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    「総理になれないなら出馬しない」小池劇場はこうして大コケした

    ことに邁進(まいしん)してきただけなのです。つまり、小池氏の新党立ち上げに大義などないのです。今なら選挙に勝てると思って衆議院を解散した安倍総理と、今なら新党ブームの風に乗って総理になれるかもしれないと考えた小池氏。 その一方で、やむにやまれず新党の立ち上げを余儀なくされた枝野氏。党名はどうであれ、新党を立ち上げ、志を同じくする者たちとこれまでどおり自分たちの理想を実現するために立ち向かうしかないのです。中野駅前で立憲民主党の街頭演説を行う枝野幸男代表=4日、東京都(納冨康撮影 もちろん、立憲民主党がリベラル派の集団であれば、当然のことながら右寄りの有権者には敬遠されるかもしれませんが、しかし、自分たちの思想に忠実である面は理解されるでしょう。つまり、純粋さにおいては小池氏よりも枝野氏の方がはるかにまさる、と。 ただし、リベラル派にもいろいろな人がいることは指摘しておかなければなりません。全員が純粋というわけでもないでしょう。というのも、菅直人元総理などは、小池氏の希望の党に民進党が合流するとのニュースが流れたときに、小池氏は「日本のメルケル」になってほしいとエールを送ったほどなのですから。小池総理になってしたいこと? その一方で、民進党の逢坂誠二氏などは、立憲民主党設立が決定される前から、自分は無所属で出馬すると宣言していました。なんという爽やかさ。選挙は水物で実際に勝つかどうかは分かりませんが、自分の信念に忠実であることは十分証明されたと言っていいでしょう。 枝野氏は、希望の党から立憲民主党へ移行したいという候補者がいたら移行を拒まないと言っています。いち早く希望の党へ移り、議員であり続けることを優先していた者たちは、今複雑な思いでいることでしょう。 風向きが変わり、小池人気に陰りが出だしているのではないか、と。それに、肝心の連合が希望の党を支持することはしないことを決め、小池氏の思惑どおりに事が運ばなくなってきているからです。 いずれにしても、仮に小池氏の希望でなく野望がかなって将来、総理の座に就くことができたとして彼女は何をやりたいのでしょうか。それが私には分かりません。 彼女は、過去、環境大臣や防衛大臣を務めていますが、どんな実績があると言うのでしょうか。環境大臣の時にはクールビズを推進させたことくらいしか記憶にありません。環境大臣でありながら水俣を訪れようとは少しもしなかったとも言われています。都議会本会議に臨む小池百合子都知事=5日午後、都庁(宮川浩和撮影) 全国津々浦々にある電柱を地中化することをかねてから提唱していることは知られていますが、彼女はその莫大(ばくだい)な財源をどうやって捻出するかについては一言も言っていません。仮にそのような事業を優先させるとしたら、それは彼女の言うワイズ・スペンディング(税金の有効活用)に該当するのでしょうか。  築地市場の豊洲移転問題に関する彼女の発言も一貫性があるとは思われません。もともと豊洲移転は仕方のないものだと認識しながらも、取りあえずは慎重な姿勢を見せ、それによって人気を高めようと考えただけなのではないでしょうか。 小池氏は、自らの衆院選出馬に関してしつこく聞かれ、これまで「ない。最初から言っている」「日本の国政は改革のスピード感があまりに遅い。国会議員の一人になっても意味がない」と言っていましたが、それって「総理になる可能性があるのなら出馬しますけど…」と言っているのと同じですよね。

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    選挙の裏側 小池氏と“密約”あった安倍首相は“騙された!”

    月24日日曜日の昼下がり。安倍晋三首相(63才)は昭恵夫人から紹介された都内の美容院にいた。もうすぐ選挙だ。政治家は清潔感が大切だから、ちょっと伸びた髪をカットしておこう。ついでにヘッドスパも。 山尾志桜里前議員(43才)の不倫スキャンダルなどで最大野党・民進党の支持率が下がっているうちに選挙をすれば、自民党の手堅い勝利は間違いないだろう。ついでに、自分の「森友・加計スキャンダル」も封印されて、きれいさっぱり。首相も続投し、うまくいけば悲願の憲法改正もできるかもしれないなァ――散髪中の安倍首相はこんな風に余裕の表情を浮かべていたのかもしれない。 そんな風に安心しきっていた理由は、東京都の小池百合子知事(65才)との“密約”があったからだった。「安倍総理は“今後、小池都知事が自民党の強敵になるんじゃないか”と不安がってました。そこで9月上旬、安倍総理側近が小池さんと極秘に接触し、そこで小池さんは“東京五輪の成功を約束してくれるなら、憲法改正で自民党と協力してもいい”という態度を見せたそうなんです。それを聞いて安倍総理はすっかり安心しました。“小池新党が旗揚げされても、総選挙で影響は少ないし、ひょっとして味方になってくれるかもしれない”と期待して、衆院解散に踏み切りました」(自民党関係者)都庁を出る前に記者団の質問に答える小池百合子都知事=2日、都庁(酒巻俊介撮影) そうして安倍首相がヘッドスパを受けている最中、水面下で事態は激動していた。同じ頃、都内にある「都民ファーストの会」事務所には、小池氏の側近である若狭勝前衆議院議員(60才)と、民進党を離党した細野豪志前衆院議員(46才)がいた。2人は小池新党の準備を進めていたが、細部で折り合いがついていなかった。2人の男の前に座っていた小池氏が鬼気迫る表情でこう言ったという。「あなたたち、この期に及んで何をグダグダやっているの。そんな段階じゃないわよ。もう全部、私がやるから」 ベテラン政治ジャーナリストが明かす。「解散まで時間がないのに遅々として進まない新党結成の動きに小池氏が、“自分が新党の立ち上げを主導する”と宣言したんです。その後すぐ、民進党代表の前原誠司氏(55才)と小池氏の極秘会談が決まり、小池新党に民進党が合流する流れができあがりました。若狭さんと細野さんは、小池氏の早業を呆然と眺めるしかなかったそうです」安倍首相は「騙された」 翌日、小池氏は都庁で会見を開き、新党「希望の党」を旗揚げして自らが党首となることを発表。水面下の動きを一切知らなかった安倍首相は、その日の午後に行った解散表明の会見で、こんなピントのはずれた発言をした。「希望というのはいい響きだと思う。安全保障の基本的な理念は(自民党と)同じだ」 この期に及んで、安倍首相は“小池新党は仲間だ”と信じていたわけだ。街頭演説する自民党総裁の安倍晋三首相=28日、東京都(共同) そのわずか2日後、安倍首相の目の前は真っ暗になる。民進党が事実上解党し、ほとんどの候補者が希望の党の公認を受けるという“荒業”が明らかになった。これで、小池氏が安倍首相と敵対することがはっきりし、総選挙での「自民圧勝」の目論見が一気に崩れる。 「小池さんが訴えた主張は、消費増税反対と脱原発。自民党とはまったく逆の政策です。安倍総理と大半の自民党議員は、小池さんがそんなことを言い出すなんてまったく想定していなかった。“騙された。こんなはずではなかった”とつぶやいた安倍総理は顔が引きつって、その晩は一睡もできなかったそうです」(前出・自民党関係者) 自民党勝利を疑わなかった菅義偉官房長官(68才)や麻生太郎財務相(77才)も、あ然呆然と立ち尽くした。菅氏は希望と民進の合流を「選挙目当てだ」と批判したが、先に“選挙目当て”で解散したのは安倍首相だった。麻生氏にいたっては、「極めて理解不能だ。国会議員じゃなきゃ首相になれない」と理解に苦しむ小池批判を展開した。 ともあれ、自民党にも民進党にも「希望」を抱けず、投票先が見つからなくて投票所にも足が向かなかった有権者が、選挙に注目するようになったのは間違いないだろう。「希望の党の旗揚げで、久しぶりに有権者が政権を選択できる選挙になりました。投票率は前回よりもアップするはずです。さすが小池さんはギャンブラー。今回の総選挙は長く続いた『安倍一強』が支持されるかどうかが問われています」(政治評論家の伊藤惇夫氏)関連記事■ 風に左右される東京選挙区「自民の牙城でも勝てる保証なし」■ 総選挙の首都決戦「石原家で落選者出れば強烈なインパクト」■ 参院の蓮舫氏鞍替え出馬説も登場、自民に「東京全敗危機」■ もし希望の党が安倍政権を倒したら「首班指名」どうなる?■ 自民党選対「パールハーバーと思ったらミッドウェーだった」

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    小池百合子氏総選挙出馬で政権交代も? 後任都知事どうなるか

    突然の解散で窮地に立たされた前原氏にとって、小池氏は“救いの神”となった。「そのまま戦ったら民進党は選挙に惨敗していました。小池さんと会って、『あなた、思い切ってここで解党して合流しないと終わってしまうわ。今が決断の時よ』とスパッと言われたときには、プライドの高い前原さんは呆然としたと思いますが、信頼できる“姉貴分”の言葉だったから、前原さんは“民進党の最後の代表になる”という捨て身の決断ができたんでしょう」(民進党関係者)IOCプロジェクトレビューのレセプションに出席した小池百合子都知事=3日午後、東京都(松本健吾撮影) 小池氏の卓越したリーダーシップを頼って、仲間になろうとする男たちも多い。日本維新の会代表の松井一郎大阪府知事(53才)は、「都知事と府知事」という関係だったのに、小池氏とは個人的に会ったことがなかった。ところが、衆院解散が報じられ、水面下の小池氏の活発な動きを知ると、9月20日に上京して小池氏と会食。すっかり良好な関係を築き、小池氏と愛知県の大村秀章知事(57才)と会見し共闘をアピールした。「松井さんとしては、維新の牙城である大阪の選挙区に、希望が候補者を立ててきたら大変です。小池さんの動きを知って愕然として、東京まで飛んでいったというわけです。小池さんと手を組むことができて、ホッとしていますよ」(維新関係者)「小池マジック」はどこに向かう? 民進党から希望の党に合流するのは約130人といわれている。しかし、残りの約80人の候補者はまだ身の振り方が決まっていない。「小池氏は政治的なスタンスが合わない候補者や民進党色の強いベテランは『排除』する方針です。その中には総理大臣経験者の菅直人氏(70才)や野田佳彦氏(60才)なども含まれます。民進党の中では大物の彼らも、決して選挙が強いわけではないですから、党から放り出されたこの状況には呆然としているでしょう。同じく希望に合流しない枝野幸男氏(53才)はさっそく新党『立憲民主党』を立ち上げました。小池氏の“排除の論理”は民進党の支持者から強引すぎるという批判も招いています」(前出・政治ジャーナリスト) 政界の男たちをあ然呆然とさせた「小池マジック」は、これからどこに向かうのか。「東京に25ある小選挙区に7月の都議選の投票数を当てはめると希望の党は22議席で勝利する計算です。自民党は最悪の場合、全敗もあり得るんです。“魔の2回生”と呼ばれる自民党の若手議員たちは全国的に軒並み落選。自民が大敗して希望の党が比較第一党になれば、維新と連立して政権交代はかなり現実的といえます」(全国紙政治部記者) 安倍政権を倒し、悲願の政権交代を果たすための最後のピース。それは「小池氏の出馬」だ。「現在、かたくなに『出馬はない』と言う小池氏ですが、一寸先は本当に何が起こるかわからないのが、政治の世界。どんなに希望の党が躍進しても、小池氏が都知事のままでは首相にはなれません。小池さんが『衆院選に立候補して首相をめざす』と宣言したら、希望の党の勢いは何倍にも増すはずです。慎重にタイミングをうかがっていて、10月10日の公示日前の、“ここだ”という勝機で出てくる可能性が高いでしょう。ただし、そうなれば都知事の仕事を放り投げたという批判を受けることも覚悟しなければなりません」(前出・政治部記者)  小池氏が衆院選に立候補する場合は、都知事を辞任することになる。後任として囁かれるのはビッグネームばかりだ。「いちばんのサプライズは、小泉純一郎氏(75才)が『原発ゼロ』を訴えて出馬すること。小池氏と小泉氏の緊密な関係を考えても、東日本大震災以来、脱原発をライフワークとする小泉さんが“人生最後の御奉公”として悲願達成のため立候補する可能性は捨てきれません。民進党前代表で東京が地盤の蓮舫参院議員(49才)や、ツイッターで政局を意識した発言を繰り返している橋下徹・前大阪市長(48才)の出馬が噂されます」(前出・政治ジャーナリスト)関連記事■ 総選挙の裏側 小池氏と“密約”あった安倍首相は“騙された!”■ もし希望の党が安倍政権を倒したら「首班指名」どうなる?■ 総選挙の首都決戦「石原家で落選者出れば強烈なインパクト」■ 風に左右される東京選挙区「自民の牙城でも勝てる保証なし」■ 都の「希望」だったはずの小池氏に291万都民が聞きたいこと

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    小池新党と民進党の「ドタバタ野合」に政治の倫理的腐敗を見た

    田中秀臣(上武大ビジネス情報学部教授) 10月10日公示、22日投開票が行われる衆議院選挙をめぐる政治情勢が混沌(こんとん)としている。特に民進党の前原誠司代表が提案した、小池百合子東京都知事が率いる希望の党との事実上の「合併」をめぐる問題は、国民の多くに分かりにくい政治劇として映っているに違いない。全国幹事会・選挙対策者会議であいさつするため演壇に向かう、民進党の前原誠司代表=9月30日、東京・永田町の民進党本部(古厩正樹撮影) 簡単に整理すると、小池知事の抜群の知名度と国民の高い支持を民進党の全国的組織、資金力と交換することで、双方が選挙で実利を得るという作戦だった。そこには両党の「理念」や「政策」の一致を真剣に議論した痕跡は皆無であり、単なる選挙対策のための、まさに正真正銘の「野合」である。 そのためか、あれだけマスコミを中心にして行われていた「大義なき解散」という批判はどこかに吹き飛んでしまった。むしろ今の国民の焦点は、この理念も政策も全くない両党の野合と、そして対する安倍政権(自民・公明連立政権)が続くか否かの二つに向けられている。どちらかというと、前者の方がこの原稿を書いている段階で注目度が高い。 希望の党と民進党の野合は、前者が後者を事実上吸収する形をとった。その際に、選挙での立候補者を「選別」することが前提条件だったようである。おそらく筆者が指摘したような野合批判をかわすためのものだろう。 この「選別」をする過程で興味深いことが起こった。ひとつは、希望の党は、政策方針として憲法改正と安全保障法制賛成の立場を鮮明にしていた。改憲は、安倍晋三首相が提案した憲法9条第3項(自衛隊の明記)ではなく、より広範囲に及ぶものにするという積極的なスタンスだ。もちろん民進党の中にも改憲派が多くいたが、それでも党内の分裂を避けるために大っぴらには議論されてこなかった。また安全保障法制については、同党は全面否定の立場で国論をリードしてきた。その基本方針に賛同してきた議員は多数に上る。その過去を一切捨てて、今や積極的に賛成する側にまわっている。安全保障法制の委員会採決のときに、体を張って阻止しようと「蛮行」に及んだ議員が、いまでは「親類に自衛隊員がいて賛成している」とにこやかに語る始末である。まさに政治の倫理的腐敗のオンパレードを見る思いである。希望も民進も経済再生に本気なのか 憲法観や安全保障の在り方をどう考えるかは、政治家としてのアイデンティティーにかかわる問題だと思うが、どうもそんな意識はいかようにも変化するのだろう。そうなると、ただ単に生活のためか、権威欲のために政治家になっている連中がこれほど多かったということになるのだろう。 民進党の希望の党への合流について、ある有名政治家はギリシャ神話の「トロイの木馬」と称したり、ある大学教授は「安倍政権を倒すために反対の立場でもともかく糾合するのだ」と発言したりしている。仮にこの「トロイの木馬」戦略を採用して政治的に主導権を握っても、立場の違いから党の中は四分五裂してしまい、この北朝鮮リスクが顕在化する状況で、国内政治の混乱がもたらされるという最悪の結果になるだろう。まさに愚か者を超えて、悪質な政治ゲームに国民を巻き込む者たちである。 「選別」の過程で起きたもうひとつのことは、いわゆる「日本型リベラル・左派」勢力が少数ながら結集したことである。現段階の報道では、民進党の枝野幸男代表代行ら希望の党から「排除」される議員を中心に新党を立ち上げるという。この日本型リベラル勢力は第三極的な立ち位置で、共産党や社民党などとの連携を強めるのかもしれない。 ちなみに、なぜ「日本型」リベラルというと、この政治集団の多くは再分配政策には意欲的でも、積極的なマクロ経済政策には消極的だからである。現在の日本のように完全雇用に達していない経済で、積極的なマクロ経済政策に消極的であることは、経済格差、貧困、そして雇用の不安定化に寄与するだろう。それは社会的弱者を保護するリベラル的な発想から最も遠い。もちろん枝野氏も、最近では消費税凍結や現状の金融政策の維持を唱えるが、いずれも消極的な採用でしかない。リベラルであれば、例えば前者の財政政策ならば増税ストップではなく積極財政を採り、後者であればより一層の金融緩和政策を唱えるのが常とう手段であろう。しかし、これは希望の党でもいえるのだが、消費増税凍結を持ち出せば国民の関心を引きつけると思って言っているだけではなかろうか。連合の神津里季生会長との会談を終え、記者の囲み取材に応じる民進党の枝野幸男代表代行=10月2日、東京都千代田区(川口良介撮影) そもそも希望の党も民進党も経済停滞を脱する意識に乏しい。これでは過去の民主党政権がそうだったように、消費増税をしないといいながら、やがて最悪のタイミングでその法案化を決めたやり口をまた採用するのではないか。希望の党も、民進党の希望移籍組も新党合流組も、行政改革など政府支出を絞るという緊縮主義、財政再建主義だけがかなり明瞭だ。他方で、マクロ経済政策、特に金融政策についてはまったく評価が低いままである。このような政治集団が政治的に力を得れば、即時に為替市場や株式市場に悪影響をもたらし、消費や投資を抑圧して再び経済停滞に戻してしまうだろう。首相会見で重要な発言は消費税ではない 自民党と公明党の政策に対する批判もある。その代表的なものは、衆院解散の意図が分からないというものだ。冒頭の「大義なき解散」の言い換えである。安倍首相がこの時期に解散を決めた要因は、大きく三つあるだろう。ひとつは、北朝鮮リスクが11月の米中首脳会談後に高まる可能性があることだ。そしてこの北朝鮮リスクはそれ以降、短期的には収束することなく、むしろ高止まりしたままになる可能性がある、という判断からだろう。 残りの二つはいずれも選挙対策的なものだ。内閣支持率の改善がみられたこと、そして小池知事の新党の選挙準備が不十分なこの段階を狙ったというものである。ただこれらふたつの要因は、マスコミの報道の仕方や、新党の行方に大きく依存するので、首相側からすれば確たる解散の理由にはなりにくい。いずれにせよ、どんなに遅くとも来年末には任期満了を迎えるので、北朝鮮リスクが相対的に低い現時点での解散に踏み切ったということではないか。 また経済政策については、安倍首相の2019年の消費増税を前提にして、その消費税の使途変更が注目されている。簡単に言うと、国債償却から教育の無償化などへの使途変更である。これについて、あたかも2019年10月の消費増税が確実に行われるとする皮相な見方がある。過去の消費増税の見送りもそうだったが、増税自体はその時々の経済状況をみて政治的に判断されてきた。使途の変更と増税「確定」は分けて判断すべきだろう。 むしろ首相の記者会見では、日本の財政再建の旗印であった基礎的財政収支(プライマリーバランス)の2020年までの黒字化達成を断念したことの方が筆者からすれば重要である。これによって中長期的な財政支出への重しがとれたことになる。経済低迷や北朝鮮リスクによる意図しない政府支出にも十分対応可能になるだろう。一方で、経済面で残念なこともある。それはインフレ目標の早期達成をはかるためには、日本銀行との協調を再強化しなければならないのに、その点への認識が甘いように感じられる。選挙のためには、現在の経済状況の良さを強調するという戦略だろうが、まだまだ日本経済は不完全雇用の状態である。それに立ち向かえるだけの政策の装備をしなくてはいけない。報道陣の取材に応じる希望の党の小池百合子代表=10月1日、東京都中央区 このままいけば、今度の選挙の論点はワイドショー的な「安倍自民vs小池希望」という構図で騒がれてしまうだろう。または小池新党をめぐる政治的混乱に注目が集まってしまう。今の政治状況では、ワイドショー的なものがかなり政治的なパワーを持っている。もし、また安易にテレビなどの報道にあおられて、「一度チャンスを与えよう」とか「新しいものがいい」などという安易で空疎な態度で、選挙に挑まないことを筆者としては祈るばかりである。

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    小池新党との距離感を模索するにせよ、すべての道は憲法改正に通ずる

    宮崎瑞穂撮影)  であるからして、日本政治における中長期的な影響はほとんどないでしょう。ただ、今般の選挙において重要なのは、「希望の党」が自民党の票を食うのか、野党票を減らす方向に行くのかということです。それによって、憲法改正へ向けた具体的な動きが進んでいくかが見えてくるからです。小池知事の発言を見ていると、自公の間にくさびを打ち込む意図が明白であり、興味深い展開となっています。 今般の選挙を指して、争点に乏しいという意見も聞かれますが、そんなことはありません。公明党に圧力をかけるにせよ、小池新党との距離感を模索するにせよ、全ての判断は改憲との関連性で下されるでしょう。まさに、全ての道は改憲に通じているのです。

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    「自衛隊を憲法に明記できるか」10・22総選挙の争点はこれだ

    岩田温(政治学者) 安倍総理が解散、総選挙の決断を下した。野党の政治家、そして、マスメディアの無責任なコメンテーターたちが「大義なき解散」との批判の声を上げている。また、北朝鮮の核ミサイルの脅威が存在する中、総選挙で政治的空白を作るのは危険だという議論もある。何とも不思議でならない。 なぜなら、野党の政治家たちは、つい先日まで解散、総選挙を求めていたからである。安倍政権を解散、総選挙に追い込み、退陣させると怪気炎を上げていた人々が、解散、総選挙に反対しているのだから、これは摩訶(まか)不思議といわざるをえない。そしてさらに不思議なのは、「北朝鮮の脅威を必要以上に騒ぐな!」としたり顔で説いていた人々が「北朝鮮の脅威」を理由に解散総選挙に反対していることである。全く支離滅裂でいい加減な非難だ。 朝日新聞は9月26日の「社説」で「首相にとって今回の解散の眼目は、むしろ国会での議論の機会を奪うことにある」と批判し、今回の選挙の争点を「民主主義の根幹である国会の議論を軽んじ、憲法と立憲主義をないがしろにする。そんな首相の政治姿勢にほかならない」と断定している。 見識の低い主張と言わざるを得ない。そもそも「民主主義の根幹」が「国会の議論」であるとの主張が見当違いである。民主主義の根幹とは、選挙に他ならない。政治家が己の政治信条を訴え、国民に負託を求め、全存在を賭けて闘う。この選挙こそが民主主義の根幹だ。選挙を恐れるような政治家は政治家としての資質がない。防衛省で栄誉礼を受ける安倍首相(左)と小野寺防衛相 =9月11日 さて、それでは、今回の総選挙の最大の争点は何か。それは「憲法と立憲主義」を蔑(ないがし)ろにする首相の政治姿勢などという抽象的な問題ではない。現実を直視するか否かこそが今回の総選挙の最大の争点である。 戦後わが国の平和と繁栄を守ってきたのは、誰がどう考えてみても、自衛隊と日米同盟の存在があったからである。自衛隊、日米同盟なしに戦後日本の繁栄はありえなかった。しかし、こうした現実を直視せずに、戦後日本の平和を「憲法九条」のおかげであると信じ込もうとする人々がいまだに存在している。彼らは日本国憲法を「平和憲法」と呼び、「平和憲法」を守ることが日本の平和を守ることにつながると信じ込んでいるのである。憲法九条「自衛隊明記」の是非 日本国憲法では、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とうたいあげている。だが、これは事実に反する言葉だと言わざるを得ない。日本国民の誰が核武装への道をひた走る北朝鮮の「公正と信義」に「信頼」しているのだろうか。「日本列島の4つの島は、チュチェ思想の核爆弾によって海に沈むべきだ。もはや日本は私たちの近くに存在する必要はない」などと公言する国家にわが国の平和を委ねるわけにはいかない。多くの国民がそう思っているはずだ。実際に「われらの安全と生存を保持」しているのは、自衛隊の方々が日夜平和のために汗を流しているからであり、堅牢な日米同盟が存在しているからだ。 今回、安倍総理は、自民党の公約に憲法九条への「自衛隊の明記」を盛り込むことを公言している。保守派の中でも批判が多いことを私も承知しているし、本来、憲法九条の第二項を削除すべきであるとも認識している。 だが、政治とは、あくまで漸進的な営みだ。自分たちの望む全てが実現できなければ、直ちに全面的に否定するという教条主義的姿勢は政治には似つかわしくない姿勢だ。現実にわが国を守っている自衛隊を憲法に明記するというのは、憲法が自衛隊について全く触れていない現状よりはよい。「政治は悪さ加減の選択である」と喝破したのは福澤諭吉だが、その通りであろう。国家を守る自衛隊を憲法に位置づけるのは、少なくとも、全く自衛隊の存在が閑却されている現在の憲法よりはよいといってよいだろう。 自衛隊の存在を憲法に明記せよという自民党に対し、民進党は「9条に自衛隊を明記することは認められない」と対決姿勢を明らかにしている。不思議でならない姿勢だ。なぜ、自衛隊を憲法上に明記することに反対するのか、その論拠を明らかにすべきであろう。まさか、民進党の議員とて自衛隊の存在を違憲だとまでは主張しないであろう。国会前で安全保障関連法案可決への抗議デモを行なう人たち =2015年9月、東京都千代田区(栗橋隆悦撮影) それならば、なぜ、自衛隊を憲法に明記することに反対するのか、その論拠を明らかにすべきであろう。いつまでも「平和憲法」を維持せよとの主張を繰り返すだけでは、民進党はかつての社会党のように時代に葬り去られていくことになるだろう。 小池都知事が立ち上げた「希望の党」に国民が一定の期待を寄せているのは、この政党が安全保障の問題で見識を示しているからだ。彼らは共産党とは明確に一線を画している。自民党とは理念を異にする政党ではあるが、共産党とも異なる政党である。民進党が愚か極まりなかったのは、自衛隊を「違憲」の存在だと位置づけている共産党と共闘をし、非自民反共産党という幅広い中道層の支持を得られなかった点にある。 自衛隊と日米安保によって日本の平和が維持されているという現実を見つめ、平和のために具体的な行動を起こすのか、それとも、「平和憲法」に拝跪(はいき)し、空想的観念的平和主義という感傷に浸っているのか。それが選挙の最大の争点だろう。

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    いずれ消えゆく小池新党は、憲法改正という「時代の要請」を断行せよ

    授) 9月25日夕刻、安倍晋三総理は「朝鮮半島の核」に絡む国際緊張が顕著に高まる最中、衆議院解散・総選挙の決行を表明した。これに先立ち、民進党の松野頼久国対委員長が「北朝鮮がミサイルを撃った中で選挙するのは、あまりにも平和ぼけしている」と語ったのは、彼が「平和ボケ」の言葉を口にする姑息(こそく)さや浅薄さを脇に置くとしても、その解散・総選挙を受けた心理の一端を示す。衆院解散について会見する安倍晋三首相=9月25日、首相官邸(斎藤良雄撮影) 現下、朝鮮半島情勢は高い緊張が保たれたまま事態が動かないという一種の「凪(なぎ)」の局面に入っている。北朝鮮の立場に仮託して考えれば、彼らにとっても「次の一手」は難しいかもしれない。彼らは、既にグアム島周辺に着弾するミサイルを撃つオプションを開陳しているけれども、そうしたオプションは、たとえ偶然であっても米国領域内に着弾すれば、それは即時の報復を招くであろう。 追加の核実験にしても、豊渓里(プンゲリ)実験場が度重なる実験によって地盤が崩落し、今後も使い続けられるかは疑わしいという観測が正しいならば、次が「打ち止め」になる。北朝鮮も、手段がミサイルと核実験に限定される限りは、事態をエスカレートさせ続けるわけにはいかないということである。たとえ、北朝鮮が日本列島を飛び越すミサイルを撃ってきたとしても、それは、8月以降の数字が「2」から「3」になるだけのことである。 北朝鮮が挑発の効果を保つためには、再び「0」を「1」にするオプションを採らなければならないであろうけれども、そういうオプションも既に尽きかけているのではないか。北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相が言及した「太平洋上の水爆実験」というオプションにしても、それは、米国というよりも国際社会全体に実害を及ぼしかねないものである以上、決して軽々に採れるものでないであろう。 以上の筆者の観測によるならば、現下の朝鮮半島情勢の「凪」が去り「嵐」が本格的に訪れる前に、日本の態勢を固めるべく衆議院解散・総選挙に踏み切った安倍総理の判断は、それ自体としては何ら誤っていないのであろう。 此度(こたび)の選挙に際して留意すべきは、東京都の小池百合子知事が自ら代表に就任する体裁で立ち上げた国政新党「希望の党」の動向である。小池新党は、現時点で参集した若狭勝衆院議員、細野豪志元環境相、日本のこころの中山恭子代表、松沢成文参院議員、長島昭久元防衛副大臣、松原仁拉致問題担当相といった政治家の顔触れを見る限りは、それが「中道・保守・右派」色の濃厚な政党として理解されよう。新党は数年後に存続していない? 小池知事自身もまた、自らの新党を「改革、保守、これらを満たす方々」による「新しい勢力」と位置付けている。その上で「議員定数や報酬の縮減」、「徹底した行政改革と情報公開」、「女性活躍の推進」、「原発ゼロ」、「ポスト・アベノミクスにかわる成長戦略」、「憲法改正」という政策志向を打ち出している。共産党の志位和夫委員長は、小池新党を「自民党の補完勢力」と評しているけれども、それが少なくとも「非自民系保守勢力」糾合の枠組みとして認識されるのは無理からぬことであろう。会見に臨む東京都の小池百合子知事=9月25日、東京都新宿区の都庁(福島範和撮影) もっとも、「希望の党」という小池新党の党名それ自体は、この小池新党が数年後に存続しているとは想定されていないことを暗示している。小池新党も結局、時限政党なのであろう。そうであるならば、小池新党には今選挙から2020年前後の次回選挙までの数年間に、何を断行するかが問われることになる。 振り返れば、1990年代前期、小池知事の政治キャリアの原点であった日本新党は、政治改革関連四法案の成立を置き土産にして、僅か2年半で政党としての役割を終えた。小池新党もまた、その政党としての「求心力」を担保するのが小池知事の存在でしかない以上、向こう数年の政治プロセスの中で真っ先に何に手を付けるかを明示しなければなるまい。日本新党にとっての政治改革関連四法に相当するものが、小池新党にとっては何かが問われなければならないのである。 今後数年、朝鮮半島情勢の「嵐」が本格的に訪れる局面を見越すならば、今選挙後に安倍内閣が継続するとしても、それは、自民・公明両党以外の諸党の協調を得た実質上の「挙国一致内閣」にならざるを得ないのであろう。そうであるとすれば、日本新党にとっての政治改革関連四法に相当するものが、小池新党にとっては何かという問いに対する答えは、安全保障政策の「制約」を外す憲法改正を断行することでしかない。国家統治の基本は、「時代の要請」に応じた政策を断行することにある。当節、そのことは忘れられてはなるまい。

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    「10・22総選挙」の風を読む

    も視野に小池新党への合流を模索する。対する安倍自民は「捨て身の戦法」の前に後手に回り、「今なら勝てる選挙」の雲行きも怪しくなった。ついに始まった「10・22総選挙」。目まぐるしく変わる風をどう読む。

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    小池氏が総理を狙うなら安倍さんには「山口那津男首相」の秘策がある

    に勝てないから、自分より弱い者いじめをしているようにしか思えない。相手が民進党なら増税を公約に掲げて選挙をしても勝てる。甘く考えていないか。民進党は社会党の劣化コピー 安倍首相の言動を一切批判するなと他者にしいる者を「信者」と呼ぶ。信者一同曰く。今なら民進党に勝てる! では、聞く。いつなら、負けるのか? 民進党とは、社会党の劣化コピー政党である。そんな政党相手の選挙など、モリカケ騒動(森友・加計問題)の真っ最中でも勝てるだろう。かつて、日本社会党という恥ずべき政党があった。政権担当恐怖症の政党であった。それでは、何の為の政党か。日本国憲法を改正させないことを目的とする政党である。改憲阻止のハードルは低い。衆参いずれかで三分の一の議席を持てば、誤植一文字の改正も阻害できる。いつしか人は、“二本斜壊党”と揶揄するようになった。左派と右派の派閥抗争で自滅していったからだ。 社会党を育てたのは誰か。与党第一党の自由民主党である。自民党は如何なる手段を使ってでも政権の座に居座りたい政党である。これはこれで大いに問題はあるが、政権担当恐怖症の社会党よりは、よほど健全である。しかし、それは政権担当可能な政党が二つ以上ある場合の話である。 衆議院で51%以上の議席が欲しい自民党、衆参どちらでもいいから34%の議席が欲しい社会党。両者の思惑が一致した。1955年の両党の結党時、自社で衆議院の90%を占めた。55年体制のはじまりである。民主制においては、三つ目の政党が必要かどうかはともかく、最低限二つの選択肢がなくてはならない。一つだと、ファシズム(一国一党)と同じだ。記者会見に臨む安倍晋三首相=25日午後、首相官邸(福島範和撮影) 最初の20年間、自民党の一党優位は機能した。高度経済成長により富の公正配分を行う。要するに、「国民を食わせる」政党として、自民党の存在意義があった。それも、石油ショックで高度経済成長が終焉すると、55年体制の限界は誰の目にも明らかになった。ところが、自民党は今に至るまで延々と政権にしがみついている。「まさか社会党に政権を渡す訳にはいかない」という国民の良識が働くからだ。そして社会党が野党第一党にしがみつくことで、他の野党の進出を妨害してきた。かくして自民党の地位は安泰である。 昭和51年以降の国政選挙は、すべて「風」によって決まっている。新自由クラブ以降、次々と新党が浮かんでは消えた。「風」とは無党派層の動向を指す。自民党に不満はあるが、かといって他に選択肢はない。まさか社会党に政権を任せるわけにはいかない。かくして自民党はおごり高ぶり、腐敗の極みに達した。「核武装」ぐらい目指すべき こうした状況で登場したのが民主党である。民主党には、昔の社会党や今の民進党と比べて褒められる点がある。政権担当の意思を示した野党であったことだ。もともと民主党は、鳩山由紀夫と菅直人の二人から始まり、野党第二党、第一党の地位に登った。リーマンショックで自民党の腐敗と無能が頂点に達した麻生太郎政権の時、国民の怒りが頂点に達した。 当確のバラをかざる鳩山由紀夫代表(左)=2009年8月31日(早坂洋祐撮影) 「鳩山民主党でもいいから、麻生自民党は嫌だ」 その後の民主党三代の内閣の無能については、贅言(ぜいげん)を要すまい。今次安倍内閣は、「民主党よりマシ」という多数の国民の声が支えているという謙虚さを忘れてはなるまい。自民党の中にも心ある人はいて、「あの最悪の民主党の方がマシだと思わせた反省をしなければ、また同じ道を歩む」との危機感を持つ人はいる。だが、そのような良識派は少数派だ。むしろ、55年体制の再現の如く、「まさか民進党に政権を渡す訳にはいくまい。国民は自民党に投票するしかない」という驕り高ぶりが露骨だ。その民意が夏の都議選で示されたのだ。 それを、民進党がスキャンダルで自滅し、安倍内閣の支持率が回復したからと、慌てて解散に打って出る。いいかげん、「民進党よりマシ」という発想から抜け出すべきではないのか。 事前の報道では、安倍首相の解散理由は「増税の用途変更、北朝鮮対応、憲法改正」だと伝えられた。ところが9月25日の記者会見では改憲が外れた。さっそく腰砕けだ。公明党に遠慮でもしたか。自民党の憲法と安全保障を一手に担っていた高村正彦副総裁も引退する。まさか安倍内閣で中身がある憲法改正ができるなどと信じるのは、よほどおめでたい楽観論者だけだろう。内閣法制局と公明党が納得するような、「やらなければよかった改憲」なら、いざ知らず。 北朝鮮対応に関しては、果たして争点になるのか。さすがに、いかなる政党も正面だって「北朝鮮に対応するな」とは言わない。具体的にどのような対応をするかで、差はあっても。もちろん、民進党や共産党が表立っては北朝鮮対応の総論に賛成しつつも、あらゆる各論に反対しサボタージュに近い行動をとってきたことは重々承知だ。 しかし、日本国民とて愚かではない。マスコミが何を言おうが、これまですべての国政選挙で安倍自民党に多数を与えてきた。衆議院を解散するとは、その多数をかなぐり捨てることである。勝つかもしれないし、負けるかもしれない。やってみなければ、わからない。では、その代償に何を獲ようとしているのか。少なくとも、安倍首相は記者会見では何も言わなかった。 この時期に賭けに出るならば、「核武装」くらい勝ち取らねば割に合わない。北朝鮮は、「日本列島を核で沈める」などと豪語している。この状況で我が国がNPT条約を脱退し、核武装に踏み切るのを批判する国際法的根拠は何か。誰も答えられまい。安全保障の問題ならば、言うに及ばず。ニッポンの命運を握るのは衆議院選挙ではない 内政では、内閣支持率が回復し、民進党がスキャンダルで自滅している。国外では、トランプアメリカ大統領が本気で北朝鮮攻撃を考えているから、その前に総選挙を済ましておきたいとの思惑もあろう。では、その時に日本は何をするのか? 飯炊きか? 戦後日本は「軽武装」を国策としてきた。では、軽武装とは具体的に何のことかわかっているのか? 米軍の足手まといにならず、自前で日本列島防衛ができる数字のことである。その数字は32万人である。首相官邸以下首都機能、自衛隊基地、羽田成田など主要飛行場、主要港湾、主要幹線を米軍に頼ることなく守る実力が軽武装である。ここに原発は入っていない。より正確に言えば、本来ならば50万人必要なところだが、過渡的な数字として32万人である。ところが、自衛隊は25万人の定足数を満たしたことが一度もない。 安倍内閣は戦後最高の防衛費だと騒いでいる。しかし、GDP1%枠を頑なに守って、数千億単位を増やしているだけだ。だが、トランプは「文明国水準のGDP2%の防衛費をかけて努力してほしい」と求めてきている。5兆円増額だ。お話にならない。何より財務省から勝ち取った雀の涙ほどの防衛費増額が、金正恩に通じるのか。相手にもされまい。 だから、安倍首相が「北朝鮮有事に備える」と言っても、何をするのかよくわからないのだ。この程度なら「山口首相」でも可能ではないか。 私は本来ならば、来年の6月に衆議院を解散すべきだと考えていた。来年の9月に自民党総裁選があるが、その前の3月に正副日銀総裁人事がある。日本の運命は衆議院選挙などでは決まらない。日銀人事で決まるのだ。思えば安倍首相は返り咲くにあたって、「法王」とまで呼ばれ圧政を極めていた当時の日銀総裁、白川方明の討伐を掲げた。 「白川を討つ!」その宣言に15年にも及ぶデフレに苦しんでいた国民は狂気乱舞した。その宣言だけで株価が急騰した。 そして、日銀に意中の人物である黒田東彦総裁と岩田規久男副総裁を送り込み、すべての委員人事で勝ち続けた。消費増税8%で黒田バズーカの効果は打ち消されたが、バズーカ第二弾の「ハロウィン緩和」で何とか持たせている。金融政策決定会合後に記者会見する日銀の黒田東彦総裁=21日、東京都(飯田英男撮影) 日銀人事に勝つ、株価が上がる、支持率が上がる、選挙に勝てる、政界で誰も逆らえない。実に単純な構図だ。財務省が何を考えて日本を滅ぼしかねないデフレ期の増税などを企んでいるかはわからない。しかし、その財務省と安倍内閣が何とか張り合えて来たのは、すべて日銀人事で勝ってきたからなのだ。 解散権を手放してしまった以上、今さら言っても仕方がない。仮に安倍首相が総選挙後に続投し、3月の日銀人事で抵抗が起きれば、そこでもう一度衆議院を解散しても構わないのだから。今の創価学会の同意抜きで選挙ができない自民党に求めるのも酷だが。「公明・山口首相」ができないことをやる 大正時代、憲政の常道を主唱した吉野作造は「黒幕を引きずり出せ。政界の支配者は、総選挙により国民の審判を受けよ」と訴え続けた。吉野は衆議院第一党の総裁が総理大臣たるという形式も大事だが、実質も大事だと説いた。 与党第一党は、自由民主党だ。しかし今の自民党など、創価学会の孫請けにすぎない。安倍内閣で政権に返り咲いてから、一度も公明党に逆らった事があるのか。ならば山口首相でもいいではないか。 安倍首相の代わりの選び方は簡単だ。山口那津男氏に公明党代表在任のまま、自民党に入党してもらう。そして自民党総裁選挙に立候補してもらう。もちろん対抗馬やその候補に投票した議員には、創価学会の支持は得られない。おそらく満場一致で山口自民党総裁が誕生するのではないか。最強の政治家が与党第一党総裁として総理大臣になる。憲政の常道の実現だ。形式的には。 ただし、それが国益になるかどうかは保証しない。安倍首相は続投したいなら、「山口首相」ではできないことを正々堂々と訴えるべきだ。姑息にリアリストを気取る姿勢が孤高民の反感を買っていることに、いいかげん気づいたらどうか。あなたが民進党よりマシなのは、ほとんどの日本人が知っている。そして他に選択肢がないことに、嫌気も指しているのだ。 しかし、そもそも政治家が官僚に言いくるめられる、あるいはケンカして負けて泣いて帰ってくるようなら、選挙の意味がないではないか。希望がないわけではない。トランプ大統領が国連で、横田めぐみさんの名前に言及しながら、北朝鮮を強く批判した。小泉内閣以来、最も拉致被害者奪還の好機到来だ。今からでも遅くない。衆院解散について会見する安倍晋三首相=25日、首相官邸(斎藤良雄撮影) 「たった一人の国民の権利を総力あげて守るのが主権国家だ。日本国はすべての拉致被害者を取り返すために総力をあげる。我が国の国民を拉致し、日本列島を核兵器で沈めると豪語している国が隣にある。それでも我が国は核兵器を持ってはけないのか。国民の皆様に信を問いたい」 これは「山口首相」には言えない。信者諸君から、「安倍さんにも言えないよ~」という甘やかした声が飛んできそうだが、そういう過保護な言論が、この体たらくを招いたのだ。 何度でも言う。安倍内閣の評価は、安倍晋三首相が「山口那津男首相」がなしえないことをやった時に決まる。

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    10月10日ミサイル発射Xデーに衆院選公示日ぶつける意図

     安倍晋三首相と与党の幹部たちは、「抜き打ち解散」を決めた瞬間から、すでに総選挙に勝利したつもりになっている。記者会見で臨時国会冒頭の衆院解散を表明する安倍首相=9月25日、首相官邸 小池新党や野党の選挙準備が間に合わないだけではない。なにしろ北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、国民が不安を募らせるたびに支持率が見る見るアップし、森友・加計疑惑も、自民党議員たちの不祥事も霞んでいくのだから笑いが止まらないのだろう。官邸内では首相側近たちがこんな不謹慎な算段をしている。「Jアラートの威力はたいしたもの。弾道ミサイルが日本上空を飛べば支持率が5ポイント近く上がる。総理がトランプ大統領と電話会談すると1ポイント加算、これに核実験が重なるとプラス3ポイントのプレミアムがつく」 北の弾道ミサイルはこの1か月間に2回(8月29日、9月15日)も日本上空を越え、9月3日には核実験が行なわれた。 NHKの9月の世論調査(8~10日)では内閣支持率が5ポイント上昇(44%)、調査日が同じ読売新聞は8ポイント上がって50%に回復し、9月15日の2回目のミサイル発射後に実施された産経・FNNの調査では支持率が6.5ポイント上昇して50.3%に達した。読売はこう書いた。〈安全保障上の危機が強まると、内閣支持率が上がる例は過去にもある。最近では、昨年9月に北朝鮮が核実験を行った直後の調査で、前月比8ポイント上昇した〉(9月12日付) 降って湧いたような“右肩上がり”のチャンスを逃してはならないとばかりに、官邸は急ピッチで解散のタイムスケジュールを組んだわけだ。「10月10日公示」の姑息な狙い 次のミサイル発射の“Xデー”として有力視されているのは10月10日の朝鮮労働党創建記念日だが、安倍首相はその日にわざわざ総選挙の公示をぶつける日程を調整している。その上で、解散を決意して国連総会に乗り込むと、北朝鮮をこれでもかと挑発してみせた。 米紙ニューヨークタイムズに自ら寄稿して〈これ以上対話を呼びかけても無駄骨に終わるに違いない〉と“最後通牒”を突きつけたかと思うと、国連演説(9月20日)で「必要なのは対話ではない。圧力だ」と制裁強化を世界に訴えた。 北のミサイルが上空を飛び交う国の首相が対話を「無駄骨」と煽ったのである。まるでミサイルを“撃ってくれ”と挑発しているようにさえ聞こえる。 勝ちさえすれば安倍首相は、森友・加計疑惑も、大臣の失言や自民党「魔の2回生」たちの数々の不祥事も「禊ぎ(みそぎ)を終えた」と強弁できると踏んでいるのだ。 首相に解散を進言したとされる二階俊博・自民党幹事長も記者会見で、森友・加計疑惑について「そんな小さな問題」と本音をのぞかせた。多少の失言があっても、有権者が批判票を投じる先などないから問題ない──そう高をくくっていることが透けて見える言い方ではないか。関連記事■ 小池新党 目玉候補本命の「角栄の孫」に断られていた■ 自民党“魔の2回生”達 早期解散に「今の民進党なら勝てる」■ 小池新党 早期の総選挙で「新人候補の擁立間に合わない」■ 北朝鮮のミサイル発射兆候 信頼できるのは“Aアラート”?■ 公務員に65歳完全定年制導入で生涯賃金4000万円増

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    東浩紀氏ツイートで話題 選挙の「棄権運動」は静かな革命か

    東氏はツイッターにこう投稿した。思想家で小説家の東浩紀氏=9月5日、東京都品川区(桐原正道撮影)〈総選挙になったら棄権だな。今回は堂々と棄権を訴えよう。バカげすぎている〉 政治への怒りを「棄権」で表現するという考え方だ。これに対しネット上では「民主主義の自殺だ」「厭世的過ぎる」という非難もあがったが、東氏は“炎上”を歯牙にもかけない。〈この局面においては、棄権すること、つまり「おまえらの政治ゲームにはのらないよ」と意志を表示することこそ重要だ〉〈論点なし。必然性なし。いまだと勝てるからやる。それだけ。独裁国家の信任投票のようだ〉 東氏に改めて取材を申し込んだところ、「(ツイートしたこと以外に)あまり話す内容はありません」とするのみだったが、“暴論”に見える同氏の提案にうなずきたくなる有権者もいるのではないか。 海外ではすでに似たような先例がある。5月に行なわれたフランス大統領選ではエマニュエル・マクロン氏が、極右の「国民戦線」マリーヌ・ルペン氏を大差で破ったが、白票・無効票が11.5%もあり、棄権と合計してみると有権者の実に3分の1が「選択肢なし」に投じていたことになる。 これは移民を中心とする貧困層の間で白票を投じる運動が広がって起きた現象とされる。「反ルペン」を理由にエリートのマクロンに投じれば、むしろ現体制が維持され差別が残る。“騙されてなるものか”という強い不信感が根底にあったと指摘されているのだ。「棄権」は静かな革命になりうる〈棄権〉こそ〈危険〉のサイン 東氏の提案は、見方によってはさらに過激なものだ。白票でも、票を投じてしまえば選挙を正当に成立させるだけ。政権維持に利用されるぐらいなら、投票そのものを拒否して選挙の正当性の根拠となる「投票率」を引き下げてやろうという、強烈な意思表示に映る。関西大学東京センター長の竹内洋・名誉教授(社会学)は、東氏の「棄権」の意図を汲み取って解説する。「今回の安倍首相の乱暴な解散戦略に対して、本来“禁じ手”である棄権を意図的に呼びかけるという手法はありうるかもしれない。極論だが、仮に棄権が80%や90%に上れば政権にノーを突きつける“静かな革命”でしょう。政府・与党にとってみれば、〈棄権〉こそ〈危険〉のサインになる」「棄権」が80%であれば投票率は20%になる。これまで、投票率は低いほど組織票のある自公に有利とされてきた。それが逆に“低すぎる”状態を作り出せば、与党への(野党にも)かつてなく強烈な「NO」になるという指摘だ。 そもそも、自・公は衆院の議席の7割弱を占めているが、大勝した前回でさえ両党の得票(比例)は有権者全体の25%弱に過ぎない。“棄権運動”が効果を発揮すれば、その実態も炙り出されることになる。「棄権が充分集まらなければ、注目されることもなく、安倍首相のダメージにもつながらない」 そう竹内氏は棄権運動のリスクも指摘した。 東氏はツイッターで、〈他人に棄権しろというつもりはない。ただ、棄権がオプションだと訴えたい〉とも綴った。この“静かな革命”の成否は「有権者が東さんほどに腹を括って“怒り”を表現できるか次第」(竹内氏)だという。 棄権の数が、危険水域まで達することはあるのか。関連記事■ 10月10日ミサイル発射Xデーに衆院選公示日ぶつける意図■ 稲田朋美氏におじさん県議ら「守ってやらにゃ」と結束ムード■ 小池新党 目玉候補本命の「角栄の孫」に断られていた■ 自民党“魔の2回生”達 早期解散に「今の民進党なら勝てる」

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    反安倍派のみなさん、解散はまたとない「大義」を問うチャンスです

    秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授) 主要なマスコミ全てで、安倍晋三首相が臨時国会の会期中に解散・総選挙に打って出るという観測記事を流している。訪米していた安倍首相は、帰国した時点で解散か否かを決断するといわれている。 現在の衆議院議員の任期は来年の年末まである。つい最近までもっともらしいと思われていた解散スケジュールは、憲法改正案の国民投票とセットで来年末に衆議院を解散して信を問うというものだった。また嘉悦大学の高橋洋一教授のようにその段階で、同時に消費税凍結についても安倍首相は提示するのではないか、とする論者もいた。 もし、各種報道の観測記事の通りであるとすれば、最近の内閣支持率の上昇傾向と北朝鮮リスクへの長期的に対応するための政治的な基盤固め、というのが解散の主要な動機になるだろう。 安倍政権に反対を述べる勢力では、「解散の大義がない」と主張する人たちもいる。素朴な観察では、最近まで反安倍の人たちの多くは、森友学園問題・加計学園問題の責任から首相に退陣を迫っていたはずである。ならば、今回の解散風は「大義がない」どころか、反安倍派の人たちにはまたとない「大義」を問うタイミングではないだろうか。解散に反対かのような発言をするのは全く首尾一貫していない。 ちなみに私見では、連載でも何度も書いたように、森友・加計学園問題には、首相の責任を政治的・道義的に問うものは存在しないので、反安倍の人たちの学園問題を理由にした「大義」には賛同しかねる。 もちろん歴代首相はみな党利党略で議会解散を利用してきただろう。そして反対する陣営もまた同様である。東京都の小池百合子知事を事実上の党首とするだろう新党が本格的に機動する前や、または民進党がスキャンダルや同党議員の大量離脱で混乱する機会を狙って解散する、というのはありそうなことである。また同時に、反安倍派の人たちが、選挙のタイミングとしては得策ではないので、現時点の解散に「大義」などを持ち出して批判的なのも理解できる。理解できるだけでもちろん賛同はしていない。各党への挨拶回りで共産党を訪れた民進党の前原誠司代表(左から2人目)と握手を交わす志位和夫委員長(右から2人目)や小池晃書記局長(右)=9月8日、国会内(斎藤良雄撮影) 例えば、共産党の小池晃書記局長の発言はこの種のわかりやすい例を示している。小池氏は、8月3日のツイートでは、森友・加計学園問題隠しなどで内閣改造を行っているとした上で、「内閣改造ではなく、内閣総辞職、解散・総選挙が必要」と記者会見で発言したと書いている。ところが、9月17日には「臨時国会冒頭解散。いったい何を問うのか。もともと『大義』とは縁もゆかりもない政権だとは思っていたがここまでとは。森友隠し、加計隠しの党利党略極まれり」と書いている。このような矛盾した発言は、なにも小池氏の専売特許ではない。わりと頻繁に出合う事例である。北朝鮮リスクの中での解散は間違いか また「北朝鮮のミサイル発射や核開発の中で解散・総選挙を行うのは政治的空白を生むので間違いだ」という発言もある。だが、この発言の前提には、北朝鮮リスクが短期的に解決するものであるという予断があるのではないか。 いまの北朝鮮の核開発ペースでいくと、専門家の指摘では、1年か2年で米国本土に到達できる核弾頭ミサイルが完成するといわれている。つまり、北朝鮮リスクは時間の経過とともに増加していくと考えるのが現状では自然だろう。いまの衆院議員が任期満了まで務めれば来年末が総選挙である。その時期はちょうど北朝鮮の核開発の最終段階に到達している可能性が高い。言い換えれば危機のピークである。現段階で、北朝鮮リスクを解散・総選挙の否定理由としている論者はこの点をどう考えるのだろうか。 もちろん安倍首相側にも、解散・総選挙の理由で北朝鮮リスクを挙げるならば、それなりの具体的な対案を問うべきだろう。それがなくただ単に不安をあおるような姿勢でいれば、国民の多くが不信を募らせることは間違いない。安倍政権による対北朝鮮対応の核心は、日本・米国・韓国の安全保障の連携に尽きる。北朝鮮のミサイル発射に伴う「挑発」行動は、多くの識者が指摘するように、日韓を飛び越えて、核問題を含めて米国との直接交渉に持ち込むこと、さらにいえば日韓と米国の間に「不信」というくさびを打ち込むことが狙いだろう。9月15日、北朝鮮の弾道ミサイル発射を受け、首相官邸で報道陣の取材に応じる安倍首相(松本健吾撮影) 日本と韓国は、米国を中心にした「核の傘」によってその地域的な核抑止力やまた安全保障を担保している。この3カ国による実質的な東アジア防衛システムは、米国抜きでは維持はできない。仮に米国が北朝鮮と直接に交渉し、その核保有などを認めるとするならば、3カ国による地域防衛システムは破綻しかねない。米国への「不信」は、日本と韓国、そして北朝鮮をはじめとした地域内での軍備拡張ゲームに移行してしまうリスクがある。日本はただでさえ、冷戦終了後の経済停滞や財政再建主義の反動で、米軍への防衛力「ただ乗り」が事実上加速している。これは意外に思われる人たちも多いだろう。 正確にいえば、冷戦時代から日本と韓国は米国に防衛力の面では「ただ乗り」をしてきたといえる。その簡単な証左が、両国に偏在する米軍基地や「核の傘」の存在である。もちろん米軍基地の縮小・撤廃そして防衛費の肩代わりなどを両国は行ってきている。大義がない、党利党略だ、と言ってもこれが選挙 例えば、だいたいの先進国が名目国内総生産(GDP)の2%程度を軍事費にあてる中で、日本は名目GDP比で1%を防衛費の「上限」としてきた。つまり拡大速度は先進国の標準の半分である。さらに加えて、90年代初めから2012年ぐらいまでの名目GDP成長率は平均するとゼロであった。もし先進国の成長率の平均を2%程度とし、日本もそれと同様だったとすると、日本の防衛費の現状は達成可能であった水準のだいたい半分である。ただでさえ拡張スピードが抑制されているのに、20年以上速度を示すことすらしなかった。それでも日本の防衛がそこそこ機能できた背景には、米国の軍事力への「ただ乗り」とその加速化が背景にあったとみていい。 もちろん米国にも、この「ただ乗り」を放任する経済的なメリットがあった。冷戦が終了しても東アジアの地政学的リスクを顕在化させるのは得策ではないからだ。したがって、問題は「核の傘」への依存などある程度の「ただ乗り」を認めたうえで、日米韓3カ国の防衛システムを維持し、その中で経済的・軍事的負担のバランスを図るというのが、いままでの米国の戦略だったろう。 この日米韓の防衛システムにくさびを打ち込むことが、北朝鮮の狙いであるのはほぼ自明である。そのため、安倍首相は訪米でトランプ大統領、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領と3カ国首脳会談など積極的に行い、米国・韓国との連携強化に注力した。国連総会の一般討論演説を行う安倍首相=9月20日、ニューヨーク(代表撮影・共同) 話を戻すと、北朝鮮リスクはかなり長期化する。しかも時間が経過すればするだけその潜在的リスクは増大していく。つまり政治的解決のハードルも上がっていく。「対話路線」、日米韓連携、国連の制裁など多様なルートによる北朝鮮リスクの抑制がすぐに効果をあげるめどはたっていない。その中で、いまの段階で解散・総選挙を行うのは、北朝鮮リスクだけを考えてもそれほど悪い選択とは思えない。 ちなみに私見では、解散・総選挙をめぐる安倍首相を含めた各党派の思惑について、評論家の古谷経衡氏の発言ほど簡にして要を得たものはないので、最後に紹介したい。もっとも票読みについてはどう出るかは、私にはわからない。与党の大敗で終わっても不思議ではない。それが選挙だろう。 大義がない、党利党略だ、と言ってもこれが選挙。今解散すれば、自民党単独で270くらいは行くだろう。公明党と合わせれば300超で大勝利。これが選挙なのだ。こうやって冷徹に勝ってきたから安倍1強は実現している。情でも理でもない、票読みなのだ。選挙で勝つのが権力の源泉のすべてなのだ。古谷経衡氏の公式ツイッターより

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    衆院解散の歴史をみれば「大義」という言葉の虚しさがよく分かる

    解散を含めると24回。反面、任期満了に伴う衆院選が行われたのは1976年12月5日に行われた第34回選挙の1回だけだ。 いわば、衆議院はどこかで解散するのが当たり前ではある。しかし、「人として踏み行うべき解散」などあったのだろうか。  全部挙げればきりはないが、吉田茂内閣では、吉田首相が右派社会党の西村栄一議員への質疑応答中に「バカヤロー」と発言したことがきっかけとなって懲罰動議が出され、吉田首相の足を引っ張りたい自由党非主流派の鳩山一郎や、広川弘禅農相らの暗躍があって、内閣不信任案が賛成229票、反対218票の11票差で可決、1953年3月14日に衆院が解散された。この解散を受けて4月19日に投開票された第26回選挙では、与党自由党が過半数を大きく割り込み、鳩山自由党や改進党も不調で、左派勢力が大きく議席を伸ばす結果となった。1950年11月、衆議院本会議で施政方針演説をする吉田茂首相。左はもめる野党議員たち 内閣不信任案の可決で衆院選が行われるのは、きっかけが「バカヤロー」だとしても、政権の可否を問うという意味で有権者も納得はできよう。戦後、内閣不信任案の可決による衆院選は1949年と1953年の吉田茂内閣、1980年の大平正芳内閣、1993年の宮沢喜一内閣と計4回ある。 内閣不信任案の可決による解散ではなく、首相の「今解散すれば勝てる」「少なくとも負けが少なくて済む」という思惑による解散の方がむしろ多数派なのである。「天の声」「死んだふり」のミエミエ 例えば、吉田内閣の後を受けて組閣した鳩山一郎は1955年1月24日に衆院を解散した。1955年2月27日に投開票されたこの第27回選挙では「民主党ブーム」が起き、民主党は185議席で112議席の自由党をはるかに上回り、左派勢力は振るわなかった。このとき、鳩山首相は解散の理由を「天の声を聞いたからです」と発言し、「天の声解散」と呼ばれたが、そんな木で鼻をくくったような理由でも、公職追放になった鳩山への同情などで民主党は第一党に躍進した。 また、1983年の衆院選で過半数を割り込み、新自由クラブとの連立で辛うじて衆議院での過半数を維持していた中曽根康弘首相もその一人だ。1986年6月2日に衆院を解散したが、中曽根首相は衆参ダブル選挙を当初から狙っており、そのための解散であることを知られないために、死んだふりをしていたとして「死んだふり解散」と言われた。1986年7月、衆参同日選挙で自民党が圧勝、選挙ボードにバラを付ける中曽根康弘首相=東京・永田町の自民党本部 結果、自民党は300議席の圧勝。2009年に民主党が308議席を獲得するまで、戦後の衆院選で単独政党の獲得議席としては過去最多だった。 「天の声」「死んだふり」といった戦後を代表する政治家たちの解散理由も、選挙に勝つためがミエミエであまり褒められたものではない。では、不信任案の可決、首相のタイミングを見計らった解散以外に「大義による解散」はあったのだろうか。 中には、政権与党と野党が政策をめぐり真っ向から対立し、国民に信を問う解散もなくはない。小泉純一郎首相は郵政民営化が持論だったが、2005年に郵政民営化法案を衆議院で通過させて参議院に送付された際、「郵政民営化法案が参議院で否決されれば、自分は衆議院を解散して国民の信を問う」と明言していた。その言葉通り、参議院で郵政民営化法案が否決されると、「この選挙を郵政民営化の是非を問う国民投票にする」と明言、8月8日に衆議院を解散し、9月11日に投開票された結果、自民党は296議席を得る圧勝となった。 もちろん、民営化反対の候補に刺客を送り込み、メディアに巧みにニュース価値を提供する劇場型政治の狡猾(こうかつ)さはあったにせよ、ガリレオ・ガリレイまで持ち出しての「大義を掲げての解散」に、国民がこれまでにない高揚感を覚えたのは確かだ。 翻って、今回の解散はどのタイプに属するのか。言うまでもなく、鳩山氏、中曽根氏と同じく、安倍首相が「このタイミングなら勝てる」と踏んだ憲法7条第3項による解散だ。 「法律、特に憲法の規定に基づく解散だ、今までもそうやって解散してきているじゃないか、文句あるか!」。政権与党は当然そう言うだろう。一方の野党は、少しでも政権与党をおとしめようと必死だ。鍵を握るのはやはりあの層 側近の若狭勝衆院議員が新党結成に動いている東京都の小池百合子知事は9月18日、「解散・総選挙は何を目的になさるのか、大義ということについては分かりません。そういう中で都民、国民に何を問いかけていくのか、私には分かりにくいと、多くの皆さんがそう思うのではないでしょうか」と批判。一方で、若狭氏の新党に対し「しがらみのない政治」と「大きく改革をする」というメッセージが伝わるようになればと既成政党を当てこすった。 解散に呼応し、細野豪志元環境相らを糾合して新党を立ち上げても、主なメンバーが民進党からの離脱組では「第二民進党」とも揶揄(やゆ)されかねない。準備不足に慌てたのか、若狭氏は小池知事に新党の代表就任を要請するというドタバタだ。 既成野党はというと、散々「解散・総選挙で信を問え」と言っておきながら、安倍首相のタイミングでの解散・総選挙ということになると気に入らないらしい。 7月2日の都議選で自民党が惨敗したときには、民進党の蓮舫代表(当時)は会見で「解散・総選挙はいつでも受けて立つ。衆院解散に追い込みたい」と語っているし、社民党の又市征治幹事長も「内閣改造でごまかそうとしているが、解散・総選挙を打たざるを得ないところに追い込むことが大事だ」と強調している。 共産党も8月下旬の時点で、安倍政権に対する怒りの声が全国に広がり、あと一歩で安倍政権を打倒できるんだというところまで追い込んでいる、臨時国会で安倍政権を追い詰め、解散・総選挙に追い込んでいこう、と力をこめている。2014年11月21日、衆院解散で記者会見する安倍晋三首相の映像が街頭に流れた=大阪市北区 一転、安倍首相が解散の意向とメディアに報じられると、民進党の前原誠司代表は、受けて立つが、北朝鮮の緊迫した状況での政治空白、森友・加計問題での国会での説明不足などを挙げて「自己保身解散」だとコキおろした。幹事長に登用しようとした人材のスキャンダルを報じられ、解散のひとつの引き金になった反省はどうやらないようだ。 大義もへったくれもない。自分たちに都合がいい時期を選んで解散できる首相、自分たちに都合が悪い時期に解散されることで口を極めてののしる野党。こうなると鍵を握るのはやはり無党派層か。有権者はハナから大義などに期待していないが、安倍首相の「勝てそうだから」という理由での解散に、まさかバラバラ感満載の野党による政権を期待してはいないだろうし、世論調査でも期待は低い。第一の可能性は、このタイミングでの解散に、安倍首相にひと泡吹かせようと野党に1票を投じるというもの。第二は、老獪(ろうかい)な手法に敬意を表し、北朝鮮への対応を期待して与党に1票を投じる可能性。そして第三は、安倍もノーだが受け皿もない、という消去法で棄権してしまう可能性だ。 2014年の衆院選では、投票率は50%台前半と低迷した。現時点では小池知事の動きは不明だが、第三の可能性をはらみながら選挙戦に突入していくとしたら、後世の歴史家から「大義なき解散」にふさわしい衆院選だった、という有り難くない評価をこれまで同様積み重ねていくことになるのかもしれない。 「大義」という言葉が政治に警鐘を鳴らし続ける言葉として、今回の衆院選で死滅することは少なくともなさそうだ。

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    「不祥事議員どうするか解散」ネーミングはこれにしよう

    ついこの前まで「忖度(そんたく)」と言っていると思ったら、今度は「大義、大義」とやかましい。解散・総選挙がほぼ本決まりとなった途端、野党サイドは不満たらたらで、「大義なき選挙」と言い始めた。 共産党の小池晃書記局長は9月16日のツイッターで、「臨時国会冒頭解散 いったい何を問うのか。もともと『大義』とは縁もゆかりもない政権だとは思っていたがここまでとは」と発信した。18日には、小池百合子都知事が「何を目的になさるのか大義がわからない」と発言した。 テレビでも、多くのコメンテーターが同じようなことを言っている。そこで問いたい。総選挙には大義が必要なのか? 大義がないと総選挙をやってはいけないのか? 「大義」の次に野党サイドが言い出したのが、「政治空白」や「疑惑隠し」、「自己保身」だ。これは、民進党の前原誠司代表が言い出した。17日の民進党本部での会見で、前原代表はこう述べた。常任幹事会で挨拶する民進党の前原誠司代表=19日、東京(斎藤良雄撮影) 「北朝鮮が核実験やミサイル発射を行う状況の中で、『本気で政治空白をつくるつもりなのか』と極めて驚きを禁じえない。森友問題や加計問題について国会での追及から逃げるため、国民の生命・財産そっちのけで、まさに『自己保身解散』に走っているとしか言えない」 解散・総選挙になると、毎回、なんらかのネーミングを施さないといけないのは、「バカヤロー解散」以来の日本の「美しき伝統」だ。しかし、ここまでの野党側のネーミングは、情けないほど味も素っ気もない。「大義なき解散」「政治空白解散」「疑惑隠し解散」「自己保身解散」では、直球ばかりではないか。 これでは、米国のトランプ大統領の方がよほどうまい。彼から見たら「頭のおかしなクソガキ」にしか思えない、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長を「ロケットマン」と名付けてしまった。本来ならロケットではなく「ミサイルマン」だろうが、ロケットマンと漫画のキャラ扱いしたことで、「トータリーデストロイ」(完全なる破壊)の本気度が伝わってくる。 だいたい、今回の解散を野党サイドが批判する資格などない。なにしろここ数カ月、彼らは森友・加計の両学園問題を追及し、「安倍首相は信用できない」と、解散・総選挙を強く求めてきたからだ。 例えば、7月に自民党が東京都議選で惨敗したとき、民進党の蓮舫前代表は「(この結果を受けて)解散に追い込む」と気勢を上げた。これに同調したのが社民党の又市征治幹事長で、「内閣改造でごまかそうとしているが、解散・総選挙を打たざるをえないところに追い込むことが大事だ」と言ったのである。 それがいざ解散となったら、今度は「大義がない」「疑惑隠し」だと解散そのものを批判するのだから、あきれてものも言えない。本来なら「よくぞ解散してくれました。これで国民に信を問えます。もう疑惑からは逃れられませんよ」くらいのことを言わなければならない。大義がないのは、野党サイドではないだろうか。大義(選挙公約)の争点 これでは、自民党に「いまなら勝てる」と足元を見透かされるのは当然だ。民進党は山尾志桜里衆院議員の不倫スキャンダルと離党者続出でガタガタ、ほかの野党は完全に弱小化、小池新党はまだ準備不足で若狭勝衆院議員は政治塾「輝照(きしょう)塾」を立ち上げたばかり、細野豪志元環境相も河村たかし名古屋市長も、あの橋下徹前大阪市長もどうしていいか思案中といった具合だ。 とりあえずだが、麻生太郎副総理兼財務相の名参謀としての策略がずばり決まっている。これで本当に自民党が勝てば、「生まれはいいが育ちは悪い」と常々語っている麻生氏に、ぜひビシッと決めたマフィアスタイルで勝利宣言をしてほしいと願う。しかし、万が一、自民党が負けたらどうなるのだろうか。トランプが勝ってしまうこともあるのだから、一寸先はわからない。参院予算委員会の集中審議に臨む、安倍晋三首相(左)と麻生太郎副総理兼財務相=3月27日、国会(斎藤良雄撮影) それにしても、まさかまさかの解散・総選挙だ。今年の3月5日の自民党大会で、「総裁3選」を可能とする党則改正が決まったときは、衆院は任期満了までいくのは間違いないと思われていた。そうして、来年9月の自民党総裁選挙に安倍晋三首相が勝てば、さらに3年間任期が伸びるので、2020年8月の「灼熱(しゃくねつ)」の東京五輪のときも、確実にシンゾー政権は続いていると思われていた。 それが、「森友アッキード払い下げ問題」でつまずき、「加計アクユウ獣医学部新設問題」で支持率が落ち、「稲田朋美元防衛相ネコかわいがり続行」で窮地に陥ってしまった。 これを救ったのが、「ゴトシ」をそろえたという内閣改造ではなくロケットマンだ。北からミサイルが発射されるごとに支持率は盛り返し、とうとうビッグチャンスがやってきた。日本の安全保障上最大の危機は、首相と与党にとって野党のうるさいハエをたたく最大のチャンスなのである。 それでも大義がないというので、自民党は現在自ら大義(選挙公約)をつくり出そうとしている。「政権べったり」新聞(読売新聞)などの報道だと、安倍首相は「消費税10%の使途を借金返済から子育て支援、教育無償化に変更」というアメ玉を用意したうえで、「憲法改正」も訴えるという。「リベラル大好き」新聞(朝日新聞や毎日新聞)によると、「教育や社会制度を抜本的に見直す人づくり革命を打ち出し、アベノミクスの是非を問う」という。  私としては、やはりアベノミクスの成否を問わなければおかしいと思う。これこそが、「バイ・マイ・アベノミクス」とマイケル・ダグラスのセリフをパクって、内外に問うてきたこの政権の政策そのものだからだ。 なにしろ内閣府は、いまだにHPに、もうみんなすっかり忘れてしまった「新3本の矢」を掲げ、その成果を何項目かにわたって、「成果、続々開花中!」という吹き出し付きで自画自賛している。しかし、最大の目標であるデフレ脱却によるインフレ率2%達成、それ以上の経済成長率は、達成できただろうか。このHPをぜひ一度見てほしい。国民がやらなければならない「審判」 さて、大義はないとはいえ、この選挙で私たち国民がやらなければならないことがある。ここまでに続出した「不祥事議員」をどうするかだ。選挙はやはり審判である。「このハゲー!違うだろ」を、埼玉4区の有権者は許すのか、許さないのか。以下、リスト化してみたので、当該選挙区の方はじっくり考えてみてほしい。■甘利明(神奈川13区、68)現金(賄賂)授受が発覚、経済再生担当相を辞任。→不起訴処分(嫌疑不十分)■稲田朋美(福井1区、58)嘘答弁を繰り返すも、驚異の粘り腰で防衛相に居座る。→防衛相辞任■武藤貴也(滋賀4区、38)知人に未公開株を「国会議員枠」で購入できると持ちかけ金銭トラブルに。→離党■中川俊直(広島4区、47)不倫女性とハワイで「結婚式」まで挙げた「重婚疑惑」、ストーカー疑惑が発覚。→経済産業政務次官を辞任、離党。■上西小百合(大阪7区、34)本会議をサボり、ショーパブはしご。その後、放言多し。→日本維新の会を除名■務台俊介(長野2区、61)被災地視察で長靴を持参せず、水たまりを政府職員におんぶ、「長靴業界はもうかった」と発言。→内閣府大臣政務官兼復興政務次官を辞任■大西英男(東京16区、71)「がん患者は働かなくていいんだよ!」発言に加え、過去の女性蔑視発言、報道圧力発言も問題化。→開き直り■豊田真由子(埼玉4区、42)秘書への暴行・暴言「バカかお前」「このハゲー!違うだろ」が発覚して逃亡入院。→離党■今村雅弘(佐賀2区、70歳)記者に激高「2度と来るな」発言、「東北でよかった」発言。→復興相を事実上「更迭」 私は成人してから今日まで日本の政治を見続けてきたが、振り返って思うのは、この国の政治に大義があったことがあるだろうか、ということだ。あったのは、大義ではなく「都合」だけだったのではないだろうか。この国では、なにより都合が優先されるのだ。 本当のことを言えば、大義はあってほしいと思う。あるべきだと思う。そして、政治家には、日本にたった8カ月しかいなかったのに莫大(ばくだい)な報酬を手にして帰ったクラーク先生が言ったように、「大志」を抱いてほしい。 アメリカのように「自由」と「平等」、そして「人権」と「民主主義」は絶対守る。それだけは譲れないという大義が、日本にもあってしかるべきだと思う。 しかし、国際社会でアメリカの属国となることで安定と安全を維持してきたこの国では、これまで大義は必要なかった。そのため、大志などなくても議員をやっていられた。しかし、もうそろそろこれをやめないと、日本は落ちていくだけになるのではなかろうか。

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    党利党略、禁じ手でも「大義なき解散」は安倍首相に理がある

    り、全く大義がない解散だという受け止め方が多い。 事実、私自身もそのように考える。というよりも、仮に選挙で与党が勝利を収めれば、安倍総理の禊(みそぎ)は済んだということで、森友・加計疑惑を完全に過去のものにすることを狙ってのことだと考える。これはなんと姑息(こそく)な手段ではないか。だから、安倍政権を支持しない国民サイドからは、そのような批判が起こるのは当然と言えば当然だ。報道陣に向かって一万円の札束を見せる籠池泰典氏=7月1日、JR秋葉原駅前(古厩正樹撮影) ただし、そのような批判が野党からなされることには疑問を禁じ得ない。いや、それが安倍政権のイメージダウンを狙った作戦であるのならば良い悪いは別にして理解できなくもないが、本気で「大義なき解散」などと批判するのは理解に苦しむ。 確かに大義はない。しかし、大義はないものの、野党の議員は総理の辞職や国会の解散を自分たちが求めていたではないのか。 憲法69条は次のように書かれている。「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」 今年6月15日、民進、共産、自由、社会の野党4党は、衆議院本会議において共同で安倍内閣の不信任決議案を提出した。採決の結果、反対多数で否決されたので憲法69条の規定に基づき解散するということはないのだが、仮にその不信任決議案が可決されたときには、どのようなことになったのか。 まさに憲法69条の規定に従って衆議院が解散されるか、内閣が総辞職するかの二つに一つ。普通は、内閣が総辞職を選択することはないので、そうなれば衆議院が解散されるわけである。つまり、野党は国会の解散をある意味求めていたとも言えるのだ。それなのに、いざ本当に衆議院が解散されるとなると、大義がないなどと批判する。 国民が、大義がないと批判するのは当然であっても、いや国民であっても安倍内閣の総辞職や衆議院の解散を望んでいたのであれば、何を今さら大義なんてことを言い出すのか、と言いたい。選挙に勝てばそれが禊 そもそも安倍内閣に不信任を突きつければ、後は選挙しかないからだ。安倍総理が、国民の判断に委ねることを拒否し続けるのであれば批判に値するが、安倍総理は国民の判断に委ねたいと言っているのだから、拒否する理由は全くない。 つまり、選挙の争点は、有権者が自分で考えればいい、いや自分で考えなければいけないということなのだ。それでもなお「大義名分がない」と言いたがる人がいる。結局、そのような批判をする人々は選挙の結果、与党が勝利を収めて安倍政権が続くことが嫌だというだけのことなのだ。 私も安倍総理には早々に総理の座から退いて欲しいと願う一人ではあるが、だからこそ衆議院が解散となり選挙が行われることに期待したい。もちろん、選挙の結果がどうなるかは分からない。安倍総理の思惑通りの結果になるかもしれないし、逆に、森友・加計疑惑に関する国民の不信感は収まっていないという事実を反映して反対の結果になるかもしれない。 ところで、衆議院の解散権について、憲法はどのように規定しているのか。運用上は、憲法7条の規定に基づく衆議院の解散が過去何度も行われ、すっかり定着した感があるが、憲法を少しでもまともに学んだことのある者ならば、憲法7条を根拠にして衆議院を解散することができるという解釈には疑問を感じるのがほとんどだと思う。 憲法7条の規定は、あくまでも「天皇の国事行為」を列挙したに過ぎず、実質的な規定は憲法69条にあると考えるべきだ、と。 だが、原告が憲法7条を根拠にした衆議院の解散は憲法違反であると主張した苫米地事件において最高裁が、統治行為論を理由に違法性の判断を回避してしまったために、事実上、憲法7条による衆議院の解散が黙認される結果になってしまったのだ。 そうした経緯を考えれば、衆議院の解散は総理の専権事項だなどと声高に主張するのはこっけいな感じがしないでもないが、実務的にはそうした考えが定着していることを受け入れないわけにはいかない。従って、安倍総理が従来の考え方によって与党が有利なときに解散を断行しようとしても、それ自体を悪く言うわけにはいかない。 ただし、安倍総理は、森友・加計疑惑に関してもっと丁寧に国民に説明をすべきだと言ってきた経緯があることを忘れてはならない。臨時国会を召集したものの、冒頭で衆議院の解散に踏み切れば、森友・加計疑惑に関する丁寧な説明はなしで終わってしまう恐れがある。衆院の委員会で民進党議員の質問に答弁する安倍晋三首相=4月12日、衆院第16委員室(斎藤良雄撮影) それに、解散の理由を、例えば消費増税の使い途の変更などを国民に問う必要があるということにして、仮に思惑通り与党が選挙に勝つことになればそれで禊は済んだことになるのだ。それこそが安倍総理の狙いと言わざるを得ない。 今年2月以降、国会での論争の中心は森友疑惑であり、加計疑惑であった。そして、それらの疑惑に関して圧倒的多数の国民は、政府の説明には納得ができないとしてきた。そうしたことから考えるならば、総理が25日にどのような説明をしようとも、争点は、森友・加計疑惑にあると言うべきなのだ。 禊を済まそうという思惑であるにしても、国民に信を問う安倍総理のやり方自体は間違っているとは言えず、まさに有権者の資質が問われているものと考える。

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    「解散の大義」ってなんだ?

    安倍首相が衆院解散を明言した。北朝鮮情勢が予断を許さない中、わが国では3年ぶりの総選挙に突入する。メディアは「解散の大義」という言葉をしきりに使いたがるが、そもそも過去の解散に一度でも大義なんてあったのか? どうも「印象操作」の匂いがプンプン漂うこの言葉の意味を改めて考えてみよう。

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    麻生太郎氏 安倍首相に“火事場泥棒解散”を強く進言

    氏側近が語る。「麻生さんは外遊から帰国したばかりの総理に10月のトリプル補選の情勢を報告し、解散・総選挙の時期について突っ込んだ話をした」財政制度等審議会の分科会であいさつする麻生太郎財務相=19日、財務省 10月22日投開票の衆院トリプル補選(青森4区、新潟5区、愛媛3区)は安倍政権の行く末を左右する選挙と位置づけられる。いずれも自民党現職の病死による“弔い合戦”とあって首相は「全勝」を掲げたが、3選挙区のうち最も情勢が厳しいのが愛媛3区だ。 苦戦の原因を作ったのは麻生氏だった。麻生氏は同選挙区の候補として亡くなった麻生派所属の白石徹・前代議士の次男で秘書の寛樹氏を擁立した。ところが、寛樹氏に女性スキャンダルが報じられ、「民進党候補に大きくリードされていた」(自民党選対スタッフ)という。党内からはスキャンダル候補を強引に立てた麻生氏に批判が高まり、安倍首相も周囲に「愛媛はどうなっている」と情勢を確認するなど心配していた。 そこに“神風”が吹いた。民進党の山尾志桜里・衆院議員の不倫疑惑と離党だ。これで麻生氏の目の色が変わったという。「麻生さんは不倫報道を受けてすぐに愛媛の選挙情勢調査を行なわせた。すると逆転可能圏まで一気に追い上げていた。気を良くした麻生さんは翌日まで待てずに調査結果を持って総理の私邸に押しかけた。 愛媛で勝てばトリプル選挙の全勝が見えるが、それだけではない。民進党は離党者が続出してこれからもっとボロボロの状態になっていく。麻生さんは絶好のチャンスと判断して『今なら勝てる』と総理に早期の解散・総選挙を強く進言したのです」(前出・麻生氏側近) 国民の関心が野党のスキャンダルに向いているうちに、自民党の不祥事をいっぺんに帳消しにしてしまうという火事場泥棒解散だ。関連記事■ 山尾氏と不倫疑惑の弁護士 蓮舫氏国籍問題担当だった■ 菅官房長官に上から目線の総理秘書官 麻生氏の逆鱗に触れた■ 次期総裁選「麻生・岸田連合vs菅・石破連合」に二階氏動く■ 安倍政権で“役人天国”再び 老後の官民格差どんどん拡大■ 橋本マナミが濡れる 「こんなにビチョビチョじゃないか」

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    この解散時期はアベノミクスにとってマイナスかもしれない

    を安売りしていると指摘されても仕方ない面があるだろう。しかも野党の民進党は瓦解寸前という状況であり、選挙結果についても大方の予想はついてしまう。当然のことながら国民の関心はあまり高まっていないようだ。 ただ、今回の解散で教育の無償化が掲げられ、その財源として消費税の増税分を充てるという話は注目に値する。ほんのわずかな変化かもしれないが、場合によっては日銀の金融政策などに大きな影響を与える可能性があると筆者は考えている。 社会保障と税の一体改革に関する議論では、消費税の税収については、一部(従来の地方消費税分)を除いて社会保障費に充当することが定められた。政治的な意味はともかくとして、市場ではこの合意が、日本の財政問題に対する担保のひとつとして機能してきた。消費増税分の資金使途が、義務的経費である社会保障費に限定されていれば、少なくとも裁量的経費がむやみに増大し、財政収支を極端に悪化させる可能性は少なくなる。 日本政府は2020年までに基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化するという公約を掲げているが、その実現はほぼ不可能な状況となっている。それでも金利がまったく上昇しないのは、日銀の量的緩和策によって国債が買われ続けていることに加え、野放図な財政拡大に対しては一定の歯止めがかかっていると認識されているからだ。 だが、首相は、今回の総選挙において増税分の使途について見直す方針と言われており、その具体策のひとつが教育の無償化だという。高等教育の無償化そのものについては、知識経済へのシフトが進む現状を考えれば、スジのよい政策といえるかもしれない。だが、このタイミングで消費税収の使途に関する縛りが解放されるということになると、市場に対して思わぬメッセージを送ってしまう可能性がある。非常事態を回避するために 財政問題に関する議論を聞くと、政府が破綻するしないといった、極端で感情的なものばかりが目立つが、市場関係者の中で、本当に日本が財政破綻すると考えている人などほぼ皆無である。だが、いずれ日本の長期金利が上昇すると考える人はかなりの割合に上るはずだ。長期金利 量的緩和策の影響もあり、日本の長期金利は異例の低水準となっているが、金利が極端に低いことは、実は日本の財政を維持する最後の砦となっている。 現在、日本政府は1000兆円近くの負債を抱えているが、これまで低金利が続いてきたことから、政府は利払いを気にすることなく予算を組むことができた(一般会計における国債の利払い費用は年間10兆円程度に収まっている)。だが、金利が上昇して仮に5%まで達したとすると、理論的な年間利払い費用は40兆円を突破してしまう。数字の上では、税収のほとんどが利払いに消えてしまい、事実上、政府は予算を組めなくなってしまうのだ。 市場関係者が本当に恐れていることは、日本政府の破綻でも、国債のデフォルトでもなく、金利の上昇によって政府が超緊縮予算を余儀なくされることである。今の状況で日本政府が緊縮予算に転じれば、景気が冷え込み、株が暴落するのはもちろんのこと、年金や医療など社会保障費が軒並み削減され、国民の生活は一気に苦しくなるだろう。 こうした非常事態を回避するためには、金利を何としても低い水準に維持し、その間に財政再建の道筋を付けなければならない。 もっとも、政府が保有する国債には様々な償還期間のものが混在しており、仮に金利が上昇しても、すべての国債が高金利のものに入れ替われるまでには時間的猶予がある。また、この水準まで金利が上昇する前に、何らかの対策を打ち出すことも不可能ではないだろう。だが、金利の上昇は、もっと短い時間軸においても大きな影響を及ぼす可能性がある。それは日銀の出口戦略に関してである。 あくまで仮定の話だが、総選挙の結果、消費増税の使途に関する縛りがなくなり、財政支出が拡大したとしよう。市場がこれに反応し、長期金利がわずかでも上昇を始めてしまうと、日銀にとってはやっかいなことになる。追加緩和を実施することもできず、一方で金利上昇を放置すれば、強制的に出口戦略に舵を切ることになり、日銀が抱える損失が顕在化してしまう。 金利の上昇はおそらく円安を招くことになるので、国内の物価もジワジワと上昇してくるだろう。これは景気拡大に伴うインフレではないので、実質的な可処分所得は減っていく可能性が高い。 政治的にはあまりインパクトのない今回の解散だが、実は後から振り返ると、日本の財政における重要な転換点になっていたという可能性も十分にあり得るのだ。

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    自民党“魔の2回生”達 早期解散に「今の民進党なら勝てる」

    く変わった。それを受けて9月10日、麻生太郎・副総理兼財務相は安倍晋三・首相と会談し、早期の解散・総選挙を強く進言したという。 同じ算段をしていた与党幹部は他にもいた。安倍―麻生会談の翌日、安倍首相は二階俊博・自民党幹事長、山口那津男・公明党代表と相次いで会談した。その2人も総選挙主戦論だ。 茨城県知事選の勝利で勢いに乗る二階氏も山尾不倫報道の直後、政界関係者との会合で10月22日に投開票されるトリプル補選(青森4区、新潟5区、愛媛3区)についてこう怪気炎を上げたという。「トリプル補選は全勝する。そしたら解散だ。総選挙はオレと筆頭副幹事長の(小泉)進次郎でやる」記者会見する自民党の二階俊博幹事長=19日午前、東京(斎藤良雄撮影) 一時は各紙とも30%台まで落ち込んだ内閣支持率が北朝鮮危機で50%(読売新聞9月8~10日調査)に回復したことが解散論に拍車をかけている。 公明党はとっくに走り出している。山口代表は同党沖縄県本部の夏季議員研修会(8月23日)で、「(安倍首相が)衆院解散を決断する時には、われわれは、いつでも受けて立つという常在戦場の構えでいないといけない。今から、しっかりと走り抜いていきたい」と号令を掛け、いち早く準備を始めている。 選挙となれば与党の選挙マシンとなる業界へ“撒き餌”が必要になる。二階氏と公明党は臨時国会での補正予算編成で一致し、二階派はなんと「10兆円の景気対策」を主張している。安倍政権は「景気拡大はいざなぎ景気に並んだ」(茂木敏充・経済再生担当相)と胸を張りながら、それでも大型経済対策を打とうというのだから、実にわかりやすいニンジンだ。 ほんの1か月ほど前まで、安倍首相も与党幹部たちも、森友・加計疑惑や閣僚失言に対する国民の怒りに怯え、支持率急落で顔面蒼白になっていたのがウソのような変わり様だ。 同期のスキャンダル連発で「次は落選してしまう。解散されたら無職だ」と悲鳴をあげていた自民党“魔の2回生”たちも、すっかり元気を取り戻した。「選挙はずっと先の方がいいと思っていたが、今の民進党なら恐くない。十分勝ち残れる。麻生さんや二階さんの戦略眼はさすがだ」(無派閥の2回生議員) と、なんとも軽薄な浮かれっぷりである。そこには「謙虚な反省」の欠片もない。関連記事■ 山尾氏と不倫疑惑の弁護士 蓮舫氏国籍問題担当だった■ 麻生太郎氏 安倍首相に“火事場泥棒解散”を強く進言■ 北朝鮮のミサイル発射兆候 信頼できるのは“Aアラート”?■ 妻の不倫率は12年で3倍に、バレる確率は「夫95%妻5%」

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    猪瀬直樹元側近が読み解く「小池劇場」終わりの始まり

    広野真嗣(ジャーナリスト) 今年最大の政治決戦、東京都議選で小池百合子知事が代表を務める都民ファーストの会が大勝し、議会の刷新を掲げる小池氏を支持する勢力が過半数を獲得した。 政策が評価され、都政のチェックや決定を委ねる人物として適した者が選ばれたのであれば違和感はない。だが、この大差がついた原因は、国政における自民党のオウンゴールである。 「現状へのノー」という表現といえばそれまでだが、今回は「安倍内閣にノー」の表明であり、都政とはかけ離れたものさしで投じられた選択だったという点は記憶しておきたい。 都議会において刷新を唱える小池系勢力が主導権を握れば、当然ながら善かれ悪しかれ今後、政治的な対立や混乱が予想される。今回、とりわけ不安要素に見えるのは、3年後には東京五輪が控えている現実があるからだ。主催都市である東京都には、対立をもてあそんでいるような時間的余裕がほとんど残されていない。すでに時間を空費してきたからだ。 最大の懸案となっていた市場移転問題で、小池知事は告示直前の6月20日、「豊洲移転+築地再開発」の方針を発表した。小池百合子都知事=7月2日、東京都新宿区(納冨康撮影) 築地が所在する中央区のまちづくりを知悉(ちしつ)している吉田不曇副区長は歓迎しつつ、心中穏やかではない。「豊洲移転の決定を高く評価します。しかし、都心と湾岸エリアを結ぶ環状2号整備だけでなく、五輪開催時の輸送計画の策定など急いでやらなければいけないことがいくつもある」 環状2号線は市場移転後、築地跡地を通って選手村(晴海)と新国立競技場(新宿区)などがある都心を結ぶ幹線道路。市場の移転延期で、築地を前後する約500メートルの地下トンネル部分の工事が中断していた。すでに五輪に間に合わなくなった地下トンネルは先送りし、地上部の暫定道路で対応する方針が今回、確定した。 道路だけではない。築地跡地には選手・関係者向けバス1000台などを収容する仮設の巨大車両輸送拠点が整備される。その整備に1年を、アスベスト対策が必要になる築地の解体工事には1年半をそれぞれ要する。20年7月の五輪に向け3年と迫る中、インフラ整備の日程に、もはや「遊び」は存在しない。 小池氏は移転時期の目標を来年5月としているが、再び築地残留の「夢」を抱いてしまった約500の仲卸業者の心情を、もういちど移転に向けて動かすことができるのか。もう時間は無駄にできない 過去を「断罪」した小池都政10カ月の間に、都庁で長く移転に携わった幹部の多くは市場の職場を去っている。政治家自らが足を運び、汗かく努力を重ねなければ信頼は得られないだろう。築地市場の関係者に頭を下げる小池百合子東京都知事 =6月17日、東京・築地(桐山弘太撮影) 築地からの移転をよしとしない者が現れれば、五輪の足かせとなりかねない。小池知事はもちろん、都民ファーストの会の都議たちも「なったばかりでわからない」とは言っていられない。待ったなしなのだ。 ハード整備の遅れよりも深刻なのは、五輪時の交通・輸送計画をどうするか、全く見えていないことだ。 例えば環状2号を東京湾側に抜けていくと、バレーボール(有明アリーナ)、体操(有明体操競技場)、テニス(有明テニスの森)、自転車競技(有明BMXコース)など人気種目の会場が集積し、プレスセンターとなる東京ビッグサイトもある。 観客の大半を占める日本の地方からの来場者がこれらのエリアにどうアクセスする想像してみればよい。 迷路のような東京駅に降り、困り果てた高齢の観客をどう誘導するのか。仮にそういう人たちがタクシーに流れれば、環状2号や晴海通りは目詰まりを起こし、選手が試合開始に間に合わない事態すら引き起こしかねない。 りんかい線(東京臨海高速鉄道)やJR京葉線といった公共交通網を最大限活用するのは当然としても、出勤ラッシュやテロ対策と合わせ、安全を確保した計画づくりは一刻を争う。 五輪後を見据えた小池都政も気になる。小池氏の発表によると築地の跡地は「5年をめどに再開発」との方針だ。 豊洲整備の借金(都市場会計が発行する企業債)残高3500億円は、4000億円超の築地跡地の売却益を充てる予定だった。この借金は20年から26年にかけて順次返済予定で、ピークの25年には1322億円を返済しなければならない。築地を売却しない以上、新たに一般会計で借り換える。すなわち新たな都債を発行する可能性が高い。当然だが、一般会計で新たに発生する金利負担は「小池裁定」によって新たに生じる税の支出となるのだ。 「改革派」を演出するためなのか施設の見直しにご執心だった小池知事だが、もはや「見直し」の段階はとうに過ぎ、計画を「詰める」リーダーシップこそ求められている。 逆に都議会はその準備に抜け穴がないか、超党派で徹底的にチェックしなければいけない。第一党を失った自民党も、もはや品のないヤジや、ファクトを問わない嫌みな質疑をしている時間はない。平慶翔氏の「疑惑」 安倍政権を一気にぐらつかせたのは、安倍チルドレンとして当選2回、豊田真由子代議士の「暴言」報道、そして安倍氏が後継候補の一人と重用してきた稲田朋美防衛相の「失言」だった。だが、今回大量当選した「小池チルドレン」にもすでに兆候はあった。 投開票3日前の6月29日、自民党都連の「司令塔」である下村博文会長に、加計側からの違法献金疑惑という特大の「文春砲」が放たれた。自民党へのトドメの一撃だった。 即座に開いた記者会見で全面否定し「反撃」に出た下村氏は、昨年8月に下村事務所を退職した元秘書、平慶翔氏からの情報流出の可能性に触れた。平氏は、おひざ元の板橋区で敵対する都民ファーストの会から当選を果たした人物である。 「流出源」の可能性に挙げる根拠として下村氏は、事務所在職中、紛失騒ぎがあった職場のパソコンを持ち出したほか、約30万円と少ないとはいえ事務所費用を詐取した人物であったこと。その事実を認める内容の「上申書」に署名して退職に至ったことを挙げた。 これに対して平氏は同日深夜のニコファーレでの演説会で、デジタルデータの流出をさせた事実を否定した上で、署名も「私の字ではない」と述べた。都民ファーストの会代表として候補の過去を問われた小池氏は30日の定例会見で「知りませんよ」とはぐらかしたが、有権者に対してそれで政治家の説明責任が果たされたか。「都民ファーストの会」平慶翔候補(右)と姉で女優の平愛梨=6月4日、東京都板橋区(大西正純撮影) 昨年8月の平氏の退職直後、板橋区内のすし店で送別会が開かれている。筆者は出席した下村後援会幹部を取材したが、退職の理由について「兵庫の実家の父親の仕事を手伝いに帰る」との本人の説明をきいた人物が複数人いる。また「皆にはそう話したが、実は東京の大手デベロッパーに就職する予定です」と述べるのを聞いた者もいた。平氏にインタビューでこの点を聞くと「私がそう話したことはない」と答え、退職の理由については小池氏に感化されたことが退職の直接の引き金になったと述べた。       これまでは過去の知事や都議を糾弾することで人気を得てきた小池氏。現職知事として問われ始めているように、党代表としても、自らの言動と組織を率いる責任を問われる局面に入った。都民ファーストの「選良たち」も今後、小池知事の「ご意向」と都民の目線の間で自らの独立した政治判断が問われる。 権力は知事にもドンにも集中させるべきではない。相互に知事と議会チェックしあう緊張関係こそが、われわれ有権者にとって最もメリットを生み出す構造なのだから。

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    「うっかり1票、がっかり4年」小池バブルはどうせ弾ける

    の東京大改革って一体何をやる改革なのか。「宴の後」については必ずしもハッキリしない。 筆者は、今回の選挙での有権者の判断基準を以下の点において注目していた。①小池新党は都政を託するに値する政党かメンバーか。風に乗るだけではないか。②この先も「都政の見える化」改革を続けるのか。他方、政策の遅滞をどうみるか。③小池知事は大組織、大都市の経営者として信頼できるか、決められない知事では。④都議会で都民ファ+公明が過半数を占める選択を是とするか非か。自民の存在は。⑤都議選後の政界再編をにらみ小池新党を国政改革の台風の目に押し上げるか否か。 具体的には、 ①小池都政の都政運営の仕方をどうみるか。議会にも職員にも都民にも相談なく進めるワンマン都政のやり方。情報公開、見える化を進める一方、政策形成・決定過程は外部顧問依存のブラックボックスに近い。合意形成より知事独裁に近いメディファーストの都政運営をどう評価するか ②豊洲移転か築地再整備かその折衷案か。豊洲移転延期から相当時間とカネが掛っている。豊洲移転と築地再開発の方向は示すが採算面など依然不透明。カネと時間などロスが非常に大きくなっているが、このやり方にストップをかけるのかどうか。 ③五輪準備は相当遅れているが大丈夫か。遅滞する環状2号線整備、全体的に遅れる五輪向け都市整備。「総合的に判断」としながら、ワンイッシュー(単一争点)にこだわり整合性を欠く都市経営をどうみるか。 ④小池都政の政策面への期待感はどうか。待機児童の解消など少子化対策、待機老人、インフラ劣化など「老いる東京」対策、首都直下など防災対策という都民生活に直結する政策問題にどのようなプログラムとスケジュールで取り組むのか。 ⑤都内のコップだけでなく、東京一極集中批判に都政はどんな政策態度で臨むのか。 しかし、実際はこの5つの争点に答えを出すような論戦はあまり深まったとは言えなかった。選挙戦が始まると、意外に都政の政策をめぐる論戦は乏しく、「決められない知事」との批判も弱まって、豊洲移転・築地再整備をめぐる経済論戦もなく、小池都政を支持するか否か、安倍政権の緩みをどう見るか、といった点に終始したように思う。都議選なのか、国政の中間選挙なのか、それがダブってしまったような選挙だった。この選挙で都民はいったい何を選択したのだろうか。小池バブル現象 勝った側は公約が全部支持されたと理解し、負けた側は外部要因が悪すぎたと言うのかも知れない。しかし、争点の希薄な戦いの中で、多数の議席を得たから公約が全部支持されたという理解は早計だろう。負けた側は外部だけでなく内部要因にも問題があったことを反省すべきではないか。 もっとも、これだけの大有権者市場での選挙は「結局、選挙なんて正確な緻密な政策選択よりも、現状の政治をそのまま続けるか、変えるかの選択にしかならない。それで選挙は十分だ」という、ざっくりとした見方がある。案外、その見方が妥当なのかもしれない。東京のような大票田では、争点を「ワンイシュー」に定めない限り、有権者の関心は拡散し、何かの選択を迫ること自体、無理なのかもしれない。応援演説をする小池百合子代表=6月23日 とはいえ、少なくも今回の選挙でハッキリしたのは「何かを変えて欲しい」という意思の存在だ。「現状に対する強い不満のエネルギー」が蓄積している民意だけは確認できた。だからといって、この先も豊洲移転や五輪見直しの騒動を引き続きやれという話ではなかろう。何を変えるのか、東京大改革という「妖怪」が覆っているだけでは、そのうち行き詰まる。ここからが小池都政の正念場となろう。 約1年に及ぶ小池都政は、あたかも今回の都議選のためにあるような「小池ブーム」だった。そこで選挙中、聞こえてきたのは「都民ファースト」の連呼と、東京大改革をオウム返しのように叫ぶ若い男性、女性候補者の声だった。 有権者1100万人の巨大な選挙市場をどう制するか。出身地の地元を地縁、血縁、学縁などを頼りに支持(票)を集めるドブ板選挙と違い、マスメディアの取り上げる争点をめぐって「空中戦」が展開される。それが首都選挙で、それを制したのはメディア操作に長けた小池氏、そして氏が率いる「都民ファーストの会」だった。 結果として、小池氏が党首を務める新興勢力、地域政党「都民ファーストの会」が自民、民進らを大きく上回り第1党になった。これで途中から小池支持に変わった公明を加えると、小池氏の支持勢力は過半数を超える。 他会派への都民ファーストの推薦まで入れると、石原都政など以前の自公3分の2与党体制から、自共を除く都民ファーストら小池支持勢力で3分の2の与党体制ができ上がったことになる。ただ、このことが今後の都議会、都政運営に「吉」と出るか「凶」と出るか、まだ分からない。 当初、小池人気が直接、都民ファーストの票にはつながりにくいとみられたが、国政での「森友・加計問題」の隠ぺい、自民党の相次ぐ議員の不祥事や不適切発言に救われ、与党を切り崩す力も示せない民進党の力量不足もあって、不満の受け皿は都民ファーストへ向いた。その点、都民ファーストへの積極支持と自民、民進の「敵失」に対する消極支持の入り交じった票がすべて小池新党に向いたという理解もできよう。 ただ、今回の選挙を振り返り、立候補者の顔ぶれもよく分からないまま、都民ファーストというだけで投票した人も相当数いたのではないだろうか。劇場型選挙で大量の票が流れ込んだこの現象を、筆者は政治の「小池バブル現象」と呼んでおきたい。経済のバブル現象と同じように期待値が高く、票数も議席数も膨れ上がった現象を指す。 90年代初頭に日本経済が味わったように、いずれバブル経済と同じように弾ける時が来る。ただ、その時期は選挙後の都政運営が本格化してみないと分からない。都議会は変われるか 小池氏が掲げた「東京大改革は都議選に勝つこと」。この目標は見事に達成されたことになるが、キャッチフレーズとした「古い議会を新しい議会に変える」はどうなるのか。都議会改革は確かに都政改革の大きな柱といえる。 ただ、メンバーが変わり、当会派の勢力図が変わったからといって、それだけで新しい都議会になるわけではない。大東京の都政改革は、議会サイドも役所サイドも従来の個別事業中心の事業官庁から全体を俯瞰し、都市経営に持ち上げていく。「政策官庁」に脱皮できるかどうかが核心的な論点だ。 都議会が「政策都議会」に脱皮できるか、そのためにやるべき改革は何か、そこが焦点になる。古いメンバーを新しいメンバーに変えたからといって、やることが同じなら何も変わらない。たぶん、小池氏の問題意識も「議論のできる」「提案のできる」議会に変えたいと主張した点を見ると、この点は同じではないか。 もともと「通りやすく、落ちやすい」というのが都議選の特徴である。毎回、何かしらの風が吹き、その風に乗って当選する議員が多く、だいたい3分の1が入れ替わる。結果、当選回数も少なく、ある意味「素人議員集団」に近いのが都議会であり、平均年齢も若く当選1、2回という新人議員が6割近くも占める。都議選の期間中、候補者の第一声に耳を傾ける聴衆=6月23日、東京都渋谷区 冷静にみると、今回の都民ファーストの大量当選でメンバーは大幅に入れ替わったが、これまでの都議選とそう大きくは変わらない。そうした素人集団の間隙を縫うように、ごく一部の多選議員が「ボス化」し、議会運営を差配する構造が生まれやすくなる。 それを小池氏は「ブラックボックス」とか、「ドン支配」と表現したが、今回の選挙結果でその構図が大きく変わるのか。なかなか信じがたい。その手掛かりをどこに求めればいいのか。 東京大改革というなら、その勢力図の変わった都議会を通じて、どのように東京の抱えるさまざまな大問題を解決していくのか。「役に立つ都議会」にどう変えて行くのかが問われよう。そこまで見ていかないと、今回の都議選の結果が都政にプラスになるかどうか、その評価も難しい。 都議会改革は報酬や手当の改革より、政策自立、都政の政策の質を高めることがテーマだ。政策問題と格闘し、質を高めるような都議会活動に変えられるかどうか。都政は、議員と知事を別々に選び、双方が抑制均衡関係を保つよう求めた「二元代表制」だ。政権与党の党首が首相になり、内閣を率いる国の制度とは全く異なる。議会は知事を翼賛する機関でもなければ、投票マシーンでもない。独自の代表からなる都政の政治機関である。 対して、都知事は行政の最高責任者であり、本来は執行機関の立場と立法権を有する議会とは離れた立場、つまり公正中立の立場から都政運営が求められる。だが、ここまでの流れを見る限り、あたかも都知事が政党の党首になり、都議会で多数勢力を形成し議会を差配する。都議会に与党勢力を意図的につくり、それが政権与党として都知事を支えるという「議院内閣制モデル」を前提にコトを進めているように見える。それが「良い都政」を実現する近道だと主張する。果たして、それは本当に正しい方向なのか。 都民ファーストが第1党になったからといって、議会本来の役割、つまり決定者、監視者、提案者、集約者の役割を放棄するような行動は許されない。あくまでも機関対立主義を前提に、執行機関の知事と対峙していくスタンスが求められる。 都議会は知事の追認機関であってはならない。これは地方自治の大原則である。地方自治を支える「車の両輪」として、都議会は都知事と抑制緊張関係を保ちながら、予算や施策を監視する責任がある。 この春の都議会で、石原都政で展開された豊洲市場の土地購入、移転の経緯を28人の証人喚問までしてつぶさに調べ上げた。その結果、その不透明ぶりも浮き彫りになり、小池氏はそれを長年にわたって知事与党だった自民、公明両党が、チェック機能を十分果たしてこなかった証左と強く批判した。そのことを今回の選挙で小池新党も強く批判し、その改革姿勢に多くの都民が支持した。「会派あって議会なし」 しかしこの先、批判の図式は小池氏にも向くのではないか。小池氏は知事だが、地域政党の党首であり、東京五輪を主催する最高責任者でもある。この「3つの役回り」を一人でこなすのは容易でない。筆者が思うに最低2人の知事は必要だろう。だとすれば、小池氏は地域政党の党首を辞任した方がいい。 というのも、この先の都政運営で一番懸念されるのは、今回の選挙で大量議席を得た「都民ファーストの会」が小池氏の子飼いの集団に過ぎないからだ。どう考えても小池知事の方針に追従する性格が強い。その集団が「判断は知事の方針に従う」というのなら、議会本来の役割を果たせるのか大いに疑問である。 執行機関の知事は、議決機関である議会と権力分立の観点からも意図して分離する選択をすべきではないだろうか。でなければ、行政は大きく歪む可能性がある。東京都議会本会議=3月30日、都庁(酒巻俊介撮影) 一つ間違うと「会派あって議会なし」、小池派と非小池派という分断された都議会となりかねない。行き過ぎた政党政治の考え方を都政に持ち込むと、「知事独裁体制」に突き進んでしまう。予算編成権を独占する知事だけに、その地位を利用して都民ファーストの公約を中心とする「予算重点化」を図る可能性がある。多くの有権者はそんな事は期待していない。あくまで公正中立な都政運営に期待を寄せている。 筆者は以前、iRONNAで「都民ファースト=小池百合子」、ただしそれは「きれいな包装紙に包まれたお中元のようなもの」だと指摘した。封を開けてみるまで中身は分からない。新党に期待するという意味では、筆者も多くの有権者と同じだが、過去の新党ブームは選挙が終わると萎(しぼ)み、4年後には消え去るという苦い経験があるので人一倍注意深くみている。というのも、都民ファーストという新党も、そのメンバーをみると、売りは新人の「小池塾出身者」とは言うが、半数以上は既成政党からの移籍組、今回そのままでは落選可能性が予想された面々が多いことだ。 「玉石混交」といっては失礼かもしれないが、都議選への緊急避難、駆け込みで集まったメンバーが相当数いる。志がないとまで言わないが、どうも「選挙ファースト」の色彩が強い点が気になる。元民進系、元自民系、元みんな系といった移籍組がズラリと顔をそろえる。彼らは選挙前に移籍の理由をいろいろ弁明していたが、本音は小池ブーム(風)に乗っかりたかっただけである。首尾よく当選したので、それで目的を果たしたことになるのかもしれない。 国政で日本維新の会から渡辺喜美氏(元みんなの党主)が離党し、民進党から長島昭久氏が離党し、自民党からも若狭勝氏が離党し、みんなが小池新党の選挙応援に入った。こうした動きがこの先、都民ファーストが国政政党を目指す際の牽引力になると想定される。ただ、「4種混合」の政党では一つの会派を維持することが当然難しくなる。4つのグループに分断され、バラバラの行動をする中小会派にもなりかねない。都議選から2年経ち、折り返しに入ると次の都議選に目が向く。すると、また当選第一主義の動きが出て分裂、移籍が始まる。都民ファーストもそうならないとは限らない。混声合唱団まがいの都民ファースト 昔から選挙目当てで寄ってくる集団を「選挙互助会」と呼ぶ。新味があるとすれば、小池塾の出身には期待できる。選挙前から小池氏もここを売りに「素晴らしい人たち」「専門家の集まり」と宣伝していたので、そこは額面通り受け止めたい。 ただ小池氏と同じように、メディアファースト志向が強い点がどうも気になる。テレビ映りだけを気にして行動する。都政に役立つ仕事ができるのか、この先はチェックしたい。ただ、こうした新党なりブームで当選した新人に危惧されるのは、いま自民党2回生議員を中心に起きている、いわゆる「安倍チルドレン」の相次ぐ不祥事だ。 名前はいちいち挙げないが、この人たちが最初に当選したのは2012年の解散総選挙である。民主党(当時)から自民党が政権を奪回したあの選挙で、大量の新人議員が「安倍ブーム」の中で当選した。これら新人議員の誕生に共通して言えるのは、特定の政治思想や政治家に強く感銘を受けて議員を志したというより、むしろ特定の権力者が自分や所属する党会派の勢力を拡大するために大量の新人を立候補させる必要があったということである。つまり、たとえ「粗製乱造」であっても、頭数を必要としてやむなく公認した人たちも相当含まれているという事実だ。 当選確実の報道を受け千代田区の石川雅己区長に譲り受けていた緑色のネクタイを返却する「都民ファーストの会」の樋口高顕氏(左)=7月2日、東京都千代田区(松本健吾撮影) では、都民ファーストの会はどうか。新人議員を多数誕生させる必要があるときには、じっくり人物を見極める暇などなく、粗製乱造がどうしても避けられない面がある。今後、国政の前例のような問題が都議会で起こらないか。もちろん起こらないよう望むが、果たしてどうだろうか。それは小池都政の今後に暗い影を落とすことになろう。とはいえ、「小池チルドレン」は大量当選した。どんな新機軸を打ち出し、都議会を、そして都政をどう変えて行くのか、「うっかり1票、がっかり4年」という言葉が都政史にはある。都議選が終わり、新しい時代の都政へ新たな扉が開かれることを期待したい。

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    運と勢いだけの「小池チルドレン」に都政の課題が解決できるのか

    (国際医療福祉大学教授) 小池百合子という政治家はどこまで運がいいのか。 首都決戦となった東京都議会選挙は、自民党と小池知事率いる「都民ファーストの会」が都議会第1党をめぐり激しい戦いを繰り広げたが、結果は都民ファーストの会の圧勝だった。 自民党は、豊田真由子衆院議員の暴言・暴行問題や稲田朋美防衛相の失言、下村博文都連会長の政治資金問題などが立て続けに週刊誌などで報道され、事実上「オウンゴール」の連続で、自民党への批判票が奔流のごとく都民ファーストに流れ込んだ。有権者へ向け、東京都議選候補者への最後のお願いを行う都民ファースト・小池百合子代表=7月1日、東京都豊島区(春名中撮影) 昨年7月から約1年間の小池知事の動きをみていると、あたかも浮き沈みを繰り返しながら、メディアにニュースを提供し、相手のミスを巧みに利用しながら勝ち残りをかけていく米大統領選を彷彿(ほうふつ)とさせる「メディア・ポリティクス」のお手本のような動きを見せている。 2016年7月に実施された都知事選で小池知事は約291万票を獲得した。「都議会はブラックボックス」と都議会のドン、内田茂都議(当時)を悪者に仕立て上げ、メディア受けする「戦いの構図」を作り上げた。 築地市場を豊洲市場に移転することが11月7日と決められていたにもかかわらず、選挙公約に従って移転を延期し、盛り土がなされていなかった問題を掘り出し、「地下空間」にメディアの注目を集めさせ、地下水の汚染問題などを喧伝(けんでん)して移転延期の正当化に成功。東京五輪・パラリンピックの会場問題でも、経費節減をうたってボート会場の変更、バレーボール会場の変更などを打ち出し、他の自治体も巻き込んで、騒動を巻き起こした。 小池知事が繰り出す「アピール」にメディアも飛びつき、毎週金曜日の知事定例会見となれば、民放各局が生中継し、それが視聴率にも結び付くというWIN-WIN効果で、小池知事はすっかり「メディアの寵児(ちょうじ)」となった。 2017年2月5日に投開票された千代田区長選挙では、現職の石川雅己区長を支援し、石川氏は都議会自民党と自民党東京都連が擁立した与謝野馨元衆議院議員のおい、信氏をトリプルスコアで破り、当選した。 この時点では、都議会自民党も「小池知事の勢い」に相当な危機感を抱いていた。この勢いが続けば、多くの自民党都議会議員がはじき出されてしまう。そんな中、小池知事にも「アキレス腱(けん)」はあった。 第一のアキレス腱は、自分自身が選挙公約として打ち出した「豊洲市場への移転の延期問題」だ。盛り土がなされていなかった問題を掘り出したまでは良かったが、地下水の汚染などについては、専門家に「安全に影響はない」と言われ、逆に築地市場の汚染問題なども報道され、石原慎太郎元知事から「安心と安全をごちゃまぜにしている」と批判された。ことごとく断裂を免れた小池知事の「アキレス腱」 都議会自民党は、「豊洲への市場移転」を早々と都議選の公約に掲げ、小池知事に対して「決められない知事」のレッテルを貼り攻撃を始めた。豊洲市場への移転に関して、何らかの決断をしなければ、都議選でますます攻撃を受ける状況だった。築地市場の豊洲移転問題で会見する小池百合子都知事=6月20日(桐原正道撮影) 小池知事は、いわば追いつめられた形で「決められない知事」の汚名を返上すべく、都議選の告示直前になって「豊洲移転、5年後に築地の市場機能復活も含めた活用を検討」という、なんとも中途半端な併用案を打ち出し、「決めました」とばかりに選挙戦に持ち込んだ。 小池知事の併用案は、「豊洲と築地の両方に市場機能など不可能」「財源をどうするのか、まったく明らかにしていない」などと玄人筋にはきわめて評判が悪かった。「選挙目当てのパフォーマンス」と都議会自民党も攻撃のトーンを高めたが、意外や意外、告示期間中の6月24、25両日に通信社・新聞社等が共同で行った世論調査では、小池知事の「豊洲・築地併用案」を約55%が「評価する」と答えた。 巧みな争点隠しだ。「豊洲には移転するが、自民党案とは違う」と見せることで、有権者を納得させてしまった。第一のアキレス腱が断裂せずに済んだ。 第二のアキレス腱は、小池知事が都知事選に立候補する際、自民党本部に「進退伺」を出して、そのままになっていた、ということだ。 これも、都議会自民党は、「自分の出処進退も決められないのか」と「決められない知事」のイメージ強化に躍起となった。だが、6月になって小池知事が自民党に離党届を提出、都民ファースト代表になったことで、「都民ファーストの会VS都議会自民党」の対立図式がかえって鮮明となった。 もともと、小池知事が約291万票を獲得した中には、自民党支持層も含まれていたため、自民党を離党したことで、自民党支持層が離れるのではないかと懸念された。その自民党が、国政レベルで組織犯罪処罰法改正案の中間報告による国会採決、加計学園問題での野党の批判、「魔の2回生」豊田議員の暴言・暴力問題が明るみに出るなど守勢に立たされ、都民ファーストが国政レベルでの自民党の対応に不満を持つ党支持層の「受け皿」になってしまった。第二のアキレス腱も、自民党の「オウンゴール」で断裂を免れた。 第三のアキレス腱は、「都民ファーストの会」という地域政党の存在そのものにある。都議会自民党は「二元代表制の中で、小池知事の意向を一方的に実現する勢力を都議会で作るのは健全ではない」と攻め立てた。けだし正論ではある。 世論調査の結果を見ても、小池知事への支持は、一時期の8割超から漸減し、都議選の告示後は60%台半ばくらいにはなっていたが、それでも高い支持率を誇っていた。一方、都民ファーストへの支持は、小池知事への支持よりはるかに低かった。都政の課題への見識に早くも疑問符 いくつかの地域で、都民ファーストの候補者演説を聞いた範囲では、都政のさまざまな課題についての詳しい見識を持っているわけではなく、「小池知事と一緒に東京大改革を実現する都民ファーストの会です」というような、抽象的な内容しか話していない候補もいた。 豊洲市場の移転問題にしても「小池知事の意向を尊重する」というようなスタンスでは、地域政党とはいえ「小池知事のお抱え議員集団」というそしりは免れまい。 その二元代表制の本旨からいえば疑問とされるような都民ファーストが、都議会第1党となった。今後は、都議会第1党として知事へのチェック機能も果たしていかなければならないが、果たしてそれができるのだろうか。 過去の選挙を振り返ってみても、「ブーム」は何度もあった。1993年6月27日に行われた都議選では、「日本新党ブーム」で日本新党が公認だけで20議席を獲得、自民党、公明党に次ぐ都議会第3党となった。その立役者となったのが当時、日本新党の参院議員だった小池氏だが、その後の衆院選での「新党ブーム」の先駆けとなった。 2009年7月12日に行われた都議選では、民主党が54議席を獲得して都議会第1党となり、自民党38議席、公明党23議席を合わせても61議席と過半数割れにまで追い込み、その後の「政権交代」の序曲となった。 だが、こういった「ブーム」がもたらすものは、経験不足の新人議員の大量生産だ。日本新党も民主党も、新人議員が大量に誕生したものの、その4年後の都議選では惨敗している。 小池知事の支持率はいまだに高いものの、都議会自民党はこれからも豊洲と築地の併用案に「都民の税金を無駄遣いするのか」と厳しい姿勢で臨む可能性がある。小池知事の意向を実現するための都民ファーストだが、もし小池知事への支持が失われたら、それでも都民ファーストに存在意義があると言えるのか。 「小池チルドレン」と言われる新人議員が多くを占める中で、次の選挙を戦う足腰を鍛えることはできるのか。既成政党のように、政策を学び、都庁と渡り合いながら政策を実現していく教育機能を都民ファーストは担うことができるのか。小池知事の意向に従うだけなら、単なる頭数だという批判も浴びることになる。「都民ファーストの会」総決起大会で公認候補者とフォトセッションに臨む、小池百合子都知事=6月1日、東京都目黒区(川口良介撮影) 小池知事の第三のアキレス腱、都民ファーストは断裂の危険性を抱えながら小池知事と二人三脚で歩みを進めていくことになる。 運とメディア戦略で都議選までを乗り切った小池知事。1年間は選挙キャンペーンを上手に展開したが、このまま順調に進んでいることはできるか。4年間の任期をこれまでのような選挙キャンペーンのノリで乗り切ることはできまい。都知事としてのかじ取りが、これからさらに厳しく問われることになる。

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    ところで「小池チルドレン」は大丈夫?

    小池百合子知事率いる「都民ファーストの会」が東京都議選で圧勝した。「東京大改革」の風は、安倍一強と揶揄される自民党を歴史的大敗に追い込んだ。国政への影響は必至だが、爆誕した「小池チルドレン」の資質もやはり気になるところ。僭越ながら小池さん、あなたの子飼いはホントに大丈夫?

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    小池新党候補に「高学歴女の幸せ請負人」20年学んだ知見聞いた

     小池百合子・都知事の自民党離党と代表就任で「都民ファーストの会」はいよいよ東京都議選(7月2日投開票)に向けた戦闘態勢を整えた。「女性を都議会に送らなければ都政は変わらない」──小池都知事はそう宣言して都民ファーストの会に「女性活躍推進本部」を立ちあげた。メンバーはいずれも知事のメガネにかなった17人の女性候補たちだ。 小池知事の政敵、石原伸晃・前自民党都連会長の地元・杉並区に殴りこみをかけるのは茜ヶ久保嘉代子氏(41)だ。東大卒のキャリアウーマンで1児の母、日本IBMや外資系経営コンサル会社、アマゾン・ジャパンを経てキャリア・アドバイザーとして独立した。 調査票では、「女性のキャリアと起業の支援」などを公約にあげ、政治家を志望した動機をこう書いている。〈家庭と仕事の両立についてアドバイザーとして活動する中で、より公共・公益に直接貢献したいという想いが強くなったため〉都議選に向けての高円寺駅南口での演説後、自身の政策について記者に語る杉並区から都民ファーストの会公認で出馬する茜ヶ久保嘉代子氏=6月12日、東京都杉並区 まさに「女性活躍推進本部」の“伝道師”にふさわしい意気込みではないか。もっとも、彼女は3年ほど前、〈高学歴女の「女の幸せ」請負います〉を合い言葉に、「高嶺の花-倶楽部」というサロンを立ちあげたことがある。公式ブログは現在更新されていないが、こんなことが書かれていた。〈高学歴女性のあなたは、そんじょそこらの凡人にはちょっと近寄りにくい存在かもしれないけれど、「本当に実力のある賢い男性」や「知性と品のあるチャーミングな女友達」に囲まれた、上質で刺激的なライフスタイルを目指すことができる可能性を十分に秘めているのですよ〉〈筋金入りの「高学歴女子」がその道のプロから必死で学んできた「いい女への道」を同じ想いを持つあなたには、特別に伝授いたします。20年の歳月をかけて学んだ、血と涙と汗の結晶である数々のノウハウであなたも、あなたの望む形で「女の幸せ」を手に入れて下さい〉 茜ヶ久保氏は20年の歳月をかけて、どんなノウハウを学んだのか。質問書を送ると、秘書を務める茜ヶ久保氏の夫が、こう回答した。「(サロンは)実質活動はしていません。ブログは初期設定をしましたが、実質的に利用していない。私的に開設したブログを、ネタとして取り上げられること自体が不本意です」 どうやら消したい過去のようだ。関連記事■ 都知事は戦後わずか6人 都知事の権力や仕事を分析した本■ 高学歴女 学歴コンプレックスないガテン系男に魅力を感じる■ 大卒女性の24%が“肛門性交”の経験アリ 高卒女性は17%■ 小泉純一郎氏 11月の福島県知事選に進次郎担ぎ出すプランも■ 新党結成の石原慎太郎氏 知事辞任は側近にも伏せられていた

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    都民ファースト鞍替え元自民区議が失神パワハラ疑惑に反論

    レンチ豪遊」撮■ 「9頭身」女優・田中道子が魅せた大人のセクシー■ 元テレ朝・龍円愛梨氏 資金不足で選挙事務所借りられず

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    首都東京は大丈夫か? 都議選公約に隠された3つの問題点

    著者 西村健(日本公共利益研究所 代表) 7月2日投開票。東京都議選が佳境に入っている。各党が特徴的な政策を掲げている。有権者と握手する都民ファーストの会の小池百合子代表=6月25日午後、東京都墨田区(佐藤徳昭撮影) 都民ファーストの会は「議会改革条例をつくります」「議員特権を廃止します」「『不当口利き』禁止条例をつくります」などの政治改革を先頭に掲げ、待機児童対策など小池都知事の公約とほとんど同一の内容、つまり都民目線の公約を掲げている。 他方、都議会自民党は「個人都民税10%減税」「事業所税50%減額」などの斬新な政策から「東京2020大会を起爆剤とした、日本全体の景気浮揚。全国への経済波及効果は32兆円」といった壮大な政策を提言している。 そして公明党は「鉄道駅のホームドア整備を拡充」「私立高校授業料の無償化について、対象を年収約910万円未満の世帯へ拡充」といった人にやさしい政策を、民進党は「小・中学校の給食費等を無償化」「口きき記録を公開し、補助金などの適正化を検証」など具体的かつ実施可能な政策を、共産党は「認可保育園を9万人分増設」「特養ホーム2万人分増設」といった弱者に寄り添った政策を掲げている。 それぞれの「らしさ」全開のメニューだ。その順番や書き方、まとめ方にも政党の個性が表れており比較すると面白い。こうした各党の努力については敬意を示したい。前提となる知識を持っていない人にとっては理解しやすい言葉が並び、その意味では素晴らしいものも多い。 しかし、厳しい言い方をすると、専門家の見地から見て「政策」でも何でもないものも多い。主に3つの問題がある。具体例を示しながら見ていこう。 問題1 イメージ先行の抽象的な言葉のオンパレード「教育カリキュラムの充実、多様な教育の展開」(都議会自民党)「学童クラブの充実」(都民ファーストの会) 上記の文言から何を言っているのか理解できるだろうか? 「どのように」充実・展開するのか示されていない。実際すでに行われていることをただそのまま書いているだけともいえる。東京都の各種計画を見れば近い内容は書かれている。つまり、これは方針・指針のようなもので、進め方や度合いの違いにしかすぎない。 抽象度が上がれば上がるほど公約の責任追及からは逃れられるわけで、具体性を隠す政治的な高等技術ともいえる。無用な対立を避ける必要性があった時代ならまだしも、地方自治体が指標やKPI(Key Performance Indicator 編集部注:重要業績評価指標)を掲げ、数値目標の達成度を追及される時代にこれでは困る。第2、第3の問題点とは?問題2 明確な目的が存在しない「被災地と東京の子どもたちの絆を深めていくために、スポーツを通した交流事業をさらに展開」(公明党)「議会基本条例の制定に取り組みます」(民進党)「中小企業がとりくむ職業訓練への東京都の助成制度を充実させる」(共産党) 現実問題として何のためにその政策を行うのか、どのような問題解決につながるのかということが明示されていない。このような目的がよく分からない政策や公約が存在する。空気のようにはっきりしない理念にもかかわらず、もはやそれを実施すること自体が目的になっているようにも見える。運用できない、機能しない条例や自立を促さない助成事業ほど、行政職員の時間を奪い、やる気を損ねる事業はない。問題3 行政の役割範囲を超える「『おもてなしの心』で世界中から訪れる人々を歓迎するまちを実現」(都議会自民党)「金融とITを融合した「フィンテック」を推進」(都民ファーストの会) 上記のような政策に対しては、「行政の行うべき範囲を超えているのではないか」「民間が行うことではないか」との疑問を呈さざるを得ない。都政の予算には限界がある。行政でやってほしいという要望に取り組めば取り組むほど肥大化してしまう。 政治が率先してアピールすればするほど、「時代を先行する」人気取り事業に走りがちになる。そういった事業は人目を引きやすく、体の良い宣伝材料とニュースになるからである。そうなると見た目の良い「新規事業」に予算が確保されることによって本当に必要な事業の予算が削られる。もちろん事業の見直しとセットであれば良いが実際にはそういうわけにもいかない。これらは筆者がよく見てきた光景だ。 上記の3つの問題を改めて考えると残念だと思わざるをえない。都政の基本が分かっていないのではないかという疑問を覚えるし、このレベルでは優秀な都職員をバックにする都知事に対峙(たいじ)できるとは思えない。本来の役割である都政をチェックできるのだろうか。われわれは何を求めるべきかという点を考察したい。(1)前回の都議選の公約を示した上での説明(与党)達成できた成果を具体的な数値(KPI)で示す(野党)未達成であることの理由、シナリオを提示(2)今回の公約に対しての説明 政策をなぜ実施するのかを明らかにする 政策の目標、実現のための前提条件やシナリオを明示 ということが求められるのではないだろうか。自民、公明、民進は実績を示しているので、あともう少しがんばってほしいところである。首都東京の現実を前に責任政党の今後の取り組みに期待したい。

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    安倍政権に朗報! こうすれば「モンスター議員」はいなくなる

    民党の2回生議員は106人である。彼らのほとんどが、12年12月の民主党“ドジョウ首相”の自爆解散総選挙により初当選し、前回の選挙でも順当に再選されている。だから、単なる風だけの当選で、本来、議員たるべきではない人間まで含まれているというのだ。衆院議員が不祥事を起こす確率は不倫問題で経済産業政務官を辞任し、自民党を離党した中川俊直衆院議員 たしかに、2回生でこれまで「不祥事」を起こした議員は、今回の豊田議員を含め次の6人の名が挙げられている。■武藤貴也(滋賀4区、38歳)知人に未公開株を「国会議員枠」で購入できると持ちかけ金銭トラブルに。→離党■宮崎謙介(京都3区、36歳)妻・金子恵美衆院議員が出産のために入院中に、グラビアアイドルを自宅に招き入れ「産休不倫」していたことが発覚。→議員辞職■中川俊直(広島4区、47歳)不倫女性とハワイで「結婚式」まで挙げた「重婚疑惑」、ストーカー行為が発覚。→経済産業政務官を辞任、離党。■務台俊介(長野2区、59歳)被災地視察で長靴を持参せず、水たまりを政府職員におんぶさせた揚げ句、「長靴業界はもうかった」と発言・→内閣府兼復興政務官を辞任■大西英男(東京16区、70歳)「がん患者は働かなくていいんだよ!」発言に加え、過去の女性蔑視発言、報道圧力発言も問題化。→開き直り■豊田真由子(埼玉4区、42歳)秘書への暴行・暴言「バカかお前」「このハゲー!」が発覚し、即逃亡入院。→離党届提出 というわけで、不祥事は「金銭」「不倫」「暴言」など多岐にわたり、それぞれ個別な事件であって、これをひととくくりにするわけにはいかない。また、不祥事議員の年齢も30代から70代までバラバラである。つまり、「魔の2回生」といっても、衆議院当選2回ということだけが共通項にすぎない。 それでは、衆議院議員の不祥事が2回生に限って多いといえるのだろうか。14年の総選挙で当選した2回生はすでに辞任や離党した議員を含めると109人なので、不祥事確率は109分の6となる。では、2回生以外の自民党衆議院議員はどれくらいの確率で不祥事を起こしているのだろうか。現在、自民党衆議院議員は288人いるので、ここから106人を引いた182人がそれに該当する。ただし、1回生16人も「安倍チルドレン」と言えるので、さらに16人を引いた166人が、14年12月以後の2年半で、どれくらい不祥事が起こしたか見てみたい。 以下、主な事例を挙げてみよう。■高木毅(福井2区、61歳、衆院当選6回)復興相当時、30年前に女性宅に忍び込んで下着を窃盗して逮捕されていた「事実」が発覚。本人否定。■甘利明(神奈川13区、67歳、衆院11回)現金(賄賂)授受が発覚、経済再生担当相を辞任。その後、不起訴処分(嫌疑不十分)に。■山本有二(高知2区、65歳、衆院9回)農水相当時、TPP審議で失言し、談合摘発企業からの献金も発覚。■高市早苗(奈良2区、56歳、衆院7回)寄付で所得税の還付金を不正に受け取ったとして刑事告発。■今村雅弘(比例九州、70歳、衆院7回)記者に激高「2度と来るな」発言、「東北でよかった」発言などにより、復興相を事実上「更迭」される。■金田勝年(秋田2区、67歳衆院3回/参院2回)「共謀罪」審議で法相として迷走発言を繰り返し、野党は不信任案提出。 このように主な事例は6件なので、不祥事確率は166分の6となり、109分の6の2回生の不祥事確率よりは低い。しかし、差はあまりないので、これをもって「魔の2回生」とは言えない。要するに、どの集団においても不祥事を起こす人間は、ある一定数、必ずいるということだ。2回生だろうと、3回生、4回生だろうと、不祥事人間は必ずいるわけだ。不祥事議員を減らす手っ取り早い方法 したがって、母集団の構成人数が増えれば、不祥事人間の数も増える。つまり、「魔の2回生」問題というものは、実際には存在しない。 それなのに、メディアは2回生そのものが問題であるかのような報道をする。未熟な新人議員が大量に生まれることがよくないとし、小選挙区制には欠陥があるという。たしかに、小選挙区制導入以後、選挙が「風向き」によって、対立政党のどちらかの圧勝で終わるようになったのは確かである。 実際、過去4回の衆議院議員選挙のうち、05年の「郵政選挙」、09年の「政権交代選挙」、そして12年の「民主党自滅選挙」では「風向き」が偏いたため、新人が大量に当選した。チルドレンが量産されたのである。前記したように、「魔の2回生」は、12年の衆院選で大量に誕生した。 そのため、議員不祥事を防ぐためには、「新人を大量当選させる小選挙区制というシステムを変更する」「中選挙区制に戻したらどうか」という論調が幅を利かすようになった。 しかし、これは誤りである。なぜなら、前記したように、不祥事確率はどの集団でも同じようなものだからだ。つまり、新人を減らしたところで、不祥事は減らない。もし、減ると言うなら、これをデータで実証しなければならない。 では、不祥事議員を減らすのにはどうしたらいいのだろうか。それは、単純に議員数そのものを減らせばいい。日本の国会議員の数が多いか少ないかは、いろいろな議論がある。各国によって政治制度が違うので、単純に数の比較だけでは議論は成り立たない。ただし、現在の日本の状況、つまり財政は毎年赤字で破綻も視野に入っていること、すでに人口減社会に突入し、有権者数も減少していくことを考えれば、現行の国会議員数「衆議院議員475人・参議院議員242人、合わせて717人」は多すぎるのではないだろうか。公選法改正案を可決した衆院本会議=6月8日 国会議員に支払われる「歳費」(給与)は月額約130万円、期末手当が約630万円で年間約2200万円。これに、文書通信交通費として毎月100万円、立法事務費として毎月65万円、政党交付金として毎年4000万円、秘書の給与(政策秘書、第1・第2公設秘書の3人)約2500万円などが加わり、議員1人辺りに税金が約1億円も注ぎ込まれている。つまり、議員数を減らせばおのずと税金が浮くわけで、減らすにこしたことはないだろう。新人大量当選にも意義がある これまで、どの政党も口をそろえて「議員数削減」を叫んできた。たとえば、民主党は、2009年のマニフェストに議員定数を80人削減すると明記して政権を取ったにもかかわらず、たった5人しか削減(0増5減)できなかった。 自民党も、昨年2月に安倍晋三首相が「議員定数10削減」の実施時期を、自民党案が示した「2020年以降」から前倒しすると明言したら、反対が続出する結果を招いた。かつて、2012年に衛藤征士郎衆議院議員が会長を務める超党派議連が、「衆参対等統合一院制国会創設案」を提出したことがある。その案によると、衆議院と参議院を統合して一院としたたうえで、「国会議員の定数は、現行722人を3割(222人)削減し、500人以内として別に法律で定める」(編集部注:2012年当時の定数)と明記されている。この議連の顧問には安倍首相も名を連ねていた。国会議員数を500人まで削減すれば、計算上、年間約230億円もの税金が浮くことになる。 最後に、小選挙区制によって、選挙が「風向き」に左右され新人が大量に当選するので、これを廃止すべきだという意見に反論しておきたい。 この意見は、新人が未熟である、議員としての質が低い、つまり「チルドレン」ということからきているので、本来の改善策は質を向上させることで、システムの変更ではない。つまり、そのためにはどうすべきかを議論すべきだ。 実は、新人大量当選にも意義がある。それは、当選の反動で、たとえば「老害議員」が落選することが多くなったことだ。国会を昼寝の場とするような高齢議員がいつまでも実権を握り、当選回数によって大臣になるというような年功序列システムが残っているようでは、この国の未来は暗い。 もともと、「衆議院議員で5回以上、参議院議員で3回以上」が大臣の条件というのは、田中角栄内閣以降に確立されたものだ。それが、小選挙区制になり、小泉、安倍内閣などにより、現在はある程度崩壊してきている。もともと政党は、当選回数よりも見識、実力、知恵を重視する「メリットクラシー」(能力本位)でなければならない。そうでなければ選挙をやる意味がない。参院法務委で、「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案について、民進党議員の質問に対応する金田勝年法相(中央)=6月13日(斎藤良雄撮影) 本来、議員にもっとも求められるのは、国民の側に立った政策立案能力だ。だから、英語では議員は「ローメーカー」(立法者)と呼ばれるように、多くの法律が議員立法でできている。じつは戦後の日本も、人身保護法、優生保護法(現在は母体保護法)などの重要法案は議員立法で制定されている。しかし、保守合同と社会党の統一によって、与野党の勢力が固定したいわゆる「55年体制」が実現すると、議員立法は減少してしまった。 こうして、日本の国会議員の多くはローメーカーではなく「トラブルメーカー」になってしまった。それなら、議員数を思い切って削減したほうが、どれほど国民のためになるか、真剣に議論すべきときだ。

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    自民若手の連続不祥事 選挙が楽でカネと暇ある環境が一因

    議員(斎藤良雄撮影) そんな危機感も当人たちには届いていない。2012年組の大半は2014年の前回総選挙も楽々当選で2回生になった。そうなると、地元活動のための「金帰火来」(金曜に地元に戻り火曜に上京)を次第に怠り、「土帰日来」で地元後援者の目が届かない東京に長く滞在し、「ハナ月~ハナ金」を楽しみたくなる。 その舞台の一つが「議員宿舎」だ。臨時国会召集が見送られ、若手議員にはますます仕事のない“バカンス”となっていた昨年秋から年末にかけて、東京・青山の衆議院議員宿舎の一室では夜な夜な嬌声が上がっていた。青山宿舎は繁華街の六本木から目と鼻の先。部屋の主は六本木で飲み歩くことから「ポンギ組」と呼ばれる2012年組の議員だった。「部屋に呼ばれた人によると、中には数人の水商売風の女性と同期の議員たちがいて『相席居酒屋かよ』という状態。一緒に飲まないかと誘われた議員もいた。同じ部屋で何日も続いたのでたまりかねた近隣の議員から苦情が出ていた」 そうした苦情もあって騒音は止んだというが、「外で同じようなことをやっているのでは」(同前)といわれている。議員合コンの成果は上々? 2012年組は独身議員が多く、議員秘書や衆院事務局の若い女性、政治部の女性記者などに声をかけた合コンが頻繁にあるとの情報も多い。 議員合コンに出席したことのある女性秘書は、「中には感じのいい方もいましたが、官僚出身のあるセンセイは『僕はこれまで女性にフラれたことがないんだよね』とかいいながら、自分では連絡をせず一緒にいた男性を通じて『後で会いたい』と誘ってくるんです。何か男らしくないなとヒキましたね」と打ち明ける。 ただ、政治とは違って、こちらの2012年組の成果は上々のようだ。「ある30代の2回生は美人で評判の先輩議員の秘書と噂になり、“手が早い”と周りの同僚にやっかまれていた」(大手紙政治部記者) 女子アナを射止めた議員も少なくない。辻清人・代議士はNHKの出田奈々アナウンサー、日銀出身の小倉将信・代議士は2013年にテレビ朝日の島本真衣アナウンサーとゴールインした(2015年に離婚)。「スポーツ選手や芸能人ならともかく、国会議員が女子アナと結婚なんて私らの世代には考えられなかった。全員がダメだとは言わないが、今の若手は自分がタレントか何かと勘違いしている」 とは自民党ベテラン議員の述懐だ。小人閑居して不善を為す──安倍自民党の若手の不祥事が止まらないのは、「国会で仕事はなく、選挙は楽、そしてカネと暇はふんだんにある」という恵まれすぎた環境にある。それが安倍一強政権の力の源泉なのだから空恐ろしくなる。関連記事■ 自民若手 役人が作った法案通す委員会数合わせの採決要員に■ 細川氏出馬宣言に自民党色の緑ネクタイで臨んだ小泉氏の真意■ ベレー帽の元女性議員長谷百合子氏 ゴールデン街でバー経営■ 石破茂氏 解散決定時に国会内で使用制限の携帯メールしてた■ 丸川珠代 三原じゅん子の自民党内での台頭に愚痴をこぼす

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    三浦瑠麗が読み解く トランプが狂わせる安倍総理のゲリラ解散

    民党役員会に臨む安倍晋三首相(中央)ら=1月5日、東京・永田町の自民党本部(斎藤良雄撮影) 前回の総選挙ではアベノミクスは道半ばですと言って闘いました。自民党からすれば幸いにして、国民からすれば不幸なことに、現在の野党は体系的な経済政策を語る能力も意思もありません。したがって、国民の最大関心である経済政策について、自民党だけが経済政策を語り、国民も権力の負託を継続する意思を下したわけです。 今また、解散したとして、どんな大義名分で戦うのでしょうか。まだまだ「道半ば」ですが、それでも「この道しかない」と訴えるのでしょうか。野党には相変わらず、対案がありませんから、与党は勝つには勝つでしょう。ただし、現在の2/3水準の勝利ではなくて、過半数プラスアルファの水準となるでしょう。議席を大幅に減らして勝利宣言というわけにもいかないでしょうから、解散には踏み切れなかったということでしょう。 とはいえ、安倍政権が解散に踏み切れない理由、勢いを失っている、より本質的な理由について考えることは無駄ではありません。安倍政権は、来年の党総裁任期延長を睨み、戦後空前の長期政権になろうとしています。安倍政権への理解が、即ち、21世紀前半の日本政治を理解することとなりつつある。本日は、外交政策を中心に見ていきたいと思います。積みあがる外交成果 安倍政権の強みの大きな要素は外交でしょう。短命政権がコロコロ変わっていた時代を経験し、国民は安定した強い政権を望んでいました。安倍政権は、その期待に応え、外交成果を積み上げています。慰安婦問題に関する日韓合意、米大統領の広島訪問と総理の真珠湾訪問を通じた日米和解の演出、日ロ首脳会談に至る一連の動きなどです。 それらの成果が実を伴うものなのか、単に演出が優れているだけなのかは意見が分かれるところでしょうが、少なくとも、安倍政権には意味のある外交を行おうという意思が感じられる。そして、安倍総理以外の他のリーダーが総理の座にあったとして、安倍政権よりも良い結果がでるようにも思えない。 私は、国際社会の構造の問題として、そもそも、日本一国の意思で成果が出る部分というのは限られているのではないかと思っているからです。慰安婦問題も日米和解も全て構造次第韓国・釜山の日本総領事館前に設置された慰安婦像の前でパフォーマンスする市民=1月4日(聯合=共同) 日韓の長年の懸案事項であった慰安婦問題を解決する気運が高まったのは、日韓双方の同盟国である米国が強く促したからです。中国や北朝鮮と対峙する上で、日米韓という枠組みで臨みたい米国からすれば、日韓のゴタゴタは邪魔でしかないわけです。日韓双方の内政上は、慰安婦問題に関して歩み寄る気運はほとんどなかったけれど、米国の後押しが双方の政権の背中を押したわけです。もちろん、最後は双方の政権がぎりぎりの交渉を行って意義のある合意をまとめたわけですが。 今、釜山の日本領事館前に慰安婦像が設置されたことで、日韓合意が壊れようとしていますが、ここでも構造の問題に着目すべきです。韓国がどうして約束を守れないのか。韓国の政権は何故かくも脆弱であり、何故この時期に瓦解したのか。 韓国の大統領選を控え、勢いに乗る左派革新系の候補達は、日韓合意に反対しています。同時に、米韓で合意したTHAAD(高高度防衛ミサイル)に反対し、再び中国への傾斜を強めようとしている。米オバマ政権からトランプ政権への交代期に、日韓合意を後押しした構造が弱まり、別の構造が勢いを得ているのです。 日米の和解の演出が行われたのにも、構造的な要因があります。中国の到底平和的とは言えない台頭と、北朝鮮の核保有が既成事実化した現在にあって、日米同盟を強化することは重要である。他方で、金融危機とイラク戦争の失敗以後の米国は民主・共和両党の主流派はともに内向きになっている。結果、実のある日米同盟強化策は採用されず、演出に頼るようになる。オバマ政権も安倍政権も、演出が巧みな政権なので利害が一致する。そんなところでしょうか。 反発の大きかった安保法制を通したのは、実のあるものであり、自民党の保守として責任感と矜持が働いたのでしょう。その点は、歴史的に評価されるべきことと思っています。日本に厳しくなりつつある構造 日ロ首脳会談が、事前の期待値に比して意味のある成果を生まなかったのは、ロシア側に日本と妥協する意味がもはやないからです。ウクライナをめぐって欧米と対立し、経済制裁の対象となっているロシアは、本来は行き詰っています。 経済の高度化が叫ばれて久しいにも関わらず、エネルギー一本足打法の経済構造は変わらない。オリガルヒが特権を享受する疑似資本主義社会には腐敗が蔓延しています。ソ連時代からの兵器体系を維持し、プーチン大統領という有能なリーダーを戴いているせいで存在感を高めているだけです。その存在感さえ、米国の消極姿勢の反映という方が正しいわけです。 プーチン大統領は、自国の閉塞感をよく理解していますから、対日外交を一つの局面打開のツールにしようと思ったのでしょう。島の問題で、本当に妥協する気があったようには思えないけれど、少なくとも、妥協可能性を示唆することで日本側も動くと読んだ。安倍政権も、その構造を理解した上で敢えて乗った。ただ、結果から言えば、トランプ政権誕生を通じて、日ロ接近を支えた構造自体は吹っ飛んでいます。日本に厳しくなりつつある構造 初めの問いに戻りましょう。なぜ、安倍政権が1月解散を行わなかったか。安倍政権が勢いを生み出せない理由は、国際政治上の構造が日本にとって不利になりつつあるからです。オバマ政権期を通じて腰が引けていた米国は、トランプ政権を迎えて開き直って内向きになっています。経済交渉の文脈でも、安全保障上も日米同盟が盤石で、万能ということではなくなりつつあります。 その中で、安倍政権はどんな手を打つのか。構造が大きく変わろうとしているタイミングは、大胆な発想と行動力を持っていれば、好機にもなるものです。目下のところ、安倍総理を脅かす存在が見えない以上、政権の安定が日本の国益になる。解散云々と言っている場合ではないということでしょうか。

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    「酉年解散」安倍総理の本心やいかに

    酉年は激動、政変の年になるという。「12年前、あの劇的な郵政解散があった。その12年前は自民党が野党になり、55年体制が崩壊した歴史的な年だった」。年頭記者会見で「酉年解散」の故事を並べた首相の真意とは何だったのか。1月解散が見送られた今も憶測を呼ぶ安倍総理の本心やいかに。

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    安倍首相が「1月解散」を見送った5つの理由

    川上和久(国際医療福祉大学教授) 第47回衆議院議員選挙が行われたのは、2014年(平成26年)12月14日。衆議院の任期は4年だが、解散があるため、これまでの衆議院の任期の平均は、約2年半にしかなっていない。だから、「衆議院の任期が2年を過ぎたら常在戦場、解散はいつでもあると思え」と永田町では言われている。今回の任期が満了するのは2018年(平成30年)12月だから、すでに2年を過ぎているが、今年の1月末現在、衆議院は解散されていない。 昨年は、「安倍首相が解散総選挙に踏み切るのではないか」との憶測がしきりに喧伝された。夏に行われた参議院議員選挙とダブルではないか、との憶測もあったが、熊本大地震等で「ダブル選挙どころではない」との声が上がり、ダブル選挙は見送り。10月に入ると、二階俊博自民党幹事長が記者会見で、「選挙の風が吹いているか吹いてないかと言われれば、もう吹き始めている。これだけだんだん風が吹いてくると、今、準備に取りかからない人がいれば論外だ」と述べ、特に当選回数が少ない代議士に対して、選挙の準備を急ぐべきだとハッパをかけた。 この時期は、ロシアのプーチン大統領の来日を控え、「北方領土返還交渉に進展があるのではないか」との期待が高まって、12月の日露首脳会談の成果を掲げて「北方領土解散」に踏み切るのではないか、などとも言われた。 しかし、一説には日本のメディア報道で疑心暗鬼になったともいわれているが、プーチン大統領はその後態度を硬化させ、北方領土返還交渉どころか、むしろ、対露経済協力の「食い逃げ」批判などが高まる結果となり、日露首脳会談の成果を掲げての解散総選挙のタイミングも逸した。ロシアのプーチン大統領(左)を出迎える安倍首相=平成28年12月、山口県長門市(代表撮影) 衆議院の任期満了まであと2年を切った段階で、近々の解散総選挙はあるのだろうか。いくつかの国内事情から、解散総選挙は遠のきつつある、というのが私の見立てだ。外交安全保障や経済情勢の急激な変化などの外的要因は措くとして、ドメスティックな事情に絞ると、いくつか理由がある。 第一は、2014年の衆院選で自公が獲得した議席を維持できる見通しが必ずしも立たないこと。自民党は、選挙前の295議席から、追加公認の1名を合わせて291議席と4議席減らしたが、選挙前の31議席から35議席へと議席を4つ増やした公明党と合わせれば、326議席。無所属や保守系政党を入れなくとも、衆議院での議席の占有率は68.6%と3分の2を上回っている。 憲法改正への道筋は容易ではないものの、改憲勢力が3分の2を下回れば、どういう形でやるにせよ、安倍政権下での憲法改正の可能性がなくなってしまう。憲法改正の発議の可能性を残すためにも、リスクを負わない、ということがありえる。解散時期を延ばせると見た安倍政権 第二は、政策を実行するための一つのメルクメールである内閣支持率が、未だに50%を超えているということだ。たとえば、時事通信が1月6~9日に実施した世論調査では、安倍内閣の支持率は前月比2%増の51.2%。2カ月ぶりに5割に戻り、政権発足後4年以上経っているのに、50%台という高い支持率をキープしている。不支持率は3%減の26.5%だった。茂木敏充政調会長(右)と談笑する安倍晋三首相=平成28年11月 同じ調査で、憲法改正について「優先的に取り組む政治課題ではない」が49.5%、「優先的に取り組む」は36.5%で、慎重な扱いを求める声が依然として多いのが懸念材料ではあるが、高い内閣支持率を背景に、「解散総選挙に打って出る」よりも、「政策をできる限り実行する」ことで、評価を安定させるほうが得策、との計算が働く可能性のほうが高い。 第三は、政党支持率も「一強」の名を欲しいままにしているということだ。同じ調査で、政党支持率は自民党が前月比2.7ポイント減の23.6%。民進党は増減なしの4.4%。公明党3.4%、共産党1.6%、日本維新の会1.5%。小選挙区でほとんど公認候補擁立作業を終えている自公に比して、野党系はまだ候補者の擁立作業も終わっていないところも多く、競合する選挙区の調整もまだ終わっていない。 しかし、民進党の支持母体である連合から、「共産党との共闘はあり得ない」との声が漏れていることに象徴されるように、野党共闘の足並みは乱れがちだ。この不協和音は、政策の違いもあり、簡単に解消するものではない。 「安倍一強打倒」で大同団結して、野党支持者が野党統一候補にすべて投票するかというと、解散を引き伸ばしたから態勢が整う、というものでもあるまい。解散の時期を延ばしても、この状況はさほど変わらない、と安倍政権は踏んでいるのではないか。 第四は、2019年10月に消費税率の10%への増税を控えていることだ。経済状況の劇的な変化もないうちに、「消費税率10%のさらなる延期」を謳うのは、いかにもポピュリズムの誹りを免れまい。 経済状況の変化を見ながら、どうしても10%への増税をさらに延期しなければならないかどうかのタイミングを計り、特段の問題がなければ10%への増税を前提として、2019年秋に解散、というシナリオもありだろう。法律に基づいて、粛々と増税を行う、というのであれば、民主党時代に「税と社会保障の一体改革」を主導してきた責任上、最大野党の民進党も争点化しづらいだろう。 第五は、2015年の国勢調査に基づいて行われる、小選挙区の区割り調整だ。衆院の定数は2016年5月、改正公職選挙法の成立で465と10議席減ることになり、選挙区の定数は青森、岩手、三重、奈良、熊本、鹿児島の六県で1つずつ減る。小選挙区は289議席、比例は180議席から176議席になる。カギになるのはやはり「改憲」 問題は、新しい区割りだが、政府の衆院選挙区画定審議会が5月27日までに決定し、改正公選法が国会で成立し、1か月程度の周知期間を経て施行されることになる。それまでの間に解散・総選挙を行えば、最高裁が「違憲状態」と判断したままで解散・総選挙を行うことになり、司法の判断を無視した、ともいわれかねない。 その間、他の選挙区の区割りの変更も行われるので、新しい選挙区で各議員らが票を掘り起こしていくのに、新しい選挙制度のもとで行えるからすぐに、というわけにもいくまい。 では、安倍政権は、解散を先送りして、何を目指していくことになるか。それはズバリ、現在の世論が必ずしも前向きではない「改憲」だ。現在、改憲に向けての議論は百家争鳴、停滞気味だ。日本維新の会が主導している「高等教育までの無償化」が改憲項目案として浮上したかと思えば、自民党内では、「緊急事態条項」や「環境権などの新しい人権規定」などに賛成論が多い。 今のところ、憲法審査会での審議の中で、改憲項目の絞込みには至っていない。この状況では、この衆議院の任期中、つまり、いわゆる「改憲勢力」が3分の2を占めている間に衆参で改憲を発議することは、各党の思惑が交錯して、困難をともなうのではないか、というのが大方の見方だ。衆院本会議の代表質問で答弁する安倍首相=2017年1月24日 しかし、それでは、「改憲勢力」が3分の2を占めている間に、手をこまねいて何もしないでいいのか。落としどころはないのか。発議のカギは、自民党、公明党、日本維新の会等の「最小公倍数」ではなく、「最大公約数」を探す、ということだろう。それは、「自衛隊を合憲ときちんと位置づける」の一点ではないかと私は考える。 戦後、憲法の中で、条文上、自衛隊は違憲であるという学説も根強い。しかし、「自衛隊を合憲の存在として位置づける」という一点に関しては、一部左翼を除いては、民進党でもむしろ賛成のほうが多いのではないか。 安倍政権は、百家争鳴の憲法改正論議の中で、解散・総選挙を先送りしてでも、自衛隊を合憲の存在としてしっかりと位置づけた政権として歴史に名を残してほしい。

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    安倍総理よ、今こそナショナリズムに舵を切れ

    り頼れない事態が続くのだ。小池都知事にストッパー 国内政局的には、年内あるいは年明けと見られていた総選挙を先送りし、都議選を挟んだ秋以降に実施することが確実となった。年始末総選挙の先送りは、昨年秋ごろ稲田朋美防衛大臣や城内実衆院議員らと会談した時に、消極的な意見を伝えていたとされ、ある程度予測されてはいた。沖縄や東北などの地方では、まだまだ民進党などのリベラル勢力が強く、安易な総選挙突入は議席を減らすだけと見られていたからである。小池百合子東京都知事 しかし、解散総選挙は時期を延ばせば延ばすほど、自民党に有利になって勝利が確定するというわけではない。とりわけ「小池新党」が徐々に姿を現している東京都では、安倍総理のいる自民党に対し「和戦両様」の構えで臨む小池百合子都知事に、ストッパーをかけておかなければならなくなるだろう。 他のテーマでも、例えば天皇陛下の譲位をめぐる問題では、安倍総理が特別法の制定を目指しているのに対し、民進党や社民党、共産党などはこぞってそれに反対し、「皇室典範の改正」に狙いを絞っている。 民進党の細野豪志衆院議員は、衆議院予算委員会で「天皇陛下に人権はあるのか?」などというリベラルな質問に終始していたが、現在は自民党や維新の党が特例法の方向で議論を行い、リベラル政党が「女性・女系天皇検討」も視野に入れた「皇室典範の改正」にひた走るというおかしな構図になっている。  ちなみに、現在の皇室典範を全面的に改正するためには、もう一度戦後皇室制度のあり方を根本的に議論しなければならないと私自身は考えているが、日本の歴史や伝統を遠ざけた安易な議論を行う野党は、いつまでたっても国際的な時流に乗り遅れるだけだろう。影響力を失うリベラル 憲法改正についても、世界がどんな趨勢になっても憲法改正にはあくまで反対をする「リベラル派」と、改正に現実的になっていく「現実保守主義者」とでは、今後日本人の将来に大きな「格差」が生まれてくる。 現在の世界と日本の政治・経済情勢は、旧来型の「保守勢力」だけでなく、トランプ大統領を支持する「経済保守」、あるいは国益を守ろうとする「ナショナル・リベラリスト」と呼ばれる勢力が伸張し、従来の「平等・人権」を正義論として訴えていた「リベラル派」の勢力は、どんどん縮小しているのだ。 今後、安倍政権をめぐる問題が起きるとすれば、この「トランプ新時代」に通用する保守主義者や現実主義者をどう生かし、思想的にトランプ大統領を受け入れられる「保守・現実主義者」と、従来の思想を変えられずついていけなくなる「リベラル主義者」の「思想格差」の問題だと思われるのである。 つまり、国家の価値観を大事にしてきたナショナリストや「ナショナル・リベラリスト」を含めた現実保守派が、過去の「世界市民的」な価値観を大事にしてきた古いリベラル勢力を大きく塗り替えようとしているのだ。 オセロゲームで言うと、オセロ盤がこれまで黒色で占められていた石が、どんどん白色に変わっていく姿を思い浮かべれば良い。従来は、移民や難民に対しては「寛容」、日本の歴史や伝統には常に否定的で、「人権」や「平等」を訴えるだけの「リベラル勢力」は、今後ますます影響力を失っていくはずなのだ。 トランプ大統領の強引なやり方には、今後対立する層との批判や摩擦が生じるだろうし、国際情勢や世の中についていけないリベラル勢力とのギャップが生まれることは確実だ。しかし、その両者の勝敗が明らかになった時に日本国内で政官界や経済界、マスコミ界が「トランプ批判」だけに明け暮れていれば、自分の足下の現実に気付けないリベラル一辺倒できた者たちは、気づいた時には「思想的弱者」になっているかもしれない。  第二次政権誕生以来、安倍総理はリベラルなオバマ大統領と合わせながら、リベラルな政策を次々に取り入れ、うまくバランスを取ってきた。安倍総理は、日本と世界の思想の潮流の見極めを大事にしてきたからこそ、これまでの地位を築いてきたのだ。 しかし、その安倍総理自身が今後「ナショナリズムという本来の保守」に舵を切る機会があるとすれば、世界情勢が「リベラルの衰退」という状況になったと見極めた時である。その時こそ、総理は勝負をかけた解散総選挙に踏み切るに違いない。

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    安倍首相が吹かす解散風に踊り、慌て、飛ばされる与野党議員

    。こちらの“主役”は安倍3選を可能にする総裁任期延長で功績を挙げた額賀派の茂木敏充・政調会長だ。 総選挙後には衆院議長が交代するのが慣例。次の議長候補だった谷垣禎一・前幹事長が病床にあることから、代わって額賀派会長の額賀福志郎氏が有力候補に挙がっている。 ここで解散になれば茂木氏にはチャンスだ。「額賀氏が議長になれば離党しなければならないから派閥の跡目問題が起きる。役職経験からも有力なのは茂木さんで、派閥領袖になれば石破、岸田と並ぶポスト安倍の有力候補に浮上できる。慎重な人だから表立って言わないが、選対委員長時代から早期解散準備をしていた」(自民党選対幹部) 一方、衆院選となれば交代が確実視される現衆院議長の大島理森氏は解散反対のようだ。国会ではこれから皇室会議のメンバーでもある衆参の正副議長による天皇の生前退位をめぐる協議が始まる。まさに「歴史的事業」を前に、議長の座を失いたくないはずだ。 安倍政権中枢の解散慎重派は菅義偉・官房長官。昨年の参院選前にも、衆参同日選を考えていた安倍首相を「せっかく衆院の3分の2の議席があるのだから、議席を減らすリスクのある解散はすべきでない」と思いとどまらせたとされる。「いま解散なら政敵の二階幹事長が選挙を仕切ることになる。菅さんの本音は、いずれ解散しなければならないなら、次の内閣改造で幹事長となり、自分の手で総選挙を仕切りたいと考えている」(菅氏側近) こう見ると、永田町で解散風が止まらないのは、解散時期が党利党略ではなく私利私欲に深く結びついているからだとわかる。蓮舫と野田は風を逆利用 解散を煽っているのは自民党だけでない。公明党の山口那津男代表は党本部の仕事始めで「常在戦場で臨まなければならない」と檄を飛ばすなど、解散待望の姿勢だ。 今年夏には公明党・創価学会が力を入れる東京都議選が控えている。小池百合子・都知事率いる「小池新党」のファクターによって大きく左右されるため、選挙戦術上、総選挙と都議選の日程が近づき過ぎないようにしたい事情がある。さらに大きいのは、来年1月2日に池田大作・創価学会名誉会長が90歳の誕生日を迎え、祝賀行事が計画されているとみられることだ。「選挙が年末まで延びて、万が一、池田名誉会長の生誕祭直前に公明党が議席を減らす事態になれば、執行部の責任が問われる。だから早めに選挙をやってほしいわけです」(古参会員)2016年10月、民進党全国幹事会に出席する蓮舫代表。右隣は野田佳彦幹事長=東京都千代田区(撮影・春名中) 野党の民進党でも、蓮舫・代表は昨年暮れから「1月解散になる」と言い、野田佳彦・幹事長も「通常国会の早い段階の解散」に言及し、解散風を吹かせている。だが、事情は安倍首相とは正反対。民進党の反主流派議員が皮肉たっぷりに明かす。「蓮舫も野田も今や党内の求心力は全くない。彼らが解散、解散と騒ぐのは、反執行部派への“批判すれば公認しないし、選挙費用も面倒見ないぞ”という脅し。選挙に負けたら即、蓮舫下ろしが始まるから、本当は解散が恐いはずだ」 こちらも自分たちのことしか頭にない。湯淺墾道・情報セキュリティ大学院大学教授(政治制度論)が国民無視の解散狂騒曲をぶった切る。「衆院解散は本来、行政府と議会が国政の重要課題で対立し、抜き差しならない状況に陥ったときに行なわれる。そのために憲法では、議会に内閣不信任案という刀を与え、行政府の長の総理に国民の信を問うための解散権を与えている。しかし、現在の国会にそんな重要な政策対立など起きていない。一体、何のための解散で、国民に何を問うのか。新聞もその点を論じるべきでしょう」 何のために解散するのか。その答えは安倍首相も、右往左往する面々も、誰も口にしない。関連記事■ 石破茂氏 解散決定時に国会内で使用制限の携帯メールしてた■ 衆院解散風の威力強大 病床の甘利明氏を立ち上がらせる■ 安倍首相 集団的自衛権の是非問う解散総選挙を仕掛ける説も■ 衆参ダブル選挙 18歳選挙権拡大が混乱の大きな火種に■ 民進党と共産党の選挙協力で衆参W選に自民党の勝算立たず

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    衆議院解散時期にも影響する小池新党の行方

    ところではない。国政にも進出する小池新党 あくまでも東京都内での対立構造に留めておきたいのだ。都議会選挙では「小池新党」が立候補者を擁立するものの、国政においては、自民党員の顔として振る舞うというシナリオだ。私はこれが最も可能性があると考えてきたが、7人の侍の件で、小池知事は都議会自民党と真っ向対立の構造を選択した。こうなるとローカルパーティとしてのみ留まるのは難しいかもしれない。シナリオB 国政にも進出する小池新党 現在の勢いであれば、小池新党を設立して、一気に国政にも進出することは可能だ。東京都議会の問題は全国ニュースとなり、小池新党に共感を持つ人は少なくない。日本維新の会との連携である一定の議席を獲得することも見込める。とはいっても、衆議院の小選挙区制のもとでは議席の獲得は限定的となる。現実的なのは日本維新の会の共同代表に松井一郎氏と一緒に就任して、東京都知事と大阪府知事が率いる政党とする構想だ。大きな第三極となりうるもので可能性は否定できない。新生維新の会は日本の政界の台風の目になり可能性がある。自民党の票も民進党の票も食うだろう。記者会見する小池百合子都知事=1月27日、都庁 可能性が最も高いのは小池新党としてローカルパーティで始めて、途中で国政では維新の会と合併するというものだ。この可能性とスピードは、安倍政権の小池知事への姿勢とともに、解散総選挙の時期などが密接に絡む。安倍政権は、小池新党が国政政党を目指したり、日本維新の会と連携を進める前に、解散総選挙をしてしまうという可能性が高くなった。都議会選挙での対立は仕方ないとしても、国政選挙に小池フィーバーが入り込まないようにするには、できるだけ早く解散をして、準備が整わないようにするのが一番だ。二階幹事長は年内解散はない、と明言しているが、まだこの線は残っている。年末年始で新たな動きが出る前に、打って出るというものだ。年末解散がなくても年始解散は避けられないと予想している。 小池新党の動きは都議選をにらんでもう少しゆっくりしたものになると予想していたが、事態は急変しつつある。まだ小池知事はルビコン川を渡っていない。渡るかどうか、決断を迫られている。(「Yahoo!ニュース個人」より2016年12月12日分を転載)

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    安倍自民に陰り? 解散に二の足を踏ませた衆院補選

    室伏謙一(政策コンサルタント) 10月23日、衆議院小選挙区東京10区と福岡6区の補欠選挙が行われ、いずれも自民党系候補が当選した。多くの報道では自民党の2勝、国会審議や解散総選挙に弾みがついたとされ、巷では対する野党連合の敗北が過剰に喧伝されているようである。しかし、今回の二つの補欠選挙、その構図は与野党対決ではなく、与党内対決であった。 まず、東京10区、小池都知事と小池都政を支持する自民党都議・区議グループとそれを後押しする官邸、これに対峙する自民党都連という構図。若狭陣営、都知事選の時の小池選対がそのまま若狭選対に代わったと、記者会見で選対関係者が表現していたように、事実上小池選対であり、なぜそれで機能できたのかと言えば、選挙における対立の構図が実質的に同じだったから、ということであろう。衆院東京10区の補欠選挙で当選を決め、笑顔で花束を掲げる若狭勝氏(中央)。左は東京都の小池百合子知事=2016年10月23日、東京都豊島区 事実、若狭候補は選挙戦中主張していたのは安心安全や公正さという抽象的な主張以外は東京や都政のことがほとんどであり、野党が主張していたような年金、アベノミクス、TPPなどは出てこなかったと言っていい。もっと言えば主張する必要はなかったし、しない方がよかったといったところだろう。22日朝に掲載した拙稿にも記載したとおり、若狭氏の役割は小池都政を強力に進めていくための国における連携役(これはご自身で語っていた話)であり、当選の記者会見に同席していた小池都知事も、今回の選挙結果を「東京大改革を進めよ」との有権者の意思だと語っている。 要するに、東京10区の補選では、若狭陣営、もとい小池陣営は野党候補など最初から眼中になかったということだろう(ここを見誤ってはいけない)。では、野党連合は相手にもされない戦いに不毛な努力をしていたのかと言えば、必ずしもそうとも言えないようである。 今回の補選、投票率は34.85%で、若狭氏の得票数は75,755票、対する鈴木候補の得票数は47,141票、得票率にして若狭氏は60.3%、鈴木候補は37.5%。これを前回の衆院選(投票率53.56%)と比べてみると、当選した小池氏の得票数は93,610票、旧民主党の江端候補の得票数は44,123票、得票率にして小池氏50.7%、江端候補23.9%。前回の衆院選は野党候補が乱立していたところ、得票率で見ると今回よりも低い。 ちなみに共闘のため候補者を降ろした共産党、前回の衆院選での得票率は15.4%。単純な比較はできないものの、前回の民主、共産両党の得票率を足し合わせると、今回の得票率に近くなる。つまり野党共闘が効いたと考えることができるわけであり、過去数回の選挙で、比例復活となった民主党への政権交替選挙も含めて小池氏がその強さを誇ってきた選挙区における、連日利権と闘う小池知事の姿が報道される中での戦いとしては、意外と善戦であったと言えるのではないだろうか(取材で訪れた民進党の街宣での蓮舫代表の空回りの演説に辟易し、シラけて聞いていた筆者から見ても、である)。機能し始めた「野党共闘」 次に福岡6区、こちらは元大川市長で故鳩山邦夫氏のご子息の鳩山二郎氏と自民党福岡県連が推す蔵内謙氏という、いずれも自民党系の候補による一騎打ちという構図。各候補の後ろには、鳩山氏には菅氏、蔵内氏には麻生氏がいて、その代理戦争とも言われている(先の参院選の神奈川選挙区における三原じゅん子氏と中西健治氏の戦いと同じ構図)。 民進党については、前回の選挙の際には旧民主党として候補者を立てられなかった。その結果、対抗馬が共産党候補のみというほぼ無風状態で、故鳩山邦夫氏が得票率72%、得票数116,413票で圧勝している。そもそも自民党から民主党に政権交替した平成21年の第45回衆院選でも、民主党の古賀一成氏は故鳩山邦夫氏に勝てず比例復活という状況。つまり福岡6区は鳩山王国ということ。 ちなみに、民進党が旧民主党として候補者を立てた前々回、第46回衆院選での得票数は47,643票、得票率にして22.6%。新生民進党として久々に候補者を立てた今回の選挙ではどうだったかと言えば、鳩山二郎氏の106,531票、得票率62.24%に対して、民進党の新井候補は40,020票、得票率23.38%。第46回選挙の投票率が58.66%であったのに対し、今回は45.46%と大幅に低かったことを考えると、こちらも意外と善戦だったと言っていいのではないか。なお、鳩山二郎氏の真の対抗馬である蔵内謙候補は得票数22,253票、得票率は13%と、民進党候補にも及ばなかった。当選確実になり、支援者と握手を交わす鳩山二郎氏=2016年10月、福岡県久留米市 さて、そうなると気になるのは国会審議以上に解散総選挙の有無。年末説やら年明け冒頭解散説やらあるが、結論から言えばいずれも可能性はなくなった、と言っていいのではないか。その理由としては、まず今回の二つの補選で野党共闘が十分機能していることが、前述のとおり明らかになったことがある。 次に、これら2選挙区以外の選挙区、例えば東北地方等で反安倍、反アベノミクスの勢いが強まっていることがある。これは先の参院選の結果からも分かる。反アベノミクスと野党共闘、この二つが結びつけば、自民党が惨敗する可能性も否定できない。一方そうした地域のテコ入れには、ある程度の時間がかかる。そうなると軽々に解散総選挙などできようがない。 朝日新聞の報道によれば、自民党の二階幹事長は記者団との質疑において、「謙虚に、勝ったときほど謙虚にやっていかなきゃいけない。(東京10区と福岡6区の衆院2補選という)この二つ選挙に勝ったからと言ってですね、日本国中で自民党が支持されているかどうかということは、これからも慎重に我々は検討して対応すべきであって。いま言われたような(衆院解散・総選挙への影響という)問題については、まったく考えておりません。この事態を受けて、ね」と話されたという。さすがのご達観、というべきだろう。(室伏謙一「政治・政策を考えるヒント!」より2016年10月24日分を転載)

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    「解散」で皆が慌てるのを総理は楽しんでいるのでは?と側近

    」そうハッパをかけ、夕方の時事通信社主催の新年互礼会では一転、こんな挨拶をした。「酉年であれば必ず総選挙というわけではない。今年は全く考えていないということははっきりと申し上げておきたい」自民党本部の新年仕事始めであいさつする安倍晋三首相=1月5日(斎藤良雄撮影) 衆院の解散権は総理大臣だけに与えられた強権で、いつ、解散を打つかについて「首相は嘘をついてもいい」というのが昔からの政界の不文律だ。だから“やる”と言おうが“やらない”と言おうが、眉に唾付けて聞いておいた方がいい。 ところが、この発言をめぐって報道は迷走し、憶測が乱れ飛んだ。 その夜の正副官房長官会議で安倍首相が「今年はない」発言を訂正し、出席者の1人が記者団に「『今月』と『今年』を間違えたようだ」と説明すると、翌日の新聞各紙は〈首相に近い人物が解散がない時期を「1月のみ」に限定したことで、かえって年内解散の臆測が広がりそうだ〉(日経)などと書きたてた。 風向きは、また変わる。6日に官邸を訪れた荒井広幸・元参院議員らに安倍首相は、「今月ないと言えば、かえって来月はあるのかということになる。だから、今年はないと言った。解散は全く考えていない」と間違いではなかったと説明。8日の『日曜討論』(NHK)で「予算案の早期成立に全力を尽くす。その間、解散の『か』の字もおそらく頭には浮かばないだろう」と発言すると、各紙は〈解散 秋以降を示唆〉と報じた。 それでも、有力紙の幹部は「安倍さんの死んだふり解散だ。自民党執行部筋から1月20日の通常国会冒頭解散の情報が入った」と選挙報道の準備を進め、自民党参院議員もこう語る。「仕事始めからの総理の一連の発言で、“こりゃ、解散はあるな”と思った。おちゃらかしているのが怪しい。あれだけ外交好きの総理が2月に外遊日程を入れていないし、慰安婦合意で韓国から大使を一時帰国させるなど強硬姿勢を取っているのも選挙をにらんだ保守層へのアピール。ズバリ投票日は2月19日の大安だ」 だが、ある安倍側近は笑いながら話す。「年始の総理は確信犯的にどうとでも取れる言い方を繰り返している。議員も新聞記者も口先一つで右往左往する様子を楽しんでいるとしか思えない」 解散の「か」の字を言っただけで、これだけ周囲が踊ってくれるのだから、安倍首相は呵々大笑に違いない。関連記事■ 石破茂氏 解散決定時に国会内で使用制限の携帯メールしてた■ 衆参同日選 「政治記事の確度高い」読売の見送り報道で沈静化■ 安部首相ウェブマガジンから44本の記事を厳選・再録した本■ SAPIO人気連載・業田良家4コママンガ【1/2】「集団的自衛権」■ SAPIO人気連載・業田良家氏4コマ「例え話国会」

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    「支持政党なし」って本当にありですか?

    注目されたが、一方で「紛らわしい」「詐欺まがい」との批判も相次いだ。彼らの活動は政治不信のはけ口か、選挙制度への冒とくか。解散風が吹き始めた今こそ、この問題を真剣に考えたい。

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    「愚かな若者は選挙に行くな」という森達也氏の奇妙な論理

    の若者は愚かで、自民党の危険さを見抜けない。だから、自民党の危険さを見抜いているような賢い人間だけが選挙に行ってほしいというわけだ。 自民党に投票する若者は馬鹿だから、選挙に行くな、という主張を繰り返しているに過ぎない。 何度読み返してみても、とんでもない主張だ。 そもそも同調圧力がないというアメリカではトランプという極端な候補が支持を集めており、世界がその動向を危うんでいる。そんなにアメリカの若者が優秀なら、どうして、彼を支持する人々が多いのだろう。 そして、この意見が傲慢に過ぎるのは、若者を一くくりにして「同調圧力に弱い」、「政治を知らない」と決めつけているからだ。本当に若者は、同調圧力に弱いから自民党を支持しているのだろうか?頭が悪いから、自民党を支持しているのだろうか?森氏のいうように、護憲の立場から、自民党に投票するというちぐはぐな行動をする若者ばかりなのだろうか? 「互いに連立政権を組むことは出来ない」といいあっている野党同士が反・与党のスローガンだけで政治を語っていることに対する不審感を持つ若者だっているだろう。 意見の異なる相手に向かって「お前は人間じゃない。叩き斬ってやる!」などと獅子吼する政治学者に支援される野党に嫌悪感を抱く若者もいるだろう。 私は選挙権を18歳に引き下げることには反対した一人だ。だが、選挙権が与えられた以上、選挙権を行使すべきだと考えている。仮に森氏のような主張を真に受けて、「自分は若すぎて判断が出来ない」などと考えて、投票所に足を運ばなければ、全く政治に興味関心がない世代という烙印を押されることになってしまう。それは避けた方がいい。 現代民主主義の長所でもあり、短所でもある特徴は、知性の有無によって投票者を差別しない点にあるといってよいだろう。賢い人の判断だけが必要だというならば、制限選挙を実施するしかないが、そうした制限選挙を求める人は少ないはずだ。 政治のプロである政治家を学歴、所得に関係なく一般の国民が選出する。それが現代の民主主義なのだ。もちろん、完璧なシステムではない。だから、時に誤る。しかし、誤ることを恐れて政治に無関心であればよいということではない。 出来るだけ、冷静に判断し、自分自身の一票を投じればいい。サッカーや野球は独裁国家でも楽しめるかもしれないが、公正な選挙というイベントは民主主義国家でのみ成立するイベントだ。 自分たちと同じ意見をいう若者を「賢い若者」、自分たちと異なる意見をいう若者を「愚かな若者」、選挙に行く資格すらない若者とみなすような傲慢な老人の説教に耳を傾けるべきではない。(2016年07月09日「岩田温の備忘録」より転載)

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    政治団体とは思わずに投票? 「支持政党なし」間違い票は否定

    (THE PAGEより転載) 10日に投開票された参議院選挙では、ある政治団体が議席を獲得するのではないかと注目を集めていた。その名前は「支持政党なし」。選挙区や比例区に10人を擁立し、比例代表では60万票以上の得票があったが、結果は議席ゼロ。代表の佐野秀光氏は11日未明に東京都大田区の事務所で会見し、「支持政党がないという人の心の声が届けられた」と手応えを語った。一方で政治団体名とは思わないで投票する「間違い」票については「今回の参院選ではほぼない」と否定。支持政党がない人の思いのぶつけ先をつくれば投票率が上がるのではないかと語った。政治団体とは思わずに投票? 政治団体「支持政党なし」が国政選挙に出たのは今回が初めてではない。代表の佐野氏は、2009年の衆院選の比例代表北海道ブロックに「新党本質」という政治団体として立候補したが、1万票にも満たず落選。しかしその後、「支持政党なし」として出た2014年の衆院選の比例代表北海道ブロックでは、約10万票を獲得した。こうしたことから、今回の参議院選では、初の議席を獲得するのではないかという観測もあった。 同団体は、比例区に佐野代表ら2人、東京選挙区に4人、北海道、神奈川、大阪、熊本に1人ずつ公認候補を立てていた。しかし、選挙区は全滅、比例区も60万票以上を得たものの、議席を得ることはできなかった。 メディアの世論調査などでは「支持政党なし」が4割を超えることもある。しかし、これは政治団体の「支持政党なし」ではない。そのため、同団体の得票は、支持されて得たものではなく、間違って書かれたものが含まれるのではないかという指摘がある。 しかし佐野代表は、今回の参院選の得票については、その見方を否定する。「衆院選では支持政党がなく入れるところがないから、『支持なし(同団体の略称)』と書いた人もいると思うが、今回の参院選の投票では、明らかに政党名、略称、その隣に候補者名が書いてあるので、『間違い』はほぼないと思う。積極的に支持政党のない方が書いてくれた票だと思っている」。投票に行ったけど裏切られた思いも?投票に行ったけど裏切られた思いも? なぜこんなまぎらわしい名前をつけたのか。実際、佐野代表も「まぎらわしい名前ゆえに誤解されているところがある」と認める。佐野代表はこう説明する。「支持政党のない人たちが大変多いにもかかわらず、今まで(そうした人の)心の声が届かなかったのが一番問題だと思ってつくった」。 今回の投票率は前回を上回ったものの、52.61%と過去4番目の低さとなった。「世の中の半分くらいが選挙に行かない。(その背景には)いままで投票に行ってきたけど裏切られてきた、という思いがあると思う」と政治不信を持ち出し、「支持する政党がないという人たちの『ぶつけ先』をこうして作れば、次回は投票率が上がるとまでは言えないが、いままで行かなかった人が行ってくれるのではないか」と期待する。「今回(支持なしに)入れてくれた人は、次回も投票に行ってくれると思う。その票数が数字として出る。それだけでも満足してもらえるのではないか」「政策一切なし」方針の意図は? 同団体は「政策一切なし」を掲げている。「法案の採決にネットやスマホで参加できる」として、国会に提出されるすべての法案について、インターネットなどを通じて、賛成か反対か意思決定に参加してもらうシステムの導入するという構想だ。その際、同団体のサイト上で、その法案について、賛成と反対の立場で分かりやすく解説し、理解を深めた上で「議決」してもらうのだという。そして、その結果、賛成が6割、反対が4割であれば、その比率に応じて、国会の採決の場で、所属議員がそれぞれ賛成票と反対票を投じるとしている。 政策が一切ないというのは、政党としては無責任のようにも見える。そうした批判に対しては、「1議席取れるかどうかわからないところが、政策を打ち出した時点で、それこそ嘘つきの始まりだと思っている。できないような政策を言うなら、その時点で有権者を裏切っていることになる」と述べ、「無責任に政策なしと言っているわけではない」と強調した。 議席獲得こそならなかったが、「支持政党がないという人たちの心の声を届けられた。意義はあった」と語る佐野代表。「支持政党なし」としての活動は、次の衆院選を視野に、今後も継続していくという。

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    政治にしがらみはいらない、野党共闘は「支持なし」戦法に学べ!

    神田敏晶(ITジャーナリスト) 7月の参議院選挙では「支持政党なし」に注目していた。まずは、「支持政党なし」というユニークな政党名だ。思わず、記名式ではなく、チェックシート形式の投票用紙であれば、チェックしてしまいそうになるだろう。一部でその政党名を批判する人も少なくなかったが、この政党名は声なき声を反映した政党名だと感じた。しかし、候補者の名前を調べてもWikipediaで掲載されているのは代表者の佐野秀光氏だけだ(https://ja.wikipedia.org/wiki/佐野秀光)。ユニークな泡沫くささも感じるが、参議選の戦い方でどういう結果になるのかをウォッチしてみた。 結果として参議院選挙では「支持政党なし」から議員は誕生しなかった。しかし、候補者を擁立した政党の中では12政党中9位の得票数を得ていた。つまり10位「新党改革」11位「国民怒りの声」12位「幸福実現党」よりは『支持政党あり』だったのだ。これは、「泡沫政党」とはいえない集票だったと思う。ただ、「支持する政党」なしと、勘違いして投票した人がどれくらいいたかは現在の選挙システムではわからない。比例代表獲得数ランキング1位 自民党 20,114,788票(得票率35.9%)2位 民進党 11,750,965票(得票率21.0%)3位 公明党  7,572,960票(得票率13.5%)4位 共産党  6,016,195票(得票率10.7%)5位 お維新  5,153,584票(得票率 9.2%)6位   社民党   1,536,238票(得票率2.7%)7位   生活の党  1,067,300票(得票率1.9%)8位 日本のこころ 734,024票(得票率1.3%)9位 支持政党なし 647,071票(得票率1.2%)10位 新党改革     580,653票(得票率1.0%)11位 国民怒りの声 466,706票(得票率0.8%)12位 幸福実現党  366,815票(得票率0.7%) 政党としては、候補者を擁立した12党中の第9位だった。代表の佐野秀光氏の得票数は31,334票で63.5%を占めた。もしも、公明党の比例代表(最下位は18,571票で当選)であったら、確実に国会議員として当選していただろう。この数字をどうみるかだが、政党交付金の交付対象となる政党が2%の得票率なので、11位の「国民怒りの声」(得票率0.8%)と連携していたりすると、得票率2パーセントとなり、年間2億円近くの政党交付金の配布を受ける可能性が数字の上では成立することになる。ネット時代における民主政治の正しいスキーム 選挙に通るまでは、バラ色の政策マニフェストをいろいろ掲げるが、当選した後は、「党議拘束」とやらを持ち出し、選挙戦での公約以外のことをやってしまう議員も多い。これも政治家のプロセスが「選挙」でしかないから仕方のないことだ。しかし、「支持政党なし」は「政策もなし」というユニークな政党なのだ。国会議員は、国民の使者として議決権を行使するだけに徹するという直接民主主義の政党である。(神田敏晶撮影) だから党員は基本的に、ネットやスマホで全法案の賛否を投票することが可能だ。このスキームはネット時代における民主政治の正しい姿だと思う。すなわち国会議員は、国民の賛否の声を届ける本来の意味での「代議士」であるのだ。だいたい、ネットのなかった頃には個別の法案の賛否に参加することは不可能だったし、法案を解説してもらい、リスクとベネフィットを踏まえた上で、国民が政治参加できるプロセスをプラットフォーム化しようとしている政党はいなかった。政治引退した、日本を元気にする会の松田公太・前参議院議員(タリーズコーヒー創業者)も同様のアイデアだっただけに、連携できればよかったと思う。代表の佐野氏がもっと政治の筋に近い人だったらユニークな連携ができたのかもしれない。また、今回の「支持政党なし」の候補者たちは、みずから供託金を用意し、自分の政策を持たず、国民の使者として使える人をネットで公募して選ばれている。これもユニークだろう。 東京選挙区の方は参議院選挙の時に「支持政党なし」の4連のポスターが貼られているのを不思議に思ったのではないだろうか? なぜ、東京選挙区に候補者の顔も名前も掲載されていない政党のポスターが貼られていたのか。民進党の有田芳生議員は、「選挙管理委員会に機敏に対応すべし」とツイートしていた。これは、「支持政党なし」の4候補で支持政党なしをアピールする手法だったからだ。もちろん、公職選挙法上では、写真も候補者の名前も明記しろとの文言はないからだ。「選挙区は『支持政党なし』検索 公認候補者へ」という、候補者名を知らしめる文言があれば良いという。 では、あの抽選方式の選挙ナンバーをどうやってクリアしたのか…。 それはまさにコロンブスの卵の発想だった。そう、抽選には参加せず、余った番号に割り振られただけだったのだ。しかし、それは朝8時30分からはじまる、あのおそろしく荘厳な雰囲気の抽選会場でやってのけたというから痛快だ。4人で揃って「せーの」で、抽選会が終わりドアが閉まる瞬間に入ったという。実際に公示日は朝に抽選を行うが、届け出自体はその日の17時まで受付を行っているから全く問題もない。 筆者はITを専門としたジャーナリストであり、2007年の参議院選挙ではネット選挙解禁をテーマに国政に出馬した経験がある。今回の「支持政党なし」のチャレンジの結果はゼロであったが、記録としては、確実にパフォーマンスに応じた集票ができたと感じている。2016年東京都知事選挙の時の野党が自公潰しを狙って連携した「鳥越選挙」を想い出して欲しい。民主党が旧みんなの党派閥、維新派閥と連携した「民進党」として再スタート。勝ち目のある候補者を決めあぐねていたあげく、誰がかついだのか、タレントの石田純一氏まで出馬を匂わすなどのパフォーマンス。有力野党が戦う前から軒並み自然消滅していく体たらくぶりだ。 むしろ、「支持政党なし」のアイデアとパフォーマンスは、魅力なき野党にとっては魅力的な戦術だと思う。政治にしがらみがないからこそできる発想だからだ。しかし、政治はしがらみだらけの中で育まれている、未だに任侠の世界だ。むしろ佐野氏は、各野党の参謀として、そして現在の政治プラットフォームのASP(アプリケーションサービスプロバイダ)事業者として、新たな野党づくりをIT選挙の面でサポートしてほしいくらいだ。そして、狙いは参議院ではなく、代議士と呼ばれる衆議院だ。衆議院の法案賛否に国民が参加できる直接選挙を支持する野党が連携しやすいと思うからだ。現在の野党は分裂、吸収、合併が多すぎて、支持しにくい。だからこそ「支持政党なし」ではなく「野党支持」という政党で『鳥越方式』でまとまるしか能がなかったのだ。自民の推薦もなかった自民の小池百合子都知事の人気が上がれば上がるほど、野党も与党も忘れてしまいたい選挙となった。「当選」する為には、なんでもしでかす政党にとって「支持政党なし」はあまりにも、いさぎ良すぎた。

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    供託金3千万円ドブに捨てても勝算あり 「支持政党なし」あくなき野望

    なコメントが多かったんですけど、最近は「そういのもアリか」みたいな論調に変わってきてますよ。 いつも選挙を見ていると、各政党がだまし合いをやっているだけじゃないですか。選挙になるとあれこれ公約を言いますが、できもしないこと言って国民をだましているだけなんです。 まして、小さな政党はあれこれやりますって言ったところで実現できるわけない。ならば国会に提出される法案をインターネットで賛否を聞いて直接民主主義の橋渡しをしてやろうというのが私たちなんです。 「支持政党なし」の役割をもう少し具体的に説明すると、そもそも政策を持たないので、国会に提出された法案などについてネットで賛否を確認します。例えば賛成7割、反対3割であれば、所属議員が10人いた場合、このうち7人が賛成、3人が反対に回るということなんです。 ということは「支持政党なし」の議員の質は問われない。政策を持たないので学歴もいらないし、とにかく法案の採否に影響を持てればそれでいいわけですから。 とにかく国をああしたい、こうしたいと仲間内で語るのは簡単ですが、実際やるとなると選挙に出て、議席を取っていかないといけない。私が主張しているのは飲み屋でグチをいうのとはちがうんです。突拍子もない手法であっても、支持政党のない人たちの思いをすくいとる受け皿になることはまちがいないですから。「支持政党なし」が議席増やせば与党はヤバい 本来、独自の政策があったら他の党に入れませんよ。党に入るということは、ただ政治家になりたいという目的だけの人は入れるけど、日本をこうしたいという思いがあったらそれはもう他の党には入れないはずです。 「支持政党なし」でやりましょうとどこかの党に言っても無駄だろうし。政策を一切捨てましょうよっていってもやってくれないでしょうし。だからもう自分でやるしかないんです。 でもこの世の中、支持政党ない人多いんですよ。本当に支持政党がない人は選挙にいかない。世論調査なんかで支持政党ないって多いですけど、そういう人たちにもこういう選択肢があるといことがわかれば選挙に行ってくれるかなと。実際、10代や20代の人の支持が高かったみたいなんですよ。佐野秀光氏 参院選では選挙区8人、比例2人で計10人立候補しました。選挙活動は基本的に私を含めて立候補している10人だけです。ポスターは立候補者に有名人がいないので顔写真なんて入れません。見た人もいると思いますけど「支持政党なし」を強調した文字だけのものです。 全国で8万枚、東京だけで5万枚貼りました。これが結構大変で途中で音を上げるやつもいましたね。街頭演説もかなりやったけど、手ごたえというより、街頭演説なんて所詮自分の満足感だけですから。 今はまだ議席獲得に至っていませんけど、この手法が広がって「支持政党なし」にもっと票があつまって議席が増えていったら、法案の採否にかなり影響力を持てるので与党はヤバいと思うはずです。  同じ党の議員でも賛成と反対に分かれないといけないので「支持政党なし」は大きな政党になってはいけないし、政権を取ってもいけない。だから、都知事選などの首長選挙には立候補しないんです。政策もないのに万一当選したら迷惑をかけますからね。まあ、万一にも当選するとは思いませんが(笑)。 かつてはしっかりとした政策を持った党でやり始めたんです。2012年の衆院選で出馬したときは「安楽死党」でした。やはり人間がだれしも不安になるのが自身の死ですからね。死について選択肢を持てるのは安心感につながるじゃないですか。だれもどこの党も大々的には言いませんが、安楽死の選択肢がないのは重大です。それより前の2009年の衆院選では「新党本質」という党名で、そのときから安楽死は政策にいれていましたね。既存政党から出馬しようとは思わない 安楽死に象徴されるようにどこの党もやらないような政策をやろうと思っていましたけど、やはり小さな党ではどうしようもない。だから直接民主主義を実現できるような「支持政党なし」に行きついたんです。 私が政治家を志したのは、何も最近になってからではありません。小学生のころから考えていました。父は普通の会社勤めで、母は幼稚園の先生で、特に親の影響はないですよ。学校の先生も関係なく、世の中動かしているのは政治家なんだと自然に小学生のころから思っていたからです。 強いて言えば、親にテレビに向かって文句言えっていわれたことはありました。でも小学生のころから、わからないなりに新聞を切り抜いて批判を書いていたんです。例えば「東北新幹線が開通」という記事があったら「おれは東北には行かないから」とか、そういうどうでもいいけど、何かしら一言新聞記事の内容に自分なりの批判を書いていました。今でもニュースを見ているとずっとそれについての話しを何時間でも続けられますよ。佐野秀光氏 新聞記事の切り抜きに批判をつけるだけではなかったですね。新しい内閣が発足すると組閣の顔ぶれというのが新聞に掲載されますが、その記事を切り取って部屋に貼っていました。もうマニアみたいな感じで、全部の閣僚を覚えました。だれが外務大臣で、だれが財務大臣でみたいに。物心ついた最初の首相は中曽根康弘さんでしたね。 大学生の時に自民党の学生部に入ったんですよ。だからといって自民党の支持者でもなんでもないんです。理由は選挙のノウハウを得るためです。自民党から出ると、自民党の言うことを聞かないといけなくなるし、政治家を志していたとはいえ、どこかの政党から出馬しようなんて考えたこともありません。 そもそも私は保守でも革新でもありません。自民党の学生部にいてもだれかを目指そうとかいう政治家もいません。まあ、強いて言うなら田中角栄ですか。自民党の人ではありましたが、無名で学歴もなくてあれだけ影響力を持っていましたから。 政治家になる近道としては芸能人とかスポーツ選手とかで有名人が選挙に出てというパターンが多いですけど、私は自分でどうやったら多くの人が支持してくれる自分オリジナルの党をつくれるかしか考えていません。 わかったのはお金がかかるということです。選挙に出るには自分で金をつくるか、だれかに出してもらうしかない。でもだれかにお金を出してもらうと、その人の言うことを聞かないといけない。だったら自分でお金を稼ぐしかないと思い、大学に入ってすぐに塾経営を始めたんです。  ある程度の資金が貯まると、今の仕事につながるんですけど、登記簿謄本取得代行サービスを始めました。当時は、不動産登記簿や法人の登記簿を入手するには各地の法務局に直接行く必要がありましたが、どこからでもファックスやネット注文で迅速に入手できるサービスを思いつきました。 全国各地に登記簿謄本を取りに行くアルバイトを配置して、注文から1時間以内にファクスするシステムで、これが結構ニーズは高くて。ただその後はインターネットで登記情報が入手できる時代になったんで、今度は登記情報をデータベース化して、法務局より安く提供することにしたんです。仕事も選挙も「日本初」のことしかやりたくない 今は法務局で定価で取得すれば一通につき335円かかりますが、当社のデータベースにある登記情報なら280円です。新規に登記情報を取る場合でも334円と法務局よりも若干安くしています。登記情報は一度取れば何度も使えますからね。登記情報が必要な業種によってはかなり多数にのぼるだけに、コスト削減にもつながるわけです。現在1日5万件の利用があります。また名前から登記情報が探せるサービスも当社しかない大きな特徴です。佐野秀光氏 登記簿は結構頻繁に内容が変わりますけど、これも「登記見張り番」というサービスで顧客に知らせることもやっています。いずれの事業も日本でうちしかやっていません。私は基本的に何をやるにしても「日本初」でないとやりません。先ほど渡した名刺もよく見てください。名刺なのに広げるとハガキになっているでしょう。これも日本初。わが社の社訓は「日本初への挑戦」なんです。 ですから「支持政党なし」という政治団体も日本初です。政策なし、イデオロギーなし、といういまだかつてないもの。日本初の党で直接民主主義を実現したい。参院選では供託金だけで計3600万円かかりました。もちろん戻ってきません。 お金はかかりますが、「支持政党なし」の政治活動はこれからもっと盛り上げていきます。今のところ有名人が協力してくれるという話はありませんし。今まで通り地道にやっていくしかないのが現状です。とにかく支持政党がないことを訴えたい人たちの思いを結集させて、それを政治に反映させていきたいですね。(聞き手 iRONNA編集部、津田大資) さの・ひでみつ 1970年9月生まれ。東京都大田区出身。日大在学中の89年に家庭教師派遣会社を設立し、実業家として複数の会社を経営。2009年に政治団体「新党本質」を立ち上げ、その後「安楽死党」に名称変更した。13年に「支持政党なし」を発足させ、14年の衆院選比例北海道ブロックで10万票以上を獲得。16年7月の参院選の比例代表では得票数が約64万票にのぼった。

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    「支持政党なし」はどこへ行く 共鳴が示す日本の政党政治は終わった

    「革新自由連合」が、比例代表制が導入された1983年の参院選に向け、「無党派市民連合」を結成したが、選挙では約51万票の獲得にとどまり、議席獲得には至らなかった。名簿順位をめぐる路線対立があったものの、「無党派」という名前を冠して無党派層を掬い取ろうという戦略は失敗に終わったのである。 一方で、マーケットや政策を絞った「ミニ政党」のほうが、議席を獲得する健闘を見せた。サラリーマンにターゲットを絞ったサラリーマン新党は約200万票で2議席、福祉政策の福祉党は約158万票で1議席、それに比例代表ではなかったが、東京選挙区で税金党の野末陳平氏が当選した。しかし、こういったミニ政党も、無党派層の継続的な支持を得るには至らなかった。新自由クラブも1986年、自民党が大勝した第38回衆院選で6議席と振るわず、解党を余儀なくされた。 新自由クラブやミニ政党の躍進に代表されるように、既存政党の政策に不満を持つ無党派層の存在は無視できない比率に達していたが、それがさらに比率を高めたのが、1993年の細川連立政権成立後の政界再編だった。自民党と共産党以外は、政党名も含めて離合集散が続くこととなり、無党派層の比率がさらに高くなった。 時事通信社は、政党支持について継続して世論調査を行っている。この調査結果によれば、「あなたは、どの政党を支持しますか」という質問に対して、「なし」「わからない」と回答した「無党派層」は、細川連立内閣の前後で大きく変化している。 海部・宮沢両内閣期(1989.8-1993.8)には平均して48.8%であった。それに対して、橋本内閣から小泉内閣(1996.1-2004.8)までの平均は61.6%であり、このめまぐるしい政界再編の時期に、無党派層が急増したことが分かる。(http://www.crs.or.jp/backno/old/No564/5641.htm 前田幸男 「時事世論調査に見る政党支持率の推移(1989-2004)」 参照)無党派層が起こす4つの投票パターン無党派層が起こす4つの投票パターン 無党派層が増加したとはいっても、選挙時には、有権者が政党の選択をすることになる。したがって、選挙時になると、無党派層の比率は下がる傾向にある。東京都知事選の候補者の街頭演説を聞く人たち=7月24日午後、東京都内 無党派層の選挙時の選択は、 第一に、その時の争点に反応して、政権政党に投票するパターン。2005年の第44回衆院選では、「郵政民営化」「官から民へ」のスローガンのもと、小泉純一郎首相が衆議院を解散して民意を問うた。結果として、投票率は比例代表で2003年衆院選の59.81%から67.46%へと上昇し、無党派層が自民党に多く投票し、自民党は296議席を得た。 たとえば、読売新聞社が行った出口調査では、無党派層は、全体の19%、無党派層が比例選で投票した政党は、自民党32%、民主党38%。民主党の方がリードしているが、同社の2003年の衆院選での出口調査では自民党21%、民主党56%だったので、自民党が11%上昇、民主党が18%下落。これが、自民党圧勝の大きな要因となったと見られる。 第二は、政権政党への批判票を無党派層が担うパターン。2009年の第45回衆院選では、政権政党だった自民党への不満が、民主党への期待に転化され、「政権交代」の大きな民意の中で、比例代表の投票率は69.27%。第44回の67.46%からさらに上昇し、無党派層が大量に民主党に投票して、民主党が308議席を得た。 同じ読売新聞社の出口調査では、無党派層は、全体の21%を占めていたが、無党派層が比例選で投票した政党は、民主党52%、自民党16%で、36%もの差がついた。第44回と比較して無党派層が民主党に投票した割合が14%上昇したのに対し、自民党は16%下落した。 第三は、新自由クラブ旋風のときと同じように、新しくできた政党に期待して投票するパターン。2009年に結党された「みんなの党」は、自民党や民主党の既存政党とは異なる「第三極」として注目を集め、2013年の第23回参院選では比例代表で470万票以上を得票し、4議席を得、選挙区と合わせて8議席を獲得した。 読売新聞社の出口調査では、無党派層19%のうち、比例選でみんなの党は23%の自民党に次いで、15%を得ている。維新の会(15%)、共産(12%)、民主(11%)を上回る支持を得たことが、躍進の一つの要因となった。 第四は、投票に行かず、棄権するパターンだ。政権支持、政権批判、新しい政党への期待共にインセンティブが働かないときは、真っ先に無党派層の棄権、投票率の低下という結果になる。「支持政党なし」はどこに行く?「支持政党なし」はどこに行く? 「支持政党なし」という政治団体は、無党派層に、第五の選択肢を提供しようとしているのだろうか? 2016年の第24回参院選で比例代表の得票は64万7071票。全国の無党派層の1%程度の得票ということになろうか。新しくできた政党の政策に期待する無党派層の投票行動の第三のパターンには、政策を掲げているわけではないので該当しない。 また、第四のパターン「棄権」よりは、こういう意思表示をする方がいい、という意見もある。 しかし、既存政党にせよ新しい政党にせよ、政党の機能は、政策を掲げ、それを実現していくことにある。「支持政党なし」は、政党としての政策は持たないとしている。インターネットなどを通して、有権者の意見を基にして、議決権を行使する、というのは、直接民主制に近い主張であり、代表制民主主義の意義を損なうという批判もある。 これまでの、無党派層をつかもうとして七転八倒し、離合集散を繰り返してきた政党の歴史を見ると、このような直接民主主義的な主張への共鳴が広がる展開が将来あるとするならば、既存の政党政治が危険水域にまでなっている、という状況が想定されよう。 また、ネット時代にあって、SNS等を通じて、さまざまな課題について「投票」が行われている。直接民主制的に、ネットでの投票結果をもって政策に反映させるという手法が、若い世代に受け入れられる可能性も否定できまい。 「支持政党なし」が一定の支持を集めることをもって、既存政党は自戒の念を強くしなければなるまい。

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    次の選挙で「自民党大敗」を裏付ける2つのデータ

    選過半数〉(読売)〈改憲勢力 3分の2超す〉(毎日) 新聞・テレビは一斉に参院選での自公圧勝を報じ、選挙戦はそのまま第2ラウンドの東京都知事選に突入した。 議席数だけを見れば、自民党は27年ぶりに参院での単独過半数を回復(追加入党含む)し、改憲支持4政党の勢力は衆参で3分の2を超えた。 しかし、安倍首相は喜んではいなかった。テレビカメラの前で勝利宣言したときは笑顔だったが、側近たちだけになると別の顔を見せた。「勝ってなんかいないからな」 そう吐き捨てるように語ったという。 そのうえで、安倍首相は参院選が終わると早めの夏季休暇に入った。都知事選の第一声で自公推薦候補の増田寛也・元総務相の応援に立つこともなく、休養先では選挙戦の憂さを晴らすようにゴルフに興じた。 理由がある。 参院選のデータを詳細に分析すると、2012年の政権復帰以来、国政選挙で「常勝」を重ねてきた安倍自民党の勢いに陰りが出てきたばかりか、次の総選挙で「自民党大敗」の兆候がはっきり見えてきたからだ。当選確実となった候補者にバラをつける自民党総裁の安倍晋三首相=7月10日、東京・永田町の自民党本部(斎藤良雄撮影)■データ(1)安倍応援は「勝率1割以下」 まず、選挙に強いといわれた安倍首相の「神通力」が消滅した。 自民党選対幹部が語る。「安倍首相が今回応援に入った11の重点選挙区の結果は1勝10敗、勝率が1割を切った。総理が入るのは大接戦や苦戦している選挙区とはいえ、2012年の総選挙の時は87%の勝率を誇り、前回総選挙(2014年)でも総理の応援した選挙区は38勝38敗の勝率5割だった。この有権者の動向は内閣支持率の数字だけでは決してわからない選挙特有のものだ。“俺が入れば負けない”と思っていた総理は相当ショックだったようだ」 ちなみに安倍首相は今回、事前の情勢調査で負け濃厚だった沖縄には応援に入らなかった。皮肉なことに、安倍側近の世耕弘成・官房副長官夫人で民進党の林久美子・前参院議員を落選させた(滋賀選挙区)のが唯一の勝利だったのである。■データ(2)「東北の乱」の悪夢再来 参院選で事実上の与野党一騎打ちとなった1人区で自民党は21勝11敗と予想外の苦戦を強いられた。その中でも1勝5敗と負けが込んだのが東北6県だ。 東北は安倍首相と自民党にとってまさに“鬼門”だ。公明党の基礎票は多くないが、農業地帯で保守地盤が強く、過去、自民党は自力で勝ってきた地域だった。 ところが、第1次安倍政権当時の2007年参院選で自民党は東北の1人区で全敗(当時は宮城は2人区)して与野党のねじれが生まれ、2年後の総選挙で民主党への政権交代の引き金となった。政界変動の前触れが起きる地域なのである。 安倍首相は前回参院選では東北で失っていた自民党の議席を回復し、リベンジを果たした。今回も東北を重点選挙区として首相自ら複数回応援に入って徹底的にテコ入れした。それにもかかわらず、再び「東北の乱」が起きた。「勝った」と喜べる状況ではないのである。関連記事■ 衆参ダブル選挙 18歳選挙権拡大が混乱の大きな火種に■ 7月参院選 自民尋常なる上げ潮で野党が消える日になるか■ 自民党参議院改選議員 来夏の選挙心配で安保特別委に尻込み■ 次期総選挙 無党派票が自民党批判に動き野党の乱立も解消か■ 公明党議員 選挙が遠いからと自民の公明への配慮不要は失礼

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    「支持政党なし」は制度の隙をついた選挙妨害ではないか

    猪野亨(弁護士) 衆議院選挙の比例区が話題になっています。「支持政党なし」という名称の「政党」です。それが何と10万票も獲得したというのです。道内の各政党の得票数 何とすごい票数です。しかし、誰もが思うところですが、このような政党に10万人もの支持が集まるはずがありません。このような政党名など聞いたことがないし、10万人もの有権者が引っ掛かったということです。ところが「衆院選で政党「支持政党なし」が10万票ーーなぜ「政策は一切なし」だったのか?」(弁護士ドットコム)では、この投票行動をこのように分析しています。そして、動画のなかでも、「支持政党なしは、政策は一切ございません」と強調。既成政党に投票すると、その政策の一部に反対だったとしても、一括して賛成したことになってしまうとして、「個別の法案ごとにみなさんの意思表示をしたくありませんか」と呼びかけている。 今回の衆院選の比例・北海道ブロックで「支持政党なし」が10万票以上を獲得したのは、このような佐野代表の主張に共感した人が多かったからなのかもしれない。 そんなはずがないでしょう。だいたい政党名だとは思いませんよ。それに事前にこの「支持政党なし」のホームページをどの程度の有権者が見ているというのでしょうか。 本当に悪質としか言いようがありませんし、これでは制度の隙を突いただけのただの選挙妨害でしょう。多くの有権者の善意を利用した、いや踏みにじった行為は批判されて当然だろうし、これ自体、制度の欠陥なのですから、早期に対策・是正が必要です。 本来、支持政党なしの有権者が示す方法は白票ということになります。この問題を考えるのであれば、やはり国民審査についても考えなければなりません。国民審査は言わずと知れた最高裁判事について、罷免を可とする場合には「×」を付け、それが過半数を超えると罷免されるという制度です。白紙は信任です。あくまで罷免を可とする場合にのみ「×」を付けます。裁判官の国民審査は「支持政党なし」と同じ手口 さて問題は、投票用紙です。これは投票所に行くと当然のように交付されます。交付されてそのまま投票箱に入れれば、信任なのです。この国民審査の投票用紙は受け取らないことができます。要は棄権です。棄権ができないという制度はあり得ないのです。 しかし、衆議院議員選挙に投票した者は、必ず国民審査の投票をしなければならないことになるような運用がなされているのです。受け取って下さいと必ず渡されるのですが、それは事実上の投票の強要にも等しいのです。 何故、これが問題になるのかといえば、白票が信任になるからです。衆議院議員候補者に対する投票の場合には白票は、どの候補者の票にもなりませんから、実質的には棄権です。事実上、投票を強要するような現行のやり方を前提にするならば、信任の場合には「○」を記載させなければ整合性は取れません。 もともと制度が罷免を可とする場合には「×」としたのは、憲法の規定の仕方がそのようになっているからです。憲法第79条第3項 前項(国民審査)の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。 この方法自体、批判の対象になっていることは周知の事実ですが、仮にこの制度を前提とする場合であれば、有権者に投票用紙を受け取らない自由を保障することが不可欠です。実際に多くの国民は、国民審査の投票用紙を受け取らなくて良いということを知りません。そのような誤解につけこんで信任を多くするようなやり方が全うであるはずもありませんが、これは「支持政党なし」の手口と同じ次元のものです。 有権者の誤解に基づき投票させるというものです。どちらも同レベルの問題なのですから、「支持政党なし」の是正だけでなく、国民審査の投票用紙の受け取りが自由であることを用紙を交付する際に説明するよう是正されなければなりません。(公式ブログ 2014年12月16日分を転載)

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    都議会のドンだけじゃない! 地方議員は利権を貪る「自治の癌」だった

    也元総務相の三つどもえの中で、知名度に劣る増田氏がまず脱落する可能性が高いと筆者には見えた東京都知事選挙だった。 しかし、鳥越氏は心身ともに正常に選挙戦を戦える状態とは言いがたく、しかも7月20日発売の『週刊文春』で13年前の淫行疑惑が報道され、報道に対する対応のまずさもあって停滞した。 そのおかげで、増田氏が二番手として浮上したが、7月27日にまたも週刊文春がきつい砲撃を浴びせた。 それは、東京都の「影の知事」といわれ、小池氏の立候補を防ぐために、手を上げる機会がないように計らったといわれる自民党都連幹事長である内田茂都議への総力取材に基づく大攻撃だった。猪瀬直樹元東京都知事 また知事選の公示直前には、猪瀬直樹元知事が内田氏批判を展開した。猪瀬氏は副知事時代に仕事ができないように担当部局のない無任所とされたり、選挙ポスターを張るのを都連に拒否されたことから、急に特別な助力が必要になったために、それが徳洲会事件につながったと考え、内田氏に煮え湯を飲まされたという思いから、都政のガンだと感じたようだ。 いまの東京の状況については、すでによく報道されているところだし、この特集のほかの記事でも扱われているだろうから、ここで私は日本の地方自治の病巣としての議会の問題を取り上げ、その中で東京の特殊性も論じたい。 日本の地方自治は、首長の独裁と、議員のドブ板的案件や利権への関心特化が著しいため、機能不全に陥っている。これは、日本国憲法でアメリカの制度を中途半端に取り入れたがゆえである。 同じ地方自治でも、欧州の地方自治は議院内閣制的な仕組みになっている。各政党が首長(議長)候補を明示して選挙戦を戦う。そして、数人の議員が副議長(副知事・副市長)という肩書きで、いわば大臣となる。 事務方のトップは官僚が事務局長という形で補佐し、実務的な問題には行政の中立性確保の観点から、首長や副議長は介入を禁じられている。 一方、アメリカでは地方自治体でも三権分立が徹底されているし、二大政党の予備選挙もあるので、タレント候補的な人は出にくい。また、そもそも州などの幹部は政治任用だから議員との垣根は低い。首長と議会のいびつな関係 それでは、日本ではどうかといえば、首長は直接選挙で選ばれるが予備選挙がないので、選挙直前の後出しジャンケン的な立候補も可能だし、政策論争もほとんどない。また選出後でも、政治と行政の線引きははっきりしないし、首長への不信任は滅多に成立せず、首長選挙の次点落選者は議会に議席を持てないから、いわば野党党首不在の状態に陥る。 そのため首長選挙では圧倒的に現職有利となり、知事選挙では現職候補者の当選率が90パーセントを超えている。都議会で答弁する舛添要一東京都知事=6月8日、東京都新宿区 一方、議会は政策形成にはほとんど関われず、議員もいくら当選回数を重ねても国における閣僚になることはできない。強いていえば、県会議員や市会議員がまれに副知事や副市長(助役)になることがあるだけだ。 有名なケースとしては、自民党の京都府会議員だった野中広務元官房長官が、革新系の蜷川虎三知事勇退後の選挙で当選した林田悠紀夫氏のもとで、蜷川府政で総務部長を務めた自治官僚の荒巻禎一氏とともに副知事に就任し、二人で大掃除と継続性の維持を分担したことがあったことだ。その後、野中氏が知事になるかと思われたが、たまたま、前尾繁三郎元衆院議長の死で地盤が空いたので、野中氏は代議士となって中央政界に転じた。 しかし、これは全くの例外であって、たいがいの議員は政策形成ではなく、ドブ板的な案件や公共工事のような利権追求に走る傾向があるし、派閥を形成して、庁内の人事に口出すことも多くなる。 また、議会は首長を辞めさせることも、再選を阻むこともできない代わりに、予算の承認を拒否したり、副知事・副市長をはじめとする人事承認権を行使できるので、最悪の場合、首長がナンバー2空席のまま任期を過ごさなければならなくなったり、予算も定型的なものしかできないことも多い。 私は憲法を改正するなら、地方自治体においても議院内閣制をとるべきだと思うし、一方、個別の行政案件への議員の関与は厳しく禁止するべきだ。改憲なくとも地方自治の改革は可能だ 舛添要一前都知事が「政治とカネ」の問題で激しい批判を浴びたことで、東京都議会における内田茂という人物がクローズアップされ、あたかも全国的にみても特異な現象のように言われているが、この種の人物は茨城県の山口武平氏や広島県の檜山敏宏氏などいろいろいるのである。画像はイメージです その意味で本当に必要なのは、多選で権力が集中しやすい首長と、ドブ板や利権ばかりに関心が集中する議会と両方に根本的なメスを入れる必要があるのだ。 内田氏にいじめられて自殺したと言われる樺山元都議の未亡人まで涙の応援演説をした末の小池知事の誕生で、いよいよ、内田都連と正面対決かもしれない。といっても、折り合いをつけてうまくやることもありえるし、内田氏の引責辞任によって軟着陸するのかもしれない。いずれにせよ、都政が停滞してしまっても困るが、かといって、小池知事に過度に妥協的になってもらっても都民の願いに背く。  できることなら、安倍首相はじめ政府与党の幹部が、少し古すぎる自民党の体質や、地方制度の改革に取り組んでくれても良いと思う。たとえば、憲法改正をしなくてもかなりの改革は可能なのである。現在の憲法にはこう書いてある。第92条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。第93条 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。2 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。 つまり、これに反しない限りは法改正の問題なのである。たとえば、知事や副知事や教育委員と、県議を兼ねることが可能だし、県議を大臣のように担当の決まった副知事にしても良い。副知事を10人に増やすことだってできる。知事選の次点者を県議会議員にしたり、県議と国会議員の兼職や、知事辞任時の代理をあらかじめ決めることも可能になるのである。

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    私は「都議会のドン」内田茂の裏の顔をここまで知っている!

    で自民党候補が大量に落選したことで大きく変わってしまった。この都議選は民主党への政権交代が実現した総選挙の1カ月前に行われたため、都議選でも自民党に対して逆風が吹き荒れ、気骨ある議員の多くが落選してしまった。増田寛也氏の選挙事務所を出る自民党都連幹事長の内田茂氏(中央)=7月31日、東京都千代田区(古厩正樹撮影) しかしその間も現主流派の議員たちは当選し、現首脳部とされる議員たちも、落選したにもかかわらず自民党都連や都議会自民党の役員にとどまったのである。実はこの役員留任が自民党都連の中で大きく問題視され、当時の国会議員たちが排除しようと試みた。だが、彼らもまた政権交代選挙で大半が落選したため、都連所属の国会議員の数も少なくなっていた。 当時の石原慎太郎知事も加わり、石原伸晃都連会長以下、都連の国会議員は落選した内田氏を都連幹事長から外そうとしていた。しかし、都議会議員の数が圧倒的に多く、多勢に無勢であった国会議員と石原知事は都議会議員の抵抗になすすべがなかった。加えて東京都連の幹事長職は、東京都内の各級選挙の公認権を持ち、業界団体に対しての影響力も強いため、小選挙区選出の国会議員は最後まで抵抗しきれなかったのである。そのときの抵抗も内田氏本人が前面に出るのではなく、側近で現議長の川井しげお氏が数少ない国会議員の前で机をバンバン叩いて威嚇していたという。私も会派の控え室で「内田先生じゃないとカネ作れないじゃないか!」と凄んでいるのを聞いたことがある。 その結果、当時内田氏を下ろそうとしていた石原都連会長と平沢勝栄都連総務会長は、もはや逆らえないとあきらめて、今や内田氏のいいなりになってしまった。今回の都知事選でも、一度内田氏に弓を引いた人間が内田氏の歓心を買うために、小池百合子元防衛相を必要以上に攻撃したことも容易に想像がつく。「ポイント稼ぎ」のような異常ないじめ方 また、2011年7月1日に自民党所属都議会議員の樺山卓司氏が自殺した後、都議会上層部のご機嫌取りかウケを狙ったのかわからないが、若手の議員たちがこぞって樺山氏の自殺を揶揄するような発言をしていた。さらにベテラン議員たちもまた酒の肴のように冒瀆を通り越した言葉を発していたのである。若手からベテランまで、まるで「ポイント稼ぎ」としか思えないような異常ないじめ方だった。 樺山氏が自殺した時も多くの国会議員に相談したが、誰一人として声を上げてくれる人はいなかった。みんな厄介ごとのように、樺山氏の問題を封印したのである。この自浄能力のない自民党都連が現状のままなら、都民にとっては不利益しか与えないだろう。 東京都議会は首都東京を牽引する議会だから、開かれた議論闊達な場だとお思いの有権者も多くいただろうが、実態はそのようになっていない。都議会を一言で言えば、ムラ社会であり、ムラ議会なのである。議論など一切行われず、とりわけ都議会自民党の所属議員は上層部の決定に追随するだけである。たとえ賛否が分かれる案件も一糸乱れることなく賛成するのは、このような体質によるものだ。本来であれば、政策も自民党内で様々な議論があり、意見集約を経た結果、賛成か反対か判断するはずだが、そのようなプロセスもない。このものを言わせない体質が大きな問題であり、都民からの不信感を呼んでいる。東京都議会総務委員会集中審議で追求される舛添要一東京都知事=2016年6月13日、東京都庁(撮影・春名中) その一端が現れたのが、舛添要一前知事の公私混同問題に対する対応だ。世論やメディアが早期の辞職を求めていたにもかかわらず、都議会自民党だけが舛添氏をかばおうとしていたのである。特に顕著だったのが、都議会総務委員会の一問一答形式の集中審議で、自民党議員はあらかじめ用意された原稿を読み上げるだけで、厳しい追及を行わなかった。その後の審議でも他の会派が辞職を迫ったのに対し、手心を加えた質問に終始した。この対応が世論の反発を受けて、参院選に影響があってはならないと自民党本部の意向により、舛添氏は辞職を選ぶに至った。自民党都議団の意向は自民党本部や首相官邸が持つ危機感を共有できていなかったのである。それは極端なムラ議会のために、世論に対して無神経であり、都議団内で批判も許されず、自由な議論ができてないことに起因するものだ。小池新知事による「東京大改革」が進められる 今、都政の様々な面に対して、都民や国民が不信の目を向けている。都の職員も、東京都政推進のため生活向上のために日夜全力で働いている。にもかかわらず、都議会自民党がこのようなレベルだから彼らの足を引っ張っている。だから「東京大改革」を進めなければならないのである。 また都議会議員たちが都民、国民にとって何をしているのか、おそらく見えづらいだろうからこの点を明らかにしていく必要がある。本来、地方議員の仕事は条例を制定することである。しかし、条例を作ることのできる議員はほぼいない。ほとんどが役所側から出てきた条例案を追認するだけの存在でしかないのだ。また議会の質問も、自民党に関して言えば役所の職員が作っているのだ。だから原稿を棒読みするのもそのせいである。もっと言えば、漢字を読み間違える議員もいるから、職員がルビをつけるぐらいなのだ。では、都議会自民党の議員は何をしているのかというと、地域の冠婚葬祭を回り、業界団体の予算要項を聞く。これがメインの仕事になっているのである。本来ならば、地域をくまなく回り、様々な諸課題を条例化するのが仕事のはずなのに、選挙対策ばかりしているのが現状だ。これも改めなければならない。 この数代の知事は議会のコントロール下にあったと言えよう。まずはこれを改革する必要がある。そのためには情報公開を徹底しなければならない。情報公開を徹底し、政策決定のプロセスを透明化し、都民、国民の目にさらさなければならない。今まで東京都議会および東京都政が都民、国民の注目を浴びてこなかったのはマスコミの関心が低かったためでもある。したがって、新知事はマスコミに対して積極的に発信している必要があるだろう。政策決定のプロセスを透明化し、疑惑を持たれる案件を積極的にメディアに発信していくことによって、都民に対しての情報公開が進展するのだ。むろん東京都の情報公開制度の仕組みを変えていく必要もあるだろう。これにより都民、国民にとって都政が身近なものになるはずである。身近なものになれば、都民、国民の間で都政に対する様々な議論が沸き起こり、関心も深まる。そこで都政に対しての新たな意見や要望が増えてくるのではないだろうか。また、不透明な案件に対しての情報提供も増えてくるだろう。これから小池百合子新知事による「東京大改革」が進められることになるのである。(聞き手 iRONNA編集部・松田穣)のだ・かずさ 教育評論家。昭和48年生まれ、東京都出身。早稲田大学教育学部卒業後、会社員、国会議員秘書を経て、東京都東村山市議、都議会議員などを歴任した。

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    都知事選と大統領選でわかった 日米左派の「大人と子どもの差」

    共に手を振るクリントン前国務長官(AP) さらに、サンダースは「二人の間に意見の相違があるために予備選挙を戦ってきたが、それが民主主義というものだ」という言葉を続けて、「そのおかげで両陣営は歩み寄りができ、民主党の歴史で最も進歩的な公約をまとめることができた」と民主主義を讃えました。 サンダース支持者が会場からブーイングすると、サンダースはそれらの人々を手で制し、返礼としてクリントン氏はサンダースの存在に謝辞を述べ、彼が掲げた政策を取り入れていく決意を語りました。【米大統領選2016】 サンダース氏、クリントン氏支持を正式表明野党に引きずり降ろされた宇都宮氏 一方、日本では公示日直前から野党側の候補者として内定していたと見られる宇都宮健児氏に代わって鳥越俊太郎氏を擁立する動きが活発になりました。 宇都宮氏は7月12日にメディアに対して「(鳥越氏は)大変知名度のある方だとは思うが、(野党の対応に)違和感を持っている。候補者のことをなんだと思っているのか」。野党が鳥越氏を担いだ経緯についても「不透明だ。どういう議論がされているのか伝わってこない」(産経ニュースから引用)と怒りをぶちまけています。 その上で、宇都宮氏は鳥越氏と面談し、「都政のことはこれから」という鳥越氏に自らの政策集を渡し、その実現を託しました。会談終了後、宇都宮氏は「掲げた政策を実現するためには選挙で勝つ必要がある。その前提となるのは政策であって、なんでも勝てばいいという立場ではない」と囲み取材で語っています。 しかし、テレビで追及されてようやく言及した築地市場の移転反対の可能性を含めて宇都宮市の政策が十分に反映されたとは言えない状況です。 宇都宮健児氏のTwitterは7月13日の撤退表明以来沈黙していましたが、7月20日現在イベント紹介の案内の配信が再開されましたが、東京都知事選挙については一切触れられていません。政治的意思決定プロセスの成熟度に差政治的意思決定プロセスの成熟度に差 筆者は公開討論会の様子などを見ていた限りでは、宇都宮健児氏の政策は非常に練りこまれたものであり、弁護士としての現場の匂いがする地に足の着いたものだったと感じています。 東証一部上場会社(鳥越製粉)創業家でエリートジャーナリストの鳥越氏と弁護士として貧困と戦ってきた宇都宮氏はちょうどヒラリーとサンダースを模したような存在です。日米において両者の対応が正反対のものになったことは両国の民主主義の成熟度の差を表す典型的な出来事と言えるでしょう。 今回、野党側は知名度ばかりを気にして、石田純一氏、古賀茂明氏、宇都宮健児氏らに声をかけては取り換えるという極めてご都合主義の対応を繰り返してきました。 このような無様な状況になった理由は明白です。それは党幹部支配によって党員の声が完全に無視されているからです。つまり、民進党をはじめとした国政政党は党員・サポーターを抱えているにも関わらず、彼らの声を全く無視して一部の議員だけで集まって物事を決める閉鎖的な党体質を抱えているのです。 与党側でも多くの東京都民の有権者が「増田って誰?」というところからスタートし、そのまま選挙戦に突入するという極めて都民を馬鹿にした対応がなされています。予算規模13兆円の都庁のリーダーを決める選挙戦を通じて、日本の民主主義の未熟さが露呈したことが今回の東京都知事選挙の最大の成果と言えるでしょう。政策論争や過去の実績を問われる候補者選定プロセスを 舛添氏の辞任は参議院議員選挙直前ではありましたが、それは東京都民がいい加減なプロセスで東京都知事を選ばされる理由にはなりません。参議院議員選挙が忙しいなんて言い訳は東京都民には全く関係ありません。 国政は国政、都政は都政であって、今回の酷い擁立劇は東京都議会の各政党会派の怠慢だと言えるでしょう。国政選挙があるから東京都知事選挙が蔑ろになるなら、国会があれば東京都議会も要らないということで良いのでしょうか。 少なくとも今後は東京都知事選挙については任期終了の半年程度前から各政党が候補者選考プロセスを東京都民に公開する形で実施していくことが必要です。今回の東京都知事選挙を反省材料とし、日本にも当たり前の民主主義のプロセスが定着していくことが望まれます。 とりあえず、日米で民主主義の成熟度が「大人と子どもの差」がある状況はみっともないので、日本の政治家には早急に是正してほしいと思います。(ブログ「切捨御免!ワタセユウヤの一刀両断!」より2016年7月20日分を転載)

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    失敗しない都知事の選び方

    政治資金の公私混同を批判され、辞任した舛添要一氏の後任を決める東京都知事選が告示された。「政治とカネ」をめぐり2代続けて知事が任期途中で辞職し、都政の信頼回復が大きな焦点となる。4年後の五輪ホスト都市の顔にふさわしい人物をどう選べばいいのか。失敗しない都知事の選び方を考える。

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    もう「消去法」しかないのか? 都知事選の顔触れにがっかり

    山本一郎(ブロガ―・投資家) 東京都知事選挙が告示され、21人もの立候補者がたった一つの椅子を争う戦いが始まりました。東京都知事は日本でも最大の選挙であり、一人を選ぶのに有権者1,120万人あまりが審判を下すという大変な規模で行われるものですから、政治家として相応に優れた人物が立候補しなければならない「はず」です。都庁(新宿区) 実際には元岩手県知事、元総務大臣や日本創成会議、東京電力社外取締役などを歴任された増田寛也さん、東京10区の衆議院議員の小池百合子女史、著名ジャーナリストの鳥越俊太郎さんを軸に争うという点で、経歴だけ見るならば山口敏夫さんを含め閣僚経験者3名、有名なジャーナリストに元日弁連会長という、日本を代表する人物が立候補してきた「はず」です。過去二回、東京都知事選に出馬した元日弁連会長の宇都宮健児さんは最後の最後に降りてしまいました。いろいろ苦渋の決断もあったのではないかと思案するところではありますが…。 しかしながら、官房長官の菅さんがこの選挙戦に関して興味深い注釈をつけています。菅義偉官房長官「スローガンではなく具体的な政策を」http://www.sankei.com/politics/news/160714/plt1607140023-n1.html また、行政学者の新潟大学の田村秀教授も、大都市東京の未来を考えるのに「軽い」論考や政策を打ち上げ花火のようにやるだけでは良くない、というお話もかなりされています。「都政はワイドショーではない」 新潟大の田村秀教授http://www.sankei.com/politics/news/160713/plt1607130080-n1.html 経歴や肩書きは立派なはずなのに、出馬した候補者の顔ぶれを並べてみるだけでがっかりする感じが否めないのは、東京都をこちらの方向に向かわせる政治をするという主義主張の部分と、現実の政策としてどこに着眼し何を実現していくのかという青写真が見えないところはあるでしょう。 政策通で実務家として担がれた増田寛也さんも、東京一極集中を強く批判してきたわけで、過去の主張や政策についての一貫性を求められるでしょうし、小池百合子女史も都知事には解散権がないのに不信任案が可決される前提で都議会解散を公約に掲げて不興を買っており、鳥越俊太郎さんにいたっては具体的な公約を問われても「無い」という状態です。これでは、東京都の都民としての利益を考えて有力候補の誰かに投票しようと思っても選択肢が無い、ということになりかねません。結局、いままでさんざん増田寛也さんを批判してきた私でさえ、いざ投票するとなると消去法で増田さんぐらいしか見当たらないのではないか、と思ってしまうぐらいの状態です。増田寛也「ほとばしる無能」を都知事候補に担ぐ石原伸晃&自民都連(訂正とお詫びあり)http://bylines.news.yahoo.co.jp/yamamotoichiro/20160704-00059615/ 突き詰めれば、政治家としての主義主張を考えたとき、その政治家が有権者に対して何をもって信を問おうとしているのかという哲学や政治思想の問題が横たわっているように感じます。つまり、この人は何を実現しようと思っていて、何を価値に考えていて、そこから導き出される政策は何か、ということが分からなければ、有権者個人個人の政治信条やこの社会をどういう方向に持っていけばより良くなるのかというコンパスと六分儀がうまく働かないのではないか、と思うわけです。国政での政党間対立を、そのまま都知事選に持ち込むのは問題 例えば「新宿区に韓国学校を建てる」ことの是非において、有権者目線でいうならば、待機児童が多く保育園の建設が求められているので、韓国との関係や経緯を考えても韓国学校よりも保育園を先に建設するべきと考える人もあるでしょう。しかし、その有権者目線と同じところから「日本人のために韓国学校を白紙にして保育園を建てます」というだけでは、単に目先の有権者やメディアでの議論に引っ張られるだけの都知事候補に見えてしまいます。公開討論会に臨む増田寛也氏。後ろは小池百合子氏 =7月12日、東京都港区・赤坂区民ホール そこで、東京の未来像を考えたときに、東京には韓国の方だけでなく多くの外国人も暮らすダイバーシティを許容していく社会作りをしていくつもりなので、都市計画として韓国学校やマイノリティの人たちが安心して学べる場所もまた日本人向けの保育園と同様に重要だ、と付け加えられるならば、東京の未来について考えた上で、韓国学校をどう扱おうとしているのかなということが理解できるようになります。 また、一口に少子高齢化と戦うといっても、どこに着眼点を持つのかは非常に重要な観点です。財布はひとつであり、黒字である都政といっても今後は猛烈な高齢化が進む状況ですので、これを都市計画や都市経営のうえで予算配分をどうするのかの優先順位を見せてもらえなければ、本来の意味で少子高齢化対策にはなり得ません。 言い換えるならば、少子化対策と高齢化対策はセットで語られがちですけど、ここにだって少子化対策を進めたければ高齢化対策予算を削らなければならないというジレンマは必ずあります。さらには、高齢化している地域と保育園が不足している地域では東京都が行うべき政策のスタンスが大きく異なります。東京の23ある特別区の中でも細分化されていますし、特別区と市町村部でも利害は異なることになります。それに対して、候補者がどのような「目配せ」をするのかは、やはり短い選挙戦の中で理解できるようなヒントが出てきてくれないと困る、ということです。 公明党の山口那津男代表が、非常に興味深いことを発言していました。国政での政党間対立を、そのまま都知事選に持ち込むのは問題なんじゃないのということで、野党統一候補として野合の結果出馬に至った鳥越俊太郎さんに対して熱い「DIS」をお話されています。もちろん、そのとおりだと思います。公明・山口那津男代表「参院選の対決構図、望ましくない」 統一候補擁立の野党側を批判http://www.sankei.com/politics/news/160714/plt1607140028-n1.html そのうえで、増田寛也さんも結局は国政の与党として協力関係の深い自民党と公明党が支援しているように見えるのもポイントです。どうしても、国家レベルでの政党間の党利党略が前面に立って、本来であれば都民のための暮らしをどう都知事が良くしようとしているのかを把握するはずの選挙戦が見えづらくなってしまうわけであります。 やはり、問題山積であり今後は五輪だ高齢化だ老朽化したインフラ対策だとやるべきことが多発している東京の中で、都民の未来にとって意味のある議論を各候補者にして欲しいと強く願います。有り体にいえば、東京を「高福祉高負担」にするのか「低福祉低負担」でやりたいのか、また生活者目線で給与水準のボトムをアップする方向か、それとも意欲のある人に多くのリソースを分けていく政策にしたいのか。候補者各員の政治哲学や思想がしっかりと見える選挙戦をやって欲しいと思います。

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    都知事選びに失敗しないたったひとつの方法はこれだ!

    らいはあるかもしれない選び方”を提示してみたい。「無責任」な1票でも有権者が負うべき責任 民主主義の選挙においては、時代の状況によって、政治家の評価基準はくるくる変わる。経済や社会が安定しているときと不安定なときでは、有権者が求めるリーダー像は違う。そこに、利害、支持政党、政策の実現性、政治家としての実績、メディアの情報、候補者の人柄や印象などが加わると、もうどうしていいかわからなくなる。都知事選候補者の演説を聞く人々=7月14日午前、東京都新宿区 しかし、ただ一つ言えることは、有権者はどのような評価基準で選んでもかまわないということだ。「いい人そうだから」という印象だけで選んでもかまわない。「無責任」と言われようと、「愚民政治」だと有識者からバカにされようと、1票は1票である。  ただし、よく「政治家が悪い」と言う方がいるが、どう選んでもかまわない以上、こういう批判は許されない。批判する権利があるにしても、結果的に悪い政治家を選んだ場合、その責任は私たち有権者が負わなければならない。 それでもなお、有権者は自由だ。誰にも投票行動を規制されることはない。「バカなやり方」を続けてきた理由「バカなやり方」を続けてきた理由 そこで今回の選び方だが、私はここ十数年、どんな選挙でも、たった一つのやり方(評価基準)でしか、投票してこなかった。まずはこの際、政党、政策、公約、実績、人柄などどうでもいいと思い切る。そうしてすべてのファクターを捨ててみる。そうすると、残るのは年齢だけになる。 つまり、もっとも若い候補者に1票を入れるのだ。 なぜ、こんなことをしてきたのかというと、日本は若返らなければ絶対に変わらないと思ってきたからだ。このまま、私のような世代が、自分と同世代の候補者や年上世代の候補者に投票していたらどうなるだろうか? すでに日本は超高齢社会である。富も地位も政治権力もみな高齢者に集中している。これがもっと進んでいくだけだ。 「そんなバカなやり方があるか」と、私の周囲の人間たちは怒る。「自分の職業をバカにしているだろう」と言われたこともある。しかし、私の周囲にはこう本音をもらす人間が多い。「日本がどうなろうが、年金をもらって悠々自適。逃げ切れるだろう」  多くの高齢者は年金をもらって生きているので、生きている世界が変化するのを嫌う。現状維持が最善の選択だ。日本が変化してはいけない。まして、劇的に変化したら、自分たちの居場所がなくなり、生存も脅かされる。だから、自分が生きている間は、すべてに対して現状維持で、世の中が大きく変わるのは困る。そうして、日本は素晴らしい国だという“ファンタジー”のなかで死んでいきたいと願っている。政府債務が1000兆円を超えているこの国で、こんな考え方でいいのだろうか?「シルバーシティ・トーキョー」という現実 それでは、今回の候補者を年齢順に並べてみよう。鳥越俊太郎(76)ジャーナリスト今尾貞夫(75)医師山口敏夫(75)元労相マック赤坂(67)セラピスト増田寛也(64)元総務相関口安弘(64)政治団体代表小池百合子(63)元防衛相岸本雅吉(63)歯科医師宮崎正弘(61)日本大学教授中川暢三(60)元兵庫県加西市市長内藤久遠(59)元陸上自衛官山中雅明(52)政治団体代表望月義彦(51)ソフトウエア開発会社社長武井直子(51)元学習塾講師立花孝志(48)元船橋市議会議員上杉隆(48)ジャーナリスト桜井誠(44)元在特会会長谷山雄二朗(43)国際映像配信会社社長後藤輝樹(33)自営業高橋尚吾(32)元派遣社員七海ひろこ(31)幸福実現党広報本部長 主要候補者のなかで最長年齢は鳥越俊太郎氏の76歳。増田寛也氏、小池百合子氏にしても60歳をとうに超えている。この方たちは、4年後の東京五輪のときは、それぞれみな4歳年をとり、誰が都知事になろうと、いわゆる「高齢者」として開会式に出席することになる。メディアも本当は都民のことを考えていない 私の知人のアメリカ人が、こんなことを言ったことがあった。「たしかに東京は素晴らしい都市だ。しかし、一つだけ残念なことがある。街を歩いていると、圧倒的にお年寄りが多いことだ。とくにタクシードライバーはみな老人なので、不安になる。 みな親切でチップもないから、その点はいい。しかし、あまりに高齢なドライバーだと、事故が起こったらどうしようと思うことがある。世界の大都市で、高齢ドライバーがこんなに多い都市はないと思う」 現在、都内の65歳以上の高齢者は約300万人。高齢化率は22.9%で、都民のおよそ4.4人に1人が高齢者である。この高齢化のスピードは今後ますます加速し、2020年には25%に近づく。少子化も加速している。東京の出生率は1.17(平成27年)と日本の都道府県のなかでも最低である。 東京五輪は、世界中からいろんな人々がやってくる。そうした人々が目にするのは、街を歩いているのが高齢者ばかりという「シルバーシティ・トーキョー」の現実だ。 さらに、競技会場に行けば、観客席を埋めているのはほとんどが高齢者。五輪のチケット代は高いから、結局、余裕のある高齢者ばかりが手に入れることになるだろう。そうすると、競技をしているのは世界中のヤングアスリートたちで、それを見ているのは高齢者ばかりという“異様”な光景が全世界に発信される。メディアも本当は都民のことを考えていない 「誠心誠意で尽くす」「身を切る覚悟」とみなさん言っているが、政策的にはあまり変わらない。なぜなら、東京が直面している問題は同じだからだ。(一部画像を処理しています) これは、東京ばかりではなく日本全体の問題だが、「少子高齢化」という社会になった以上、これに適応し、さらに次世代が希望を持てるように社会構造を変革しなければならない。 五輪を成功させることも重要な課題だが、「待機児童」「介護難民」などという問題は待ったなしだろう。 このような観点に立てば、保守分裂、野党統一候補などいう「政争」から、選挙戦を占う(=票読み)報道ばかりしているメディアは、じつは本当は都民のことを考えていないのではないかと思う。 これから高齢化がもっとも進むのは地方より大都市圏である。首都圏では2035年までに65歳以上の人口は75%も増え、人口の32%を占めるようになるという。そうなると、現役世代の負担はさらに増す。 現在の20代の一人あたりの税・社会保障の負担は65歳以上より1億円近く多いが、この差はさらに広がるだろう。そして、いまは財政的に安定していても、東京ですら財政危機に直面することになる。 もう、老人は静かに去っていく。これ以上、社会に負担をかけてはいけない。それが最善の選択だと、現在63歳になった私ですら思うが、どうだろうか。