東村)のヘリパッド建設工事を強行した。 現地で取材していた私が目にしたのは、国家権力による剥(む)き出しの暴力である。怒号と悲鳴が響き渡るなか、反対派住民は全国各地から派遣された機動隊員に、文字通り、蹴散らされた。組み伏せられ、顔を地面に押し付けられた者がいた。顔面を殴られた者もいる。両手両足を持ち上げられ、“ごぼう抜き”された女性は、「なぜ、沖縄ばかりがこんな目にあうの」と泣きながら抗議していた。 この日、国は辺野古の新基地建設をめぐっても、沖縄県が是正指示に従わないのは違法だとして、翁(お)長(なが)雄志知事を相手に違法確認訴訟を福岡高裁に起こした。 政府はやりたい放題だ。力で押さえつければ、沖縄は何とかなるとでも思っているのであろう。ヘリパッドの工事現場の出入り口付近で、反対派が設置した車両の上から、機動隊員に排除される男性ら=22日午前、沖縄県東村高江 沖縄は、いつもそうして組み伏せられてきた。国土の0・6%の面積しか持たない島に、全国の米軍専用施設の74%が置かれているのだ。過重負担もいいところではないか。しかもそれは、沖縄が望んで誘致したものではない。押し付けられたものだ。武力で同化を強いられ、戦争に巻き込まれ、多くの県民の命が奪われ、米軍に統治され、基地負担を背負わされた。琉球処分以来、沖縄の立ち位置は変わっていない。 この圧倒的に不平等な本土との力関係の中で「弾除(よ)け」の役割を強いられてきた沖縄は、まだ足りないとばかりに、理不尽を押し付けられている。差別と偏見の弾を撃ち込まれている。しかも、そうした状況を肯定する素材としてのデマが次々と生み出されていく。「沖縄は基地で食っている」「本当は振興資金で潤っている」「沖縄は自分勝手」「ゆすりの名人」──。 うるま市在住の女性が米軍属に殺害された事件でも、ネット上には被害者を愚弄し、沖縄を嘲笑するかのような書き込みがあふれた。「事件を基地問題に絡めるな」「人権派が喜んでいる」。ナチスのハーケンクロイツを掲げて「外国人追放」のデモを行うことで知られる極右団体の代表も、この事件では、あたかも女性の側に非があるかのような持論をブログに掲載した。ツイッターで「米軍基地絡みだと大騒ぎになる」「米軍が撤退したら何が起きるか自明だ」などと発信した元国会議員もいる。これら自称「愛国者」たちは、簡単に沖縄を見捨てる。外国の軍隊を守るべきロジックを必死で探す。なんと薄っぺらで底の浅い「愛国」か。 私が『沖縄の新聞は本当に「偏向」しているのか』(朝日新聞出版)を書いたのも、こうした“沖縄ヘイト”ともいうべき言説を放置できないと考えたからだ。この数年間、ヘイトスピーチの問題を取材してきた以上、避けて通ることのできない問題でもあった。激しさを増す沖縄2紙への “偏向”報道批判激しさを増す沖縄2紙への “偏向”報道批判 直接のきっかけはふたつある。ひとつは2013年1月、沖縄の市町村長や県議たちが東京・銀座でオスプレイ配備反対のデモ行進を行ったときのことだ。日章旗や旭日旗を手にして沿道に陣取った集団が、沖縄のデモ隊に向けて「非国民」「売国奴」「中国のスパイ」「日本から出ていけ」と、あらん限りの罵声をぶつけた。彼ら彼女らは、日ごろから外国人排斥運動に参加している者たちだった。 沖縄の人間を小馬鹿にしたように打ち振られる日章旗を見ながら、沖縄もまた、差別と排他の気分に満ちた醜悪な攻撃にさらされている現実に愕然とした。 ちなみにデモ隊の先頭に立っていたのは当時那覇市長だった翁長雄志氏(現沖縄県知事)だった。翁長氏が政府に対して強い姿勢を見せるようになったのは、この日の光景を目にしたことがきっかけのひとつだといわれている。記者会見する翁長雄志知事 もうひとつは、いまから約1年前だ。自民党の学習会における議員たちと、講師に呼ばれた作家・百田尚樹氏の発言である。「沖縄の特殊なメディア構造をつくったのは戦後保守の堕落だ。左翼勢力に完全に乗っ取られている」「沖縄の新聞はつぶさないといけない」 以前から存在した沖縄メディアに対する〝偏向報道批判〟が蒸し返されたのだ。 メディアを叩くことで、戦後の日本が少しずつ勝ち取ってきた人権意識を覆そうとする動きが広まっている。しかも、攻撃の担い手はいわゆるネトウヨと呼ばれる者たちだけではなく、国家権力のど真ん中にも生息する。そうした者たちにとって、政府への批判を躊躇(ちゅうちょ)することなく紙面で展開することの多い沖縄2紙(「琉球新報」「沖縄タイムス」)は、まさにつぶすべき「敵」だった。わかりやすい標的だった。〝偏向報道批判〟と沖縄ヘイトは同じ文脈の上に成立している。 私はこれを機に沖縄へ通うようになる。国会議員や一部世論から「敵」として認知された新聞記者たちの生の声を聞きたかった。そして同時に、地方におけるメディアのあり方と、様々な攻撃にさらされる沖縄の内実を知りたいと思った。沖縄で生きる記者たちの姿を通して、沖縄の姿をも浮き彫りにしたかったのだ。 最初に訪ねたのは「琉球新報」編集局次長の松元剛氏だった。私にとっては数少ない沖縄紙の知り合いだった。 このとき〝百田発言〟から、まだ1週間と経っていない。当然ながら、松元氏は憤っていた。「つぶせ」と言われたことだけではない。自民党議員から、沖縄をめぐるメディア構造と県民世論が「歪んでいる」と言われたことに腹を立てていた。 「沖縄県民が地元紙に影響され、いや、マインドコントロールされ、〝歪んだ〟世論ができあがっているかのような言説が飛び交うことに、心底、あきれました。暴論もいいところですよ。いうなれば、沖縄県民には主体的な判断能力がないと見下すようなものです。県民をなめている。県民を愚弄し、侮辱するものです。我々の側にだって、世論をコントロールしてやるなんて意識はないですよ。そんな傲慢(ごうまん)な姿勢があれば、とっくに読者から見放されているはずです」 その通りであろう。〝新聞離れ〟は沖縄だって例外ではない。地方紙に県民意識をコントロールできるくらいの力があるのならば、そもそも読者を逃がすことはない。「結局、いつだってそうなんです。沖縄で何か問題が発生し、それが政府の思惑通りに進まないと、必ずといってよいほど同じような言説が流布される。つまり、自らの危機感を沖縄の新聞批判にすり替えることで、民意を矮小化するといった手だてですよ」。そのうえで松元氏はいくつかの事例を示した。政治家や右派論客の激しい攻撃政治家や右派論客の激しい攻撃 「沖縄のメディアが言ってることが県民すべてを代表しているわけではない」12年12月、自民党国防部会でこう発言したのは、同部会に所属していた小池百合子氏だった。小池氏は防衛担当相時代の06年にも「沖縄とアラブのマスコミは似ている。超理想主義で明確な反米と反イスラエルだ。それ以外は出てこない」「往々にして現実と遊離しがちで、結果として問題に直面すると、オールオアナッシングに陥ったり、大衆行動に頼るだけになってしまう」と講演で述べた〝前科〟もある。小池百合子氏 95年の少女暴行事件の後、当時の太田昌秀知事は米軍用地の提供に関連する代理署名を拒んだため、政府は自治体が協力を拒絶した場合でも国の権限で基地が継続使用できるように、米軍用地特措法を改定した。その際におこなわれた衆院安保土地特別委員会で、政府側参考人として呼ばれた田久保忠衛杏林大教授(当時)は次のように述べている。「この二つの新聞(※琉球新報と沖縄タイムスのこと)は、はっきりいって普通の新聞ではない。これをきちっと批判すべきだ」 また同じ委員会で新進党議員(当時)の西村慎吾氏は「沖縄の心がマインドコントロールされている。言論が封殺されている」と話した。周辺事態法などで国会が揺れていた00年には自民党幹事長(当時)の森喜郎氏がやはり「沖縄の新聞は共産党に支配されている」などと地元金沢の講演で発言している。14年11月には安倍内閣の応援団を自称する評論家の櫻井よしこ氏が、豊見城市で「沖縄のメデイアは真実を伝えてきたか?」と銘打った講演をおこなった。 以下はその際の発言である。「『朝日新聞』は悪い新聞です。慰安婦のことで大嘘をついて、福島第一原発の吉田所長のことでも大嘘をついていました。それと同じくらい悪いのが『琉球新報』と『沖縄タイムス』です」。「『琉球新報』、『沖縄タイムス』の記事は『日本を愛するという気持ちはない』としか読めない」。櫻井氏はそのうえで沖縄2紙の「不買運動」も呼び掛けたのであった。 もちろん「百田発言」以降も、ことあるごとに沖縄のメディアは攻撃の対象となっている。今年5月、東京都内で開催された沖縄県祖国復帰44周年記念集会で、神奈川県議の小島健一氏(自民党)は、次のように発言した。「沖縄には琉球新報と沖縄タイムスという、あきらかにおかしな新聞社が2社ございます。これ、つぶれろと言って非難を浴びた有名な作家もおられますが、これは本当につぶれたほうがいいと思っています」 さらに小島氏は沖縄の基地問題に言及したうえで次のように続けた。「基地反対だとかオスプレイ反対だとか毎日のように騒いでいる人がいます。これを基地の外にいる方ということで『きちがい』と呼んでおります」。県議の看板を背負ったものとは思えぬ、下劣な暴言だった。「琉球新報の人間には部屋を貸さない」という大家「琉球新報の人間には部屋を貸さない」という大家 だが、これはけっして突出した発言だったわけでもない。社会の一部にはいま、こうした空気が確実に流れている。今年春、「琉球新報」の新垣毅記者は文化部編集委員から東京支社報道部に異動した。異動に先立ち、部屋探しのために上京したのは3月上旬のことである。支社への通勤に便利なマンションを見つけ、会社と提携している不動産業者に入居を申し込んだ。 その翌日──不動産業者から電話がかかってきた。「大家が入居を拒んでいます」。理由を尋ねる新垣に、不動産業者は恐縮しきった声でこう告げた。「琉球新報の人間には貸したくないと言ってるんです」 新垣記者は、大家の対応は「琉球新報」への悪感情というよりも、「沖縄そのものへの嫌悪のようにも思えた」と言う。20世紀初頭、沖縄からの出稼ぎ者が多かった関西では、「琉球人、朝鮮人お断り」の張り紙を掲げるアパートが珍しくなかった。新垣記者には、こうした時代の風景が二重写しとなる。拙著の取材で、「沖縄タイムス」編集局長の武富和彦氏は「単なる新聞批判であれば、まだいい。本当に腹立たしいのは、新聞批判に見せかけて、実は事実関係を無視した沖縄攻撃が繰り返されていることだ」と答えた。 同紙は「百田発言」に際しても「新聞をつぶせ」よりも、「普天間飛行場はもともと田んぼの中にあった。あとから商売のために人が住み着いた」といった言葉を問題視した。記事では普天間の歴史を概観したうえで、〈沖縄戦で住民は土地を強制的に接収され、人口増加に伴い、基地の周辺に住まざるを得なくなった経緯がある〉と、事実関係の誤りを正した。「そこは絶対に譲ることができないんですよ。冗談であったとしても、はずみで飛び出した軽口であろうが、我々はとことんこだわります。そうでなければ沖縄で新聞をやってる意味がない」講演する作家の百田尚樹氏=2月27日、京都市左京区の国立京都国際会館 さらに「偏向」を指摘されることに対しては次のように話した。「一方に大きな権力を持つ者たちがいる。もう一方に基本的な人権すら奪われた者たちがいる。その不均衡をメディアはどう報じるべきなのか。そのとき権力と一体化して奪われた者たちを批判するのであれば、それこそ恥ずべき偏向だと思うんですよ。一方的に奪われた者たち、発言の回路を持たない者たちの側に立って、あるべき均衡を取り戻すことがメディアの役割ではないでしょうか」 以来、私は沖縄紙の記者たちに問い続けた。 なぜ、基地の問題にこだわるのか──。「すべての事象が基地につながるから」。私が接した多くの記者がそう答えた。沖縄で取材を続ければ、なにを追いかけていても、必ず基地と戦争にたどり着く。避けることはできない。事件記者も、政治記者も、経済記者も、島を分断するように張り巡らされたフェンスの前で立ち止まる。いや、立ち止まらざるを得ない。社会の隅々に、生活のあらゆる場面に、基地の存在が重くのしかかる。戦争の記憶が染みわたっている。 だから書かざるを得ない。無視することなどできない。地元の記者が書かずして、いったい誰が書くというのだ。基地問題に触れずに済むのであれば、むしろそうであってほしいと、記者の多くが望んでいた。「取材したいことはほかにも山ほどある」と若手記者は訴えた。現実と格闘しなければならない記者 「基地問題に追われ、視界に映ることのなかった問題もあったかもしれない」とベテラン記者も嘆いた。基地問題をやりたくて沖縄紙に入ったという者は、実はそれほど多くはなかった。一部の記者は、こっそり私に打ち明けた。家の近所だから就職を決めた女性記者がいて、寒いところが嫌いで南の果てを選んだ県外出身の記者がいて、大手マスコミの入社試験に落ちまくり、たまたま合格したのが沖縄紙だったという記者がいる。 しかし記者として取材に動けば、基地はいつも目の前に立ちふさがる。目をそらしたって、戦闘機の爆音は耳に飛び込んでくる。沖縄で記者をするというのは、そういうことだ。かつて沖縄には数多くの新聞が存在した。「保守」を掲げる新聞もあった。激しい競争のなかで生き残ったのが、「琉球新報」と「沖縄タイムス」の2紙だった。それが県民の選択である。 ある若手記者は私にこう打ち明けた。「本当は貧困の問題を追いかけたい。なかでも子どもの貧困問題は深刻です。基地によって、そうした切実な風景までかすんでしまうのが、たまらなくつらい」 だが、貧困問題を追いかけていても、突き詰めていけば基地にぶち当たる。日本が高度成長を謳歌しているときに、沖縄だけが取り残された。日本国憲法でさえ及ばなかった時期がある。成長よりも安保が優先されてきた。その「遅れ」が、いまでも経済の「足枷(かせ)」となっている。「だから、沖縄ではすべての問題が基地と地続きなんですよ。この島で新聞記者をしていれば、いやでもその現実と格闘しなければならないのです」 地域に寄り添って生きていくのが地方紙の役割であるのならば、沖縄紙はその役割を忠実に果たしているにすぎない。中央に偏った視線では、それが「偏向」に映るのであろう。沖縄紙は「偏っているのはどちらか」と問い続けているのである。 ちなみに冒頭で記した高江のヘリバッド工事強行について、沖縄2紙は当日に号外まで発行して国の横暴を訴えた。翌日朝刊の紙面は当然、現地発の記事で埋められている。同じ日の「朝日新聞」──一面トップに掲げられた大見出しは「ポケモンGO 興奮上陸」だった。

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    「ヤンキーゴーホーム」はヘイトではない! 高江で見た基地問題の本質

    有田芳生(参議院議員) 沖縄県東村高江に行く車中にあっていささか気が重かった。高江とはオスプレイのためのヘリパッド建設が進められている土地だ。「標的の村」というドキュメンタリー映画にもなったように、辺野古とともに基地問題の最先端である。那覇から車で3時間あまり、その日は台風13号が発生し、強風がサトウキビの茂みを激しく揺さぶっていた。 やがて「N1裏」と呼ばれているブルーのテントが見えてきた。車を降りてテントに入ると、昼どきだったので、食事を配る人たちが忙しく動いている。テントの端っこにはじっと座っている高齢者たちがいた。あとで聞けば普天間飛行場がある宜野湾市から支援にやってきた人たちだった。この日も逮捕者が出たので、責任者の山城博治さんは抗議のため警察署に向かったので不在だった。高江の工事現場には沖縄県警だけでなく、警視庁をはじめ、全国から警察官が動員されている。そういえば高江に向かう道すがらすれ違った警察車両のナンバーは、「なにわ」「川崎」「多摩」などであった。この日、運転速度が遅いことを理由に女性とトラブルになり、警察官がのけぞったため公務執行妨害だとして女性を逮捕したのは福岡県警だった。ヘリパッド建設反対派の集会で話す山城博治さん(左手前)=7月23日、沖縄県東村高江 この女性は名護署から翌日釈放されるのだが、私がテントに行ったとき、短い報告集会が行われることになった。案の定、私の危惧は当たった。国会議員として挨拶を求められたのだ。そしてこんな趣旨を語った。永六輔さんは沖縄から東京はよく見えるが、東京から沖縄は見えないと何度も言っていた。作家の井上ひさしさんが「砥石としての沖縄」と書いたのは、政治家だけでなく、日本人それぞれの思想が沖縄を通して問われているという意味でしょう。拍手が起きたのは次のくだりだった。民進党の代表選挙がいま行われているが、ここで見たこと、聞いたことを3人の候補者に対して質問状として出すことにします……。私のあと米軍の退役軍人が挨拶をした。雨風が強まるテントのなかで、高江で続く基地反対運動についてある男性から説明を受けた。あとで聞けば普天間飛行場の騒音被害の責任を問う裁判を30年も続けている原告だった。私が「気が重い」というのは、こうしたことだった。辺野古にしても高江にしても、沖縄戦をはじめとして、沖縄の闘いと暮らしを重ねる歴史的経験もせず、何かを語ることに後ろめたさがあるからだ。 国会議員である以上は国政にかかわる課題について求められれば語らなければならない。集会があれば、さっと顔を出して挨拶しては次の会合へ、さらに次の会合へと出かけていくような議員にだけはなるまいと自覚をしてきた。重心を低くしなければならないと思っているからだ。だから辺野古や高江について語るにしても、抑制的でなければならない。これまでも、これからもそのスタンスを変えないだろう。地元選出議員ならいざ知らず、沖縄問題が世界のすべてであるかのように語るならばバランスを欠くだろう。しかしそれが政治家なのかも知れないとも思ってしまう。結論からいえば自分は自分なりのスタンスで行動し、主張していけばいい。落ち着くところはそんなところだ。民進党新代表は辺野古移設やヘリパッド建設に反対するのか おりしも民進党の代表選挙が続いていた。私は3人の候補者に沖縄問題で質問状を出した。高江でじっと座り続けるお年寄りたちの語らずとも心に秘めたそれぞれの思いを森住卓『沖縄戦   最後の証言   おじい・おばあが米軍基地建設に抵抗する理由』(新日本出版社)から驚きをもって感じとったからだ。基地反対運動の背景には重い歴史が横たわっている。 普天間飛行場の辺野古移設やオスプレイのヘリパッド建設に反対するのかどうか。野党第一党の民進党の新代表候補者はどんな立場を、いかなる論理と言葉で表明するのか。一般論だが、たとえ「正しい」政策を語っても、それを口にする身振りや言葉遣いで認識の深さや軽さ、あるいは嘘さえ見えてくるものだ。表現が身体から分離していれば、それは行動という現実によっていずれ必ず剥がされていく。 沖縄の基地問題は日本で唯一の地上戦を体験した歴史を生身の人間と重ねて理解しなければならないのだ。余談だが米軍基地問題に取り組む者が「ヤンキー、ゴーホーム」と叫ぶのは、歴史的に堆積した沖縄の歴史と生命にかかわる個人史が重なっているのである。この言葉をヘイトスピーチだと批判する者は、概念的な無理解とともに国会での議論にも眼を逸らしている。  米軍基地反対運動などで「ヤンキー、ゴーホーム」と主張することは、政治的な目的でなされるものであり、差別的意識を助長・誘発する目的でなされたものではないから、ヘイトスピーチ解消法にある「不当な差別的言動」の定義にはあたらない。 ともあれ沖縄の基地問題は、本質的には戦争と結びついており、さらには自然破壊でもあることに、もっと敏感になっていい。琉球処分を歴史の出発点として、沖縄戦のあまりにも痛ましい悲劇、さらには本土復帰後の米軍犯罪や事故などを総体としてヤマト(本土の日本人)は受けとめなければならないだろう。辺野古移設にしても高江への強硬的なヘリパッド建設にしても、沖縄県民の民意ではないからには、必ず失敗する。問題の核心は沖縄の歴史のなかで基地問題の「第三の道」を探ることなのである。アメリカ政府に軍事戦略の変更を求める外交交渉を行うなかで、グアムやテニアンなどに辺野古基地を移転させる道を探ることこそ、現実的な解決策ではないだろうか。おりしもこの原稿を推敲しているのは、民進党の代表選挙が行われた当日である。予想どおり蓮舫さんが新代表に選ばれた。辺野古移設を堅持すると討論会で発言していた蓮舫さんは、私には「民意を無視した強硬には反対」と語っていた。それが本音なら辺野古移設も高江ヘリパッド建設も現実的でないことは明らかだ。政治家と政党にとって沖縄は試金石なのである。(2016年9月15日夕刻記)

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    「沖縄に関心がない」東京のメディア 地元紙が痛感した温度差

    宮城栄作(沖縄タイムス東京報道部長)―沖縄の高江でヘリパッド建設をめぐって住民と機動隊とが激しく闘っていることが、SNSなどで漏れ伝わってきます。でも在京のメディアではそう頻繁に報道されないため、東京では「高江」といっても知らない人が多い。そういう沖縄と本土の温度差をどう考えるのか、沖縄の地元紙はどんな取材・報道を行っているのかお聞きします。 まず高江での取材ですが、地元紙は現場に張り付いて取材しているようですが、東京からマスメディアが取材に行っているという状況ではないわけですね。筑紫哲也さんが健在だった頃の「NEWS23」とか、昔は在京メディアももっと沖縄を取材していたような気がしますが。宮城 東京からメディアが取材のために頻繁に高江へやってくるという状況ではないと思います。沖縄のことを報道するのも、例えば自衛隊のヘリコプターが資材の搬送に使われたとか、そういう大きな動きがある時だけでしょう。それもテレビは地元の系列局が取材した映像を使っているのではないでしょうか。キー局からわざわざ取材に来るというのは、テレビ朝日の『報道ステーション』とTBSの『報道特集』の金平茂紀さんくらいじゃないですか? それは、沖縄をめぐる構図というか、沖縄についての認識をどう持つかということだと思うんですよね。私たち地元紙は、過重な基地負担がある上に、更に住民の生活が大きく脅かされようとしていることについては、地元の人の生活や人権、また地方自治に関わるという普遍的な価値の問題として捉えているわけです。ヘリパッド建設に反対する人々を規制する警察官ら=7月22日、沖縄県東村高江―沖縄の地元紙2紙は、いま高江に連日、現地取材を行っているわけですね。宮城 毎日行っています。朝6時頃から、一人は必ず現場にいるようにしています。そしてツイッターとかで現場から状況を発信しているんです。取り組みはどの部署というより編集局全体でやっています。ローテーションを組んで、今日は何部が行く、明日は何部が行くと毎日、現場に行っているんです。北部支社もありますし、中部支社もあるので、そこから行く記者もいるし、那覇から行く記者もいます。 高江は地理的にも那覇から遠いですから移動も大変です。それでもやはり反対する市民たちがいて、警察や機動隊とやりあっているわけですから、その現場で起こっていることを伝えるのは地元紙としては当然の務めです。 8月20日にその現場に行っていた記者を機動隊が拘束し、車と車の間に押し込んで取材妨害するという事件が起きました。腕章をつけ、記者証も示して、取材活動であることを告げているのに拘束されたわけです。不要な土地を返し、機能強化した施設を得ようとする米国宮城 機動隊の車両と車両の間に市民を押し込めていくというのは以前からやられていて、現場では「仮監獄」とも言っています。2012年のオスプレイ配備の時にも、普天間飛行場のゲート前での抗議行動に対して市民を車両と車両の間に押し込めるというやり方をしていました。 記者証を示した記者に対してそういうことをやるというのは、やはり現場で抗議行動が起きていることを報道させない、県民とか国民の目に触れさせないという狙いもあると思います。 この取材妨害については、新聞労連や沖縄県のマスコミ労協などから抗議声明が出ました。東京新聞も特報面で取り上げたし、信濃毎日や高知新聞も社説で批判しましたね。 生活が脅かされることに対して、沖縄の住民が、あるいは支援する市民が立ち上がるというのは、1950年代に「島ぐるみ闘争」というのがありました。米軍が沖縄に基地を作るために住民の土地を強制的に奪っていったのですが、抗議する住民に対しては投げる蹴るで規制し、奪った土地に入って耕作しようものなら、銃も打ったりして排除したんですね。規模は違いますけれど、今それと同じようなことを、日本政府側が機動隊を使ってやっているのだといえます。 今回日本政府もアメリカ政府も、高江にヘリパッドを新しく作れば、7500位ヘクタールある北部訓練場の、過半、4000ヘクタールを返す、大規模返還になると言うわけですね。もともと半世紀以上前に奪って使ってきた土地なんですけど、アメリカの「戦略展望」という報告を見ると、その4000ヘクタールは、アメリカにとっても不要な土地なんです。それを返すから、新しいヘリパッド建設を受け入れよというわけです。 不要な土地を返して、機能強化した施設を得るというのが、アメリカの狙いなわけです。それを日本政府も一緒になって、大規模返還だという。高江のヘリパッドから海に出入りする訓練水域とかも新しく提供されていますし、訓練しやすい環境を整えて、いらなくなった土地を返す。そういう狙いがあるわけです。 ヘリパッドも高江の集落から一番近いところで3~400メートルのところにできるわけですから、付近の住民からすると大変だと思います。自然環境も破壊されれば住環境も影響を受ける。それに対して反対し、住民の暮らしを守りたいという思いは当然じゃないかと思います。そこをどう捉えるのか。 東京などであまり報道されないのは、沖縄の人は我慢したらという意識が何処かにあるのではないかという疑念を持つこともあります。そういうところが沖縄の人からすると、見え隠れする。何の問題なのかというのをしっかり押さえないと継続的な報道にならないし、現状を変えていくことにならないと思います。身近な「基地問題」を取り上げるのは当然―宮城さんは現在は東京支社にいるわけですが、沖縄の地元紙として東京のメディアを見ていて、関心とか動きが鈍いと感じますか?宮城 そこは難しいんですけどね。翁長知事の誕生以後、以前よりは取り上げられるようになったと思います。全国紙でも沖縄のことをよく知っていて、しっかり取材して書く記者はいるんです。でも、扱いが小さくなってがっかりするという声が多いですね。なぜ全国紙や中央のメディアで沖縄の報道が難しいのか、沖縄のことが伝わらないのか、検証してみる必要がある気がします。沖縄はいま刻一刻動いていて、新しい局面もどんどん出てきているんだけど、東京だと、また沖縄か、また反対しているとかいうようなことで、「ああいつものね」という感じになっているようなのですね。 沖縄についての報道が大きくなるのは政局が絡んだりする時です。同僚の記者が言っていましたけれど、辺野古をどうするか、辺野古がどうなるかじゃなくて辺野古でどうなるか。どうなるという対象は辺野古の住民じゃなくて、政権がどうなるか、だというのです。 だから去年の「沖縄の2紙はつぶさないかん」という百田発言の時も、全国紙の出足は最初遅かったけれど、その後、結構やりましたよね。あの時は安保法案が問題になっていた。辺野古をどうする、辺野古がどうなるではなくて、それによって政府がどうなっていくという話でしょう。やはり沖縄の問題を一面的にしか見ていないという印象は受けます。 今年9月1日の辺野古をめぐる裁判だって、一地方の問題でなくて、地方自治の話であったり、国と地方の関係であったりというような、大きな問題だと思うのですが、中央のメディアはなかなかそうなっていないような気がします。 沖縄と本土の温度差というのがよく指摘されますが、私が沖縄本社社会部から東京支局に来て最初に思ったのは「こんなに沖縄のことを知らないのか」ということでした。「知らない」というより「関心がない」と言うべきでしょうか。 それまで2年間、社会部にいて、オスプレイの配備に始まり、仲井眞さんの埋め立て承認とか、そういうことばかり取材してきたので、東京に来た当初は、その違いに驚きました。「日米安保は大事だけれど、米軍基地は近くにない方がいい」「沖縄にあるんだから、沖縄にがんばってもらった方がいい」というような雰囲気を感じました。 沖縄の人にとって身近な問題は基地問題であり、基地が集中することに絡むいろんな問題です。それが紙面において大きな分量を占めるのは、地方紙として当然ではないでしょうか。例えば福島の地方紙2紙が原発の問題をたくさん取り扱うのは当たり前で、やはり読者が一番身近に感じていること、命や暮らしの問題を報道する役割が地方紙には当然あり、紙面の価値判断も大手メディアとは違ってくると思うんです。 沖縄の場合、過酷な沖縄戦があって、その後の人権もないような米軍支配があって、復帰してもなかなか変わらない現状があり……といったことを考えると、そういう問題のウェイトが高くなるのは必然なのかと思います。―それが沖縄の2紙の特徴なのですね。宮城 保守的な新聞や親米的な新聞も含めて、戦後沖縄には10紙くらい新聞ができました。アメリカの検閲があり、紙の供給も握られているわけですから、沖縄タイムスにしても、当初はなかなか今のように米軍に対して厳しい論調でなかったようです。その後、1950年代の土地闘争の頃、土地の接収方針に反対する住民の意見を前面に出すような紙面展開をするようになります。 そういう厳しい現実の中で、ここまで論調を鍛え上げてきたのは、やはり民意に押されたのだと思います。結局10紙のうちほとんどはなくなってしまい、今この2紙が残っているわけです。もちろんそれは沖縄本島での話です。 沖縄の復帰までの歴史というのは、自治権にしろ、人権にしろ、米軍と対峙しながら一つ一つ住民が勝ち取ってきたものです。そういう中で、沖縄タイムスも住民に背中を押されてここまで来たのだと思います。住民に支持されなかったら他の新聞と同じように消えていったはずです。沖縄の歴史、住民感情に理解した報道を沖縄の歴史、住民感情に理解した報道を―辺野古の問題の捉え方なども、東京と沖縄では違っていると感じましたか?宮城 はい。東京へ来てからは、沖縄の問題については、一から説明しないといけないんです。別に、誘致して基地ができたわけでもないし、そもそも海兵隊って50年代に岐阜とか山梨とかから移ってきたものだし。今で言うと「海兵隊って、本当に抑止力になってるんですか」というところまで含めて説明します。 そもそも何度世論調査を行っても、沖縄の人は現状に反対なわけです。辺野古移設については、沖縄世論は少ない時でも6割、多い時には8割以上が反対だし、「県外へ」という機運が強くなってきたわけです。我々がリードしているんじゃなくて、県民世論がそうだというので、これに立脚しない報道がありうるのかということですよね。過去の沖縄がたどってきた歴史も含めて、本当に虫けらみたいな、人権もないような時代もあったんですから。僕らの世代も、入社して、勉強して沖縄の特異な歴史の重みを理解し、誰のために何を報道するかを考え、認識を深めてきたのです。 今の翁長知事が那覇市長の時、2013年1月に東京でパレードをしているんです。オスプレイ配備の撤回、普天間の県外移設、閉鎖ということを、全首長、市町村とかが署名して、建白書というかたちにした。そして、日比谷公園で集会を開いて、総理官邸に持って行き、パレードもやっているんです。その時に、沿道から「売国奴」とか、ものすごい罵声を浴びせられたんです。「安全保障の問題だからお前たちは黙っていろ」「それに反対するのはシナの手先か」といった罵声ですね。あれは、沖縄の人が本土との溝を痛感した出来事じゃないでしょうか。この圧力が、近年ひどいですよね。 沖縄の人からすると、本土紙の扱いが冷たいなと感じることがあるんですが、それも歴史的経緯に根差しているものだと思います。私たちは住民に押されて、あるいは住民の意見に立脚して紙面を作ってきていますが、本土の新聞はどちらかと言うと両論併記、あるいは扱いが小さい。どこかで「基地は沖縄に置いておけばいい」という考え方が基本にあるからだろうと思います。 沖縄の視点や感情は、突然生まれたものではありません。そこを体系的に理解してあたらないと、県と政府が対峙した局面になると、「落としどころは」というふうな取材に変わり、何も解決されない、「やはり沖縄に」という悪循環になります。 基地問題では、沖縄の人から見れば「なんで沖縄だけなんだ」と思ってしまう。戦争で捨石にされて、その後は米軍に差し出されて、みたいな過去の記憶がありますよね。過重負担だと言って負担を軽減してくれと言っているにも関わらず、同じ状況がずっと続いている。それが差別感みたいなところで捉えられる。逆に言うと、「沖縄問題」と言われながらいろいろな問題がずっと解決されないできている、そういう現状の裏返しではあると思うんです。(月刊「創」2015年9・10月号のインタビューを大幅に加筆しました)

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    「小さな声が消えてしまう」大手メディアが伝えない高江

    森達也(映画監督、作家) この原稿を書いている現在の日付は8月20日午前9時20分。場所は沖縄那覇市栄町のホテルの一室だ。『FAKE』公開初日の舞台挨拶のため、那覇空港に着いたのは一昨日の夜。上映館である桜坂劇場支配人の下地久美子と居酒屋で軽くオリオンビールと泡盛を飲んでから(初めて食べるイカスミの雑炊がおいしかった)、仮眠をとって2時半に起床。3時にホテルまで迎えに来てくれたのは、三上千恵監督のドキュメンタリー映画『戦場ぬ止み』の助監督で撮影も担当した桃原(モモハラではなくトウバルと読む)英樹と桜坂劇場スタッフの水野詩子。映画第一作『標的の村』で高江を撮った三上監督は、第三作の重要なエリアとして、現在は再び高江を撮っている。ゲート前は多くの反対者で埋め尽くされた(筆者撮影) とここまでを書いたところで、読者は「高江」を知っているだろうかと気になった。読みはタカエ。恥を覚悟で白状するが、7月の段階で僕は知らなかった。というか忘れていた。「舞台挨拶の前に高江に行きませんか」と『FAKE』プロデューサーの木下繁樹に電話で言われたとき、「高江ってどこですか?」と思わず訊き返して絶句させてしまった。さすがに「ヘリパッド問題で住民たちが…」と説明されかけて、『標的の村』の主要な舞台になった地域だと思いだした。「私は高江をあきらめない」 沖縄のヤンバルとよばれる亜熱帯森林に位置する高江は、160人ほどが暮らす小さな集落だ。この集落を囲むように米軍のヘリパッドを6つ作る工事が始まり、反対する住民は工事現場の入り口で、非暴力の抗議活動として、もう何年も座り込みを続けている。以下は『標的の村』パンフレットからの引用だ。 日本にあるアメリカ軍基地・専用施設の74%が密集する沖縄。5年前、新型輸送機「オスプレイ」着陸帯建設に反対し座り込んだ東村・高江の住民を国は「通行妨害」で訴えた。反対運動を委縮させるSLAPP裁判だ。わがもの顔で飛び回る米軍のヘリ。自分たちは「標的」なのかと憤る住民たちに、かつてベトナム戦争時に造られたベトナム村の記憶がよみがえる。10万人が結集した県民大会の直後、日本政府は電話一本で県に「オスプレイ」配備を通達。そして、ついに沖縄の怒りが爆発した。 2012年9月29日、強硬配備前夜。台風17号の暴風の中、人々はアメリカ軍普天間基地ゲート前に身を投げ出し、車を並べ、22時間にわたってこれを完全封鎖したのだ。この前代未聞の出来事の一部始終を地元テレビ局・琉球朝日放送の報道クルーたちが記録していた。真っ先に座り込んだのは、あの沖縄戦や米軍統治下の苦しみを知る老人たちだった。強制排除に乗り出した警察との激しい衝突。闘いの最中に響く、歌。駆け付けたジャーナリストさえもが排除されていく。そんな日本人同士の争いを見下ろす若い米兵たち……。 (中略)沖縄の人々は一体誰と戦っているのか。抵抗むなしく、絶望する大人たちの傍らで11才の少女が言う。「お父さんとお母さんが頑張れなくなったら、私が引き継いでいく。私は高江をあきらめない」。奪われた土地と海と空と引き換えに、私たち日本人は何を欲しているのか? 那覇から車で2時間半。まだ日が昇らない時間に高江に着いた。片側一車線の狭い村道は、ぎっしりと並んだ車で渋滞状態だ。 ヘリパッド建設予定地へと続くゲート前は、多くの反対者たちで埋め尽くされている。正直なところ数十人くらいだろうと思っていたので、予想をはるかに上回る数だ。ゲートの周囲には多くの警察官や警備員たちが、じっと一点をにらみながら立ち尽くしている。傍にいた男性(職業は漁師だという)に、県外から多くの人たちが来ているとの説もあるけれど?と訊けば、しばらく周囲を見渡してから、「今日は、おじいとかおばあとか、半分以上が沖縄の人たちですね」と答える。「もちろん、県外から来ている人もいます。でもそれ自体は、別に問題ないと僕は思っています。ただ時おり、例えば安倍首相や自民党を激しく罵倒するような人がいて、それはちょっと温度差を感じます。この運動は、民主党政権の時代から続いていますから。むしろ地元のおばあたちのように、静かで平和な生活を続けさせてください、とお願いする姿勢のほうが、僕たちの本音だし重要なのだと思っています」 もちろん運動の目的を達成するためには、こうした牽引も必要だ。それは否定しない。でも過激な思想は移り気だ。硬直する。持続するためには、小さな声を届けることが重要だ。大手メディアが報じない沖縄 僕が行ったその日の状況を、新聞記事は以下のように伝えている。 約400人が抗議の声 車両180台がメインゲートに集結 北部ヘリパッド建設【ヘリパッド取材班】東村から国頭村に広がる米軍北部訓練場の新たなヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設に反対する市民ら約400人は19日午前6時半すぎ、同訓練場のメーンゲート前でN1地区ゲートへの砂利搬入に対する抗議集会を始めた。市民らは午前5時すぎ、約180台の車両で車列を組み、東村平良の村役場付近から同訓練場のメーンゲートに向けて徐行運転で移動した。市民らはゲート付近に車を止め、メーンゲートを完全に封鎖する形で座り込んでいる。 午前7時半現在、機動隊による県道70号の封鎖や検問、砂利を搬入するトラックの車列は確認されていない。 集会は参加者全員が腕を組み、「座り込めここへ」など2曲を合唱し始まった。沖縄平和運動センターの山城博治議長は「これから本格的な建設工事が始まると予想される。だが来年2月まで工事が長引けば、ノグチゲラの営巣期間で4カ月の中断を余儀なくされる。週2回は拡大した抗議行動を行い、完全に砂利の搬入などを止め、工事を長引かせて中断に追い込もう」と述べ、今後の運動を提起した。その後、参加団体の代表が次々にあいさつした。 これは地元の琉球新報だ。でも朝日や読売など大手新聞の記者は現場にいない。だから沖縄以外の地で暮らす多くの人は、この状況どころか、高江という地名すら知らない。この翌日には、現場で取材していた琉球新報と沖縄タイムスの記者2名が警察に拘束されるという事態まで起きたのに、大手メディアはほとんど報じない。住民を排除しようとする自衛隊 競争原理に煽られたマスメディアは、情報をわかりやすく刺激的に加工するために、四捨五入を加速させる。その帰結として、小さな声が消えてしまう。残るのは大きな声ばかりだ。 三上の映画も含めて、吐息やつぶやきを届けるジャンルが重要だ。つまりドキュメンタリー映画。別にマスメディアを補完するために存在しているわけではないけれど、その機能はより重要になっている。 住民を排除する沖縄県警や警備会社の隊員の多くは、なかなか就職先を見つけられない地元の若者たちだ。彼らもつらそうだ。もしも傍に近づいたなら、微かに歯軋りの音が聞こえるかもしれない。吐息やため息を洩らしているかもしれない。 指示を下す人たちは現場には来ない。沖縄問題の根源はここにある。 ちょうどこの頃、マリオの格好をした安倍首相はリオの競技場で、まばゆいライトを浴びながら世界に向けて嬉しそうに手を振っていた。オリンピックの主体は開催する都市と参加する選手たちだ。国家の出る幕じゃない。思わずそうつぶやいたけれど、これもまたこの国では、小さな声として処理されるのだろう。もり たつや 映画監督、作家。映画「A」「A2」監督。著書『A3』(集英社)、『チャンキ』(新潮社)など。

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    カメラが映した「辺野古」と「高江」 2人の映画監督が見た現実

    藤本幸久、影山あさ子(映画監督) 沖縄の辺野古と高江で激しい攻防が続いている。現地に泊まり込みでカメラを回し続けている森の映画社の共同監督2人が、大手メディアを含む現場での取材状況を語った。 都内の映画館「ポレポレ東中野」に森の映画社の藤本幸久さんと影山あさ子さんを訪ねた。二人が共同監督を務めたドキュメンタリー映画「圧殺の海 第2章『辺野古』」の話を聞くためだった。この映画の前作「圧殺の海」は2014年7月の辺野古の新基地建設着工から11月の翁長知事誕生までを撮ったものだが、今回の作品はそれ以降、今年3月4日の代執行訴訟の和解までを撮影したものだ。 地元住民がゲート前で反対運動を繰り広げたり、カヌーを繰り出して海上で抗議行動を行う攻防戦を至近距離から撮影した迫力ある映像だ。カヌーからの撮影者がカメラもろとも海に投げ出され、突如画面が水中の映像に切り換わる場面もある。  この第2章の上映が続く間も、藤本さんたちは沖縄でカメラを回し続け、第3章を撮影していた。さらに沖縄本島の高江のヘリパッド建設予定地をめぐる反対運動も撮影しており、それは「高江―森が泣いている」というタイトルで9月20日から大阪で公開され、10月からは東京でも上映される。通常、ドキュメンタリー映画は撮影終了から公開まで半年以上かかると言われるが、緊迫の度合いを強める沖縄の実情を少しでも早く多くの人に伝えたいという思いで、藤本さんたちは、第2章の自主上映を全国に広げると同時に次回作を緊急上映するというスケジュールを組んだ。激しく揺れ動く沖縄を撮り続ける藤本さんと影山さんに、現地での取材状況を聞いた。沖縄北部「高江」に機動隊が大量投入 藤本 私たちは2014年7月1日の辺野古着工からほぼ毎日、辺野古を撮影しながら、上映・宣伝も自分たちでやってきました。当初は3月の和解の後、最高裁の判決が確定するまでは、少し時間的余裕もあるだろうから、その間に全国のキャラバン上映をやろうと思っていたんです。同時に、第2章の英語版と中国語版と韓国語版を作っています。韓国や台湾、アメリカで上映し、安倍政権が「沖縄に寄り添う」と言いながら、実際はどういうやり方をしているのかをワシントンの議会関係者たちやアメリカのNGOの人たちにも知ってもらおうと思いました。 しかし、その一方で今、沖縄本島北部の高江に機動隊が大量に導入され、むちゃくちゃなことがやられている。ですから、この間、高江でもカメラを回し、その映画「高江―森が泣いている」を9月20日から大阪で、10月15日から東京のポレポレ東中野でも上映します。それも早急に英語版を作って、年内に辺野古と高江の基地建設がどのように行われているかを、日本全国で自主上映を展開しながら、アメリカや近隣諸国も含めて見せていこうと考えています。映画「高江ー森が泣いている」より ただ、思いのほか裁判の進行が速い。証拠証人調べもなく、7月の裁判の時に9月16日の判決まで提示されるという進行です。9月16日以後は少なくとも陸上工事は再開したいと言っていますから、辺野古の方も機動隊を動入しての工事再開が行われるだろうと思います。今回は本当に沖縄の将来や日本の先行きに大きく関わってくることなので、辺野古に1軒宿舎を借りて、24時間365日撮影に入れる体制を作っています。そこを拠点にして、2014年3月以後ずっと誰かが現地にいるようにして、撮影を続けてきました。昔は報ステやNEWS23が取材 ―宿舎を借りたというのは具体的にどうやったのですか? 藤本 バーを経営していた母親がベトナム戦争の時代に米兵に殴り殺された金城武政という人がいるのですが、今も辺野古のゲート前のテントで世話人をやっています。僕たちとは10年位付き合いがあって、とにかく辺野古に拠点がないと撮っていくのは難しいと思ったので武政に頼んで、母親が殺されたバーのワンフロアを借りて宿舎にしているんです。集落の中にある場所ですし、10分位でゲートまで歩いて行けますから、そこを拠点に撮影をずっとやってきています。ヘリパッド反対派の車両を撤去する機動隊員ら=沖縄県東村高江 ―藤本さんたちが最初に沖縄を撮り始めたのは2004年頃から(05年公開の「Marines Go Home」)ですが、その頃と比べると現地取材の状況がだいぶ変わったというのですね。 藤本 テレビメディアで直接現地に取材に来るというのがどんどんなくなっているんです。 影山 昔なら『報道ステーション』とか、筑紫哲也さんがいた頃の『NEWS23』とか、もっと沖縄に取材に来ていました。 藤本 沖縄のことをずっとフォローし続ける専門知識のある記者もいたんです。でも、そういう記者が報道番組の現場からいなくなった。いないようにされたんですね。 僕達がそのことを感じたのは2008年、海兵隊のブートキャンプを取材した時でした。『NEWS23』と共同取材をするという形で国防総省の許可をとって入ったのですが、それが10分の特集2回で放送された。でも、しばらくしてそれをやったディレクターから連絡が来て「もう皆さんと一緒にやることができなくなりました」と言われたんです。沖縄の問題をフォローしてきた人たちがバラバラにされて、報道ではなく情報番組みたいなところに移されるということがあった。 当時は『報道ステーション』も沖縄のことをずっとフォローする記者が育っていたんですが、そういう人たちが報道の現場からいなくなっていったんです。昨年来、報道番組からキャスターが次々と降板し、話題になっていますが、そういう動きはもっと前からあったのです。 今でも大きな出来事、例えば9月16日の辺野古判決とか、そういうのは放送されますよ。でも沖縄の系列局が撮ったものをその日の出来事として報道するんですね。長期にわたって調査報道をするという機能がなくなっているんです。 今でも比較的沖縄取材をやっているのはTBS『報道特集』ですが、それでも頻繁に取材に訪れるのは難しくなっていると言います。しかも、それは東京の取材陣だけでなく、RBC(琉球放送)とかQAB(琉球朝日放送)とか、沖縄のテレビも現場に来るのが減っていますね。以前はほとんど毎日、地元のテレビが来ていましたけれど、今は大きな出来事がある時しか来ない。琉球新報と沖縄タイムスという2つの地元新聞は相変わらず毎日来ていますけれど。 影山 現場へ来た時でも、カメラマンの撮っている位置が遠くなっていますね。近づいて撮ろうという感じがない。 藤本 日々のニュースのネタとして撮っているという感じです。たぶん東京のテレビ局で起きているようなことが沖縄のテレビ局でも起きているのだと思います。 ―藤本さんたちはどういう体制でカメラを回しているのですか? 藤本 僕たち2人ともカメラを回すし、2006年から一緒にやっている栗原良介カメラマンも撮影に加わっています。 影山 最初、3人で4台のカメラと言っていたのですが、私たち3人のほかに海上保安庁に抗議するカヌーチームの一人に防水カメラをつけてもらって撮影しました。陸と海から4台のカメラを回し続けたんです。 藤本 それと第2章からは、あと3人、20代30代の若いカメラマンが加わっています。キャンプシュワブゲート前と陸と海、県庁の知事の動きも見ていかなければならないので、とても僕たち3人では持たないとわかった。そこで、若いカメラマンでやってくれる人を増やそうということで、6人体制を作りました。僕と影山は拠点が札幌ですし、若いカメラマンも関西とかから行くことになるので、6人のスケジュールを綿密に打ち合わせて取材体制を作ったのです。「同時代」を映しながらそれを記録する「同時代」を映しながらそれを記録する ―人物インタビューもはさまず、現場での激しい闘いを近い距離からリアルに描くという手法ですね。 藤本 いろんなドキュメンタリーの作り方があると思うけれど、例えば多いのは誰か人物に焦点を当てて、インタビュー映像を使って、話を作っていくというスタイルですね。けれど、今回の圧殺の海シリーズではそういう作り方はしませんでした。実際に現場で起こった出来事、行動する人のアクション、現場の出来事で辺野古での現実を見せていくというようスタイルにしています。そういうやり方をダイレクトシネマというのですが、実際に起こった出来事で見せていく。セリフとかインタビューで説明するスタイルは取らないことは決めてありました。映画「圧殺の森 第2章『辺野古』」より インタビューも、ナレーションも、作り手がこういうことを言いたいということを登場人物に喋らせるという手法ですよね。だからある意味インタビューは説明です。でも、そういうのはやめようと思いました。 ―撮影したものをできるだけ早く編集して公開していくというやり方も特徴的ですね。 藤本 いわば寿司屋ですね。握ったものをその場で生のまま味わってもらう。 影山 編集に時間をかけ、十分宣伝してからと言っていたら沖縄の状況は変わってしまい、「今頃かよ」って映画になってしまうんです。 藤本 僕たちは「同時代を記録する」ということをやっているんですね。今起こっていることを起こっていることとして伝えていく。同時代を撮りながら、歴史的にはその時代を記録する。その時代の記録になるというようなことをやろうと思っているんです。例えば、500人機動隊を動員して、沖縄の民意がどうであろうと政府が決めた通りやるということが今、高江で起こっている。このまま行くと今年中にヘリパッドができます。今の国のこういうやり方は、今後全国で起こり得る。そのことを見せなければいけないと思うので、ヘリパットが出来てから公開するようなものでないと思うんですよね。見た人が現代史に関わるようなものとして映画を成立させたいんです。 影山 今、高江で行われていることは、とにかく政府の思った通りにやる、従わなければ潰す。違法にするというか。はっきりとそんなふうに見えますね。 藤本 すごい圧迫感がありますよ。2キロ位にわたって10メートルおきに機動隊をずらーっと並べて、阻止行動をする人が声をあげようとしたり何かアクションをしようとしたら、取り囲まれて地面に押し付けられて何も出来ないような状態です。土本典昭監督の教え「記録なくして事実なし」土本典昭監督の教え「記録なくして事実なし」 ―警察が映像撮影を妨害することはないのですか? 藤本 最近はないですが、でも例えば7月22日はそうでした。 影山 私たちだけではなくて、メディア全部、完全に排除されました。 藤本 何キロも先で全部止めて中に入れない。既に中にいる人間はしょうがないから、撮影している分には直接妨害することはないけれど、そこを一回離れたら二度と戻さないというような形で、撮影をなるべくさせないということはやっています。機動隊が「お前たちはメディアと認めない」と排除しようとするから、「あなた達が決めることではない、何を言っているんだ」と言ってそのまま撮るんだけど、何人かに取り押さえられて。現場から出されることもあります。 影山 撮影する際のフットワークが悪いと、「はい、そこ! プレス排除!」って言われ、すぐに排除されてしまうんです。 藤本 混乱すると、時には僕たちだけでなくて琉球新報とか沖縄タイムスなど新聞社も排除されます。 影山 琉球新報と沖縄タイムスはローテーションを組んで、常時現場に来ていますね。辺野古の取材にしても北部の人だけがくるんじゃなくて、那覇とか中南部の人も来て、今日は誰琉球新報と沖縄タイムスは一緒になることが多いですね。その沖縄2紙と森の映画社は臨時制限区域の中に抗議船があれば入りますけど、大きいメディアの方は入らない。実際の現場には彼らは近づかないことになっているのかな。中に入れば刑事特別法で逮捕起訴の対象になり得るからでしょうね。沖縄県の米軍普天間飛行場の移設先とされる名護市辺野古沿岸部=6月 藤本 そんなことを言っても入らなければ何も見えないんですよ。だから入るけれども、東京から来たような大きいメディアの人はそういうことがあったら困るから、あえて入らない。でも遠くから見ていたって何も見えないですよ。 影山 最近は陸の上から望遠撮影も多いですね。 藤本 とにかく現場で起こっていることを記録し続けようということです。土本典昭監督が常々言っていたことだけれど、「記録なくして事実なし」。記録されないものはいつか消えていくと。事実として存在するためには、記録されなければいけない。そういうことを我々はやっているんだとずっと言ってました。それは僕も非常に重要なことと思っています。インターネットで流しているだけでは残っていかない。それを作品としてまとめて、多くの人が見られる形にしないと残らないんです。そういうふうに考えているし、そういうことをやるのは我々の役目だと思っているんです。 東京では辺野古についてはある程度知られていますが、映画を観た人に「高江のことを知っていますか」と聞くと知っているのは3分の1とか半分ですよ。圧倒的に知られていない。だから知らせないといけないし、撮ったものを速攻で出していこうと考えています。 ※映画「高江―森が泣いている」は9月20日より大阪・シアターセブン、10月15日より東京・ポレポレ東中野と沖縄・桜坂劇場に続いて全国順次公開。映画「辺野古」も全国にて自主上映展開。詳細は「森の映画社」のHPを参照のこと。http://america-banzai.blogspot.jp/

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    高江のヘリパッドとノイジーマイノリティの雑感

    やまもといちろう(ブロガー、投資家) 世の中いろいろと興奮することがあるわけなんですけど、沖縄の事例なんかは特に興味深いわけですね。 最近だと、高江のヘリパッド建設で、左翼が集まってわいわいやっているのを見ると、ああそういう問題もあるんだなと思うわけですよ。TBSの報道特集や、NHKの番組を興味深く拝見しておるのですが、毎回沖縄の問題は起きるごとにああでもないこうでもないと騒いだ結果、結局何も解決しないで両陣営に腹立たしい思いが残る、という寄せては返す波のようになってますね。 もちろん、関係者同士は合意や妥結に向けての努力を続けているわけですが、150人程度の沖縄県東村の高江という集落の人々の生活を巡る問題や、沖縄に面積で見て過剰な負担を強いて日本の安全保障が成り立っているという実態については、本土で暮らす人間としてどうよりそうべきなのかなという気持ちは常にあるのです。沖縄県庁で、中嶋浩一郎沖縄防衛局長(左)に抗議する安慶田光男副知事=7月22日午前 どうしてもこの手の話はトロッコ問題というのが存在するわけでして、左翼の大好きな白熱教室的正義感の世界があります。150人の高江の人たちの生活と、日本の安全保障を考えたとき、公共の利益のために高江は犠牲になるという理屈をどう捕らえるか、みたいな話です。ぶっちゃけ、この手の話題は別に沖縄の米軍基地関連だけじゃなくて、原子力発電所から保育園の新規建設まで、あらゆるところに存在し、それが「政治過程だよね」という。 必然的に、筋論として沖縄にあるべきかみたいなことを左翼は言うわけですし、鳩山由紀夫元首相も沖縄県民に対して「最低でも県外」とか話がこじれ、期待を持たせたあとで、最終的に「やっぱ沖縄に」と鳩山さんが腰砕けになってしまうわけですよ。これには同情を禁じ得ないんですが、いわば「基地のない沖縄を」というスローガンも、つまりはそこに沖縄がある限り基地が欲しいよなという話になってしまうわけですね。で、沖縄である必要はない、みたいな取ってつけたような説明を真に受けて、九州南部や西部に米軍基地をという話が出てくるわけなんですけど、鳩山さんのときがそうだったみたいに「やっぱ駄目だわ」となるんですよ。そして、ふりだしに戻る。■普天間基地の移設問題を時系列で整理してみた で、肝心の日本国民はというと、この普天間基地や高江の問題については「興味なし」なわけです。検索キーワードで言っても30位内外、安全保障は大事だ、という国民はいても、沖縄の基地問題に興味関心があると回答する割合は、以前からだいたい一貫して0.8%ぐらいです。ぶっちゃけ、とても低い。ただ、低いからといって無視していい話であるはずもなく、そこに人が住み、生活しているからには彼らの生活の保障をどうしたら良いのかも含めて、善後策を考えないと解決なんざ絶対にしないわけですね。■沖縄の基地問題など、国防を考える3 辺野古の住民は基地移設を容認 ただ、そういう沖縄の基地問題が、なぜか左翼というか反権力、反国家の人たちのお祭り会場になっていたりするわけですよ。もちろん、平和は大事ですし、沖縄に基地を押し付けちゃいけないぞという理屈はそのとおりで、沖縄県民、とりわけ基地に隣接している人たちに不安な思いをさせてはいけないという大前提があったうえでですけど、どういう理由か反権力、反国家的な運動のひとつに組み込まれて、成田闘争みたいな状態に祭り上げられてしまうのはどういうことなのかと思うわけです。 出口なきイデオロギー論争になってしまうのは困りますし、状況が変わって話が二転三転するごとに政府も沖縄県民も振り回されているのを見ると、きちんと法的手続きをして、問題となる地域に住む人たちの生活の保障もしっかり行って、ダム建設での村閉めや用地収容を粛々とやるのが一番よいのではないかと思ったりもするんですが、どうなんでしょうか。まあ、そう簡単にいかないからいつまでも揉めているのかもしれませんが。(「やまもといちろう オフィシャルブログ」より2016年8月9日分を転載)

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    報道にはすべて裏がある 沖縄の反基地感情にどう向き合うか?

    織田重明(ジャーナリスト) 「日米地位協定の抜本的な見直し、海兵隊の撤退・削減を含む基地の整理・縮小、新辺野古基地建設阻止に取り組んでいく不退転の決意をここに表明します」 本土よりひと足先に真夏の日ざしが照りつけた6月19日の沖縄県那覇市。市内の奥武山公園で開かれた、米軍属による暴行殺人事件に抗議する県民大会で挨拶に立った翁長雄志知事はこう述べてみせた。日傘やタオルで暑さをしのぎながら、知事の発言に耳を傾ける多くの聴衆を前に、知事の高揚感はひとしおだっただろう。最後は、「ワッターウチナーンチュヌ クワウマガ マムティイチャビラ(私たち沖縄の人たちの子や孫を守っていきましょう)」と沖縄の言葉で怒鳴るような大きな声をあげて締めくくってみせた。県民の怒りを自ら示してみせたということなのであろう。海兵隊の撤退まで言及 翁長知事はもともと革新の政治家ではない。むしろ、かつては自民党沖縄県連の幹事長をつとめ、保守出身をもって自ら任じ、「日米安保条約の大切さをよく理解している」と公言してきた人物だ。その翁長知事がついにここまで踏み込んだかと思わざるを得ない。日米地位協定の見直しや普天間飛行場の名護市辺野古への移設反対はこれまでにも翁長氏が再三にわたって主張してきたことと同じだ。注目すべきは、「海兵隊の撤退」に言及したことだ。海兵隊は、軍人の数にして在沖米軍全体の57%を占め、基地面積で73%になる中核的存在。その撤退を求めるということの意味が持つ重さを翁長知事は十分に理解しているのだろうか。 沖縄本島中部のうるま市でウォーキング中の20歳の女性が32歳の米軍属の男に暴行され殺害された上に、北部の恩納村の雑木林に遺棄された、痛ましい事件を受け、沖縄では反基地感情がこれまでになく高まっている。沖縄県内の県議会や市町村議会では日米地位協定の改定や基地の整理・縮小を求める決議が相次ぎ、6月3日付『琉球新報』は、沖縄からの全基地撤去を求める県民が42.9%に上ったとする世論調査の結果を掲載した。反基地の動きは辺野古移設に反対してきたレベルから県内にある基地全ての撤去を求めるまでになっており、もはやこれまでとはフェイズが違う。iStock 6月5日に投票が行われた沖縄県議選でも、辺野古移設に反対し、翁長知事与党でもある革新各党派が躍進した。この勢いのまま7月10日に投票が行われる参院選の沖縄県選挙区でも勝利をつかもうというのが翁長知事らのねらいだ。すでに自民党の現職の島尻安伊子氏(51)の苦戦は必至だと伝えられている。 県民大会が開かれたのは、まさにこうしたタイミングのなかだ。実行委員会の中心となったのは、革新各党派や労働団体などからなる知事の支持母体の「オール沖縄会議」。当初は超党派での開催を目指し、自民や公明、おおさか維新にも参加を呼びかけたが、参院選の公示を目前に控えたこの時期の開催は相手陣営を利するだけであり、事件を政治的に利用しようとするものとの自公やおおさか維新の反発を受け、超党派の開催を断念した経緯がある。 一部メディアの報道で、「被害女性の遺族は、事件が基地問題や参院選に利用されていると反感を持っている」などと報じられたこともあり、実行委員会もかなり気をつかったようだ。女性の父親のコメントを読み上げてみせ、参院選の革新側の統一候補となった伊波洋一氏(64)は会場に出席はしたものの、登壇して挨拶することはなかった。 超党派での開催とならなかった影響は他にもある。まず、大会への参加者の数だ。主催者発表では、6万5000人とされたが、県警などが独自に推計した人数では3万5000人程度だったと見られている。猛暑が影響したとの見方もあるが、1995年に沖縄本島北部で米兵3人が少女を拉致して暴行する事件が起きた時の抗議集会は超党派で開催された結果、最大都市の那覇市でなく宜野湾市が会場となったにも関わらず、8万5000人も集まったとされることを考えると、その差は歴然としている。地元紙記者も「会場となった公園に立錐の余地もないほど多くの県民が集まるのをイメージしていたが、隙間があちこちにあって正直言うと拍子抜けした。しかも本土の労働組合の関係者も目立っていた」と話していた。 さらに、自公が参加せず革新各党派が主体となった結果、翁長知事が冒頭のような踏み込んだ発言をせざるを得なくなることにつながったという指摘もある。県庁の幹部はこう述べる。柔軟な対応ができない状況に 「翁長氏が2014年の知事選で初当選した際の公約は、辺野古移設の阻止だけで、革新各党派が訴えるような海兵隊の撤退までは求めていませんでした。県民大会は、事件を起こした軍属が元海兵隊員だったこともあって『海兵隊の撤退』をスローガンとして掲げましたが、これに日米同盟への理解を示す翁長知事は違和感を感じ、出席を躊躇したようです。結局、支持母体である革新各党派に押し切られる形で出席を決め、『海兵隊の撤退・削減を含む基地の整理・縮小』という言いぶりをすることで、辺野古移設の阻止にとどめるとも海兵隊の撤退要求まで踏み込むとも、どちらとも取れる挨拶をすることにしたのです。選挙によって革新各党派の勢力が伸びれば伸びるほど、翁長知事はがんじがらめにされ、柔軟な対応ができなくなっているのです」 翁長知事の立場が奈辺にあるかはともかく、事件によって高まった県民の反基地感情にどう対応していくのか。沖縄県警の定員を100人増やすなど、米軍による凶悪事件の再発防止策が官邸主導で進められているが、根本的な解決策にはほど遠い印象は拭えない。政府は辺野古移設を推進するとの立場を崩しておらず、参院選後にも新たな動きが本格化するようだが、注視していきたい。

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    沖縄県民大会にみる「健全なナショナリズム」のカタチ

    古谷経衡(評論家/著述家)6月19日県民大会のパノラマ風景(筆者撮影) 6月19日に沖縄県那覇市で開催された「オール沖縄」主催による県民大会(正式名称『元海兵隊員による残虐な蛮行を糾弾!被害者を追悼し、海兵隊の撤退を求める県民大会』)に本土から参加した。 6月23日の沖縄慰霊の日(第32軍司令部玉砕)を前に、例年より早く梅雨が明けた沖縄は、炎天下の酷暑だった。参加者の中には、熱中症で救急搬送される高齢者もいた。それをしてでもなお、6万以上の県民が詰めかけたのである。 5月、元海兵隊員で米軍属ののシンザト・ケネフ・フランクリン容疑者による同県うるま市での女性強姦殺害・死体遺棄事件を受けて行われた今回の県民大会は、一向にやまない米軍や米軍属による犯罪、そして対米批判を躊躇する日本政府への県民の怒りが爆発したものだ。ほとんどの参加者が地元民~イデオロギーを持ち込まず、持ち込ませず~いわゆる「革新の動員」は少数ながら存在したものの、マイノリティであった(筆者撮影) 主催者発表で6万5千人となった今回の大会は、1995年の米兵3名による少女暴行事件を受けての県民総決起大会(参加人数8万5千)、2012年のオスプレイ配備反対集会(同10万人)に匹敵する規模となった。会場となった奥武山公園陸上競技場は、那覇市中心部からほど近い。 当初、「3万~5万人来れば成功」(オール沖縄幹部)との目算は、実際には大きく上方修正された。会場の外にも溢れんばかりの参加者の姿があった。6万5千の数字は誇張などではなく実数であることは間違いはない。 午後2時の開演を1時間前に控え、昼過ぎから続々と奥武山公園を目指す市民の姿があった。このような光景は、必ず日本本土の保守派、ネット保守から「本土からの左翼・革新勢力の組織動員」であると揶揄され続けてきた。 確かに、堂々と「中核派(革命的共産主義者同盟全国委員会)」のタスキをつけた中年男性が同団体の機関紙『前進』を配り、同じく「革マル派(日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派)」の機関紙『解放』を配布する者の姿もあった(ただし、それぞれ1名)。 私は革新・左派が中心とする決起集会を少なくない数、見学してきたが、例えば「○○県教委」「○○労組」等のむしろ旗が所狭しと翻る光景は日常である。そのような人々が、19日の県民大会に存在しなかったのかといえば、嘘になる。 しかし、彼らは著しく高齢化し、その資金力・動員力は時を経るごとに衰微している。首都圏ならいざ知らず、長躯本土から沖縄まで大量動員することができるほどの力は、すでに彼らにはない。 この大会を、「左翼、革新のイベント」であると喝破するのは、お門違いもよいところで、それは単なる反左翼、革新揶揄のイデオロギーに過ぎない。そういう人間は、現地を見ていない。怒りに左右なし怒りに左右なし 6月19日の県民大会参加のほとんどが地元民であった証左は、同公園併設の大型駐車場に所狭しと並んだ「わ」ナンバーではない、沖縄ナンバーの乗用車の存在である。そして大会最後に海瀬頭豊氏作詞・作曲による『月桃』が、参加者の大合唱で終わったことである。『月桃』は本土ではなじみが薄いが、沖縄では6月23日の慰霊の日にちなんで、学童その他多くの人々に親しまれている平和の祈りの歌である。 恥かしながら、私は『月桃』をこの時初めて、全編を聞いた。素晴らしい曲だと思ったが、慣れていないので斉唱できなかった。しかし私の周りの人々は、みな「六月二十三日待たず 月桃の花 散りました」と歌っていた。月桃の花は沖縄地方土着の白色花である。これは地元の人々による集会なのだと痛感した。 そしてこの県民大会には、イデオロギーは本来関係がない。うら若き女性が、米軍属に殺害されたことに対する怒りに、左翼も右翼もないのである。主催者はイデオロギーの発露に極端に気を遣っていた。少ないとはいえ、「本土から来た革新系活動家」のかかげるむしろ旗を、何度も降ろすようにとアナウンスがあった。殊勝なことに、彼らはそれに従った。追悼の場にイデオロギーを持ち込むな、というのである。この姿勢は終始、大会中、徹底されていた。 「オール沖縄」は、単なる左翼や革新による団体、集会などではない。 この手の集会につきものの、「アベ政治を許さない」の横断幕も物販も無かった。主催者はできるだけ喪に服すようにと、黒い服の着用を事前にアナウンスしていた。流石にそれを忠実に守る人は少なかったが、本当に喪服でやってこられた在沖のご婦人の姿を何度も見かけた。彼女らにイデオロギーは存在しない。怒りは、左右を超克する。筆者撮影(6/19)本来右派、保守派が参加するべき県民集会本来右派、保守派が参加するべき県民集会 私はこの県民大会に、右派、保守の立場として参加した。かけがえのない日本人同胞が外国軍属の手にかかるなど、民族的義侠心に火が付くのが自然のはずである。本来、この手の事件に最も憤怒するのは愛国者、タカ派、保守派でないか。しかし、この県民大会には表向きには保守系の人々の出足は鈍かった。県議会で中間派とみられる公明党も公の参加を見送っている。 日ごろから「日本人の誇り」「日本人の尊厳」を声高に主張する右派、保守派は、こと沖縄の米軍問題になるとそのトーンを数段弱くするばかりか、攻守逆転し「むしろ沖縄が悪い」と沖縄を日米同盟の障壁であるかのごとくふるまう言説が目立つ。 このような主に本土の「親米保守」の倒錯した理屈を目の当たりにし、「アメリカ・日本(本土)VS沖縄」という構図が出来上がるのは、悲しいかな仕方がない側面もある。本来「アメリカVS日本=沖縄」であるはずが、本土の「親米保守」が沖縄の怒りを代弁しないどころか、沖縄を敵視する姿勢こそが、沖縄の怒りにますます火をつけている。 「オール沖縄会議」共同代表の一人、玉城愛さん(21歳)に、大会閉会直後に話を聞くことができた。「私は、右派・保守の立場としてこの大会に参加したのですが、本来、右翼がもっとも怒らなければならないのに、それがまったく弱いのはなぜでしょう」という私の質問に対して、玉城さんは明瞭な答えを出さなかったが、「はい、本土の保守派が、アメリカの旗を振って、あれは、どうも…」と返して言葉に詰まった。「…」の部分は、「情けない」とも「醜い」とも解釈できよう。「私は反米ではない」「私は反米ではない」黙とうをささげる人々(パノラマ左)黙とうをささげる人々(パノラマ右) 私は続けて、玉城さんに質問をした。「今回のこの大会は、反米ナショナリズムの発露と解釈してよろしいか」と。玉城さんは、即座に「私は反米ではない」と返した。「アメリカ人の知人もいるし、周りにはアメリカへ留学した友人もいる。ただ分かって欲しい、沖縄が怒っているということを」。この言葉は重い。玉城さんに「私は反米ではない」と言われて、確かに私も感じる心があった。 私も正確には、明瞭な反米主義者ではない。アメリカ文化、アメリカの合理主義に見習うべき点はあまりにも多い。アメリカ文化の洗練性と彼らの親しみやすい性格には大きな好感を持つ。しかし、それ以上に私をいらだたせるのは、どんな国に対してであれ、不道理にはNOと言い、非道には激憤する、そのある種動物的な「怒り」の感情を忘れた卑小な日本人に対する苛立ちである。 同胞を強姦され殺され、その遺体を雑木林に埋められても、へらへらと笑いながら星条旗を振り回す、その同じ日本人の卑小さへの怒りが、玉城さんからは感じられた。そしてそれは、県民大会全体を包み込むある種の空気観であった。 「オール沖縄会議」の共同代表らは、登壇上で口々に「沖縄はまるでアメリカの植民地…」と言った。米軍基地が過度に集中する沖縄を「植民地」に例えるのは、悪く言えば陳腐化した表現だ。しかし、沖縄は本当にアメリカの植民地なのだろうか。アメリカ軍、軍属の不法に、素直に怒りのこぶしを上げる彼ら沖縄県人は、少なくとも精神の意味において植民地の奴隷人ではない。 真の植民地人とは、米軍基地や在日米軍から最も遠い、安全で快適な本土の、東京や神奈川の閑静な住宅街の自室で、稚拙なネット動画や「親米保守」言論人の言い分に寄生し、怒りの感情を忘れただヘラヘラと笑いながら星条旗を振りかざす本土の日本人ではないのか。彼らこそが真の意味での「植民地」に住まう人々なのではないか。隷属、という言葉は、彼ら本土の「親米保守」にこそふさわしい形容である。 排外でも、差別でもない。アメリカ人を全部叩き出せと言っているわけではない。ただただ不条理に対する怒りとNOの表明は、「健全なナショナリズム」の発露であると感じた。6月23日からの戦後6月23日からの戦後嘉数高台公園に残る日本軍の壕(宜野湾市) 午後3時半に県民大会が終わると、雲の子を散らすように6万の参加者は自宅に戻っていった。閉会1時間と経たぬうちに奥武山公園は平時に戻った。「右翼」の抗議や襲撃を警戒したのか、会場周辺に配置された沖縄県警の巡査たちも、出番らしい出番はなかったようだ。 那覇にはめぼしい米軍基地はない。那覇の街を歩くと、「まるでアメリカの植民地…」と「オール沖縄」が自虐する沖縄の被差別、被支配の構造は見えにくい。外出禁止令発令中の那覇の街では、昼も夜も米兵の姿は一人も見えなかった。そして少なくとも那覇は、本土の並みの地方都市よりはるかに発展しているし、嘉手納や普天間といった主要な米軍基地とも地理的に遠い。県内でも在沖米軍に対する感情には温度差があることは間違いはない。 海兵隊の全面撤退と、基地撤去を求めながら、「私は反米ではない」と言い放った玉城さんの言葉を胸に、私は沖縄県宜野湾市にある嘉数高台公園へと向かった。この嘉数は、沖縄戦で首里に総司令部を置いた第32軍隷下の第62師団等が、本島南部に侵攻する米軍に対し、地形を生かして肉弾戦法を挑み、米軍に大損害を与えた数少ない激戦地のひとつである。 現在の嘉数は、往時の激戦の爪痕は若干のトーチカ、銃弾跡と、この地を守備した京都府出身兵の御霊を顕彰する「京都の塔」などがわずかに建立するだけで、周辺は閑静な住宅地に様変わりしている。地元の子供たちが虫取り網を持ち、蝉取りに興じている。碑文がなければ、ここが激戦地であったことなど分かりようもない。嘉数高地から望む普天間基地(筆者撮影) 嘉数高台公園の中央部にある展望台に上った。ここからは、米軍普天間基地が一望できる。滑走路の脇には数十機のオスプレイが駐機しているのが遠目でも見えた。嘉数で戦傷した日本軍将兵6万名以上。私には、戦死した日本軍将兵が普天間米軍基地を睨み付けているような気さえした。 沖縄の戦後は、8月15日ではなく、6月23日から始まる。(2016年6月21日 Yahoo!ニュース個人「だれ日。」より転載)

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    日米地位協定3条1項 日本の法律より米の都合優先を意味

     安倍晋三・首相は、伊勢志摩サミットで来日したオバマ米大統領と固い握手を交わした。「強固で対等な日米同盟」が世界にアピールされたが、日米関係の実像は戦後70年以上が経ってなお、「占領軍とその属国」ではないのか──米国との“不平等条約”をひもとくと、そんな現実を突きつけられる。 1960年の日米安保条約締結と同時に交わされた現在の日米地位協定(前身は1952年の日米行政協定)について、在日米軍基地問題に詳しい沖縄国際大学教授の前泊博盛氏が解説する。日米地位協定における米軍属の範囲見直しについて話し合われた両国間の会談。右側手前から5人目は岸田外相、左側手前から5人目はケネディ駐日米大使=7月5日、飯倉公館「在日米軍の地位と権利を定めたのが地位協定です。米軍人・軍属の公務中の事件や事故については日本の法律は適用されず、米軍法の裁判権が適用されるという“不平等条約”の側面がある。米兵たちを守るための約定ともいえます」 今回の事件は「公務外」とされ沖縄県警が身柄を確保できたが、協定の矛盾がクローズアップされたのが1995年に沖縄で起きた米海兵隊員らによる少女集団暴行事件だった。協定に基づき、米側は起訴前の容疑者の身柄引き渡しに応じなかった。 その対応への県民の猛烈な反発を受け、殺人や性的暴行などの凶悪犯の場合は米国政府が「好意的配慮を払う」と一部運用の見直しが行なわれた。「“好意的配慮”は米国の胸三寸」 しかし、元外務省国際情報局長でベストセラー『戦後史の正体』著者の孫崎享氏は「この“好意的配慮”を払うかは米国の胸三寸で、米軍が『配慮した』といったら、日本側は受け入れざるを得ない不十分なもの」と説明する。そして、日米地位協定におけるこうした排他的な権限を最も強く意識させる条文が「3条1項」である。 その条文にはこうある。〈合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる〉「施設及び区域」とは米軍基地を指す。沖縄県をはじめとして日本全国には広大な米軍基地があるが、その敷地内には日本の行政権や警察権が及ばないことを示している。いわば“治外法権”を認めているのだ。「基地内は米国に管理権があり、日本の行政当局にとってもアンタッチャブルな空間です」(前出・前泊氏) 記憶に新しいのは昨年8月、在日米陸軍相模総合補給 (神奈川県)で起きた爆発火災だ。基地職員からの通報を受けて市消防隊員が駆け付けたが放水できず、鎮火まで6時間以上を要した。「倉庫に何が保管されているかわからず消火が遅れた。万が一マグネシウムのような物質があったら水と反応してさらなる大爆発になりかねないからです。管理権という協定の壁に阻まれ、基地の内情を日本政府も知ることができないと露呈した事故だった」(同前) 問題の核心はその先にある。米軍の権限が及ぶのは基地施設の「内側」だけではないのだ。基地の「外」においても同様の権限が認められている現実がある。 3条1項では米軍が基地に出入りする上での便宜を図るために、〈施設及び区域に隣接し又はそれらの近傍の土地、領水及び空間において、(日本国政府は)関係法令の範囲内で必要な措置を執るものとする〉と定めている。「必要な措置を執る」のは日本国政府であるため、字面だけ見ると米国の“治外法権”を認めていないと読める。 しかし2008年、国際問題研究者の新原昭治氏が米国で秘密解除された日米密約文書を公表。「関係法令の範囲内で」という文言については、「米軍側に不都合があれば『関係法令』の見直しを日米で協議する」と決められていたのだ。要は“日本の法律・権限より米国の都合を優先する”ということである。関連記事■ 米軍機が日本で事故起こしたら米は警視総監の立ち入り拒否可■ トモダチ作戦の見返りはおもいやり予算1880億円×5年■ トモダチ作戦 アメリカは中・ロに存在感見せつけたかった■ 米国防長官「尖閣に安保適用」発言にトリック 米軍派遣は別■ 三沢基地に配備された米無人偵察機 まるでエイリアンのよう

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    沖縄「高江」の機動隊導入 安倍政権が進める強硬姿勢の象徴

    猪野亨(弁護士) 沖縄県東村高江では、ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設工事に反対する住民たちは、2007年以降、工事をさせまいと反対活動を展開、道路に街宣車を置くなどして、工事を阻止してきました。オスプレイ利用が予定されていますが、オスプレイなど沖縄県民が求めているものでありません。このような危険な施設を住民が当然に受け入れなければならないということにはなりません。 生存権を掛けた闘いです。「沖縄・東村高江 緊迫する米軍ヘリパッド建設 辺野古新基地と強行連動」(赤旗新聞2016年4月25日)「民家を取り囲むようにして建設されるため、地元住民らは2007年から工事車両が出入りするゲート前で座り込みを続けています。昨年、2カ所の建設が完了しましたが、残り4カ所は一歩も進んでいません。」ヘリパッド建設に反対する人々を規制する警察官ら=7月22日、沖縄県東村高江 その工事が再開されようとしています。しかもそのやり方があまりにひどすぎます。安倍政権の対応は、参議院選挙が終わった途端に工事の強行ですが、選挙期間中に強行すれば、自民党公認の島尻安伊子氏の落選がその時点で確定するからです。工事の強行がなくても島尻氏は落選しましたが、それでも望みは持っていたのです。島尻氏を沖縄北方担当相にするなど露骨な選挙対策をしてきたことからもかなりの重点区だったわけです。 従って、選挙期間中に工事を再開するなどあり得ない選択肢でした。「沖縄県民を裏切った島尻安伊子沖縄・北方担当相 『私は大嘘つきだけど、カネをばらまく…かもしれないから票を入れてね』」 2007年以降、工事は中断されたままですが、この時期に再開を睨んでいたのは、安倍政権が力によって沖縄支配を実現するためです。昨年、安保関連法を強行採決して成立させ、日米軍事同盟の強化という国策のもと、沖縄がもっと頑強な抵抗を続けていることが許さなかったからにほかなりません。暴力による支配は恥ずべきやり方 その意味では、選挙結果によって島尻氏が再選したとしても、工事は強行されていましたが、何よりも島尻氏の落選によって衆参どちらも沖縄選挙区から選出された国会議員がゼロになり安倍政権への批判が象徴的に示されたことによって、より一層、安倍氏の逆鱗に触れることになりました。安倍氏にとっては屈辱以外なにものでもなく、改憲勢力が3分の2を超えたなどということで満足する安倍氏ではありませんでした。自分に抵抗する者は力によって屈服させることこそ、安倍氏が求めているものです。 それが本土からの大量の警察官、機動隊の導入というやり方です。「東村高江に機動隊500人 辺野古の5倍投入へ」(沖縄タイムス2016年7月13日)「県警も機動隊員と各警察署からの応援隊員、不測の事態を警戒する刑事らで250~300人規模の要員を確保し、本土の隊員と合わせ最大で約800人の警備体制を敷く見通しだ」 「高江の機動隊投入 『暴力団壊滅と同規模』 自民議席失い、政府強行」(琉球新報2016年7月18日)「一方、一部の警察、防衛関係者からは異論もある。警備関係者は『工藤会の壊滅作戦と同規模だ。重火器を持つ暴力団と一般市民を同一視するのは尋常じゃない』と苦渋の表情を浮かべ、特定危険指定暴力団工藤会の壊滅作戦で2014年に機動隊が約530人に増派された例を挙げ、同様に一般市民に対峙(たいじ)する政府の姿勢を疑問視した」 本土から沖縄支配のために警察官、機動隊を動員し、暴力によって支配を貫徹するというのは恥ずべきやり方です。このようなヘリパッドなどなくても全く困らなかったレベルのものです。安倍政権が意地になって沖縄での建設に固執しているだけです。そこには辺野古同様、抵抗は一切、許さないという安倍政権の強権姿勢の表れだということを知るべきでしょう。また、そのような安倍政権による沖縄に対する剥き出しの暴力を本土の人たちが黙認して良いのかどうかが問われている、これを忘れてはなりません。(弁護士猪野亨のブログ 2016年7月20日分を転載)

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    「在日米軍撤退なら中国は沖縄を獲りに来る」と専門家

     米共和党大統領候補・ドナルド・トランプ氏が2016年11月の大統領選で勝利し、大統領に就任し「在日米軍完全撤退」の道を選べば、中国は尖閣どころか沖縄を獲りに来ると軍事アナリスト・毒島刀也氏は指摘する。具体的にはどのような道筋をたどるのか? 毒島氏がシミュレートする。2015年9月の軍事パレードに登場した中国軍の無人機。日本政府が尖閣を国有化した2012年9月の前後に中国がたびたび無人機を使い、同諸島の地理データを収集したり測量したりしていたことが分かった=北京(共同)【2017年2月】〈トランプ大統領が執務開始。同年3月、海外駐留する米軍の引き揚げ交渉を開始。在日米軍は2019年12月までの完全撤退で合意。これを受け、中国政府は、沖縄→南シナ海→台湾を侵攻する「東方侵攻作戦」を策定。作戦開始日は日本の沖縄防衛戦力が整わず、東京五輪閉幕直後で大量の中国人が本土、沖縄に滞留しても怪しまれない2020年8月15日に決定した〉【2020年8月15日正午】〈沖縄各地に潜伏中のスリーパー(中国人工作員)が同時多発テロを仕掛け、県内は一時騒乱状態に。時を同じくして、中国共産党の息がかかった沖縄の極左団体“琉球救国委員会”が勝手に行った会見動画をネット配信し、中国に「沖縄の治安維持と独立支援」を要請。日本政府は騒乱に乗じた悪質ないたずらと見て黙殺したが、極左団体の“会見”は中国政府が周到に準備した作戦の一環だった〉【8月15日、日没後】〈観光客や留学生に偽装し沖縄に滞留していた中国軍特殊工作部隊が、複数の電気・通信施設を破壊。作戦には、企業研修や社員旅行を装い潜伏中の中国軍空挺部隊3個大隊(2100名前後)も加わり、自衛隊の各施設と警察署を奇襲。襲撃には、事前に海上密輸で沖縄県内に集積していた小火器、弾薬が用いられた〉〈日本国内閣総理大臣は直ちに自衛隊に治安出動を命じたが、空自の那覇基地をはじめとする沖縄の各自衛隊基地は中国軍空挺部隊の奇襲を受け使用不能。その隙を突いて、中国本土から複数の戦闘機、AWACSが沖縄上空に飛来する。九州の新田原、築城基地に配備中の空自機は航続距離の関係でスクランブル発進を断念。イージス艦も単体での対空戦を行えず、中国側が制空権を先取。 続いて中国艦隊(フリゲート、潜水艦、揚陸艦、上陸部隊、輸送部隊)の沖縄接近が確認されるが、海保と海自は大量の中国偽装船団に阻まれ、対応に苦慮〉【8月16日】〈占領された港湾に中国陸軍本体が続々と上陸。中国軍に制圧された沖縄県庁は「臨時琉球政府」を名乗り、戒厳令を発令する。一方、中国政府は「上陸した部隊は“琉球救国委員会”の要請に応じた沖縄解放義勇軍であり、中国政府とは無関係」と声明。 日本政府は引き続き沖縄奪還を図るが沖縄諸島の各部隊も身動きが取れず、急行した海自護衛艦2隻も中国艦隊により撃沈。この時点で日本側の犠牲者は官民合わせ500名を超えた〉【8月17日】〈中国の支配下に置かれた沖縄県知事、県議会主流派を首班とする「琉球臨時政府」が成立し日本からの独立を宣言。騒乱を収めるため中国政府に救援を正式要請。これを受諾した中国は、「琉球臨時政府への攻撃は中国への攻撃とみなし、容赦なく反撃する」と宣言。事実上の沖縄支配を開始した〉 このシナリオが現実となれば、初動を抑えられ反撃ルートも絶たれた日本は、事態を傍観するほかない。仮にその後、米国の支援を得て反撃に転じても、沖縄奪還までの代償は計り知れないものになる。 中国共産党支配下の沖縄ではさまざまな弾圧、粛清が行われ、多数の沖縄県民が犠牲になることは想像に難くない。トランプ氏がぶちまけた「米軍撤退論」は、日本の自主防衛の在り方を問い直す同盟国からの苦言と捉えるべきではないか。【PROFILE】毒島刀也●1971年、千葉県生まれ。航空専門誌の編集者を経てフリーランスの軍事アナリスト、技術ライターとして活動。主著に『戦車パーフェクトBOOK』(共著、コスミック出版刊)、『陸上自衛隊「装備」のすべて』(ソフトバンククリエイティブ刊)、『図解 戦闘機の戦い方』(遊タイム出版刊)がある。関連記事■ 中国の学者 「沖縄の主権は中国に属する」と叫び始めている■ 中国 来年の抗日戦勝70周年式典にオバマ大統領の参加を画策■ 韓国軍 ベトナム戦争で戦果を上げる勇猛部隊として知られた■ 中国 尖閣に異議唱えたのは石油埋蔵指摘された1970年代から■ 佐野眞一氏が数々の資料や証言で沖縄戦の悲劇に迫った最新刊

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    暫定和解案で始まった「翁長知事敗北」への道

    篠原章(評論家・批評.COM主宰) 国が沖縄県を相手取って起こした、辺野古埋め立てをめぐる代執行訴訟で、福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎裁判長)の示した暫定和解案を安倍晋三首相が受け入れたことについて、沖縄のメディアは、「裁判によって辺野古移設の不当性がますますはっきりした」という論陣を張っている。「翁長雄志知事優勢」と伝えたいのだろうが、その論調に以前ほどの力はない。見出しは相変わらずスポーツ紙並みの沖縄タイムスも、記事の中身を精査するとプロパガンダ的な物言いは減って、「事態を静観したい」という思惑も読み取れる。他方、これまで翁長雄志知事の姿勢を非難し、国による代執行を歓迎していた県民のあいだにもある種の敗北感が漂っている。中には「国に裏切られた」という悔しさを露わにする人たちさえいるようだ。 一部に誤解があるようだが、国と県による暫定和解案の受け入れが直ちに決着につながるわけではない。国と県は和解案に従って協議を行うことになっているが、協議の場で決着がつくことは事実上想定されていない。協議の決裂を前提に、両者はあらたに起こされた違法確認訴訟などで闘い、最終的にはその判決に従う、というのが、暫定和解案の内容である。 裁判所による「和解案の提示」は誰もが予想しなかったが、そのショックで、親翁長派も反翁長派も最終的な判断に躊躇しているというのが事の真相だろう。「一体何が起こっているんだ?」という思いがあちこちで見え隠れしている。辺野古沖で再開された海底ボーリング調査=2015年3月12日午前、沖縄県名護市 が、筆者には両派の躊躇が理解できない。今回の和解案受け入れは「翁長知事の敗北」を前提とした和解案だと考えるからだ。知事による「辺野古移設黙認」はほぼ決定的になったと考えて差し支えない。和解案に伴う法的手続きの分だけ時間はかかるが、辺野古移設は今後も着実に進められることになる。 翁長知事が昨年10月13日に、仲井眞弘多前知事による辺野古埋め立て承認を取り消して以来、国と県との係争が続いてきたが、今回の暫定和解案は、代執行を目指してきた国の対応を、高裁が「不十分」と評価したことが背景にある。国は、昨年11月に、地方自治法第245条の8に基づき、国による代執行を前提とした県に対する「是正指示」を行った。噛み砕いていえば、「県が埋め立て承認取り消しを撤回しないなら、国が県に代わって撤回することになる。そうならないよう、今のうちに撤回しなさい」というのが245条の8に基づく「是正指示」の意味だ。 ところが、同法245条の7には、代執行を前提としない「是正指示」が定められている。245条の8で定められているのは、国による強権発動を県に対して予告する「是正指示」だが、245条の7は県の自主的是正に期待する「是正指示」だ。国は11月の段階で、245条の7ではなく245条の8を適用すると閣議決定し、県に対してより強権的な「是正指示」を通告したのである。なぜ国は245条の7を選ばなかったのだろうか。暫定和解案が意味するもの 理由は二つあると推定できる。ひとつは、翁長知事の埋め立て承認の取り消しを是正しないという「決意」が固いため、自主的な是正を期待する245条の7に基づく指示には従わないと考え、より強権的な245条の8に基づく是正指示のほうが効果的であると判断したということ、もうひとつは、245条の7に基づく是正指示に不服であれば、県は国地方係争処理委員会への提訴が可能となってしまうということ。245条の8に基づく是正指示であれば、県は不服であっても、規定により同委員会への提訴はできない。いきなり高裁に提訴するほかないのだ。ところが、245条の7に基づく是正指示の場合、県は国地方係争処理委員会への提訴が可能であり、それでも決着がつかなければ高裁に訴えることができる。要するに県は二段構えで国と対峙できるのである。国としては245条の8に基づく是正指示であれば、国地方係争処理委員会を経由せず、係争決着に要する時間を節約できると判断したのだろう。 ややこしさを回避するために付け加えると、昨年10月13日の翁長知事による埋め立て承認取り消しを受けて、沖縄防衛局は、一般に「民」が「官」の介入を相手取って争うために設けられた行政不服審査法に依拠しながら、石井国土交通大臣に審査の請求と効力の停止を求めた。これに対して石井大臣は、「承認取り消し」の暫定的な効力停止を命じ、いったん中断した辺野古移設作業をすぐに再開させる。翁長知事は、これを不服として国地方係争処理委員会に提訴したが、同委員会は、行政不服審査法に基づく行政上の行為は同委員会の審査の対象外であるとして門前払いしている。行政不服審査法と地方自治法を法令通りに解釈すれば、この門前払いは正しい対応である。これに加えて、上述の245条の8に基づく国の是正指示も同委員会の審査の対象外だ。つまり、国は、今回の係争が国地方係争処理委員会の審査対象になることにより、余計な時間がかかると予め判断して、一連の行政行為が同委員会の審査対象にならないよう配慮しながら行動してきたことになる。この時点までは、国の判断は念の入ったものだったといえるだろう。沖縄県名護市辺野古の埋め立て承認をめぐる「代執行訴訟」の第1回口頭弁論のため福岡高裁那覇支部に入る翁長雄志知事=2015年12月2日午後 しかしながら、多見谷裁判長は、国によるこうした時間節約の行為を「拙速」と判断し、暫定和解案を作成したのだ。245条の7を飛ばして245条の8を適用することは違法ではないが、2000年に施行された改正地方自治法には、「国と地方の関係は上下の関係ではなく対等である」という精神がこめられている。自治体の自主的是正に期待した245条の7を適用しないまま代執行の手続きに移ることは、法の趣旨を軽視することにつながる。その点を多見谷裁判長は危惧したのだと思われる。 だからといって、多見谷裁判長が、翁長知事の承認取り消しの「適法性」を認めたわけではない。今回の裁判は、仲井眞知事の埋め立て承認に瑕疵があったという沖縄県の主張の正当性を争うものだが、多見谷裁判長は訴訟の過程で、環境問題の専門家など沖縄県側の証人申請を却下している。これは、裁判長が「瑕疵」の中身まで積極的に踏みこむつもりはないと判断したことを意味する。言い換えれば、多見谷裁判長は、翁長知事の行為は、公有水面埋立法上の埋め立て承認に関わる要件からして、「違法性が強い」と見ているということだ。 和解がない場合、多見谷裁判長は「国の法律上の手続きには問題があるが、翁長知事の承認取り消しは違法」という、すっきりしない判決を下すことになっただろうが、時計の針を戻して(つまり、両者に仕切り直させて)、国には245条の7に基づく是正指示を行わせ、県には国地方係争処理委員会に提訴させた上で、あらためて裁判に持ち込むことになれば手続き的な問題は解消され、「翁長知事の承認取り消しは違法」というより明快な判決を下せることになる。前例のほとんどない裁判なので、判決が判例として長く参照されることを想定しながら、多見谷裁判長は暫定和解案を示し、問題の輪郭をはっきりさせようとしたのだろう。翁長知事にとって最善の選択 この「仕切り直し」には別の効果もある。工事の中断は和解条項の一つとなっているが、翁長知事は工事中断により「辺野古反対の実績づくり」ができる上、結論も先送りできる。そもそも知事は何らかの勝利への展望を持って、この事態に臨んできたわけではない。翁長知事の姿勢は、良くいっても、闘いながら国の失点や政治環境の変化をひたすら待っていただけ、悪くいえば、ろくに考えもせずに政治力学の海を漂っていただけだ。代執行訴訟の敗訴が濃厚な段階に入っていたから、ある種の「救済措置」であるこの機会を翁長知事が見逃すはずはない。行き詰まった知事に裁判所と安倍政権が手を差し伸べたかたちである。知事がこのまま敗訴したとしても「工事中断」という実績は評価される。少なくとも保守層の支持者から「翁長さん、よくやった!」という声がかかるようにするためには、知事にとって最善の選択だったのではないだろうか。辺野古沖で再開された海底ボーリング調査 =2015年3月12日午前、沖縄県名護市 代執行訴訟で翁長知事を叩き潰すつもりだった安倍政権にとっては、ちょっとした番狂わせとなったが、翁長知事をこのまま厳しく追い詰めるよりも、手を差し伸べて誘導するほうが得策と考えたことは間違いない。知事の影響力は低下しているとはいえ、依然として県民のあいだには根強い支持がある。知事に暴れ馬のような政治行動に訴えられると、5月のサミット、7月の参院選に影響が出る。そうした事態を回避するために、この和解案を利用しようとしたことは明白だ。また、多見谷裁判長が指摘したように、一連の裁判に国が勝訴しても、辺野古移設の設計に変更が生じた場合、再び知事の承認が必要となる。現状のままでは、設計変更に対して翁長知事の承認を得られない可能性が強い以上、移設作業は大幅に遅延する。場合によっては断念する事態も想定される。「普天間基地の危険性除去」を一貫して訴えてきた政府にとって、移設断念はもちろんのこと、大幅遅延も回避する必要がある。以上を勘案して、安倍首相と菅義偉官房長官は、暫定和解案を受け入れるという判断に至ったのだろう。 もちろん、設計変更などの際の知事の不承認に対して、国が訴訟を起こすことも可能だが、その場合は攻守が逆転する。つまり、国が劣勢になるということだ。多見谷裁判長は和解案の中で「延々と法廷闘争が続くことが予想され(中略)知事の広範な裁量が認められて(国が)敗訴するリスクは高い」と指摘している。これは、改正地方自治法の趣旨の下での知事の裁量権は、改正前に比べて大きくなっているという見解を示したものだ。 その見解に従って、多見谷裁判長は、仲井眞前知事の承認をおそらく適法と判断するだろう。「辺野古埋め立てが公有水面埋立法の要件に合致している」という仲井眞氏の判断は、知事という職に与えられた裁量権の範囲内にあるが、その裁量権は選挙による民意と改正地方自治法の趣旨によって保障されていると考えられる。逆に、翁長知事が「辺野古埋め立ての設計変更は、公有水面埋立法の要件には合致していない」という判断を下す場合も、その裁量権は選挙による民意と改正地方自治法の趣旨によって保障されたもので、その限りでは正当性がある。改正地方自治法は「国と地方は対等」という理念に貫かれているから、国の方針をいたずらに優先することはできない。したがって、国が訴訟を起こすと敗訴する可能性が生まれてくる。最終的には米国との同盟関係を重視した「統治行為論」に基づき、最高裁が半ば超法規的な判断を下す可能性(国が勝訴する可能性)もあるが、最高裁も、できることならそうした高度に政治的な判断には巻き込まれたくないはずだ。覆せない仲井眞知事の判断 ただ、いくら民意(選挙)に支えられた翁長知事であっても、仲井眞知事が過去に下した「埋め立て承認」という判断を覆すことはできない。なぜなら、仲井眞知事の判断も民意(選挙)と地方自治法を根拠にしているからだ。つまり、前知事の下した判断に対して、現知事が遡及的に介入することはできないということである。もっとも、前知事の下した判断に、誰が見ても明らかな違法行為や手続き上の瑕疵があれば、遡及的に介入できるかもしれないが、前知事の判断に「誰が見ても明らかな違法行為」を見いだすことはきわめて困難だ。もし、前知事の下した判断を現知事が覆す権限を持つことになれば、それこそ行政の継続性は保障されず、その都度その都度の民意も無視され続けることになりかねない。産経新聞のインタビューに答える沖縄県の仲井真弘多前知事=2015年10月、沖縄県那覇市内 知事の地位の法的正当性は選挙を通じた「民意」が保障するものだ。この民意こそ司法上の「民意」であり、辺野古のゲート前で陣取る人たちの行動は司法上の民意ではない。翁長知事がその権限によって示す意思決定は、選挙という場で表現された県民の民意に基づいている。したがって、国の設計変更を知事が不承認とする根拠は、県民の民意にある。同じように、選挙で選ばれた仲井眞前知事の意思決定も民意の表れだから、後になってそれを取り消すことは、民主主義のあり方を根本から否定することになる。多見谷裁判長は、概ね以上のように考えたと推定できる。 国が譲歩したように見える今回の暫定和解案受け入れだが、今もって国は翁長知事が違法行為をしていると判断している。しかし、その判断に固執することで、「普天間基地の危険性除去」という当初の目的の達成が再び大幅に遅延することになるから、ここではまず和解案を受け入れ、今後、一見迂回的に見える地方自治法第245条の7に基づく違法確認訴訟の場で闘う選択をしたほうが、「普天間基地の危険性除去」という目的達成のための近道であると考えたのだろう。 一連の和解条項のうち、もっとも重要かつ決定的なのは第9条項だ。「原告及び利害関係人と被告は、是正の指示の取消訴訟判決確定後は、直ちに、同判決に従い、同主文及びそれを導く理由の趣旨に沿った手続を実施するとともに、その後も同趣旨に従って互いに協力して誠実に対応することを相互に確約する」沖縄にとっての最大の問題 この条項は、国と沖縄県とが争う裁判を、地方自治法第245条の7に基づく違法確認訴訟のみに一本化し、その判決に国も県も従うと誓わせるものだ。翁長知事は「あらゆる手段を用いて辺野古移設を阻止する」という決意を述べてきたが、これ以上の知事の抵抗は、この条項によって制約されたと考えられる。無論、判決はまだ下されていないが、これまでの推移を見るかぎり、翁長知事は敗北を認めたのも同然の状態だ。翁長知事は3月9日の県議会で「設計変更の場合は承認しない」と発言したと報道されているが(実際には町田優知事公室長の発言)、和解条項には「同判決に従い、同主文及びそれを導く理由の趣旨に沿った手続を実施するとともに、その後も同趣旨に従って互いに協力して誠実に対応することを相互に確約する」と書かれている。翁長知事が議会でどのように発言しようが、判決に「設計変更の場合も承認する」という趣旨が反映されれば、そちらのほうを優先せざるをえない。辺野古訴訟の和解案受け入れを表明する安倍首相=3月4日午後、首相官邸 細部のスケジュールはともかく、首相官邸サイドと翁長知事サイドは、「知事の敗北」を前提に善後策の協議を開始するはずだ。和解案に定められた協議は、事実上、知事が矛を収めるプロセス、敗北後の知事の処遇、保守派間の亀裂の修復などに重点を置いたものになるのではないか。今後、多少の紆余曲折も予想されるが、いずれにせよ、共産党・社民党系と翁長系保守派の亀裂、つまりオール沖縄の亀裂はやがて決定的となるだろう。実際、7月の参院選でオール沖縄の候補として内定していた共産・社民系候補の伊波洋一氏を、翁長系保守派が引きずり下ろそうとして失敗したことも報道されている。 しかしながら、筆者は、こうしたシナリオ、いや「茶番劇」が滞りなく上演されたとしても、沖縄の政治経済の状況は、ほとんど改善されないのではないか、と考えている。普天間基地の危険性除去を目指して、長く停滞していた辺野古移設問題が動きだしたことは大いに歓迎すべきことだが、本質的な問題の解決には至りそうもない。 沖縄にとって最大の問題は、基地と振興策のリンクを認め、そのリンクを解消しながら、古めかしく脆弱な経済的社会的構造に抜本的なメスを入れることである。そうした問題意識がなければ、今回と同じような事態が今後も繰り返されるだろう。政府に過度に寄りかかる一方で、一般の県民を苦しめる公民格差・所得格差・貧困・失業などといった、それこそ命に関わりかねない深刻な問題を、沖縄の指導者はいつまで放置しておくつもりなのか。もはや、さっさと辺野古移設問題に決着をつけ、県民を苦しめる現下の問題に正面から取り組むべき時だ。

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    辺野古和解にみた翁長氏「敗北」への道

    米軍普天間飛行場の辺野古移設をめぐる訴訟で国と沖縄県の和解が成立した。ただ、安倍首相は「辺野古が唯一の選択肢」との姿勢を崩しておらず、双方がどこまで歩み寄れるのか不透明だ。政府側の「譲歩」に込められた思惑とは何だったのか。勘ぐれば勘繰るほど、翁長氏「敗北」のシナリオが見えてくる。

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    辺野古和解後、「オール沖縄」との戦いは琉球独立工作に移る

    仲村覚(ジャーナリスト、沖縄対策本部)誰も予想しなかった政府の和解案受け入れ 3月4日、誰も予想していなかった判断を安倍総理が下した。辺野古移設の代執行訴訟をめぐって福岡高裁那覇支部が提示した和解案を受け入れることを決めた。決して口にすることもネットで発信する事も無いが、この一報を聞いて最も驚いたのは沖縄の自民党議員、そしてその支持者ではないだろうか? 1月24日に投開票が行われた宜野湾市長選挙にて自民党推薦の現職の佐喜真市長が再選を果たした。この選挙の勝利は翁長知事の「オール沖縄陣営」に大きな打撃を与えたからだ。 「オール沖縄」とは共産党、社民党などの革新政党と翁長知事を支持する一部の元自民党の統一勢力のことで、その実態は「反自民」である。「もし、自民党が負ければ、反自民である『オール沖縄』が本当のオール沖縄であるかのように報道され、沖縄の自民党の存在感が薄れてしまい、そのあとの選挙も全て負けてしまう」。だから自民党県連はこのような強い危機感をもって宜野湾市長選を戦ったのである。沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場と住宅地=1月17日 総力を上げた戦いは実を結び、相手候補に大差で勝利した。逆に「オール沖縄」が「オール沖縄」で無いことを実証したのだ。「オール沖縄」陣営にとっての宜野湾市長選敗北のダメージは大きかった。既に参院選候補として擁立が決まっていた元宜野湾市長の伊波洋一氏の出馬の見直しまで始めた。宜野湾市長選でそこまで沖縄の空気は大きく変わったのだ。自民党にとっては久しく経験したことの無い追い風ムードである。そのような中での移設工事を中断しての和解受け入れだったのである。 では、このような時期に何故政府は和解案を受け入れたのだろうか? 安倍総理の答えは、「政府と沖縄県が訴え合う状況は良くない」という考えからである。また、多くの新聞や雑誌では、「6月の沖縄県議選や夏の参院選への悪影響を回避するため」という見方が多い。筆者は両方真実だと考える。宜野湾市長選の勝利で追い風が吹いているが、これまでの方針通り工事を断行して選挙を迎えると、政府との対立構図を利用した「オール沖縄」陣営に有利なように選挙を進められてしまうかもしれない。最悪の場合は万一の敗訴という可能性も残っている上、更にこの対立構図に終りが見えない。そうであるなら、工事を1年程度遅らせてでも、和解というプロセスを経て訴訟を完全に終わらせてしまうほうが懸命である。 いわゆる「急がば回れ」作戦を選んだのだ。今回の合意で、安倍総理が最もこだわったのは、再び訴訟合戦にならないようにすることだ。国と県の和解で3つの訴訟は取り下げられ、沖縄県の翁長雄志知事による埋め立て承認取り消しの違法性を争う訴訟にいずれ一本化される。和解案は「新たな訴訟の結果が出たら双方が従う」というのが合意の前提である。反政府闘争基地として利用された沖縄の歴史反政府闘争基地として利用された沖縄の歴史 安倍総理の判断は100点満点中80点の評価が出来る。マイナス20点は辺野古移設の遅延によるもので、日米同盟が維持できれば合格点である。ただしそれには、沖縄が普通の自治体であればという前提条件が必要だ。翁長知事の誕生で沖縄は全国の日米安保破棄を狙う勢力の反政府闘争基地、もしくは日本共産革命闘争基地となっているからだ。共産革命を夢見る勢力は翁長知事の誕生に希望を抱き、翁長知事を支援、または最大限に利用しようと背後で蠢いている。ここで、重要なことは、彼等は日米安保破棄を目的にしているのであって、辺野古移設阻止を目的にしていないということである(現場で運動している人は阻止を願っている人も多い)。 戦後の沖縄は日本防衛の重要拠点であると共に、常に日米安保破棄運動の基地として利用されてきた。かつては沖縄県祖国復帰を闘争材料として日米安保破棄、在沖米軍の撤去を画策していた。1960年代に沖縄祖国復帰運動をリードしていたのは、保守勢力ではなく、共産党を中心とした安保闘争勢力だったのだ。その中核団体は「沖縄県祖国復帰協議会」である。この名前を聞くと沖縄を代表した団体だと誰もが思う。しかし、実はその中に沖縄自民党は含まれていなかった。今のオール沖縄と全く同じ構図だ。 つまり、復帰前は「沖縄県祖国復帰」をエサにして県民を扇動し、県民の総意を装って反政府闘争を行っていたのだ。そして、今は普天間飛行場の県内移設反対で県民を扇動し、県民の総意を装って反政府闘争を行っている。結局、日米安保破棄さえ実現できれば、闘争材料は何でもいいのだ。しかし、彼等は辺野古闘争だけでは日米同盟を破棄に持ち込めないと考え、2010年頃から新たな手法の闘争を始めた。それは琉球独立工作である。琉球独立工作へシフトする辺野古闘争 辺野古移設問題を琉球独立工作にすり替えるキーワードが3つある。それは「米軍基地の押し付けは沖縄差別」と「第二(三)の琉球処分」「沖縄の自己決定権の回復」である。次のようなストーリーで沖縄県民を扇動している。 「安全保障は日本全体で負担するべきなのに、沖縄が日本に復帰して40年経過してもいまだに沖縄に押し付けている。辺野古移設で沖縄の民意はNO!という結果が出来ているけど、日本の人口の1%の沖縄の民意は99%の本土の人の民意に勝てない。これは構造的差別(無自覚に差別をしてしまっていること。)である。沖縄の自己決定権がないがしろにされている。これは、明治維新前に沖縄は琉球国という独立国だったが、沖縄県の設置の時に滅ぼされたことと同じである。今こそ、沖縄の自己決定権を回復しなければならない」。 このストーリーでもっとも危険な言葉が「沖縄の自己決定権の回復」である。沖縄県民向けに発する時は、「自治権の拡大」のニュアンスで使っているが、国連など海外に発信するときは、self- determinationという英単語を使い、(先住民族の)民族自決権という意味で使われている。昨年九月、翁長知事が国連で「沖縄の自己決定権がないがしろにされている」と訴えたが、これは事実上の琉球独立宣言になっている。沖縄県民の全く知らないところで、沖縄県民は琉球独立運動に利用されているのだ。政府が警戒するべき最新の工作 今年1月の台湾総統選挙で、中国との統一派の馬英九総統が台湾独立派の蔡英文氏に敗れた。長い間台湾の統一工作を進めてきた中国共産党にとっては大きなダメージである。太平洋の出口として東シナ海の軍事覇権が欲しい中国共産党は、台湾の統一工作と沖縄の反米工作、琉球独立工作をセットで行っているはずである。台湾総統選で圧勝し、笑顔でガッツポーズする民進党の蔡英文主席=1月16日、台北(共同) その台湾で独立派・蔡英文氏の総統就任が決まったことで、中国共産党の頼みの綱は沖縄の翁長知事しか残っていないということになる。翁長知事をどのように操って、沖縄の米軍基地を撤去させるか、または、どうやって日米同盟に亀裂を入れ機能不全にするかということを考えているはずだ。今後、中国共産党による沖縄工作は加速することはあっても決して収まることはない。日本政府は、手段を選ばない革命闘争集団が翁長知事のブレーンとして付いているということを想定して対処しなければならない。翁長知事が知事の座にいる限り、政府に対する闘争は決して終わらないのである。政府が警戒するべき最新の工作 ここで、日本政府への報告のつもりで、最新の沖縄の琉球独立工作につながる不穏な動きを2つ報告しておく。まず、3月7日の琉球新報から<沖縄問題、国連に発信 国際人権法研究会が発足>という記事を紹介する。 基地問題など沖縄で起こっているさまざまな問題を国際人権法の視点で捉え、国際社会に訴えようと、研究者などでつくる沖縄国際人権法研究会が6日、発足した。今後、沖縄の自己決定権、環境権、女性の権利、社会権、表現の自由の五つの作業部会を設置し、国際人権法と照らした現状を調査・研究する。その上で、国連の人権理事会や各種審査会に、沖縄の人権侵害を報告する活動を展開する。 呼び掛け人は、高里鈴代、星野英一、島袋純、若林千代、阿部藹(あい)、眞栄田若菜の6氏。現在は十数人程度の参加だが、今後、30人ほどの会員参加を目指す。〜中略〜 また、沖縄の人々が今後、国連に人権問題を訴えていく場合、人権問題の解決を担っている、スイス・ジュネーブの国連高等弁務官事務所に沖縄から人を派遣して常駐させて人脈を築いて直接アプローチすることが重要とも提起した。 このニュースに隠されている重要なことがある。国連では2008年から沖縄県民は日本の先住民、マイノリティーだと認識されており、人権関連の委員会から何度も「日本政府は琉球沖縄の人々を正式に先住民として保護するべき」と勧告を受けている。よって、「沖縄の人権問題」とは、国連では「先住民である琉球民族の人権問題」として扱われているのだ。昨年はこのような中で翁長知事が国連演説を行った。先住民族のトップが人権理事会に差別を訴えに来たのだ。そして、今年3月、国連への琉球民族の人権問題の働きかけを強くするために新たな人権研究会が発足したということである。つまり、政府の想定通りに訴訟問題が片付いたとしても、「日本国内の法律では解決できない先住民の人権問題」として国連に働きかける可能性が大きいということである。敵は手段を選ばない もう一つ、非常に危険な動きが今年2月上旬に明らかになる。沖縄県の首脳部が、改正地方教育行政法が2015年に施行されたことに伴い、現在の沖縄県教育委員会教育長の諸見里明氏(59)が退任し、後任に県総務部長の平敷昭人氏(57)を起用する人事案を固めたというニュースだ。話は昨秋に遡る。9月15日に4つのNPO団体が諸見里教育長を訪ね、更なるしまくぅとば(沖縄の方言)の普及推進を行うよう、「しまくとぅば教育センター」の設置を要請している。以下要請書の抜粋を列挙して紹介する。<「しまくとぅば教育センターの設置」の要請書から抜粋>(1)「琉球処分」以来、およそ135年にわたり、沖縄県の学校教育では、琉球の言語、祖先が歩んできた歴史や文化に関する科目が導入されないまま目隠し状態が続いている。(2)国連のB規約(市民的および政治的権利)人権委員会(2008年10月30日)や人種差別撤廃委員会(2014年8月29日)も、沖縄県には言語問題、人権問題、教育問題があることを問題視し、日本政府にその対応を勧告している。(3)2009年のユネスコによる『絶滅の危機に瀕した世界の言語』の発表以来、しまくとぅばは日本語から独立した言語だと一般的にみなされている。(4)しまくとぅばが日本語とは別の言語であれば、外国語学習と同等な組織立てられた取り組みが必要とされる。(5)センターの事業として、まず表記法の制定、それに基づくしまくとぅば教本の開発・制作、しまくとぅば講師の養成いろいろな試みが考えられる。 要請書には、沖縄県の設置を日本による琉球民族の侵略であるかのように表現をし、学校でしまくとぅばを教育しないことを問題視している。その根拠には、日本政府が認めていない、2008年以降の「沖縄県民は先住民と公式に認めるべき」との国連委勧告を掲げている。これは、純粋な地方の方言教育ではなく、沖縄の子どもたちの日本人としてのアイデンティティを破壊し、更に本土とは異なる言語環境をつくり沖縄の文化圏を日本から切り離す意図が読み取れる。安倍晋三首相との会談後、記者団の質問に答える沖縄県の翁長雄志知事 =3月4日、首相官邸(酒巻俊介撮影) このような要請書が教育委員会に提出されたが、諸見里教育長は学校でのしまくとぅば教育に関しては否定的であった。ある自民党県議からの情報によると後任の平敷氏は翁長知事の言いなりになる人物だという。今後、沖縄の学校がしまくとぅば教育を始めようとした時に、文部科学省は毅然として止めさせる覚悟が必要である。敵は手段を選ばない 以上、一見うまくいきそうな辺野古移設和解だが、それは沖縄県が通常の自治体である場合の話だ。沖縄県庁は既に反政府闘争基地と化している。その背後にいるものは、翁長雄志が知事の間に後戻りできないように知事の権限を使って様々なことをやるだろう。敵は手段を選ばない。既に様々なところから巧みな工作が浸透しており、何も手を打たなければその時間だけ工作や県民への洗脳が進んでいく環境にある。 結局、辺野古和解のあとに待つ、「オール沖縄」という反政府闘争勢力との戦いは琉球独立工作にシフトしていくことになる。つまり今回の和解案は、「これで大丈夫」だと安心するようなら失敗し、次の琉球独立工作にしっかり対処できれば成功と評価される。政府・自民党は、琉球独立工作に関する国内外の動きについて各省庁を縦断して情報収集・分析をしていただきたい。そして、願わくば、純粋な県民が知らない間に反日日本人にならないように、そのような洗脳工作に対して1日でも早く対策を打っていただきたい。

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    南シナ海の緊張 辺野古の必要性を沖縄県民に訴えよ!

    西村眞悟(前衆院議員) 中国共産党の重要大会である第18回中央委員会第5回総会というのが二十六日から始まったその時に、アメリカ海軍は、南シナ海の「航行の自由作戦」(フリーダム オブ ナビゲーション)を実施したようだ。 習近平主席は、九月にアメリカで「スプラットリー諸島は中国固有の領土だ」と言い放ち、サイバー攻撃の加害国でありながら、被害国だと憎たらしく居直り、今月十月にはイギリスで「日本軍国主義の残虐性」を強調し、さらに、かの大英帝国に巨額資金援助をする大中華の頭目を演出して、意気揚々と共産党の第五総会に臨んだ。  そして、「航行の自由作戦」によって晒し者になった。 何のことはない、習近平とは、他国の領土領海を強奪するならず者国家の頭目に過ぎないではないか、アメリカに舐められているではないか、と。米海軍横須賀基地を出港するイージス駆逐艦ラッセン =神奈川県横須賀市(米海軍提供) アメリカは、一隻であるが、イージス艦「ラッセン」を出している。イージス艦は、空中、海上そして海中の複数の敵を同時に撃破できる。従って、中共が埋め立てている島の十二浬以内を悠々と航行する「ラッセン」の存在感は強烈である。アメリカ海軍のイージス艦のROE(ルール オブ エンゲージメント、交戦規定)は厳しいから、かつて、中共が、尖閣沖で漁船を海上保安庁の巡視船に衝突させたようなことはとうていできない。また航空機をイージス艦の上空に飛ばすこともできない。  要するに、東シナ海で中共が我が国に対してしてきたことは総てできない。この「ラッセン」の母港は我が横須賀だ。 前の通信で、我が国の海上自衛隊も、南シナ海でアメリカ軍と共同行動を執っていることを願ったのだが、  現在、我が国内は、マンションの杭の問題やらが連日トップニュースで、一億総活性化という一億で「ええじゃないか踊り」でも始めるような掛け声は聞こえるが、九月まで、あれほど熱心に我が国の安全保障問題に関心を示した国会は、現実の安全保障「事態」に対しては、あれはウソでしたと言わんばかりに関心を示さない。 つまり、あいつらは、「空論」は言うが、現実の問題には「無能」なのだ。これが我が国の現実なら仕方がない。はやくこいつらが国会からいなくなるのが国のためだ。 しかし、仕方がないとだけ言っていても仕方がない。そこで、辺野古についてだけ言っておく。 幸いにして辺野古は、中共の傀儡知事のお陰で「法的処理の世界」に入っている。従って、政府は、迅速に法的手続きを済ませ、断固として工事を進めなければならない。 その上で、南シナ海での事態が辺野古の必要性を如何に高めているかを国民に衆知させねばならない。特に沖縄県民に周知させねばならない。 官房長官や防衛大臣は、沖縄の街頭に立ったらどうか。シナの屏風を背景にして沖縄県庁であの傀儡知事と話をするのは無益だが、直に県民に訴えることは大いに有益である。 我が国政府の辺野古に関するこの断固とした姿勢が、我が国の抑止力を高め、南シナ海のイージス艦「ラッセン」のプレゼンスを高める。つまり、我が国の国際貢献に繋がることなのだ。 さて、南シナ海は、これからどうなるのか。マスコミには、専門家による、米中が「落としどころ」を探っているなどの解説がある。しかし、「おとしどころ」など探って見あたるのだろうか。  習近平の背景は、軍は軍閥化して汚職摘発で習に怨みをもつ分子も多い、習の暗殺未遂が発覚している、共産党組織は汚職に塗れている、中国経済は「自壊段階」に入っている、民衆の貧富の格差の増大は危険水域に入っており年間二十万件の暴動が起こっている。要するに、何が起こるか分からない、つまり自壊段階にある共産党独裁国家を相手にして、「おとしどころ」などあろうか。 ただ一つ、確実に言えることは、何が起こっても対処できるようにしておくこと、 つまり、戦いに備えておくことが死活的に必要である。 (西村眞悟の時事通信 2015.10.29分を転載)

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    辺野古訴訟和解で最も喜んでいるのは裁判所

    小林正啓(弁護士) 沖縄県名護市辺野古沖の埋め立て承認を巡り、国が沖縄県を訴えた裁判について、3月4日に和解が成立し、和解条項や関連資料が公開された。この裁判や背景事情について特に詳しいわけではないが、弁護士として和解条項をみた場合、非常に興味深い。和解条項は要するに、次の2点を柱にしている。(1) 国と沖縄県双方が、本県に関して提起した訴訟等を全部取り下げ、訴訟外での協議を行う。(2)一方で、沖縄県が行った埋立承認取消処分については、国と沖縄の双方が必要な法的手続を進め、協議が調わず裁判所の判決が確定した場合には、これに従うことを確約する。 市井の弁護士が日常関わる和解条項に比べると、(1)も(2)もあり得ない条項だ。まず、(1)は当事者同士で話し合う、という内容だが、そもそも話し合いができないから裁判になっているのであるし、双方取り下げて話し合うという約束を、通常は和解とはいわない。和解とは、紛争の終局的解決を意味するからだ。 一歩譲って、本件訴訟の当事者は国と地方自治体という、それぞれ責任ある公的団体だから、訴訟外で話し合うという和解もありとしよう。 そうだとしても、(2)はさらにありえない。なぜなら、一般国民や一般弁護士から見れば、裁判結果が出れば従うのが当たり前だから、わざわざ「判決に従います」という和解条項を設ける意味がないからだ。 この条項には、裁判所の強い政治的意図が込められていると思う。その意図からすれば、今回和解が成立したことで、最も喜んでいるのは裁判所ではないだろうか。 本件訴訟で和解が成立しなければ、裁判所は判決を出さなければならない。沖縄県敗訴の判決を出した場合、県は様々な訴訟を提起して国に対抗してくる可能性がある。これは、沖縄の米軍基地問題というきわめて政治的な訴訟に裁判所が巻き込まれることを意味するし、裁判所がこれをすべて退けた場合、国に対する沖縄県(民)の怒りは政府ではなく裁判所に向けられるだろう。国民全体から見ても、裁判所が政府の走狗に成り下がっているように見られかねない(既になってるじゃないか、という議論は措く)。他方、いかに国を勝たせたいと思っても、そうなるとは限らない。国の処分にミスが出るかもしれないし、知事には広い裁量権があるからだ。もし裁判所が国を敗訴させた場合、政府与党の裁判所に対する圧力が強まるおそれがある。ただでさえ、一票の格差訴訟や婚姻禁止期間違憲訴訟等で、風当たりが強くなっているのだ。つまり、このまま基地問題に裁判所が巻き込まれた場合、裁判所の政治的正統性なり権威なりが低下する可能性が高い。したがって、裁判所としては、本件訴訟で判決を出すことは避けたい。しかし、当事者間での協議がまとまらず、訴訟で決着する事態に再度至った場合には、文句を言わず従ってもらうための布石を打っておきたい。裁判所は、だいたいこう考えたのではないかと思う。 紛争が起きたとき、第三者に裁定を委ねる合意を「仲裁合意」という。和解条項の(2)は、「和解」ではなく「仲裁合意」だ。仲裁合意をとっておけば、文句があっても表向き口に出せない。つまり、国と沖縄県に対し、裁判所が独立かつ終局的な紛争解決機関であること(つまりは裁判所の正統性と権威)を認めさせた点において、裁判所がもっとも実を得たといえる。 もっとも、これですべての問題が解決したわけでは、もちろんない。裁判所にとっても同じことである。今回の和解成立は、たとえるなら、大坂冬の陣が終わっただけかもしれないのだから。(「花水木法律事務所」ブログより2016年3月7日分を転載)

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    辺野古和解、「三本の矢」だけで自民が勝ち抜けるほど沖縄は甘くない

    仲新城誠(八重山日報編集長) 安倍晋三首相は3月4日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐる代執行訴訟の和解を受け入れると表明した。国と県が争っていた3件の訴訟は取り下げられ、安倍首相は辺野古埋め立て工事を中止した。夏の参院選を見据え、一時的な政治休戦を選択した安倍首相の「奇策」である。しかし安倍首相、翁長雄志知事とも、辺野古移設の推進、反対姿勢を転換させる様子はなく、両者の対立構造は根本的には変わらない。 しかし参院選こそ、辺野古移設の行方を左右する天下分け目の関ヶ原である。自民党からは現職の島尻安伊子沖縄担当相、移設に反対する「オール沖縄」勢力からは元宜野湾市長の伊波洋一氏が出馬する。 島尻氏が勝利すれば、安倍政権は初めて「民意」を掲げて辺野古移設を着実に推進できるようになり、移設をめぐる環境は劇的に改善する。 伊波氏の当選なら、反基地派のゲリラ的な妨害活動が勢いを増し、辺野古移設は、ベトナム戦争のように泥沼化するに違いない。 では、島尻氏と伊波氏は単純にどちらが強いのか。前回の参院選沖縄選挙区では、革新系政党が分裂し、島尻氏が漁夫の利で辛うじて当選した。しかし今回は共産党が独自候補の擁立をやめ、伊波氏の支持に回っている。過去の得票データから推測する限り、伊波氏がやや優勢だ。 そうした情勢で、辺野古移設の工事を続行したまま参院選に突入すれば、何が起こるだろうか。沖縄メディアは「民意を無視し、工事を強行する安倍政権」に対する批判報道を連日のように繰り広げ、島尻氏のイメージは悪化の一途をたどるはずだ。安倍政権としてはこうした事情を勘案し、和解を決断したのだろう。 安倍政権が参院選沖縄選挙区の勝利にいかに執念を燃やしているか、沖縄からも、ひしひしと感じる。真っ白なスーツで出馬会見に臨んだ今井絵理子 「第一の矢」は、候補者である島尻氏自身の大臣登用だった。島尻氏は当選2回。過去に政務官を一度経験しただけで、沖縄には島尻氏より年長で当選回数も多い政治家がいる。二階級特進とも呼ぶべき大臣登用は、明らかに参院選対策の一環だった。 「第二の矢」は沖縄出身のタレント、今井絵理子氏の参院選比例での擁立だ。同じ女性候補として、官邸が島尻氏とのタッグを期待しないわけがない。ただし、比例で共闘する公明党との関係で、吉と出るか凶と出るか未知数だ。 そして和解が「第3の矢」である。県は工事の中止を勝ち取ることができるが、国は中止による移設の遅れというリスクを一方的に抱え込む。国の実質的な譲歩であることは間違いない。だから安倍首相は、2001年、当時の小泉純一郎首相がハンセン病訴訟の控訴断念で見せたような、一種のサプライズ効果を期待したはずだ。辺野古反対の世論を一挙に軟化させようと狙ったのかも知れない。沖縄メディア 変わらぬけんか腰 しかし反基地派の急先鋒である県紙「沖縄タイムス」「琉球新報」は、和解成立後もけんか腰を変えようとしない。 安倍政権が和解条項に基づき、翁長知事の埋め立て承認取り消しに対する是正指示を出したことに対し、琉球新報は3月8日「独善と強権に対抗しよう」と題する社説を掲載した。 「敗訴を恐れ、県との歩み寄りを演出しようとしたよこしまな思惑を自ら掘り崩す挙に出たことで、世論の反作用を引き起こすだろう」「新基地を止める手だては裁判以外にも多くある。県は臆せずに渡り合ってほしい」。 沖縄タイムスの同日の社説も負けず劣らずだ。「瑕疵を修正し是正指示に臨むなら、何より政府がしなければならないことがある。それは自らの非を認め、沖縄県と県民へ謝罪することである」。 沖縄メディアがこのような状況である限り、安倍政権としては、和解だけで厳しい世論を打開できそうもない。 さらに和解に対しては、身内の自民党沖縄県連からも不満の声が上がっている。副会長の翁長政俊県議は7日、石垣市で開かれた集会で「寝耳に水だ。まず当事者である沖縄の私たちに事前に説明がないと、有権者に説明ができない」と述べ、和解が官邸主導で、県連の頭越しだったと指摘。「官邸には注文を付けさせてもらった。自民党に対する信頼の揺らぎにつながる」と苦言を呈した。 これに対し、石垣市の中山義隆市長は「幸い和解になったので(翁長知事は)基地問題はいったん脇に置き、県民の生活に目を向けてほしい」と和解を前向きに評価した。 自民党が参院選比例で今井氏を擁立した際も、沖縄県連に事前の相談はなく、地元から批判の声が上がっていた。参院選に向けた安倍首相の「奇策」に地元も振り回されているのが現状だが、個々の政治家によって理解度や評価は異なる。 自民党沖縄県連としては、首相の参院選対策をどこまで肯定的に受け止め、一致団結できるかが今後のポイントになりそうだ。 いずれにせよ「三本の矢」だけで勝ち抜けるほど、沖縄選挙区は自民党にとって甘くない。いずれ安倍政権は第四、第五の矢を放つ必要性に迫られるのではないか。 沖縄が中国の脅威に対する最前線であることを考えると、米軍基地のあり方が問われる参院選は、国運を懸けた戦いになるかも知れない。 参院選に限らないが、八重山諸島の住民としては、尖閣周辺海域で中国の武装船が領海侵犯を繰り返す現状も含め、ぜひ「沖縄を守るにはどうすればいいか」を正面から議論してもらいたい。「米軍基地は迷惑施設だ」と叫ぶだけでは、どうにもならない過酷な現実が目の前にある。機関砲のようなものを搭載した中国海警局の「海警31241」(第11管区海上保安本部提供) 正直なところその点で、私は、のらりくらりとした「オール沖縄」には業を煮やしている。一方で保守系の政治家も、右翼呼ばわりされることを恐れ、安全保障問題の議論から逃げ続けている。 沖縄タイムスや琉球新報が支配する言論空間で育ち、憲法9条を金科玉条のように受け取っている多くの県民にとって、戦争や侵略の危険性を警告する私たちの声は耳に痛い。保守も革新も、どっちもどっちという気がする。 参院選で誰が勝つにせよ、尖閣を抱える八重山住民が聞くに値する政策論争を展開しようではないか。私たちは文字通り、島々と子孫の安心安全な未来を守るため、納得のいく候補に一票を投じるだろう。

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    沖縄の翁長知事を甘やかしすぎていないか

    西原正(平和安全保障研究所理事長) 3月4日、安倍晋三首相は米軍普天間飛行場の辺野古移設をめぐる翁長雄志沖縄県知事との「訴訟合戦」に対して福岡高裁那覇支部が提示した和解案を受け入れ、協議を復活させることとした。 安倍政権は、近づく沖縄県議会選挙や参議院議員選挙に当たって、積極的に沖縄の基地反対ムードを変える努力をし、基地移設の重要性に対する訴えを強化すべきである。 日米同盟の障害となる言動  そのためには、翁長知事の国防感覚の欠如が日本、特に沖縄の安全をやがて脅かすことになることを効果的に県民に訴える必要がある。本来は翁長知事も米軍基地の県外移設を煽るのではなく、厳しさを増す沖縄の安全保障環境を県民に訴える責務がある筈(はず)である。 中国の習近平国家主席はオバマ米大統領に「太平洋を二分し、東半分は米国の、西半分は中国の支配下におくようにしたい」と提案している。知事は時折、日米同盟は重要だと発言しているが、中国が西太平洋から米軍を追い出そうとしているとき、沖縄に米軍基地のない日米同盟とは何なのかを説明できるのだろうか。 昨年以来、日米ガイドラインの修正、平和安保法制の採択などで日米同盟は従来に増して強化されることになった。しかしこの強化に深刻な障害となっているのが翁長知事の言動である。 翁長知事は過去に北京を何回か訪問したとされるが、中国の要人に尖閣諸島は沖縄県の一部であることを一度でも説いたことがあるのだろうか。そういう報道はない。中国の公船が尖閣諸島に頻繁に接近することに怒りをぶつけず、米軍基地の県外移設に拘(こだわ)るのは県知事として失格ではないのか。沖縄本島や南西諸島の地政学的重要性を認識し、それを日米政府と共有する者が沖縄県知事になる最低限の要件であるべきだ。 2月7日の北朝鮮による弾道ミサイルの発射が先島などの上空を通過するといわれたとき、先島の人たちは自衛隊のパトリオット迎撃ミサイルの配備を歓迎した。米軍も警戒態勢に入った。翁長知事は「パトリオット迎撃ミサイルは十分なのか」と言ったそうであるが、そうであるならば、沖縄をどう守るのかに関しての議論に加わるべきではないのか。また北朝鮮によるミサイル発射予定が1日早まるとの通告があったとき、夜を徹してパトリオットの配備を遂行した自衛隊に対して、翁長知事は慰労の言葉をかけただろうか。自己過信に陥った政治家の失策 翁長知事の登場以来、安倍政権は沖縄県に譲歩をし過ぎた。県知事が辺野古移設反対を強硬に主張しても、安倍政権は沖縄県への振興予算を民主党政権時代よりも増額してきた。安倍政権が発足した後の平成25年度には3001億円だったものが、翌年には3460億円となった。安倍政権は平成33年度まで年3千億円台の予算を付けると公約している。 その間、首相は翁長知事が首相と同格のように振る舞うのを許してきた。首相、官房長官、防衛相がしばしば翁長知事のもとに足を運ぶことが、逆に知事を甘やかしていないだろうか。中谷防衛相(左)と会談する沖縄県の翁長雄志知事(右)=2015年5月9日、沖縄県庁 翁長知事も自己の政治力を過信し、辺野古移設反対を米国政府に訴えるため、昨年6月にワシントンに出向いた。しかし米国側からは、一様に「日米政府が決めたことを否定して一知事の意見を聞くつもりはない」と言われてしまった。当然である。これも日本国内で甘やかされ自己過信に陥った政治家の失策であった。 議会上院軍事委員会のマケイン委員長は2月3日の公聴会で、移設計画が歴代の知事の立場によって左右されているとし、「私や他の委員にとっての不満の源になっている」と述べている。翁長知事がこうして日米関係を複雑にしている政治的責任は大きい。 安倍政権は6月の沖縄県議選および夏に予定されている参院選を迎えるにあたって、沖縄の反基地ムードを少しでも変える努力をすべきである。沖縄の2大日刊紙、沖縄タイムスと琉球新報による基地問題に関しての誤った報道があれば訂正を要求するとか、沖縄県民向けに政府広報紙を出すとか、ホームページで政府の立場を魅力ある形で提示するとか、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を用いた活動をするのも必要であろう。 南西諸島は中国の太平洋進出を抑制できる戦略的位置にあり、沖縄県の有事には在沖米軍基地が重要な役割を果たす。現在、中国の公船や軍艦が尖閣諸島に接近はするが、南シナ海の岩礁のように占拠をしないのは、沖縄に補強されつつある自衛隊と米軍が駐留しているためである。 中国が南シナ海の岩礁を埋め立て軍事施設を配備し始めているのは、それを牽制する米軍が近くにいないからだ。つまり力の空白があれば、中国は勢力を拡大してくる。この点を政府はもっと効果的に沖縄の人たちに説明すべきである。政府が沖縄に対してすべきことはまだまだたくさんある。

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    自民党参院選戦略 今井絵理子氏婚約者問題で完全に裏目

     今夏の参院選を「憲法改正の最大のチャンス」と意気込む安倍晋三首相の選挙戦略に大きな狂いが生じている。自民党内のスキャンダルの連鎖が参院選の目玉候補にまで広がっているからだ。いまや首相のストレスは頂点に達し、官邸内に、「身体検査はどうなっているんだ」と怒りの声が飛んでいるという。 最大の誤算は本誌が報じた参院選の目玉候補、SPEED・今井絵理子氏の「婚約者の逮捕歴」問題だ。自民党大会で「君が代」を斉唱する歌手の今井絵理子氏=3月13日、東京都内のホテル「障害を持っている子供たちがより明るい希望をもてる社会づくりをしたい」 シングルマザーとして難聴の子供を育てる今井氏は出馬会見でそう抱負を語り、「女性が輝く社会」を掲げる安倍政権は彼女を参院選のシンボルとして全国比例に擁立することを決めた。 ところが、その今井氏は「婚約者」に足を掬われる。同棲相手で元風俗店経営のA氏が昨年3月、女子中学生を含む18歳未満の少女3人にみだらな行為をさせた容疑(児童福祉法違反)で那覇署に逮捕され、処分保留で不起訴になっていたのだ(本誌前々号既報)。本誌前号ではさらに、A氏から「うちの店で働け」といわれて売春をさせられていたという少女(当時17歳)の生々しい証言を報じた。 未成年の少女を風俗で働かせていた婚約者の行為は今井氏の出馬を妨げるものではないとはいえ、参院選の候補者という公人になる以上、彼女は婚約者の行為についてどれほど把握し、どう考えているのか、有権者に見解を明らかにする責任があるはずだ。この問題は地元・沖縄の自民党関係者の間でも大きな波紋を呼んでいる。「今井さんの出馬は県連に根回しがないまま党本部のトップダウンで決まった。米軍基地移設問題を抱える沖縄では参院選で自民党の島尻安伊子・沖縄担当大臣の苦戦が予想されている。 そこで党本部は地元出身のアイドル、今井さんを全国比例で擁立し、島尻大臣とセットの選挙戦で勝利を呼び込もうという戦略のようだが、完全に裏目に出た。沖縄の参院選は『選挙区は自民、比例は公明』と呼び掛ける自公共闘が前提だ。今井氏を比例で擁立すれば自公の票のバーターが成り立たないうえ、今井氏の彼氏のスキャンダルは肝心な女性票まで逃がしてしまう。党の選対本部は事前に彼氏がいるかどうか確認してしっかり身体検査をするべきだった」関連記事普天間基地の辺野古移設 安倍オバマ会談誤訳でメディア同調辺野古移設は日本の利権の話 米軍の要請ではなく国防無関係櫻井よしこ氏 鳩山政権の辺野古移設拒否は理解不能と指摘「沖縄では住民75%が日本からの独立希望」と中国紙報じる中国が「北朝鮮は自国領」と伏線張っていると櫻井よしこ氏

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    高須院長、沖縄の独立を心配「中国の気持ちがわかる」

    配なんだよ。もともと自民党員だったといっても、野党の支持を受けているわけだし、去年国連でやった演説も沖縄独立に傾いた内容だったみたいだし。おそらく翁長さんの本音は沖縄の独立なんじゃないかって思うんだよ。──たしかにそういう見方をするメディアも多いですよね。高須:で、沖縄は独立して上手いことやれば、ドバイみたいな観光都市になれるはずなんだよ。気候も良いし、観光資源も多いし。石油が取れなくて本当に貧しかったドバイが、あれだけリッチな都市になれたんだから、沖縄がああなるのなんてたやすいことだよ。そんな沖縄が独立するのは、日本にとってマイナスになりかねないからね。──日本と台湾の関係は良好ですが、沖縄に変な影響を与えるのは勘弁だ…という感じですね。高須:まさにそう。台湾は本当に大好きなんだけどねえ。──なるほど。ところで、今回の総統選で“独立派寄り”といえる蔡英文氏が当選したのは、中国にとっては痛手ですよね。高須:中国は最近よくないこと続きだよ。北朝鮮も言うことを聞かないで勝手に核実験やらミサイル発射やら繰り返すし。中国政府の内部は外から見るよりも混乱しているかもしれないな。もしかしたら、いきなり崩壊なんてこともあるんじゃないかな。だってさあ、中国民のなかで共産党を支持している人がどれくらいいるんだっていう話だよ。結局一党独裁で軍が強いから、どうにか成立しているだけだからね。一気に民主化が進んで、共産党が崩壊するっていうシナリオもありうるよ。──なんとなくソ連の崩壊に近い展開ですね。高須:そう。ソ連もそうだったけど、経済が不安定になると一気に崩れると思う。やっぱり大きな国はランニングコストがかかるから、一回資金がなくなると全部がダメになりやすいんだよ。景気が良いときは問題ないけど、景気が悪くなるとものすごくもろさが目立ってくる。特に中国なんて、もう近いうちにバブル経済が崩壊して、どうしようもなくなることがわかってるんだから。本当に危ないと思うよ。──中国の今の体制はどれくらい持つでしょうか?高須:5年くらい持てばいいほうなんじゃないの? その前に台湾が独立するかもしれないし、なんなら比較的景気が良い地域が中国という泥船から逃げるように独立するかもよ。上海あたりの独立なんかはあるかもなあ。 * * * 台湾の独立は歓迎しつつも、沖縄の独立を心配する高須院長。さらに5年以内の中国崩壊というシナリオを予想したが、果たしてどうなるか? 経済的には日本にも大きな影響があるはずなので、気になるところです。たかすかつや 1945年愛知県生まれ。医学博士。昭和大学医学部卒業、同大学院医学研究科博士課程修了。大学院在学中から海外へ(イタリアやドイツ)研修に行き、最新の美容外科技術を学ぶ。脂肪吸引手術をはじめ、世界の最新美容外科技術を日本に数多く紹介。昭和大学医学部形成外科学客員教授。医療法人社団福祉会高須病院理事長。高須クリニック院長。人脈は芸能界、財界、政界と多岐にわたり幅広い。金色有功章、紺綬褒章を受章。『ブスの壁』(新潮社、西原理恵子との共著)、『その健康法では「早死に」する!』(扶桑社)など。最新刊は『筋と義理を通せば人生はうまくいく』(宝島社)。関連記事普天間基地の辺野古移設 安倍オバマ会談誤訳でメディア同調辺野古移設は日本の利権の話 米軍の要請ではなく国防無関係櫻井よしこ氏 鳩山政権の辺野古移設拒否は理解不能と指摘「沖縄では住民75%が日本からの独立希望」と中国紙報じる中国が「北朝鮮は自国領」と伏線張っていると櫻井よしこ氏

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    今井絵理子は翁長氏の「刺客」になれるか

    今夏の参院選で自民党の目玉候補の一人として、ダンスボーカルユニット「SPEED」のメンバー、今井絵理子氏の擁立が決まった。抜群の知名度で選挙に関心が薄い若年層への浸透を狙うが、彼女にはもう一つ、大きな役割も期待されている。それは、翁長雄志・沖縄知事の「刺客」というミッションである。

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    今井絵理子を擁立した自民の「誤算」とオール沖縄への打撃

    篠原章(評論家・批評.COM主宰) 7月に行われる参院選挙(比例区)に、SPEEDの今井絵理子氏が自民党から出馬することが話題になっている。2月9日に自民党本部で開かれた記者会見では、聴覚障害を持つ長男の存在が背中を押したと述べ、「明るい希望をもてる社会」をつくりたいと決意を語った。 自民党本部には、若い世代にも知名度の高い今井氏の擁立によって若年世代浸透したいという思惑があるらしいが、狙いはそれだけではないという。今井氏の出馬が、翁長雄志知事の「オール沖縄」に打撃を与える、つまり沖縄県民の「辺野古反対」を弱める効果があると考えているようだ。 すでに「オール沖縄」の退潮は始まっている。1月24日に行われた宜野湾市長選で、翁長雄志知事の「オール沖縄」が支援する志村恵一郎候補が、6000票もの大差で現職の佐喜眞淳候補に敗れている。近年の宜野湾市における選挙の動向を見ると、共産党、社民党、社会大衆党(地域政党)といった「革新系」の得票は最低で約17000票、最高で約22000票となっている。投票率の高低に配慮しても、翁長氏の応援による得票はせいぜい3000票程度である。つまり、選挙の敗因は、保守系有権者をまとめきれなかった翁長知事側にあることは明らかだ。この選挙結果を、県内世論が「辺野古反対」一辺倒から変化しつつある兆候と捉えてよいだろう。  選挙以降、「辺野古反対」「翁長支持」の県民世論をリードしてきた沖縄タイムス、琉球新報の筆致にも元気がないが、県内二紙も世論の動向をじっくり観察する段階に入った可能性が高い。沖縄県名護市辺野古の埋め立て承認をめぐる代執行訴訟の第4回弁論の開廷を待つ翁長雄志知事(左端)ら=2月15日、福岡高裁那覇支部(代表撮影) 目下審理中の国による代執行訴訟でも県側の敗色は濃厚で、裁判所による、県に対して温情的な「和解案」も決定打とはなりにくい状況だ。県側は「工事中止・国との話し合い継続」という和解案に前向きだが、国は和解よりもむしろ判決を期待している模様で、両者の和解協議が成り立つのかどうかも微妙な情勢である。「知事と政府とのあいだで、すでに和解について合意が形成されている」という観測もあるが、国の対応を見るかぎり和解決裂に至る可能性が強い。万一、和解が成立した場合は、それがどんな内容であっても「オール沖縄」は崩れ去るだろう。国への「カード」が消えていく翁長知事 こうした情勢下で、沖縄県は6月に県議選、7月に参院選を迎えることになるが、地縁血縁がよりモノをいう県議選はともかく、参院選では「オール沖縄」が敗北する可能性が高い。参院沖縄地方区は、現職国務大臣(沖縄・北方担当)の島尻安伊子氏と元宜野湾市長で「オール沖縄」の推す伊波洋一氏の一騎打ちが予想されるが、宜野湾市長選後、「オール沖縄」の結束力も怪しくなっている。 たとえば、選挙の敗因をめぐって、保守系翁長派の呉屋守将金秀グループ会長(辺野古基金共同代表)が、志村陣営の選挙対策本部長代行だった伊波氏に「詰め腹」を迫ったことが伝えられ注目を集めた。「オール沖縄」に属する市町村長の足並みも乱れつつある。石嶺傳實読谷村長は、昨年12月、返還されるキャンプ・キンザー(牧港補給地区)の倉庫など一部施設の移設を「苦渋の決断で受け入れる」と村議会で表明している。規模は小さいが、これも普天間基地の辺野古移設と同様、移設条件付きの基地返還であり、両者ともSACO合意の返還プログラムに位置づけられた「基地の整理・縮小」のプロセスである。キンザーはイエスだが、普天間はノーという論理が説得力を持つかは疑問だ。 翁長知事は陣営の引き締めに躍起になっているが、裁判で敗訴した場合の次の手も含め、国と闘うための手札もしだいに見あたらなくなっている。 ただ、自民党の側にも「誤算」はありうる。自民党沖縄県連のレベルでは、公明党との選挙協力の関係で、一部の自民支持者に対して「地方区は島尻、比例区は公明党」と投票用紙に書くよう呼びかける予定だという。ところが、抜群の知名度を誇る今井氏の出馬で、「地方区は島尻、比例区は今井(自民党)」という票が増えるのではないかと懸念されている。これによって、公明党との選挙協力にヒビが入ると、今後「オール沖縄」側に足を掬われる可能性もある。自民党本部は今井氏を「オール沖縄」に対する刺客と考えているようだが、県連にとっては逆効果になるケースもありうるということだ。 とはいえ、保革相乗りの綻びが目立ち始めた「オール沖縄」の退潮のほうがより深刻で、順調にいけば参院選で自民党が勝利する可能性は強い。そうなれば、「オール沖縄」は瓦解しかねない。 実は「基地反対」の有力な論者のなかにも、「オール沖縄」に反旗を翻すような動きがある。前泊博盛沖縄国際大学教授や作家の目取真俊氏などは「撤去すべきは嘉手納基地」という注目すべき主張を展開し始めている。とくに前泊氏は「嘉手納基地の危険性は普天間基地の比ではない」として運動の転換を促している。敗色濃厚の辺野古にこだわり続けることに警鐘を鳴らしているともいえよう。翁長知事は「日米安保支持」の立場から嘉手納基地の必要性は公言しているから、こうした主張に与することができない。本物の「基地反対」と少々怪しげな「基地反対」とがいよいよ袂を分かつ段階に入ったと見てよいだろう。 いずれにせよ、この春から夏にかけての動きのなかで、翁長知事と「オール沖縄」が正念場を迎えることだけは間違いない。

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    世代が違う「ニュー沖縄」 翁長知事を脅かす今井絵理子の存在感

    仲新城誠(八重山日報編集長) 沖縄出身の芸能人たちが勃興してきた時代、私は20代前半で、沖縄の大学を卒業したばかりだった。東京から遠く離れた石垣島にいて、テレビで熱狂的に報じられる安室奈美恵やSPEEDを見ながら、単純に「沖縄出身でもこれほどのスターになれるのか」と思った。彼女たちの出現以前は、沖縄出身で目立った芸能人はほとんどいなかったからだ。ましてや紅白歌合戦のような大舞台で沖縄人を見るのも稀だった。沖縄出身のスターが珍しくなくなった昨今の芸能界を見ると、隔世の感がある。 彼女たちより10歳ほど上の私は、沖縄復帰前の世代がいまだに深刻に訴える、本土からの「差別感」が癒やされる道のりを、この目で見て育った。 米軍支配の苦難から脱し、政府の沖縄振興策を背景に、インフラ整備がみるみる進み、県民は見違えるような豊かさを享受できるようになった。沖縄の自然や文化が全国的に見直され、観光客や移住者がどんどん増えた。今や沖縄は世界屈指のリゾート地に成長し、本土の人たちから憧憬の眼差しを向けられるようになった。 自民党が参院選比例代表に擁立したSPEEDの今井絵理子氏(32)は沖縄復帰から11年後の1983年に生まれた。沖縄が背筋をぴんと伸ばし、世界に向けて胸を張り始めた「ニュー沖縄」の第一世代である。基地負担の歴史を沖縄戦から説き起こし、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設を「沖縄差別だ」と切り捨てる翁長雄志知事とは「世代が違う」のだ。 私は復帰直後の生まれなので、上の世代の屈辱感も、下の世代のプライドも等距離に理解できる。要するに、二つの世代の狭間で生きてきた。 今井氏が当選すれば、翁長知事がシンボル的な存在になっている「旧来の沖縄」に対し「ニュー沖縄」の世代が初めて国政に進出する。沖縄で支配的な反基地の風潮に迎合せず、安全保障問題できちんとした政策の柱を堅持すれば、翁長知事への対抗軸として大きな存在感を発揮し得るだろう。自民党の参院選比例代表候補に決まり、手話を交えて記者会見する「SPEED」メンバーの今井絵理子氏(中央)=2月9日午後、東京・永田町の党本部 今井氏や、その世代が沖縄の基地負担に鈍感だというわけではない。自らが背負って立つ沖縄像の違いである。それは「本土対沖縄」という構図で語られる沖縄ではない。「日本の中の沖縄」または「日本の最先端をゆく沖縄」でもあるように感じる。 今井氏は障害を持つ子どもを育てているということで、訴えは福祉政策がメインになりそうだが、安全保障問題はなるべく避け、あえて翁長知事との対決を避けるという中途半端な姿勢であれば、有権者としては物足りない。単なるタレント候補で終わってしまう懸念もある。 沖縄の市町村では20代の議員や40代の首長も珍しくなくなったが、国政レベルでは、そこまで若返りは進んでいない。沖縄出身の30代女性が国会議員になった例は過去にない。今井氏は比例代表なので、当選しても活動が沖縄に限定されるような国会議員になるわけではないが、若者、しかも女性の社会進出という点で、沖縄社会にも大きなインパクトを与える可能性がある。 実際のところ、私が聞いた範囲では、沖縄でも本土でも、今井氏は「沖縄」というイメージで見られているようだ。そこで、今井氏には沖縄選挙区で3選を目指す島尻安伊子沖縄担当相と連携した選挙運動が期待されている。自民党は前回衆院選で、県内4つの選挙区すべてを落としており、国政選挙で巻き返す意義は大きいが、実は大きな問題点がある。 沖縄の選挙では自公の選挙協力が重視され「選挙区は自民、比例は公明」と呼び掛ける運動が一般的なのだ。島尻氏が会長でもある自民党沖縄県連としては公明党の手前、比例で今井氏を応援するわけにはいかないのである。 今井氏の擁立は自民県連にとって寝耳に水だったようで、関係者は「報道があった時、すぐに公明党との関係がどうなるか心配になった。支持者からも県連に抗議の電話があったと聞いている」と暗い表情を見せる。 辺野古移設に反対する「オール沖縄」勢力は元宜野湾市長の伊波洋一氏を擁立した。「オール沖縄」は宜野湾市長選で敗れたが、参院選が天王山と見て、必死の巻き返しを図っている。 島尻氏はただでさえ反基地派から落選運動の標的にされており、参院選はかなり厳しい選挙になるとの見方が一般的だ。自民県連としては島尻氏の3選のため、自公協力をぜひとも成立させたいところであり、比例では今井氏を支援する党本部との板挟みになる可能性もある。 ただ、参院選の自公協力に関しては、もともと不透明な面がある。沖縄の公明は辺野古移設に反対しているからだ。 辺野古埋め立てを承認した仲井真弘多前知事が翁長氏に大敗した要因の一つに、公明が支援を見送ったことが挙げられている。一方、宜野湾市長選では、候補者が辺野古移設の是非に言及しないことを暗黙の前提に、自公協力が成立した。閣僚でもある島尻氏が参院選で辺野古容認を明言しないことは考えられず、沖縄の公明は難しい選択を迫られる。 しかし、沖縄の公明が辺野古反対をかたくなに貫くあまり「オール沖縄」の候補が選挙で勝っても、政治的には何の得にもならない。沖縄の公明は、いずれかの時点で支持者にきちんと説明し、辺野古容認に舵を切るべきだ。しかし、このタイミングでの今井氏擁立は、逆に公明の反発を招き、辺野古容認の機運を遠のかせる危険性がある。島尻氏としては、自公協力と今井氏との連携をどう両立するか、重い課題になりそうだ。 島尻氏が勝利すれば「オール沖縄」は事実上の終焉となるはずだ。翁長知事の権力基盤は崩壊し、2年後の知事選で、自身の再選も危うくなる。 自民の今井氏擁立は公明との関係では劇薬だが、奏功すれば沖縄の大きな転換点になりそうだ。

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    SPEED今井の立候補とは「BODY&SOUL」である

    常見陽平(千葉商科大学 国際教養学部専任講師) SPEEDの今井絵理子の立候補が正式に発表された。昨日、フジテレビ ホウドウキョクの「あしたのコンパス」という番組の岩田崇氏からコメント募集メールが届いたので、いてもたってもいられずメールをした。どうやら番組で読まれたようだ。嬉しい。 いや、最近、こう自分の投稿がBLOGOSに拾われるかどうか、ホウドウキョクやSession-22や文化系トークラジオLifeで読まれるか否かでドキドキしていて、オールナイトニッポンのハガキ職人みたいだなと思ったりする。一般リスナーに戻っている、俺。 その時の内容プラスαを備忘録的に。 まず、この件について民主党の細野豪志氏が「どういうことをやりたい方か明確であるべきだ。 知名度だけを目当てにする候補は望ましくない」と述べ、自民党をけん制したと言うが・・・。 「一強打破」など、まるで暴走族の「全国制覇」のような、具体性のない、衝動だけのコピーを打ち出すような政党にそんなことは言われたくないのである。「どういうことをやりたい方か明確であるべきだ」というが、民主党には、細野氏にはそれがあるのか。政策論争をする、政権を奪還する強い野党が必要だと我々は何年議論しないといけないのか。民主党の政治は、民主主義は弱すぎる。私も労働者に対して優しく、フェアである国にしたいと思っているのだが。民主党にはがっかりだ。 私は、国会議員はいろんな人がいる状態が良いのだと思っている。様々な立場の代表者が国会にいるということが多様性があり豊かな社会なのだと思う。私は以前はタレント議員や元スポーツ選手議員に否定的だったが、今では肯定的である。彼らもまた厳しい世界で闘ってきている。スポーツ選手に至っては、世界を体感している人も多数いるわけで。もっとも、知名度だけで当選するのは初期だけで、のちに国会議員としての能力、資質、実績は問われていく。元の世界に戻れるとも限らない。だいたい、数名タレント議員や元スポーツ選手議員がいたくらいで国は傾かないのである。若者や、それに限らず政治に関心がない層、普段選挙に行かない層が関心を持つならそれでいい。政治に関心を持つキッカケは、別にSEALDsのデモだけではないのだ。これで極端な衆愚化に走るほど、この国は腐っていない。 もっとも、細野氏が言ったように、今井氏の主張と自民党の方針との整合性は問われるだろう。その件について、今井氏にしろ、自民党にしろ、いかに説得力のある丁寧な説明をするのか。問われるのはこれからである。ただ、自民党というのはもともと多様な議員がいる政党なので。党の中でも利害調整が常に行われているわけなので。彼女のようなものが一人いたくらいで目くじらを立てるのはいかがなものか。 彼女のシングルマザーとして、耳の不自由な子供を育てているという実体験というのは、単なるお涙ちょうだいエピソードではなくて、当事者として何かを変えたい衝動があるのだろう。魂を感じる。SPEED(左から)上原多香子、島袋寛子、今井絵理子、新垣仁絵=1998年2月23日表題のSPEED今井の立候補とは「BODY&SOUL」であるというのは釣りでもふざけているのでも何でもなくて意味の一つは、心技体、全身全霊こめている感があるという意味だ。 もっとも、前述したとおり、筋が通っているかどうかや、単なる人気集めじゃないかとか、能力・資質はどうなのかという問題はあるだろう。それを決めるのは有権者だし、その支持を得られるかどうかは今後の彼女の活動にかかっている。まだ彼女は「出馬表明」をしただけであって、「政治家」でも、ましてや正式な「立候補者」でもない。選挙は正式には始まっていないのだから。SPEED今井の立候補とは「BODY&SOUL」であるとした意味のもう一つは、「BODY&SOUL」はデビュー曲であるということだ。 つまり、私が言いたいのは、今井の立候補というのは序曲であるということだ。18歳選挙権の件もあり、また甘利問題、育休議員問題(これはこの議員自体のゲスの極み問題と、議員の育休という制度の問題は分けて考えるべきだな、ただ、甘利問題以上に庶民の怒りを買いそうではある)などのマイナスイメージもあり、今後、芸能人やスポーツ選手、起業家、社会起業家、大学教員、物書きなどを候補者として立てる動きは顕著になるのではないかと私は見ている。あの人も、あの人も、立候補するのではないかと。 まあ、今後もこの手の話題はつきないと思うが、そのことでいちいち騒がず、有権者として少しでもまともな投票ができるように情報を集め、判断し、投票に行くこと。これが大事なのだ。(「陽平ドットコム~試みの水平線~」より2016年2月11日分を転載)

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    宜野湾市長選の敗北 「翁長時代」終わりの始まりか

    野嶋剛(ジャーナリスト) 「ギノワンチュー、ウシェーテー、ナイビランドー」 意外な一言を、沖縄県の宜野湾市長選挙から4日ほど経った宜野湾市での現地取材で、市民の一人から「こんな風に私らは今回の選挙のことを言っていたんですよ」と聞かされた。どこかで聞き覚えのある言葉なのだが、最初は何を言っているのかよく分からず、少し考えて、ハッとした。 これは琉球語で「宜野湾の人を、ばかにしては、いけません」という意味である。 同時に思い起こしたのが2015年5月、那覇市のセルラースタジアム。反辺野古新基地建設のための県民集会で、集まった3万人の人々に、翁長雄志知事が吐き出した言葉は「ウチナンチュー、ウシェーテー、ナイビランドー(沖縄の人を、ばかにしては、いけません)」だった。このとき、安倍首相に向けて放たれた翁長知事の一言に会場がぐらりと揺れた感覚は、きっと生涯忘れないだろう。おそらくは沖縄政治史に刻まれる一言である。Rodrigo Reyes Marin/アフロ それから1年と経たないいま、ところを変えて、今度は、翁長知事に向けて、ブーメランのように、この言葉が語られていたとすれば、あまりにも皮肉な話である。しかし、今回の宜野湾市長選における「オール沖縄」陣営の立てた志村恵一郎候補が喫した予想外の大敗を説明するには、辺野古問題を強引に争点にしようとしたオール沖縄陣営に対する「宜野湾の人を、ばかにするな」という市民の感情抜きには、どうしてもうまく説明がつかない。 宜野湾市には、辺野古移設問題の原点である海兵隊の普天間飛行場がある。人口はおよそ10万人。その市長選で、志村恵一郎候補は、自民・公明が推す佐喜真淳候補に、得票率で10ポイント以上、票数で6千票近い差をつけられた。事前の「接戦」予測を大きく裏切る惨敗だった。 翁長知事と「オール沖縄」陣営が、宜野湾市民にここまで拒否された理由は決して複雑なものではない。それは「戦うべきではない選挙で、戦えない候補を持ち出し、戦えない戦略で戦った」からだった。見通し甘かったオール沖縄 翁長知事サイドが宜野湾市長選で候補者を立てようとした動機は、辺野古予定地での着工手続きをめぐって裁判で戦っている安倍政権に、反辺野古の結束の強さを見せつけることだった。来るべき6月の県議選、夏の参院選(あるいは同日選)に向けて、選挙の年といわれる2016年を勝ち抜くキックオフにしたかったのである。沖縄県、辺野古の地元・名護市、普天間飛行場のある宜野湾市。この基地問題のトライアングルを固め、日本政府の訴訟攻勢への反証にしたい思惑があり、勝利の後は、翁長知事、名護市長、宜野湾市長の三者で訪米するというプランも立てていたとされる。 世論の流れを読むことに長けた翁長知事は、もともと自身の選挙も他人を応援する選挙もともに強く、「無敗の翁長」の伝説もあるほどだった。加えて、自身の知事選を含めて、反辺野古を掲げた2014年の選挙では連戦連勝。自分が乗り出せば勝てる、という計算があったはずである。見通し甘かったオール沖縄 だが、宜野湾市は、普通に考えれば楽に勝てる場所ではなかった。長年の革新市政の下、市内の経済開発は大きく停滞。4年前の選挙で革新候補を破った現職の佐喜真氏は就任から積極的に経済開発にも取り組み、宜野湾市は明るさを取り戻しつつあった。市民の間には当然革新市政への拒否感が残っており、共産党も加わるオール沖縄はその点でも不利を抱えていた。 加えて、擁立した候補の志村氏は、父親が元県議会議長という血筋はあるが、政治家の経験は浅く、「あいさつでも原稿をつかえながら読み上げる姿にがっかりした」と宜野湾の人々は口々に語っていた。要は、タマが今ひとつだったのである。一方、佐喜真陣営はこまめに若者や女性の活動や集会に顔を出し、実際はディズニー系のホテルに過ぎない「ディズニーリゾート誘致」をできるだけ大きく宣伝して人々の経済的関心を引きつけていった。 オール沖縄陣営のある県議は筆者の取材に、こう振り返った。 「我々は保守から革新まで異なる背景の人々が集まったグループなので、勢いがあるときはいいが、守りに入ると弱い。その欠点が出た選挙だった。本音を言い合い、突っ込んだ情勢分析ができる選対ができていなかった」 宜野湾という地の利、候補者の人の利でともに不利であるところに加えて、今回の選挙でオール沖縄陣営は、普天間基地の移設に賛成しながら、辺野古移設に反対する「矛盾」への回答を明確に説明しきれなかった感がある。 政治は有権者を説得するゲームである。利益誘導やしがらみが地方選挙では目立つと言われているが、有権者は見るべき点はちゃんと見ているものだ。「理屈」が通らない話をされても、判断能力のある市民にごまかしは効かない。 沖縄県全体の選挙であれば、あるいは、何とかなったのかも知れない。しかし、普天間基地を抱える宜野湾の人々は、代替基地を辺野古に造れない場合、普天間返還そのものが雲散霧消しかねないリスクがあるという冷たい現実を十分に意識している。その点を明確にせず、普天間移設と辺野古拒否の両方をセットで宜野湾の人々に納得させるのは難しい。“辺野古隠し”で切り抜けた現職陣営“辺野古隠し”で切り抜けた現職陣営 一方、現職陣営は普天間の返還、その跡地の活用というところで議論をとどめ、辺野古については「容認」でありながら、可能な限り、触れないようにした。それは反対陣営が批判する「辺野古隠し」かもしれないが、自治体の将来を占う市長選で宜野湾の人々が責任を持つ話ではないことも確かだ。 こうして考えれば考えるほど、辺野古移設反対を唯一の旗として結集したオール沖縄陣営にとって、非常に戦いにくい選挙だったことが分かる。今回、明確な黒星を付けられるより、候補者をあえて出さない「不戦敗」という選択肢もあったはずだ。オール沖縄陣営が、候補者擁立に突っ込んでいった理由は今ひとつはっきりしない。 ただ、過去の選挙でオール沖縄陣営は連戦連勝、沖縄県内のメディアや言論界も翁長県政支持でほぼ一色に染まっている。辺野古移設を止めるための「辺野古基金」も5億円を超える資金が集まった。この勢いなら勝てるのでは、という漠然とした判断が根底にあったのではないだろうか。その強引さが、冒頭の「宜野湾の人を、なめないでほしい」につながったように思える。 沖縄県の政界では、今回の敗北をどう受け止めるのか、意見が二分されていた。オール沖縄の勢いが削がれ、ターニングポイントになるのではという悲観論と、宜野湾市長選の敗北は特殊事情であり、オール沖縄の優勢には影響しないという楽観論だ。結論を出すにはまだ早いが、いまの沖縄で強く感じるのは、辺野古問題以外で沖縄県民の未来につながるビジョンや政策を、翁長県政が打ち出せていない問題である。沖縄経済は全国的に見ても苦しい状態にあり、貧困家庭の割合はなお圧倒的に高い。沖縄県民の実感は、辺野古も大事だが、ほかにも大切なことがある、というバランス感覚を取り戻しつつある。選挙戦は沖縄政治の分水嶺になり得る いま日本政府が、ディズニーやUSJなど派手な「経済振興策」を掲げて攻めてくるなら、県民のニーズに基づく地に足のついた翁長県政のビジョンを示さなくてはならない。だが現段階の翁長県政は人事も政策も辺野古最優先と選挙の論功行賞の部分が目立ち、「辺野古以外」の評判は芳しくない。 沖縄国際大学(宜野湾市)の佐藤学教授(政治学)は「翁長知事サイドには見込み違いがあったのではないか。この選挙は沖縄政治の分水嶺になりかねない」と指摘する。 「オール沖縄の候補者の知名度が低く、翁長知事が無理をして前面に出たことで、逆に宜野湾の人々を白けさせてしまった。2014年は県民の怒りを買った仲井眞前知事という悪役がいた。それなくして翁長知事の個人的なアピール力で勝てる条件は長くは続かないことを今回の選挙は示した。県民の辺野古反対の民意は消えてはいないが、今後は保守層や若者を現実的・具体的な方策で説得することができないとオール沖縄陣営は苦しくなるだろう」(佐藤氏) 大きな政治の流れが、小さな地方選挙の結果から、覆されていくことを何度も目撃してきた。今回の宜野湾市長選の敗北が「翁長時代の終わりの始まり」になるかどうかは、敗北を受け止め、翁長知事を含めてオール沖縄陣営に油断や慢心がなかったかを真摯に振り返り、翁長知事が辺野古反対だけではない政治家であると県民に改めて信じさせられるかにかかっている。のじま・つよし ジャーナリスト。1968年生まれ。朝日新聞入社後、シンガポール支局長、台北支局長などを経験。著書に『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『ラスト・バタリオン 蔣介石と 日本軍人たち』(講談社)、『映画で知る台湾』(明石書店)など。

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    今井絵理子の参院選出馬が「オール沖縄」にとどめを刺す

    仲村覚(ジャーナリスト、沖縄対策本部)全ての不安を払拭させた手話を交えた記者会見 2月9日、自民党本部は夏の参院選挙の比例代表の新たな候補者として、ダンスボーカルグループ「SPEED」のメンバー、歌手の今井絵理子氏(32)の公認を決定し、夕方に記者会見を開催した。記者会見には今井氏本人と茂木敏充選挙対策委員長、後援会長を担う予定の今井氏の母校・八雲学園の近藤理事長、そして、今井氏を1月18日から芸能人出身の先輩として参議院選挙への出馬の説得にあたった山東参議院議員が同席した。 今井氏は手話を交えながら、自らが参議院選挙に立候補を決意した理由をゆっくりと語り始めた。「21歳の時に息子が聴覚障害を持って生まれてきたこと」「障害を持つ息子と出会って歌の世界しか知らない自分が初めて障害者の世界を知ったこと」「同じ障害の子を持つお母さんたちと出会ったこと」。それが、「障害を持っている子供たちが、より明るい希望を持てる社会作りをしたい」と思うに至った事が立候補を決意した理由だという。その決意を後押ししたのが、お母さん方の後押しする声や、11才の息子の「ママ、手話をたくさんの方々に広めてほしい」という言葉だったという。出馬会見を終え、笑顔を見せる茂木敏充選挙対策委員長(左から2人目)と今井絵理子氏(左から3人目)ら=2月9日、東京・永田町の自民党本部(福島範和撮影) 数日前から自民党が今井氏を擁立に動いていることが報道されていたが、その時点ではネットは自民党支持者からも彼女の擁立を不安視する様々な声が流れていた。「彼女に政治がわかるのか」「芸能人の知名度依存の候補擁立は自民党員として失望した」「プチ戦争なら賛成みたいにみえると安保法制を反対していたのに大丈夫なのか?」「当選することは確実だが、当選後はちゃんと面倒見れるのか?」などの声が見られた。恥ずかしながら筆者も不安視した言葉をFacebookに発信した中の一人である。 しかし、2月9日の今井氏の記者会見で、それら全ての不安はふっとんだ。おそらく彼女の落ち着いた出馬の決意表明、そして記者からの質問に対して一つの失言も無く、そつのない回答をする姿に多くの方は直感的に「彼女なら大丈夫」と思ったのではないだろうか。また、彼女の立候補の決意は単なる人気頼みの出馬ではなく、息子の障害を利用して同情票を集めた出馬でもないということを多くの人が感じたのではないだろうか。今井氏座右の銘『焦らず、比べず、諦めず』の背景 最も心配だった「プチ戦争」についての記者からの質問に対しても彼女は見事に回答した。記者:以前、ツイッターで「どこかプチ戦争には賛成!みたいに見える」とつぶやいた。当時は審議の真っ只中だった安全保障関連法を批判しているようにも読めるが、このメッセージに込めた意味は?今井氏:「私は沖縄出身です。沖縄は唯一の地上戦があって、たくさんの県民の方々が犠牲になったという話を、おじいちゃんやおばあちゃんの皆さんから聞きました。そこで私は『二度と戦争はしちゃいけない。平和を守らなくてはいけない。みんなの命を守らなければならない』と強く感じました。しかし、平和を願うだけでは守れないというのも現実です。一昨日、北朝鮮のミサイルが飛んで、沖縄の上空を通過したときに緊張が高まりました。万が一のための備えは必要だと思います。ですが、それは戦争をするためではなくて、平和を守る、みなさんの生活や命を守るために必要なことだと思います」 この回答は、安全保障を重要視している自民党支持者だけでなく、「基地が無いほうが平和になる」と学校で教えられてきた沖縄の若者の票も逃さない見事な回答だった。今井氏座右の銘『焦らず、比べず、諦めず』の背景 記者会見の今井氏の言葉には、人格からにじみ出る芯の強さを感じた。彼女のそのような人格を形成した背景を見てみたい。今井氏は1983年9月、沖縄県那覇市小禄で生まれた。安室奈美恵やMAXを輩出したアクターズスクールに通い、1996年8月に上京しダンスボーカルユニットSPEEDとしてCDデビュー。今井氏13才のときである。3年8か月の活動を経て2000年3月に解散。その短い間にシングル11枚、アルバム6枚の計17枚、ミュージック・ビデオ4本をリリース。2000年からはソロ歌手として活動した。 2004年6月には結婚、10月には男の子を出産した。その男の子を礼夢(らいむ)と名付けた。夢を持ち礼儀や感謝の気持ちを大切にして欲しいという願いを込めたという。出産から3日後聴覚スクリーニング検査の結果、医師より礼夢君の両耳の聴力に異常があることを告げられた。病名は高度感音性難聴ということだ。それは内耳や聴神経の障害であり、音の電気信号を脳へ伝える神経が上手く働かない病気のため、補聴器で聞こえるようなることは無いという。今井氏はこの子に自分の歌声を一生聞かせて上げることが出来ないことに大きな衝撃と悲しみを受けた。その日は、涙がこんなに出るのかと思うぐらい泣いた。泣くだけ泣いたあとに何故か自然と「耳の事で泣くのは礼夢に失礼だからやめよう」と誓っていたという。自公選挙協力への影響に動揺する沖縄自民党県連 それ以来、そのかわりに沢山の笑顔が生まれたという。礼夢君の耳の障害は聴力だけではなかった。歩行の発達にも大きな影響があった。三半規管に影響があるため、体のバランスを取るのが難しいのだ。歩けるようになったことには2才を過ぎていた。2008年から聾学校に通い親子で手話を学んだ。今井氏にとってもゼロからの手話の勉強だった。親子で手話を学ぶことこそが親子のコミュニケーションを取る唯一の方法だった。その後今井氏は再びSPEEDとして歌い始める決意をした。それは礼夢君に歌を聞かせるためである。音の聞こえない礼夢君だが彼女が歌っているときには楽しそうない表情をしているという。彼女が子育てを通して学んだ座右の銘があるという。その言葉は『焦らず、比べず、諦めず』という。また、記者会見の最後に彼女が語った言葉は、沖縄でよく使われる言葉だが一味違う。今井氏:「私の好きな言葉で『なんくるないさ』という言葉があります。それを皆さん、ちょっと誤解しているかもしれないんですけれども、これは『頑張れば何とかなるよ、乗り越えられるよ』という意味です。そういう沖縄の精神というのも沖縄の魅力の一つだと思っています」礼夢君との親子物語を描いたコミック&フォトエッセー「おやこ劇場」の発売記念イベントを行った今井絵理子=2011年4月17日自公選挙協力への影響に動揺する沖縄自民党県連 報道では、今井氏と参議院選挙沖縄選挙区から出馬する島尻安伊子氏との連携を想定しているとのことである。つまり、今井氏の知名度を島尻氏の集票力につなげるということである。自民党本部による今井氏の擁立は沖縄の選挙は絶対に落としてはならないという決意が見える。そうであるなら、今井氏には6月に県議会議員選挙が控えている沖縄には応援演説に入ってもらい、そのまま勢いをつけて夏の参議院選挙に突入する作戦があっても良いような気がする。しかし、現場の自民党県連では具体的な話は全く決まっていない。実は今井氏の擁立は自民党本部主導で行われており、自民党県連の関係者もニュース報道で初めて知ったということである。 単純に考えれば、今井氏にどんどん沖縄に入ってもらえれば、「オール沖縄」体制を崩すことができるような気がするが、現実はそう単純ではない。その足かせになっているのは自公選挙協力体制である。先月の宜野湾市長選挙では、2014年の名護市長選挙以来ギクシャクしていた自公選挙協力体制が再び強固なものに戻った。佐喜真市長が再選を果たしたのは様々な勝因があるが、公明党の組織を上げての応援は6000票近い差をつけての圧勝に大きく貢献したことは間違いない。ところが、今井氏が全国比例区に出馬し、沖縄に応援に入った場合は、これまでの「選挙区は自民、比例は公明」というセット戦術を組んだとしても自民党の票は今井氏に流れてしまうのである。これには公明党が不快感を表している。この警戒感を払拭しないことには、自民党は参議院選挙において、宜野湾市長選挙と同じような公明党の応援をもらう事が難しくなってしまう。そのため、自民党関係者でも今井氏の沖縄入りに難色を示す人は多い。党本部と県連の調整もこれからというところのようである。今井氏にネガティブキャンペーンは打てない今井氏にネガティブキャンペーンは打てない 応援演説で今井氏の沖縄入りが流動的となると、沖縄に新たな風を起こすことにならないのではないかと危惧する声が聞こえてきそうである。しかし、そういうことはない。まずは今井氏出馬の効果を改めて確認してみたい。彼女の最大のメリットは、沖縄マスコミがネガティブキャンペーンを打つことのできない候補だということである。戦後の沖縄県民には米軍統治下にある自分たちは経済、文化、学力、至る分野で遅れているというコンプレックスがあった。そのコンプレックスを跳ね除けて沖縄をメジャーにした神様的存在が沖縄に複数いる。最初の神様は誰もが知っている具志堅用高である。それに続いて現れたのが安室奈美恵、MAX、SPEEDといったの芸能人たちである。彼女たちのメジャーデビューで、沖縄の子どもたちの本土に対するコンプレックスがほとんどなくなった。逆に沖縄出身が羨ましがられる時代になってきたのである。その大功労者の一人である今井絵理子氏に対して沖縄のマスコミといえどもネガティブキャンペーンを打つことはできないのである。彼女の敵は沖縄には存在しない。つまり、戦後初の沖縄のマスコミを恐れずに選挙運動をできる沖縄出身の自民党候補だということである。 もうひとつは、彼女の出馬そのものが「オール沖縄」体制を崩壊させるということである。「オール沖縄」体制とは革新政党、左翼マスコミ、反戦平和団体の統一組織であり、彼等は「オール」沖縄という言葉を使って彼等の主張が県民の総意であるかのように県外、国外に発信するのである。その実態は全体主義であり自民党などの保守勢力に対する言論弾圧である。自民党などの主張や有利になる情報は一切報道せず、沖縄には辺野古移設に反対する人しか存在しない空気をつくり、彼等の意図する方向に沖縄の選挙や政治を誘導し、さらには日本政府に圧力をかけるのだ。これが「オール沖縄」の正体である。 しかし、自民党本部、自民党県連サイドの頑張りにより今年1月の宜野湾市長選挙で佐喜真市長の再選により反転攻勢が始まり、「オール沖縄」が崩れはじめた。その影響もありBSフジのプライムニュースのように沖縄二紙の偏向報道や「オール沖縄」という言葉を問題視して取り上げる報道番組も流され始めた。そのような中での、今井氏の出馬は「オール沖縄」体制にとどめを刺すことになるのである。その力の源泉は2つある。まず一つ目は、彼女は他の沖縄選出の保守政治家と異なり、沖縄マスコミの言論弾圧の外に存在しているということである。仮に彼女が参議選で沖縄に一度も足を踏み入れずに運動したとしても、彼女は「沖縄出身」であり沖縄県民の代表として発言するのである。そして、彼女の言動は全国で報道され即座に沖縄にも伝わるのである。 もう一つは、彼女の存在自体が「オール沖縄」体制をつくろうとする勢力の県民像の枠組みをはずれていることである。「オール沖縄」陣営にとって沖縄県民は日本の被害者であり弱者でなければならない。SPEEDのメンバーとして日本全国に広がった今井氏のイメージは、被害者でも弱者でもない。国民的アイドルである。これでは翁長陣営が作ろうとしている「オール沖縄」体制の枠組みに組み込むことができないのである。彼等がつくろうとしている「オール沖縄」VS「日本政府」という対立構図は、「オール沖縄」に例外がなく本当に一丸となっている場合にのみつくることができる。 これから、今井氏が全国活動し、新たな沖縄出身の政治家のイメージが全国に広がり、巨大なものになれば、逆に翁長陣営の「オール沖縄」が縮小し崩壊するのである。例えば今後、翁長陣営が反政府闘争集会を開いて「日本政府による米軍基地の押し付けは沖縄差別だ!」と訴えたり、再び国連に足を運んで「沖縄の自己決定権がないがしろ」にされていると訴えても、沖縄出身の今井氏が「これは差別ではありません。沖縄県民を守るために必要な備えです」とひとこと言えば、沖縄と日本政府の対立構図は消えるのである。結局、沖縄の選挙にとって今井氏の出馬自体が翁長雄志陣営のつくりあげた「オール沖縄」体制に最後のとどめを刺すことになるのである。

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    2月9日はネタを3連発もSPEEDで出した自民党デー

    新田哲史(「アゴラ」編集長、ソーシャルアナリスト) どうもニュー・ライスフィールドです、、、じゃなかった、新田です。センテンススプリングこと週刊文春による号砲一発で、自民党的にはあわやマスコミや世論の集中砲火を浴びせられそうになるところ、昨日はたった1日でいろいろありすぎて、そのスピードっぷりに小生のBody&Soulも付いていくのがやっとな本日です。“予言”が的中したイクメン議員の不倫報道 まあ、自慢するつもりは毛頭ありませんが、宮崎議員が週刊誌のエジキにされる恐れについて、White Loveなクリスマスの余韻が残る年末に“予言”しておりました。 週刊誌界隈は年明け一発目のスクープを狙い、政治資金の流れの分析であったり、「本当に育休を取る必要があるのか」夜の行動をカメラマンに追跡させていたりしそうです。宮崎議員が留意すべき「広報の罠」 http://agora-web.jp/archives/1665142.html 宮崎センセの奥様の金子先生は大学時代のサークルの1年後輩ということもあり、私なりに老婆心ながら危惧するものがあって書き置いていたわけですが、残念であります。まあ、今や天下無双のセンテンススプリングに目をつけられちゃ詰んだも同然。甘利さんの時と同じくトラップ説もあるのですが、たとえハニトラであったとしても引っかかる方が悪いので、ご愁傷様としかいいようがないです。金子さんがあまりに気の毒。。。陰に隠れた感のある“歯舞”問題 そして、昨日は文春砲の炸裂が午前からお昼にかけてでしたが、自民党発で参院絡みの話題が2連発ありました。まずは、宮崎議員のおかげであまり注目されずにすんだのが、こちらです。【共同通信】島尻北方相、「歯舞群島」読めず 会見で「はぼ、何だっけ」http://this.kiji.is/69623846227363318 ご案内の通り、島尻センセが北方領土の担当大臣でありながら「歯舞」諸島の漢字が読めなかったわけですが、前の前の前の前の総理をお務めになられ、現在は財務省界隈におられる某ゴルゴな重鎮がその昔、漢字が読めなくて炎上したのを彷彿とさせます。「民王」ファンとしては、きっと沖縄のユタに言わせれば、その瞬間、誰かと入れ替わっていたに違いない(キリッ)、なんてジョークも差し上げたいところですが、これが2009年総選挙前の自民退潮の折なら、ワイドショーで格好のエジキになっていたはず。しかし野党は不甲斐なく、総務大臣が放送停止の最終兵器をチラ見せするご時世なので、某元ゴルゴ総理が出火した時ほど延焼は見られないのではないでしょうか。東京・永田町の自民党本部 そして、午後になると、自民党さん的には明るい方の話題、参院選目玉候補の今井絵理子さんの出馬会見です。 いやはや、事前に報道があって出るんだろうとは思ってましたが、どうしても彼女と政治が結びつかず、記者会見の写真やら動画を初めてみて、ようやく実感した次第です。朝日新聞デジタルは動画付き、産経新聞は詳報。SPEED今井絵理子さん立候補表明 参院選に自民から(朝日新聞デジタル)http://www.asahi.com/articles/ASJ2956XLJ29UTFK00M.html今井絵理子氏の出馬会見詳報(上)「政治は希望だと思います」http://www.sankei.com/premium/news/160209/prm1602090012-n1.html 手話を交えた出馬会見というのが、映像メディア的にも活字メディアの写真的にも「画」になる演出。「シングルマザー」「障害者」を含めた“1億総活躍”のストーリーのシンボルとしても打ち立てようという思惑がめっちゃ分かりやすい。今井絵理子さん出馬の「裏ストーリー」を適当に妄想今井絵理子さん出馬の「裏ストーリー」を適当に妄想 ただ、午前中に話題を振りまいた島尻大臣との関連で見ると、彼女の出馬の裏で描かれているアナザー・ストーリーが見えてくる気がします。 島尻さんは今井さんの出身地である沖縄選出(1人区)で、この夏に3期目に挑戦します。しかし、ご本人は仙台出身のヤマトンチューで、ウチナンチューの一般有権者に受けがいいとは言えない。前回選挙は25万票で当選しましたが、社民推薦の2位の候補が21万票。一見差があるようですが、3番手の共産候補が5.8万票。つまり単純計算で「オール野党」連合の票を足すと彼女を上回ってしまいます。 まあ、6年前は民主党政権下で、共産党が独自路線の時代でしたが、その後、沖縄の政治情勢はご承知の通り、左派系野党が一致団結した「オール沖縄」の翁長雄志さんが知事選で36万票をかき集め、与党が推した現職の仲井眞弘多氏(26万票)に完勝。今度の選挙戦は、翁長知事の支援を受けた元宜野湾市長の伊波洋一氏との事実上の一騎打ちと目されおり、予断を許さない情勢です。 参院選の比例選は非拘束名簿式なので、有権者が「今井絵理子」と書けば自民全体の票にもなるわけですが、自民サイドとしては、SPEEDブームに熱狂した全国のアラサー有権者だけでなく、沖縄県民の大衆人気を少しでも獲得し、6月の沖縄県議選、そして本番の7月参院選(ダブル選挙の可能性も?)に弾みをつけるための「空中戦」ネタとして、今井さんを位置づけているのではないでしょうか。 そして、与党側が巻き返しに成功した先日の宜野湾市長選で指摘されていましたが(参照;現代ビジネス)、「地上戦」のカギになりそうなのが、与党でも野党でもない「ゆ党」として存在感を発揮しつつある、おおさか維新の下地幹郎先生の票がどう動くか。今度の参院選では維新候補は立つ予定はなく、前回の知事選で7万票弱あった「下地票」を、与党サイドとしては何が何でも取り込みたいところ。今井さんの人気と知名度で掘り起こした無党派と若年層の票とハイブリッドしようとしてるのかな、と、沖縄選挙の素人なりに妄想&激しく傍観しております。参院選後へ「Go! Go! Heaven」なのか? ただ、沖縄の受け止め方はどうでしょうか。この日夜の沖縄タイムズのトップページは今井さんの出馬でしたが、見出しはこれ。SPEEDの今井絵理子氏、出馬会見 辺野古賛否明らかにせずhttp://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=153359 やはり「選挙区内争点」である基地問題を今後ますます突っ込まれそうですし、過去にツイッターで、安保法案に反対をほのめかす発言をしていたことも朝日の記事では漏れなく指摘されております。まあ、今井さんの知名度ですからご本人の当選確率は高いでしょうけど、「島尻再選」の裏ノルマも課されるであろうことを考えると、その意味では選挙後に向けて「Go! Go! Heaven」でノリノリ楽勝ムードではなさそう。まあ、参院選の取材関係を本気でするのはまだ先なので、あくまで現時点で思うことを徒然と書いてみました。各党の皆様、よろしくお願いします。 しかし、世の中、長期金利が初のマイナスとなり、世界各国で不況の足音が聞こえているこの頃、選挙前に話題がこんな与太っぽい感じでいいのかしら、政治に希望を感じづらいこの頃です。(「新田哲史のWrite Like Talking」より2016年2月10日分を転載)

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    2016年、沖縄の選挙は安倍政権VS反日勢力の「関ヶ原の決戦」だ

    仲村覚(ジャーナリスト、沖縄対策本部)沖縄の選挙イヤーが始まった 今年の沖縄は選挙イヤーである。1月から6月までに3つの重要な選挙が行われる。1月24日に宜野湾市長選挙の投開票が行われ、選挙最終日まで熾烈な運動が熱く繰り広げられた。安倍政権が推し進める沖縄の基地政策の目玉となる政策の先行きを占うものであり、政府としても絶対に負けられない戦いである。その影響の大きさを考えると最早、単なる地方のひとつの自治体の選挙とはいえない。また、「オール沖縄」や「沖縄の民意」を大義として辺野古移設阻止を主張してきた翁長陣営にとっても絶対に負けられない戦いである。 また、6月には県議会選挙が行われる予定である。現在、自民党は48議席のうちの13議席のみで小数野党である。その議席数は、社会党、共産党、社会大衆党の革新3党の合計の14議席すら下回っている。公明党は3議席あるが、辺野古移設が争点になると県内移設反対側に回るので自民党にとって県議会の運営は非常に厳しい状態にある。今年の県議会選挙で自民党は議席を大幅に増やして、県政の主導を奪還できるかどうかがかかっている。いまの議席のままだと、革新与党が提案する議案がなんでも通ってしまい、安倍内閣と対立する方向に沖縄が持って行かれてしまうからだ。 たとえば、翁長陣営が宜野湾市長選挙に敗れたことで、彼等は「沖縄の民意」という言葉の正当性を取り戻すために住民投票を行うかもしれない。また、今後沖縄を日本から引き離し独立させるための闇条例、「沖縄の自治基本条例」などを可決にもっていく危険性も高い。そのような法案を阻止するためにも、今年の県議会選挙も絶対に負けられない戦いである。自民党沖縄県連会長である島尻安伊子沖縄・北方担当相 そして、最後には参議院選挙が待ち構えている。6月23日に公示予定との情報も流れたが、沖縄の自民党の立場からすると、それだけは絶対に回避してもらいたいはずだ。公示された時点で沖縄の候補の負けが決まるからだ。6月23日は「慰霊の日」で沖縄の祝日であり、公立の学校や機関は休暇となり県主催の行事をはじめ、様々な慰霊行事が行われる日である。つまり県民をあげて慰霊を行う日に選挙の出陣式を行わせるような判断を政府自民党が下すと、安倍自民党の沖縄不理解が沖縄の保守、革新関係なく広がってしまい、政府自民党が推す候補から票が逃げることは明らかだからである。 特に沖縄の参議院議員候補の島尻安伊子氏は、現在沖縄選出国会議員の唯一の大臣であり、かつ沖縄自民党県連会長である。その島尻氏が負けるということは沖縄自民党県連そのものが負けたことになる。この敗北は翁長陣営の「オール沖縄」を勢いづかせ、沖縄の辺野古移設推進派の声を封殺し、沖縄県民全員が翁長知事を支持しているかのような空気を創りだされてしまうことになる。絶対に負けられない戦いである。そして、それらの趨勢は初戦の宜野湾市長選挙の勝敗できまってしまうのである。「倒閣の沖縄基地の完成」か「安倍政権の沖縄奪還」か「倒閣の沖縄基地の完成」か「安倍政権の沖縄奪還」か 結局、今年の沖縄の一連の選挙は、翁長陣営にとっては「沖縄を安倍倒閣基地として完成させる」選挙であるといえる。戦国時代に例えると、一昨年の知事選挙で「沖縄県庁」という城が翁長陣営とその背後にいる共産党などの反日勢力に陥落されてしまった。しかし、沖縄県全部が落とされたわけではない。まだ、反翁長陣営の殿様が沢山残っているのである。それが宜野湾市の佐喜真市長であり、石垣市の中山市長であり、豊見城市の宜保市長なのである。沖縄には「市」が11あるが、そのうち翁長陣営は名護市長と那覇市長の二人だけである。前述した3名の市長を含む9名全員が反翁長なのである。現に昨年8月、宮古島市の下地市長が会長になって「沖縄の振興を考える保守系市長の会」(チーム沖縄)を結成した。翁長陣営の立場から見ると、知事就任後の選挙では、これらの対抗勢力を潰して、自分の息の掛かった人物を市長に据えていくことを考えているはずである。その初戦が宜野湾市長選挙で行われたということである。安倍晋三首相(右)と握手する沖縄県の翁長雄志知事=2015年5月25日午後、首相官邸(酒巻俊介撮影) 一方、政府自民党から宜野湾市長選挙をみると、普天間移設問題を解決させるにあたって絶対に負けられない戦いである。しかし沖縄自民党県連からみると、その意義はそれだけにとどまらない。沖縄で自民党や保守の立場の県民が大きなストレスを感じたり、苦しめられている言葉がある。それは、翁長陣営とマスコミが一体となって唱えている「オール沖縄」という言葉である。例えば「オール沖縄で辺野古移設阻止!」というスローガンが新聞の1面を飾ったとすると、辺野古移設を容認する自民党の議員やその支持者は沖縄には存在しないことにされているのである。筆者はこの言葉の本当の目的は琉球独立工作の環境づくりだと認識している。沖縄を独立させる時に反対勢力が声を上げることが出来ないようにするためである。「オール沖縄」というスローガンで世論を誘導できる環境をつくることができれば、独立だろうがなんだろうが沖縄の世論を自由にコントロールできるようになってしまうのだ。 自民党県連にとって、今回の宜野湾市長選挙は、翁長陣営が使っているこの「オール沖縄」というスローガンとの戦いでもある。佐喜真市長の再選により「オール沖縄」をはじめ「島ぐるみ」「沖縄の民意」というスローガンが真っ赤な嘘であることを証明する選挙でもあるのだ。当然、その言葉を頻繁に使っている琉球新報、沖縄タイムスの報道が真っ赤な嘘であることも証明されるのである。そして、筆者は琉球独立工作を阻止させる大きな勝利と位置づけられると認識している。 結局、今年の沖縄の選挙イヤーを制するものが日本を制することになると考えている。ことし1年の沖縄の戦いで、来年以降が共産主義勢力が安倍内閣を倒し始める年となるか、沖縄の左翼支配を終わらせ、日本の安全保障体制をしっかり整える年となるかが決まるのある。つまり、今年の沖縄の選挙は、安倍政権VS反日勢力の“関ヶ原の戦い”なのである。国民連合政府樹立の成功モデルは沖縄にあった国民連合政府樹立の成功モデルは沖縄にあった ここで、翁長陣営とその背後の共産党の今後の動きをシミュレーションしておきたい。共産党の発言は嘘にこそ意思と意味がかならずある。昨秋から日本共産党が新たな構想を唱え始めた。国民連合政府の樹立である。今までにない新しい動きを彼等は始めようとしている。しかし、それに対する警戒心は薄い。「日本共産党と組んだら票が逃げるので実現の可能性は無い。心配はいらない」。これが多くの知人の反応である。しかし、筆者は手放しで安心できないと認識している。それは既に成功モデルがあるからだ。その成功モデルとは翁長知事の誕生である。翁長知事は元沖縄自民党県連の会長まで務めた自民党の政治家であった。それが突如、日本共産党、社民党、沖縄社会大衆党の革新政党が自ら政党の政治家の擁立を抑えてまで、翁長雄志を統一候補として担ぎ始めたのである。共産党の志位和夫委員長(栗橋隆悦撮影) その時の沖縄でも同じような声が聞こえた。「翁長知事が共産党の街宣カーにのっている写真を拡散すれば票が減る」。沖縄でも共産党アレルギーの人が多いという認識が根拠である。それでも、何故か当選してしまったのである。私にはもう一つ大きな疑問があったので、共産党の事務所に支持者のふりをして電話をしてみた。「共産党はどうして独自の候補を出さないのですか?自衛隊を肯定している翁長雄志が知事になったら先島に自衛隊が配備されてしまうではないですか!」電話にでた共産党の方は、自信をもって筆者を説得した。「今回は辺野古移設反対1点で勝てる候補ということで翁長知事を選びました。彼が知事になっても心配はいらないです。稲嶺名護市長を見て下さい。市の職員の時は保守的でとんでも無いことも言っていましたが、今はちゃんとしています」。これは、共産党が推薦した候補を当選させたら、自分たちの指示通りに動かすことが出来るという自信だと感じた。現に稲嶺名護市長も当選後の翁長知事も、共産党の書いたマニュアルに沿って言動しているようにみえる。 翁長知事の誕生にあたって、もうひとつ認識の甘いところがあった。それは「共産党と公明党は犬猿の中だから、公明党は共産党が支持している翁長に票をいれるわけなない」という声である。一昨年の知事選挙で公明党沖縄本部は与党でありながら仲井真氏支持を打ち出さず、「自主投票」とした。関係者の情報によると、その結果殆どの票が翁長氏に流れ込んだのである。「共産党が自民党の候補を担いで当選させて革命政権を樹立させる」。これが、沖縄という自治体における国民連合政府の選挙協力成功モデルだと筆者は認識している。自民党本部は何故、このようなありえないことが成功できたのか、分析・解析し対策をしておくべきである。翁長知事誕生に向け革新統一が仕組んだ布石翁長知事誕生に向け革新統一が仕組んだ布石 沖縄の「革新統一」の歴史は長い。彼等は沖縄県祖国復帰前から主席選挙や国政選挙などの重要選挙では常に革新統一候補を擁立してきた。これは沖縄県外では見られないことである。翁長知事誕生の前も知事候補として常に革新統一候補を出し続けてきたが、稲嶺知事に2回、仲井真知事に2回の計4回、16年間負け続けてきたのである。そこで、彼等は統一戦線を自民党にまで拡大を図ったのである。そこで彼等が目をつけたのが当時那覇市長だった翁長雄志である。民主党政権下で、沖縄自民党県連は辺野古移設県外、オスプレイ配備撤回という方針に誘導され、共産党から自民党までスクラムを組んで政府と戦う構図が出来てしまった。 自民党が民主党から政権を奪還し安倍総理が誕生した直後に翁長雄志が脚光を浴びることになる目玉イベントがあった。2013年1月末の「総理直訴東京行動」である。辺野古移設断念、オスプレイ配備撤回を政府に要求した「建白書」に捺印をした沖縄県全41市町村長と議会議長が翁長雄志に引き連れられて上京し、日比谷で集会とデモを開催したのである。つまり、共産党から自民党まで同士となって安倍総理に対する抗議活動をおこなったのである。「オール沖縄」の反政府体制はここで作られたのである。 しかし翁長雄志だけをみていると問題の本質が見えてこない。最も重要なのは、日本共産党や社民党が看板を捨てて実をとるために、その時のリーダー役を翁長雄志に譲ったことである。そこに現在の翁長知事誕生の大きな布石があったのである。そして翁長知事の誕生は沖縄という小さな自治体で、共産党のいう国民連合政府樹立に成功した瞬間だったのである。一点突破全面展開=沖縄モデルの全国展開 共産党主義の革命理論の有名な言葉では、「統一戦線」「一点突破全面展開」「民主連合政府」という言葉がある。統一戦線とは前述したように共通の目標をかかげて多数派を勝ち取る工作のことである。現在の沖縄では「辺野古移設反対」が多数派工作の統一目標として沖縄県という民主連合政府(国民連合政府)をつくることができたのである。そして、彼等は今年の沖縄の選挙イヤーの勝利により「一点突破」の完全実現を狙い、次のステップである「全面展開」の開始を計画しているのである。筆者は、日本共産党が昨年、急に主張し始めた「国民連合政府の樹立」は、沖縄の一点突破を土台にした全面展開に相当する活動だと認識しているのである。沖縄自民党県連、県政奪還の秘策 その全面展開には二つあると考える。一つ目が、参議院選挙において沖縄の選挙協力の手法の全国展開である。現在、民主党との選挙協力調整もギクシャクしてうまく言っていないようだが、気をつけなければならないことがある。それは自民党の政治家にも擦り寄ってくる可能性があり、特に狙われやすいのは保守の看板をもった左翼政治家だということだ。 もうひとつは、辺野古移設阻止闘争、琉球独立(沖縄反差別)闘争の全国展開である。前者は今後の沖縄の選挙の勝敗に関係なく進めて行かれると思われるが、後者は勝敗に大きく左右される。辺野古移設阻止の「オール沖縄」が選挙により固まれば、全国展開して安倍倒閣の包囲網として利用するはずである。その際、翁長知事は県の業務を投げ出して全国の共産党の集会で演説をしてまわることになるであろう。また、辺野古移設阻止を闘争材料とするか、琉球独立(沖縄反差別)を闘争材料とするかは、沖縄の政治状態に左右される。しかし、佐喜真市長が再選すれば、「オール沖縄」は崩壊し、どちらも安倍内閣の包囲網の闘争材料として機能しなくなるのである。沖縄自民党県連、県政奪還の秘策 佐喜真市長が再選したことで、「オール沖縄」という呪縛が解けはじめ沖縄の空気は大きくきく変わるはずである。そして、この時に沖縄自民党県連は手を休めること無く、6月の県議選に向けて「オール沖縄」粉砕に向けた追撃を続けることが大切である。そこで重要なのは追撃の争点である。辺野古移設は仲井真前知事の埋め立て承認で既に政治決着した問題であり、政府に粛々と進めてもらうものであり、今頃議論するべきものではない。 いま、沖縄県民にとって最も重要な問題は、国連の各委員会が沖縄県民を先住民と認識して保護するべきだと日本政府に何度も勧告を出していることである。これは沖縄の未来のあり方を大きく左右し、更に政治問題を超え、沖縄県民の日本人としてのアイデンティティーを揺るがす大きな問題である。極小数の特殊な人たちを除いて、全ての沖縄県民は自らを日本人としての自己認識をもっているのであり、先住民族としての自己認識はもっていない。そうであるなら、「オール沖縄」で国連の「沖縄県民は先住民族だ」という前提の勧告に対して撤回の声をあげるべきである。その運動を沖縄自民党県連が主導して行うことが県政奪還の最短距離となるのである。 何故なら水面下に潜って本性を明かしていないが、翁長知事を誕生させた、新基地建設阻止を目的に活動する「島ぐるみ会議」の実態は、琉球独立工作組織であり、沖縄県民を先住民と認識している集団だからである。彼等は先住民特権の獲得により沖縄を日本から引き離すことを画策しており、その尖兵として翁長知事をコントロールして国連に足を運ばせているのである。彼等を潰すために直接戦う必要はない。「沖縄県民は日本人であり先住民ではない。国連は認識をあらため勧告を撤回するべきだ!」という運動を全県的に推進するだけで良い。この運動を押し進めていけば、賛同しない人たちが炙りだされ、本性を県民の前に晒すことになるであろう。その時に彼等に操られていた、翁長雄志の政治生命も終わりを告げるのである。

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    「辺野古反対」の民意はどこへ

    米軍普天間飛行場を抱える沖縄県宜野湾市長選は、現職の佐喜真淳氏が再選を果たした。辺野古移設計画をめぐる安倍政権VS翁長知事の「代理戦争」となった選挙の結果に、安倍首相は「この勝利は大きいね」と胸をなで下ろした。翁長氏が掲げる「オール沖縄」の求心力、そして辺野古反対の民意はどこへ向かうのか。

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    「オール沖縄」敗北、僭称の反基地派が沖縄の安保を曇らせる

    仲新城誠(八重山日報編集長) 沖縄では2016年、宜野湾市長選を皮切りに、県議選、参院選と、米軍普天間飛行場(同市)の辺野古移設を最大争点とする選挙が続く。文字通り「選挙イヤー」である。一地方自治体の選挙でありながら、日本の安全保障そのものが問われるという特異な状況だ。 宜野湾市長選には自民、公明が推薦する現職の佐喜真淳氏と「オール沖縄」と呼ばれる翁長雄志知事を中心とした勢力に支えられる新人の志村恵一郎氏が激戦を展開した。 選挙期間とその前後を通じ、沖縄メディアの報道を見ていると、県紙「沖縄タイムス」「琉球新報」は常に辺野古移設反対一色。当然、同じ政策を訴える「新人寄り」の紙面という印象を強く受けた。「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議」の結成大会で手をつなぐ参加者=2015年12月14日夜、沖縄県宜野湾市 具体的には、新人の事実上の支援組織である「オール沖縄会議」という組織の設立を両紙が1面トップで好意的に扱ったり、現職の政策を批判する読者の投稿が連日のように掲載されたり…。細かい点を挙げれば切りがないが、現職陣営は「新聞とはこんなもの」とサバサバしていた。もう沖縄メディアの印象操作や情報操作には驚かなくなっているのである。「中立公平な紙面」とはもともと理想論に過ぎないのかも知れないが、多くの県民が、選挙報道のあり方に問題意識すら持てない現状だ。 翁長知事は新人と二人三脚の選挙戦だった。新人陣営が出した新聞の全面広告では、候補者ではなく、翁長知事の写真が大々的に使われた。翁長知事が現在の沖縄で絶大な威光を誇るのは、彼が何よりも選挙の「常勝将軍」だからだ。逆に今年の一連の選挙のうち一つでも落とせば、翁長知事の政治力は目に見えて大打撃を受けるだろうと感じた。 私が住む八重山諸島の石垣市は沖縄本島から約400㌔離れているが、宜野湾市長選の結果は他人事ではない。「オール沖縄」と称する勢力が、石垣市の行政区域である尖閣諸島の問題をはじめ、沖縄の安全保障上の危機に対し、何一つ有効な処方箋を提示していないからだ。 普天間飛行場の辺野古移設を推進する安倍政権は「基地負担の軽減」と「(中国に対する)抑止力の維持」の両立を訴えている。これに対し、辺野古移設阻止を掲げる「オール沖縄」は、普天間飛行場の米海兵隊が「そもそも抑止力ではない」とか「尖閣問題は平和外交で解決すべき」などと主張するばかりで、国境に住む住民と危機感を共有している感覚がまるでない。勝手に「オール沖縄」 「オール沖縄」という名乗り自体も八重山住民の不信感を強めている。 保守、革新・リベラルの枠を超え、沖縄県民がこぞって辺野古移設に反対―というのが「オール沖縄」の建前だ。地元メディアが意図的に定着させ、2014年の知事選、衆院選で辺野古移設に反対する候補が圧勝する原動力となった言葉である。 しかし両選挙を地域別に見ると、八重山の場合、辺野古移設容認の候補の得票が多かった。要するに辺野古移設問題に対しては県内でも温度差があり、十把一からげに「オール沖縄」という言葉が使われるのには、県民として違和感がある。 八重山のある経済界関係者は「勝手に『オール沖縄』という言葉が使われるのはおかしい。『ハーフ沖縄』が実態だ」と指摘する。米軍普天間飛行場に着陸する航空機=沖縄県宜野湾市 「オール沖縄」と称する勢力が今後も各種選挙で勝ち続け、県内の市町村、県議会、国会議員がオセロのように反基地派一色になってしまうのは、沖縄の安全保障にとっては良くないシナリオだ。尖閣を狙う中国は、これを日本の足元がぐらついた好機とみて、尖閣で新たな攻勢に出るかも知れない。 中国政府が常時航行させている公船「海警」は、国際情勢などの変化に応じた動きを見せる傾向があるからだ。例えば昨年10月、中国が南シナ海で造成した人工島を牽制するため、米艦船が周辺に進入した際、尖閣周辺にいた「海警」は突如として1週間も姿を消した。米軍の圧力に動揺した中国政府が、南シナ海と東シナ海の二正面作戦を避けるため、尖閣周辺の「海警」を慌てて下げたのだろう。 私が見たところ、中国は米国を恐れているものの、残念ながら日本の自衛隊や海上保安庁をさほど脅威とは思っていない。巡視船の存在にもかかわらず尖閣周辺では「海警」が常時出没するし、日本政府が尖閣周辺への自衛艦派遣を示唆すると、中国政府は「中国が派遣する艦船の数は日本の比ではない」と威嚇してくる。 つまり現時点では、中国に対する抑止力は日米同盟の強化しかない。しかし宜野湾市長選をはじめとする沖縄の各種選挙で「オール沖縄」が勝ち続けた場合、在沖米軍は県民の支持を得ていないという印象を内外に与え、日米同盟は弱体化の方向に向かう。中国の野心は当然、刺激されるだろう。 選挙結果が沖縄の言論空間に与える影響も大きい。現在の沖縄では「沖縄を守る軍事力は必要だ」「尖閣危機は軽視できない」と訴える声を「沖縄の民意に反している」という理由で無造作に異端扱いする空気が支配的だ。 反基地派が「オール沖縄」を僭称し続ける限り、安全保障問題で正論を語りにくい雰囲気もまた続く。こうした傾向に歯止めが掛かるのか。それも今年の一連の選挙にかかっている。

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    軽減税率丸呑みの裏にある宜野湾市長選挙

    [報道にはすべて裏がある]織田重明 (ジャーナリスト) 12月12日、自民・公明の両党は再来年4月からの消費税率10%増税時に外食以外の食品全般に8%の軽減税率を適用することで合意した。必要となる1兆円もの財源の確保はメドが立っていないにも関わらず、公明党の主張を自民党が丸のみしたかたちだ。普天間基地を抱える宜野湾市(Getty Images) 当初、自民党内でも財務省に与する税制調査会を中心に公明党案に対する反対は強かったはず。それを強引に押し切ったのは、来年7月の参議院選挙で公明党との協力を重視する総理官邸の意向だとされる。だが、永田町で囁かれるのは、年明け早々に行われる別の選挙こそ官邸が公明党案の丸のみを官邸に決めさせたという話だ。それが人口9万6000人あまりの沖縄県宜野湾市の市長選挙だ。 来年1月24日が投開票の宜野湾市長選挙の最大の争点は、市内にある普天間基地の問題だ。普天間基地は、面積4.8キロ平方メートル、市面積の25%におよぶ。ちょうど滋賀県における琵琶湖のように、基地は市の中心部に位置し、反対側に行こうと思えば、ぐるりと基地の外周をまわらなければならない。 しかも、宜野湾市は、那覇市を中心とする都市圏の一部を構成しており、人口密集地。04年に普天間基地に隣接する大学にヘリが墜落する事故が起きるなど、住宅密集地に囲まれた基地の危険性が指摘されてきた。日本政府は米国との合意に基づき基地を沖縄本島北部の名護市辺野古に移設する工事を進めているが、それに真っ向から反対し、普天間基地の県外移設を求めているのが、昨年11月に自民党が推す現職を破り当選した翁長雄志沖縄県知事だ。自民党は、昨年12月の衆議院選挙でも沖縄県内に4つある小選挙区で全敗。この他にも辺野古がある名護市長選挙も昨年落としており、沖縄では負けが込んでいる。メディアの論調も知事らの反対を押し切って進められる辺野古での工事に批判的で、官邸にとって最も頭が痛い難問のひとつとなっている。 そうした状況のなか来月行われる市長選挙。自民党が推すのは、現職の佐喜眞淳氏(51)。自民党県議を経て、前回にあたる12年の市長選挙で初当選した。一方、対立候補となるのは、県土木建築部の元幹部職員で新人の志村恵一郎氏(63)だ。志村氏の支持母体となるのは、昨年の知事選で翁長氏の当選を実現させた「オール沖縄」。社民党や共産党などの革新各党に加え、一部保守系も取り込んだ、沖縄独自の枠組みだ。12月9日の志村氏の総決起大会には、翁長知事も応援にかけつけた。 この選挙に官邸は異常に肩入れしている。まず、今月4日に突如、官邸で行われた日米の共同記者発表。米国のケネディ大使とともに菅義偉官房長官が、沖縄県内の米軍施設・区域の返還の一部前倒しを明らかにしたのだ。そのなかには、普天間飛行場の一部約4ヘクタールが含まれていた。政府と近い佐喜眞市長がかねてから求めていた普天間基地の早期返還に、一部とは言え応えることで、実績づくりに協力し、市長選挙を後押ししようという官邸の意図がみえみえだ。 翌日の朝刊で、沖縄の地元紙は、「今回返還される普天間飛行場の4ヘクタールは飛行場全体の0.8%に過ぎない」(沖縄タイムス)と指摘し、日米両政府の発表を「話クワッチー(話のごちそう)」に過ぎないとの翁長知事の受け止めを引用。会見にわざわざ在日米軍司令官のドーラン空軍中将を同席させたのも「何とも仰々しいお膳立てだ。成果をアピールしたい気持ちがありあり」と批判した。ディズニー側と話をつけたという噂ディズニー側と話をつけたという噂も それでも官邸は次の手を打った。12月8日に官邸で官房長官と面談した佐喜眞市長は、普天間基地の跡地利用の一環としてディズニーリゾートの誘致を目指す考えを示し、政府の協力を求める要望書を提出した。官邸関係者によると、この佐喜眞市長の要望は菅官房長官によるお膳立てだという。 「官房長官はすでにディズニー側と話をつけているようです。基地が早期に返還されると跡地がどう利用されるのか、具体的な青写真を見せることで、政府と協調して早期返還を目指す佐喜眞市政の継続を市民に訴えようということなのです」 そして、官邸による宜野湾市長選へのテコ入れのさらなる一手が、冒頭に挙げた軽減税率で公明案の丸のみだ。佐喜眞氏が市長に初当選した前回の選挙では、元市長だった革新系の相手候補とのあいだで大接戦となり、票差はわずかに900票だった。 通常、首長選挙では2期目の選挙が最も有利と言われる。1期4年間のあいだに市民のあいだに知名度が浸透する一方で、多選批判を受けることもないからだ。 だが、もともと接戦だった上に、今回の選挙では志村氏を支援するのはオール沖縄。革新票だけでなく一部保守票の取り込みも狙う。県土木建築部の元幹部職員という肩書も保守票が期待できる。現在のところ、自民党が独自に行った電話調査では、わずかに現職が有利となっているようだが、今回も大接戦となるのは必至だ。それだけにカギを握るのは公明票の行方となる。 宜野湾市内の公明票はおよそ5000。公明党は宜野湾市長選挙でどちらの候補を支援するのか、まだ態度を明らかにしていない。佐喜眞陣営とすれば、なんとしても支援を取りつけたいところだろう。参議院選挙だけでなく、この選挙でも公明票頼みとなっている構図だ。 この選挙が官邸にとって負けるわけにいかないのは、普天間基地のお膝元でもある宜野湾市で辺野古移設に反対する市長が誕生すれば、今後の移設計画の先行きが見通せなくなるからだ。一自治体の首長選挙ながら国政を左右しかねないだけに目が離せない。

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    法廷に持ち込まれた辺野古移設 在沖海兵隊が存在する正しい説明

    小谷哲男 (日本国際問題研究所 主任研究員) 日米同盟は、防衛協力の指針(ガイドライン)の改定と平和安全保障法制の成立によってさらに強化される。北朝鮮の核ミサイル開発が進み、中国が強硬な海洋進出を行う中、日米同盟の強化は避けては通れない。だが、米海兵隊普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設問題は、日米同盟の足元を揺るがしかねない状況にある。日本政府と沖縄県の対立が、ついに法廷闘争に持ち込まれたからだ。沖縄県側に勝ち目はないというのが大方の見方 普天間移設に必要な辺野古の埋め立ては、2013年12月に仲井眞弘多前知事が公有水面埋立法に基づいて承認した。ところが、14年11月の沖縄県知事選挙で、辺野古移設反対を公約に掲げて仲井眞前知事を破った翁長雄志知事は、「法的瑕疵(かし)がある」として埋め立て承認を取り消した。所管の国土交通大臣は、沖縄防衛局の行政不服審査法に基づく申し出によって翁長知事による承認取り消し効力を停止し、政府は移設工事を続けている。 今回、埋め立て承認の取り消し撤回を求めた石井啓一国交相の是正指示を沖縄県が拒否すると発表したため、政府は地方自治法に基づき、翁長知事に指示に従うことを命じるよう福岡高等裁判所那覇支部に提訴した。判決は数か月で出る見込みだが、敗訴した側は上告も可能だ。最終的に政府の主張が認められれば、国交相が行政上の強制執行である「代執行」に踏み切り、知事に代わって埋め立て承認の取り消しを撤回する。普天間基地(Getty Images) 12月2日に開かれた第1回口頭弁論で、翁長知事は沖縄の基地負担を国民に問うと訴えた。翁長知事は逆提訴も検討している。だが、仲井眞前知事の埋め立て承認に法的問題はなく、沖縄県側に勝ち目はないというのが大方の見方だ。おそらく、翁長知事もそれを承知の上で政府との対決姿勢を維持しているのだろう。辺野古移設への反対を続けることによって、来年の参議院選挙と沖縄県議会選挙を有利に進め、最終的には2018年に自らの再選につなげることができるからだ。 就任後、翁長知事は「あらゆる手段」を使って移設を中止させると明言した。その上で、埋め立て承認の妥当性を検証する第三者委員会の設置や、米政府・議会関係者に直接辺野古移設の中止を訴えたるための訪米、沖縄全戦没者追悼式での政府批判など、政治的パフォーマンスを繰り返し、果ては国連人権委員会で米軍施設が集中する沖縄は「差別」されていると訴えた。 沖縄県議会も、県外土砂を使用した国の辺野古の埋め立てを阻止するため、埋め立てによる外来生物の侵入防止を目的とした県外土砂規制条例案を賛成多数で可決し、知事を側面支援している。翁長知事への支持は県外からも寄せられ、様々な分野の著名人が共同代表を務める「辺野古基金」には3億5000万円以上が集まり、反対する市民運動を支援している。本土からの活動家も加わった辺野古での反対運動は、過激さを増している。平和安全保障法案に関して的外れな批判を繰り返した学生団体SEALDsも、今度は辺野古移設に批判の矛先を向けている。 このままでは沖縄県知事が辺野古移設反対の先頭に立つ中、移設作業が進むという、日米同盟の維持にとって極めて好ましくない構図が定着してしまう。地元が米軍基地反対の声が強めれば強めるほど、中国や北朝鮮には日米同盟が弱体化していると見えるだろう。中国は尖閣諸島での示威行為を強め、北朝鮮も核ミサイルの恫喝をさらに行えば、日本の安全保障環境は一層厳しくなる。 代執行訴訟は日本政府が有利だが、他方で沖縄のさらなる反発を招くだろう。代執行後に、どのように沖縄との関係を修復しつつ辺野古移設を進めるかについて考えておくべきだ。関係者が積み重ねてきた知恵と努力の結晶関係者が積み重ねてきた知恵と努力の結晶 翁長知事は、県知事選や衆院選、名護市長および市議会選挙の結果、辺野古移設反対が沖縄の「民意」だという。しかし、翁長知事のいう「民意」に移設で直接影響を受ける辺野古の住民の声は含まれているのだろうか。96年に日米両政府が普天間の移設で合意して以降、移設先として自ら名乗りを上げたのは辺野古の住民だけだ。それは苦渋の決断だったに違いない。しかし、だからこそ、辺野古から山を隔てた名護市中心部の住民の声よりも、辺野古の住民の決断がまず尊重されるべきだ。このため、政府が沖縄県を介さず、辺野古3地区の要望を直接聞くようになったことは、「民意」を聞くという意味で正しい。普天間飛行場の周辺住民も安全への不安から移設を求める声が強く、普天間の危険性の除去は必ず行わなければならない。 そもそも、辺野古への移設計画は、抑止力を維持しつつも、普天間の危険性の除去と固定化の回避のために、関係者が積み重ねてきた知恵と努力の結晶である。翁長知事は米軍占有施設の74%が沖縄に集中していることを批判するが、普天間の返還と嘉手納より南の施設の返還で、この状況はある程度緩和される。それは沖縄本島への米軍基地の集中という現状を根本的に変えるものではないが、市街地のど真ん中に位置する普天間の危険性の除去につながるし、跡地利用は沖縄経済振興の可能性を広げることにもなる。日米両政府は12月4日に嘉手納より南の米軍施設の前倒し返還に合意したが、目に見える形での同様の負担の軽減を続けて行くべきだ。特に、沖縄本島北部の新興に貢献できるよう、交通インフラの改善につながる施設返還を優先するのが望ましい。 日米両政府は、早ければ2022年度の普天間返還を予定している。日本政府は、埋め立てを承認した仲井眞前知事の要請に基づき、2019年2月までの普天間飛行場の運用停止も目指す。普天間の運用停止と辺野古への移設をできるだけ時差なく実現することが、政治の責任だ。だが、翁長知事は辺野古への移設に反対する一方、普天間飛行場の運用停止については予定通りの実施を求めている。また、2019年2月までの普天間の運用停止は、あくまで日本政府と沖縄県の間の目標に過ぎない。アメリカ政府はこれに関与していないが、アメリカ政府との交渉なしに運用停止は実現できない。 普天間が持つヘリポート、空中給油、有事の滑走路という3つの機能の内、ヘリポート機能以外はすでに本州および沖縄の別の基地に移転されている。普天間に配備さえているオスプレイの訓練の本州への移転も着実に進んでいる。普天間の運用はすでに大きく縮小されているのだ。この事実をふまえ、普天間の危険性の完全な除去のために、日本政府と沖縄県は運用停止に向けて協議を通じて共通の認識を共有し、その上でアメリカ政府との交渉を行うべきだ。沖縄の経済発展も安定した国際環境あってこそ 日本政府は、在沖米海兵隊が抑止力だと説明してきた。だが、沖縄はこの説明に納得していない。実際、海兵隊が抑止力だという説明は厳密には正しくない。抑止とは、相手が受け入れがたい報復を行なえる態勢を築くことによって、相手の攻撃を踏みとどまらせることだ。抑止力を構成しているのは、核兵器を頂点とする米軍全体の能力と、アメリカ政府が必要な時にその能力を使う意志である。米軍が日本に駐留し、日米が緊密な関係を維持することが抑止力の維持につながる。在沖海兵隊はその高い即応能力により、抑止力の一部を構成している。日本政府は在沖海兵隊に関する正しい説明を沖縄にするべきだ。 沖縄が目指す公共事業と観光、そして基地(「3K経済」)からの脱却と、周辺アジア諸国との連携のハブとしての自立は、安定した国際環境なしに達成できない。在沖海兵隊は安定した国際環境の維持に不可欠である。一方、安定した国際環境の下で緊張緩和が続けば、やがて沖縄に米軍が駐留する必要性が下がるかもしれない。普天間の辺野古への移設は、賛成派と反対派が正面から対立し、法廷闘争に持ち込まれてしまったが、このような戦略的視野を持って語られるべきだろう。

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    国民を愚弄する沖縄の「英雄」? 剥がれ始めた翁長知事の化けの皮

    篠原章(評論家・批評.COM主宰) 宜野湾市長選挙が終わった。沖縄の選挙では、事前運動や戸別訪問など東京などからすると信じられないほどの選挙違反が横行するのが常だが、今回もその例に漏れず、選挙違反のオンパレードだった。両派とも「あちらがやるから、こちらもやる。やらなかったら負ける」という姿勢だから、どうしてもエスカレートしてしまう。自分たちの行為が違法であるとの認識も薄い。選挙管理委員会や警察にも違反の通報はある。が、多くは対立候補支持者の通報だから、迂闊に動けないという。誰の通報だろうが、選管も警察も動くべきだと思うが、彼らもまた選挙違反に慣れっこになって、動きが鈍いのかもしれない。通常は選挙が終わっても、たいして摘発もない。記者会見する沖縄県の翁長雄志知事=2015年12月25日、沖縄県庁 お節介はあまりしたくないが、「公正な選挙」という基本的なところから正常化しないと、沖縄の政治風土はいつまでたってもよくならないと思う。どんなに候補者が高潔で優れた能力を備えていたとしても、違法な選挙を闘い、利権を争う政治風土のなかで、やがてその高潔さや能力を失い、政治的駆け引きだけに長けた政治家が生まれてしまう。不幸なことだと思う。 今回の選挙でいちばん驚いたのは、1月20日に放映されたNHK沖縄放送局のニュース番組のなかで、志村恵一郎候補と志村候補を応援する翁長雄志沖縄県知事が、一緒に街頭で選挙運動する様子が映しだされ、カメラの前で堂々と選挙違反の戸別訪問を行っていた一件だ。NHKの記者やディレクターが、翁長知事らの行為を選挙違反と承知で編集しなかったのか、それとも沖縄ではごく当たり前の光景だから、選挙違反とは思わずに放映したのかは知らないが(おそらく後者だろう)、「日本には民主主義はない」と国連人権理事会(昨年9月21日)で世界に向けて朗々と訴えた翁長知事が、民主主義の基本である選挙を汚している現場を県民に知らしめてしまったのである。 志村陣営の伊波洋一元宜野湾市長は、「街宣活動の途中に知り合いのところに顔を出すことはよくあり、違法なものではないと理解している」とのコメントを出している(1月23日付『産経新聞』)。沖縄ではこれを選挙違反といわないのかもしれないが、少なくとも東京では選挙違反だ。 選挙運動中に知り合いの家を見つけて、玄関先で「よろしく」という行為が選挙違反とされるのは理不尽だ、と言いたいとしても、公職選挙法には「戸別訪問はダメ」と厳しく定められている。規定が気に入らないからといって、法を破っていいことにはならない。しかも、法を破ったのは、「政府に果敢に闘っている」として注目を集めている翁長知事だ。現代沖縄を象徴する「英雄」が、無自覚に法を破っているとしたら、県民と国民を愚弄するものではないか。やるべきことはいくらでもある 県民や国民を愚弄しているのは今回の一件だけではない。就任して1年を超えた翁長知事だが、いくら公約だからといって「辺野古移設絶対阻止」だけに力を注ぐのは、知事という職務に臨む姿勢として明らかにバランスを欠いている。県のある職員も「知事が辺野古しかやらないから、他の仕事が遅滞して困っている」と不愉快そうにこぼしていた。所得格差、貧困、教育現場の混乱、防災、過疎、DVの横行や青少年の非行…。やるべきことはいくらでもある。基地問題は沖縄県の課題の一つに過ぎない。 翁長知事を支持する知人にそう言ったら、「そんなことはない。辺野古での政府の不正を暴くために、ワシントンやジュネーブに足を運んだのは県民にとって必要なことだ。それに、経済振興・観光振興にも真剣に取り組んでいる。この1年、北京、台湾、香港、シンガポール、そしてハワイを訪問し、トップセールスに努めている」という答えが帰ってきた。米軍普天間飛行場(中央)と周辺の住宅地=沖縄県宜野湾市 なんと全部海外出張ではないか。調べたら、翁長知事はこの1年間で8回も外遊している。外遊がいけないとは言わないが、就任1年目に「外遊が多すぎる」とメディアから厳しく批判された舛添要一東京都知事も、その回数は6回である。「アジアと日本の架け橋になる」というスローガンを掲げる沖縄県だから、「アジア各地を廻ることも仕事のうち」と言うかもしれないが、他方で翁長知事は「日本はろくでもない国だ」とあちこち吹聴して歩いている。架け橋もへったくれもないではないか。 そもそも翁長知事は、知事としてもっとも基本的な仕事に真摯に取り組んでいない。それは「防災」である。 昨年9月末、八重山地方に台風21号が襲来して、与那国島で最大瞬間風速81・1メートルを記録したことは記憶に新しい。与那国島では大きな被害が出たが。被災の2日後に副知事を派遣したが、、翁長知事はその後一度も与那国を視察していない。仲井眞知事時代は、台風で離島に被害が出たら、知事自身が視察していた。翁長知事の対応は、県民、とくに与那国の人たちを愚弄するものだ。人口1600人程度の与那国はたいした「票田」ではないから行かなかったのだろうか。「票にならないことはしない」という翁長知事一流の政治的計算が働いたのかもしれない。 さらに決定的なことを指摘しておこう。あれだけ「辺野古、辺野古」と言い続けている翁長知事だが、知事になってからの翁長氏は一度も辺野古を訪れていない。翁長氏が辺野古に足を運んだのは、知事選前の2014年9月20日と選挙直後の11月19日の2回だけだ。選挙も終わったから、辺野古で座り込むような泥臭いパフォーマンスより、ジュネーブで英語スピーチするカッコいいパフォーマンスを選んだのだろうか。おそらくここでも、翁長知事の政治的計算が働いている。翁長知事は夫人を座り込みに行かせたが、どう考えても知事本人が現場で激励するのが筋だ。「翁長知事、頑張れ!」と唱えながら辺野古ゲート前で、日夜座り込んでいる高齢の活動家に対してもあまりに失礼ではないか。辺野古の現場もよく黙っているな、と思う。 これだけ県民や国民を愚弄して平気な知事も珍しいが、多額の経費をかけた勝ち目のない訴訟合戦に時間を割くだけで、政府とまともに交渉しようともしない翁長氏の政治手法からは、容易に想像できる姿勢でもある。化けの皮は、だんだん剥がれ始めている。