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    スピード出し過ぎで負けたサムスンが泥沼から抜け出す方法

    李受玟(韓国大手経済誌記者) 『韓国のプライド』三星(サムスン)電子がGalaxy Note7(ギャラクシーノート7)の発火事件のせいで最大の危機に陥った。原因が明確になっていないため、米国と日本をはじめ、多くの国で乗客の安全を理由に、この機器の機内に持ち込み禁止令を下すなど、10月11日販売中止の決定が出た後も事件の影響はまだ残っている。サムスン電子「ギャラクシーノート7」の販売中止を案内する韓国の携帯電話ショップ=10月11日、ソウル(AP) 5年ぶりに初めてサムスン電子の年売り上げが200兆ウォン(18.4兆円:1ウォン=0.0921円 2016年10月20日時点)を下回るものと予想される中、消費者の信頼を回復して再びアップルのiPhoneと対等な競争ができるかどうか注目される。 韓国のメディアはGalaxy Note7を、韓国のスマートフォンの歴史の中で最も短い寿命を記録した製品だと呼んだ。約50日間だけ販売されたGalaxy Note7の歴史は次の通りだ。 今年8月2日、サムスン電子は米ニューヨークで「今までのどのスマートフォンより優れている」といいながら、Galaxy Note7を公開した。この機器は同月19日から米国など世界各国で販売された。しかし5日後の24日、韓国のあるインターネット・コミュニティーで、「火と煙が出る」との書き込みが掲載され、サムスン電子の悩みは始まった。 米国や豪州でも発火が相次ぎ、サムスンは必死に原因を探し始めた。 機器の公開1ヵ月後の9月2日、サムスン電子はバッテリーの欠陥を公式的に確認し、「この時まで販売した機器すべてを新品に交換する」と発表した。バッテリーを納品した中国の会社で規格通りに製品を生産してないという点を原因として挙げた。韓国と米国ですぐ交換が始まった。しかし、問題は続いた。9月26日、中国で交換された機器でまた出火。10月1日には韓国でも新しい機器の発火事件が報告された。「バッテリーが原因」といわれていたサムスンの言葉は、消費者らにこれ以上信頼できない主張になった。欠陥を修正したという製品が再び爆発したその時点で「信頼のサムスン」はいなくなっていた。 事態がここまで来ると、韓国はもちろん、世界中でサムスン電子を信じて新製品を購入した人たちは不安になった。多くの韓国人たちはこう心配した。『私が寝ている時にスマートフォンで火が出たらどうする? 知らないうちに家が燃えてしまったら?』『子供が持って遊んでいる途中に火が出たらどうしよう』など。 結局、サムスン電子は、グループの研究所と政府機関に分析を依頼し、バッテリー自体の欠陥はないが、外部の衝撃で発火するという答えを得た。しかしスマートフォンを落とすことはいつでもある。消費者はGalaxy Note7を避け始めた。サムスン電子はこれ以上後退する場所もなかった。最後の決断がくる時だった。 今月11日、Galaxy Note7の販売と交換をすべて停止するという発表は、事態がさらに拡大することを防止しようとするサムスン電子が出した決断だったが、次の悪い道が待っていた。販売を強行して人がけがをしたり、死亡したりするかも知れない。ブランドのイメージは取り返しのつかないところに落ちてしまったが、最後まで行くのではない。そういう面で追加発火の可能性を事前に断ったサムスン電子の選択は正しかった。しかし、この事態が売上に残した影響は否定できない。 サムスン電子は今年4四半期から来年1四半期までGalaxy Note7の販売の機会を失うことで、被る損失が3兆ウォン(約2760億円)以上に達すると発表した。今までの販売中止による直接的な費用は既に4四半期の業績に反映したが、少なくとも2四半期以上の売上が打撃を受けると予想される。一部メディアでは北米地域のブラック・フライデーなど、スマートフォン販売シーズンの第4四半期に6兆ウォン程度の売り上げが発生する機会が空中分解したと報道した。「年売り上げ200兆ウォン」は絶望的に これについてサムスン電子のコミュニケーションチーム(広報部)は「Galaxy S7とS7エッジなど既存商品の販売を拡大して早めに正常化する計画だ」と話した。にもかかわらず、主要モデルの空白があまりにも大きいため、2011年以降続いていた『年売り上げ200兆ウォン』が実現されることはないと思う。 一方、Galaxy Note7の事態の根本的な原因は『技術開発競争のスピード出し過ぎ』のせいだという指摘も強がっている。世界のスマートフォン市場の成長の鈍化がますます進行し、消費者の目を引くことのできる新しい技術の開発に追い込まれた各社が無理にスピードを高めたということだ。特にIT分野の専門家たちは、グローバル・スマートフォンの市場の1位であるサムスン電子が今の席を守る同時に革新的な技術を出さなければならない、この二つの目標のため、競争を限界まで推し進めたと判断した。IBK証券の李・スンウ研究員は「サムスンの強さはスピードだが、協力社の技術力とスピードを考慮せず独走したのが原因だ」と語る。誰よりも早く、最高の機能を数多く搭載しなければならないという目標が、現在の技術の状況と合わず生じた問題という意味だ。 米国のオンライン・メディア・スレート・ドット・コムもGalaxy Note7の生産中止の原因について、「革命的な製品を出さなければならないスマートフォン・メーカー各社の激しい競争が物理的な限界にぶつかった」と報道した。同メディアはまた「Galaxy Note7の電池の爆発の原因はまだ正確に分らないが、メーカーがリチウムイオン電池の限界まで(機能を)増やしてきた事実は知っている、特にサムスンが一つの端末に様々な機能を可能な限りたくさん入れたために発生した問題ではないか」と推定した。 サムスン電子が、泥沼から抜け出すためには、多くの人々が触れたように、『狂ったスピード競争』でどんなものを失ったのか振り返る必要がある。まず、経営者は特定した機能や性能を実現するために発生し得る問題を取り上げる技術者たちの言葉に耳を傾ける必要がある。その上、開発の期限を守るために協力社を追いつめるより、徹底な機器の点検を行うことが望ましい。時間も費用も増える道だが、方法はただそれだけだ。

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    経済状況は危機水準 行き詰まる韓国が日本に及ぼす嫌な影響

    ッテルを貼られるリスクを抱えます。経済副首相が「非常対応体制に入る」 私がもっと気にするのは8日付で韓国の経済副首相が「経済状況を危機水準と認識し、非常対応体制に入ると明らかにした」(中央日報)という報道であります。「薄氷を踏むように非常に危険」であり「必要に応じて市場安定化措置を速やかに取る」体制を敷くことを決定しています。一連の不正資金疑惑の中、海外逃亡生活を続けていた韓国財閥の旧大宇グループの金宇中・元会長。2005年6月、逃亡先のベトナムから帰国後、当局に拘束された(ロイター) これで思い出すのが1997年の韓国危機。韓国第2の財閥(当時)、大宇グループが破たん、解体され、国家はIMFで管理された屈辱の歴史でありますが、あの時も97年12月の大統領選で金大中氏が当選し、翌年2月に金泳三大統領が退任した歴史を踏んでいます。つまり、大統領交代を伴う経済危機と合致しています。 今回の問題のキーは大統領の影響力が財閥にどれだけ及んだか、であります。朴大統領の親友の崔順実が支配するミル財団とKスポーツ財団に韓国財閥より70億円相当の寄付があったとされますが、その財閥とはサムスン、現代、LG、SK、ロッテと見事にそろい踏みであります。 日本は資本家と労働階級という明白な区別がない、と先日指摘しましたが、韓国は財閥を通じた欧米と同じような格差が存在することで同国が常に強固な労働組合と対峙し続ける構図を作り出していました。そして現代韓国の歴史であれだけ問題になった財閥解体は今でも行われず、腐敗と権力闘争を繰り返しています。まさに変われない国民性とも言えましょう。 日本と韓国は双方、貿易相手国として第3番目の規模を誇ります。その貿易額は15年で8.57兆円に及びます。韓国経済の行方に暗雲が立ち込めれば当然日本に跳ね返って来ます。これは日米関係という大枠と違い、目先のビジネスへの影響という点は否めないでしょう。 韓国は国内事情だけではなく、北朝鮮との問題は緊迫した状態にあります。THAADに伴う中国との微妙な温度差もあります。朴大統領から実権が誰かに移った場合、朴政権の政策と判断をひっくり返すことも大いにありうるでしょう。それぐらい同国の基盤はガタガタであり、危機的状況という高官のコメントは現実味を増しているとも言えそうです。(ブログ「外から見る日本、見られる日本人」より2016年11月9日分を転載)

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    韓国経済の先行き暗い 最大輸出先・中国の「韓国離れ」

     韓国経済が苦境に陥っている。新型スマホ「ギャラクシーノート7」が発火事故を頻発させていることから製造中止に追い込まれたサムスンや、ストライキが相次ぐ現代自動車などの製造業だけでなく、韓国ロッテグループは、今年に入ってソウル中央地検が創業家に対する横領・背任疑惑の捜査に着手。ついに9月19日、重光昭夫・現会長が在宅起訴されるに至った。創業者の武雄氏、そして昭夫氏の兄の宏之氏らも同日に起訴され、一連の捜査で創業家5人が起訴されるという前代未聞の事態となった。逮捕状審査のため、ソウル中央地裁に出頭した韓国ロッテグループの重光昭夫会長=9月28日(共同) ロッテは創業家のお家騒動が勃発し、まだ解決に至っていない。昨年1月、創業者の重光武雄氏が日本のロッテHDの副会長だった長男・宏之氏を解任したことに始まり、韓国事業を統括していた次男・昭夫氏は取締役を解任されるなど、親子間、兄弟間の争いが続いている。 ロッテグループだけでなく、世界7位のコンテナ積載量を誇る海運最大手の韓進海運が経営破綻するなど、韓国を支えてきた巨大財閥系企業が、総崩れに陥っている。さらに先行きを暗くするのが、最大の輸出先である中国の「韓国離れ」だ。 韓国の対中輸出は全体の25%に達する。ところが近年、中国は自前の産業育成に取り組んでいる。価格競争力で勝る中国企業は造船、鉄鋼、石油化学などの伝統的産業で世界シェアを伸ばし、今や韓国の競争相手となっている。 お得意様にシェアを奪われる状況は、韓国経済の成長を支えた電機、自動車産業でも同様だ。「3年前、中国のスマホ市場でトップだったサムスンは中国企業のシャオミなどに追い抜かれ、いまやトップ5にも入っていない。長安自動車や長城自動車に追い上げられた現代のシェアも低下した」(前出・韓国人ジャーナリスト) なぜ、韓国企業は苦境に陥ったのか。『週刊東京経済』元編集長の勝又壽良氏は、韓国企業の「強み」のなさを指摘する。「元々、韓国企業の技術は日本の支援で培われたものです。例えば、サムスンは1980年代に日本人技術者を週末のソウルに呼び、高額のバイト料を払って技術を学んだ。 彼らはウォン高にあぐらをかいて自前の技術開発や技術投資を怠り、今や韓国の主要産業で中国との技術差はなくなり、中国が韓国から製品を買う理由もなくなった。追い詰められた韓国はTPP参加に活路を見出そうとしているが、『売れるモノ』を持たない韓国に展望はない」関連記事■ 韓国経済が失速 中国が得意分野を取って代わる構図で打撃■ パナソニック幹部「韓国台湾企業の技術、販売力は日本以上」■ 賃金払わず夜逃げした韓国企業に「民度が低い」と中国人非難■ 中国で松下幸之助や稲盛和夫らの日本人の経営哲学が広く浸透■ 中国で嫌韓がピーク「韓国人は何かと自国の優位を口にする」

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    サムスン・ショック 大失態の要因は極端なコスト削減

     「サムスン・ショック」に韓国が揺れている。最近の韓国経済は半導体・自動車・鉄鋼・造船の4大産業がことごとく苦境に陥っているのだ。サムスンの洗濯機(手前3種類、ロイター) とくに中小企業の低迷は深刻で、全企業の約4割にあたる8万社が借金の利息さえ払えない状態にある。 だが、そうした事実が指摘されても、韓国の危機意識は高まらなかった。韓国のGDPの2割を占めるともいわれる世界最大規模の電機企業であるサムスンがいる限り、韓国経済は安泰──そんな「サムスン神話」があったからだ。 しかし、その神話は粉々に打ち砕かれた。同社が8月に発売した新型スマートフォン「ギャラクシーノート7」が世界中で爆発事故を起こしたのだ。 当初、サムスンはバッテリーが発火原因であると発表し、リコール(無料回収・修理)を実施したが、10月には交換した製品が米国の飛行機内で発火し、あわや大惨事となるところだった。 サムスンのお粗末な対応に米連邦航空局は、同製品の機内持ち込みを全面的に禁止した。日本の国交省なども追随し、世界中でギャラクシーノート7は“搭乗禁止”となる。そして年末商戦を控えたタイミングにもかかわらず、わずか2か月で製造・販売中止に追い込まれた。『週刊東洋経済』元編集長の勝又壽良氏が解説する。「企業の製品事故に伴う損失コストは、設計段階のミスなら初期コストの10倍程度だが、製品販売後では1万倍を要するとされます。今回は最低3000億~5000億円の損失が見込まれている。サムスンブランドの失墜などを加味すると、最終的な損失額は計り知れない」 3年前に豪州でサムスン製の洗濯機が爆発する事故が起きた際、同社の売り上げは約15%低下した。今回はサムスンにとって「事業の大黒柱」であるスマホで発生しただけに、経営の根幹を揺るがしかねない。 それほどの大失態の要因は、極端なコスト削減にあると韓国人ジャーナリストは指摘する。「昨年からサムスンは生産単価を下げるため、IC(集積回路)やタッチパネルなど主要部品を自社製造に切り替えた。その一方で、外部パートナーから購入する部品には最低価格公開入札を導入。安全よりコストを優先した姿勢が爆発事故の背景にあると指摘されている」 同じくスマホで世界進出するLGエレクトロニクスもシェアを落とし、「2014年に4・3%だった世界市場シェアは今年上半期に2.7%まで下落し、韓国内では経営陣の失策が批判されている」(同前)状況にある。関連記事■ サムスンに引き抜かれた人材を日本企業の幹部「裏切り者だ」■ サムスン株急落で「ざまぁ」の声出るも「日本経済が困るよ」■ サムスン 長年の仇敵もいまや日本企業にとっては運命共同体■ 韓国企業が仕方なく始めた独自のイメージ戦略の結果は散々に■ 韓国の財閥 国内は市場ではないと認識し国民の貧乏を歓迎

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    朴氏疑惑を最も喜んだのは誰か? 崔順実で霞むもう一つのスキャンダル

    西岡力(東京基督教大学教授) 韓国政治が大きく揺れている。朴槿恵大統領の古くからの友人である崔順実氏が、民間人でありながら国政の機密文書を入手し、大統領に政策や人事そして服装などについてアドバイスしていたことが暴露されたことがきっかけだ。崔氏が廃棄したタブレットパソコンを入手した中央日報系のニューステレビ局のスクープ報道だった。ソウル中央地検に出頭し手で顔を覆う、韓国の朴槿恵大統領の親友、崔順実氏(中央)=10月31日(共同) ただし、今年初め、崔氏が実質的に支配するスポーツと文化振興のための二つの財団が突然作られ、その金集めに大統領府が協力したことと、2つの財団が朴槿恵大統領退任後の活動の拠点になるという疑いが報じられたことが、その伏線としてあった。批判を受けた2つの財団は、崔氏の影響力を完全に排除する形で再発足させられ、崔氏は娘とともにドイツに逃避していた。実は、崔氏一家が慌てて出国する過程で、ある人物に廃棄を依頼したパソコンが記者の手に渡ったのだ。 大統領は会見を開いて大統領選挙当選後、就任するまでの間に、一部の機密文書を崔氏に見せていたことを認めて謝罪した。しかし、大手のメディアの暴露合戦が続き、野党だけでなく与党も大統領の「道徳性」を批判する中、政界、言論界で誰も大統領を守ろうとせず、支持率も10パーセント台に急低下し、政治混乱が続いている。 ちょうど舛添前東京都知事のずさんな政治資金の使い方や贅沢な出張などが連日、暴露合戦で報じられていた状況とよく似た雰囲気が醸成されている。親北左派はもちろんのこと、従来からの朴槿恵支持派も「このような大統領を持って恥ずかしい」と憤慨している。 ただ、報道で伝えられる朴槿恵大統領の違法行為は、大統領就任前に引き継ぎ段階で入手した外交や南北関係に関する秘密文書を民間人である崔氏に見せ、自身の演説などに対してアドバイスをもらっていたことが大統領記録物管理法や刑法違反になる可能性があること、また、大統領就任後、機密文書である大統領の日程を事前に崔氏に伝えて着ていく服などについてアドバイスをうけていたこともやはり同じ容疑がある。崔順実スキャンダルで一番得をしたのは? 崔氏は外交や安保、経済政策についての専門知識を持っておらず、内政に関与したと言われているのは文化やスポーツ政策だ。報道によると彼女のアドバイスによって人事や予算が恣意的になって、彼女に利益を与えていた疑惑があるが、大統領の政治責任は重大だが、刑事責任を問えるかは現段階では不明だ。ソウル中央地検に出頭した韓国の朴槿恵大統領の親友、崔順実氏=10月31日 一方、この崔順実スキャンダルによって、野党の有力大統領候補である文在寅氏と北朝鮮の間のスキャンダルがかすんでしまった。実は崔スキャンダルが浮上する直前には、2007年盧武鉉政権が国連の北朝鮮人権決議案の採決前に北朝鮮に意見を求め、それにしたがって前年に賛成していた同決議採決を棄権したというスキャンダルが噴出していた。 当時外交通商部長官だった宋旻淳氏が最近出した回顧録によると、政権内で決議に賛成するか棄権するか対立が起き、大統領秘書室長だった文在寅氏が、2007年11月16日に行われた会議で、自分が外相でいる限り賛成しかないと主張した宋旻淳氏をおさえて、南北ルートで北朝鮮の意向を聞くという結論を出したという。外交政策について事前に北朝鮮に問い合わせをしていたという、当時の外相による暴露で文在寅氏は世論の批判を浴びていた。 北朝鮮は、朴槿恵大統領が今年に入り、金正恩政権批判を強め、大量亡命を促したり、金正恩暗殺作戦の演習を公然と行うことを激しく非難してきた。朴槿恵大統領の今回のスキャンダルはまさに北朝鮮と韓国内親北勢力を、結果として利するものとなっている。 韓国政治は、儒教的血縁主義の呪縛を脱することができず、歴代の大統領は保守、左派を問わず、肉親が不正で逮捕されてきた。全斗煥大統領は実弟と夫人の親族、盧泰愚大統領は夫人のいとこ、金泳三大統領は次男、金大中大統領は3人の息子、盧武鉉大統領は実兄、李明博大統領は実兄が逮捕されている。 独身である朴槿恵にとって崔順実は肉親に近い存在だったが、彼女が逮捕された。同じことの繰り返しだ。権力が大統領に集中する中、公私の区別よりも身内最優先が当然という政治文化の中で、大統領に近い人物を周囲がほっておかず、大統領も最終的に信じられるのは身内しかいないという思考方式から脱けられないことがこの背景にあった。父、朴正熙の甘さがスキャンダルを生んだ 朴槿恵大統領の父である朴正熙大統領はそのような儒教的政治文化と激しく戦い、大統領府に親戚が自分の名前を語って不正をしていないかを監視する秘書官を置いていた。しかし、朴正熙大統領も母を北朝鮮のテロで失ったあと、娘である朴槿恵がファーストレディとして激務をこなしていることをみて、崔順実の父親が娘に接近して彼女を利用しておかしな活動をしているという報告を受けながら、それを厳しく取り締まることをしなかった。娘に対する甘さが今日のスキャンダルを生んだことになる。韓国中部鶏竜で開かれた「国軍の日」の記念行事で演説する朴槿恵大統領=11月1日 朴槿恵大統領は局面打開のため、盧武鉉政権時代に副首相と大統領府政策室長を歴任した大学教授を首相に指名した。しかし、野党は朴槿恵スキャンダルが来年末の大統領選まで続くことを内心望んでいるので、その人事に反対しているから、国会での承認が順調に進まない可能性が高い。憲法上、大統領は内乱罪など以外は訴追されないが、機密漏洩などについては検察の捜査に応じることが先ず必要だろう。 一体、崔順実と朴槿恵の不明朗な関係が、どのくらい韓国の国益を害したのか、法律上の違法行為は何があったかを国民の前に明らかにした上で、与党を離党して、安保と外交、経済に専念し、来年の大統領選挙を公正に管理すると宣言するしか混乱を治める道がない。趙甲済氏ら保守派のリーダーはそのようにアドバイスしているが、崔順実氏以外に信頼する側近を持っていない大統領が、自身の法的、政治的責任を認め、退任後、逮捕されることを覚悟して、自己犠牲の上に政局を治められるかどうか、韓国の自由民主主義は正念場を迎えている。

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    朴槿恵の心の闇につけ込んだ「霊夢」 崔順実ゲート事件の内幕

    竹嶋渉(元在韓ジャーナリスト) 現在、韓国政界を揺るがせている「崔順実ゲート」事件。事件の内幕が徐々に明らかになるにつれて、朴槿恵政権をも揺るがしかねない事態になっている。 この事件は女性実業家・崔順実氏(60)が朴槿恵大統領を通して国家機密情報を入手し、国政の運営や政府の人事に関して大統領に助言を与えていたほか、崔順実の血縁者が文化・体育関係の財団を相次いで設立し、そこで不正をほしいままにしてきた、というものである。崔順実氏の娘・鄭ユラ氏にも不自然な特例入学や恩恵付与が報じられてもいる。 韓国では、過去に大統領の近親者や周辺人物が権力を背景に大規模な不正を行った事例があり、これだけでは特に驚くに当たらない。  今回の事件が特異だったのは、「大統領の周辺人物」が新興宗教関係者であったこと、親子2代にわたって濃密な関係を結んでいたことだろう。崔順実氏の父・崔太敏氏(1912~1994)は1970年代に新興宗教・「永世教」を興し開祖となった人物。崔太敏氏は、朴槿恵氏の父・朴正煕大統領の時代から大統領府に出入りし、権勢をほしいままにしていたという。 1974年8月、朴槿恵氏の母親・陸英修女史が狙撃されて死亡する事件が起こるが、このころ崔氏は朴槿恵氏にも接近。1975年に「大韓救国宣教団」なる団体を創設して総裁に就任、朴槿恵氏を名誉総裁に迎えている。1977年には朴正熙大統領から不正疑惑を直接追及されているが、この際には処罰を免れている。1979年に「大韓救国宣教団」を「セマウム奉仕団」に改称し、大学や企業の内部でその勢力を伸長させた。1970年代の朴槿恵氏(大韓民国大統領秘書室編『セマウル』(1975年)より) 崔太敏氏は6人の妻との間に8人の子(3男6女)をもうけたが、崔順実氏は5女にあたる。崔太敏氏は自らの「霊性」を継承する存在として、崔順実氏を特に寵愛していたという。崔順実氏が朴槿恵氏と本格的に親交を深め始めたのは1977年ごろとされている。1977年に崔順実氏は「セマウム奉仕団」の全国大学生連合会会長となり、1979年6月に開かれた「セマウム奉仕団」の体育大会では朴槿恵氏の横の席に座っていたことが確認されている。 1979年10月に朴正熙大統領が暗殺された後、崔父娘はますます朴槿恵氏に食い込み、故・陸英修女史が設立した児童福祉財団・「陸英財団」の幹部も務めた。この財団の運営をめぐり、朴槿恵氏の妹・朴槿令氏と崔父娘との間に摩擦が起こり、朴槿令氏が崔太敏氏の処罰を求めて大統領府に嘆願書を出すという事態が起こっている。もっとも、朴槿恵氏はこの事態の経緯について、自叙伝などでも詳しく触れていない。 「一部では、私が育英財団の運営から退いたことについて、いろいろな憶測を流しています。母が生前建てた子供会館が、姉妹のあいだのいざこざを生んだかのように見られることは、あってはならないことだし、いかなる理由でも許されないことなので、妹にその職を譲った(1990年)。その後、問題が起きたというニュースに接する度、歯がゆい思いをするが、私は妹がよくやってくれていると信じている(朴槿恵氏の側近に対する槿令氏側の批判が発端となり、理事長職を辞任。その後も運営をめぐりトラブルが報じられていた)。」(朴槿恵著『絶望は私を鍛え、希望は私を動かす-朴槿恵自叙伝』晩聲社より)朴氏に欠けていた「実務能力」 自叙伝では一言も触れられていないが、朴槿令氏の嘆願書は「私の姉(朴槿恵)には何の罪もありません。崔太敏に徹底的に騙されていたという罪だけです。騙されている姉が可哀そうで仕方ありません」(李相哲著『朴槿恵の挑戦-ムクゲの花が咲くとき』中央公論新社より)という文章で始まるものだった。韓国の朴槿恵大統領と友人の崔順実氏のお面をかぶって抗議する市民=10月27日、ソウル(ロイター) 1980年、朴槿恵氏は大邱にあった私立総合大学・嶺南大学校の理事長にも就任しているが、ここにも崔太敏氏の近親者が食い込み、不正入学や奨学金横領などの不正を働いたことが明らかになっている。 崔太敏氏は1994年に死亡したが、崔順実氏はその後も20年以上にわたって朴槿恵氏との関係を保ち、朴氏が政界入りした後にはさらに大きな影響力を行使するようになった。ちなみに崔順実氏の前夫・鄭允会氏は崔太敏氏の元秘書であり、朴槿恵氏が国会議員であった期間には、朴氏の秘書室長を7年も務めた。このような癒着がすでに報じられているような数々の不正を生んだことは想像に難くない。 では、なぜ、崔父娘がここまで朴槿恵氏に食い込むことができたのだろうか。まず、朴槿恵氏が20代の若さで相次いで両親を失うという悲劇に見舞われたことが挙げられるだろう。朴槿恵氏は「無所不為(できないことは何もない)」とまで呼ばれた強権的な大統領の娘である。傷心の朴氏につけ入って何らかの利益をむさぼろうとする輩が現れたとしても、特段、不自然なことではない。 また、朴槿恵氏の自叙伝を読む限り、韓国で広範囲に信仰されているキリスト教や仏教など、既存の宗教を信仰していた形跡がない。崔太敏氏は母親・陸英修女史の「霊言」「霊夢」などを口実に朴槿恵氏に接近したが、特別な信仰のない朴槿恵氏にとっては受け入れやすいものだっただろう。また、朴槿恵氏は、とかく「親日派」「独裁者」などと批判を受けてきた父親の業績が正当に評価されることを望んでおり、こうしたことも父親の時代から関係を保ってきた崔父娘との関係を断ち切りがたいものにしたはずである。1970年代の朴槿恵氏(大韓民国大統領秘書室編『セマウル』(1975年)より) 「選挙の女王」などと呼ばれ、政治的な機微に優れているとされる朴氏であるが、政界入りする前までは、実質的な役職に就いたことがない。朴槿恵氏が政界入りする前に就いた代表的な役職は「陸英財団」「嶺南大学校理事長」であるが、いずれも名誉職的なもの。この二つの組織の内部で崔父娘とその近親者が不正をほしいままにしていたわけだから、朴氏には実務をつかさどる能力が欠けていたと言わざるを得ない。こうした実務能力の欠如が、甘言を弄する周辺人物の助言に依存する結果となったと思われる。それが数々の不正を生み、政権末期になってそれが一気に噴出し、ついには政権を揺るがす事態になった、というのが今回の事件の内幕であろう。 大統領夫妻の暗殺という悲劇と、親子2代にわたる腐れ縁が生んだ、更なる悲劇と言わざるを得ない。

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    朴槿恵を操る「宗教家」の正体

    いつの世も権力者というのは孤独なのだろうか。韓国の朴槿恵大統領をめぐる政治スキャンダルのことである。朴氏の「心の友」とされる崔順実(チェ・スンシル)氏とのただならぬ関係に司法のメスが入ったが、新興宗教家の父を持つ彼女の政治介入が事実だとすれば、まさに怪僧、ラスプーチンの再来である。彼女は一体何者なのか。

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    暴走する朴槿恵のホンネとタテマエ 国政介入招いた「やりすぎ」の構造

    佐藤健志(作家・評論家) 韓国は目下、朴槿恵大統領の長年の親友といわれる女性・崔順実(チェ・スンシル。ただし現在では「チェ・ソウォン」を名乗っているという)氏が、公職についてない民間人であるにもかかわらず、国政に深く介入していたとされる疑惑に大きく揺れている。 10月25日には、この件に関連して朴大統領が謝罪。10月31日には、検察に出頭した崔順実氏が緊急逮捕されたが、真相究明はこれからとされており、大統領の弾劾や、辞任を求める声まで高まるにいたった。大統領の支持率は日を追って下落、今や10%前後にまで落ち込んだと言われる。崔順実氏(韓国誌「時事IN」提供・共同)国政介入の問題点は何か 報道を見るかぎり、崔順実氏をめぐる疑惑の内容は、主として以下の三点にまとめられる。 (1)自分が関与した二つの財団の理事職に、多数の知人を送り込んだ。また大統領との関係を利用して(あるいは「青瓦台」、つまり大統領府の圧力で)、両財団への出資を財界に求めたうえ、当の資金を私的に流用した可能性もある。 (2)大統領と親しいというだけで、政府の高官たちと接触、人事や政策に口を出した。 (3)大統領の演説草稿や閣議資料など、公務に関わる機密文書を入手し、内容について介入した。(※)娘を名門女子大に不正入学させたという疑惑も持ち上がっているが、これは脇に置くことにしたい。 事実だとすれば、どれも感心しない話だが、とくに重大なのは(3)だろう。韓国紙「中央日報」日本語版が10月26日付で配信した記事によれば、崔順実氏のパソコンからは、わが国の特使団を含めた内外要人と会見したり、電話で話したりするにあたって、事務方が用意したとおぼしい資料のファイルが多数発見された。 日本特使団との会見資料には、竹島や慰安婦の問題などに関する対応指針も記されていたと言われる。しかもこれらのファイルが崔氏のパソコンに保存されたのは、会見や通話が行われる前のことだったのだ。http://japanese.joins.com/article/028/222028.html?servcode=200§code=200 このような機密性の高い文書(北朝鮮との極秘接触に関するものもあったと報じられている)が、事前の段階で民間人の手に渡ることは、国益に重大な支障を及ぼしかねない。政治や外交、安全保障の専門家でもなく、公職にもついていない崔順実氏が、内容に口出しすることの是非はもとより、かりにファイルが彼女のもとから流出、インターネットを通じて拡散でもされたら、どうするつもりだったのだろうか。 朴槿恵氏は大統領としての見識を疑われても仕方ないと言わねばなるまい。真偽のほどは不明ながら、崔氏を中心とする民間人のグループが、実質的に朴氏を操っていたという説すら飛び出すにいたっている。朴槿恵大統領と崔順実氏の関係朴槿恵大統領と崔順実氏の関係 崔順実氏の父親は、崔太敏氏という宗教家だった。 朴槿恵氏の父親は有名な大統領・朴正煕だが、彼は1974年、夫人の陸英修氏を暗殺で失う。当時フランスに留学していた朴槿恵氏は、ただちに韓国に戻って、実質的なファーストレディとしての役割を果たすことになった。崔太敏氏はその前後から朴正煕大統領に接近、これをきっかけとして朴槿恵氏と崔順実氏の交友も始まったと言われる。1975年6月、ソウルの高校で行事に参加した崔太敏氏(左)と朴槿恵氏(聯合=共同) 朴正煕大統領も、1979年に暗殺された。以後、朴槿恵氏は長らく政治の世界から身を引くが、崔太敏氏と順実氏の父娘はこの時期も彼女を支えている。朴槿恵氏が崔順実氏に対して特別な思い入れを持つにいたったのにも、無理からぬ事情があったのだ。 ちなみに崔順実氏は、実業家の鄭允会(チョン・ユンフェ)氏と結婚していたものの(現在は離婚)、鄭氏についても、朴槿恵政権の人事に介入しているという疑惑が報じられたことがある。2014年、旅客船「セウォル号」が沈没して多数の犠牲者が出たとき、韓国では朴大統領が事故発生直後に男性と密会していたのではないかというウワサが流れたものの、そのとき密会相手と目されたのも鄭允会氏だった。 くだんのウワサについて記事を書いた産経新聞ソウル支局長(当時)の加藤達也氏は、大統領にたいする名誉毀損に問われるハメになったものの、2016年10月28日に同紙が配信した記事で、取り調べ中、崔太敏と崔順実の両氏に関して、検事からしつこく聞かれたと回想する。逆にそのせいで、崔父娘との関係こそ朴槿恵大統領の最大の急所だと気づいたとのことだが、加藤氏も今回の疑惑について、両親がともに暗殺されるという朴槿恵氏の過去と、そこから生まれた孤独感や猜疑心が根底にあると述べた。 つまり崔父娘の他には、本当に信じられる相手がいなかったのではないかということなのだ。そして崔太敏氏は1994年に死去しているため、残るは崔順実氏だけとなった次第である。http://www.iza.ne.jp/kiji/world/news/161027/wor16102708090005-n1.html?obtp_src=www.iza.ne.jp「やりすぎVSやりすぎ」の構造「やりすぎVSやりすぎ」の構造 けれども国政介入疑惑をめぐっては、朴槿恵氏の過去や性格もさることながら、韓国社会におけるタテマエとホンネのあり方が、少なからず作用しているように思われる。 物事について、タテマエとホンネとが存在すること自体は、古今東西どこでも見られる。しかし韓国では、両者がともに極端になりやすく、それでいて奇妙にバランスを取ってしまうのだ。10月31日、韓国ソウル中央地検前でメディア関係者や朴槿恵大統領の退陣を求める市民らに取り囲まれる崔順実氏(AP) 崔順実氏をめぐる疑惑で言えば、権力者が自分の周辺を、身内や親しい間柄の者、あるいは世話になった者で固めようとするのは、望ましいかどうかは別として、自然な心情にすぎまい。 それらの人物に特権や便宜を提供するのも、タテマエ上は問題があるとはいえ、ホンネとして理解しうる。だとしても、公職についていない民間人に対して、政府の人事や政策に口を出すことを許したり、当の人物に国家の機密文書を見せたりするのは、いかんせん「やりすぎ」ではないだろうか。 関連して紹介したいのが、「中央日報」日本語版が11月1日付で配信した記事である。これは崔氏が検察に出頭し、深夜に緊急逮捕されたことを報じたものだが、書き出しはこうなっていた。 元・現大統領の家族でもなかった。企業のトップでも高官でもなかった。周囲の人たちが「会長様」(注:「絶対的な実力者」の意)と呼んでいたが、いかなる肩書もない女性、チェ・ソウォン(60)だった。世間は彼女を崔順実(チェ・スンシル)と呼ぶ。 http://japanese.joins.com/article/212/222212.html?servcode=200§code=200 上記の文章から読み取れるのは、次の二点である。 (1)現職の大統領や大統領経験者の家族、企業のトップ、あるいは政府高官など、「偉い人々」のからんだ不正、ないし不正疑惑なら、さして驚くにはあたらない。 (2)しかし今回の疑惑は、まったく肩書きのない一民間人が、「偉い人々」以上の不正をやらかしたかも知れない点で、そのような基準に照らしても、なお衝撃的だった。 「権力を握ったら最後、何をしてもいい」というホンネが、韓国社会のレベルで計っても暴走してしまった次第なのだ。暴走するタテマエ しかるにタテマエのほうも、しっかり暴走している。崔順実氏に機密文書を見せたことをめぐって朴大統領が謝罪した翌日の10月26日、「朝鮮日報」紙日本語版の社説は、大統領が「今や国民を説得する最低限の道徳性まで失い(中略)もはや政府の各部処(省庁)も大統領の指示が受けられないだろう」と書き(二番目のカッコは原文)、「今は誰もが大韓民国の国民であることを恥だと口にしている」と結んだ。 「政治を私物化してはいけない」というのは、タテマエとしてまったく正論である。だとしても真相の究明がこれからであり、かつ大統領が謝罪した段階で、ここまで糾弾する姿勢を見せるのも、いかんせん「やりすぎ」ではないだろうか。ついでに現在の韓国で、本当に誰もが「大韓民国の国民であることは恥だ」と口にしているかどうかも、少なからず疑問の余地があろう。韓国・ソウルで行われた朴槿恵政権に対する抗議集会=10月28日(共同) 同じ26日に配信された「ハフィントンポスト」の記事にも、朴槿恵大統領を「何の内容もない人物」と評したジャーナリストの発言や、現政権が「事実上、すでに植物政府(注:植物人間の政府版らしい)になった」という、野党関係者の発言が紹介されている。 また10月29日には、ソウル市内で大規模な抗議デモが行われた。ところがデモ隊が、届け出ていたデモのルートを変更したり、警官から楯やヘルメットを奪ったりしたにもかかわらず、ソウル警察庁は翌日、「市民の皆さんも警察の案内に従い、理性的に協力してくださったことに感謝申し上げる」と表明する。 31日、崔順実氏が検察に出頭した際など、「これでも食らえ」ということなのか、検察庁の入り口に動物の汚物をまき散らした者がいたと報道された。さらに11月1日には、ソウルの最高検察庁にパワーショベルで突入する者まで現れるありさま。 文字通りの暴走だが、運転していた男は警察に対し、崔氏が出頭の際に「死んで償うほどの罪を犯した」と語ったので、それを手伝ってやろうと思ったと供述しているとされる。ただし残念ながら、崔氏がいたのは同じ検察でも最高検察庁ではなく、ソウル中央地検だった。 こういった「『悪』と断罪された相手には何をしてもいい」と主張せんばかりの発想が、「権力を握ったら最後、何をしてもいい」という発想と通じるのは明白ではないだろうか。ホンネとタテマエはつねに表裏一体、ないし紙一重の関係にあるのだ。 となると、崔順実氏や朴大統領をたんに批判したり、政治の刷新を唱えたりするだけでは、今回のような疑惑の再発を防ぐためには十分ではない。真に必要なのは、韓国社会におけるタテマエとホンネのあり方を見直し、両者が極端になることなく共存する道をさぐることと言える。 その際には「反日」の理念についても、ぜひ見直すことを期待したい。周知の通り、反日は韓国の国是、ないしお家芸とも呼ぶべきものだが、例によって例のごとく、「暴走するタテマエ」としての性格を多分に持っているからだ。 では、反日のタテマエに対応するホンネとは何か? これについては、朴槿恵大統領が就任直後の2013年3月、「加害者と被害者という(日韓両国の)歴史的立場は、千年の歴史が流れても変わらない」旨の発言をしたことを挙げれば足りる。 何というか、驚くべき発想ではないだろうか。朴槿恵が正しければ、向こう千年間、韓国はわが国に負けつづけるのである!

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    朴槿恵は「閔妃」と同じだ! 李朝時代と変わらぬ韓国政財界の闇

    果的に、大統領に影響力を使って、利権をほしいまま手に入れていったのでしょう。ソウル中央地検に出頭した韓国の朴槿恵大統領の親友、崔順実氏=10月31日(共同) 朴槿恵の私的な部分を指摘したコラムを書いて韓国検察に起訴された産経新聞の加藤達也元ソウル支局長が男性問題を取材していましたが、そういう人脈も含めてあらゆる落とし穴がある中で、人間の弱さに気づかなかったのでしょう。 歴代大統領も似たようなもので、普通は大統領の妻や兄弟が権力にすり寄る者に利用されて、崔氏のような人物に引っかかるんです。でも、朴槿恵は夫も子供もいないので、親しい友人が不正、腐敗の窓口になってしまったということです。きっと崔氏と同様に影響力を持つ人は朴槿恵の回りにほかにもいると思いますよ。 これは中央集権国家の弊害で、韓国に限ったことではありません。中国でも権力者の腐敗はよく知られていることで、今回の朴槿恵自体にそんなに責任があるわけではないですが、結局取り巻きの人間がそうしてしまう。韓国の大統領は孤独なんです。 廬武鉉元大統領も退任後に親族らによる不正献金疑惑が浮上して結局自殺に追い込まれてしまったように、決して珍しいことではない。大統領の力を利用しようと、接近してくる人物に足元をすくわれる構図は繰り返されてきている。最近の韓国は朝鮮時代に先祖返りしただけなんじゃないでしょうか。 今回の不正が明るみになったカラクリは、朴槿恵が使っていたパソコンから足がついたんでしょう。処理をちゃんとしないで、頼まれた人がそれを処理しなかった可能性が高い。本来ならきちんと消去などの処理をやってくれる人がいるはずなのに、とにかくお粗末なんですよ。権力者の器ではない朴槿恵 簡単に言えば朴槿恵の脇が甘かった。側近なんかも信用し過ぎて裏切られたんでしょうね。朴槿恵は秘書官をすべて切ってしまったみたいで、新たに来た人たちがどれだけ彼女を支えられるか、その人材の確保は難しいと思います。今はほぼ孤立状態にあるわけです。 普遍的なことですが、権力者は側近から良いことしか聞かないので判断が鈍るんです。だから権力を持った者が最も気をつけなければならないところを朴槿恵が手抜かりをしたということなんです。 朴槿恵は元大統領の娘ですが、やはり精神的に弱かったということ。両親を早く亡くした上に結婚もしていない。不安ばかりが募って崔氏という女に頼り切ってしまったのは理解できます。まあ、所詮、朴槿恵は権力者になるべき人物ではなかったということでしょう。 今回の問題でやっかいなのは、この混乱を利用しようとする勢力が韓国内には必ずいるという現実です。韓国国内で北朝鮮に関わりを持つ勢力がここぞとばかりにつぶしにかかり、北朝鮮の勢力拡大に一定の役割を果たすんです。 もちろん北朝鮮シンパの野党も活動を活発化させます。今、大統領の責任を声高に訴えているのは、どうもそういった勢力のようです。やはり完全な権力闘争ですね。これだけの事態になると、次の選挙に大きく影響し、結果的に北朝鮮に利する政権が誕生してしまえば最悪の事態といえるでしょう。 そして北朝鮮は必ずといっていいほど、つけこんでくるはずです。朴槿恵の騒動でせっかく弱り始めた北朝鮮の台頭を後押しするようなことになれば、それが一番罪深い失敗ということになります。弾道ミサイルの発射実験を視察する金正恩氏(朝鮮中央通信=共同) 朴槿恵の残りの任期は1年4カ月ほどあり、大統領を辞任しない限り弾劾されないため、なんとかのらりくらりと大統領を続けるでしょうが、任期満了後は訴追されることも考えられます。 この間に落ちた支持率を上げるために、「反日」色を強めて国民の意識をまとめるのではという懸念については、今回のような事態にまでなれば、そんなことしても無駄ですね。もう完全にターゲットが朴槿恵になっているので、野党は次の政権を取りに来るわけですから。ここで「反日」を使っても効果はほとんどないでしょう。時間がかかる韓国社会の成熟 韓国で旧態依然とした権利闘争や利権の奪い合いが激しいのは、強い自尊心と権力を掌握したがる国民性だと思います。良いか悪いかは別にして、韓国の外交が巧みなのはそのせいです。米国や中国に評価されたい願望が過剰にありすぎて、それがねじ曲がった「反日」活動をエスカレートさせる原動力になっています。 良い例が韓国の財閥の現状でしょう。ここにも利権があまりにも集中するため、結果的に腐敗して不祥事が相次ぎ、それがより大きな権力者に利用されていくのです。韓国の財閥は財閥自体が朝鮮時代にあった党派争いをしているようなもので、互いにつぶし合ってきた結果、その権力闘争の中で衰弱していった財閥もあります。「現代」の本社ビル それは極度な独裁政治を敷く北朝鮮も、朝鮮時代さながらに韓国と党派争いを起こし、悪い方向に先祖返りしたのですが、今回の事件を見る限り、韓国も同じような失敗をしてしまったようです。これは朝鮮半島の指導者の粒が小さくなり、喫緊の政治課題が見えなくなったからでしょう。そこに中国までが絡んできて、日本に対しては生産的ではない歴史問題に固執しています。東アジアは確実に退歩しています。そこにロシアが漁夫の利を狙っているというのが、今の状態なんです。 特に韓国と北朝鮮はこのままの状態で、国際社会で本当に生き残れるのか疑問に感じます。そこで、日本がどう対応し、いかにリーダーシップを発揮するかが問われています。 かつて伊藤博文が統監府の統監となって財政再建をしようとした時と、同じような状況といったらいいかもしれません。よく言われるのは、当時の韓国は、中央集権的だった日本の平安時代末期の社会相とよく似ており、韓国の自立のため地方分権的な社会作りを求めた伊藤の施策は、理解が難しかったのです。 今回の件で、日本は韓国という国の一面を垣間見ることになりました。日本としては朝鮮半島との歴史的な状況を念頭に置き、冷めた目で静観しつつ対朝鮮半島との外交戦略を構築しておく必要があります。 (聞き手、iRONNA編集部・津田大資)

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    朴氏「最大のタブー」崔順実スキャンダルはなぜ表面化したのか

    秀樹(静岡県立大学大学院 国際関係学研究科准教授) 今回のスキャンダルの一報を聞いて、これはある意味韓国現代史の悲劇であると言えるのではないかと感じました。朴槿恵氏は母・陸英修(ユク・ヨンス)女史と父・朴正煕元大統領を相次いで暗殺で失うという非常に悲惨な経験を経て、心に深い闇を抱えるようになりました。それが今回の事態の一因になっているように思います。バランスを失った朴槿恵氏の心の隙間に崔順実氏の父親、崔太敏(チェ・テミン)氏が巧みに入り込んだのです。ある種の「マインドコントロール」にかかったような状態が現在まで続いているのではないかと思わせるものがあります。そんな人物が国民の直接選挙で大統領になってしまったのです。取り調べのため、ソウル中央地検に入る崔順実氏=1日(聯合=共同) 崔太敏氏と朴正煕氏が親密だったこともあり、娘の朴槿恵氏を取り巻く崔順実氏と元夫の鄭允会(チョン・ユンフェ)氏、さらに崔太敏氏をめぐる噂は昔からありました。私が韓国に留学した1980年代後半でも、特に朴槿恵氏と崔太敏氏の根拠なき与太話が酒場で飛び交うほどでした。権勢をほしいままにした朴正煕の娘であり、陸英修氏亡きあとはファーストレディの代役を務めるなど国民的人気もあった朴槿恵氏は、それだけでも特別視される存在だったのです。 崔順実氏に関しては、元夫である鄭氏が朴氏の元側近であり、2年前にも旅客船セウォル号沈没事故の当日に「朴氏と鄭氏が密会していた」という根拠のない噂が広がり波紋を呼びました。疑惑はなんとか収束して朴氏は困難を乗り切ったかに見えましたが、甘かったようです。「最大のタブー」は他にもあったのです。今回の事態は、大統領府が設立に関与した疑いのある2財団を崔順実氏が私物化したという資金流用疑惑がきっかけでマスコミから追い掛けられるようになり、機密資料が入った崔氏のタブレット端末の存在が発覚しました。 終わったはずの疑惑がぶり返した背景には、4月の総選挙で与党セヌリ党が惨敗を喫したにもかかわらず、親・朴槿恵体制が続いたことがあると思います。与党からは有力な次期大統領候補があがらず、潘基文国連事務総長に頼るほかないありさまです。朴政権がレームダック化していく中で、隠しきれるはずのスキャンダルが世に出てしまった側面があるように思います。与党が総選挙に勝っていたらこうした事態には至らなかったかも知れません。朴氏を自縄自縛した「国会先進化法」 今回のスキャンダルのきっかけとなった資金流用疑惑の構図は、歴代大統領がたどったパターンだと思います。崔氏は朴氏にとって唯一信じられる「身内」といっても過言ではない存在だったと思われるからです。歴代の大統領は、親族による大統領の権力を笠に着た不正・横暴が暴露される形で悲惨な末路をたどっています。朴氏は自伝で認めているようにある種の人間不信に陥っていて、大統領になってからも「不通」問題が指摘されてきました。妹の槿令氏や弟の志晩氏が崔太敏氏との関係を切るように80年代から言ってきたにもかかわらず、朴氏は耳を貸しませんでした。崔順実氏は孤独な朴氏にとって、母も父も殺されて周囲がみんな離れていく中でも心の支えになってくれた牧師の娘だったわけで、権力を利用してさまざまな不正を働いたという構造はこれまでと変わりません。 野党も当初は挙国一致内閣を求めたかと思ったら、真相究明が先だと言い出したり、対応が揺れています。与党内からも解党的出直しを迫る声が出てきていますが、与野党とも1年後に控える大統領選挙を念頭にどう対応していくべきか図りかねている状態です。中立的な人物を立てて与野党による挙国一致内閣を組織するのか、それとも大統領の弾劾に動くのか、世論の動向を見ながらタイミングを測っている感じだと思います。いずれにせよ、朴大統領は与野党の駆け引きの道具として使われた末に惨めな形で退任することが避けられないでしょう。 ただし「朴正煕の娘」という政治家・朴槿恵の強さが失われたわけではありません。彼女の政治的アイデンティティは政策でもイデオロギーでもなく「朴正煕の娘」であることなのです。朴氏には何があっても彼女から離れない「コンクリート支持層」がおり、彼らは朴正煕氏を心から信じてきた層でもあります。支持率もさすがに大きく落ち込みましたが、これほどの大スキャンダルにもかかわらず何とか踏み止まっているのはこうした支持層のおかげだと思います。韓国の大統領選は同じ与党でも現職を批判しなければ勝利できませんが、朴氏に対しては、3割はいるとされてきた支持層を敵に回すことから、そうした戦法が使えないと言われたほどです。2012年12月、ソウル・青瓦台で会談する韓国大統領選で当選した与党セヌリ党の朴槿恵氏(左)と李明博大統領(聯合=共同) 韓国の国民にとっては当然、衝撃の事態です。自分が選んだ国家元首が正体不明の新興宗教の牧師の娘に操られていたということが受け入れられないのです。韓国はいま、経済は苦境に立たされ、安全保障でも困難に直面しています。朴氏が野党時代に主導して作った「国会先進化法」は、与野党が対立する案件は6割の賛成がないと国会に上程できない規定となっており、大統領就任以降、政権が提出する主要法案が国会を通らない異常事態が続いています。雇用問題や所得格差など改善できていませんから、国民生活は火の車です。安保も北朝鮮の度重なる挑発の前に危機的状況です。未だ国論を二分する朴正煕の評価 そんな最中に起きた国を揺るがす大スキャンダルですから、国民に動かされる形で与野党が朴氏の弾劾に動く事態もあり得ると思います。ただ弾劾については、盧武鉉元大統領の時の失敗を教訓に、安易に動くことには与野党とも慎重にならざるを得ません。今は沈黙しているコンクリート支持層の反発に触発された世論の批判を受けて、しっぺ返しを食らう事態を恐れるわけです。ただし、盧氏の時と今回とは状況が大きく違います。盧氏は就任1年後、それも総選挙直前の弾劾請求でしたが、朴氏の場合は残り任期1年余りのうえ、総選挙も敗北する形で終わっているからです。記者会見で謝罪する韓国の朴槿恵大統領=10月25日、ソウルの青瓦台(聯合=共同)  もし与野党が合意して国会で弾劾が可決されれば、憲法裁判所の判断に委ねられますが、認められれば60日以内に後任の大統領選挙が行われます。ここで問題になるのは、与野党とも大統領選への準備が全く進んでいないということです。潘基文氏や、野党からは実質的な最高実力者である文在寅(ムン・ジェイン)氏の名前が挙がりますが、韓国政治が大転換点を迎えたいま、果たして彼らが国民の目に新しい道を提示できる人物と映るかどうか、疑問が残ります。既存の政治に対する不信感は頂点に達しています。 潘氏が支持を集めてきた理由は、国内で「世界大統領」とも呼ばれる国連事務総長という抜群の知名度に加え、外交官出身のクリーンなイメージによるものですが、任期末になって、与党の親・朴槿恵派に近づきながら大統領への色気を露骨に見せるようになってきたことから、今回のスキャンダルで大きな打撃を受けると思います。むしろこの二人を飛び越えて、次の次の大統領候補と目されていた人たちによる世代交代が一気に起こる可能性もあると思います。 現在の韓国の繁栄を作り出す上で、朴正煕が果たした役割が大きいことは疑いないものの、一方で、韓国社会が抱える様々な矛盾にも朴正煕の存在は大きな影を落としています。英雄か、単なる独裁者か、朴正煕をめぐる評価は未だに国論を二分するほどです。非業の最期を遂げた朴正煕の娘である朴槿恵までがこうした形で惨めな末路をたどることになったことは、韓国現代史の大きな悲劇だと思います。(聞き手、iRONNA編集部・松田穣)おくぞの・ひでき 静岡県立大学大学院国際関係学研究科准教授。福岡県出身。九州大学大学院比較社会文化研究科博士後期課程単位修得退学。NHK記者、朝日新聞記者、韓国東西大学校国際学部助教授などを経て、平成22年から現職。専門は現代韓国政治外交、朝鮮半島をめぐる国際関係。

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    崔氏逮捕で収拾か、エスカレートか? 朴大統領スキャンダルの行方

    辺真一(ジャーナリスト、コリア・レポート編集長)(Yahoo!個人 2016年11月1日分を転載)韓国へ帰国した崔順実氏=10月30日、仁川国際空港(聯合=共同) 「韓国版ウォーターゲート事件」を模倣して「崔順実ゲート事件」と呼ばれる朴槿恵大統領にまつわる一大スキャンダルが渦中の人物、崔順実氏が電撃逮捕されたことで急転収拾に向かうのか、それとも、さらにエスカレートするのか重大な局面を迎えている。 朴槿恵政権が早期収拾、幕引きを図ろうとしているのは明らかだ。何よりも事件の主役である崔順実容疑者が事実上逃亡先のドイツから急転直下帰国し、検察の事情聴取に応じたことがそのことを示している。 崔容疑者は帰国直前の「世界日報」とのインタビューでは「ドイツに移住するため来た」と長期滞在を示唆していた。また、韓国の検察に召還された場合、帰国する考えはないかとの質問に「今は飛行機に乗れないほど神経が衰弱しており、心臓も悪く、治療を受けている」と語っていた。それが一転、帰国となった。 ドイツは崔容疑者にとっては1979年から85年まで留学し、住み慣れた言わば「第二の故郷」である。家もあり、成人になったばかりの一人娘もいる。それでも大騒動の中、帰国を決断したのは、窮地に立たされている朴大統領を救う思いがあるのだろう。 崔容疑者は昨日中央地検に出頭する際に「死ぬほどの罪を犯してしまいました」との言葉を発し、国民に謝罪していた。「死ぬほどの罪」とは一連の容疑への謝罪ではない。 崔容疑者は前出のインタビューで「大統領は立派な人だ。そんな人に物議をかもすようなことをしてしまって申し訳なく思っている。死にたい気持ちだ」と語っていたところをみると、朴大統領に対して罪を犯したという意味のようだ。この言葉とおりならば、朴大統領を庇うつもりで帰国を決断したといえる。自分が表に出ることで朴大統領への風当たりを少しでも弱めることができると考えているに違いない。 崔容疑者には▲「ミル文化財団」と「Kスポーツ財団」の不法設立と基金募金疑惑と韓国とドイツで設立した「ザ・ブルーK」など私的な会社への流用疑惑▲青瓦台文書流出疑惑▲娘の不正入学疑惑など様々な疑惑が掛けられている。容疑だけで横領、背任、脱税、外為法違反など10件ぐらいあるとされている。叩けばいくらでも埃が出る。 検察も逮捕した限り、容疑を固め、起訴に持ち込むだろう。さらに、崔容疑者に関連した人物らを逮捕して事件の早期決着を図る構えだ。その中には出国禁止措置を取った財団の創設に関わった安鍾範・政策調整首席秘書官や大量の内部文書を崔容疑者に提供したとされるチョン・ホソン秘書官ら青瓦台関係者らも含まれるだろう。ニクソン大統領の二の舞に 朴大統領は収拾策として青瓦台(大統領府)の人事を一新している。これで収まらない場合は、次に内閣改造に踏み切るだろう。また与党「セヌリ党」をまとめるために党籍離脱にも応じるかもしれない。次期大統領候補の選出に関与させないため非主流派(非朴槿恵派)は朴大統領に脱党を迫っているからだ。さらに、挙国中立内閣の要求を呑む可能性もある。韓国大統領府の正門=1日、ソウル(聯合=共同) 与野党が合意して中立内閣を組閣し、選出した新総理に大統領の権限を委譲させる。この場合、朴大統領は国家元首という象徴的な存在に留まることになる。任期終了の2018年2月までお飾り的な存在になることに抵抗はあるかもしれないが、弾劾や退陣に追い込まれるよりもベターな選択だ。 仮に与党の要求を拒否すれば、40人近くいる非主流派が造反する可能性もある。国会(300議席)で多数を占める野党に仮に与党から29人が離反し、同調すれば、3分の2の多数(200議席)で弾劾が成立してしまう。盧武鉉大統領が過去に弾劾にあった前例があるだけに可能性はゼロではない。 大統領弾劾訴追案が可決されれば、可否を審議する憲法裁判所の判断が出るまで大統領の職務を一時停止しなければならないし、憲法裁判所が国会決議を有効と認めれば、韓国史上初の任期途中の辞任となる。まさに「ウォーターゲート事件」で辞任したニクソン大統領の二の舞になる。 挙国中立内閣は当然、野党が同意しなければ成立しない。しかし、そもそもこの案は第一野党の「共に民主党」と第二野党の「国民の党」が揃って真っ先に主張していたものだ。従って、野党が賛成すれば、朴大統領は受け入れざるを得なくなるだろう。 というのも、仮に国会での弾劾を防げたとしても、今は朴大統領に弾劾や下野は求めてない野党が一転、朴政権退陣の院外闘争に打って出る可能性もあるからだ。野党が街頭に出て市民主導のデモに合流すれば、2万人でスタートしたデモの規模は大規模なものになるだろう。それが連日続けば、退陣に追い込まれる可能性もある。 弾劾も、退陣も避けたいならば、結局のところ挙国中立内閣を受け入れざるを得ない。今の15%前後の低支持率では18年2月の任期まで持たないからだ。 与党が一転、挙国中立内閣に舵を切ったことから、事態が収拾するか、エスカレートするかは、朴大統領がこの案を受け入れるかどうかにかかっているようだ。(参考資料:「死に体」の朴大統領 弾劾か?下野か?居座りか?)

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    朴槿恵大統領の妹が告白「姉は本来、反日などではない」

      韓国総選挙で与党が大敗したことで、2年を切った残り任期の政権運営が厳しくなった朴槿恵大統領。その妹、朴槿令氏(61)に話を聞くことができた。彼女は韓国国内では姉の朴槿恵大統領との不仲で知られており、昨年は「日本に謝罪を要求し続けるのは不当だ」と発言し、話題を呼んだ。ところがいま、彼女は意外にも姉に同情的だった。会談に臨む安倍首相と韓国の朴槿恵大統領=9月7日、ラオス・ビエンチャン(代表撮影・共同)「大統領(朴槿恵)が歴史認識問題を掲げ続けてしまったことで日本との距離ができてしまい、反日的と見られていることは知っていますが、彼女は本来、反日などではありません。 父の朴正熙が生前話していた、『これからはアジアが世界の新たな主人公となるはずだ。そのために、日韓は手をつながなければならず、韓国社会でそうした情緒を育んでいかなければならない』という言葉を胸に刻み、1980年代はじめに日本を訪問したときにも各界の要人にその言葉を伝えたそうです。 むしろ今回勝利した韓国の野党のほうが、反日的な親北朝鮮勢力が強いのが特徴です。親北勢力は日本との友好な関係を断ち切ろうとしています。中国でさえ北朝鮮と距離を置くなか、韓国社会はその流れに逆行する反応を総選挙で示してしまいました」 彼女によれば、姉もまた、そうした親北勢力に脅かされているのだという。「大統領が慰安婦問題を取り上げたのは彼女自身が女性であることを意識していたからだと思いますが、日本との関係が悪化してしまった背景には、慰安婦問題に関わる政府機関のなかにも左翼的な親北朝鮮勢力がいたことも大きい。私が韓国で天皇のことを『日王』と呼ぶのはおかしいと言うだけでメディアでも叩かれてしまうのも、韓国のメディアや社会が左傾化したから。 本来、韓国経済は日本からの技術と資本によって成長し、日本からの輸入が途絶えれば数か月後には立ちゆかなくなるにもかかわらず、韓国のなかでは日本の重要性が見えなくなってしまっているのです」 朴槿令氏は、今回の総選挙に小政党から出馬し、惜しくも落選した。政界進出を目指し始めた妹は近い将来、姉と連携することも視野に入れているのだろうか。●取材/平井敏晴関連記事■ SAPIO人気連載・業田良家4コマ漫画【1/2】「根拠のないデマ」■ SAPIO人気連載・業田良家4コマ漫画「鏡のない国のパク」■ 朴槿恵大統領の言論抑圧 ISや北朝鮮テロに免罪符与えかねず■ 朴槿恵大統領 反日団体を放置してきたツケが回ってくる■ 朴槿恵大統領の「対日意地っ張り」そろそろ終了かもとの予測

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    支持率が過去最低 朴政権はレームダック状態になりつつある

     韓国・朴大統領の支持率が2013年2月の大統領就任以来、過去最低になった。中央日報日本語版(10月15日付)は、世論調査会社、韓国ギャラップが14日、発表したデータから朴槿恵大統領の支持率は26%と報じている。朴大統領の支持率は、就任から1年半は高い率を誇っていた。支持率が60%前後あり、国際的にも注目された時期だ。国民からの高い支持率を背景に日本に対しても強い姿勢をとった。それを韓国の国民は支持する、という循環となっていた。状況が変わったのはセウォル号の沈没事故からだ。朴大統領の対応のまずさも指摘され、支持率は一気に下がっていった。支持率は50%を切り、40%前後を行ったり来たりの状況となった。確かに就任後1年半と比較すると低いが、それほど悪くない数字だ。中国との貿易への期待と日本への強硬姿勢への評価などによって一定の支持を残したと言える。ただ最近は外交も、経済も、政治も行き詰まり、閉塞感が漂う状況になった。まだ1年4ヶ月の任期を残す中で、26%の支持率はやはり問題だ。レームダック状態になりつつある。演説する朴槿恵大統領(代表撮影・共同) 韓国を取り巻く状況は八方塞がりの状況だ。外交・安全保障、経済、社会のすべてで不安定要素があらわれてきた。韓国は民主化してから約30年間、アジア通貨危機などがありながらも、ほぼ一貫して上昇ムードにあった。発展途上国と呼ばれた時代から、一気に先進国に変わっていった。素晴らしい成長ぶりであった。ただ、その高度成長のために無理もしてきたことも確かだ。 現在、多くの分野でその歪みが明らかになりつつある。1.北朝鮮外交・安全保障問題 韓国は経済発展する中で、北朝鮮との格差は大きくなった。北朝鮮の工業力・経済力を一気に抜き去り、今では比較にならない状態だ。2014年の北朝鮮の一人あたりGDPは583.00 USDであるのに対して、韓国は27,195.20 USDである。実に47倍だ。軍事力も雲底の差だ。北朝鮮の前近代的な兵器は、韓国・アメリカの最新兵器とは比べることさえ憚られる状態だ。勝負にならない、と考えていた。北朝鮮に対しては基本的に太陽政策をとり、「上から目線での対応」をしてきた。しかし北朝鮮はそのハンディを超えるために核兵器開発・ミサイル開発を行ってきた。そして北朝鮮は中国からの忠告やアメリカからの威嚇にも関わらず、一気に核兵器・ミサイルの開発に成功してきた。ここにきて、一気に北朝鮮の脅威が問題化してきた。2.中国外交問題 朴政権は中国と親密な関係を築き上げてきた。かつては北朝鮮側にいる敵国陣営であったが、経済・外交で急速に接近した。安倍首相とは会談さえしない姿勢を持つ一方で、習近平主席とは頻繁に会談を持った。露骨なまでの明確なスタンスの違いを示した。2015年9月の中国の抗日戦記念行事への出席は象徴的だった。朴大統領は「格別の配慮」でもてなされた。しかし、最近は状況が一変している。THAAD配備をめぐる意見の相違から、急速に関係が冷めた。また韓国近海での中国漁船と韓国漁船・海警などとの摩擦で、険悪な状況にもなりつつある。3.日本外交問題 朴政権は日本への厳しい対応を続けてきた。対話さえ拒否するというのはよっぽどのことだ。国民感情にまで発展してきて、収拾がつかない状態になっている。日本においても韓国においても相手国のイメージは大きく悪化し、「嫌いな国」とする割合が急増した。日韓関係は完全に冷え切ってしまった。ワールドカップを共催し、日本でヨン様ブーム、K-POPブームが沸き起こった時代があったのが嘘のような状況だ。さすがに朴大統領も関係改善を手がけているようだが、元慰安婦問題でも、安倍ー朴合意は順調に実現されていない。日韓関係の改善は容易ではない。4.アメリカ外交問題 朴大統領の中国寄りの外交政策はアメリカとの距離を作ってしまった。最近の中国との関係悪化からアメリカへの距離を縮めつつあるが、アメリカも不信感がある。AIIBでも韓国は中心メンバーとして入っていった。実際には中国との関係の悪化からどこまで中心メンバー扱いになるか微妙なところではある。THAAD問題は韓国がアメリカと中国から突きつけられた踏み絵となっている。 いうなれば、韓国は北朝鮮、中国、日本、アメリカのすべてに壁ができてしまい、外交的に身動きができない状態となった。華やかな花道を飾るという状態にない5.中国経済の低迷 韓国は中国に依存する形で経済発展をしてきた。中国の凄まじいばかりの経済発展に引きずられて急成長をしてきた。しかしその中国の経済成長も低迷しつつあり、韓国経済は大きなダメージを受けている。韓国は日本以上に輸出依存の体質があり、特に中国への輸出が不振になると、立ち行かない企業が多く生まれる。すでに影響は出ており、韓国経済は当面は厳しい状況に置かれそうだ。6.韓国財閥の危機 韓進海運の破綻は衝撃的であった。韓国の財閥は巨大で強かったが、その多くで問題が噴出している。ロッテ財閥は現会長が逮捕され、今後の展開が不明だ。サムスン電子はリコールしたギャラクシーノート7でも問題が発生し、成長にストップがかかる可能性がある。現代自動車は12年ぶりの全面ストライキで数千億円の多額な損失を受けている。安定していた韓国財閥の骨幹が揺らいでいる。7.朴大統領の疑惑の財団問題 朴大統領が関わるとされる財団の疑惑問題も浮上している。疑惑の財団とは「ミール財団」と「Kスポーツ財団」である。短期間に巨額の資金を集めており、朴大統領が退任に備えているのではないかと見られているのだ。大統領退任後、これらの財団を操り、企業からの金を自在に懐に入れるのではないかと疑惑が持たれている。今回の支持率の低下の一要因とみられている。8.平昌五輪の準備不足 韓国経済の低迷から平昌五輪の準備が順調に進んでいない。平昌五輪は朴大統領にとって花道を飾る最後のビッグイベントだ。これが失敗すると、まさに朴大統領政権の失敗の象徴にされてしまう。最終的には成功にもっていけるだろうが、華やかな花道を飾るという状態にはなりそうにない。あと1年ちょっとにまでなった。まだ油断できない状況だ。 こうした問題が総合的に起きている。外交、安全保障、経済、政治、社会のすべてで問題が起きている。朴大統領が立て直すには時間がなくなってきた。朴大統領の任期は1年あまりしかない。これから朴大統領がどういう行動をとるか。成果をとろうと最後のしかけをするかもしれない。どのように安倍政権が絡むことができるのかはわかりにくい。反日のしかけなのか、親日のしかけなのか。いずれにしても朴政権ができることはこれから限定的になるだろう。年が明ければ、一気にポスト朴の関心が高まることになりそうだ。(Yahoo!個人 2016年10月15日分を転載)

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    韓国財閥、軒並み崩壊の真相

    るまいか。新製品に切り替えたところで、「爆発するサムスンのスマホ」のイメージは長く尾を引くだろう。 韓国ロッテに対する検察の追及が始まってから随分と時間が経つが、依然としてジワジワと続いている。「前政権で太った財閥はいじめられる」とのジンクスどおりだ。 実際のところ、納入会社、入居テナントに対するロッテの横暴さ、オーナー一族の傲慢さは、かねて有名だった。まさに常民と奴婢の怨嗟の蓄積が背景にある。 八八年ソウル五輪の直前、ロッテホテルはスト決行中だった。夜、ホテル入口のアプローチに寝転んだボーイたちの立て看板に面白い字句があった。「会長様は若い女の上で寝て、俺たちは石の上で寝る」 その「若い女」こそ、総括会長の現夫人である元ミスコリアだ(日本にいる夫人とは別人)。いまや、相続税逃れの追及対象になっている。 ただ、検察の最終目標は李明博前大統領だろう。軍用飛行場から緊急発進した戦闘機が衝突しかねない位置に、ロッテは百二十三階建てのビル(第二ロッテワールド)を建設中だ。盧武鉉政権ですら認めなかった建設に、なぜ李明博政権が許可を出したのか。 ロッテ財閥のナンバー2が事情聴取の直前に自殺したのも、「やはり黒だから……」との一般的心証を強めた。ロッテについては「あれは日本の財閥だ」というのが韓国人の一般的な受け止めだから、同情の声など起きるはずもない。  そして、韓進(ハンジン)だ。大韓航空(KAL)が「ナッツ姫事件」以来、思わしくないところへ、韓進海運が事実上、倒産した。 一応、「韓進海運はグループからは切り離し済み」という形になっているが、それでは“国民情緒法”が許さない。「ナッツ姫のパパ」は私財の一部を供出したが、焼け石に水だ。 そもそも韓進海運は「ナッツ姫のパパ」の弟が経営していた。その死後、夫人があとを継いだが、海運不況には勝てず、「ナッツ姫のパパ」に経営権を委ねた。 その夫人は、韓進海運の倒産の前に全持ち株を売り逃げた。彼女が、ロッテの総括会長の姪に当たることは運命のいたずらだろうか。 公道を「そこのけ、そこのけ」とばかりに闊歩する会長様。財閥の全権を握る彼らが誤った号令を出した時、韓国型財閥はすぐにも沈んでいく。いまは、その模様を眺める絶好の季節なのかもしれない。韓国を象徴する「交通規制」韓国を象徴する「交通規制」 「韓国の財閥とは」 「韓国の国民性とは」と尋ねられるといつも思い出すのは、ソウル西小門洞にあった中央日報社の前でたびたび見た光景だ。ソウル市庁に向かう四車線道路は、いつも車が渋滞していた。ソウル市庁 ある時、その横断歩道に、いかにも海兵隊か陸軍特戦部隊の出身と見られる屈強な男たちが七、八人、飛び出してくる。みんな濃紺のユニフォームを着ている。日本の警察官の出動服に似ている。中央日報社の警備員たちだ。 彼らが横断歩道で横に並び、両手を広げて車を止める。そして、市庁に向かう通りに車が全く見えなくなった時に中央日報社の玄関前から二台の車が出てきて、市庁のほうに猛スピードで走り去っていく。その二台の車が見えなくなると、警備員は引き揚げていく。 二台の車のうち一台は、当時は輸入が禁止されていた大型ベンツだ。それに乗っているのは、サムスン(三星)財閥の創業者である李秉喆(イビョンチョル)氏と、中央日報社の会長だった洪璡基(ホンヂンギ)氏だ。もう一台には警護要員が乗っている。洪璡基 氏はかつて法相を務め、「法曹界のドン」といった存在だった。 中央日報はサムスンの系列企業だ。 当時、李秉喆氏の執務室は三星物産(サムスン財閥の当時の中核企業)本社のなかにあったが、月に二回ほど中央日報を訪れ、夕刻が近づくと洪璡基氏とどこかへ出掛けていった。だから月に二回ほど、その渋滞通りは民間会社の警備員によって不法に交通規制されてしまうのだった。 それを初めて見たのは、一九八〇年四月のことだった。本当に不思議なのは、車を止められた運転手も、この光景に出くわした通行人も、何も言わないことだった。時にはパトロールの警察官が、この異様な光景に出くわすこともある。が、彼らも何も言わずに通り過ぎるのだ。 一九八〇年四月とは、朴正煕暗殺事件から六カ月、光州事件まで一カ月。韓国の民主化要求運動が最高潮に達していた時期だ。都心での民主化要求デモに参加するために集まってきた学生たちもいた。が、彼らも「財閥会長様のための不当な交通規制」に対して何も言わないのだ。 私より三年ほど前からソウルに赴任していた日本人特派員によると、ただ一人だけ大声を上げて文句を言った運転手がいた。 「天下の公道を何と心得るか」と、水戸黄門のように怒ったのではない。「俺の車だけ通せ。俺の車には東京銀行の支店長様が乗っておられるのだぞ」と叫んだというのだ。 韓国の財閥の傲慢さ、「金のある人=偉い人」という認識に発する身分意識、そして韓国法曹界の遵法精神がどんなものであるかを、この光景は見事に示してくれた。現代は相続争いで四分五裂現代は相続争いで四分五裂 日本で蠢くサムスンの秘密代理人のような人々は、「もう半世紀近く前のことを言うな。サムスンは変わった。二代目も三代目も、そんなことはしていない」と捲し立てるだろう。 創業者が健在だった時代にも、「この人が二代目になればサムスンは変わります。いい会社になりますよ」と言った人物がいた。 中央日報の論説委員だ。私は彼のところにしばしば行って、韓国の外交課題について意見を聴いていた。その日はついでに、「あの交通規制は酷すぎないか」とも言った。 そこへ、なぜか李健煕(イゴンヒ)氏が論説委員室に入ってきた。論説主幹には目もくれず、彼のところへ来た。小さな応接セットしかなかった。彼は補助イスにちょこんと座った。すると論説委員氏は、「この人が二代目になれば……」と日本語で始めたのだ。 名刺を交換して、私は初めて「この人が李秉喆氏の三男である李健煕氏か」と分かった。当時、彼が二代目総帥になるという下馬評はなかったが、すでに決まっていたのだと思う。 チャンスを逃した。この時に大ゴマを擂っておけば、私はいま頃、日本におけるサムスンの秘密代理人の総元締めとして、運転手付きの高級ベンツに乗っていただろうに……。 「この人が二代目になれば……」と語った論説委員氏はもう八十歳を超えているだろうに、いまも国際問題担当の「大記者」(定年後も社に残って論説を書き続ける記者。大手新聞社に一、二人しかいない)として活躍している。 「この人が二代目になれば……」、そのとおり、サムスンは変わった。 トップ財閥だった現代は、創業オーナーが病に倒れるなかでアジア通貨危機に直面し、異母兄弟間の相続争いで四分五裂した。 一方、サムスンは小さな自動車製造部門を手放すだけで済み、トップ財閥の座に就けた。 その後のサムスンは、「基礎技術など研究する必要なし」 「相手(日本)より工作機械を大量に導入して、大量に製造することで世界市場の覇権を握ればいい」とでも言わんばかりの行動で、DRAM、携帯電話・スマホの世界市場で「販売台数」トップに躍り出た。 しかし、「会長様(財閥総帥)絶対」の権威主義は、結局、変わらなかった。いや、より酷くなったのかもしれない。意識のない総帥に業務報告意識のない総帥に業務報告 李健熙氏は一四年五月、脳梗塞で倒れた。もう二年以上も意識が回復していない。しかし、サムスン財閥のナンバー2である崔志成(チェヂソン)未来戦略室長は毎朝夕、意識なく眠っている総帥に対して「業務報告」をしているというのだ(朝鮮日報一五年一月十日)。 李秉喆時代のサムスンには、まだ公権力を恐れる側面があった。そもそもが「親日派の闇屋」として財を蓄え、朴正熙政権下では密輸をしてさらに儲けたものの摘発され、凄まじい打撃を被った時の痛みが記憶されていたからだろう。 密輸に手を染めるような実業家にとって、「法曹界のドン」はぜひとも知恵袋になってもらいたい存在だろう。 これは想像だが、知恵袋は次から次へと悪知恵を出したのだろう。だから、重要な傘下企業である中央日報の会長に据えた。そして、財閥の総帥なら子会社の会長を呼びつけるところ、自ら子会社に足を運ぶことで“別格扱い”していたのだろう。 李秉喆氏の長男は密輸発覚の責任を取らされたが、下馬評ではトップだった。次男は親の反対を押し切り、「日本人・李栄子」(在日だろうか)と結婚したことで勘当同然だった。 三男の李健煕氏が、財閥内で別格扱いされている洪璡基氏の長女と婚約した時点で、「二代目は三男」と決まっていたのだろう。 そして、サムスンは公権力を恐れぬ存在に変わっていった。その模様を朝鮮日報社説(〇五年六月二十九日)がこう伝えている。「三星は、輸出の二二%、税收の八%、株式市場の時価総額の二三%、上場企業の売上高の一五%、同利益の二五%を占めている。 そこから広告・寄付・研究費を出すなどして、マスコミ、教育、文化、スポーツなど、私たちの社会のほとんどすべての分野で、この上なく強い影響力を行使している。左派マスコミも三星の特別な広告に傾いており、系列の金融機関から莫大な支援を受けている」「三星の寄与は十分に評価しなければならない。しかし、そのことと三星が『法の上の存在』であるということは全く次元の異なる問題だ」「三星の前に立つだけで縮こまり小さくなる政府も否定すべき姿だが、そうした対応や特権を期待している三星の態度も正常ではない」 この時、サムスンは何をしたのか。社説は、元金融監督委員の発言を基に列挙している。①三星カードが系列会社であるエバーランドの株式二五・六%を所有する際、法規定に背いて金融監督委の事前承認を得なかった。②エバーランドが所有している三星生命株(一九・三%)を時価ではなく、取得価格で変則会計処理した。③三星生命が契約者への配当に回すべき約二兆ウォンを、自らの取り分に回そうとした。 それなのに、「金融監督委は三星生命の不当利得に対して是正命令を出しただけで、一般的な慣例を破り、法人と責任者の問責をしなかった。三星生命とエバーランドに対しても決定を先送りしたままだ」「金融監督委は、国民銀行の変則的な会計処理について行長退陣まで要求し、それを貫徹した。そうした金融監督委が三星問題に出くわすや、薄氷を踏むように身を縮めている」「サムスンXファイル」事件「サムスンXファイル」事件 〇五年といえば、盧武鉉左翼政権の時代だ。盧武鉉大統領はオールド左翼らしく、表向きは財閥に冷たい姿勢を示していた。が、足元の官僚機構はサムスンに完全に飼い慣らされていたのだ。 俗に言う「サムスンXファイル」事件が明るみに出たのは盧武鉉政権下の〇五年だが、事件の発端である洪錫炫(ホンソクヒョン)中央日報社長(洪璡基の長男)と、当時のサムスン財閥ナンバー2である李鶴洙(イハクス)氏との会話が情報当局により盗聴・録音されたのは、金泳三政権末期の一九九七年だ。 ①次期大統領選挙に出る与党候補の陣営に百億ウォンを提供した②検察庁幹部に一千万~一億ウォンの「餅代」を配った──というのがその内容だ。 これで、駐米大使に赴任していた洪錫炫氏は辞職した。 洪錫炫氏は二〇〇〇年に、サムスンとは別に洪一族が経営する普光(ポグヮン)財閥の脱税事件で懲役三年、執行猶予四年の判決を受けている。同年八月の光復節恩赦で赦免となり、中央日報に戻っていたとはいえ、そうした前歴を持つ人物が駐米大使に起用されるとは、まともな国とは思えない。 が、こうした人事を押し通したのがサムスンの「金の力」なのだ。もちろん、大使の任命権者は大統領だ。左翼の盧武鉉は財閥に冷たいポーズを見せても実は……だったと見るほかない。 驚くべきことは、朝鮮日報、東亜日報、中央日報が「大使内定」を受けた論評記事のなかで、脱税事件の前歴に一言も触れなかったことだ。与党陣営への不法献金も「餅代」も時効であり、「餅代」をもらった検事たちも何のお咎めもなかった。逆に、盗聴内容をスクープしたMBC放送の記者が通信保護法違反で有罪になった。洪錫炫氏は中央日報に戻り、会長に就いた。 サムスンにとって「重要な子会社」である中央日報の会長職(社主扱い)は、洪一族により世襲されている。洪一族は別格なのだ。洪錫炫氏の弟は検事で、高検の検事長で引退して普光グループに入った。“暴力団”が経営する財閥“暴力団”が経営する財閥 サムスンの闇はさらに深くなる。〇七年十月、サムスンにスカウトされて法務チーム長を務めていた元検事が、サムスンの裏金は一兆ウォンに達し、政界への不法献金、判事・検事などへの資金提供を行っていると暴露したのだ。サムスン裏金疑惑事件の始まりだ。 特別検事が任命され、サムスン幹部の背任、脱税、証券取引法違反などが次々と明るみに出た。中心的な犯罪に位置付けられたのが、李健煕会長から長男の李在鎔(イジェヨン)氏への相続を進めるための生前贈与が、持ち株会社の株式の低評価譲渡などで進められていたことだった。 裁判所は、李健煕氏の背任は時効と判断し、脱税のみで懲役三年、執行猶予五年、罰金一千百億ウォンを言い渡した。そして罰金が支払われると、李明博大統領は特赦を断行した。 理由は、一八年五輪を韓国に誘致するためには国際オリンピック委員会(IOC)委員である李健煕氏の活動が不可欠であり、有罪が確定すると委員資格を失うから特赦(犯罪行為自体がなかったことにする)を与えるというのだ。 まさに、OINK(オンリー・イン・コリア=韓国でしかあり得ない、韓国でしか通用しないといった意味)論理だ。 朴槿惠政権は一五年の光復節で、第三位の財閥であるSKの会長を特赦した。その時の理由は、「経済活性化のため」だった。韓国の財閥は、オーナー会長が絶対的権限を持って君臨している。そうした存在である会長様が“塀のなか”にいたのでは、大規模投資の決定に支障が出るというのだから、これまたお笑いのOINKだ。 平昌五輪のスキー競技は、普光財閥が所有するスキー場を借りて行われる。国際競技場の要件を備えるために、直接経費だけで少なくても七百億ウォンが投入される。そして五輪が終わると、普光財閥に“無償返却”される。周辺のインフラ整備が大きい。それを含めたら、普光はどれほどの利益を得るのだろうか。 サムスン財閥の中核企業であるサムスン電子の水原事務所が一二年三月、正面入り口にバリケードを築いた。同社が、携帯電話の通常販売価格を過大表示して割引幅を大きく見せていることを問題視した公正取引委員会が立ち入り調査に来る、との情報を得たためだ。 実際に、公取委の職員が立ち入り調査のために事務所を訪問した。しかし警備員は、「事前の約束がなければ、大統領でも入れない」として立ち入りを阻止。警察が出動するほどの小競り合いまで繰り広げられた。その間に事務所内では、ハードディスクを交換するなどして証拠を隠滅した。 一三年一二月には、同社の華城(ファソン)工場が、韓国電力に無断で電線を引いて盗電していたことが明るみに出て、裁判所から百十七億ウォンの支払いを命ぜられた。 まさに、“暴力団”が経営しているのだ。これが「韓国ナンバー1財閥」の姿だ。 サムスンのことばかり書いてきたが、これには理由がある。サムスンが飛び抜けて大きなトップ財閥であることも一つの理由だが、他の財閥もほとんどがサムスンと同じ体質だからだ。蓄財は「民・民汚職」蓄財は「民・民汚職」 たとえば「会長様絶対」の権威主義的体質は、韓国財閥に完全に共通する。会長の無理な進軍ラッパに異を唱えるような番頭は存在しない。異を唱えたら遠からず馘首される。そういう企業文化であることを皆が心得ている。 いや、これは財閥・企業に限らない。韓国の大統領制そのものが、そういう統治文化だ。韓国大統領府での閣議に臨む朴槿恵大統領(聯合=共同) 異を唱える秘書官を馘首しなかったのは、全斗煥大統領ぐらいではないだろうか。対極にあるのが朴槿惠大統領だ。秘書官(大統領秘書官は閣僚よりも強い実質権限を持つ)も閣僚も、「イエスマン」しかいない。 「会長様絶対」の企業文化は、好調な時は「速い決断」として有効に作用する。 しかし、「こんなことをしていては財閥ごと破産する」と分かっている号令にも、側近はゴマスリ競争を続けるだけになる。追い出されるよりは「会長側近」としての地位を固め、倒産のその日まで蓄財を続けるほうが得だからだ。 蓄財の第一の方法は民・民汚職だ。下請け業者から吸い上げる。財閥のなかで上昇志向の猛者がいたら、「会長様に君を推薦してやろう」と言って上納させる。猛者の上納金も、どうせどこかの下請けから吸い上げた金だ。公務員に渡す賄賂の「中抜き」は当たり前のことだ。 オーナー会長自身、あるいはその一族に脱税、背任、横領、贈賄などの前科者がいることも、ほとんど共通している。アングラマネー「私債」 たとえば一〇年七月、全経連(経団連に相当)など経済四団体は光復節恩赦を前に、財閥首脳ら七十八人を恩赦対象にするよう政府に要望書を提出している。 オーナー一族の貪欲さも、ほとんど共通している。財閥幹部の背任、横領事件が摘発されると、「会長にいくら渡ったか」が捜査される(だいたいは有耶無耶になるが)。韓国の財閥のオーナー会長は、自分が支配する企業からも不法に吸い上げるのだ。 一昔前は、会長が匿名で会社に金を不当な高利率で貸し付け、吸い上げる手法が多かった。いわゆる「私債」と呼ばれるアングラマネーだ。 現代財閥の分裂後、「本流」を名乗って世間からもそう認められたのは創業者の五男が率いたグループで、現代商船を中核企業としていた。おそらく、五男が「正嫡」だったからだろう。五男は金大中政権下の「北送資金」疑惑のなかで自殺した。そして、夫人があとを継いだ。 夫人はやり手だったが、海運不況には勝てなかった。現代証券を売却し、現代商船を七分の一に減資して債権団に引き渡した。 その過程で明るみに出た“小さな事件”があった。現代証券に設置してあったリースのコピー機全量についてリース会社と再契約し、親族企業がリースを受け、それを現代証券に再リースする形にしたのだ。 現代証券に設置してあったコピー機が一時撤去されたわけではない。あくまでペーパー上のことだ。親族企業も、もちろんペーパーカンパニーだ。リース元の契約代金は変わらない。再リース料金はプラス一割。つまり、倒産の一歩手前まで来ているのに、財閥のなかの優良企業からコピーリース代の一割を居ながらにして吸い上げていたのだ。 まだあった。傘下の陸送・宅配会社である現代ロジスティクスが使用している発送状を、やはりペーパー上の操作で別の一族企業を経由して購入する形にして、市価よりも一二~四五%も高く支払わせていた。サムスン令嬢と結婚してサムスン令嬢と結婚して 日本の経営者だったら、リース元や発送状の納入業者に値引きの交渉をするところだろうが、韓国の財閥オーナーは違うのだ。 この後始末がまた面白い。公正取引委員会は現代証券と現代ロジスティクスに対し、「特定企業に対する不当支援」があったとして罰金を科したが、夫人一族には何のお咎めもなかったようだ。お咎めがあったとしても、そんな微罪はすぐに恩赦と決まっていようが。 彼らはそうして得た金で何をするのか。いろいろあるだろうが、贅沢三昧の生活をすることも、ほとんど共通している。 サムスンの李健煕会長の長女であるホテル新羅李富真(イブジン)社長は、一介のサラリーマンと恋愛結婚した。男性は「シンデレラ・ボーイ」として騒がれたが、一六年に離婚した。彼が『月刊朝鮮』のインタビューに応じて語った「財閥オーナー家の婿」としての苦労談(朝鮮日報一六年六月十五日が抜粋を報道)がとても面白い。抜粋の抜粋を示そう。①サムスン物産の電算室に入社したというのはサムスン側の作り話で、本当は会長のボディガードだった。②米国のMIT(マサチューセッツ工科大学)経営大学院に留学した時がとても大変で、極度のストレスを受けた。③離婚理由に「飲酒のうえの暴力」が挙げられている。しかし、自宅に勤めていた十八人の誰も私が酒を飲んで乱暴を働いた姿を見ていない。 MITとはよほど権威がある大学と思っていたが、何だ、金さえあれば、英語がほとんどできない人でも入れるんだ。 サムスン会長の邸宅ではない。その娘の家に十八人もの家事使用人がいる。一体、どんな職務分担になっているのか、想像もできない。 財閥、財閥と言ってきたが、韓国に「財閥」の定義はあるのか。公正取引委員会が定める基準では、資産規模五兆ウォン以上が「大規模企業集団」とされる。これが唯一の法的な基準だ。憧れと怨嗟の対象 その比重を見ると、一二年四月末の株式の時価総額はサムスンだけで二五・三%、十大財閥で五九・二%を占めた。 つまり、サムスンだけが飛び抜けて大きいのであって、三十位の財閥になったら、日本の感覚では「財閥」とはほど遠い規模になる。 従業員数はサムスンだけで二十万人強、四大財閥合計で五十万人強、三十大財閥合計で百六万人だ。これは一〇年の数字だが、大きな変動はないだろう。三十大財閥の雇用者数は、勤労人口の四%程度になる。この四%のなかのホワイトカラーは日本のサラリーマンと同等か、あるいは上回る給与を取っている(ただし、韓国の平均入社年齢は兵役などもあり三十歳前後で、五十歳になる前には「名誉退職」という名の肩叩きに遭う)。 その一方で、「法定」の最低賃金(一六年は時給六千三十ウォン)を得られない勤労者が二百万人以上と推計されている。非財閥系中小企業の給与水準は、財閥の半分といったところだ。 だから財閥は「入社したい」憧れの対象であると同時に、怨嗟の対象でもあるのだ。 韓国の世間一般では、「大規模企業集団」の基準とは離れて、ある程度の知名度(地域限定でもいい)があり、いくつかの系列企業を抱えていれば「財閥」と認識される。それを束ねるオーナーは「財閥の会長様」になる。 朝鮮半島は長く、両班(ヤンバン)─中人─常民─奴婢という厳格な身分社会が続いてきた。制度としてはなくなったが、意識の面では生きている。収入と資産が基準だ。会長様は、両班のなかでも位が高い人々だ。最低賃金未達の勤労者は、さしずめ奴婢だ。 両班が何をしても罰せられなかったように、会長様は法の上にいる。たまたま引っかかっても、すぐに恩赦される。会長様とその一族が“下人どもの無礼”に怒り、あの「ナッツ姫」のようにパワハラに狂うのは、この社会文化のなかでは当然のことだ。韓国とは、「会長様と、その一族だけの国」なのだ。むろたに・かつみ 1949年、東京都生まれ。評論家。慶應義塾大学法学部を卒業後、時事通信社入社。政治部記者、ソウル特派員、宇都宮支局長、「時事解説」編集長を歴任。2009年に定年退社し、評論活動に入る。著書に『呆韓論』(産経新聞出版)、『悪韓論』『日韓がタブーにする半島の歴史』(新潮新書)など多数。

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    朴政権にトドメを刺す韓国財閥の「ゾンビ企業」化

    高橋洋一(嘉悦大学教授) 韓国経済では、財閥が大きなウエイトを占めている。ただし、しばしばテレビなどで「10大財閥が韓国のGDPの70%を占める」と言われるが、これは事実でない。 10大財閥の総売り上げを韓国のGDPと比較して70%というが、この言い方はちょっと恥ずかしい。比較する場合は同じ概念にすべきだが、GDPは売り上げから労働対価、原材料対価などを除いた付加価値であるからだ。マスコミは、数字があるとその意味をわからずに使うが、「10大財閥が韓国のGDPの70%を占める」はその典型である。そして、テレビコメンテーターにこうした言い方をする人はまず経済に無知であると思ったほうがいい。ちなみに、付加価値は売上高の2~3割程度であるので、「10大財閥が韓国のGDPの2割程度を占める」と言ったほうが適切だ。オーストラリア・シドニーの港に係留された韓国海運最大手、韓進海運のコンテナ船。韓進海運が経営破綻し、世界の物流に混乱が続いている=9月12日(ロイター) それでも、財閥が韓国経済で中心的な役割であるのは間違いない。昨年1月のナッツ・リターンによる韓進への非難に続き、ロッテ、サムスンと不祥事が続き、財閥への信頼が揺らいでいる。 韓進海運は8月末に経営破綻し、同海運が保有するコンテナ船は、荷降ろしに関する不払いを恐れられ世界各地で入港を拒否されている。 ロッテについては、昨年創業家の長男・重光宏之氏と次男・昭夫氏の一族による経営権争いで世間を賑わせたが、今度は巨額な裏金作りの疑惑で創業者父子が在宅起訴されてしまった。 ロッテの件は韓国での日本叩きの巻き添えを食ったのかもしれないが、サムソン事件は驚いた。 しばしば筆者は飛行機を使って出張するが、機内アナウンスで「ギャラクシーノート7」は使えませんと、商品名を出して警告されるので、そのマイナスイメージは計り知れない。 サムソンの「ギャラクシーノート7」に限らず、携帯電話、ノートパソコンなどには、リチウムイオンバッテリーが使われている。この電池は高性能であるが、取扱はけっこうシビアである。 筆者はアップルのiPhoneを使っていた。ただ、実際に1年以上使っていると、電池がへたって持ちが悪くなってくる。アップルでは勝手に携帯内部を開けさせないように特殊ねじを使っており、そうした場合、アップルに頼んで電池交換してもらう仕組みだ。 ところが、筆者は時計いじりマニアなので、iPhoneの電池交換は自分でやっていた。電池そのものやiPhoneを分解する工具もインターネットで入手可能であるからだ。自分でやった方が、早くできるし、コストも圧倒的に安い。 これまで、iPhoneでは何回も電池交換してきたが、先日ついに失敗してしまった。リチウムイオンバッテリーを取り外す際、力を入れたらバッテリーを覆う膜が少し破けてそこからバッテリーが発火し、筆者のiPhoneは燃えてしまった。韓国経済を後押しした日本の金融引き締め こうしたリチウムイオンバッテリーの危険性は以前から知られており、各企業でその安全対策は何重にも施されている。しかし、サムソンで対策出来ていなかったのは、窮地で余裕がなかったという意味でかなり深刻な事態である。 サムソンは、韓国財閥の中でも資産規模でトップである。しかも、資産規模2位の現代自動車でも、中型セダンの「ソナタ」が米国でエンジン欠陥の指摘を受け、リコールになったことがある。 さて、財閥に依存している韓国経済であるが、以前から言われていたこととして、韓国経済の「サンドイッチ現象」がある。「価格では中国に勝てず、技術では日本に勝てない」。つまり、価格で中国に攻められ、技術で日本から攻められてサンドイッチになるというわけだ。 ところが、小泉政権では不十分ながら金融緩和を行ったので円が多くなり、その結果円は他通貨に対して相対的に増え円安になったが、福田政権以降、日銀は金融引き締めに転じ、円高傾向になった。それを加速させたのが、民主党政権である。 そのため、韓国ウォンは日本円に対してウォン安になった。これは、日本製品と比べて技術はイマイチであっても価格競争力が優位になった。技術差は価格差に勝てない。多少の技術差は一般人にはあまりわからないからだ。その結果、スマートフォンや家電製品の世界市場において、韓国製品が日本製品を凌駕するようになった。 また、韓国ウォン安は中国人民元に対しても同様であった。このため、中国製品に対しても価格競争力が以前ほどでなくなった。こうして、韓国のサンドイッチ現象は、日本の金融引き締めという無策のために、逆に韓国経済の後押しになった。 そこで、アベノミクスの登場である。韓国は、アベノミクスの本質が金融緩和にあって、それがもたらす円安効果を見抜いていたと思われる。そのためか、筆者のところには、韓国の在日大使館、在日マスコミなどから多くの取材がきた。その際、アベノミクスになると、韓国経済はそれまでの有利性を失うという趣旨を話した。 今の韓国経済をみていると、まさに、筆者の予想は完全ではないにしても、外れていなかったと思う。韓国経済の足かせはアベノミクスだけではない そうした韓国経済の苦境は、財閥の企業活動を見ていると、見えているという意味で、財閥が悪くなったから韓国経済が悪くなるというものではない。 韓国経済と日本経済はかなり似た産業構造となっており、ともに原材料に付加価値をつけることをしている。このため、日本で行う経済政策の巧拙が韓国経済にもろに反映しがちである。この意味で、アベノミクスがまともに機能する限り韓国経済はかなり苦しいはずだ。 そこで、韓国でも、アベノミクスをぱくって、「チョイノミクス」というアベノミクスと同じようなことやっている。韓国の財務大臣がチョという名前なのでチョイノミクスと名付けたが、実際はうまく機能していない。 経済がうまくいかないと悪循環が生じるが、韓国経済にとってむしろ気がかりなことがある。それは韓国企業の「ゾンビ企業」化である。破綻した韓進海運が典型であるが、韓国企業は多くの負債を抱えており、利益が出ても借金の利息が払えない企業が続出しはじめている。 日本でも、経済落ち込みがあると直ぐに不良債権が問題になったことと似ている。 韓国経済の足かせは、日本のアベノミクスばかりではない。中国経済が低成長で、もはや立ち居かなくなっているのだ。中国経済の低迷は、韓国経済にとっての一方のサンドイッチである中国の価格の安さをさらに引き下げ、韓国経済の足かせになる。さらに、韓国の対中国輸出依存は大きいので、中国経済の低迷により韓国の対中輸出は大きく減少せざるを得ない。これは輸出依存度が高い韓国経済にとって大きな打撃である。会談で握手を終え、すれ違う韓国の朴槿恵大統領(右)と中国の習近平国家主席=9月5日、中国・杭州(共同) いずれにしても、韓国経済の状況は、日本のアベノミクスと中国経済の低迷というマクロ経済から比較的単純に説明可能であるが、そうしたマクロ経済に疎い方でも、韓国経済の中核をなしている財閥企業の企業活動を見ていれば、韓国経済の事情が具体的にみえるだろう。 ちなみに、韓国経済の日本への影響はなくはないが、日本はそもそも対外依存度が低い国なので影響が限定的であろう。要は、そのためにもしっかりと自国のマクロ経済政策をする必要があるということに尽きる。

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    朴政権と韓国財閥の「闇」を暴く

    韓国社会で強い影響力を持つロッテ、サムスン、韓進などの韓国財閥。だが、その会長や一族は脱税、賄賂、横領などに手を染めた前科者ばかり。日本では考えられないようなことがまかり通る背景には、韓国社会の病理があった。

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    呉善花が読み解く 「反日韓国」の苦悩

    呉善花 (評論家、拓殖大学教授) いま、韓国で起きていること 韓国は李明博政権の後半から反日姿勢を強め、2013年2月に朴槿惠が大統領に就任してからは日韓関係がさらに悪化しました。 日本ではしばしば「朴槿惠大統領は本音では親日なのだが、国民のあいだに反日の声が強いので、仕方なく反日姿勢を取っている」と言われます。しかし、これは明らかな間違いです。そうではなく、反日は韓国では「民主的な政治家」と見なされるための必須の要件であり、国民情緒の動き方しだいで穏健だったり強硬だったりするだけのことです。 現在の韓国では、民意とは事実上、国民情緒を意味し、「民意は天意」とするポピュリズムが、政治世界を強く支配しています。朴槿惠大統領は、の意味での民意=国民情緒に最も忠実に従ってきた大統領だと言ってよいでしょう。 近年、とくに韓国の反日がエスカレートしている一つの理由として、李明博政権の後半頃から韓国社会が経済的にも社会的にも、急速に不安定さを増してきていることが挙げられます。 2013年初頭にアベノミクスが始動してからは、日本経済は急速に息を吹き返し、その一方で、ウォン高進行を契機として韓国経済が大きく揺らぎはじめました。これに対して韓国政府は、「アベノミクスが韓国経済を圧迫する」と、韓国経済の不振と自らの失政を日本に責任転嫁するような主張まで行っています。不況の時代に突入した韓国 韓国は、明らかに不況の時代に突入しています。 2015年10月に韓国銀行が発表した「2014年企業経営分析」によると、韓国製造業の売上高は前年比マイナス1.6%と減少に転じ、同調査を始めた1961年以来、初めてのマイナスになりました(2015年10月28日付・韓国『中央日報』日本語版、「韓国製造業、昨年の売り上げ史上初の『後退』」)。 また、産業通商資源部が11月1日に発表した「2015年10月の輸出入動向」によると、韓国の同年10月の輸出額は前年同月比約16%減で、10カ月連続で減少を続けているというのです(2015年11月2日付・韓国『ハンギョレ新聞』、「輸出不振の韓国、過去6年で最大の下落幅」)。これは過去6年間で最大の落ち込みであり、GDPに占める貿易依存度が約37%に達している韓国経済にとって非常に大きなダメージだと言えます。 さらに、2015年11月21日付の『朝鮮日報』日本語版では、韓国の主要30企業グループのうち、営業利益を出しているのはサムスンと現代自動車だけだと報じられています。そのサムスングループの中核であるサムスン電子でさえ、製品在庫が史上最多レベルに達し、開発センターの職員の3分の2、管理職の30%を解雇する見通しだという報道があるほどです。 こうした状況下で、野党の厳しい政府批判が国民の支持を大きく広げ、保革逆転が確実視されるまでになっています。そのため、政府与党も国民の人気を得ようとして野党に負けじと「反日愛国」の姿勢を強めていくわけです。政府は国内の批判をかわすため、国外の敵(日本)に国民の関心を強く惹ひ きつけておかなくてはならないのです。倫理崩壊が始まった ここで重要なのは、現在の韓国では「政治・経済・社会・家族・個人間と、あらゆる面での倫理が音を立てて崩れ落ちている」ということです。実はこれこそが、韓国国内問題の最たるものなのです。私は、この問題と真剣に取り組まないかぎり韓国に未来はないと考えています。 韓国で倫理崩壊が始まったのは、通貨政策の失敗と金融システムの脆弱性から経済危機に陥り、IMFに資金援助を要請して国家経済がIMF管理下に置かれた時期(1997年11月~2001年8月)からのことです。 IMFの経済管理下で、あっという間に欧米並みの「自由競争市場」への市場開放がもたらされ、企業内では極端な「成果主義」が採用されていきました。それらの改革は、日本のように緩やかに時間をかけて進められたのではありません。「ある日突然、経済秩序が一変した」と言ってよいほど急激なものでした。 ですから、社会に亀裂が走らないわけがありません。 昨日まで信頼し合っていた同志や仲間だった者が、一晩で相手を追い落としてでも生き残ろうとする敵へと変身する。親戚の金まで騙し取ろうとする者が出てくる。どこもかしこも金、金、金の世の中になってしまった─。 「利己主義」「人間不信」の嵐がすさまじい勢いで吹き荒れたのです。そして、一部には続々と億万長者が誕生する一方で、光熱費や子供の給食費を支払えない家庭や家族ホームレスが、かつてないほど増大しました。まさに優勝劣敗の社会現象が激しく進行したのです。その惨状について、2002年当時の韓国の新聞は次のように書いています。 「今、韓国社会を支配しているのは『カネが最高』という極端な拝金主義だ。一晩明けたら数十人ずつ不労所得の億万長者が誕生し、数多くの人が職を失う外貨危機を経験したにもかかわらず、この拝金主義は極大化した。その過程で国の中枢機能を担当している機関と組織の人間が次々と腐敗の鎖に食い込まれていった。長い歳月のあいだ我々を支えてきた礼儀、友情、尊敬、孝行、忠誠のような精神的な支えは、力なく崩れ落ちている。革命的な変化が起こらなければ韓国社会の腐敗と堕落を防ぐことはできない」(『朝鮮日報』2002年1月3日) こうして2002年以降の韓国では、勤労者の賃金格差、財閥と中小企業の格差、上下階層の所得格差が急激に広がって社会の二極化が深化していきました。 中間層が縮小し、大量の貧困層が生み出されていきました。そのように国民生活を犠牲にしながら、国家経済、一部富裕層、財閥大企業の繁栄がもたらされてきたのです。なぜこんなことになったのか それでは、現在の韓国はどうでしょうか。 先の新聞記事そのままの拝金主義が跋扈している。いや、いっそう悪化している─そう言わざるを得ません。 かつて韓国人の美徳だった「年長の人を敬うやまう精神」が失われ、老人の自殺が急増し、同時に若者の自殺も増大しました。 失業者が増加し、世帯主が家計を支えることができなくなると、離婚や女性の不倫が社会問題化する一方、子供が親の面倒を見たくないというケースが増加し、親子の同居が大きく減少しました。 さらには、かつて金大中政権が国策としてIT化と英語教育に力を入れた結果、パソコンも英語もできない高齢者たちを、若い世代が蔑視する風潮さえ生まれています。 なぜこんなことになってしまったのでしょうか。 明らかに、その直接的な原因は経済再建にともなう「経済改革」の失敗にあります。しかし根本にあるのは、韓国特有の「集団利己主義」です。別の言葉で言えば、「韓国社会の構成単位が、いまなお、内側に閉ざされた血縁や地縁の小集団としてある」ということです。 それら小集団が自分の利益だけを追求し、他人の迷惑など考えず、各個闘争し合うところに生じるエネルギーが社会を動かす活力となっていたのが、旧時代の韓国であり、現在の韓国でもあるのです。 日本のように、血縁や地縁の関係を異にする人々が一緒になって一つの共同体を形成し、それがさらに横のつながりをもって連帯していく─といった社会の条件が、韓国では、いまなおあまりにも弱いのです。 本書では、こうした日本人には理解しがたい面を多々抱える韓国人の、国民性や国民感情、韓国社会の慣習などを紹介し、日本との違いを見ていくことで、日本と韓国とのあいだに横たわるカルチャー・ギャップを明らかにしていきたいと思います。お・そんふぁ 1956年、韓国・済州島生まれ。83年来日、大東文化大学(英語学)卒業後、東京外国語大学地域研究科修士課程(北米地域研究)修了。新潟産業大学非常勤講師を経て、現在、拓殖大学国際学部教授。著書に、『韓国併合への道 完全版』(文春新書)ほか多数。関連記事■ 呉善花<緊急寄稿>さよなら、幻想の国・韓国韓国「反日情緒」社会の大問題■ なぜ中国はいつまでも近代国家になれないのか?

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    笑いごとではないロッテお家騒動 韓国の財閥解体はあるのか?

    ネスをしたあと、今日から電気屋だと言ったことからキョウデンとなったようだ。シャルロッテiStock 韓国のいくつかの財閥もこの伝で名前を決めている気がする。特にお菓子のロッテは韓国のお菓子の老舗ヘッテをヒントにした気がしてならない。ソウルのロッテ百貨店に行くと、創業者の言葉が金看板にして埋めてあった。若きウエルテルの悩みのシャルロッテからとったとしている。だとすれば社名はシャルロッテとなるはずだ。かりに安直選びでロッテとなったとしても、トップブランドとして大成功しているので、笑い話で済むはずだ。しかし、今回の家族騒動は笑いごとではない。 昨年来、家族間の争いで世間を騒がせているロッテに対して韓国側では検察が動いた。日本ではガムやチョコレートのロッテも韓国では財閥と呼ばれビジネスは多岐にわたっている。ロッテホテルや百貨店・免税品店は日本からの観光客もお世話になることも多い。コンビニ、飲料、石油化学、果ては建設まである財閥だ。日本では上場していないが、韓国側では多くのロッテグループ企業は上場して株を公開している。 創業者で高齢の父のもと兄弟仲良く、兄は日本ビジネス、弟は韓国ビジネスを成功させてきた。しかし昨年、創業者は兄ではなく一歳違いの弟を後継者に指名した頃から、軋みが始まった。 当初は兄弟の争いからの株価低迷は一種の相続対策といううがった見方も出来たが、本格乱闘となり収拾がつかない。自殺者もでて結末が見えなくなってきている。ロッテだけではなく、韓国の財閥のチャンピオンであるサムスンも最近いくつかネガティヴなニュースを提供して財閥ネタで話題は尽きない。 漢字で書けば日本と同様に財閥となる。ロッテの場合、日本では4000億円程度の売り上げだが、韓国サイドでは8兆円規模で、財閥と呼ばれても何ら不思議ではない。日本で財閥というと独特の響きがある。終戦直後財閥解体がなされ、三菱(岩崎)、三井、住友、安田などの財閥ファミリーは一応、表舞台から消えた。株式も持ち合いや個人株主により吸収され急場をしのいだ。そもそも10大財閥、15大財閥は戦争協力者として位置づけで名前の使用も禁止されてしまった。三菱銀行は千代田銀行となり、安田銀行が富士銀行と名前を変えた。富士の場合、変名後に業容がむしろ拡大したため、近年みずほ銀行となるまで、富士で通したがむしろそれは例外で、多くはそれぞれ元の名前に戻している。韓国の財閥群 一方、ドイツ史専門家によると、ドイツは何らかの理由で戦争協力企業がそのまま現在に至っている場合も多いようだ。特に自動車のフォールクスワーゲンは、ヒトラーの肝いりで出来た会社だ。有名なアウトバーン建設と相まって、国民に自動車を持たせようと、ポルシェ博士が図面を引いた車だ。ポルシェ家は別にスポーツカーのポルシェを製造していたが、最終的にフォールクスワーゲンの子会社となって現在に至っている。 ワーゲンは米国でジーゼル車の排気ガスの操作問題で苦境に立っているが、トヨタ、GMと並んで世界チャンピオンだ。昨年スキャンダルが飛び出す少し前まで、ポルシェ博士の孫、ピエヒがトップであった。ピエヒは自分の孫の通う幼稚園の先生と4度目の結婚をし、尚且つ彼女を重役にもしている。誰も反対出来ない。創業家は強いのだ。 第二次大戦後にわかに生まれたのが韓国の財閥群となる。韓国ビジネスの初心者は、財閥と聞いて安心して取引をするが、日本の三井、三菱とは趣が違う。1997年の韓国経済危機の際、IMFの介入で各財閥は贅肉を切り落とす作業をすることとなった。その過程で大宇などの大手どころでも解体された。その後リーマンショックまでの好況期にエレキのサムスンやLGや自動車の現代などさらに世界に羽ばたいたところも多い。  韓国の財閥は創業家がハンズオンで経営にあたる。危機当時批判された会長室機能などが、経営企画室と名前を変え一族経営が継続されている。家族経営の良い点も多々あるが、 “大韓航空のナッツリターン”はそのネガティブサイドが表に出たのであろう。いまだにオーナー経営者の力は強い。国民経済の厚みと裾野の広ができており、危機は経営と保有の適度な関係を再構築する絶好のチャンスだろう。それとも即断即決でないと前に進めないのだろうか。我が国の場合、敗戦後の手術としてオーナー経営者の退場が求められたが、韓国では今その時期にさしかかっているのかも知れない。 時の政権が強い者を痛めつけることは、目くらましや人気取りになるが、次の政権となれば、敵の敵としてさらに強くなって復活することが多いのがこれまでの韓国財閥だ。ロッテの場合、前政権で拡大した咎ということでしかないのかも知れない。ではもう少し頑張ればいいのか。

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    泣き面に蜂のサムスン ギャラクシー製造中止にアップル訴訟敗訴

     岡本裕明(Blue Tree Management 株式会社 代表取締役) 中国と韓国の経済状況に注意マークが点灯したようです。東アジア発の不況などにならなければよいと思います。 まず、韓国GDPの2割をも占めるサムスン社は問題になっていたギャラクシーノート7を製造中止、販売リストから落とす英断を行いました。大変な決断だったと思いますが、これ以上小手先の修理対応では何が起きるか予想がつかず、やむを得ない判断だったと思います。日本では発売されていないので日本の航空機内では警告されているのかわかりませんが、先週乗った国際線や数日前乗ったカナダの国内線ではサムスンノート7は機内で使用、充電をしないで電源を切ってください、とCAから明白にアナウンスされます。 ここまで名指しで否定されると逆マーケティング効果でブランドイメージの遺棄は計り知れないものになるでしょう。仮に更なる対応策をとっても瞬時に広がる情報の罠にサムスン首脳部としては怖くてやりきれない思いがあったと思います。サムスン電子本社のビルを歩く人=2010年4月、ソウル(ロイター) イ・ゴンヒ会長が心筋梗塞で入院したのは14年5月。それから2年半近くたち、長男のイ・ジェヨン氏が実質的代表の地位を固め間もなく登記理事に就任する予定です。剛腕の父親の支援が得られないまま、非常に難しい局面に立たされた息子としてここを乗り切るのはたやすくありません。 さらに複雑なオーナーシップと関係会社間の持ち合いなどを通じて少ない株式所有で大きな力を発揮できる仕組みを作り上げている同社グループに再編せよ、という声も出ています。また、10月7日にはアップルとの特許権侵害訴訟で控訴判決でサムソンの全面敗訴で120億円の支払いを命じているほか、今週からデザイン侵害の550億円訴訟の減額審議もあり、泣きっ面に蜂とはこのことでしょう。 かつて、ソウル大学からサムスンに入ることが韓国子弟教育、夢のプランと言われました。今でもそうなのかもしれませんが、輝きは明らかにくすんでいます。ただでさえ、ほかの財閥系企業で問題山積な中、「サムスンよ、おまえもか」では本当にお話になりません。今になって韓国政府がTPPに参加表明したのも危機感以外の何物でもない、ということでしょう。接待も厳しくなった韓国には一足早い空っ風がふいているようです。実は中国も韓国と同じ では、お隣、中国です。9日に中国の東北特殊鋼集団が経営破たんしました。今年だけで9回も債務不履行をしているのに今まで生き延びてきたいわゆるゾンビ企業の典型であり、中国で最も頭の痛い問題であります。同社は遼寧省ですが、鉄鋼の省、河北省ではいかに鉄鋼を減産するかに取り組んでおり、同省では2020年までに省全体で3割の減産を目指すとされます。同省だけのGDPはマイナスではないかとの観測記事もありました。景気低迷が深刻な中国遼寧省の工業地帯(共同) 一方で住宅建設は再び加速しており、微妙なかじ取りを求められるのでしょう。痛みを伴う再編がうまくいくのか、世界の鉄鋼業界が見守る形となっています。 そんな中、見ないふりをしていた不安材料が頭をもたげ始めました。中国の外貨準備であります。9月は5年4か月ぶりの落ち込みとなる3兆2000億ドル弱。理由はSDRへの組み込みが10月1日に行われるにあたり9月に元を買ってドルを売る作業を進めた結果、外貨の流出が増えた、ということになっています。 問題は今後で元を買う動きが少し緩んだために対ドルで6年ぶりの安値となっているこのトレンドを止めることができるのか、であります。月曜日に攻防とされる6.70のバリアを破った後、元は売られており、火曜日のNYで6.718で張り付いています。仮に元を防衛をするならドルを売らざるを得ず、外貨の流出はさらに進みます。一方、元安の放置もできないところに当局、ひいては習近平国家主席のかじ取りの難しさを如実に表しています。一番怖いのは経済がうまく回らず、国民に不満がたまると外交でかじ取りをしようとする動きが歴史の中ではしばしばみられることです。 そういう意味でもアメリカ大統領選がほぼ終盤に差し掛かってきた今、アメリカの政治的ポジションを見据え、英国のEUとの離脱交渉を注視し、地政学的に北朝鮮の動きをモニターしながらも世界を巻き込んだ大道芸をしないとも限りません。習近平氏は自分を守る動きに出ると思いますので世界情勢を見ながら外交的手段によるはけ口を作ることは大いにあり得ると思います。 そんな中、日本は東アジアの安定化のためにも沈着冷静な行動が求められるのは言うまでもありません。いざというときに余力をもって対応できるよう事前の対策を万全にすることに越したことはありません。新大統領が選ばれるアメリカも盤石ではない今、日本を取り囲む国々は不安定感満載であります。ここは地続きではない独立独歩の日本が作ってきた特徴をうまく生かしてもらいたいものです。(ブログ「外から見る日本、見られる日本人」より2016年10月12日分を転載)

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    販売直前のミャンマーでも信頼失墜させたサムスン

    佐藤仁(情報通信総合研究所副主任研究員) サムスンの新型スマホ「Galaxy Note 7」でバッテリが過熱する問題で、リコールが相次いでいる。2016年9月15日にはアメリカの消費者製品安全委員会(CPSC)も、アメリカで販売された約100万台の「Galaxy Note 7」を全てリコールすることを発表した。アメリカではバッテリーが過熱した報告が92件、そのうち26件が火傷で、55件がガレージや車の中での発火など物的損害が報告されているらしい。  全世界で約250万台の「Galaxy Note 7」が出荷されており、事故やトラブルが懸念されている。日本でも日本航空(JAL)が充電中に内蔵のリチウムイオン電池が爆発するなどの事故の恐れがあることから、機内では充電も含め使用禁止、手荷物としての貨物室への預かりも禁止している。 発火や発煙トラブルが相次ぐサムスン電子の新型スマホ(AP) サムスンは廉価のローエンドから高級なハイエンド端末まで、まさに「ピンからキリまで」の製品ラインナップを揃えていることから、全世界で年間3億台以上のスマホを出荷しており、メーカーとしては世界一の出荷台数を誇っている。最近では中国市場では存在感が無くなってしまったが、それでもインドや東南アジア、欧米での存在感はまだある。  ミャンマーでもサムスンの存在感はある。今回の「Galaxy Note 7」の爆発事故とリコールは大きな話題になっている。「Galaxy Note 7」は当初、2016年9月11日にミャンマーで販売開始する予定で事前に予約の受付も行っていた。そのためヤンゴンの町中や地方でも道路のビルボードなどで「Galaxy Note 7」の宣伝や広告を多く見かけた。しかし、今回の世界規模でのリコールを踏まえて、出荷が10月以降に延期することが発表された。それでも町中には、まだ「Galaxy Note 7」の宣伝の看板やビルボードはそのままだ。 広がるスマホ爆発の懸念 但し、ミャンマー人でサムスンを利用している人はそれ程多くはない。ミャンマーは5年前まで携帯電話すら持っている人がほとんどいなかったが、民政移管後に急速に普及しているので、世界中の新興スマホメーカーが挙って参入している競争が激しい市場だ。サムスンの広告や宣伝は町中で見かけるが、それ以上に中国Huawei、OPPO、vivoやミャンマーのKENBO、タイのTrue、シンガポールのSingtechなどの他にも多くのスマホメーカーが存在し、特に中古端末は町の屋台で購入できることから中古や新品の安いスマホが大量に流通しており、サムスンだけが目立って売れているわけではない。 ミャンマーのヤンゴン また今回の「Galaxy Note 7」は事前予約の920,000チャット (約8万円)と、ミャンマーではとんでもなく高価なスマホで、誰もが簡単に購入できるものではない。事前予約でも数百台の予約しかきていなかった。だからほとんどのミャンマー人にとっては「Galaxy Note 7」の爆発やリコール問題は他人事だ。大量に中古や廉価な新品スマホが流通しているので、サムスンのスマホがなくてもミャンマー人は誰も困らない。  それでも今回の「Galaxy Note 7」のニュースはミャンマーでも多く報じられており、Facebookなどでも話題になっているのでミャンマーでも誰もが知っている。「そんなに超高級なスマホでも爆発するってことは、自分が持っている安いスマホは大丈夫か?」と心配している人もいる。競争激しいミャンマーのスマホ市場でサムスンは多額のマーケティングコストをかけてブランド構築を行っていたが、今回のトラブルでサムスンのブランドはミャンマーでも大きく失墜してしまった。(『Yahoo!ニュース個人』より2016年9月19日分を転載

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    「日本へ富を出すな」韓国で93歳ロッテ創業者取り調べの虐め

     戦後の焼け跡に建てられたガム工場を、日韓にまたがる巨大グループに成長させたカリスマ経営者に、韓国検察は容赦がなかった。 ソウル中央地検は9月8日、ロッテグループ創業者・重光武雄(辛格浩)氏の宿所兼執務室があるソウル市内のロッテホテルで3時間余り、聴取を行った。6月2日、取り調べで検察に出頭した際、抗議する被害者らから洗剤のような泡をかけられた盧柄容ロッテ物産社長(中央)=ソウル(聯合=共同) 彼が韓国経済復興に果たした役割を考慮しないまでも、今秋94歳を迎える同氏の体力的問題を鑑みれば、残酷な仕打ちにも映る。 一連の動きを巡り、韓国のメディア関係者の間で、こんなことが囁かれている。「韓国検察がロッテグループに対する捜査に動いたのは、ホテルロッテ(韓国のホテル・免税店運営)の上場を阻止して国富が日本に流出するのを食い止めるためだ」 事実とすれば衝撃的な話だ。実際、ロッテは裏金疑惑を受け、7月中に予定していた株式上場を自ら取り下げ、無期延期を決めた。 捜査の発端は、昨夏に勃発した創業家の経営権争いだったはず。なぜ日本への「国富流出」が取り沙汰されるようになったのか。 韓国でお馴染みとなった財閥企業の跡目争いだが、今回、異例なのは、長男・宏之(辛東主)と次男・昭夫(辛東彬)間の諍いから飛び火して、韓国社会に一つの疑念を抱かせたことだ。「ロッテは韓国企業ではなく、日本企業ではないのか?」というものだ。 ロッテは日韓にまたがる連結売上高6兆8000億円(2015年度)の巨大グループだが、そのうち日本事業は数千億円程度にすぎない。一方、資本構成は韓国ロッテグループの主軸であるホテルロッテの株の大半を、ロッテHDなど日本側が持つ逆転した形になっている。そして、韓国ロッテから日本側へは2005年から2014年までの10年間に2486億ウォン(約225億円)が配当として渡った。 こうした構造が報道されるなかで、「ロッテは日本への国富流出の窓口」との声までわき上がったわけだ。ロッテの国籍を問う声 昨年8月中旬のロッテHD株主総会で次男側に軍配があがった後も、ロッテの「国籍」を問う報道は鳴り止まなかった。きわめつきが、ソウルで開かれた昭夫氏の会見の際、発音の拙さをわざわざハングル字幕で強調した問題である。 昭夫氏は、幼少期から成人するまでほとんど日本で過ごしたため、発音には自信がない。にもかかわらず、会見では創業家問題で混乱をもたらしたことを自らの言葉で詫びるため、韓国語を選んだ。 昭夫氏の逃げない姿勢は評価されるものだと思ったが、韓国マスコミの論調は揶揄というよりも「愚弄」に近かった。 ロッテ側も黙っていたわけではない。2005年から日本側に配当を始めた経緯について、「同年、日本の国税庁から『38年間にわたり2000億円を韓国に投資したのに、日本に1円も来ていないのは不自然』と指摘されたため」と明かしている。韓国の国富流出どころか、日本の徴税機会が失われていたのだ。 それに2486億ウォンという配当額も、韓国ロッテがこの間に稼いだ営業利益の1%前後に過ぎない。 国税との紳士協定で、最低限の額を日本へ移しているだけだ。さすがにこの説明を受けて、国籍を問う声は、いったんは大人しくなる。それでも日本から韓国への「38年間にわたる投資」に意味を認める向きは皆無だった。そこにこそ、ロッテのアイデンティティがあるにも関わらずである。※文/ジャーナリスト 李策【PROFILE】李策/1972年生まれ。朝鮮大学校卒。日本の裏経済、ヤクザ社会に精通。現在は、北朝鮮専門ニュースサイト「デイリーNKジャパン」記者として、朝鮮半島関連の取材を精力的に行っている。関連記事■ ロッテグループ創業家の逆襲クーデター ドラマ的抗争の顛末■ ロッテ免税店銀座店オープンにチェ・ジウとEXOが登場■ ロッテ 創業家のクーデター鎮圧で球団身売りの可能性も?■ ロッテ創業者の兄弟ゲンカ 韓国法廷でスキャンダル合戦危惧■ イベントに1万人超の超新星とストリートライブ出身CNBLUE

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    韓国は在日韓国人をいじめながら「金づる」として利用

     1950年代初頭の朝鮮戦争によって壊滅的な打撃を受けた韓国は、1960年代から1970年代にかけ「漢江の奇跡」と呼ばれる高度経済成長を遂げた。目覚ましい発展の裏には、他ならぬ「在日」からの援助や投資が大きく寄与したと言われる。だが、産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏は「韓国はそんな同胞を蔑み、利用し続けてきた」と語る。* * * ソウルでの友人に、在日韓国人出身の徐相雲という男がいた。わりと近年、知り合ったのだが昨年秋、自宅の階段でころび、打ちどころが悪くて急死した。筆者より年下でまだ60代だった。葬儀に出かけたが、親族や弔問客も少なく寂しいものだった。夫人と息子にお悔やみを述べ、たった二人の在日系弔問客と思い出話を交わした。 彼は在日韓国人の実業家として知られた故・徐甲虎氏(1915─1976年、日本名・阪本栄一。別表参照)の息子の一人だった。晩年は尾羽打ち枯らした暮らしぶりだったが、祖国・韓国に対する父の貢献、功績を記録に残そうと奔走した。 東京・南麻布の一等地にある約3千坪の広大な韓国大使館の敷地は、実は1960年代の初めに、父・徐甲虎氏が韓国政府に寄贈したものだった。韓国大使館は2013年、老朽化のため建て替えられたが、その際、館の一階に彼の功績を称える資料室が作られ、その胸像も設置された。息子・徐相雲をはじめ在日韓国人のアピールの結果である。 徐甲虎氏は戦後、大阪で「阪本紡績」を創業し、大阪の長者番付でトップになったこともある在日の代表的成功者だった。1960年代に韓国に「邦林紡績」を作るなど「邦林財閥」を形成し、その対韓投資額は280億円に及んだ(「東洋経済日報」2009年7月3日付、永野慎一郎「韓国経済発展への在日韓国人の寄与」から)。 忘れられた在日の祖国への貢献の一端が、半世紀ぶりにやっと在日韓国大使館の片隅に刻まれたのだ。在日は韓国では「金持ち」 韓国がまだ貧しかった1960年代から1970年代にかけ、在日韓国人の本国への寄与については確かな記録がない。在日たちの記憶によると正式な投資や寄贈のほか、いわゆるハンドキャリーで持ち込まれた外貨は相当な額に上るという。 資金だけではない。機械、資材、技術、情報、経営ノウハウ……新たな“メイド・イン・ジャパン”が在日を通じ韓国社会にもたらされた。日本で苦労して貧しさを克服した在日たちの「貧しい親戚、貧しい故郷、貧しい祖国を豊かにしたい」との一念からだった。 在日は韓国では「金持ち」として人気があった。大いに持てはやされ、たかられた。騙された者も多い。 ところが一方で、1970年代には“在日韓国人スパイ事件”が多発した。北朝鮮による日本経由の対韓スパイ工作が背景だが、韓国当局は本国にやってきた留学生など在日韓国人に警戒の目を光らせ、過酷な検挙で多くの犠牲者が出た。 1974年に起きた在日韓国人青年、文世光による朴正熙大統領暗殺未遂(夫人が死亡)は、こうした政治的犠牲を加速させた。在日は経済的に“打ち出の小槌”の“金づる”であったが、政治的には南北対立のスケープゴートにされたのだ。いずれも祖国に“利用”されたことになる。 在日の“利用”という意味では北朝鮮の方がひどいかもしれない。1950─1970年代に“祖国帰還”した10万人近い在日は、「夢のような社会主義祖国の発展」という虚偽宣伝に利用されたうえ、なけなしの財産と労働力と人権を奪い取られ「動揺階層」として差別、監視されてきた。朝鮮総連など北朝鮮系の在日もまた、これまで“金日成・正日・正恩王家”を経済的に支えるとともに、対外宣伝工作のスピーカーとして政治的に利用され続けた。関連記事■ KARA、少女時代、キム・ヨナを通じて日韓の違いを理解する■ 李忠成 韓国代表候補合宿で疎外感を抱き日本帰化へ傾いた■ 在日コリアン 祖国でも彼らに対する差別が厳然と存在■ 在日韓国人留学生 22人中20人が「私は韓国人ではない」■ 朴政権の反日封印でネットでは日本批判にかわって在日糾弾

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    外務省、本日も反論せず~OBの驚愕発言にみる慰安婦「不戦敗」政策

    い通り一遍の答弁をしたので、中山議員が安倍総理の見解を質した。「3・1独立運動」の記念式典で万歳する韓国の朴槿恵大統領=2016年3月1日、ソウル(共同) これに対して安倍総理は、 1、慰安婦問題に関して海外に正しくない誹謗中傷がある、 2、性奴隷、20万人は事実でない、 3、慰安婦募集は軍の要請を受けた業者が主にこれに当たった、 4、慰安婦の強制連行を示す資料は発見されていない、 5、日本政府が認めた「軍の関与」とは慰安所の設置、管理、慰安婦の移送に関与したことを意味する、 という重大な5つの反論を自分の言葉で、次のように明快に答弁した。その直後の中山議員とのやりとりもあわせて引用する。この5つこそが今後の慰安婦問題での国際広報の骨子となるべきものだ。そして、6つめに総理がここで行った反論は、日韓慰安婦合意後になされたという点も重要だ。合意で自制を約束したのは韓国政府への批判であって、国際社会に広がる事実無根の誹謗中傷には反論していくという総理の意思が以下の答弁に込められている。それを外務省が無視していることを告発するのが本稿の目的だ。〈先ほど外務大臣からも答弁をさせていただきましたように、海外のプレスを含め、正しくない事実による誹謗中傷があるのは事実でございます。 性奴隷あるいは二十万人といった事実はない。この批判を浴びせているのは事実でありまして、それに対しましては、政府としてはそれは事実ではないということはしっかりと示していきたいと思いますが、政府としては、これまでに政府が発見した資料の中には軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述は見当たらなかったという立場を辻元清美議員の質問主意書に対する答弁書として、平成十九年、これは安倍内閣、第一次安倍内閣のときでありましたが閣議決定をしておりまして、その立場には全く変わりがないということでございまして、改めて申し上げておきたいと思います。 また、当時の軍の関与の下にというのは、慰安所は当時の軍当局の要請により設営されたものであること、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送について旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与したこと、慰安婦の募集については軍の要請を受けた業者が主にこれに当たったことであると従来から述べてきているとおりであります。 いずれにいたしましても、重要なことは、今回の合意が今までの慰安婦問題についての取組と決定的に異なっておりまして、史上初めて日韓両政府が一緒になって慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認した点にあるわけでありまして、私は、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子供たちに謝罪し続ける宿命を背負わせるわけにはいかないと考えておりまして、今回の合意はその決意を実行に移すために決断したものであります。中山 総理の今の御答弁では、この日韓共同記者発表での当時の軍の関与の下にというものは、軍が関与したことについては、慰安所の設置、健康管理、衛生管理、移送について軍が関与したものであると考え、解釈いたしますが、それでよろしゅうございますか。安倍 今申し上げたとおりでございまして、衛生管理も含めて設置、管理に関与したということでございます〉反論を放棄した国際広報 次に、外務省が現在行っている慰安婦問題に関する国際広報が、安倍総理の答弁といかにかけ離れているかを指摘する。 その典型例として外務省のホームページにある「歴史問題Q&A」の慰安婦の項を検討する。その前に、このコーナーの位置づけを簡単に紹介する。米カリフォルニア州グランデール市で韓国系団体によって設置された慰安婦像 外務省のトップページの中段に「トピックス」という見出しがあり、以下の11項目が並んでいる。TPP、安全保障、日米安保 女性、国連外交、日本の領土(北方領土、竹島、尖閣諸島)、拉致問題、歴史関連、日本海、中東支援、戦後日本の歩み。つまり、外務省が現在、内外に広報したい主要項目がここに並んでいると言える。この中から「歴史関連」をクリックすると「歴史関連」コーナーにすぐつながる。同コーナーの最上段を見ると「トップページ>外交政策>その他の分野>歴史関連」と書いてあるので、本来の位置づけは外交政策の中の「その他の分野」の一部ということだが、トップページから直結で飛べるようにしてある点から重点広報項目の一つということが分かる。また、同コーナーは英語版が準備されていることから、国際広報の手段として位置づけられている。「歴史関連」コーナーの一番上に「歴史問題Q&A」があり、そこに入ると以下の8つの問いが設定され、それに対する回答が記されている。〈問1 先の大戦に対して、日本政府はどのような歴史認識を持っていますか。 問2 日本は戦争で被害を受けたアジア諸国に対して公式に謝罪していないのではありませんか。 問3 日本は先の戦争で被害を受けた国や人々に対し、どのように賠償したのですか。 問4 政府間における請求権の問題は解決済みでも、個人の請求権問題は未解決なのではないですか。 問5 慰安婦問題に対して、日本政府はどのように考えていますか。 問6 「南京大虐殺」に対して、日本政府はどのように考えていますか。 問7 極東国際軍事裁判に対して、日本政府はどのように考えていますか。 問8 ドイツに比べて、日本は過去の問題への取り組みが不十分なのではないですか〉 この1つ1つについてきちんと検討することは後日に譲り、本稿では慰安婦問題について取り上げる。〈問5 慰安婦問題に対して、日本政府はどのように考えていますか。 1.日本政府としては、慰安婦問題が多数の女性の名誉と尊厳を傷つけた問題であると認識しています。政府は、これまで官房長官談話や総理の手紙の発出等で、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し、心からお詫びと反省の気持ちを申し上げてきました。 2.この問題を含めて、先の大戦に係る賠償や財産、請求権の問題は法的に解決済みですが、政府としては、既に高齢になられた元慰安婦の方々の現実的な救済を図るため、元慰安婦の方々への医療・福祉支援事業や「償い金」の支給等を行うアジア女性基金の事業に対し、最大限の協力を行ってきました。 3.アジア女性基金は平成19年3月に解散しましたが、日本政府としては、今後ともアジア女性基金の事業に表れた日本国民及び政府の本問題に対する真摯な気持ちに理解が得られるよう引き続き努力するとともに、慰安婦問題に関する日本の考え方や取組に対し、国際社会から客観的な事実関係に基づく正当な評価を得られるよう引き続き努力していきます。 4.2015年8月14日の内閣総理大臣談話においては、戦場の陰には、深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たちがいたことも、忘れてはなりませんとした上で、20世紀において、戦時下、多くの女性たちの尊厳や名誉が深く傷つけられた過去を胸に刻み続け、21世紀こそ、女性の人権が傷つけられることのない世紀とするため、世界をリードしていくとの決意が述べられています。(参考1)アジア女性基金による活動概要(略)(参考2)慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話(略)(参考3)慰安婦問題に対する日本政府の施策(略)〉 総理答弁でいわれている誹謗中傷に対する反論はここにはない。これが外務省の現在の慰安婦問題に関する国際広報の有り様だ。まさに2008年在米日本大使が米議会議員に伝えた内容と同じで、「河野談話で謝罪しアジア女性基金で償いを行った」という従来からの事実関係の反論を放棄した広報そのものだ。だから、私は総理が単騎で歴史戦を戦い、外務省はともに戦うことを放棄しているというのだ。クマラスワミへの訂正要求と同じ日に掲げられた"謝罪文書"クマラスワミへの訂正要求と同じ日に掲げられた"謝罪文書" なお、(参考3)として挙げられた「慰安婦問題に対する日本政府の施策」という文書は2014年10月14日に外務省が公表したものだ。私が本誌などで繰り返し批判してきたように、同文書は朝日新聞が慰安婦問題での誤報を認め謝罪した直後に作成されたものだが、内容は、慰安婦問題について河野談話などで謝罪をしつづけてきたことと、アジア女性基金を作って償い事業が行われたことだけをくわしく記したもので、国際社会で日本に対する事実ではない誹謗中傷が拡散していることなどについては一切触れていない。 重大な事実を発見した。この文書が公表された2014年10月14日は、ニューヨークで元国連人権委員会調査官クマラスワミ氏に外務省の佐藤地・人権人道大使が面会して報告書の訂正を求めた日だった。佐藤大使は10月22日外務省で行った会見でクマラスワミ氏に対して「今般、朝日新聞の関連での新たな動きを改めて説明すると同時に、これまでの我が国政府の取り組み、これは報告書が作成されて以降、アジア基金の話も含めまして誠実に対応してきた、そういう取り組みも含めて説明をいたしました(下線西岡以下同)」と語った。 ここでいわれている「これまでの我が国政府の取り組み」の説明資料として、問題の「慰安婦問題に対する日本政府の施策」文書が作成されたのではないか。だから文書の公表日が、大使がクマラスワミ氏への面会日と同じなのではないか。そうであれば、佐藤大使はクマラスワミ氏との会見で、吉田証言などを引用している部分について訂正を求めたかもしれないがそれよりも、日本は報告書が出た後も謝罪と償いをしつづけているという部分の説明に力点を置いていたのではないかとさえ疑ってしまう。クマラスワミ氏 そもそも、クマラスワミ氏と佐藤大使の面会は、菅義偉官房長官が9月5日の記者会見で「報告書の一部が朝日新聞が取り消した記事内容に影響を受けているのは間違いない」と指摘したことが契機となっている。菅長官は面会2日後の10月16日の会見で「朝日新聞が慰安婦問題に関する報道が誤報だったと取り消したのでクマラスワミ氏に説明し、報告書に示された見解を修正するよう求めた。先方は『修正に応じられない』ということだった」と述べ、「政府としては今後、国連人権理事会をはじめ国際社会で適切な機会をとらえて、わが国の考え方を粘り強く説明し理解を得たい」と強調した。 しかし、外務省は日本が報告書のどの部分の修正を求めているのかということすらいまだに公表せず、その代わりに「河野談話で謝罪し、アジア女性基金で償いを行った」ということだけを強調する文書を公表した。クマラスワミ氏への説明用に作られたと推定される「慰安婦問題に対する日本政府の施策」文書を面会のその日に公表し、いまだにそれ以降、慰安婦問題に関する広報資料を一切作成していない。 佐藤大使は先の記者会見で「(クマラスワミ)報告書に盛られた事実関係あるいは法律的な議論、この部分については政府として留保しているところではあったわけですが、このたびの展開も踏まえて、これは一層しっかりと説明をしていく必要があるというように認識しております」と語っている。外務省は1996年2月、クマラスワミ氏が国連人権委員会に報告書を提出する直前に、長文の反論文書を作成配布して、それを突然取り下げるというおかしな対応をとった。同反論文書については本誌2014年6月号と7月号で詳しく紹介されているが、まさに事実関係と法律的議論の二つにおいてクマラスワミ氏の性奴隷説を正面から批判している。 本誌の報道の後、国会や自民党の特命委員会などで何回も反論文書を公開すべきだと議論になったが、いまだに実現していない。つまり、外務省はクマラスワミ氏への面会を行った日に、新しく作った文書を公表し、過去の反論文書は公開しなかった。その新文書では「河野談話で謝罪しアジア女性基金で償いを行った」という従来からの内容だけしか含まれず、反論は入っていない。反論を広報する意思がないとみなさざるを得ない。マグロウヒル社への要請内容も公表せずマグロウヒル社への要請内容も公表せず 以上見たとおり、現在の外務省の慰安婦問題に広報は、安倍総理が参議院予算委員会で事実に踏み込んで明確に反論していることとあまりにもかけ離れている。 もう一つ、事例を挙げる。2014年11月3日の産経新聞の報道により、米大手教育出版社「マグロウヒル」(本社・ニューヨーク)が出版した高校の世界史の教科書に、慰安婦問題などで重大な事実誤認に基づく記述があることが分かった。「日本軍は14~20歳の約20万人の女性を慰安所で働かせるために強制的に徴用し、慰安婦になることを強要した」「逃げようとして殺害された慰安婦もいた」「日本軍は慰安婦を天皇からの贈り物として軍隊にささげた」との内容が含まれていた。米大手教育出版社「マグロウヒル」(本社・ニューヨーク)が出版した高校の世界史の教科書 この報道を受け外務省も訂正のため動いた。11月7日、在ニューヨーク総領事館が出版社に記述内容の是正を申し入れ、12月中旬に正式な話し合いの場が持たれた。しかし、2015年1月15日、同社は文書を発表して、日本政府の関係者が「慰安婦」に関する記述を変更するよう求めてきたが「『慰安婦』の歴史的事実に対する学者の意見は一致している。われわれは執筆者たちの記述、研究、表現を明確に支持する」と訂正要求を拒否した。 また、外務省は同記述の執筆者である米国歴史学者にも訂正を求めた。ハワイ大学マノア校の准教授を務めるジーグラー氏は「出版社と私は日本政府の関係者から個別に連絡を受け、不愉快な書き方に何らかの修正を求められた。出版社も私もそのような考えは一切受け入れていない」とウォール・ストリート・ジャーナル2015年1月15日付けで述べている。 その後、米国歴史学者らが2回にわたって声明を出し、私を含む日本の学者がそれらに反論を出したことは本誌などで紹介されたとおりだ。安倍総理も2015年1月29日の衆議院予算委員会で、稲田朋美議員の質問に答えて以下のように答弁している。〈マグロウヒル社の教科書を拝見いたしまして、私も本当に愕然といたしました。主張すべき点をしっかりと主張してこなかった、あるいは訂正すべき点を国際社会に向かって訂正してこなかった結果、このような教科書が米国で使われているという結果になってきた。 国際社会においては、決してつつましくしていることによって評価されることはないわけでありまして、主張すべき点はしっかりと主張していくべきであり、(略)外務省におきましても、外交におきましても、国際社会の正しい理解を得るべく、今後とも我が国の国益の実現に資するよう、戦略的かつ効果的な発信に努めていきたい、このように思います〉 ところが、外務省は現在に至るまで、マグロウヒル社の教科書のどの記述を日本政府として問題にしているのかについて、公表していない。ただ、同社に働きかけたことだけを認めて、その訂正要求の具体的内容を明らかにしていない。外務省のホームページにはこの問題についての外務省の見解を示す文書は存在しない。 総理は国会で「外務省におきましても、外交におきましても、国際社会の正しい理解を得るべく、今後とも我が国の国益の実現に資するよう、戦略的かつ効果的な発信に努めていきたい」と答弁したが、外務省は発信をしていないのだ。ここでも総理が単騎で戦っている。隠しているような国連女子差別撤廃委での反論隠しているような国連女子差別撤廃委での反論 外務省の慰安婦問題での反論として、杉山晋輔外務審議官が今年2月16日、ジュネーブの国連女子差別撤廃条約委員会で行った発言を思い出すかもしれない。〈日本政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる「強制連行」を確認できるものはなかった〉〈慰安婦が強制連行されたという見方が広く流布された原因は、吉田清治氏が、日本軍の命令で、韓国の済州島において、大勢の女性狩りをしたという虚偽の事実を捏造して発表したためである。(これが)朝日新聞により、事実であるかのように大きく報道され、日本、韓国の世論のみならず、国際社会にも、大きな影響を与えた〉〈「20万人」という数字も、具体的裏付けがない。朝日新聞は、「20万人」との数字の基になったのは、通常の戦時労働に動員された女子挺身隊と、ここでいう慰安婦を誤って混同したことにあると自ら認めている〉〈「性奴隷」といった表現は事実に反する〉 まさに先に見た安倍総理の参議院予算委員会答弁とほぼ同じ内容であり、外務省が事実関係に踏み込んだ反論をしたという点で画期的なものだった。その点は肯定的に評価したい。しかし、杉山発言は国連女子差別撤廃条約委員会の委員からの質問に口頭で答えたものであり、文書で提出された政府の正式回答や杉山審議官が同委員会の冒頭で行った政府見解ステートメントにもこのような内容は一切含まれていなかった。国連女子差別撤廃委員会の会場で立ち話する中国出身の委員(写真右)と韓国人弁護士=2016年2月16日、国連欧州本部(藤木俊一氏撮影)「国際社会への発信」というには物足りないものだった。内容は画期的だが形式があまりに消極的だった。その上、このような質問への口頭回答も、官邸の衛藤晟一補佐官らが総理の意向を汲んで外務省に強く求めた結果実現したものだと聞いている。そこにも外務省の姿勢が表れている。 もう一つ残念なのは、外務省が杉山反論を国際広報の道具として使おうとしていないことだ。杉山反論は外務省のホームページに収録されている。(産経新聞2月26日正論欄で私は「今回の杉山反論も肝心の外務省のウェブページに掲載されていない」と批判したが、本稿執筆の時点では日英両国語がアップされている)。しかし、残念ながらその場所はたいへんわかりにくい。本稿冒頭で見た「歴史関連」コーナーにはつながっていない。 トップページ>外交政策>日本の安全保障と国際社会の平和と安定>女性>女子差別撤廃条約>「女子差別撤廃条約第7回及び第8回報告審査の質疑応答における杉山外務審議官の発言概要」の順に5回クリックしてやっとたどり着ける。その上、題名がただ「女子差別撤廃条約第7回及び第8回報告審査の質疑応答における杉山外務審議官の発言概要」とされているだけなので、慰安婦問題に関する日本政府の見解を知りたいと思って外務省のホームページを閲覧する人がこの発言をみつけるのは不可能だ。つまり、いまだに外務省は事実に基づく反論を国際広報しようとしていないと言っても良いのではないか。外務省OBたちの呆れる認識「過去の再評価は大学で」外務省OBたちの呆れる認識 なぜ、総理を外務省は支えようとしないのか。外務省高官らは国際社会の誹謗中傷を放置することが外交上得策だと今も内心、考えているのではないかと私は疑っている。外務省OBらは以下のごとく、慰安婦問題や南京事件で事実に基づく反論を政府が行うことを否定して、外務省のこれまでの姿勢を擁護しているからだ。 第1次安倍政権のとき、岡崎久彦氏は〈慰安婦問題は、(中略)勝てない、絶対に勝てないということです。ヘルメットを被って、塹壕の中に入って、弾が頭の上をポンポン飛んでいくのをじっと耐えるしかありません〉(『この国を守る決意』2004)という立場から〈総理自身の言葉で謝ったほうが良い。狭義の強制について質問されれば嘘は言えないが、そもそもそんなことは問題の中心ではない。言ってもその直後に、慰安婦制度を持ったことは女性の尊厳を傷つける人権無視の行動として謝罪すればそれで良いのである〉(産経新聞2007年5月14日)とアドバイスしていた。ただし、岡崎氏は同じ頃、すぎやまこういち氏らが主導した慰安婦問題の事実を米国に伝えるための米紙意見広告の賛同者として名前を出しているから、戦う姿勢がなかったわけではない。その点、あとで紹介する元大使や評論家とは違う。 武藤正敏・元駐韓日本大使は、強制連行があったかもしれないなどという驚くべき認識に立ち、事実に基づく反論をするべきでないと次のように述べている。武藤大使の在任中、日本大使館前に慰安婦像が建ったのだから、まさに歴史戦の主戦場にいた外交官だ。その人物が次のように考えているのだから日本国の名誉は守れないはずだ。〈そもそも、軍による「強制性」がなかったと言い切れるかどうか。資料がないというのは理由になるのか。軍人による強制連行を資料として残すとも考えられません。また、「絶対になかった」と明確に否定できる証拠にしても見つかることはないと思います。〉〈日本が注意すべきポイントは、「狭義の強制性はなかった」という主張は決してしないことです。なぜならその主張は、かえって国際社会に「過去の非人道行為を反省していない」との不信感を植え付け、ますます韓国側に同情を集めてしまいかねないからです。この問題の対応は、世界がどう見ているかという視点で考える必要があるのです。〉(『日韓対立の深層』2015、54頁、23-24頁) 著名な外交評論家の宮家邦彦氏は、日本の敵は日本国内の「民族主義的衝動」だと言って慰安婦問題での反論を控えよと次のように説いている。〈過去の「事実」を過去の「価値基準」に照らして議論し、再評価すること自体は「歴史修正主義」ではない。しかし、そのような知的活動について国際政治の場で「大義名分」を獲得したいなら、「普遍的価値」に基づく議論が不可欠だ。いわゆる「従軍慰安婦問題」や「南京大虐殺」について、歴史の細かな部分を切り取った外国の挑発的議論に安易に乗ることは賢明ではない。 過去の事実を過去の価値基準に照らして再評価したいなら、大学に戻って歴史の講座をとればよい。逆に、過去の事実を外交の手段として活用したければ、過去を「普遍的価値」に基づいて再評価する必要がある。歴史の評価は学者に任せればよい。現代の外交では普遍的価値に基づかない歴史議論に勝ち目はないのだ〉(『WEDGE』2015年5月号)〈日本の生き残りにとって最大の障害は中国や統一後の朝鮮ではない。日本の最大の敵は「自分自身」である。新民族主義時代における日本民族のサバイバルのためには、日本自身が普遍的価値を掲げ、自らの民族主義的衝動を適切に制御する必要がある〉〈最も重要なのが、日本の誇りある伝統を普遍的価値の論理で説明する能力を獲得すること、すなわち「保守の進化」である。日本が国際社会において守りたい価値があれば、それらを自由、民主、人権、人道、法の支配といった普遍的価値のロジックで説明していくことだ。日本が世界各国と競争しているのは国際政治であり、過去の歴史の事実関係ではない。 そのことを正確に理解しない限り、国際政治で日本の影響力を高めることは難しい。イルカ、捕鯨、慰安婦……ナショナリズムは時に普遍的価値と対立するが、これを日本人にしか理解できないロジックで何度説明を試みても、結果は生まれない〉(『日本の敵』2015年) 彼らは慰安婦問題で韓国政府がゴールポストを動かしてきたと主張する。この議論は宮家氏が最初に使った比喩だという。しかし、外務省が事実関係で争わずに謝罪だけをしつづけてきたことで、先に日本がゴールポストを下げたのだ。1992年、宮沢喜一総理が慰安婦問題で8回謝罪した直後に私は外務省北東アジア課の幹部に、「権力による強制連行を認めて謝ったのか、貧困の結果、そのようなことをせざるを得なかった女性に人道的に謝ったのか」と質問したが、答えは「これから調べる」だった。 国際社会では、謝罪すれば非を認めたことになるし、反論しなければ相手の主張を認めたことになる。これが国際社会の普遍的ルールだ。貧困の結果、売春業に就かざるを得なかった女性たちに現在の価値観から同情し、慰安所で彼女らを戦争遂行のために使ったことを謝罪することと、性奴隷、20万人、虐殺などという明らかな虚偽に反論することは両者とも普遍的価値に立つものだ。安倍総理はその両者を同時に主張すべきだと言っている。細くて困難な道だがそれしか日本が生き残る道はない。ウソは悪いと聖書も教えている。 外務省は1日も早く、ホームページの「歴史問題Q&A」の慰安婦の項に、安倍総理が国会で答弁した事実に基づく5つの反論を掲載すべきだと最後にもう一度強調しておく。(※編集部注:本稿掲載後、外務省英語版ホームページの「歴史問題Q&A」に杉山晋輔外務審議官(当時)が国連で行った慰安婦問題の事実関係に関する発言内容のリンクが新たに追加されました。産経新聞 2016.8.20)にしおか・つとむ 昭和31(1956)年、東京都生まれ。国際基督教大学卒。筑波大学大学院地域研究科東アジアコース修士課程修了。在ソウル日本大使館専門研究員などを歴任。「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(救う会)会長。著書に『金賢姫からの手紙』『よくわかる慰安婦問題』(ともに草思社)など多数。

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    韓国に圧倒される日本の対外発信 米で存在感増す「KEI」の実態

    リカ側に向けて日本の発信をする他の公的機関は、エンターテインメント志向にもっと徹しているからである。韓国の洗練された対米発信 ロサンゼルスとニューヨークにはそれぞれ「日本文化センター」という機関が存在する。ともに日本の独立行政法人の「国際交流基金」が運営する対米発信拠点である。同基金は外務省の事実上の管轄下にあり、対外的な文化芸術交流や日本語教育の普及を任務とする。だが、そのほかに「日本研究・知的交流」という目的もあり、「日本と海外の人々の間で対話する機会を作ることで、日本の対外発信を強化する」と謳われている。たんに狭い意味の文化にこだわらず、政治や外交も含めての日本からの広範な発信もする、ということだ。 だがアメリカで「ロサンゼルス日本文化センター」の活動を見ると、あまりにも軽い。日本語普及の「みんなでしゃべろう!」というプログラムはまだしも、「かわいいお弁当の作り方」「おにぎりで世界を変えよう」「折り鶴の見本」というような通俗な「発信」ばかりである。その他はお決まりの映画とアニメの連続となっている。 これでは「文化」の名にも値しない。ほんの少しでも日米間の「知的交流」を思わせる対米発信があってよいと思うのだが、まったく見当たらない。日本にとってのいま懸案の外交課題や、日本が国として対外的に知らせたいテーマにわずかでも関わるような行事はゼロなのだ。 だからこそ政治の首都ワシントンにある前述のJICCが、日本の国家としての主張や情報をアメリカに向けて少しは発信すべきなのだが、それもまたないのである。 韓国の洗練された対米発信  では、同じワシントンでの韓国の対米発信活動の状況を報告しよう。韓国を日本との比較の対象に挙げるのは、両国がともにアメリカの同盟国である一方、互いに利害の衝突があるからである。周知のように韓国は日本の領土の竹島を不当に軍事占拠している。まず領有権での衝突があるわけだ。また、慰安婦問題をはじめとする歴史認識でも日韓両国は衝突してきた。 こうした衝突部分の状況は超大国のアメリカの対応に大きく影響される。アメリカが日韓両国それぞれの主張や態度をどう見るかがつねに重要となってくるわけだ。アメリカの理解や賛同を取り付けたほうが有利になる。だからそのアメリカに向かってどんな発信をするかは、日韓両国にとっていつも重要なのである。 この点での日韓両国の対米活動は一種のゼロサム・ゲームだともいえよう。相手が得点を上げれば、それだけこちらの失点になるような相関関係があるわけだ。だからこそ韓国の対米発信の実態を知ることには二重三重の意義がある。 韓国政府の対アメリカ発信の主役は「アメリカ韓国経済研究所(KEI)」である。韓国は官民全体としても、アメリカへの広報や宣伝は日本のそれよりもずっと積極的で大規模だといえる。実際の対米発信の作業はあくまで韓国の政府が主体となり、ワシントンの在米韓国大使館や民間団体をも使う。だがその具体的な広報や情報の活動となると、中心になって動くのがこのKEIなのである。 ただし韓国には、対米発信では日本にない大きな武器がある。それは合計170万人とされる在米韓国人、韓国系アメリカ人の存在である。韓国系アメリカ人は国籍はアメリカだから、韓国政府の指示で必ずしも動くとは限らない。だがそれでもなお韓国を祖国と見なし、その利益のためには協力し、献身するという人たちも多い。韓国政府はアメリカの政府や議会への働きかけでは、この韓国系アメリカ人の存在に依存できる場合が多いのである。韓国の対米発信機関「KEI」の実態 だが対照的に、日本は対米発信で日系アメリカ人に依存することはできない。日系アメリカ人には日米戦争のせいもあって、日本のために動くという意識がまずないからだ。 こうした韓国の対米発信の全体図を背景として踏まえたうえで、主役のKEIの具体的な活動を報告しよう。以下はすべてこの数カ月間のイベントだった。「下院外交委員長エド・ロイス議員に米韓関係の現状を問う」(議会の東アジア政策を扱う中枢のロイス議員にKEI代表が質問し、討論する)「韓日両国間の価値観のギャップを克服するには」(KEI代表の二人の専門家が全米規模のシンポジウムでこのテーマについての意見を発表する)「米韓同盟と経済協力の強化策を論じる」(KEI主催のシンポジウムで米側の専門家9人を3つのパネルに分けて発表と討論をする)「2016年の韓国の国会議員選挙結果を分析する」(米韓両方の専門家たちが公開討論の形で同選挙結果の米韓関係への影響などを論じる) 以上の行事を紹介しただけでも、すでに日本政府の対米発信とは根本が異なることが明白だろう。KEIは韓国やアメリカ、そして日本もが直面するそのときの重要課題を正面から取り上げ、論じるのだ。その論じるプロセスでは、韓国政府の主張やアピールが底流として盛り込まれている。アメリカ側への直接の訴えとか要請という露骨なかたちを取らない、洗練された対米発信なのである。 この種の行事を毎週のように主催するKEIは、表面的には韓国政府の対アメリカPR、働きかけの機関というよりも独立したシンクタンクのようにさえ見えてくる。ところが実態は間違いなく韓国政府の対米発信機関なのである。だからワシントン駐在の韓国大使の安豪栄氏はKEI主催のイベントに頻繁に登場し、熱心に発言する。安大使はアメリカ勤務を重ねた知米派外交官で、きわめて雄弁である。 KEIは1982年に韓国政府によって創設された。資金はすべて韓国政府からなのだ。その公式の目的は「米韓両国間の経済、政治、安全保障に関する対話と理解を促進する」こととされていた。まさに韓国政府による対米発信機関なのである。ワシントンでの一般の研究機関とは異なり、KEIはアメリカ司法省に「外国代理人」として登録されている。外国政府、つまり韓国政府を代弁してアメリカ国内で活動する機関であり、その活動資金も韓国政府から提供されると明記されている。 KEIのオフィスはワシントン市内中心街のビル内の一角にある。一般の事務所のほかにかなり大きな会議室などを備えてはいるが、独立した建物の構えを有する「日本情報文化センター」よりは小規模で控えめである。だが活動内容となると、大人と子供の違いがあるのだ。 しかもKEIは韓国政府の機関ではあるが、所長はアメリカ議会の前下院議員ドナルド・マンズロ氏である。つい最近まで下院外交委員会のアジア太平洋問題小委員会の委員長などを務め、アジアには詳しい政治家だった。副所長はこれまたアメリカ人の元外交官マーク・トコラ氏である。同氏は国務省の外交官としてアジアへの関わりが長く、韓国のアメリカ大使館の次席だったこともある。こうしたアメリカの「顔」がKEIのアメリカ側への受け入れを一段と広く深くしているといえよう。KEIの会合に出席して 私もじつはKEIにはよく出かける。その主催する討論や報告がニュースとするにふさわしい斬新な情報を含むことが多いからだ。 最近でも「中国人民解放軍が北朝鮮をどう見るか」というテーマの研究発表があった。米側の若手研究者の発表だった。 その会合に出ると、所長のマンズロ前議員がわざわざ私の席まで来て自己紹介をしながら歓迎の意を表してくれた。副所長のトコラ氏とも別の会合でかなりの時間、話をしたことがある。いずれも韓国政府の主張を代弁するという態度を感じさせず、米韓関係の改善に努めたいという印象だった。韓国政府側からすれば、きわめて効果的な対米発信の成果ということになると感じた。 ちなみに日本政府も、いまのKEIに似た対米発信機関を運営していたことがあった。外務省の主管で、「日米貿易協議会」という名前の組織だった。日本大使館とは別個の組織とし、トップにはアメリカ人の日米関係専門学者を据えていた。日米貿易摩擦の激しい1970年代から80年代にかけてのことだった。だがこの組織はさまざまな理由でうまく機能せず、廃止に至った。 ところが韓国政府機関のKEIは明らかに成功し、ワシントンでのその存在と影響力とを着実に強めているのだ。この韓国の対米発信と日本の対米発信のギャップをとくに痛切に実感させられたのは、北朝鮮による日本人拉致事件の案件までもKEIが扱っているのを見たときだった。 KEIは今年2月初め、「招待所・北朝鮮の拉致計画の真実」と題するセミナーを開いた。その題名の新刊書を著者のアメリカ人ジャーナリストのロバート・ボイントン氏が紹介し、米側専門家たちが討論する集いだった。オバマ米大統領との面会を終え、大統領に見せた横田めぐみさんの写真を手にする横田滋さんと早紀江さん夫妻=2014年4月、東京都千代田区 同書は、北朝鮮による日本人拉致事件の内容を英語で詳述した初の単行本だった。事件を英語で紹介した文献は、米側の民間調査委員会の報告書などがあるが、商業ベースの英文の単行本はなかったのだ。 ボイントン氏は数年をかけて日本や韓国で取材を重ね、とくに日本では拉致被害者の蓮池薫氏に何度も会って、拉致自体の状況や北朝鮮での生活ぶりを細かく引き出していた。また同じ被害者の地村保志・富貴恵夫妻や横田めぐみさんの両親にも接触して、多くの情報を集めていた。その集大成を平明な文章で生き生きと、わかりやすく書いた同書は迫真のノンフィクションと呼んでも誇張はない。 「何の罪もない若い日本人男女が異様な独裁国家に拘束されて、人生の大半を過ごし、救出を自国に頼ることもできない悲惨な状況はいまも続いている」 ボイントン氏のこうした解説に対して、参加者から同調的な意見や質問が提起された。パネリストで朝鮮問題専門家の韓国系アメリカ人、キャサリン・ムン氏が「日本での拉致解決運動が一部の特殊な勢力に政治利用されてはいないのか」と述べたのが異端だった。そして、同じパネリストの外交問題評議会(CFR)日本担当研究員のシーラ・スミス氏が「いや、拉致解決は日本の国民全体の切望となっている」と否定したのが印象的だった。 この場で私が感じた最大の疑問は、日本にとってこれほど重要な本の紹介をなぜ日本ではなく、KEIという韓国の政府機関が実行するのか、だった。日本政府は何をしているのか。ワシントンの日本大使館は何をしているのか。そんな疑問でもあった。漫画や和食ばかり宣伝する「ジャパン・ハウス」性格を変えた「ジャパン・ハウス」  ワシントンでの日本と韓国との対米発信パワーの差は、米側の主要研究機関の活動でも顕著に表れている。主要シンクタンクの「戦略国際問題研究所(CSIS)」や「ヘリテージ財団」での韓国勢の発言は目覚ましい。 たとえば昨年2月にはCSIが「北朝鮮の人権 今後の進路」と題する大シンポジウムを開いた。副題は「国連調査委員会報告書一周年記念」と記されていた。討議の内容は日本人拉致を含む北朝鮮の人権弾圧だった。 この会議は日本にとっても意義は大きかったが、日本の存在がゼロだった。アメリカ政府と議会、国連代表らとともに韓国の政府代表や学者たちもパネリストとして登場し、活発に発言した。だが、日本はその存在も発言もなかったのだ。日本人拉致事件がこの会議の重要テーマの一端だったのに、日本の声は皆無だった。ワシントンでの日本の対外発信がいかに薄いのかを象徴的に示す出来事だった。クリストファー・パッテン英上院議員(左)に「ジャパン・ハウス」運営委員の委嘱状を手渡す薗浦健太郎外務政務官=2015年7月、ロンドンの日本大使館 こうした流れのなかで日本の外務省はこの春、対外発信の新たな手段と宣言して、海外三都市に「ジャパン・ハウス」という施設を新設する事業計画を発表した。すでに数百億円単位の予算を得ての計画だった。この計画は昨年から、当初は「領土問題、歴史問題など日本としてしっかり主張すべきことを主張し、日本の魅力も発信していく」という触れ込みで推進された。ロサンゼルス、ロンドン、サンパウロの三主要都市に広報施設が開設されるのだという。 ところがいざ予算が取れたあと、この「ジャパン・ハウス」は性格を変えたようだった。外務省当局者たちは、この新施設でアニメ、漫画、和食、ハイテクなど日本の魅力を宣伝することが主眼だと言明するようになったのだ。歴史や領土という課題はそこではとくに提起する方針はない、というのである。そうなると対アメリカ発信の場合、これまでロサンゼルスの「日本文化センター」が実施してきた「かわいいお弁当の作り方」展示会の域を出ないこととなる。 外務省の年来の事なかれ主義の継続ともいえよう。ただし今回の「ジャパン・ハウス」構想では、事前にはいかにも歴史や領土についての対外発信をする必要が高まったからこの構想の実現が欠かせないのだ、という趣旨の説明を外務省代表たちはしていた。私自身も担当官たちからその旨を直接に聞かされた。 このような外務省の体質が長年、続いたからこそ慰安婦問題での「強制連行説」の虚構が国際的に大手を振るようになった経緯はもう実証済みである。その日本式の消極性姿勢を端的に表すのが、いまのワシントンでの韓国に比べてあまりにお粗末な日本政府の対米発信ぶりだといえよう。関連記事■ 慰安婦問題に対するアメリカ人の対日批判が後退している実態!■ <特別対談>慰安婦問題はフィクションだ■ <尖閣問題・日本の一手>国際提訴がもたらす6つの効果

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    在米韓国系のロビー活動により米公立高校で慰安婦授業開始へ

    。“慰安婦教育”導入を推し進めているのは、アメリカ国内での慰安婦像設置運動で世論をあおり立てた、在米韓国系ロビー活動家たちである。 昨年末の日韓合意では「慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決」が定められたはずだ。米グレンデール市内に設置された慰安婦を象徴する像と記念撮影をする韓国人ら=2013年7月、米グレンデール カリフォルニア州のグレンデール市では2013年に慰安婦像が設置されているが、同市の市長は日韓合意について支持する意向を表明しており、合意によってアメリカ発の「日本非難」の動きはブレーキがかかったように見えた。 しかし、韓国系ロビー団体は同じカリフォルニア州で“慰安婦教育”を推進すべく、日韓合意後、アメリカ国内での活動を活発化させていたのである。3月には、元慰安婦らと支援団体「韓国挺身隊問題対策協議会」のメンバーたちが訪米。アメリカの韓国系ロビー団体と連携して、「日韓合意反対」を訴えた。元慰安婦らはニューヨークの国連本部を訪れ、潘基文事務総長と面会。潘氏は会談後にこう述べた。「(元慰安婦の)苦しみに同情します。被害者の声を真摯に聞くことが重要です」 アメリカ、そして国連という場を利用して、「やっぱり日本は悪者だ」と国際社会に印象づけようとしているのだ。 同じ3月には、国連のザイド・フセイン人権高等弁務官が国連人権理事会での演説で、慰安婦について「日本軍による、性奴隷制度を生き延びた人々」と表現し、日韓合意を批判した。これにはすぐに菅義偉官房長官が抗議することを表明したが、国連が「日本非難」の場に利用されていることは間違いない。 SAPIO7月号の特集では、日韓合意を受けて韓国政府が日本批判を控えている中、あちこちから「反日」の動きが復活していることをリポートしているが、アメリカや国連をはじめとする国際社会では、日本を貶める活動が止まるどころか、逆に加速していると言える。 日本側は「合意したから大丈夫だろう」と悠長に構えていてはならないのだ。※SAPIO2016年7月号関連記事米軍慰安婦で問われる朴槿恵氏の「歴史と向き合わぬ国」発言米国の高校で始まる慰安婦授業「20世紀最大の人身売買」など日韓合意後も韓国内で慰安婦像が増殖している米公立高校「慰安婦授業」に問題点多数 英文・訳文紹介「息を吐くように嘘を吐く」 朴槿恵政権は信用ならない

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    稲田朋美氏を「極右」と報じる韓国マスコミ

    会の「女性パワー」を象徴するかのような出来事は、日本のみならず国外でも話題となっている。iStock韓国主要メディアの論調 ところで、稲田氏が防衛大臣に任命されたことについて、韓国マスコミはこぞって批判を繰り広げている。特に目につくのは稲田氏を執拗に「極右」と表現する記事だ。韓国の主要日刊紙やテレビ放送局を見てみよう。 「安倍内閣 今日改造、『極右』稲田氏が防衛相に」(朝鮮日報) 「稲田は歴史認識が安倍総理よりもさらに右寄りだとの評価を受ける極右強硬派だ」(東亜日報) 「稲田防衛相は侵略戦争に対する謝罪は必要ないとし、戦犯を断罪した極東裁判の検証を主導した極右性向の人物」(MBC) 一般の韓国人が稲田氏について知ることができる情報といえば、韓国マスコミが報道する内容だけである。当然、一般の韓国国民の頭の中には「稲田=極右」というイメージが植え付けられたことだろう。 ここで、韓国マスコミの多用する「極右」という語彙について考えてみたい。韓国マスコミの使う「極右」の意味韓国マスコミの使う「極右」の意味 一般的に、漢字語「極右」という言葉が意味するものは何か。辞書的な意味で言えば自国や自民族への過度な優越主義、排他主義性向ではないだろうか? 韓国も日本と同様である。航空自衛隊小松基地を視察し、栄誉礼を受ける稲田朋美防衛相=2016年8月12日、石川県小松市 ところで、稲田氏はここに当てはまる人物だろうか? 日本のマスコミも、稲田氏が保守・右派性向の人物であるという点は否定しないだろう。だが、日本の主要メディアの中に稲田氏を「極右」と表現するメディアがあるだろうか? 恐らく、この表現は見当たらないだろう。なぜか。「極右」という表現は保守だとか右派という言葉とは異なり、ドイツのナチスや米国のKKKのような過激で否定的なイメージを持つ、非常に強い言葉であるからだ。中立を標榜するマスコミであれば、この言葉を使用することに対して慎重にならざるを得ないだろう。 だとすれば、韓国マスコミが「極右」という言葉を惜しげもなく使う理由は何なのか? 極右という言葉の辞書的な意味が日本と同様であることは先ほど述べた通りである。 ただし、ただし、である。韓国においては、相手が「日本」の場合に限り、この言葉の意味が唐突に拡張されるのだ。韓国マスコミは韓国の価値観や主張と対立したり、あるいは、韓国を非難する日本側の主張、日本人はいとも簡単に「極右」だと断じる。この用法は日本語の「極右」には存在しない韓国語独自の用法である。 例えば、韓国マスコミは橋下徹前大阪市長を「極右政治家」、読売新聞を「極右マスコミ」と紹介するのだが、ヘイトスピーチ条例案を提出した橋下氏や世界最多発行部数を誇る読売新聞を「極右」だと考えている日本人がどれだけいるだろうか?野田元総理も「極右」、日刊ゲンダイも「極右」野田元総理も「極右」、日刊ゲンダイも「極右」 韓国が極右だとレッテルを張った人、組織の日本国内での評価を見れば、「極右」という漢字語の意味が日本と韓国で全く違うものだと考えなければ説明がつかないような例はいくらでも挙げられる。 例えば、野田佳彦元総理。2011年に野田氏が首相に就任した時にも韓国マスコミは「日、新しい総理に極右の野田、日韓関係に暗雲?」(東亜日報)、「野田次期総理内定者は歴史認識問題において極右的思考や言動を繰り返してきた」(ハンギョレ新聞)などと、今の稲田氏に対する表現と同じような論調で野田氏を紹介した。理由は、野田氏が過去に「靖国のA級戦犯は戦争犯罪者ではない」と自身の意見を述べたことがあったためである。滋賀県米原市で街頭演説する民進党の野田前首相=2016年6月17日 また、日刊ゲンダイ。「日本の極右マスコミ、五輪出場の李承ヨプ叩き」(東亜日報)というタイトルの記事が出たのは2008年のこと。当時、プロ野球巨人軍で活躍していた韓国人の李承ヨプ選手に批判的な記事を載せた日本のメディアを「極右マスコミ」と報道したのだが、ここで東亜日報が批判したメディアが「日刊ゲンダイ」である。万が一、日本国内の媒体が「日刊ゲンダイ」を極右マスコミなどという紹介をしたら、笑いものになるか、無知を批判されるに違いない。保守政党や政権、特に現・安倍政権を最も辛辣に批判している媒体のうちの一つであるからだ。韓国にとってはその日本マスコミの全般的な「論調」よりも韓国、あるいは韓国人をどんなふうに取り扱うか、が性向を判断するための基準なのだろう。 同様の例としてAERA。2014年11月に韓国の国会図書館で開かれた「嫌韓本・ヘイト本展示会」では朝日新聞系列の雑誌AERAが展示されていた。展示されていた書籍の中身を見ると私の目には「不快」とするほどの内容ではなく、韓国の現状を報告し、苦言を呈しているといった程度の内容だったのだが、それでも、韓国の立場からは「不快」に映るものだったのだろう。韓国で「日本の良心マスコミ」と呼ばれる朝日新聞系列の雑誌であっても、ほんの少しでも韓国の逆鱗に触れれば悪玉になりうるという例である。 野田元首相や日刊ゲンダイを極右と呼ぶことからも分かるように、韓国マスコミの「極右」という表現は、韓国の神経を逆なでしたり、機嫌を損ねるような言動をした相手であることを示すための言葉であり、韓国独自の意味変化を経た結果物といえる。同様に韓国独自の意味変化を遂げた語彙としては「妄言」などが挙げられるのだが、国際的に見たときに、これらの意味に共感してくれる国はあるのだろうか? 中国、北朝鮮なら理解してくれるだろうか?韓国マスコミに期待したいのは「一貫性」「妄言政治家」から「日本の良心」へ――鳩山元総理韓国マスコミに期待したいのは「一貫性」 韓国マスコミの語彙選択についてもう一つ苦言を呈したいのは、彼らがその過激な表現を使うときに、きちんと考察したうえで絶対的な、普遍的な判断としてその語彙を使用しているわけではないということだ。どんなに過激な表現で相手をこき下ろしたとしても、その後に韓国人にとって心地よい言葉を聞かせてもらえれば、いとも簡単にその評価を一変させるのだ。 その好例が、鳩山由紀夫元総理である。2010年当時首相であった鳩山氏が「竹島は日本の領土」だと公の場で発言すると、韓国マスコミは一斉に鳩山氏の発言を「妄言」だと糾弾する批判記事を展開した。北京市内のホテルで記者団の取材に応じる鳩山由紀夫元首相=2016年6月26日 ところが、それから5年後の2015年、鳩山氏がソウルを訪問したときのことである。日本統治期に刑務所として使われていた施設を訪問したのちに、慰霊碑の前で膝をつき、日本の統治について謝罪した鳩山氏を評して、今度は「日本で最も誠実な良心であり勇気」だと一斉に称賛した。ほんの5年前に「妄言政治家」だと批判を繰り広げたマスコミが、である。 起源を一つにする漢字語だったとしても、あるいは発音まで全く同じ単語だったとしても、国が変わり、時代が変われば少しずつ意味にずれが生じ、場合によっては全く違う意味の言葉として使われるようになることもあるだろう。もっと言えば、同じ地域に住んでいる人同士でも、性別、年齢、あるいは個人差で微妙に違うニュアンスをもって言葉が使われることだってある。 だが、それを考慮したにしても、日本の与党も野党も、保守紙もリベラル紙も、その一時の状況次第で「極右」と批判してはばからない韓国マスコミの語彙選択には疑問が残る。せめてもう少し「一貫性」を求めずにはいられないのは私だけだろうか。

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    ミサイル配備が示した朴槿恵大統領の対中外交政策の転換

    所 ウォールストリート・ジャーナル紙の7月13日付社説が、THAAD(高高度防衛ミサイルシステム)の韓国配備決定を、韓国防衛、同盟強化の観点から支持するとともに、これを機に中国は対朝関係を見直すべきである、と述べています。要旨、以下の通り。中国特有の高圧的な警告 韓国による米のTHAAD(高高度防衛ミサイルシステム)の展開決定は、中国にとり打撃である。中国は、中国特有の高圧的な方法で、必要な対応措置を取ると韓国に警告してきた。習近平は朴槿恵に「慎重に扱う」よう告げてきた。 他方で、中国は最近第4回目の核実験や十数回にわたるミサイル実験をしている北朝鮮を抑えることを拒んできた。3月の韓国アサン研究所の世論調査によると74%がTHAAD配備を支持している。朴槿恵は決定にあたって韓国の将来と北の核、ミサイル脅威から国民の生命を守ることが最重要だと述べた。中国は決定を非難したが、未だ報復はしていない。貿易や観光分野で報復をするのではないかとの懸念により韓国化粧品企業や観光企業の株価は下落した。過去に中国は韓国に対して経済報復をしたことがある。 中国がすべきことは北朝鮮支持を再考することだ。金正恩体制は米を懸念させてはいるが、中国の目的であるアジアでの米の能力と同盟の弱体化にはなっていない。韓国の決定により日米韓の協力は強化されている(日本には既に補完的なレーダーシステムがあり今後インターセプターも配備されるかもしれない)。また日米韓三国は先週ミサイル防衛の演習を実施した。THAADは来年末までに実戦配備される。それまでに中国が中朝同盟のコストを知ることになれば、この配備は北のミサイルへの防衛以上の意味を持つだろう。出典:‘South Korea’s Message to Xi Jinping’(Wall Street Journal, July 13, 2016)http://www.wsj.com/articles/south-koreas-message-to-xi-jinping-1468448100 ここ数年米韓、また中韓の間で問題になってきたTHAAD配備がようやく決着したことは歓迎すべきことです。7月8日の決定により、THAAD一基が来年末までに慶尚北道星州(韓国中央部の大邱の西方。韓国空軍施設がある)に実戦配備されます。THAADは飛来するミサイルを、PAC3と比べてより早期にかつより高度で迎撃できます。韓国の報道によれば配備されるTHAADはレーダーと射撃統制装置(発電機含む)、発射台6台、インターセプター48発(発射台あたり8発。最大射程200キロ)で構成されているといいます。韓国政府はインターセプターの追加導入の可能性も示唆しています。中国への傾斜を止めた朴槿恵 北朝鮮、中国、ロシアは配備決定に強く反発しています。中国は当初からレーダーの探知距離(1000~2000キロと言われるので北京も入る)などに鑑み猛烈に反対してきました。ロシアも反対してきました。かかる状況に鑑み、配備決定の米国防総省声明は、これは北朝鮮の脅威に対処するものであり、「いかなる第三国に向けられるものでもない」と述べました。さらに配備地について韓国報道は「THAAD配備地域を慶尚北道星州に決めたのもTHAADレーダーの探知範囲が中国内陸に届かないよう配慮した側面が大きい」と述べています。他方、配備地が南に下がったためソウルがカバーされなくなったので、韓国はソウルに別途PAC3を配備すると言われています。中国への傾斜を止めた朴槿恵 ここ数年迷走してきた韓国の外交・安保政策の経緯はともかく、何とかここに至ったことは良いことです。あれほど中国に傾斜してきた(1年足らず前の対日抗戦勝利式典では習近平と共に天安門の壇上に立っていた)朴槿恵を突き動かした最大の要因は、過去1年の北朝鮮の相次ぐミサイル発射と北朝鮮のミサイル技術の進展です。厳しさを増す安保環境を背景に、安保派が外交派に勝ったともいえます。現に尹炳世外交部長官は最後まで反対したと報じられています。外交部は「事実と異なる」と否定しましたが、あながちありえないことではありません。 来年末までの実戦配備に向けて着実に作業が進められることが期待されます。しかし、二つの問題があります。一つは韓国国内政治です。今や世論の半分はTHAAD展開に理解を示し、大手メディアも展開を支持する社説を書いています。しかし、住民の反対運動は激しくなる様相を示しています。野党や運動家なども攻勢を強めています。ハワイ・カウアイ島で行われたTHAADの発射実験=2010年6月 もう一つの問題は対中関係です。中韓関係は、今後双方で緊張に振れる可能性が高いでしょう。中国は必要な戦略上の措置を取ると警告しています。今韓国の人々が最も恐れるのは中国の報復措置です。2000年に韓国が中国産の冷凍ニンニクなどの関税率を引き上げたところ、中国は猛反発、韓国からの携帯電話やポリエチレンの輸入を中断する報復措置をとり、結局、韓国側が関税率を元に戻すことで問題を落着させざるを得ませんでした。 韓国では中国の強硬な立場に不満が募っています。中韓関係のこれまでの蜜月はどこへ行ったのかと問う声があり、一方で政府の対中外交は何だったのかと政府批判の声もあります。韓国が送り込んだアジアインフラ投資銀行(AIIB)副総裁が国内での収賄疑惑のため休職にされるなど、対中関係は既にギスギスしてきています。

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    少女像移転は条件ではない、慰安婦映画と支援財団を考える

     [韓国の「読み方」]澤田克己 (毎日新聞記者、前ソウル支局長) 元慰安婦に対する支援事業を行う韓国の「和解・癒やし財団」が7月28日に発足した。これに合わせたわけではないだろうが、1週間ほど前に元慰安婦の証言を基に制作されたという韓国映画「鬼郷(クィヒャン)」の上映会が東京で開かれた。「最悪の慰安婦映画」(産経新聞)などと評された映画を紹介するとともに、昨年末の日韓合意について改めて考えてみようと思う。なお、日韓合意に対する朴槿恵大統領の姿勢はこの欄で以前も取り上げている。一言で振り返っておくならば、いったん決めたら頑として動かないという朴大統領の性格そのままで、総選挙での敗北など関係なく合意履行へ突っ走ろうとしているというものだ。基本的には、想定通りの展開になっていると言えるだろう。ソウルの日本大使館前にある従軍慰安婦像(写真:Lee Jae-Won/アフロ) さて、映画「鬼郷」である。今年2月に韓国で公開され、359万人の観客動員を記録した。昨年末の日韓合意が大きなニュースとなり、元慰安婦を支援して活発な活動をしてきた韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)などが「法的責任を認めていない」と合意に猛反発したことでさらに人々の関心が高まったという追い風を受けて、封切り直後の2週間で300万人近く動員するという上々の出足を見せた。ただ、その後は息切れしてしまったようだ。1000万人を超える観客を動員するヒット作が多い近年の韓国映画の中では、この観客動員は「そこそこ」という印象だろう。肩透かしの「強制連行」 事前に読んだ紹介記事は「一方的な描写ばかりで、ひどい」というようなものばかりだった。だから「いつ主人公の強制連行になるのだろうか」などと構えて見ていたのだが、最初のうちは正直に言えば肩透かしを食らったような感じだった。10代半ばの主人公と友人2人という少女3人が森の中で日本兵を乗せたトラックに出くわしたから、そこで拉致されるのかと身構えたのだが、そんなことはなかったのである。 上映後に舞台挨拶をした趙正来(チョ・ジョンネ)監督は「反日映画を作ろうとしたわけではない」と強調した。確かに「日本の見方に配慮した」と主張したいのだろうと思われるシーンが散見された。主人公が連れて行かれるシーンでは、銃を担いだ日本兵と一緒に来た朝鮮人らしい男が両親に娘を差し出すよう強要し、母親が泣きながら荷物をまとめて持たせている。男はおそらく朝鮮人業者だろうし、韓国内で流布されている強制連行のイメージよりはマイルドな描写である。道を歩いている少女を片っ端からさらってトラックの荷台に乗せているというイメージが独り歩きしているのだから。 映画には「いい日本兵」も何人か出てきた。慰安婦の部屋に入ってきて「何もしなくていいから」と休ませる日本兵や、部隊周辺の地図を密かに慰安婦に渡して脱走を手助けしようとする日本兵だ。慰安婦の一人が、恋仲になった日本兵を指して「あの人はいい人。戦争が終わったら結婚しようと言ってくれてる」と話すシーンもあった。後述する処刑シーンでは、慰安婦を射殺するよう命じられながら、どうしても引き金を引けない日本兵も出てくる。 脱走や処刑という行為そのものに現実味が薄いのでそちらはコメントしようがないものの、自分の持ち時間に慰安婦を休ませたり、慰安婦と結婚しようと言ったりする日本兵というのは、元慰安婦の証言にも出てくる。韓国では通常、そういった日本兵の存在は無視されているので、こうした日本兵を登場させているのは「日本への配慮」か、「きちんと事実と向き合おうとする姿勢」なのだろう。おそらく趙監督としては、ここまで配慮しているのに「反日映画」などと言われたら不本意だと考えるのではなかろうか。その感覚は、私が昨年の著書『韓国「反日」の真相』で指摘した「自覚なき反日」に通じるものだと感じられた。「配慮」も処刑シーンで台無しに「配慮」も処刑シーンで台無しに ただし、そうした「配慮」も、現実味に欠ける残虐な処刑シーンによって台無しである。病気などで客を取れなくなった慰安婦は用済みだと処刑され、終戦時には証拠隠滅のために慰安婦全員が処刑対象とされる。さらに、死体にはガソリンのようなものをかけて焼いてしまうのである。銃殺を命じられたのに引き金を引けなかった日本兵が薄笑いを浮かべた上官にその場で射殺され、慰安婦の死体と一緒に燃やされるというシーンまである。 趙監督は、元慰安婦が心理療法の過程で描いた「燃やされる少女たち」という絵に衝撃を受けてシナリオを書いたという。だから処刑して燃やすシーンになったようだが、これは、さすがにやりすぎだ。 この絵を描いた元慰安婦には、私もインタビューしたことがある。慰安婦にひどい扱いをする日本兵がいて、後頭部を激しく蹴り付けられて何日も意識を失うほどの大怪我をしたことがあると訴え、今でも傷が残っていると見せてくれた。当時の日本軍が中国で何をしたか考えれば、そうした乱暴な行為をする日本兵がいたであろうことは想像に難くない。日本人の一人として、非常に申し訳ない気持ちになった。「和解・癒やし財団」の設立会合が開かれた建物前で抗議活動をする市民団体メンバー=2016年7月28日、ソウル(共同) ただ、この女性は気が付いたら病院にいて、1カ月入院したと話していた。映画に描かれていた部隊なら銃殺されたところだが、大事な商品である慰安婦を簡単には殺せなかったということだろう。特別に人道的な扱いというわけではない。私が読んだことのある資料は限られているが、慰安婦に対する暴力自体は珍しくなかったものの、病気の慰安婦を殺すというよりは、1カ月入院させて治療する方が普通の感覚のように思えるのである。日本軍の関与は明白な事実である 慰安所は旧日本軍の要請によって作られ、業者は軍によって管理された。軍は業者と慰安婦の移動に便宜を図り、コンドームも軍が支給した。慰安所は、部隊について移動することもあった。そして、親に身売りされたにせよ、あるいは就業詐欺にひっかかったにせよ、不本意な形で慰安婦になることを強いられた女性たちが多かったことも、実数は不明ながら推測できることである。結婚して慰安婦をやめた女性を部隊命令で強制的に慰安所へ戻した事例もある。慰安所の運営に日本軍が深く関与したのは明白な事実である。戦地や後方などという立地や業者の違いによって待遇は千差万別だったが、慰安婦の尊厳が尊重されていたなどは言えない。 サンフランシスコ講和条約や日韓請求権協定がからむ「請求権」の問題になると難しい面が出てくるけれど、日本に道義的責任があることは明らかだ。そう考える日本人も、この映画で出てくる処刑シーンのようなものを出されると考え込むことになるのではなかろうか。自分たちの考える正義を絶対視し、それを受け入れない他者を全否定するかのような姿勢は、結果として、自らの理解者になってくれるかもしれない人をも遠ざけてしまうのである。 要するに寛容さの欠如であるが、反対の立場に立つ人の中にも大同小異の人がいる。典型例が、ソウルの日本大使館前に建つ少女像の撤去が慰安婦合意で日本が約束した10億円拠出の条件になっているという主張である。少女像移転は10億円拠出の条件ではない少女像移転は10億円拠出の条件ではない 以前の記事でも指摘したが、昨年12月28日に日韓両国の外相がソウルの韓国外務省で記者会見し、明らかにした合意内容は次のようなものである。大事な内容なので、ここに再掲する。 すべての前提となる認識は、▽当時の軍の関与の下に多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、日本政府は責任を痛感している▽安倍首相は、日本国内閣総理大臣として心からおわびと反省の気持ちを表明するーーというものだ。 さらに両国の約束として、▽韓国政府が元慰安婦を支援するための財団を設立する▽日本政府が財団に10億円を拠出する▽国連など国際社会において相互非難をしない▽合意がきちんと履行されることを前提に、慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認するーーことが明示された。 そして、前述したようにソウルの日本大使館前に建つ少女像について、韓国政府は「適切に解決されるよう努力する」と表明したのである。少女像の移転が資金拠出の条件だなどとは一言も言っていない。 慰安婦問題が日韓関係の中心課題となったここ数年の間に、少女像は日韓両国において正反対の意味合いを持つシンボルと化してしまった。いくら朴大統領が剛腕だといっても、簡単に突っ走れるのは財団設立までだろう。少女像の移転は極めてハードルが高い。それが、専門家の多くが当初から抱いてきた見立てだ。朴槿恵政権は合意を守ろうとしている それでも朴槿恵政権は、驚くほど合意の精神を守ろうと無理を重ねている。韓国・京郷新聞によると、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界記憶遺産に慰安婦の関連資料を登録しようとする民間団体に対する資金助成が今年の政府予算に計上されていたものの、実際にはまったく執行されていない。韓国の予算は1月から12月までの暦年なので、予算の策定は合意前、執行は合意後ということになる。さらに、韓国政府が鳴り物入りで進めていた「慰安婦白書」は、昨年12月刊行予定だったのに現在も出ておらず、見通しも不透明になっている。当初は、日本語・英語・中国語版も出すという話だったのだが、外国語版は既に白紙化されたという。韓国政府が2014年から慰安婦問題をテーマに開いてきたシンポジウムなどの啓発活動も見直され、今年のテーマは「女性の人権」に変更された。朴槿恵政権に批判的な進歩派である京郷新聞は、こうした姿勢を痛烈に批判している。8月15日、日本統治からの解放を祝う「光復節」で演説する朴槿恵大統領(AP) 元慰安婦たちは既に平均年齢90歳になっている。昨年末の合意時点では46人が存命だったが、7カ月の間に6人が亡くなった。日本政府から100点満点の対応を引き出さねばならないなどと言っていたら、存命の方が誰もいなくなってしまう。一人でも多くの方が存命の間に支援事業を実現させたいというのが、関係者に共通した思いだ。韓国政府の説明によれば、財団側が接触できた37人の元慰安婦の多くは財団に参加する意思を表明したという。認知症などで本人の意思を確認できず、家族との対話となった人もいるようだが、それは仕方ないと考えるしかないだろう。とにかく支援事業の実施は急がれるのである。 日本が10億円を拠出するのは、前述したように明確に合意でうたわれている。合意に入っていない少女像を問題にして資金拠出を先延ばしにするような対応をすれば、「日本が合意を壊そうとしている」ということにしかならない。日韓合意は国際社会に認知されているだけに、それは日本のイメージ低下につながる。昨年末の合意を「最終的かつ不可逆的な合意」にしたいのならば、速やかに10億円を拠出したうえで、財団の行う事業に協力していかなければならないだろう。

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    中国がダメなら米国があるさ 恥を知らない韓国外交

    井本省吾(元日本経済新聞編集委員) 北朝鮮の核開発、弾道ミサイル発射以来の朴槿恵大統領をはじめとする韓国政府の手の平を返したような親日姿勢に、「これほど簡単に態度を変えるとは。恥を知らないのか」と感じた向きは多かろう。 昨年までは中国にべったりと接近し、何でも中国の言う事を聞くという態度で、日本のみならず、米国も呆れさせ激怒させていた。ところが、北朝鮮がキナ臭くなり、軍事的な緊張が高まると、ついこの間まで「歴史上最高の友好関係」とまで謳ってきた中国との関係に隙間風が吹き始め、一気に米国寄りとなった。ついでに日本とも仲直りの風情だ。風見鶏の面目躍如である。ソウルの大統領府の会議で発言する韓国の朴槿恵大統領(聯合=共同) 中国は自分勝手な北朝鮮にイヤケが指し、韓国に急接近したのだが、米国と北朝鮮の関係が冷却化すると、北朝鮮を無視はできなくなった。万一、朝鮮半島に戦争勃発となれば、何百万もの北朝鮮難民が中国に大量流入し、収拾がつかなくなる。それを恐れているから、北朝鮮の息の根を止める行為などできるはずがない。 こうなると、中国にとって大事なのは韓国より北朝鮮。だから、いくら朴大統領が核実験を行った北朝鮮について協議しようと中国政府にもちかけても中国は事実上、これを無視した、朴大統領は怒りとともに中国の態度に見切りをつけ、一気に米国、そして日本側に大接近してきたというわけだ。 韓国は中国にとってその程度の価値しかない国なのである。それをわからずに大統領就任以来、中国にすり寄ったところに朴大統領の甘さがある。問題はその後で、そっち(中国)がダメならこっち(米国)があるさ、と過去の経緯を無視してコロっと代わる変わり身の早さである。風見鶏であるのは政治、外交の常。ビジネスの世界でも同様で、変化に柔軟に対応しなければ生き残れるものではない。別に韓国の政治外交だけのことではない。 だが、政治外交には基本路線というものがあるはずで、それをはずしたら、「これまでの態度とどう筋道を立てるのか」「少しは恥を知れ」と言いたくなる。 2014年3月に日米韓首脳会談が、オランダ・ハーグで開かれた時、オバマ大統領の仲介のもと、安倍首相と、朴大統領が就任以来、初めて正式会談に臨んだが、安倍首相は韓国語も交えて接近を図ったが、朴氏は視線も合わさない無礼な態度で応じた。「反日」で凝り固まった隣国首脳の子供じみた態度が際立った。常に力の強い勢力にすり寄る韓国 ところが、最近の日米韓会談では、朴氏はニコニコ顔で安倍首相にあいさつしている。日本ではこういう態度はとりにくい。恥を知ることが大事だからだ。だが、韓国、朝鮮半島では長い歴史の中で、時と場合に応じ、態度を豹変させるのは当たり前だった。中国、モンゴル、満州、ロシアなど大国に阻まれ、そうしなければ生きて行けなかったからだ。 日韓併合前後に韓国が中国やロシア、日本とその都度、力の強い勢力になびいたのもそのためだ。だが、そうした韓国に同情してはいけない。何度も同情し、戦前の併合時の反省も加わって、さんざん韓国に援助してきたが、一向に日本に感謝するどころか、反発を強めているのが韓国なのである。 今回の場合も、少し北朝鮮情勢が落ち着けば、またぞろ、中国との関係を深め、日本批判を強めるのがオチである。それを繰り返すのが韓国の国柄なのだ。長年、朝鮮半島の歴史や政治を研究してきた筑波大学大学院教授の古田博司氏は「韓国に対しては『助けない、教えない、関わらない』を『非韓三原則』にして日本への甘えを断ち切ることが肝要」と説く。 古田氏は「日本は幕末から明治維新にかけて初めて西洋に出会った、とよく言われますが、実は当時、東洋にも初めて出会ったのです。何も知らないのに、自分も東洋人だから、東洋のことはよく知っていると思い込んでいた。それが間違いのもとだった」と指摘する。 良く知っているつもりだが、それは錯覚で、実は異邦人なのである。「助けない、教えない、関わらない」が賢明な政策なのである。(ブログ『鎌倉橋残日録 ~ 井本省吾のOB記者日誌』より2016年4月6日分を転載)

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    「反日国家」中国と韓国の劣化が止まらない!

    宮崎正弘(評論家)、室谷克実(評論家)《徳間書店『突然死の危機に陥る中国と韓国』より》宮崎 2015年12月28日、岸田文雄外務大臣が渡韓して尹炳世(ユンビヨンセ)外交相と会談し、慰安婦問題の解決に向けての合意がなされました。 その主な内容は、(1)「日本政府は責任を痛感し、安倍晋三首相が慰安婦に対して心からのお詫わびと反省の気持ちを表明する」、(2)「韓国政府が元慰安婦の支援を目的とした財団を設立し、これに日本政府が資金を拠出する」、(3)「これらの措置を着実に実施することで、この問題は最終的かつ不可逆的に解決されることを確認し、両国政府は国連などの国際社会でこの問題について互いに非難、批判することは控える」というものでした。 (2)の日本政府が拠出する資金は10億円程度とされていますが、結局、これは日本政府が譲歩したということになります。しかし日本政府が望んでいたソウルの日本大使館前にある慰安婦像の撤去については、確約はなく、「努力目標」になっていました。それと、韓国側が慰安婦問題を蒸し返さないことを確約したといいますが、本当に守られますかね。韓国側の要請で合意文書を作成しなかったという話もありますし、口約束で金だけ受け取って、またいつの日にか蒸し返す可能性が高いのではありませんか。 元慰安婦の団体などは「この合意を全部無視する」と言って、猛反発しています。日韓外相会談の共同発表後、握手を交わす岸田文雄外相(左)と韓国の尹炳世外相=2015年12月28日、ソウルの韓国外務省 (共同)室谷 狸(たぬき)と狐(きつね)がオンブにダッコの合意ではないか。そう私は最初に思いました。しかし、ちょっと考えてみると、これはとても良い合意ですよ。“アベ狸”のほうが、“クネ狐”より一枚上どころか数枚も上だった。 もちろん、大きな不満があります。そもそも解決済みの案件に、なぜ10億円も出すのか。これまで韓国が官民挙げて国際社会に向けて吹きまくってきた悪宣伝をそのままにして、フタをしてしまうのか……といろいろあります。 それでも、韓国の悪宣伝をこれで封じ、国際的には「慰安婦問題? もう完全に終わったことですよ」と言えることは大きい。韓国政府は「慰安婦問題は日韓協定の枠に入っていなかった」と言ってきたわけですが、今回の合意は、枠外だったとしても、もう終わったことを「不可逆的に」確認したわけです。 さらに、慰安婦問題を中心に据えた中国と韓国の「反日歴史共闘」に楔(くさび)を打ち込んだことが大きい。 ただ、これで韓国が中国と切れて、日米の陣営に来るかとなると疑問ですね。尹炳世外交相は「世界でアメリカと強い関係を維持しながら中国とも最上の関係を維持する国はいくつもない。戦略的な資産として、これを活用しなければいけない」と、〝コウモリ国家〟であることを公然と誇りにしているのですから。 しかし、北朝鮮の核実験があるという「兆候」をアメリカから教えてもらえなかったことが明らかになり、あわてて中国に電話したら、首脳に〝居留守〟を使われた。哀れなるかな、コウモリ外交です。 宮崎 それにしても、なぜこの時期に、しかも年末のギリギリのところで、この合意が行われたのでしょうか。直前の12月17日に産経新聞の加藤達也前ソウル支局長の名誉毀損裁判で無罪判決が出て(12月22日に確定)、さらにその後(24日)、日韓基本条約の請求権放棄は違憲だとする元徴用工の親族の訴えも、韓国の憲法裁判所は棄却しました。これらによって雪解けムードが促進されたことが大きかったという論調もあります。やはり、韓国に対するアメリカの圧力が強かったのでしょうね。2015年3月にシャーマン国務次官が、「政治指導者が歴史問題で過去の敵を非難することによって、安っぽい拍手を得るのは難しくない」と言って暗に韓国を批判していましたし、後でも述べますが、2015年10月中旬に行われた米韓首脳会談では、事前にラッセル国務次官補やリッパート駐韓大使らが日韓関係の改善を求める記者会見を行ったことで、朴槿恵大統領はオバマ大統領に対して日本批判の「告げ口外交」ができなくなってしまったという経緯がありました。朴槿恵大統領の誤算室谷 朴槿恵大統領は、日韓妥結はないと見ていたのだと思います。また、妥結したくもなかった。だから、直前まで「被害者と国民が納得する内容でなくてはならない」と言っていたのです。被害者と称する人々が納得する内容なんて、日本が吞のめるはずがありませんからね。 そう読んだうえで、「日韓国交正常化50周年の今年中に妥結をすべきだ」と息巻いてきた。韓国政府が、被害者と称する老女たちの意向を聴取する作業をしなかったのも、日本が成案を出してくるとは予想もしていなかったからでしょう。 ところが、日本は年末に突然、妥結に向けた案を持ってきた。妥結後のアメリカのはしゃぎようを見れば、アメリカは「日本が出すのはギリギリの案なのだから絶対に吞め」といった圧力をかけたのでしょうね。韓国は「今年中に妥結をすべきだ」と自ら言ってきたのだから、カウンターパンチを食らったようなものでしょう。いまさら「被害者の意向を聴く作業がまだです」なんて言えるはずもない。 それで妥結後、韓国では保守系紙まで含めて「合意を無効にしろ」の大合唱となりましたが、その大きな論拠は、大統領自身が何度も語った、「被害者と国民が納得する内容」というマジノ線が守られていないどころか、被害者の意向を聴取することすらしていなかった点にあります。日本と韓国のどちらに不満が多いかの一点だけ見ても、この合意の勝者がどちらであるか明白です。宮崎 この合意によって、中国や台湾が日本に対して「われわれの慰安婦問題も解決しろ」という声を上げ始めています。ただ、日本としてはこの合意については、「法的責任を含まない」という見解ですし、基本的にこれまでの立場とまったく変わっていない。そもそも慰安婦の強制性を認めたわけでもなく、慰安所の運営に日本軍が関与していたことへのお詫びで、これは1993年の河野談話の踏襲(とうしゆう)ですから、中国や台湾の要求を吞む必要はない。 とはいえ、河野談話も本来は全否定しなければならない問題ではありますが。いずれにせよ、この合意については、本当に韓国が約束を守るかどうかがポイントであって、もし守らなければ、日韓関係はこれまで以上に悪化することは確実です。そうなればその責任は韓国側にあるということで、ボールは韓国側に投げられている。加えて、中国と韓国との「反日共闘」に楔(くさび)を打ち込む意味もあったともえいるでしょう。実際、中国の新聞は「日本は中国を孤立化させることに成功した」と書いていましたからね。 私としては、「一歩後退、二歩前進」という言葉もあるように、この安倍外交は中国と韓国の反日同盟を壊すための「戦術的後退」と見ています。室谷 アメリカの圧力がどんなものだったのかは厚いベールのなかですが、2016年1月4日付の「中央日報」に載った外部筆者の意見は面白かった。「アメリカの圧力でこうなったのだから、アメリカの責任を追及して実利を得るべきだ」という趣旨で、実利の内容としては3000トン級原子力潜水艦(製造技術)とか米韓通貨スワップとか、いろいろ挙げています。その外部筆者が「元国連大使」なのですから、上から下までタカリの精神が満ちている。靖國爆破未遂事件の真相宮崎 2015年の年末にかけて、日韓関係に影響をおよぼすような事件や出来事がいろいろ起こりましたね。 2015年11月23日に、靖國神社のトイレに手製の爆発物が仕掛けられ、それが爆発したという事件がありました。その容疑者である全昶漢(チヨンチヤンハン)は、約2週間後(12月9日)に再来日したところを逮捕されました。すでに日本ではその前から、部品にハングル文字が書かれていたとか、監視カメラに容疑者が映っていたなどということで、来日した韓国人が怪しいと報道されていた。 全昶漢は再来日の理由を「日本の記者から質問されたから、靖國神社のトイレがどうなっているか確認しに来た」などと言っていましたが、どうも話としておかしいですね。 勘ぐると、日本と韓国には犯人引き渡し協定があるため、日本の警察が犯人だと断定すれば、韓国に対して身柄引き渡しの要求をすることになる。しかし、靖國神社を爆破しようとしたとなれば、韓国ではヒーロー扱いになるので、世論を気にする政府としては引き渡し要求があっても拒否したい。とはいえ、犯罪者だから、そういうわけにもいかない。 だから、「自首に行ってこい」というように容疑者に圧力をかけた、ということではないですか。ソウルの日本大使館前の慰安婦像。足元に追悼プレートが新たに設置された= 4月7日、ソウル(名村隆寛撮影)室谷 そういう説を唱える人がいますけれども、私はちょっと半信半疑ですね。それが本当だとすれば面白いけれど、あまり信憑性(しんぴようせい)がないと思います。 最初は否認していた容疑者も、「前回がうまくいかなかったから、再度、仕掛けようと思った」と供述していますし、荷物には火薬らしきものが入っていたとも報じられています。 その日のうちに帰るための航空チケットも持っていたようですしね。宮崎 来た日のうちに帰国するための航空チケットということは、割引チケットではないですよ。割引チケットには、最低2泊しなければならないという規定がありますから。そうなると正規料金ということになりますが、その資金はどこから出たのかという疑問が残ります。 また、初回、再来日時と、2回も爆発物の原材料となるようなものを機内に持ち込めたということも、不思議ですよ。もしかして、爆破事件そのものも、韓国政府筋の差し金ということはないですか?室谷 さすがに、それはないでしょう。だいたい、韓国では、出国の際の手荷物検査が緩いのです。もちろん、X線検査はやっていますが、きちんと見ているかは疑わしい。何事も、「ケンチャナヨ(大丈夫)」の国ですから。 一方で、入国審査は厳しいのです。呉善花(オソンフア)氏が「反韓的な活動をしている」ということで入国禁止になるくらい厳しい。 だから、容疑者が機内に火薬を持ち込めたのも、それほど不思議ではないのです。この全昶漢という男は、韓国空軍に5年半在籍して、下士で除隊したばかりでした。空軍下士というのは、旧日本軍でいえば伍長です。 韓国では2年間の徴兵で、最初は2等兵、3カ月で1等兵、それから7カ月で上等兵、そして最後の2年目には全員が兵長になります。伍長というのはその次の上の位なのですが、徴兵終了後3年半も軍に在籍していたのに伍長のままだったということは、かなり出来が悪いと思いますよ。靖国爆発犯は英雄になろうとしたのか宮崎 だから、靖國神社を焼き討ちして、国の英雄になろうとしたのかもしれませんね。裁判で有罪判決を受け、国外追放になって韓国に戻ったら、一躍、ヒーローでしょう。 2011年には靖國神社に放火して韓国に逃げた中国人がいましたが、日本側の引き渡し要求に対して、「政治犯だ」という理由で韓国側が拒否し、結局、犯人を中国に逃がしましたからね。 中国では、2012年に尖閣(せんかく)諸島へ上陸して日本の海上保安庁に逮捕され、強制送還となった香港の活動家が、帰国後に英雄扱いされたことがありました。尖閣の海域でわが海上保安庁の船に体当たりした暴力船長も、福建省に帰ると英雄扱いでした。 そういう前例があるだけに、この全昶漢容疑者も、帰国したら大々的に褒めたたえられる可能性がある。実際、韓国国内でのネットなどでは「よくやった」という声が多いそうですから。靖国神社の爆発事件で、麹町警察署を出る全昶漢(チョン・チャンハン)容疑者 =12月09日、東京都千代田区(鴨川一也撮影)室谷 少なくとも、愛国者として扱われるでしょうね。そうすると、いろいろなところからカネをもらえる。 韓国では昔の抗日テロリストたちを褒めたたえて、その孫や曾孫に政府が法律に基づいてカネを支援したり、利権を与えたりしているのです。たとえば、1932年の天長節(天皇誕生日)に上海の虹口(ホンキユウ)公園で行われた祝賀式典で、尹奉吉(ユンボンギル)という朝鮮人が演壇に爆弾を投げつけ、多数の死傷者を出した事件がありました。「上海天長節爆弾事件」です。後に外務大臣となる重光葵(しげみつまもる)はこの爆発で重傷を負いますが、演壇には民間人もいた。まさに無差別テロです。 尹奉吉は逮捕されて死刑となりましたが、戦後の韓国政府はこのテロリストを「義士」として顕彰(けんしよう)し、その子孫に電柱広告の総代理店としての独占権を与えました。 日本人を殺傷したテロリストを「偉い人だった」と持ち上げる反日教育を行い、子孫に利権まで与えるのですから、「それなら俺もやろう」と思う人間も出てきますよ。 大学を卒業しても半数しか職にありつけない韓国で、「伍長で除隊」した者が職を得るのは大変なことです。犯行の底流には、そうしたことも確実にあると思います。 それに、おかしいのは日本のマスコミですよ。大手マスコミはこの事件を、なぜか「靖國爆発音0 0 0 事件」などという名称で報じています。 しかし、現実には4本の鉄パイプ爆弾があったわけです。実際には爆発しませんでしたが、まず爆発音を響かせ、人を誘い込んでから爆発するように仕掛けられていた。 だから明らかに、「靖國無差別テロ未遂事件」と呼ぶべきですが、日本のマスコミはどうしたのか、「爆発音事件」などと矮小(わいしよう)化した名称で呼んでいるのです。しかも、検察にしても、起訴は建造物侵入容疑です。宮崎 手口を見れば、かなり悪質ですよ。検察は「余罪の捜査に支障がありうる」として認否や動機について明確にしていないため、今後、新たな罪状が加わる可能性はありますが、このまま建造物侵入罪だけであれば、犯罪容疑としては非常に軽い罪です。2016年1月中旬の時点で言えることは、前科がなければ、いずれ釈放されるでしょう。起訴猶予にはならないとしても、略式起訴くらいで終わるのではないでしょうか。朴槿恵大統領が「教育の問題」と発言する矛盾室谷 捜査はまだ継続中ですから、どのような結果になるのかはわかりません。しかし、確実に言えることは、韓国の70年にわたる反日教育がこうした犯罪の要因になっているということです。 1980年代前半に韓国紙が報じた世論調査では、日本統治時代を体験した高齢者世代ほど「反日」度合いは薄く、若い高学歴者ほど「反日」の度合いが高いという結果が出ていました。要するに、韓国の「反日」は教育によってつくりだされていることが、そのころから表れていたのです。 すでにその時代には、幼稚園で「独島(トクト)(日本名・竹島)はわが土地」という歌を園児に合唱させていましたし、地方自治体の支所(町役場)の掲示板には、小学生が描いた「韓国空軍が日本を爆撃する絵」が貼ってありました。 当時の私は、今後、実際の日本統治時代を知る年齢層がいなくなり、戦後の反日教育を受けた世代だけになったら、韓国の反日はどうなるのかと思いましたが、その懸念が現実になった感じがしますね。宮崎 そうそう、1970年代の韓国の知識人には、かなりの知日派がいましたから。室谷 戦後間もないころの韓国の教師たちは、「反日」を説かなくては教壇に立てなかったと思いますが、それでも内心では忸怩たるものがあったでしょう。しかし、戦後15年も過ぎれば、自信を持って「反日」を語る新世代の教師が登場してきます。そうして「反日」が純化していって、日本統治時代は何でも悪い、この時代をちょっとでも肯定する者は悪人だという意識に国中が凝り固まってしまった。 日本でも日教組全盛時代に、社会科の担当ではない教師までもがマルクス主義史観に基づく〝史実〟を教えたり、「反米」を説いたりしましたが、その時代にも、ごく少数ですがアンチ日教組の教師がいました。これに対して、韓国では、「反日でない教師」は存在できなかった。 日本の新聞が反米論調で埋まっていた時代にも、日本のテレビはアメリカのホームドラマを流し、ラジオではアメリカのポピュラーソングがオンパレードでしたが、韓国では1990年代前半まで、日本の映画、テレビドラマ、歌謡曲の放送が禁じられていました。しかも、韓国人が制作するドラマに登場する日本人は、極悪非道の立ち回りを演じると決まっていたのです。 韓国では、テロリストが天皇に爆弾を投げている姿がそのまま銅像になっています。「李奉昌義士(イボンチヤン)」の銅像がそれですが、そのようなものを毎日見せられてきたことで、戦後韓国の病的な反日が醸成されたのです。「靖國無差別テロ未遂事件」の背後に歪んだ反日教育があることは疑いようがない。 朴槿恵は2015年11月に起こったフランス・パリの同時多発テロ事件に触れて、「これは教育の問題だ」と言いました。つまり、「教育によって防げる」という意味なのですが、自分の国はどうなのかと呆れてしまいますよ。「日本統治時代は良かった」と言った殴り殺された宮崎 韓国では、日本統治時代のことを知っている高齢者が下手に本当のことを言うと、殴り殺されてしまいますからね。2013年に、95歳の男性が「日本統治時代は良かった」と言ったら、居あわせた38歳の男に殴り殺されるということがありましたね。だから、下の年齢ほど反日が先鋭化しているということなのでしょう。 そこは中国と違うところです。中国では各地に「反日教育基地」、つまり南京大虐殺記念館や抗日記念館といった施設があるのですが、ほとんど誰も見ていません。だいたい、中国共産党のいうことを本当に信じている人など少ないし、プロパガンダであることはわかっているのです。 だから、反日暴動がすぐに政権批判の暴動になる。後述しますが、現在の中国の経済状況は日ごとに悪化していますし、環境問題も命が脅おびやかされるほどひどい状況です。つまり、政権に対する潜在的な不満が高まっているわけですが、それを共産党は力で抑え込んでいる。 2012年に北京や上海で大規模な反日暴動が起こりましたが、あれは完全な官製暴動でした。ところが、これが大規模になってコントロールがきかなくなると、政権批判が噴出するようになった。このまま放置すれば、あっという間に反政権暴動に変わることを、中国共産党もわかったのです。 だから最近は、反日デモや暴動がぱったりとなくなってしまった。下手に煽動すると、自分たちの立場が危うくなるからです。ですから、私はよく冗談で言うのですが、「“反日”は“半日”でやめる」と。 このように、中国人の反日はポーズです。だから日本に来ると、「こんなにいい国はない」となる。2015年1~10月の訪日中国人は約430万人で、2014年通年の約240万人の2倍に迫る勢いです(JTB総合研究所)。 ただ、韓国人も同期約320万人で、2014年の約275万人を大きく上回っています。70年間にわたる反日教育の割には、なぜこれほど日本に来たがるのでしょうかね。竹島室谷 国家・政府が嫌いであることと、その国の産業製品・工業製品が好きか嫌いかということは、別の問題だと思っているのでしょう。 日本を旅行した中国の若者が、「日本はすごい」「日本を見る目が変わった」といったことをブログで書いていることがよく報じられますが、韓国人は反日感情を抱いたまま日本中をまわる人が多いと思いますよ。それで、「やっぱり靖國神社には右翼が多かった」とか「日本は思ったとおり悪い国だった」といったようなことを書いている。 あるいは、日本の観光地で「独島はわが領土」といった横断幕を掲げた記念写真や、靖國神社で放尿している写真をブログに掲載したりしている。産経前支局長の無罪判決と中韓の言論弾圧手法宮崎 まあ、日本を賞賛するような内容を掲載すると、韓国ではすぐに親日(売国奴)扱いされてしまうから、したくてもできないということもあるのでしょう。 でも、韓国は曲がりなりにもOECD(経済協力開発機構)加盟国、つまり先進国で、言論の自由があるはずなのに、国民はこぞって反日史観でしかものが言えないという状況が、なんともやっかいですね。 とはいえ、最近は、本当に先進国なのかという疑念も湧いてきています。産経新聞・前ソウル支局長の加藤達也氏を起訴した事件もそうでしたね。 朝鮮日報の記事を引用して朴槿恵大統領に関するウワサ話を書いたら、検察から名誉毀損で起訴されて、出国禁止を命じられてしまった。 これに世界中のジャーナリストが呆れかえったわけですよ。結局、2015年12月17日に無罪判決が言い渡されたわけですが、同日の米紙「ニューヨークタイムズ」(電子版)は「朴政権は、望まない報道を沈黙させようとして法的手段を使い、批判されてきた」と指摘しています。室谷 そうした国際世論の反発で、加藤氏を有罪にはできなかったわけですが、韓国司法の国家元首への従属はどんどん進んでいます。象徴的なのは、裁判長が延々3時間にわたって読み上げた長い判決文でした。その内容は、加藤氏を有罪にできなかったことに対する朴大統領への言い訳でしょう。 現在の韓国では、朴槿恵大統領の名誉を汚したということで、連行、根拠不明の長期勾留、さらには起訴を次から次へ行っています。 たとえば韓国国内では、2015年11月に大規模な反政府デモが起きたのですが、そこでデモ参加者が朴槿恵大統領を批判するポスターに「独裁者の娘」という文言を入れていたところ、警察が「名誉毀損だ」と言って撤去させたということがありました。 韓国国内だけではありません。「ザ・ネーション」というアメリカの週刊誌が、韓国で起きたこの反政府デモについての記事を掲載(2015年12月1日付)したのですが、そのなかで朴槿恵大統領のことを「独裁者の娘」と書いたところ、やはり韓国の総領事館から猛抗議を受けました。 また、日本でも産経新聞のウェブサイト(2015年8月30日付)が、米中に対して二股外交を続ける韓国のことを「事大主義の国」と書いたところ、韓国の駐日大使が産経新聞に乗り込んできて、「取り消せ」と抗議したのです。 一国の大使が民間の新聞社に抗議のために乗り込むなどということは、ありえないことですよ。 北朝鮮ではよく「われらの首領様の尊厳を汚した」という理由をつけて、外交交渉を打ち切ったりしますが、韓国も同じですね。やはり同じ民族ですよ。加藤前支局長を最初に訴えたのは「自称市民団体」宮崎 産経新聞の加藤前支局長の場合、最初に訴えたのは検察ですか? 朴槿恵大統領が直接、被害届を出したり告訴したりしたわけではないですよね。日本では名誉毀損は親告罪ですから、本人やその親族が「名誉を汚された」ということで訴えるというのが普通ですが、韓国では本人ではない者が、名誉毀損で訴えることができるのですか?室谷 韓国の名誉毀損罪は、第三者が訴えることが可能なのです。加藤前支局長を最初に訴えたのは、「自称市民団体」ですね。それで韓国の検察がこの告発を受理して起訴したわけです。 あくまで市民団体が訴えたのであり、国は関与していないという立場なのですが、産経の前支局長を訴えた団体は「朴槿恵の私兵」と嘲笑されている団体で、この団体が訴えるや、検察は即時受理するのです。ソウル中央地裁に入る加藤達也前ソウル支局長 =2015年12月17日、韓国・ソウル(納冨康撮影)宮崎 そうしたやり方は、中国と似ていますね。明らかに政府や公安当局が資金を出しているのだけれども、民間の反日組織がやったことにするという手口です。最近、戦時中に強制労働させられたということで、かつての中国人労働者が日本企業を訴える動きが中国で頻発しています。 これなども、なぜいまになって次々と起こるようになったのかを考えれば、政府当局の差し金であることは明らかです。しかし表向きは、「善良な一般市民が涙の訴えを起こした」ということになるわけです。 黒竜江省ハルビン市にある方正県は、旧ソ連の侵攻から逃れてきた満州開拓団がたどり着いた地として日本の残留孤児がもっとも多いところですが、そこに、約5000人の日本人犠牲者を祀る中国で唯一の「日本人墓地」があります。数年前に仲間とともにそこへ行って花を供え、線香をあげて、「海行かば」を合唱しました。 地元は非常に親日的な地域なのですが、2011年、北京から中国人活動家が5人やって来て、日本人墓地の慰霊碑にペンキを塗って破損するという事件が起こりました。彼らは「愛国英雄」と称えられましたが、わざわざ飛行機でやって来て、タクシーをチャーターしているところからも、政府なり公安なりの息がかかっていることは明らかです。 しかし、「民間団体が愛国的行為でやった」ということになる。室谷 韓国では、VANK(Voluntary Agency Network of Korea)という反日団体が有名ですね。日本海を「東海と呼べ」という運動や、竹島、慰安婦問題で韓国の主張をしきりに世界に発信して、「ディスカウントジャパン」(日本叩き)を行っている組織ですが、韓国政府は「民間団体がやっている」というスタンスです。 しかし、韓国政府はこの団体に対して補助金を支給し、代表者を表彰しています。韓国ウォッチャーの間では国家情報院(旧KCIA)の指導下にある団体という見方が有力ですが、「民間団体」という隠れ蓑みを使って、政府ではできないような過激な反日運動を展開しているのです。宮崎 産経新聞の加藤前ソウル支局長が在宅起訴されたことについて、アメリカの民間団体「ジャーナリスト保護委員会」は、「こういう名誉毀損罪は廃止されるべきだ」と訴えていました。 民主主義の促進などをめざして国際的に組織されている「民主主義共同体(コミュニティ・オブ・デモクラシーズ)」も、「事態改善に向けて早急に行動すべきだ」と主張していました。この民主主義共同体には、韓国も主要メンバーとして入っています。 こうやってアメリカのジャーナリスト団体が抗議行動を起こしているのに、日本のジャーナリストはほとんど何もしていない。保守論壇のなかには、産経新聞を支援する動きはかなりあるけれど、普段から言論の自由を声高に主張している日本ペンクラブや日本文藝家協会などは、何をやっていたのでしょうかね。 日本ペンクラブは、一応は抗議声明を出してはいますが、声明を出したのは「国境なき記者団」よりも後ですからね。自国の問題なのに、国際的に韓国への批判が高まるのを見届けてからようやく出したという感が否めない。それに、こうした会に加盟している作家やジャーナリストたちが、韓国政府に対して抗議デモを行ったという話も聞かない。室谷 もともと、これらの組織はいわゆるリベラル色が強いですからね。本来、リベラルとは左右の全体主義イデオロギーから解放された人々だったのに、いまや左の全体主義者の巣窟になりつつありますね。 それにしても、この裁判の判決公判は、一度、延期されていますよね。もともとは11月26日に開かれるはずだったのが、その3日前に裁判所が急遽、延期を決めたわけです。しかも、その理由が「熟慮する必要があるから」というのだからお笑いです。 延期した間に外交部が寛大な措置を求める公文を提出して、それが無罪判決の決め手になったわけですから、これまたお笑いです。 1891(明治24)年の大津事件(来日したロシア皇太子ニコライが滋賀県大津町で警備にあたっていた警察官・津田三蔵に斬りつけられ負傷した暗殺未遂事件)の際、「犯人を死刑にすべし」という内外の圧力に屈せず、法治国家として当時の法が定めるとおりの無期徒刑の判決を下した児島惟謙のような気概もない。児島惟謙を基準にすると、韓国の司法は日本より100年以上遅れていますね。宮崎 韓国には、司法の独立は本当にないですね。中国も司法の独立というのは、あるように見えて、実は全部、共産党の命令のもとに判決が出ているわけですが。ユネスコに飛び火した中韓の歴史戦争への反撃宮崎 2015年10月、中国が申請していた「南京大虐殺事件」の資料がユネスコの記憶遺産に登録されました。いうまでもなく「南京大虐殺」なるものは、中国がでっちあげた日本軍による30万人もの中国人虐殺ですが、そのような捏造された歴史が認められてしまうということは、非常におかしな動きですね。 これはやはり日本の外務省の失態ではないかと思いますが、どうでしょうか。 韓国は、同じくでっちあげの「従軍慰安婦問題」をユネスコの記憶遺産に申請していましたが、こちらの登録は見送られました。しかし、この中国の登録成功で、韓国も再申請するのではないでしょうか。南京大虐殺記念館で資料を見る人たち =2015年9月、中国江蘇省南京市(共同)室谷 先述した2015年12月末の「慰安婦問題に関する日韓合意」の後、岸田外相が「韓国政府が慰安婦関連資料のユネスコへの登録申請を見送ることで合意した」と発言したところ、韓国政府は「そんなことは言っていない、事実無根だ」と即座に反論しました。やはり反日カードとして使うつもりなのでしょう。 南京大虐殺関連資料の登録については、韓国も陰に陽に中国を応援していましたし、登録が決定した後に、朴槿恵大統領が「客観的で民主的」などと評価していました。宮崎 しかし、「南京大虐殺」と韓国とはまったく関係がないのではないですか?室谷 いや、彼らにいわせると、関係があるのです。戦時中、済州島にアルトゥル飛行場という中国大陸爆撃用の日本軍基地があったので、「われわれも黙っているわけにはいかない」と言って、2015年12月13日、済州島の旧日本軍飛行場で追悼式典をやっています。宮崎 日本では「南京大虐殺」の資料登録に対抗するため、「新しい歴史教科書をつくる会」が中心となって10くらいの保守系団体を集め、「通州事件」をユネスコの記憶遺産に申請しようという動きが始まっています。 通州事件とは、1937年7月29日に、通州の日本人居留民や通州守備隊が中国人部隊に襲撃され、残虐な方法で200人以上が殺されたという、明らかな国際法違反の事件です。私は2回、現地を歩いて、写真入りのルポを書いたことがありますが、中国側はあらゆる証拠を消しています。 これに対して韓国では、「つくる会は通州事件を世界記憶遺産に登録して、歴史論争で中国を圧迫し、南京大虐殺の悪行を希薄化する材料にしようとしているとみられる」(聯合ニュース2015年12月12日付)などと批判していますが、通州事件の被害者は朝鮮人(当時は日本国籍)のほうが多かったのですよ。日本叩きのためには、そういうことも無視するんですね。 ただ日本側にしても、記憶遺産の登録審査は2年に一度で、申請できるのは一国2件までと決められており、すでに文部科学省内の日本ユネスコ国内委員会は2017年の登録候補2件を選定しているということで、通州事件をまともに申請する気持ちはないようです。 制度上は国内委員会を通さないで直接ユネスコに申請することも可能なため、「つくる会」はそうするようです。文部科学省の怠慢・ユネスコの欺瞞室谷 私は、どうも文部科学省のなかに韓国のスパイがいるのではないかという気がして仕方がないのですよ。 たとえば2015年7月5日、ドイツのボンで開かれていたユネスコ世界遺産委員会で「明治日本の産業革命遺産」が世界文化遺産に登録されることが決まりましたが、その会議の席上で韓国側から軍艦島などでの徴用工の表現をめぐって異議が出され、決定が紛糾するということがありました。 すでにその前段階で日韓双方の外務大臣が話し合い、お互いが協力することで決まっていたはずなのに、突然、韓国側が裏切ったということで、日本国内の嫌韓意識がさらに高まりましたが、実際の事前折衝は文部科学省がしていた。 しかし、ギリギリのところを詰めずに決定の場に臨んだのです。そんなことをしたら、韓国側にやられることは目に見えているわけです。少なくとも韓国ウオッチャーなら、誰もがそう考えます。 そして予想どおり、韓国がいちゃもんをつけてきた。それで「韓国が裏切った」などと言っていたわけですが、いちゃもんをつけられるお膳立てをしたのは文部科学省ですよ。宮崎 そういう利敵行為になるような、いわば「第五列」(自国内におけるスパイのこと)のような存在は、文科省にかぎらず日本には多いですね。 日本のマスコミにしても、第三者を装って、「日本政府がこう言っているが、中国、韓国政府はどう思うか」といったご注進報道を繰り返してきましたからね。 だいたい、教科書検定の中身について、われわれより先に韓国メディアのほうが知っているというのは、おかしな話ですよ。日本のメディアが国内での議論を深めるより、まず中国と韓国にご注進するほうを優先させているからでしょう。 まあ、こういうご仁は日本だけにかぎりませんが。ユネスコのイリナ・ボコバ事務局長にしても、2015年9月3日に北京で開催された抗日戦争勝利70周年記念式典の軍事パレードに出席して、中立性を疑われました。中国から相当の便宜を図ってもらっているのかもしれないですし、彼女は次期国連事務総長に立候補する意向を表明しているため、中国の票欲しさでご機嫌とりに行ったともいわれていますが、どちらにしても中立の立場とはとてもいえない。 いずれにしても、「南京大虐殺資料」の記憶遺産登録は、日本がユネスコ対策を怠っていたということが大きな問題です。すでに決まってしまったものを、いまさら取り消すのはなかなか難しい。 そうすると日本側の対応としては、通州事件などをどんどん申請していかなければならない。相手が政治目的の申請をするなら、こちらもやる。ユネスコの世界遺産はそういうものだということになれば、世界の見る目も変わるでしょう。私は前から提案しているのですが、ついでに日本にも「天安門事件記念館」をつくって、それを申請するという手もあります。室谷 だいたいユネスコの世界遺産認定なんて、地方の信用組合の表彰状みたいなものですよ。日本の名誉を犠牲にしてまでもらう必要はない。アメリカで変化する中国の反日活動宮崎 この「南京大虐殺の資料」が記憶遺産に登録されたことを機に、アメリカでの中国の反日活動が変化し始めています。 これまでアメリカにおける中国の「南京大虐殺」キャンペーンは、アイリス・チャンが書いた歴史捏造書『ザ・レイプ・オブ・南京』を中心に展開されていました。ところが、この方針が変わったようで、現在ではアイリス・チャンを持ち出さなくなったというのです。 これはチャンネル桜代表の水島総さんがアメリカで取材してきてわかったことで、サンフランシスコのチャイナタウンにある抗日戦争記念館が2015年8月15日に改装され、再オープンしたのですが、これまで展示してあったアイリス・チャン関連の資料はほとんど撤去されたというのです。 その代わりに、当時の国民党を支援したアメリカ合衆国義勇軍(フライング・タイガース)の展示などが前面に出され、記念館の名前も、漢字では「海外抗日戦争記念館」ですが、英語名は「パシフィック・ウォー・メモリアルホール」(太平洋戦争記念館)としているそうです。 つまり、アイリス・チャンの役目はもう終わったので縮小し、今度は、中国の抗日戦争はアメリカとともに戦ったことを強調する展示内容に変わったということなのです。 もちろんこれは、北京の指令に基づいているはずです。これから世界中で、中国の反日活動はこういう形に変わっていくのではないかと思います。 日米を離間させるための計略ですが、ある意味では、中国から離れつつあるアメリカを中国側に引き戻したいという意志の表れだと思います。南京大虐殺記念館を訪れる人たち =2015年10月5日、中国江蘇省南京市(共同)室谷 それは韓国のやり方を学んだのかもしれません。慰安婦問題を「全人類の共通問題」にすり替えて世界にアピールしていますから。 そういう論点のすり替えは、非常に長けていますからね。前述の靖國神社での爆破テロ事件のときも、韓国外交部は「訪日韓国人は靖國神社に近づくな」「右翼団体に気をつけろ」といった注意を出していました。 自分たちが不利な立場になったら、いつの間にか加害者が被害者になりすますという、お得意のやり方です。2015年3月に駐韓アメリカ大使が韓国人の暴漢によるテロにあった際も、朴槿恵大統領は「これは韓米同盟に対するテロだ」と言って、被害者の立場になってしまった。日本人には真似ができない才能です。宮崎 日本でも以前、北朝鮮に対する批判が高まると、登下校中の在日朝鮮人の民族衣装がナイフで切られるといった、いわゆる「チマチョゴリ切り裂き事件」がよく起こりましたね。 それで朝鮮総連やその尻馬に乗った朝日新聞などが、「他民族への憎悪をこういう形で表すのは卑劣だ」などと、いかにも日本人が犯人であるかのように論じた。しかし、これまで犯人が検挙されたことはほとんどないし、検挙されたとしても単なる学生同士のケンカが理由だったりと、排外主義などとはまったく関係がなかった。 いまでは、日本人の世論を転換させるために仕組まれた自作自演だったのではないかとさえ疑われています。中国・韓国で言論弾圧が激化する本当の理由室谷 すでに韓国の政府内では、朴槿恵大統領にものが言えないどころか、おもねるような輩ばかりが出世しています。 たとえば、2015年、韓国は42年ぶりともいわれる深刻な干ばつ被害に見舞われました。そこで6月に、朴槿惠大統領は地方に行って、水田に消防車で水を撒まくというパフォーマンスをしました。 消防車のホースはすごい水圧ですから、朴大統領は一人では持ちきれず、田んぼの土がV字型にえぐれてしまい、消防士が慌てて横から支えたということがありました。まあ、そこまではいいのです。 収穫の時期になったとき、韓国の農林大臣が米の試食会の席で、「大統領様が水を撒かれた田んぼは大変に育ちがいい」と、わざわざ言ったのです。まるで北朝鮮そっくりですが、韓国の違うところは、民間のテレビ局が実際に見にいったわけです。 そうしたら、たしかに朴大統領が水を撒いたところの稲は立派に育っていたのですが、その周辺の水田はひどく荒廃していた。つまり、農林大臣は一言ゴマをすりたいがために、朴大統領が水をやったところに毎度、公務員を派遣して水を撒かせたのだと思います。北では一昔前まで、何かにつけて「首領様の現地指導により……」でしたからね。宮崎 本当に北朝鮮そっくりですね。中国でも、習近平主席による言論弾圧がしだいにエスカレートしてきています。人権派弁護士の逮捕・拘束は2015年だけで数百人におよび、中国政府の新疆ウイグル政策を批判した人権派弁護士の浦志強(ほしきよう)は12月22日に、懲役3年、執行猶予3年の実刑判決を受けています。 また、12月25日には、同様に中国のウイグル政策を批判したフランス誌の女性記者が国外退去処分となりました。 これは別の章であらためて解説しますが、2015年12月27日には「反テロ法」が成立し、テロ事件に関する報道の制限や、通信事業者にデータ解析に必要な暗号化キーの提供を義務づけました。 さらに12月31日になって、人民解放軍のなかに3つの部隊が新設されました。そのうちの一つが「戦略支援部隊」という意味不明なフォースでしたが、これがサイバー専門部隊なのです。 こうした言論弾圧が強化される背景には、権力闘争なども絡んでいると思いますが、一方で国民の不満が確実に高まっていて、しかも、以前であれば反日によってそれらの不満を外部に向かわせることができたのですが、それがもはや効かなくなっている、あるいは、それではすまないほど大きな鬱憤が噴出し始めているということではないかと思います。室谷 韓国でも、先に話したとおり、「大統領の名誉」を軸に据えて、ネット監視や、ビラの取り締まりといろいろやっています。民主主義の前に法治主義がいまだに確立されていないのだから、言論の自由が認められないのも当然かもしれませんね。しかし、韓国ではデモはできる。教科書国定化反対、労働問題……掲げるテーマはあふれすぎていますからね。 みやざき・まさひろ 1946年、石川県金沢生まれ。評論家。早稲田大学中退。「日本学生新聞」編集長、雑誌『浪曼』企画室長、貿易会社経営などを経て、1982年『もうひとつの資源戦争』(講談社)で論壇デビュー。中国ウォッチャーとして知られ、全省にわたり独自の取材活動を続けている。著書に『世界から嫌われる中国と韓国 感謝される日本』(徳間書店)、『日本と世界を動かす悪の孫子』(ビジネス社)など多数。むろたに・かつみ 1949年、東京都生まれ。評論家。慶応義塾大学法学部を卒業後、時事通信社入社。政治部記者、ソウル特派員、宇都宮支局長、「時事解説」編集長などを歴任。2009年に定年退社し、評論活動に入る。著書に『呆韓論』『ディス・イズ・コリア』(産経新聞出版)、『悪韓論』『日韓がタブーにする半島の歴史』(新潮新書)、『韓国人がタブーにする韓国経済の真実』(共著、PHP)など。

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    まもなく起こる非常事態! 追い詰められた「裸の王様」習近平

    宮崎正弘(評論家)《徳間書店『突然死の危機に陥る中国と韓国』より》 中国の動きで2016年早々から気になるのは、株価暴落の陰に隠れているが、軍事情勢の剣呑さではないだろうか。2015年の師走、大晦日に中国人民解放軍が、新しく「陸軍指導機構」「ロケット部隊(火箭隊)」「戦略支援部隊(サイバー部隊)」という3つの部隊を新設したことは本文でも述べた。  発会式には習近平がじきじきに出席し、それぞれの責任者に部隊旗を自ら下げ渡す儀式まで執り行った。つまり、この新設3部門に象徴される人事に、習近平の軍権掌握への並々ならぬ野心が隠されているのである。陸軍指導機構のトップには、成都軍区司令員の李作成が任命されたが、習近平が陸軍大将の辞令を交付した過去がある。ロケット部隊トップには第二砲兵から横滑りした魏鳳和(ぎほうわ)。こちらも大将昇格は習が任命した。そして、サイバー部隊長の高津(軍事科学院長)は、習が近く大将に任命する。  これらは、軍事改革のプログラムに最初から謳われていた部隊だから少しも驚きではないが、7つの軍区を5つの「戦区」へ改変するという既定の計画については、具体的な発表がなかった。代わりに、政治工作部など15の部門が新設された。同時に、中国国防部は、海軍が中国初の国産空母を建造中であることを公式に認めた。この新空母は、現有するソ連製を改良した「遼寧」に酷似した旧式で、スキージャンプ方式、ディーゼル駆動で、速力は不明。排水量は5万トンという。中国人民解放軍の統合作戦指揮センターを視察する習近平国家主席=2016年4月20日、北京(新華社=共同) だが、はたして、習近平の野心でもある軍事改革はうまくいくのか? 「愛国主義による中華民族の復興」などと虚ろに呼びかけても、経済的苦境に喘ぐ国民はそっぽを向いており、習近平は「裸の王様」ではないのかと訝しんでいるのである。軍はすでに徐才厚、郭伯雄ら江沢民人脈の失脚により、部隊によっては不満が爆発寸前となっており、これ以上の粛清はごめんこうむりたいというムードにある。 険悪な情勢のなか、じつは新3部隊の発足発表の前に、「習近平の軍師」といわれた劉源が辞職するというニュースが流れ、こちらのほうがチャイナウォッチャーを慌てさせた。劉源は劉少奇の長男であり、解放軍の腐敗撲滅を推進した中心人物だ。汚職に浸り、各地に豪邸を建てて美女を十数人も愛人にするなど豪華な生活を送っていた腐敗軍人の谷 俊山(こくしゅんざん)を最初に血祭りにあげ、ついで江沢民系の軍トップだった徐才厚と郭伯雄を失脚させる原動力となった人物だからだ。  劉源は、軍では総後勤部政治委員だった。上海系軍人から恨まれ、宿泊したホテルが放火され、自動車事故(運転手は死亡)などの暗殺未遂に数回も遭遇した。習近平に対しては適宜適切な数々の助言をなし、習がもっとも頼りにした兄貴分だった。その劉源が潔く、次のポストも見返り条件もなく退役するというのだから、中南海の共産党上層部が慌てたのも無理はない。いや劉源の退任を防げなかった習近平の失態ともいえ、人民解放軍は次の党大会までに玉突き人事が行われるだろう。  2017年の第19回党大会で、現在、副主席の范長龍が引退、その後釜として太子党の張又峡が有力視されており、総参謀部長の房峰輝の勇退が確実視されていることはすでに述べた。 また、空軍司令員の馬暁天と海軍司令員の呉勝利も勇退を余儀なくされ、海軍トップには孫建国、空軍は乙暁光という大将が就任するだろうことも、本文で述べたとおりだ。孫は「ミスター潜水艦」の異名をとるが、訪米団に随行し、あるいはアメリカ軍との交流でも名前を売った。2015年5月のシャングリラ会合では南シナ海問題で強硬路線を堅持し、タカ派で鳴らした。いずれにしても軍の上層部は大異動が予測される。  こうした人事異動によって、軍改革はより迅速に進むのか、はたまた挫折するのか、あるいは劉源の退任は上海派からあがっていた不満のガス抜きなのか、さまざまな憶測が乱れ飛んだ。軍政改革という名の政敵失脚戦術 習近平が2015年9月3日の軍事パレードで宣言したように、「軍の近代化」「人民解放軍30万人削減」という大目標は、従来の7軍区を4つないし5つの戦区に改変し、さらに総政治部、総参謀部、総装備部、総後勤部の4総部体制を撤廃し、西側の軍にあるように統合幕僚本部を設置して、全軍一致、命令系統の統一、地方軍閥の希釈化を図る壮大な軍再編をめざすものだったが、この人事が成功すれば、これがやりやすくなるかもしれない。  折しも軍内で反日派の頭目とされる劉亜洲(国防大学政治委員。空軍大将)が論文を書いて「この軍改革は『革命』であり、譚嗣同の精神を継承してやり遂げなければならない」と主張していた。彼のいう「譚嗣同の精神」とは、清末の洋務派(改革派)が流血なく改革をやり遂げようとした方法論を指す。また、彼の論文は「この軍改革をやり遂げなければ軍は死ぬ」としている点に特徴がある(「軍改之一場革命」)。劉亜洲もまた太子党であり、岳父は李先念(元国家主席)だ。軍事パレードで行進する中国人民解放軍兵士=2015年9月、北京(共同) こう見ると、習近平がいまやっている「軍改革」なるものは、信頼できる部下を軍に置いて重宝し、それで軍権を掌握しようとする中国の伝統的手法に則っていることがわかる。 「打老虎 下餃子」(大ボスを撃ち、雑魚も退治せよ)こそ、習近平が政敵を失脚させるための戦術モデルであり、習近平は次の標的を絞り込み失脚させる前に、必ず標的の側近(副官クラス)を拘束し、落馬させてきた。 たとえば2015年11月6日、中国共産党中央紀律検査委員会は、寧夏回族自治区の副主席だった白雲山を「重大な規律違反があった」として取り調べ中であると発表した。 翌週には、北京市党委員会副書記の呂錫 文が「重大な規律違反」という名目で拘束され、ついに汚職追放運動の手が首都圏におよんだかと関係者に大きな衝撃を与えた。彼女は北京のナンバー2である。中国語新聞は、これを「北京官界地震」と伝えた。同日、上海副市長の艾宝俊(がいほうしゅん) が同じ理由で落馬した。  北京市書記は郭金龍、上海市書記は韓正で、つまり、団派と上海派である。習近平と王岐山のねらいは、もはや言うまでもない。最終的に北京と上海のトップをねらい撃ちにしているということであり、「重大な規律違反」などととってつけたような理由で「副」クラスを失脚させたのは、権力闘争の宣伝道具でしかない。  周到に慎重に、団派と上海派を締め上げ、中国を代表する両都市のトップも、習近平気に入りの人物と交替させるのが目的である。中国の政治通は「このやり方は朱元璋に似ている」と分析する。明の太祖である朱元璋は、いうまでもないが白蓮教徒の乱を利用して貧乏僧侶から皇帝に成り上がった。そして、権力を掌握するや、忠臣、側近を次々と粛清した。  2015年8月12日に起きた天津大爆発にしても、雑魚を捕まえてはみたが、天津市前書記だった張高麗はそのまま、天津市長兼書記代理の黄興国への責任追及は何もなされないうえ、爆発原因も情報公開がない。張高麗は現職の政治局常務委員、黄興国は習近平の子飼いだからである。  中国政治にとって権力のトップは政治局常務委員会だが、地方政府は土地使用の許認可権をもち、さらに上限はあるにせよ、省をまたがない企業の進出認可、経営監督、工場の設置許可なども地方政府がもつ。経済繁栄を象徴する富は、北京、上海、天津、広州に集中しており、1人あたりのGDPランクでいえば、広州、上海、天津、北京の順となる。これらの党委員会トップは、これまでは派閥のバランスによって配分されてきた。  広東省の書記は、団派のライジングスター、胡春華である。習近平は掌握する宣伝機関などを使って、さかんに胡春華のスキャンダルを追求させ、いずれ失脚をねらっている。 北京と上海は伝統的に中国を代表する都市であり、この両市を政敵やライバルが牛耳ることに習近平が焦りを感じていることは明白だ。それゆえに側近たちを拘束し、じわりじわりと政敵を葬ろうとしているわけである。  習近平の黄金の片腕として、反腐敗キャンペーンの先頭に立つのが王岐山である。政治局常務委員でありながら、つねに王岐山は姿を隠し、ときに神出鬼没。次の標的は金融界の大物だろうと推測されていたが、なんと拘束、取り調べの標的は、証券取引の監査を行う責任者である姚剛だった。  姚剛は証券監督管理委員会副主席という立場を悪用して、上場審査の権利を巧みに利用し、とりわけA株(国内投資家専用の株式市場銘柄)のIPO(新規株式公開)を操作し、巨額の賄賂を受け取っていた。北方集団(北京大学関連のベンチャー企業)の怪しげなインサイダー取引の黒幕は、同社CEO(最高経営責任者)、李友という男だったが、彼らとつるんで株価操作や、怪しげな会社の上場認可などを行い、以前から黒い噂が絶えなかった。  手口はIPO許可のインサイダー情報を太子党や側近に教え、あらかじめ株式を大量に購入し、売り抜けるというものだ。高級幹部の子弟や親戚名義で大量の株式を事前に買い集め、数千億元の不当な利益を得ていたと見られており、部下のなかには公文書偽造、印鑑偽造などに手を染めた豪傑もいた(「東方新報」2015年11月26日付)。次いで、証券、保険、銀行の3つを監査する「三会」の主任だった肖鋼がスケープゴートとなって更迭され、後任には黄奇帆が選ばれた。  王岐山は全国を潜行行脚し、地方当局が手をつけられない市政府、県役場などに乗り込み、マフィアがらみの党幹部らを逮捕してきたが、なかには白雲山のような大物が含まれていた。第18回党大会以後だけでも摘発は31の省にまたがり、59名の幹部が拘束され、失脚した。山西省7名、内蒙古4、江西省4、黒竜江省3、四川省3、雲南省3、河北省3、江蘇省3、広東省2、広西、湖南、海南、福建省、湖北が各2など、全土的な汚職の広がりには唖然とするばかりである。犠牲者数百人の大事故も党幹部の汚職が原因 人災も党幹部の汚職が原因である。2015年12月20日午前11時42分、夏の天津大爆発に続き、今度は広東省深圳郊外の工業団地(光明地区紅幼村柳渓工業団地)で大規模な地滑りが起きた。ガス管が爆発、またたく間に付近は泥に埋まり、 33棟の高層ビルが倒壊し、100名近くが行方不明、犠牲者は数百名に達するとされた。  事故現場は、泥沼、湿地帯にパイルを打ち込んだだけのずさんな地盤改良が行われ、その上に高層ビルを建てていた。被災面積は10万平方キロメートルにもおよび、東京ドーム2個分が泥に沈没。現地紙は、これを「山体滑波」と表現した。日本語なら「山津波」だ。  深圳は香港に隣接する新興都市で、人口は1000万人を超える。新幹線が乗り入れ、地下鉄も走る。街は高層ビル、急造したマンション、工場がひしめく大都会。印象としては、急遽、バラックを継ぎ足した映画のロケ現場のようで、全国から無数のギャングも入り込み、治安は乱れている。日本人相手のぼったくりバーも多く、土地の速成、でたらめな工事による造成団地の土地は柔らかく、液状化現象や道路陥没などが頻繁に報告されてきた。  日本企業も数百社が進出しており、居住者も多い。香港よりマンションが安いので、ここにマンションを買って香港に通うビジネスマンだけで30万人もいる。日本人の場合、単身赴任で、家族は香港に住み、子どもを日本人学校に通わせるケースも目立つ。事故現場には、西気東輸計画のガス・パイプラインが通っている。これは中国石油天然気(ペトロチャイナ)が推進した国家プロジェクトだ。しかも、このパイプラインは途中の新疆ウイグル自治区などで過去に何回も爆発事故を起こしているいわくつきである。壮大な汚職も取りざたされてきた。  ネットの書き込みなどでは、パイプラインの爆発が大崩落を招いたのではないかという疑問が持ち上がっていたが、中国石油天然気は爆発原因説を否定し、「土砂崩れが爆発を引き起こした」とした。爆発した西気東輸のガス・パイプラインは国家発展改革委員会元副主任、国家エネルギー局元局長の劉鉄男が責任者で、巨大な利権を漁り、24億元をちょろまかしたが、反腐敗キャンペーンによって摘発され、2014年12月の一審で無期懲役の判決が出ている。 さらに中国では、地元の党幹部とマフィアがぐるになっての犯罪が多く、地下経済には武器のブラックマーケットがある。ネット時代、素人の起業家が銃の密造に励み、しかもそれをネットで売る。アメリカの銃器通信販売は合法だが、中国では非合法である。ISがネットを駆使して世界各地から戦闘員を集めたように、中国ではSNSを活用したブラックビジネスが登場していたのだ。  中国では黒社会(マフィア)ばかりか、素人にも武器の所持が拡大している。公式の武器貿易はNORINCO(中国北方工業公司)など、国有企業が取り仕切っているうえ、中国の法律では軍と警察以外、個人が武器を所持することは許されていない。近年は猟銃さえ規制が厳しくなった。ましてや武器の密造など、認められているはずがない。NORINCOの輸出は1億6000万ドルとされる。  ところが、国内にある武器市場は地下経済で猖獗を極めるようになり、ネットで製造方法を取得し、部品をばらばらに仕入れて、ネットで通信販売というニュービジネスに治安当局が振り回される事態となった。ネットでの助言者は「QQ集団」と呼ばれる。  むろん、ネットでは暗号が使われ、「狗友」(密売仲間)、「狗食」(銃弾)といった符丁で頻繁に通信が行われ、お互いがハンドルネームを名乗るため、実態は不明。密造工場の大規模なものは貴州省の小都市で見つかり、部品工場は広東省が多いという。当局が最近手入れした安徽省のグループは、700件以上の取引を成立させていたという(米ジェイムズ財団「チャイナ・ブリーフ」2015年12月21日号)。  これまで武器の地下市場はマフィアが取り仕切り、軍の横流し武器などを取引してきた。怪しげなマッサージパーラーなどの売春組織、ナイトクラブのボディガードたち、石炭の経営者などが顧客で、地下経済の主力である麻薬、博打、売春などの「防衛」のために、武器は欠かせない。  ところが、ネットで取引される武器の顧客はといえば、銃マニアが主力で、密造も素人がネットで製造知識を仕入れ、部品を特注し、しかも性能は軍が使用する武器に遜色がない。まさに異次元の空間から出現したのである。  ことほど左様に、いまの中国はメチャクチャな状況であり、本書で述べてきたように、中国経済は逼迫し、「公式発表」ですらGDP成長は6・8%に落ち込んでいる。表面に現れない地下の動きや権力の舞台裏から推測しても、近い将来、未曾有の混乱に陥ることは確実であろう。みやざき・まさひろ 1946年、石川県金沢生まれ。評論家。早稲田大学中退。「日本学生新聞」編集長、雑誌『浪曼』企画室長、貿易会社経営などを経て、1982年『もうひとつの資源戦争』(講談社)で論壇デビュー。中国ウォッチャーとして知られ、全省にわたり独自の取材活動を続けている。著書に『世界から嫌われる中国と韓国 感謝される日本』(徳間書店)、『日本と世界を動かす悪の孫子』(ビジネス社)など多数。   

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    韓国の「東北PRイベント」はなぜ中止に追い込まれたのか

    (THE PAGEより転載) 先月、韓国ソウルで開催されることとなっていた「東北PRイベント」が土壇場で中止された。前日に日本大使公邸で両国政府関係者を招いたレセプションを開催していたにも関わらず、直前の中止決定となった。東日本大震災後の復興状況をPRし、風評被害を払拭しようと外務省が主催したこのイベント。なぜ中止に追い込まれたのだろうか。地元自治体が中止を要請 中止された外務省主催のイベントは、「Explore REAL JAPAN(ソウル)」。東日本大震災の風評被害払拭を目的として、2月20日と21日に韓国ソウルの往十里(ワンシムニ)駅で開催される予定だった。イベントでは、被災3県を訪れた韓国の人気ブロガーが、訪問先の食や観光を紹介するコーナーや、福島県の民芸品「おきあがりこぼし」の絵付けを体験できるコーナーなどがあり、ソウル市民に東北の魅力を伝えることを目的としていた。同様のイベントは、2月28日と29日に台湾の台北でも開催された。イベントの中止を知らせる「Explore REAL JAPAN(ソウル)」のサイト 19日には、駐韓日本大使公邸で、レセプションが開催された。レセプションには、日本側からは、若松謙維復興副大臣、浜地雅一外務政務官、別所浩郎駐韓大使などの政府関係者や、イベントに参加する青森県・宮城県・福島県・鹿児島県の自治体関係者などが出席した。韓国側からは、韓国外務省の林聖男(イムソンナム)第1次官などが出席し、日本酒や東北の郷土料理がふるまわれたという。 事態が急転したのは、レセプションが行われていた19日。イベント会場があるソウル市城東区当局から、日本側に「本件イベントを中止すべきとの通報があった」という。イベントを主催した外務省地方連携推進室の担当者によると、外務省は「(城東区による中止の通報により)イベントを安全に確実に実施できる見通しが立たなくなった」として、中止を決めたという。 同推進室によれば、韓国中央政府はこのイベント開催を重視しており、城東区当局に対してイベント期日の直前まで、中止通報を撤回するように働きかけていたという。反対声明を出した韓国の市民団体に理由を聞いた反対声明を出した韓国の市民団体に理由を聞いた しかし、城東区当局は中止通報を撤回せず、イベント会場にもさまざまな団体の人々が抗議に集まってきており、直前でのイベント中止に至った。イベント中止について、同推進室は「極めて残念だ」と悔しさをにじませた。  韓国中央政府も開催を働きかけていたのに、ソウル市城東区当局が中止通報を撤回しなかったのはなぜなのだろう。今回の東北PRイベントに対して、開催反対の声明を出した市民団体「環境運動連合」(KFEM)に、イベント反対の理由を取材した。 KFEMのエナジーコーディネーターの男性は、取材に対し、「今回のイベントは福島県産の食品の輸入制限を解除するために行うものであり、放射能で汚染された食品を輸入する動きは受け入れられない」と反対の理由を述べた。「我々は、福島県産の食品が輸入される可能性について、怒りと懸念を表明するため、今回の反対運動を行った」という。 イベント開催反対運動に対して、城東区当局は理解を示し中止に至ったとKFEMの担当者は話す。「中央政府は、政治的・外交的観点からものごとを進めようとするが、地元自治体は市民の声により敏感だ。特に韓国は4月に総選挙を控えているので、今回我々の声を聞き入れたのだろう」と、運動の成果を強調した。日本産水産物の輸入制限が続く韓国と台湾 日本政府が、韓国で東日本大震災からの復興をPRするイベントを開いた背景には、韓国が行っている日本産水産物の輸入制限がある。韓国は2013年9月から、福島、茨城、群馬、宮城、岩手、栃木、千葉、青森の8県産の全ての水産物の輸入を禁止している。8県以外の水産物であっても、韓国側の調査でセシウムが微量でも検出された場合は、追加検査を要求。この検査が数ヶ月かかるため、生ものである水産物の輸出は、実質的に困難になった。 政府は、韓国の水産物輸入制限が「科学的根拠に基づかない」として解除を求めてきた。日韓の専門家が2014年12月に福島、青森、北海道産の水産物の放射性物質を測定した結果、不検出か、韓国の定める厳しい基準でさえ大幅に下回る結果が出ている。 政府は、韓国が輸入制限を解除する見通しが立たないため、昨年8月にWTO(世界貿易機関)に対して、韓国を提訴した。外務省北東アジア課によると、提訴手続きは、現在、パネリスト(裁判官に相当)が選ばれた状態まで進んでいる。 台湾も、日本産食品に対して輸入規制を行っており、今回、外務省が韓国と台湾でイベントを企画したのは、日本産食品の安全性を市民にPRする狙いがあったといえる。 日本産食品の輸入規制解除には、現地市民の理解が不可欠だ。イベントを主催した外務省地方連携推進室は、来年度も引き続きさまざまな活動を通じて「風評被害の払拭と、正確な情報発信に努めたい」と述べた。(中野宏一/THE EAST TIMES)

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    韓国で核武装論高まる 保有すれば一流国になれるとの発想

    ったが、国際社会から経済制裁を受けて国家財政は窮地に陥っている。そんな隣国を目の当たりにしながらも、韓国で核武装論が盛り上がっている。それはなぜか。韓国の国民性に精通するジャーナリストの室谷克実氏がこう話す。 「韓国人の“核を持ちたい!”との願望は今に始まった話でなく、北の動向とも関係ありません。韓国で最初に核武装論が持ちあがったのは1970年代であり、北は核保有どころか、その兆候もなかった時代です。根底にあるのは韓国が抱く大国願望だった。つまり、核を保有する国こそ一流国である、という発想です」 無論、核を持てば世界から一目置かれるという思想は幻想にすぎない(北朝鮮がいい例だ)。それでも「核武装したい」との声が韓国内で大きなうねりとなっているのは、韓国人の持つコンプレックスが刺激されたからだという。「今回、韓国は北の核実験の兆候情報を事前にアメリカから提供してもらえませんでした。さらに朴槿恵・大統領と中国の習近平・国家主席の電話会談も実現していない(1月12日現在)。このように大国からは冷たい扱いを受ける一方で、自分たちより“格下”と見なしていた北朝鮮が当初は水爆実験を成功させたと発表した。その屈辱感が核保有論を一気に燃え上がらせたのです」(同前) 1月7日、与党セヌリ党の最高会議で金正薫・政策委員長が口にした次の言葉に韓国世論の本音が見える。「中国、ロシア、そして事実上の核武装国である北朝鮮、さらにウラン濃縮を行なっている日本もいつでも核武装ができる。(北東アジアで)我々だけが核で孤立している」 周りは皆持っているのに、どうして自分だけ――そんな悔しさを露わにしているのだ。しかし、そんな感情的な核武装論は、むしろ東アジア情勢にさらなる危機をもたらす可能性がある。ジャーナリストの惠谷治氏が指摘する。「仮に韓国の核武装が完成すれば、北朝鮮と韓国は戦争に近づく。現在、核兵器は実際に兵器として使うのではなく戦争に対する抑止としても、その威力を発揮している。それは朝鮮半島でも同じで、これまで北は韓国との軍事力の差を核の脅威で埋めることで、危ういながらも均衡を保ってきた。 しかし、互いに核を持つことで、北はアドバンテージを失い、韓国との軍事バランスが一気に崩れる。そうなった時、核の抑止力を失った北が暴発する可能性がある」関連記事■ 北朝鮮核ミサイルに対抗するには日韓核武装も選択肢と専門家■ 北朝鮮の核実験で韓国与党幹部が核武装発言 世論も同調■ 北朝鮮と韓国との全面戦争はあるか? 専門家はないと説明■ 北の核実験に中国が激怒 日本の核武装につながるからと識者■ 核武装論高まる韓国 すでに核兵器製造可能な技術力保有

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    反日物語の嘘を暴け

    日韓首脳会談は、結局慰安婦問題で終始した。なおも両国は交わりそうもない。面倒くさいこと、このうえない。事実と違うことを世界に広げられて、納得できるはずもない。果たして事実はどこにあるのか。アメリカのジャーナリストが立ち上がった。

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    慰安婦の真実を指摘され自国の大学教授を逆ギレして起訴する韓国

    木走正水※木走日記より転載19日付けNHKニュース記事から。韓国 従軍慰安婦の書籍執筆の教授を在宅起訴11月19日 15時21分いわゆる従軍慰安婦の問題を巡り、「20万人の少女が日本軍に強制連行されたという韓国内の一般的な認識は実態と異なる」と指摘した書籍を執筆した韓国の大学教授を、ソウルの検察が名誉毀損の罪で在宅起訴しました。教授は「名誉を毀損する意図はなく、不当な起訴だ」としています。この書籍はおととし韓国で出版された「帝国の慰安婦」で、執筆したセジョン大学のパク・ユハ教授は、この中で、朝鮮人慰安婦の被害を生んだのは日本の植民地支配に原因があると強調しています。そのうえで、女性たちが慰安婦になった経緯はさまざまで、多くの場合、朝鮮人の中間業者が女性を慰安所に連れて行ったとして、「20万人の少女が日本軍に強制連行された」という韓国内での一般的な認識は実態と異なると指摘しました。これに対し、元慰安婦の女性たち9人は、「虚偽の内容を広めて歴史認識をわい曲し、名誉が毀損された」として、去年6月にパク教授を告訴していました。そして、ソウル東部地方検察庁は19日までに、「秩序の維持などのためには言論の自由や学問の自由は制限される」としたうえで、書籍の内容に関して「元慰安婦たちの名誉を侵害し、学問の自由を逸脱した」という判断を示し、パク教授を在宅起訴しました。一方、パク教授は「客観的事実に基づいて執筆したもので、名誉を毀損する意図はない。本の内容に対する間違った理解でなされた告訴を、検察はきちんと検証もせずに起訴しており、不当だ」と述べ、争っていく姿勢を示しました。http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151119/k10010312371000.html うむ、ついにソウルの検察がセジョン大学の朴裕河(パク・ユハ)教授を「名誉毀損」の罪で在宅起訴しました。 「20万人の少女が日本軍に強制連行されたという韓国内の一般的な認識は実態と異なる」と指摘した書籍「帝国の慰安婦」を、「秩序の維持などのためには言論の自由や学問の自由は制限される」としたうえで、書籍の内容に関して「元慰安婦たちの名誉を侵害し、学問の自由を逸脱した」として起訴したものです。 いや、呆れました。 「秩序の維持などのためには言論の自由や学問の自由は制限される」って、「20万人の少女が日本軍に強制連行されたという韓国内の一般的な認識は実態と異なる」という学術的研究のもとで下した学者の冷静な指摘のどこが「秩序の維持」がされなくなるというのか、そもそも「秩序の維持」ってなんの「秩序」なのか。世宗大教授、朴裕河氏。 だいたいこの本のどこが「元慰安婦たちの名誉を侵害し、学問の自由を逸脱した」とされるのか。 朴裕河(パク・ユハ)教授の「帝国の慰安婦」ですが、当ブログも日本語版ですが読みました。 読後、この人の筆致がとても学者らしくて好きになりました。 元慰安婦たちや関係者の証言を学者らしくたいへん丹念に拾い、日本軍関係者が朝鮮半島で韓国人の少女を誘拐・強制連行して性奴隷にした、といった韓国に広まっている通俗的な慰安婦像を完全に否定していきます。 多くは朝鮮人の民間業者が詐欺的な手法を用いて慰安婦を集めていた実態や、一定の賃金が支払われていたことなど、韓国の挺身協などが触れたがらない都合の悪い発言も誠実に記しています。 20万人以上という数字にも懐疑的です。 極めて冷静な筆致で好感が持てます。 朴教授は同書で慰安婦問題について、帝国主義下での女性の人権侵害を指摘する一方、慰安婦の女性らは日本軍と実は「同志的関係」にもあったと記述しています。 当ブログとしてはこの書籍の内容の全てに同意するわけではありませんが、このような事実に誠実に向き合っている内容の慰安婦本を韓国人である教授が多くの批判や圧力に屈することなく出版したことを、その学者としての知的誠実さに深く敬意を表すものであります。 ・・・ この裁判、パク教授は「客観的事実に基づいて執筆したもので、名誉を毀損する意図はない。本の内容に対する間違った理解でなされた告訴を、検察はきちんと検証もせずに起訴しており、不当だ」と述べ、意気軒高、最後まで争っていく姿勢を示しています。 裁判の成り行きを注目していきましょう。 真実を指摘され自国の大学教授を逆ギレして起訴する韓国なのであります。 笑止。(木走まさみず)

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    3億円の“示談金”で慰安婦問題解決か 韓国側の苦しい事情

    “示談金”ダンピングに応じる構えを示してきたのだ。日韓首脳会談 会談前に握手する安倍晋三首相(左)と韓国の朴槿恵大統領=11月2日、ソウルの青瓦台(代表撮影・共同) 会談後の安倍首相は「早期の妥結を目指して交渉を加速させることで一致した」としかいっていないが、翌日の日本の新聞各紙は〈政府、支援策模索も〉(毎日)、〈慰安婦、財政支援拡大へ 政府検討〉(日経)などと見出しを掲げ、いずれも「アジア女性基金」の復活構想を報じている。〈日本側にはかねて【1】首相による謝罪【2】駐韓日本大使が元慰安婦と面会【3】日本の政府予算を使った元慰安婦支援──という解決策への考え方がある。このうち政府予算を使った支援は2007年に解散したアジア女性基金のフォローアップ事業の拡充が軸になる〉(日経) アジア女性基金は慰安婦問題を謝罪した村山富市首相の談話をきっかけに政府出資で設立(1995年)され、民間から募った募金をもとに韓国、フィリピン、台湾などアジア諸国の元慰安婦に1人200万円の「償い金」を届けた。 基金の解散後は外務省が政府予算でNPOを通じて元慰安婦に医薬品や現金を届けるフォローアップ事業を行なっており、その事業を拡大し、日本政府による元慰安婦への人道支援、すなわち実質的な補償を両国の合意で再開させようという構想である。 日経は〈浮上しているのは予算規模を1億円台に乗せ、支援メニューを拡大する案だ。政府高官は2日「検討する」と認めた〉と書き、韓国側では〈3億円以上〉(東亜日報)という報道も出ている(菅義偉官房長官は会見で「そうした事実は全くない」と否定)。 慰安婦問題について「補償は日韓基本条約で解決済み」と主張してきた安倍首相にすれば、一見、譲歩のように見える。 だが、政府の人道支援は国家賠償ではない。現在、存命している韓国政府登録の元慰安婦は47人。人道支援の予算が日経のいう1億円なら1人約200万円、韓国側が挙げる3億円としてもたかだか1人約600万円になる計算だ。 安倍首相にすれば“あれほど騒いでいたのに、ホントにたった3億円でいいの?”と眉に唾をつけたいのではないか。韓国に詳しいジャーナリストの室谷克実氏がいう。「朴槿恵政権は中国傾斜が行き過ぎてアメリカの政府関係者らからも苦言を呈されるレベルまで来たため、慌ててアメリカにすり寄り、アメリカ陣営の日本とも外交交渉をせざるを得なくなった。基金の話は、それでもなんとか慰安婦カードを使いたい韓国側が流しているものではないでしょうか」 慰安婦問題で安倍政権の対応を批判してきた韓国の有力紙・東亜日報の社説(11月3日付)が、韓国側の苦しい事情をはっきり書いている。〈韓日関係が凍り付き経済にまで寒波が襲った。日本の韓国への直接投資と韓国の対日輸出入、日本人観光客などすべてが急減した。(中略)韓国は慰安婦問題など追及すべきところはすべきだが、過去にのみ縛られると、他の国益を害するという点も直視しなければならない〉 そんな韓国の事情を見すかすように、官邸の外交筋は、「安倍総理はささやかな手土産で窮地に陥っていた朴大統領を救ってあげたということだ」といってのけた。韓国紙 外相が国連総会で安倍首相の足引っ張るかで沸き立つ韓国が小中高生向けに作成した慰安婦教材 史実歪曲した内容従軍慰安婦問題について韓国要人「一言謝れば韓国人は納得」韓国の反日スレ「日本に爆弾テロする?」「お前通報シマス」韓国 慰安婦を人権問題として世界に注目させ日本の譲歩狙う

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    「性奴隷」というプロパガンダ 慰安婦問題をめぐる法人いじめ

    の団体が同シンポジウムに対する抗議デモを計画して、ニューヨーク市警にデモを申請し、ニューヨーク在住の韓国人団体に働きかけた。さらに、認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ(伊藤和子事務局長)、アクティブ・ミュージアム 女たちの戦争と平和資料館(渡辺美奈事務局長)、ピースボートなどが共催した「慰安婦問題の真実と正義~第二次大戦時の日本軍性奴隷」をテーマとするイベント会場で、「日本の歴史を歪曲する右翼グループがやってくる!緊急アクション」と題するチラシを配布し、抗議デモへの協力を要請した。そこには「脱植民地化を目指す日米フェミニストネットワーク」の名も書かれ、私は「日本社会を歴史教科書改革に巻き込み、日本の歴史教科書の『慰安婦』記述を改正する働きかけに成功した主流の保守的教育学者」として紹介されていた。 その抗議デモ呼びかけが功を奏し、ニューヨーク市警より「数百名の抗議デモが予定されている」との警告を受けた日系人会館のオーナーが器物破壊や物理的衝突を恐れ、他のテナントに配慮して、キャンセルの打診を主催者側にした結果、やむなく応じたという。デモの目撃者情報によれば、実際にデモ行進したのは前述した二人の事務局長を含む十数人で、デモと同時に警察が来て、二名、続けて四名の合計六名を拘束。 『朝鮮日報』によれば、「このような日本の極右勢力の行動は、日本に歴史問題の反省を促す在米日本人や日系人を通して韓国系団体に伝えられた」という。デモ隊の掲げていたスローガンは「日本のファシストを許すな」「人種差別をニューヨークに持ち込むな」「日本の軍国主義復活を中断せよ」「慰安婦女性たちは強制的に連行された性奴隷だった」「日本の歴史修正主義者らに反対する」などであった。 一方、インターネットで公開されている前述の伊藤和子氏の日記には、次のように書かれている。 「この日は、夜に歴史修正主義者グループが会合をNY日系人会で開催するという話があり、それに対するカウンターの行動がNY在住の皆さんによって呼びかけられていました。しかし、日【本/ママ】人会の建物でそのようなイベントを開催することに抗議する声が相次いだため、日系人会は急遽その場を貸さないことを決定。すごい。とても迅速で効果的な草の根の行動にほれぼれするほど、感動しました。(中略)しかし歴史修正主義者グループは場所をミッドタウンのイタリア料理店に変えて開催。急遽、その場に行って、抗議するアクションも行われました。私も様子が気になって出かけて行ったところ、お店側がNYPD(ニューヨーク市警)を呼び出す状況に。私はその場にいた弁護士(NY州弁護士ではないが)でしたし、こんなところで逮捕者でもでたら大変、と思い、憲法・NY州法も少しはかじっていましたので、『この抗議活動を禁止する法律はありませんよね』とNYPDに話しかけました。そこで警官は何やら上司と相談を始めたようですが、さすがは表現の自由を尊重するNY、時には手荒なことをするNYPDですけれど、この抗議行動には寛容で、最終的に、ルールを守った抗議行動なら何も問題ないという見解でOKとなりました。ところが翌日の産経新聞には、この行動で拘束された人もいたなどと報道されています。全くの誤報で驚きました。産経さん、他社の誤報ばっかり責めてる場合ではないのでは?」 目撃者によれば、一時拘束されたのは事実であるから、すぐに解放されたとしても、「誤報」とはいえないのではないか。『東亜日報』によれば、実際には「一〇人余り」しか参加しなかったのに、「数百人の抗議デモが予定されている」などという誇張したデマ情報を流して会場を変更させたことを、「すごい。とても迅速で効果的な草の根の行動にほれぼれするほど、感動しました」などと絶賛するのはいかがなものか。デモ行進で抗議する「表現の自由」のみが尊重されるべきなのか。異なる意見を表明する集会の自由や表現の自由は尊重する必要はないのか。あまりにも身勝手なダブルスタンダードに唖然とせざるをえない。 三月十七日の日本の外国特派員協会における記者会見で大沼保昭・明治大学特任教授が指摘したように、慰安婦問題をこじらせているのは、こういう運動家たちである。気になるのは、米国務省が前述した渡辺美奈事務局長らと会い、渡辺事務局長は「安倍政権の軍隊慰安婦など過去の歴史歪曲などを指摘し、米政府が東北アジア安定のため日本側の認識転換のために積極的に出てほしいと促した」(三月十四日付『畿湖日報』)と報じられていることである。 ところで同シンポジウムで、私は朝日新聞「慰安婦報道」に対する独立検証委員会報告書のポイントと米歴史教科書(マグロウヒル社)の慰安婦・南京記述の具体的問題点について説明した。私は同報告書の第三部「朝日新聞の慰安婦報道が対外的にもたらした影響」の第四章「北米での実害」について執筆した。朝日新聞社による第三者委員会委員は、慰安婦問題が国際的に女性の人権問題として捉えられていると強調したが、米国主要紙にはそのような見方は一切なく、慰安婦制度を「日本に特有のシステム」として扱う記事が大部分であった。 日本政府に対して、事実に踏み込んだ丁寧な反論を、組織的かつ継続的に行なうことを求め、そのために、政府内に専門部署を置くとともに、民間専門家の意見を集約するための有識者会議を設置することを強く求めたい。日本人への悪質な嫌がらせやいじめ日本人への悪質な嫌がらせやいじめ 三月九日のシンポジウム終了後、ニュージャージー州で悪質な嫌がらせを受けた日本人からヒアリングを行なった。同州の慰安婦碑・像の設置に反対した在米日本人に対して、大要次のようなメッセージが送られてきた直後、鳥の死骸が自家用車の横に置かれたので、本人は「殺人予告」と受け止めたという。 「対反日活動をするにあたって大事なことを申し上げねばなりません。それは必ず『邪魔が入る』ということです。A氏に殺人予告が殺到しています。日本人が結束して活動をしようとすると、ネットでの殺人予告だけでなく、ストーカー、車が荒らされる被害に遭った方がいます。怖くなって身を引いてしまい、会が始まる前に空中分解してしまった例もあります。あなたはお顔、ご職業が知れ渡っているだけにリスクも高いと思います。嫌がらせ、営業妨害などの危険性がないとはいえません。私は本当にあなたの安否が心配です。来客される朝鮮系、日本人にまで警戒しなくてはいけません。中には、味方のふりをして近寄ってくる人もいると思います。私こそがあなたの邪魔をする工作員のようですね。祖国のために頑張りましょう!」 翌日、ニューヨーク歴史問題研究会で「朝日慰安婦報道の国際的影響―国連報告書、米メディアと慰安婦碑・像に与えた影響」をテーマに講演後、カナダのトロントに移動。八人の日本人からヒアリングを行ない、八月十五日に正式に会を立ち上げ、発足記念講演会を開催することになった。カナダでも歴史問題で、日本人の子供が中国人や韓国人の子供からいじめや暴言を受けることが多々あるという。 カナダでは二〇〇五年に、オンタリオ州高校教育委員会が十年生の歴史教育で、「第二次大戦における日本の残虐性を教える」カリキュラムを導入したが、さらに昨年十月にカナダ最大のトロント教育委員会の委員長に中国系女性が就任し、アジアの第二次大戦史教育を推進する中国系市民団体「トロント・アルファ」の働きかけにより、公立高校のカリキュラムに慰安婦問題と南京大虐殺などを組み込むことになった。 トロント・アルファは、スタディーツアーという形で数年前からカナダの教師たちを南京大虐殺記念館やナヌムの家(韓国・広州市)に送り込んできたが、今年からは高校生をこのスタディーツアーに組み込もうとしている。今年の二月九日に、トロント・カソリック教育委員会(ディストリクト・ボード)がトロント・アルファの指導の下に、「日帝の残虐かつ悪辣な行為を学生たちが習えるようにしよう」という内容の了解覚書を締結した。 ちなみに、昨年の「海外子女文芸作品コンクール」特別賞に入賞した「作文の部」には、次のようなトロントの日本人補習学校の小学五年生の作文が選ばれている。「私が一番ショックだったのは、昔、多くの日本人の兵士が外国へ行き、その国々を自分たちのものにするために戦う中で、日本人がその国で暮らしていたたくさんの人たちを傷つけ、殺したということでした。私は、今までずっと日本人は礼儀正しく、親切だと思っていました。だから、日本の歴史を知り、悲しい気持ちでいっぱいになりました……」 また、昨年十二月二十五日と今年の三月八日、ニュージャージー州バーゲン郡ニューミルフォードの公立高校生から「南京大虐殺」の授業について話を聞いた。「南京大虐殺」をテーマとするプロジェクトで、クラスメイトがルワンダ、チベット、ナチス・ドイツの収容所の大虐殺と「南京大虐殺」を同じ扱いで発表したが、その日本人高校生は当時南京にいた祖父の話を聞いていたので、日本人がそんなことをするはずがないと抗議した。小学五年生のとき、韓国人の男の子から突然「日本人は悪いから」と言われ、何故アメリカでこんなことを言われるのか理由がまったくわからなかったが、母は戦争についての解釈が違うので、アメリカではそういう教育を行なっているからだと説明したという。 また同郡の、半数以上が韓国人の高校に通う生徒によれば、「竹島は韓国の領土だと思うか?」と何度も同級生から質問され、「そうとう参った」という。また、アメリカの地図には日本海を“EastSea”と標記しているものが多く、とくに韓国人が多い学校ではそういう標記の地図が使われているという。授業でも“EastSea”か“SeaofJapan”かという議論が起き、先生が即答できず、その生徒が翌日に調べて“SeaofJapan”が正しいと主張したが、韓国人生徒も一向に引き下がらなかったため、激しく対立したという。 この生徒の母親は、「韓国でもなく日本でもないアメリカで、このような方法を使って正しくない情報を植え付ける行為を進めることに対し、日本政府として正しい内容を声を上げて周知することが必要だと思います。その正しくない情報をめぐって、日本人の親だけでなく子供たちにまでそれらの被害が及んでいる現状をしっかりと理解してほしい」と訴えた。反日映画『アンブロークン』の影響力反日映画『アンブロークン』の影響力 昨年十二月二十五日に全米各地で封切りされたアンジェリーナ・ジョリー監督の映画『アンブロークン』は、第二次世界大戦時に旧日本軍の捕虜となった元オリンピック陸上競技選手で米軍人のルイス・ザンペリーニ氏の体験を、有名な女性作家のローラ・ヒレンブランド氏が描いた「ノンフィクション」小説が原作となっている。 原作は、捕虜収容所で日本軍による残虐な虐待行為に屈しなかった姿が話題となり、多くの書評で「ダイナミックな物語展開と最高の研究考証」などと賞賛され、米アマゾンのレビュー欄には一万二〇〇〇件以上のコメント(五つ星評価が八五%)が寄せられ、三〇〇万部を超えるベストセラーとなった。 ニューヨークの映画館で見たが、館内はほぼ満席で、北朝鮮からの「サイバー攻撃」による上映中止決定を撤回して同日に上映された映画『インタビュー』をはるかにしのぐ断トツの興行収入(一日で約一八億七七〇〇万円で歴代のクリスマス公開映画で『シャーロック・ホームズ』『レ・ミゼラブル』に続く興行成績順位三位)を得る盛況ぶりで、翌日付の米紙『USA TODAY』は、「事実に忠実なバランス感覚のある映画」と評価した。以前ニューヨークで見た『ラスト・エンペラー』の観客は映画館全体で数人にすぎなかったのと比べると雲泥の差である。 米アマゾンのレビューには、「なんで、われわれはまだ日本製品を買い続けているのだ」「日本人に虐待された捕虜に比べれば、何にだって耐えられると思った」「第二次大戦中の日本の捕虜に対する扱いがよくわかった」「戦時捕虜と日本人に関する話は恐ろしいというほかない。これらは、人間が人間に対してなしうる想像を絶する所業だ」などと書かれているが、映画(一三七分)の約半分に当たる一時間近くが、強制労働や陰湿な拷問・虐待場面で、一・八mの重い角材を炎天下で三十七分間頭上に持ち上げ続けさせたり、捕虜になった仲間の米兵を一列に並ばせて主人公をなぐり続けさせ、基地から一三〇〇㎞も離れた太平洋のど真ん中で高度七〇mの高さから漂流ボートを執拗に爆撃する原作どおりの残虐な場面が目立つ。 ちなみに、原作には「数千人の捕虜が、殴られたり焼かれたりし、突き刺され、斬首され、人体実験で殺害され、また人肉食の習慣によって生きたまま食われた」「日本軍は占領したすべての地域で、少なくとも一万人の戦争捕虜と幼児を含む民間人を生物化学兵器実験の被験者として使った。数千人が死亡した」と書かれ、「強く殴れ」と仲間に要求した連続暴行は日没まで二時間続き、その数は「二二〇発」に及んだという。 さすがに、このようなにわかに信じ難い虐待については、アメリカ人読者のレビューにも「裁判などにおいて証言者の証言に一つでも嘘いつわりがあれば、その者の証言すべてが怪しいと見なされるのであるから、ここまで信じ難い体験をしたと主張するザンペリーニ氏のすべてが疑わしいと見るべきだ」という意見も寄せられており、十二月二十一日付『ニューヨーク・ポスト』紙も、「夏の太平洋の海上で水と食べ物なしに一週間も生き残れるか」、映画のポスター(血塗りの日本地図や有刺鉄線の五輪マークなどのデザイン)にも使われているシーンの「虐待された状態で六フィートもの木の棒を三十七分間も頭上に持ち上げ続けることは可能か」などの疑問とともに、米軍に対拷問訓練などを行なっている専門家の「気温や木の実際の重さによる」といったコメントを紹介している。 この原作をいち早く紹介したフリーライターの徳留絹枝氏は、月刊誌『潮』平成二十四年九月号の「(海外レポート)米国人捕虜の物語が日本人に問いかけるもの」と題する記事において、「一四万人の連合軍の米兵を捕虜とし、その三分の一を死亡させた歴史を持つ日本人は、自らの尊厳をどのように回復すべきなのか……彼女の著書はそのことも問いかけている」と指摘している。 また、徳留氏によるインタビューのなかで、著者のヒレンブランド氏は、「この本は何百万人ものアメリカ人に読まれ、私は何千通もの手紙やメールを読者から受け取りました」「私を『徹底したリサーチャー』と呼び過ぎることは無いと思います。この本に七年を費やしました。内容の正確さと公平さを期すため、あらゆる資料を探し出し、全ての事実を他の資料と照合する執念ともいえるリサーチに取り組んだからです。本の終わりに、すべての事実に関するすべての資料をリスト化していますので、疑問を持つ人は誰でも検証をすることができます」と述べている。このリストを読み、映画を見れば、誰でもすべてが歴史的事実と誤解し、その影響は計り知れない。「慰安婦は性奴隷」と発信した日本人教授「慰安婦は性奴隷」と発信した日本人教授 この資料リストに基づいて、筆者はアメリカの国立公文書館などに保存されている原資料の精査に着手したが、原作の基本的な問題点については、丸谷元人『日本軍は本当に「残虐」だったのか―反日プロパガンダとしての日本軍の蛮行』(ハート出版)の第一章「全米ベストセラー『アンブロークン』の何が問題なのか」をぜひ一読してほしい。同書において、丸谷氏は「この著者は『アンブロークン』を書くにあたって、すべて電話によるインタビューでしか聞き取りをしておらず、出版して一年後までザンペリーニ氏とは面識さえなかった」という『潮』平成二十四年九月号の記述を紹介しつつ、元日本軍関係者らの証言に基づいて、誇張歪曲された部分に説得力のある反論をしている。原作では主人公は最後に日本人を【赦/ゆる】すが、なぜか映画ではその部分がカットされ、原作で五分の一にすぎない日本軍の蛮行が強調されている。 『アンブロークン』の原作は、広島市立大学の田中利幸教授の英文の文献を一〇カ所も引用し、根拠としている。この田中教授は『HiddenHorrors(知られざる恐怖)』という英文の著書で「人肉食は、(日本の)軍隊の中で組織的に行われていた」ということを世界に発信した。日本では『知られざる戦争犯罪――日本軍はオーストラリア人に何をしたか』という題名で翻訳出版され、南京事件については「南京大虐殺(南京強姦)」と書き、当時南京にいた米人宣教師の次のような日記を引用している。 「私はこんな酷い蛮行をこれまで見たことも聞いたこともない。強姦、強姦、強姦の連続だ。一晩に少なく見積もっても一千件はあるだろうし、日中も数多く行われている。抵抗したりすれば……銃剣で刺されるか銃で撃たれるかだ。そんなケースが毎日数百とある」 「慰安婦は性奴隷」と世界に発信した同教授の『日本の慰安婦――第二次大戦と米占領下の売春婦と性奴隷』という英文の著書は、二〇〇七年の米下院の対日非難決議の根拠となり、「日本軍による強制性の証拠」として採用された点に注目する必要がある。同教授は戦時中の連合国軍による性犯罪にも言及しているが、連合国軍の戦場での強姦は「普遍的」な「男性支配文化」すなわち、「ジェンダー問題」であると捉え、「英米両軍」に関しては、「戦時中に敵国女性を大量強姦したというような報告は今のところ見当たらない」と書き、米軍は「戦時中、最も性犯罪の少なかった」と記述している。プロパガンダの常とう手段 このような日本軍と連合国軍に対する二重基準(ダブルスタンダード)の原点はいったい何か。それは、GHQの「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム(ウィキペディアには、同文書の英文の原資料の存在は確認されていない、と書かれているが、GHQ文書には“warguiltinformationprogram” と明記された文書が数十ページ含まれており、コピーを入手している)」にあると思われる。丸谷元人氏は、吉田清治のウソ証言を全面的に掲載している田中教授の英文著書を、「日本を『越後屋と組んだ悪代官』に仕立てた講談本に過ぎない」と酷評しているが、そのとおりであろう。 田中教授は天皇制と外国人差別ならびに日本人男性の女性蔑視・性的搾取を不当に結び付けて、次のような巧みな「イメージ操作」を行なっている。「この『従軍慰安婦』問題の根底には二つの重大な問題が横たわっていると考えられる。それは日本人全般の意識の奥深くに根強く存在している。天皇制と密接に関連した『外国人差別』の要素、ならびに日本人男性の『女性蔑視とそれに起因する性的搾取』の要素がそれである。慰安婦問題がこれまで日本人の関心を集めなかった理由は、この問題が内包している二重の差別意識要素をわれわれ日本人が直視することを戦後これまでずっと避けてきたからではなかろうか」 いったいなぜ彼が海外で日本軍の「従軍慰安婦」に対する「性的搾取」を強調する「性奴隷」というウソを意図的に拡散しているのか、その思想的意図、狙いがこの文章に凝縮されている。 アメリカの神格化された著名な政治学者で、丸山眞男に大きな影響を与えたハロルド・ラスウェルは、『宣伝技術と欧州大戦』(高山書院)において、このような荒唐無稽な残虐物語が「戦争における大勝利の一つ」となり、「敵に凌辱される若い女性というのは、国境の反対側にいる大勢に当の凌辱者になったかのような秘められた満足感を与える。それ【故/ゆえ】、多分、こうしたストーリーに人気がありそこらじゅうで見られるのだろう」と分析しているが、虐殺や強姦(性的搾取)を強調することは、戦争プロパガンダの常とう手段であった。今日の慰安婦論争をそういう歴史的視点から見直す必要がある。たかはし しろう 1950年、兵庫県生まれ。早稲田大学大学院修了後、スタンフォード大学フーバー研究所客員研究員に、政府の臨教審専門委員、埼玉県教育委員長などを歴任。現在、男女共同参画会議議員。著書に『日本が二度と立ち上がれないようにアメリカが占領期に行ったこと』(致知出版社)ほか多数。   関連記事■ <特別対談>慰安婦問題はフィクションだ■ 日米vs中韓~歴史修正主義批判を問う■ 米軍慰安婦像が米大使館前に建つ日■ [日韓「歴史戦争」]日本がサンドバッグ状態を脱するとき■ 日本の立場を危うくする「アジアの時代」の足音

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    アジアの「慰安婦」を徹底追跡! マイケル・ヨン現地ルポ

    とを知っている。真っ当な研究者とジャーナリストのあいだでは本件は完了している。ペナン戦争博物館の展示韓国人殺しの証言は皆無 この真実探求の途上において、さまざまな突発事故があった。一例として、高名な米国人作家のローラ・ヒレンブランドが著書『アンブロークン』において読者を騙した、ということだ。 ヒレンブランド女史は、日本人がテニアン島において「皆殺し」の命令を出して5000人の韓国人を虐殺した、と記述している。彼女は2つの出典を示していた。われわれはそれらを調査し、出典のうちの一つは韓国人によって噂に基づいて建てられた記念碑によるものにすぎない、と判明している。 ヒレンブランドの引用元の一つは次のものだ。“Murder on Tinian:Eric Lash,Historic Island of Tinian,Environmental Services,October 2008,vol.1,2nd edition.”1945年のテニアン島:巨大な米軍基地があるが、韓国人虐殺の手がかりはまったく見られない。(テニアンの大虐殺:エリック・ラッシュ、テニアン島の歴史、Environmental Services、2008年10月、第1巻、第2版) ヒレンブランドの引用元になっている「出典」文書は欺瞞そのものである。ほんの数分調べればわかることだ。難しい犯罪学は必要ない。たとえば、ほんの短い分量の文書のなかでエリック・ラッシュ氏の名前の綴りがEric,Erik,Erickと3種類登場している。 Environmental Servicesに問い合わせたところ、考古学担当シニアマネージャーのテリ・ラス(Terri Russ)氏から返答が届いた。ラス女史によると、「ESIはこのテーマに関するプロジェクトはいっさい手がけておりません」とのことだった(エリック・ラッシュ氏は当時ESI勤務ですらなかった)。 われわれは当時のニュース報道を残す米軍の記録にも当たった。米軍の侵攻後、『ニューヨーク・タイムズ』はテニアン島にまだ2400人の韓国人が残っている、と報じていた。 テニアン島は米軍の日本攻撃における死活的重要拠点だった。この小島は米軍でいっぱいとなり、滑走路が6本つくられ、テニアン島は戦時中最大の航空作戦拠点となった。1945年の時点で、テニアンは世界最大の空港だったのだ。 虐殺など、どこからも、誰からも聞いたことがない。われわれの海兵隊、陸軍、海軍が韓国人5000人の虐殺被害の証拠を見逃したとでもいうのか? 合衆国軍の綿密な記録文書化の傾向からして、それは考えにくい。ペナン戦争記念館に残る「原子爆弾」 ヒレンブランドは「皆殺しの命令により、日本軍はテニアンにて5000人の韓国人捕虜を虐殺した……」と記述した。 捕虜? 当時の韓国人は日本国民だった。万単位の韓国人が日本軍に従軍していたのである。少なからず士官もいたのだ。 ヒレンブランドはこの主張を2度も繰り返している。「……日本人は皆殺しの方針を導入していた。そして5000人の韓国人全員を虐殺した」。 われわれは、日本人・韓国人の民間人への降伏勧告を担当した米国の言語専門家による1次情報に当たった。そこにも日本人が韓国人を殺したという証言はいっさいなかった。皆無である。 われわれ米国は、テニアンを対日空爆の出発地として活用した。何十もの日本の都市を焼き払ったのである。なぜにわれわれが敵側による5000人の無辜の民の殺戮を隠す必要があるのか?1945年6月ごろのテニアン島 ここで重要なのは、米国はテニアンから2発の原子爆弾を送り出す準備をしていたということだ。われわれがまさに広島と長崎を破壊するために使っていたその島で、日本軍が5000人を虐殺する戦争犯罪を犯していたとすれば恰好の宣伝材料ではないか。 テニアンはわずか101平方㎞の島である。ヒレンブランドの出身地、ワシントンD.C.は177平方㎞である。つまり彼女は現代にあたる1944~45年に、ある軍隊が何の証拠も残さずに5000人を虐殺し、かつ誰にも気付かれなかったとでもいうのだろうか? これほど大規模な殺戮を、現地取材もせず、米軍の公記録にも当たらずに告発するというのは、プロとしてあるまじき不正行為である。彼女はこの書籍のために7年にわたる調査を続けていたと言い張っていたが、じつは彼女は同書のテーマである人物ルイス・ザンペリーニ氏と1度も対面したことがない、ということが書籍刊行後に暴露された。タイ・ラノン近くの日本軍によるトンネルシステム。ラノンにおいて、第二次世界大戦中に日本軍と協力した高齢者たちは軒並み日本への好感を口にした。 約10年前のことだが、私は当時取材していた戦時下のイラク人の子供たちを支援するために名前を貸してくれた、ということでヒレンブランドをインタビューしたことがある。子供たちを救おうとする努力において私はローラに敬意を抱き、このような辛辣な言葉を並べながらも、彼女の名作については忘れていないが、歴史家として――そしてノンフィクション作家として――ヒレンブランドはエコノミークラスの安物である。 2015年9月に、私はヒレンブランドの出版社に連絡し、テニアンの韓国人5000人虐殺に関する説明を求めた。出版社はコメントを拒否し、同書の刊行はかなりの昔であるため、ヒレンブランドももはやインタビューに応じることはできない、と返答してきた。 私は編集者にもインタビュー申請を出した。同じ返答だった。その版元では、いまだにインタビューの申し込みを受け付けているのだが。 テニアンで日本軍が虐殺に手を染めたと主張するということは、ヒレンブランドが文学に対する罪を犯している、ということだ。彼女は真実を虐殺した。文字どおりの詐欺行為である。 私がヒレンブランドの著書を購入したとき、同書は3年間にわたり『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラーリストに入っており、アンジェリーナ・ジョリー監督による映画化が決定していた。私は返金を求めたい。 プロパガンダは、もはや日本人さえも信じ込むほど行き届いている。現代の「慰安婦」たち現代の「慰安婦」たち ジャカルタからカンチャナブリ、そしてバンコク、ラノン、ペナンに至る今回の調査旅行は大いなる発見の連続だった。 バンコクで、われわれはバンコクの下町にある豪勢なトロカデロ・ホテルにおける慰安所を描いた文学を発見した。 私は国立公文書館からトロカデロ・ホテルまでタクシーで移動したが、そこは荒れ果て、さび付き、ボロボロになっており、それでも建造物が残っていたが、クモの巣だらけで正面の視野がさえぎられていた。 道路沿いの1階は小さな商店に様変わりし、大部分が宝石類を販売している。西から東まで正面の長さは約100mで、東の端近くにNASAシルバーカンパニーがある。 NASAのすぐ隣には「ジャスミン・マッサージ」店があり、午前9時~深夜12時まで営業している。 2重ドアを通り過ぎ、2階につながる階段を上ると、個室とシャワーが揃い、タイ語と英語で「ここでのセックスお断り!! 」と書かれているではないか! 現実を見ると、70年前にトロカデロにあった慰安所はいまも名残があり、そこには法の縛りが行き届かない快楽の提供人がいるというわけだ。上記の警句があるにもかかわらず、今日ここは売春宿になっている。 中国人と韓国人の売春婦がわざわざタイまで輸送されなければならなかったという説の笑止千万ぶりは、もうここで繰り返すまでもない。われわれが調査を行なったおのおのの場所で似たような結果が出た。たとえば、フィリピンのアンヘレス市だ。1カ所であれほど多くの売春婦が集まっている場所は、世界の他のどこでも見たことがない。ペナンの取材協力者が日本兵の古い写真を掲げる。 本件の調査で訪れた8カ国目がマレーシアだ。 1941年、真珠湾攻撃の数時間前に、日本軍はマレーシアのコタバルへ侵攻した。敵は英国、英領インド、オーストラリア、そして地元の抵抗勢力だった。コタバルこそ太平洋戦争で初の大規模戦闘だった。 大英帝国の権勢は絶頂に達していた。世界史上最強の帝国である。日本には大英帝国、オランダ、米国、その他に対してすべて同時に戦端を開く大胆さがあった。 すぐさま日本軍はペナンの街路を闊歩した。 そしてシンガポールが続く。あれから長い年月が過ぎた歴史となり、日本により英国がシンガポールを失った意味がさらに明瞭に見える。 米国流の解釈をすれば、シンガポールを失うのは米国のほぼ全軍が戦死または拘束されたうえでハワイを失うようなものだ。この心理的損失は甚大だった。 この衝撃的な日本の勝利は短命ではあったが、その後のアジア全体の独立に大きな道を開いた。 この70年後に、われわれのチームは日本が20万から40万人の「性奴隷」を拉致し、ペナンのような場所に送り込んだという告発の真偽を確かめるためにペナン入りした。韓国人と中国人による反日物語 韓国人と中国人による反日物語によると、貞節な地元の女の子たちが悪辣な日本軍の侵入によって連行され、海外の「強姦所」で無理やり働かされたという。 これは韓国人と中国人にとっては決して突飛な空想ではない。2015年に、韓国人と中国人は性労働者の人身売買関与を継続しているのである。まさに今年、大規模な売春婦密輸入網がカナダで捕縛された。予想どおりというべきか、逮捕された容疑者は韓国人と中国人であった。売春婦人身売買は韓国と中国の伝統事業である。『戦時のペナン』において、著者のアンドリュー・バーバーは中国人が管理する慰安婦の実情を次のように描いている。 19世紀に、英国人は中国人が牛耳るビジネスを黙認していたが、19世紀の終わりに近づき、英国人はいままで手を出さなかった分野への関与を強めた――まず女性が16歳以上であること、そして自らの自由意思で働いていることを確認するためだ。当局は「ポ・ロン・クク」なる家をシンガポールとペナンに建て、強制的に働かされている娘たちの避難所とした。 2015年のペナンで、われわれは現状が日本軍の侵攻があったはるか前、バーバー氏が描いた1914年から大して変わっていないことをたしかに目撃した。 1914年に、政府高官がペナンの売春宿を訪れ、女性たちが強要されたうえで働いていないか確認した。各宿も小規模で偏狭であり、賭博とアヘン吸引に利用されていた。政府調査で明らかにしたところによるとペナンには159軒の売春宿があり690人の中国人、129人の日本人、36人のタミル人、56人のマレー人女性を雇用していた。――総計911人の「登録された」売春婦がいて、各宿に平均4人の女性が所属し、ジョージタウンの独身女性の5%を占めていた。30人の日本人女性が高い技量で「高級」との定評を得ていた。ペナンにおける欧州人売春婦の不在は説明が難しいが、シンガポールにいる34人の欧州女性は巨大な市場においてはごく小さな存在でしかない。 日本人が第2次大戦中に米国人によって受け入れられていた慣習を踏襲したとき、日本人は野蛮と蔑まれた。 2015年に、われわれが地元民と地下世界を見たところ、今日のマレーシアで売春が完全に非合法化されていることを除き、1914年から大した変化はないことがすぐに見て取れた。 売春はいまもペナンで活発なままだ。大部分が公然と行なわれている。少しは覆い隠されている部分もあるが、タクシー運転手がしょっちゅう聞いてくる。「ロシア女ほしいか? 中国人? ベトナム女いいぞ。ロシア、いちばん高い」。毎日、似たような提案が舞い込んでくる。 売春婦は食べ物を買うのと同じように入手できる。路上の売店があり、バーからのお持ち帰りがあり、「レストラン」もデリバリーもある。 なかには目に余る光景もある。女性とレディーボーイはほぼ同じようなかたちで声を掛けてくる。 ベトナム人女性は観光ビザで入国してきて、ビザが切れるまで滞在し、帰国する。外国人にはバーで接触する。ペナン戦争博物館の展示:日本人はギロチンを使わないことで知られていた。 ロシア人女性その他は、一団になって毎晩異なるホテルを動き回っている。4人1組で、ある晩はホテルXに泊まり、翌晩はホテルY、その次の晩はホテルZだ。 この商売にはタクシー運転手、バーテンダー、ホテル従業員その他のネットワークを通じて誘い込まれる。場合によっては、女性は同じホテルに滞在しながら部屋から部屋へ渡り歩くこともある。価格は地元民向けで10ドルから、高級娼婦だと500ドルということもある。 ペナンには、アジア全域の村々出身の工場労働者の膨大な人口が集まっている。大部分は貧しく、若い娘たちは大型アパートに集められて暮らしている。奴隷制に等しい悲惨な話は各国マスコミによって広く報じられている。 多くの娘たちは最大で月300ドル程度の給料を約束されて募集されてくる。往々にしてパスポートは没収され、最終的に手にできるのは月に100ドル程度で、あとは決して返すことができない借金を課せられる。そして娘たちは夜に売春婦となっていく。 一部の娘たちは、家事手伝いを派遣する組織に属して働いている。そして日中はメイド、コック、ベビーシッターなどとして働き、夜に風俗業に従事するのだ。 売春はペナンにおいてあまりにも手広く行なわれており、このネットワークに入り込むのに1年は必要ない。数日間。いや数時間の話だ。ハワイでパイナップルを探すのと同じだ。 法的側面について話すと、イスラム教国家としての体面を維持しながらも、このデタラメぶりによりビジネスは繁盛するばかりである。 一方で、われわれのコンピュータのパーツの多くは、そんな売春婦としての2重生活を送る年季奉公の労働者たちの手によってつくられているわけだ。ペナンでは、現代の性労働いや性奴隷と年季奉公の労働が同時に重なり合っているのだ。反日感情を醸成する神殿反日感情を醸成する神殿 私は現地でさまざまな背景をもつ人たちに日本人、韓国人、中国人、その他についてどう思うのか聞いてみた。聞いた相手にはインド系もいれば、中国系、マレー系、バングラデシュ系の人もいた。答えは予想どおりだった。好きでない人一覧:韓国人、中華人民共和国の中国人(台湾ほかを除く)、インド人、アラブ人好きな人たち:日本人、欧州人、アメリカ人。私は多くの国々で多くの人たちに聞いてきたが、答えがそれほど異なることはない。 アジア全体で日本人は憎まれているという話は虚構である。日本はアジアのなかで最も大きな敬意を集める国の1つである。 われわれはペナン戦争記念館を訪れた。「記念館」とは甘い用語である。この場所は、紛れもなく反日感情を醸成する神殿である。カミカゼ「自殺用ベスト」 ここは幽霊屋敷の様相を見せており、ペイントボールコースの顔も見せている。ブキト・ハントゥ「亡霊の丘」は、アジアで最も亡霊が姿を見せることが多い10カ所の1つとされている。 この幽霊屋敷には、木の上にいる巨大な恐ろしい化け物と、不気味な物語と、その他もろもろが揃っている。 ここには、リトルボーイにもファットマンにも似ていない実物大の原爆がある。巨大な手榴弾があり、その他諸々があり、現代のDVDプレイヤーから取り出した回路基板を貼り付けたカミカゼパイロットの自殺用ベストも揃っている。 この「自殺用ベスト」の上に掲げられている説明文によると、カミカゼは1941年12月10日にプリンス・オブ・ウェールズとレパルスを破壊したという。真実は、英国艦隊は日本軍の通常の空襲によって破壊されたのであり、カミカゼによるものではない。 そしてカミカゼ「特別攻撃隊」は、戦争が終局に近づく1944年まで決行されることはなかった。 この博物館は同じくらいの力を注いで、日本軍が性奴隷を連行したという虚構の主張を繰り出している。誰か日本人がこの構図に対して立ち上がり、「すべてウソだ」と主張すれば、右翼の歴史修正主義者、好戦的国家主義者、あるいは単純な変人のレッテルを貼られることになる。 ベトナムを訪問して戦争博物館を見学するアメリカ人たちは――私もそうだったが――米軍およびアメリカ合衆国がここでどう描かれているかを見て衝撃を受け、悲嘆にくれ、怒りさえ覚える。一方で日本人はこういった日本についての虚構――真っ赤なウソばかりではないか――に対し同じような感情を覚えるわけだが、そうした日本人は歴史修正主義者と呼ばれてしまうのだ。 博物館長のジョハリ・シャフィエ氏は、「9月に北京で開催された学術会議に招待された」とわれわれに誇らしげに語った。北京で彼が招かれたのは「国際第2次大戦記念館協会」だという。そこの日程に含まれていたのは、「中国人民対日本侵略軍抵抗記念博物館、マルコ・ポーロ橋(盧溝橋)」訪問だったという。北京にある中国の情報作戦機関の訪問者名簿 シャフィエ氏は口を極めて「日本人はペナンの女性を強姦し、性奴隷にした」と罵った。 シャフィエ氏は売春婦の重みで傾きそうな島、2015年のいまも性奴隷がそこかしこにいるペナンの島で、DVDプレイヤーの回路基板を用いたカミカゼ「自殺用ベスト」を展示する男である。 マレーシア全体、そのなかでもペナンは現在進行形の人身売買で悪名高いが、彼が非難するのは日本ばかりだ。私は自分の目でそれを目撃した。 中国は、この情報戦を今後の対日本の熱い戦争の前哨戦として利用している。立ち上がるべき時はいまだ。日本は積極的に、中国がばらまく憎悪に対処すべく真実を広めるキャンペーンに投資するべきだ。マイケル・ヨン ジャーナリスト。1964年生まれ。グリーンベレーを経て90年代後半よりジャーナリストとして活動。アフガニスタンやイラクなど戦地の最前線を取材し、イスラム過激派組織と戦うアメリカ軍の活動を至近距離から伝え、注目を集める。近年は「慰安婦」問題でアジア全域の調査を行なう。著書“Moment of Truth in Iraq”は全米でベストセラーに。  関連記事■ <特別対談>慰安婦問題はフィクションだ■ 米軍慰安婦像が米大使館前に建つ日■ [日韓「歴史戦争」]日本がサンドバッグ状態を脱するとき■ 日本の立場を危うくする「アジアの時代」の足音

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    「慰安婦狩りなかった」朝鮮総督府100歳生き証人が語る「強制」の虚構

     慰安婦問題をめぐり韓国が「歴史戦」を仕掛けてくる中、元朝鮮総督府官吏の西川清さん(100)=和歌山県田辺市=が取材に応じ、「強制的に女性を集めることはなかった」と慰安婦募集の強制性を明確に否定した。11月上旬に行われた日韓首脳会談では、安倍晋三首相と朴槿恵(パク・クネ)大統領が慰安婦問題の交渉加速化で一致した。しかし、朴大統領は問題が日韓関係改善の「最も大きな障害物」と指摘しており、日韓の隔たりは大きい。昨年、朝日新聞が慰安婦に関する記事の一部誤報を認めたが、「日本軍による強制連行」の象徴として海外都市に慰安婦像が設置され、今も誤解が根強く残る。韓国側の反日攻勢に対し、当時を知る官吏の貴重な証言は、〝慰安婦狩り〟のような事実がなかったことを改めて示している。平穏な日本統治時代 セピア色の古ぼけた写真。満開の桜の下で肩を組む男性4人が写っている。「80年もたってこんな状況になるとは、当時露ほども思わなかった」。西川さんは見習い官吏だった若き日の写真を手に、ため息をついた。 写真は昭和9年春、朝鮮半島東部にある江原道(こうげんどう)の春川(しゅんせん)で撮影された。職場の同僚と行った花見の際の記念写真で日本人と朝鮮人が2人ずつ納まり、うち1人が西川さんだ。8~20年に総督府に勤めていた。 「差別感情はなく、同等という雰囲気だった。今、韓国が日本統治時代はすべて悪業として批判していることは、事実としてあり得ないことだ」朝鮮総督府官吏時代を振り返る語る西川清さん。「慰安婦を強制的に集めることはなかった」と証言した。 正式に総督府江原道の官吏になった12年当時、朝鮮には日本の県にあたる道が13あり、その下に市にあたる府と郡、さらに町村にあたる邑(ゆう)と面があった。職員の多くは朝鮮人。同僚や上司、知事や部長クラスの重席にもおり、分け隔てなく野球をやったり、飲み会をしたりもした。 「朝鮮人同士は朝鮮語を話していたし、朝鮮名の職員も多かった。何でもかんでも日本が強制したということはありませんでしたよ。ましてや女性を強制的に慰安婦にしたなんてありません」歴史をゆがめた「河野談話」 韓国側は「20万人以上の女性を慰安婦として強制的に動員した」などと主張している。この誤った慰安婦強制連行説は、証拠資料や信頼に足る証言もないまま慰安婦募集の強制性を認めた平成5年の河野談話を根拠に世界に流布され、朝日新聞などメディアの報道も後押しした側面がある。 西川さんは「併合時代の朝鮮は、むしろ治安が良かった。そして何より、女性を強制的に集めることがあれば、当時の朝鮮人が黙っていないでしょう」と韓国の主張を否定。「男性の徴用はあったが、だからといって軍や警察も一緒になって暴力的に連行するということは決してなかった」と証言する。 西川さんは昭和18年、江原道寧越郡の内務課長を務めた際、労働力不足を補うための労働者として男性の募集を担当した。19年9月以降は日本国民と同じく課せられた「徴用」となったが、18年当時は総督府自らが集める「官斡旋(あっせん)」方式だった。 西川さんによると、男性の労働力を集める官斡旋は総督府が道庁に人数を割り当て、さらに郡、邑、面に降りていく。前任者は10人の割り当てでも5~6人しか集められない状態だった。「だから村長ら住民のリーダーにきちんと説明して納得してもらうことが必要だった。軍については総督府と指揮系統は別だったが、仮に軍が慰安婦を集めていたなら、われわれの耳にも少なからず入ってくるはず。でもそんな話はなかった」と証言している。「事実と異なる歴史像」元官吏ら2人も反論 「女子の強制連行があったような兆候を感じたことは一度もありませんでした」。元朝鮮総督府江原道地方課長で、「慰安婦強制連行はなかった」の著書がある大師堂経慰(だいしどう・つねやす)さんは生前、こう述べていた。 大正6年に朝鮮で生まれ、「戦前・戦時中を朝鮮で過ごした者の体験」として「慰安婦強制連行」を一貫して否定していたのだ。 「もしも万を数える女性の強制連行があったとすれば、その何倍の目撃者がいるはずだ」。平成15年の月刊誌「正論」3月号の紙面対談で大師堂さんはそう指摘している。強制連行が事実なら、住民の間に深刻な動揺と反発が起きていただろうが、実際は「発生したはずの(抗議運動といった)事象は何ひとつ起きていないのです」と断言していた。 《平和でのどかな農村にある日、突然日本軍が乗り込んできて無垢(むく)な娘たちを無理やり軍用トラックに押し込んで連れ去り、慰安婦にした》 韓国側が主張する慰安婦の強制連行は非人道性がことさら強調され、海外でもこうしたイメージが広がっている。 しかし朝鮮総督府の元警察官僚で、戦後に埼玉県警本部長や大分県副知事を務めた坪井幸生さんも生前、大師堂さんとの対談で韓国側の主張を真っ向から否定していた。「強制連行があれば、必ずトラブルが起き、田舎では日本人はとても普通の生活はできなかったと思う」 しかも、朝鮮に13あった道の警察部では、トラブルの情報は上がってこなかった。「朝鮮人の警察官も半分以上いたのが実情ですから。しかし、そんなトラブルは全く聞いていない」と語っていた。 大師堂さんは著書で、「私の体験した朝鮮とは全く異なった歴史像が作り上げられている」と、国内の偏向報道や韓国側の主張を疑問視。「総督府施政を抑圧と反抗の連続であったような伝え方がされるが、これは事実ではない」とも書き記していた。安倍首相への〝直訴〟 平成5年の河野談話は、慰安婦問題に「軍の関与」を認め、募集について「官憲等が直接加担したこともあった」とした。日本の軍や警察による強制連行の論拠とされたが、政府が集めた公式資料に強制連行を裏付ける証拠はない。 元朝鮮総督府官吏、西川清さんは当時の朝鮮に、朝鮮人が経営する「カルボチビ」という売春宿があったことを記憶している。日本でも貧困から女性が遊郭に身売りされていた時代だ。 「朝鮮でも身売りはあった。こうした女性が朝鮮人の女衒(ぜげん)によって慰安所に連れられたことはあるだろうが、あくまでも民間の話だ。もしも日本の公的機関が関与していれば、絶対に文書で残っているはずだ」 国際的に誤った〝史実〟が広がっていることに憂慮を深める西川さんは2年余り前、日本軍や官吏による強制連行を否定する手紙を安倍首相に郵送したこともある。 「当時の朝鮮の仕組みを知る者からすれば、いわゆる『従軍慰安婦』は戦後に作り上げられた机上の空論です」 今夏に100歳となった西川さんは、事実がねじ曲げられた現状にいまなお憤りを感じている。

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    韓国大変! 訪米で岐路に立たされた二股外交の運命

    鮮半島にとっては例年になく熱い夏だった。8月4日に発生した軍事境界線での「地雷事件」が引き金となり、韓国と北朝鮮が一触即発の状態となったからだ。 「地雷事件」で負傷者を出した韓国軍が報復措置として11年ぶりに拡声器による対北宣伝放送を再開したことに反発した北朝鮮軍が、砲弾を数発撃ち込んだあと 「(22日午後5時までに)放送を中止しなければ軍事行動を全面的に開始する」と警告、これに対して韓国軍が「挑発すれば、徹底的に報復する」と応酬したことで交戦必至とみられていた。ところが一転、北朝鮮は韓国に対話を呼び掛け、3日間のマラソン交渉の末、地雷事件で遺憾の意を表明し、矛を収めてしまった。誰が見ても、北朝鮮が腰砕けになった感は否めない。 腰砕けの理由については、(1)最初から戦争をする気がなかった、(2)「挑発すれば、断固報復する」との韓国軍の威嚇に屈した、(3)準戦時態勢を発令した直後の8月22日から23日にかけて、北朝鮮が経済特区として開発に力を入れている咸鏡北道羅先市が豪雨と洪水に見舞われ、軍隊を復旧に回さざるをえなかった、等々が考えられるが、中国の抗日戦争勝利70周年式典出席のため訪中した朴槿惠大統領が習近平主席との会談で「中国が建設的な役割をしてくれたことに感謝する」と述べたことから中国の圧力説も取り沙汰されている。 北朝鮮の砲撃(8月20日)が朴大統領の式典参加表明直後にあったことから、朴大統領の訪中阻止のための仕業と中国が受け止めたとしても不思議ではない。中国共産党機関紙『人民日報』の姉妹紙『環球時報』(8月24日付)が「中国の抗日戦争勝利70周年の閲兵式に実質的に干渉するものであるならば無関心ではいられない。中国は強力に対応すべき」と言及したのは、そうした疑念が拭い去れないからだろう。 中国がどのような「建設的な役割」をしたかについては伏せられたままだ。中国国防部の楊宇・軍報道官は「事実ではない」と否定しているものの香港紙『東方日報』(8月23日付)は「中国人民解放軍が北朝鮮との国境地帯に戦車を集結させ、北朝鮮を牽制した」と報じ、また一時は中国が北朝鮮への石油や軍事物資の販売を全面禁止したとの情報も流れた。 唯一、公になったのは、中国の邱国洪・駐韓大使が21日に「対話で解決すべきだ」と自制を求めたことだ。これに対して北朝鮮外務省は、その日のうちに「われわれは数十年間自制するだけ自制してきた。いまになってどこの誰かのいかなる自制云々ももはや情勢管理に寄与しない」と不快感を露わにした。北朝鮮が説得に耳を貸さなかったことから、中国が何らかの圧力を加えた可能性も考えられる。 実際に金正恩第1書記は、事態収拾後に招集した党中央軍事委員会拡大会議の場で「われわれには誰の支援も同情もなかった」と吐露していた。この発言からも中国が北朝鮮に与しなかったことは明らかだ。その不満として9月9日の建国記念日に寄せられたロシアのプーチン大統領の祝電を『労働新聞』の一面に載せながら、習主席の祝電は二面扱いにしてしまった。パトロンを取るか、用心棒を取るか パトロンを取るか、用心棒を取るか 朴大統領は、今回の訪中で中朝に楔を打ち込み、習政権の取り込みに成功したと自画自賛している。たしかに中国は西側首脳として唯一出席した朴大統領を熱烈歓迎し、厚遇した。皇帝色でもある黄色のジャケットを着て天安門に現れ、習主席、プーチン大統領と並び立ったことで朴大統領はさぞかし「女帝」のような気分になったかもしれない。帰国後、北朝鮮とのチキンレースでの毅然とした対応や訪中が評価され、支持率も急上昇し、1年5カ月ぶりに「セウォル号沈没事故」前の50%台を回復したことで、いまは幸福の絶頂にあるといっても過言ではない。しかし、前途は多難だ。いつ国民から再びバッシングを受け、支持率が急落するかもしれない状況に置かれていることには変わりがない。 難題の一つは、10月16日に予定されている訪米で、北京の式典出席をめぐって生じたオバマ政権との不協和音を解消し、米韓関係を強化できるかどうかだ。 朴大統領は一応、米国への配慮から訪中発表より先に10月の訪米を発表した。また、習主席との首脳会談で北朝鮮の核放棄を定めた6カ国協議共同声明と国連安保理決議の忠実な履行の確約を取り付け、10月10日の労働党創建70周年記念日に合わせて予想される北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射についても「反対する」ことで意見の一致も見た。さらに、米国が強く求めていた日韓首脳会談にもメドを付けた。 北朝鮮問題を外交的に解決するうえで中国との連携は不可欠だが、中国とは異なり、韓国と相互安全保障条約を結び、米軍を駐屯させている米国としては、米韓および日米韓3カ国の安保協力の強化こそが先決だ。米国が韓国に高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備を迫る理由もそこにある。 北朝鮮は再三にわたって「ホワイトハウスもペンタゴンもわれわれの攻撃の照準にある」「米国を墓場にする」と恫喝している。金第1書記も今年7月27日の停戦記念日での演説で「もはや米国はわれわれにとっては脅威でも恐怖の対象でもない。むしろ、われわれのほうが米国への大きな脅威、恐怖になっているのが今日の現実である」と豪語している。事実なら、北朝鮮の核ミサイルは米国にとって深刻な脅威であり、米本土防衛のためTHAADの韓国配備を急がなければならない。 しかしTHAAD韓国配備については、ウクライナやシリアの問題で米国と対峙するロシアに続いて中国も反対し、朴政権に配備しないよう釘を刺している。仮に中国の意向を無視して配備すれば、経済制裁という「報復」を食らうかもしれない。朴政権は、その時になって中国が「韓国カード」を使って北朝鮮を牽制し、その一方で「北朝鮮カード」を使ってTHAADの韓国配備を牽制する、そのしたたかさを痛感することになるだろう。 米国内では、韓国が過度に中国に傾斜しているとの批判が台頭し、韓国に冷淡になりつつある。オバマ政権は、米国主導のTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に加わらないばかりか、米国が敬遠している中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)にいち早く参加し、副総裁のポストまで要求している韓国の背信を苦々しく思っている。そこへ、いまや米国の安保に喫緊のTHAAD配備に同盟国である韓国が同意しないとなると、韓国への不信が一段と高まることになるだろう。 経済を中国に、安保を米国に依存する韓国からすれば、中国はパトロンで、米国が用心棒のような存在だ。パトロンを取るのか、用心棒を取るのか、朴政権は訪米で重大な岐路に立たされるかもしれない。3カ国首脳会談の目的は歴史認識問題に対する追及3カ国首脳会談の目的は歴史認識問題に対する追及 冷却化した日韓関係の修復も朴大統領に課せられた難題の一つである。 朴大統領は、式典と軍事パレードへの出席の見返りとして習主席から早ければ10月末、遅くとも11月中に日中韓首脳会談を開催することで同意を取り付けた。 朴大統領が三カ国首脳会談に積極的なのは、仲違いしている世界第2位の経済大国・中国と3位の日本のあいだを取り持つことでホスト国・韓国の国際的地位を高めることにある。また、北朝鮮の核問題で3カ国が足並みを揃え、北朝鮮に圧力を掛けることも狙いの一つだ。そして何よりも歴史認識の問題で中国と協調し、安倍総理に対して戦後70年談話で触れた歴代内閣の歴史認識を確実に継承し、行動で示すよう促すことにも狙いが隠されている。 歴史認識の問題は、今回の中韓首脳会談ではほとんど言及されなかった。しかし、朴大統領は8月15日の日本の植民地支配からの解放を祝う「光復節」70周年の演説で、安倍晋三総理の戦後70年談話に触れ「残念な部分が少なくない」と批判した。3カ国首脳会談を前に、握手を交わす(左から)安倍晋三首相、韓国の朴槿恵大統領、中国の李克強首相=11月1日、韓国・ソウルの青瓦台(共同) 中国も華春瑩・副報道局長が談話を発表し、「日本は、あの軍国主義侵略戦争の性質と責任に対してはっきりかつ明確な説明を行ない、被害国国民に真摯なお詫びを行ない、重大な原則的問題でごまかしを行なってはいけない」と反発した。それでも中韓とも日本との首脳会談開催に前向きになったのは、談話に一応「植民地支配」「侵略」「痛切な反省」「お詫び」の4つの「キーワード」が書き入れられたことにもよるが、首脳会談の席で安倍政権に「痛切な反省」と「お詫び」を行動で示すよう圧力を掛けることにある。そのことは、尹炳世外相が岸田文雄外相から談話について電話で説明を受けた際「日本政府の誠意ある行動が何よりも重要だ」と応じたことからも明らかだ。 朴大統領は中国滞在中、『人民日報』(9月4日付)との書面インタビューで「歴史は悠久に流れ永遠に残るものであり、それを認めまいとするのは掌で天を隠そうとする行為にほかならず、自身の能力に対する過大評価」と遠回しの表現ながら安倍総理を批判していた。さらに「現在、北東アジアで起きている各種の軋轢と対立を平和と協力の秩序に戻すためには、領域内国家間の正しい歴史認識に基づき新たな未来に進もうとする共同の努力が必要だ」と述べたことから、日中韓3カ国首脳会談で歴史認識問題を持ち出す可能性はきわめて高い。しかし、その一方で、日韓関係が長期間にわたって冷却したことで日本からの観光客の減少や日本企業の韓国への投資の鈍化、日本国内における韓流ブームの衰退、ヘイトスピーチの台頭などの弊害が生じたことで日韓関係を早急に立て直す必要性にも迫られている。 朴大統領は日中韓首脳会談の流れのなかで、安倍総理との初の日韓首脳会談に応じることになるが、その前に急を要して解決しなければならない問題がある。日韓関係の最大のネックとなっている従軍慰安婦の問題である。 日韓は昨年4月から今年9月まで慰安婦問題などを話し合う局長級協議を9回行なってきたが、依然として隔たりが大きい。韓国国内では、6月11日に東京で行なわれた8度目の協議の翌日、朴大統領が『ワシントン・ポスト』とのインタビューで「韓日のあいだでそうとうな進展があった。交渉は最終段階にある」と発言したことで期待感が高まった。 韓国側の情報によれば、これまでの交渉で韓国は日本政府が法的責任を認め、安倍総理が謝罪し、謝罪の手紙を駐韓日本大使が慰安婦らに直接手渡し、慰労金を政府の予算から拠出させるよう求めているのに対して、日本は従軍慰安婦問題が最終的に解決、決着したことを韓国政府として担保する、解決した証しとして、日本大使館の前に設置されている慰安婦少女像や慰安婦の碑を撤去することなどを求めているとされている。 日本は慰労金を政府が拠出することは国家の関与、法的責任を認めることとして依然として難色を示しており、韓国もまた日本が提示した条件を「これでは、プラスアルファでなく、マイナスアルファだ」として反発していると伝えられている。 韓国メディアは、安倍総理の70年談話についてこぞって批判的だ。それは、記事の見出しを見れば一目瞭然だ。聯合通信は「安倍談話、村山・小泉談話より後退」、『ソウル新聞』は「既存の談話を引用、形式的に言及」、『韓国日報』は「真実味がない」、『朝鮮日報』は「反省、謝罪しない談話」、『韓国経済新聞』は「過去形の談話」といずれも手厳しい。慰安婦問題で安倍政権から善処を取り付けられなければ、朴政権はマスコミや野党から叩かれることになりかねない。 日本とは経済優先か、それとも過去の問題か、朴大統領はこれまた板挟みになっている。どうやら朴大統領を生かすも、殺すも、安倍総理の手中にあるのは間違いないようだ。北朝鮮がミサイル発射を予告 北朝鮮がミサイル発射を予告 北朝鮮のミサイル発射も朴政権にとっては頭痛の種だ。 北朝鮮が、10月10日の労働党創建70周年記念日に向けて長距離弾道ミサイル「テポドン」を発射しそうだ。北朝鮮の国家宇宙開発局長が9月15日、「世界は今後、労働党中央が決める時期と場所から、先軍朝鮮の衛星が大地を高く飛び立つのをはっきりと見るようになるだろう」と発射を予告したからだ。 失敗したものの2012年4月13日のミサイルも金日成主席生誕100周年(4月15日)に合わせて発射されているので、本誌が発売のころには発射されているかもしれない。 国際社会は、衛星であっても、弾道ミサイルの技術を使用していることから安保理の決議に反するとして容認しない立場だが、しかし、北朝鮮はこれまで1度も国連安保理決議を受け入れたためしがない。 土壇場でオバマ政権が打開案を出すか、あるいは中国の習主席が中国の主席として10年ぶりに訪朝し、党創建式典に花を添え、金正恩政権への支持を表明すれば、話は別だが、現状ではどれも絵に描いた餅である。まして韓国とのチキンレースで腰砕けとなり最高司令官としての面子を失い、権威を失墜した金第1書記としては失地回復の手段として、また抗日70周年式典で朴大統領がど真ん中なのに側近の崔竜海書記が隅の席に追いやられ晒し者にされるなど、冷遇された中国への当てつけとしてもミサイルのボタンを押すだろう。 北朝鮮がミサイルを発射すれば、国連安保理が招集され、制裁の強化が検討されることになる。そうなれば、朴大統領の成果であった10月20日から予定されている南北離散家族の再会事業も吹っ飛んでしまうだろう。仮に、北朝鮮が過去の事例に従い、国連の制裁決議に反発して四度目の核実験を示唆するようなことになれば、11月ごろまでに予定されている日中韓および日韓首脳会談は歴史認識どころの話ではなくなってくる。 北朝鮮がミサイル発射を示唆する前の9月10日、韓国の韓民求・国防相は、10月16日の米韓首脳会談では「現在のところTHAADの配備は議論されないものと理解している」と述べていたが、その前に北朝鮮が米本土を射程にする長距離ミサイルを発射すれば、米国からのプレッシャーが強まるのは避けられない。 ハリー・ハリス米太平洋司令官は米上院軍事委員会の公聴会に出席(9月17日)し、「THAADを韓国に配備することが重要だと考えている」と主張していた。仮に米韓首脳会談でオバマ大統領が持ち出さなかったとしても、11月上旬に予定されている米韓国防長官会談では議題となるのは確実だろう。 オバマ大統領の顔を立てれば、習主席が機嫌を損なうことになり、朴大統領の二股外交は大きな試練に立たされるだろう。ぴょん じんいる 1947年東京生まれ。明治学院大学文学部英文科卒業後、新聞記者を経て、フリージャーナリストへ。82年、朝鮮半島問題専門誌『コリア・レポート』創刊。朝鮮問題の第一人者として、テレビやラジオなどで評論活動を展開。主な著書に『大統領を殺す国 韓国』(角川oneテーマ21)などがある。  関連記事■ケント・ギルバート 韓国人こそ歴史を学べ!■ 日米vs中韓~歴史修正主義批判を問う■ 日韓基本条約50年目の真実~韓国に助け舟は出してはならない!■ 呉善花<緊急寄稿>さよなら、幻想の国・韓国■ [歴史に背く韓国]第二の安重根が生まれる日

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    世界文化遺産でまた煮え湯? 韓国と「国交断絶」の覚悟

    西尾幹二(評論家) 明治日本の産業革命遺産の世界文化遺産登録問題における韓国の驚くべき裏切りにより、改めて、かの民族がいかに信頼性のおけない民族であるかを、日本国民は広く認識した。 六月二十二日、韓国の尹炳世外相が日本を訪れ、岸田外相と会談したあと、尹外相は「両国が申請した遺産の登録に向けて一緒に協力していくことで意見が一致した」(朝日新聞六月二十二日付)と語った。 また、「韓国も百済の歴史遺産地区について世界遺産への登録を目指している。尹氏は『このような良い協力事例を通じて、今後、他の問題にも好循環ができるよう期待している』とも述べた」(同)。 こうした調整の合意は日本人に明るいニュースとして伝えられ、世界遺産登録へ向け、関係者もメディアも展望が開けたと見た。 この時、私は偶然にも拓殖大学教授の呉善花氏との共著『日韓悲劇の深層』(十月刊行)の出版のため彼女と対談を行っており、その席で呉氏は開口一番、「今度の合意はとんでもない日本側の譲歩です。必ず韓国の騙し打ちに遭います」と述べた。 六月二十九日付産経新聞「正論」欄において、筑波大学教授の古田博司氏もまた呉氏同様に、日本は韓国に必ず騙されると指摘し、次のように明確に予言している。〈「今回の世界遺産申請抱き合わせでもわかるように、韓国の自律行動は、ゴネ、イチャモン、タカリという至極低劣な『民族の最終独立兵器』によって全うされるのが常」「この点に関しての彼らの『恥』意識は存在しない」「むしろ今後、さまざまな要求を抱き合わせてくる可能性がある」〉 結果は二人の予言どおりとなった。 日本国民は、これまで北朝鮮には散々裏切られ続けてきた。北朝鮮による拉致被害者らの再調査が十年ぶりに開始されたのが昨年七月四日。この時、最高指導機関の国防委員会が直轄する国家安全保衛部幹部が再調査の指揮を執るとして外務省も日本政府も期待し、日本政府は北朝鮮への独自制裁の一部を解除した。 ところが、調査開始から一年が経過しても北朝鮮からは知らん顔をされ、「まだ調査の初期段階だから調査結果報告は遅れる」などと足元を見透かされた不誠実な対応を取られ続けている。にもかかわらず、「『政府は交渉窓口が閉ざされることを懸念し、制裁強化を判断するのはまだ早い』(官邸幹部)」(朝日新聞七月四日付)として今日に至っている。 このような北朝鮮の度重なる卑劣なやり口に対して、忍耐の限界を超えるほどの対応をさせられてきたわが国だが、南朝鮮すなわち韓国に対しては、日本と同じ議会制民主主義国家と見做し、共産主義独裁国家の北朝鮮や中国とは異なる対応をとり続けてきた。 しかし、今回の世界遺産登録を巡る韓国の裏切り行為を目の当たりにして、「結局、南朝鮮も北朝鮮と同じ朝鮮人に変わりはない」という呆れ返るほどの、もはや言葉のない絶望にも似た状況に立ち至った。国交断絶を望む強い声 土壇場になって合意を踏みにじった韓国は、強制労働を認めるべきだとして、委員会声明のなかに「force  labor」(強制労働)というナチスの強制収容所に用いられた、世界でもこの意味が通用する概念を盛り込むよう求めてきた。そのため協議に時間を取られ、登録決定が一日ずれ込んだのは周知のとおりだ。 結果は、日本が合意破棄を迫り、韓国の発言を修正させて「forced to work」との表現が採用された。「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録が決定し、スピーチする韓国の趙兌烈外務第2次官(手前から2人目)=2015年7月5日、ドイツ・ボン(共同) 数日後の報道で、六月の外相会談において、すでに委員会での声明を「forced to work」とすることが尹外相の提案で両国が合意していた内容であることが明らかとなった(産経新聞七月十一日付)。 岸田外相は、「働かせた」(forced to work)という表現は強制労働を意味するものではないと釈明している。しかし、欧米人は意思の自由を人格の自由の根幹と見做しており、「force」という単語が含まれている限り、形容詞的に使われようと動詞的に使われようと、労働者の自由意思を踏みにじった意味であることはなにびとも否定することはできない。すなわち、強制労働という意味に読まれることは避けられない。 それも六月の外相会談において、すでに「forced to work」で合意していたというのだから驚きだ。要するに外務省には、はじめから世界遺産登録の実現を優先させ、日本の国益と名誉を守るという必死の思い、「強制」という言質を取られまいとする気概に欠けていた。その決定には当然、官邸の意向も働いていたと考えるのが自然であり、官邸の責任も重大である。こんなことを初めから認めてしまっていたのは日本外交の取り返しのつかない大失態で、第二の河野談話、日本外交の大罪とも言える。 実はわが国の国内には、世界遺産登録の発表前から、この際、世界遺産登録が実現せず、日本人の韓国に対する意識が一段と厳しくなるほうが良いのではないか、といった意見さえ見られていた。 世界遺産登録阻止となれば韓国はお祭り騒ぎだろうが、その後の韓国経済危機、平昌オリンピック危機で日本政府を当てにすることはまったくできなくなり、金輪際一切の関係を断ち、国交断絶に近い状態にさえなることを望む強い声も日本国内にある。言葉にはしないが、そう思っている人は少なくないに違いない。 登録決定後も、日本外交の完全なる敗北であり、深い失望感を表す声が私の周りからも聞こえてくるし、インターネット上にはそうした書き込みが多数見られる。外務省は白痴の集団か外務省は白痴の集団か 菅官房長官は七月六日の記者会見で「強制労働を意味するものではないということをかねてより申し上げている」と語ったが、かねてより申し上げていても、その説明が世界では全くと言っていいほど理解されていない。よくよく考えなければならないのは、我々は国際社会のなかにあってこの問題に対応しているのであり、諸外国に「かねてより申し上げてきた」わけではないだろう。世界は今回、これをどう受けとめたか。「戦争犯罪である残虐行為が行われた場所が、日本の世界遺産となった」(CNN)「日本が強制労働の事実を認めたことで世界遺産に登録」(ガーディアン)「日本政府、世界遺産の遺跡での過去の強制労働を認める」(フォーブス)「軍艦島における戦時の強制労働の歴史を認めたことで世界遺産に登録」(ワシントンポスト) このような外電を見る限り、世界遺産登録などしないほうがよかったのではないかと後々まで言われかねない大きな傷跡を残したと言える。現に、安倍総理のツイッターやフェイスブックには「第二の慰安婦問題じゃないか」といった批判が殺到していると聞く。 案の定、韓国では「日本『韓国人の意に反して強制的に働かせた事実ある』」(中央日報七月六日付)など、日本政府が初めて公式に強制労働を認めたものとして大宣伝を始めるといった早くもお祭り騒ぎである。 古田博司氏は七月九日付産経新聞「正論」欄でこう予言する。「『強制性』さえあれば、不法だったと言い訳ができる。(中略)朝日新聞が『従軍慰安婦』の誤報を認めたことで『強制性』の大半は剥奪された。残るは『徴用工』で、韓国は必死に挑んでくることだろう」 そもそも徴用とは、戦争の目的遂行のために国民が参加協力するものであり、日本のみならず英米をはじめ世界の多くの国で戦時中に行われていたことである。これを戦後、強制労働だったなどと言い出して糾弾している国はどこにもない。「強制労働」などではなく、労働力不足を補うための民間人の労働協力であることは、国民も理解していた。 当時、中学生だった私の兄も、あの時代の学生は学力が遅れたとのちに言われたほど一日中、工場に駆り出されていた。女学生も、そして主婦までもが工場や農場などに総力戦のもとで動員された。そうした光景を、私は幼少時代の記憶としてはっきりと覚えている。 日本では昭和十四年に国民徴用令が制定され、朝鮮半島に適用されたのは五年後の昭和十九年だった。当時、朝鮮半島出身者は日本国民の立場にあったが、五年の時間差は日本側が遠慮していたせいだろう。昭和十九年は戦争末期であり、朝鮮人は日本国民の一人として同等の扱いを受け、規定の賃金も支払われていた。慰安婦(娼妓)と同様、朝鮮人がとくに不利に扱われていたという歴史的事実は一切ない。 こうした史実を今後、世界にどう発信し、理解を求めていくのか、「かねてより申し上げている」と繰り返しているだけでは、日本の名誉と国益がますます損なわれてしまうだろう。はたして、官邸も外務省もそうした対外情報戦略を行っているだろうか。 答えは否である。五百億円の予算をつぎ込んだ対外情報戦略が新たに打ち出された。ところが、「ジャパン・ハウス」なる対外発信拠点を作り、箱物の建設やアニメや日本食の宣伝活動──アニメや日本食は放っておいても広まる──という外務省の新計画は、白痴の集団かと思わざるを得ない絶望的な政策である。 この予算の一割でも対外情報宣伝や史実の翻訳作業に費やし、あるいはNHKが頼りにならないのであれば別の国際通信メディアを作り(一部で動き出していると聞く)、NHKの予算を縮小するなど具体的な手を相次いで講じるのでなければ、すべてが手遅れになりかねない。驚くほどの反日国家ドイツ 情報宣伝という面では、今回の世界遺産登録では日本には不運な事情があった。それは、会の開催地がドイツであったことである。 多くの日本人はドイツは親日的な国家だと思っているかもしれないが、私の知る限り、一般のドイツ人は日本の成果や成功に対して冷淡そのものである。英国放送協会(BBC)の国際放送「ワールド・ワイド」が二〇一四年に行った「日本に対する好感度」の世論調査の結果、「日本が嫌いだ」という国は、中国がダントツで九〇ポイント、次いで韓国が七九ポイント、ここまでは誰もが理解できるが、三番目が意外なことにドイツで四六ポイントとなっている。 なぜなのか、と強い疑問を覚える人も少なくないだろう。ドイツが日本を悪く報道する心理的根拠はどこにあるのか、本論ではその点を深く論ずるのが主題ではないため、ここでは箇条的に申し上げるに留める。 まず第一に、ナチス犯罪を歴史に抱えるドイツは自らの戦争犯罪を日本にも期待し、“犯罪の同伴者”でいてほしいという心理がある。ナチスによる“歴史の大罪”は、とてもドイツ人だけでは背負いきれない。日本にはホロコーストはないのでとんでもない言いがかり、誤認であるが、何としてでも日本も“戦争犯罪の同伴者”に繋ぎ止めておきたいという深層心理がある。 第二に、英仏以下の他の欧米諸国はアジアに向かって植民地を拡大してきた歴史をもっているのに対し、ドイツはそうした海外競争に立ち遅れていた。そのため、アジアのことをあまりよく知らない。その状態がいまだに続いている側面がある。 第三に、第一次世界大戦で日本はドイツの敵国となり、ドイツが唯一保有していた太平洋の利権である山東半島とマリアナ諸島を日本に奪われたことを恨みとしている。日独防共協定が締結されたあとにも、ヒトラーは蒋介石の国民党を支援していた史実からもその点は窺えよう。 第四に、一九八〇年代に経済大国の看板を日本に追い抜かれたこと。兄貴だと思っていたのに弟分にしてやられた口惜しさ。これが案外にも一番の理由かもしれない。 いずれにしてもドイツは驚くほどの反日国家であり、国民こぞってそうだということを、日本政府をはじめ外務省はきちんと認識していただろうか。その国の持つ深層心理にまで深く根差した外交政策をとらなければ、これまでどおり、日本は何度も騙されるだろう。ドイツと韓国の「共闘」ドイツと韓国の「共闘」 案の定、韓国はドイツの強い反日意識を巧みに利用した働きかけを行っていた。こうした宣伝戦においても日本は明らかに劣っていた。「世界遺産委員会の開催にあわせて韓国の市民団体が各国代表団の宿舎でもあったボン市内のホテルで日本が登録を目指す施設の写真とアウシュビッツの写真を同時に展示する写真展を開催し、さらに審議の二日前には『軍艦島とアウシュビッツは同質のものだ』とする主張を官民一体でドイツをはじめとする委員国の代表メンバーに展開」(日本政府関係者)「アウシュビッツを絶対悪とするドイツ出身のベーマー議長が韓国のネガティブ・キャンペーンを繰り返し聞かされるうちに、(中略)韓国寄りに舵を切ってしまったのです」(同)「登録の決議文には『世界遺産委員会は日本の発言に留意する』との脚注が加えられたが、(中略)ドイツのベーマー議長が韓国の意を汲んで加えるよう求めたものだという」(『週刊文春』七月十六日号) 韓国の思惑どおりに議事が進行していった背景には、反日国家ドイツの協力があった。そのことは日本にとって不運であったし、関係者にとっては迂闊であった。 付言すると、いま世界地図はアメリカ・日本vsドイツ・中国という構造が強まり始めている。やがてはエマニエル・トッドが言うように、「ドイツ帝国」が中国の軍事的・産業的な強化増大に寄与し、日本を窮地に陥らせる事態も予測される。 今回の世界遺産登録を巡るドイツと韓国の「共闘」は、その前哨戦のような不吉な出来事でもあった(中国と韓国は、同じ全体主義国家群として一括りにされる必然性がある)。韓国で日本人は奴隷階級 話を韓国に戻す。韓国はなぜ北朝鮮と変わらず平気で嘘をつくのか。彼らが日本人をどう見ているのか。今回の世界遺産登録における裏切り行動の根源がどこにあるのかを少し探ってみたい。 前駐韓特命全権大使の武藤正敏氏と産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏との対談(『正論』七月号)を拝読した際、かなり思い切った意見を駐韓大使もお持ちであることは理解できたが、韓国の閉ざされた精神性の歪み、宗教的習俗の奥まで見通せているかというと、残念ながらその認識には達していないように感じた。 韓国では儒教朱子学を国教とした李朝以後において、両班、中人、常民、賤民の四階級があるなかで、日本人は最低の賤民階級以下の奴隷階級であると、我々からすれば筆にするのもばかばかしい位置づけがなされている。 と同時に、韓国では日本民族のルーツは朝鮮半島にあるというトンデモ古代史がある。天孫降臨神話はニニギノミコトが天上から地上に降りて来た神話だが、そのときに降り立った地は、これまで宮崎県の日向と想定されてきたがそうではなく、南朝鮮からの渡来人が北九州に降り立った、これが日本の皇室の祖先に繋がるという説である。 こうした話が韓国では広く認識され、まことしやかな関連本がたくさん出ているし、シンポジウムや研究会議も開かれていると聞く。 たしかにわが国は五世紀頃に半島との交流が盛んになり、渡来人が技術や文字を日本に伝えたことは一応、歴史上の事実として知られてはいる。そのため韓国は、儒教も仏教も漢字も野蛮な日本人に教えてやったと自慢げに語り、あらゆる歴史教科書はここを過度に強調する。ところがその典拠は、実は『日本書紀』なのである。朝鮮の最古の史書『三国史記』はやっと十二世紀であり、朝鮮にはこれを補完する古代の複数の関連史書がないのだ。そのため、トンデモ古代史はあとを絶たない。「集団狂気」の国「集団狂気」の国 六六三年の白村江の戦いなどで百済が滅亡し、王族や貴族たちも含め一千人規模の日本への亡命者がいたとされている。当時の日本の推定人口は五百万~六百万人である。これらの事実から韓国の歴史学者は、日本人の主体は朝鮮半島で生きられなくなって日本に渡った敗残の韓民族だというのである。 滅亡した王朝の王侯貴族だけでなく食いっぱぐれの流民たち、罪人・貧困者・浮浪者たちが日本人を構成した。祖国では生きられない恨みとコンプレックスを抱いた韓民族の子孫が日本人の本体である。 だからこそ、その後の歴史で、恨みを晴らすために秀吉の侵略、日帝三十六年の植民地化、現代の差別化など反韓的な振る舞いに及ぶのであろう、などという。 つまり日本人とは、彼ら韓国の学者たちによれば、在日韓国・朝鮮人のなれの果てなのである。しかも半島では立場を得られなかった敗残者で、それゆえに当然ながら、日本人は四つの階級のさらに下の階級に属するとみなされてしかるべきだ、と考えられるのである。 そのため、いまでも韓国では日本人を「倭奴」ないし「犬」と称しているし、これからもずっとそう呼び続けるだろう。「犬」である日本人との合意や約束など、端から守る気がないということなのだ。 加えて韓国では第二次世界大戦後、伝統となっていた漢字漢文の表記法をやめてしまい、反日からオールハングルに切り替えた。それでいてハングルの背後にある漢字語に縛られ、同音異義語を理解できず、文章の単純化を招き、そのため抽象的思考ができずに知性の衰弱に襲われ、頭が硬直化している。自国の歴史を読むことすらできないので物事を深く考えることもできず、嘘も平気でつき、それを恥とも思わない。 こうした「集団狂気」の韓国を相手に、日本人が彼らに謝罪をすればやり過ごせると思うのは実に愚かである。たとえいくら謝罪しても、いくら賠償金を払っても、絶対に終わりがないからだ。 言い換えればこのことは、日本人が過去に行った行為で彼らが反日意識を持っていると考えるのは全くの間違いだということである。彼らの反日感情は、ただひたすら日本人が儒教朱子学の序列秩序に黙って従うこと、すなわち頭を下げ続けること、そして屈服し続けることを要求する情念に発している。日本の過去の行為の内容いかんに発していない。 したがって、今回の徴用工の問題でも何が何でも日本をやっつける、つまり「強制労働」に対する謝罪を要求してくることは十分に予想がついたはずである。それが韓国の民族の行動パターンなのだ。それに気づかず、またしてもまんまと騙しの罠に嵌るのは、単に不器用というだけでは済まない。日本政府の、事に臨むにあたっての冷徹な洞察力の欠如や、世界遺産登録なんかしなくてもいいから国民の名誉を守ってほしいという、日本人の心の奥にある祈りのような気持ちが分かっていない認識の不足にあるといえよう。 六月二十二日放送のBSフジ「プライムニュース」で、自民党衆議院議員の逢沢一郎氏が「アジア女性基金から支払われた金銭の受け取りを、挺対協の介入もあって韓国側は拒否したではないか」と津田塾大学准教授の朴正鎮氏に質した。 その時、朴氏は「お金は問題じゃないんだ」と述べた。すると逢沢氏はハッとした顔をして、「またそんなことを言うのですか。いつもそういうことを言う。それならどうすればいいのですか?」と訊いた。それに対して朴氏は言い淀み、黙っていた。 そのやり取りをテレビで見ていた私は、韓国は合理的とか現実的な解決など一切求めておらず、ひたすら精神的なことだけを求めていると感じた。精神的なこととは要するに、日本が地べたに頭を擦り付けて謝り続けることである。韓国が求めていることはその一点なのだ。それが根幹にあって、その証拠に、遂には李明博前大統領が天皇にまで土下座を要求したではないか。 かの国に賠償がどうの、謝罪がどうのというのは一切無意味なのだ。もはや韓国人は、根本的な精神構造の異常さからくる対応困難な人種と見るほかないのである。「対韓思想政策」を練り直せ かつて私は韓国の総合月刊誌『月刊朝鮮』の編集長・趙甲済氏と、誌上で論争をした経験がある。趙氏は日本でも知られた韓国の代表的な知識人であり、産経新聞コラム「正論」のメンバーを務めた親日家である。その時の彼の発言の一部を紹介する。「古代国家日本を作った主役集団は、韓半島を経て渡っていった北方遊牧民族出身の騎馬戦士だと私は考えます」「古代の日本の執権層が渡来人だったと私は確信します。米国大陸を開拓した主役が英国から集団で渡っていった人々だったのと同じことではないですか」「米国は英国渡来人が作った国ですが、英国よりもより先進的な文明を作りました。日本もそのようなケースではないかと考えます……」「数日前ソウルに来ていた崔書勉(前東京韓国研究院院長)氏に会いました。崔氏は『なぜ韓国人は天皇の訪韓に反対するのか分からない』と語りました。『天皇が告白したように天皇家こそがもっとも成功した在日同胞ではないか。成功してワールドカップに合わせて故郷を訪問したいというのに、なぜじゃまするのかということだ。歓迎しなければ』 ひとしきり笑い終えると韓日関係が新しい次元で見えるのでした」(『現代コリア』二〇〇二年四月号) 韓国の親日的な代表的知識人がなお根強く、このようなレベルの妄想に囚われているということこそ、私たちがよくよく理解し、認識し、そのうえで対策を立てなければならないことを示す。小手先の対応や善意では日本外交は行き詰まり、国際社会の悪意の坩堝に巻き込まれる恐れがある。よほど腹を据えてかからなければならない。はたして日本政府は、韓国に対する国民の激しい怒りや苛立ちに気づいているだろうか。 もう韓国を拒絶せざるを得ない、もうここから先は相手にすべきではない、本来なら国交断絶というところまで来ているのだという認識をしっかり持ったうえでの外交をしていくためには、用心深い心構えと冷徹な準備が求められる。 そのためには、韓国の思想の根源や深層心理を、朝鮮半島全体を俯瞰して捉え直す必要がある。日本政府は抜本的な「対韓意識政策」あるいは「対韓思想政策」を練り直すことが急務として求められている。   

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    安倍首相 気緩めれば世界中に中国新幹線走り全米に慰安婦像

    、安倍首相は9月26日から訪米し、国連総会で各国首脳との立ち話外交を展開した。その中で、自ら朴槿恵・韓国大統領に近寄り、9月初めの朴大統領と習近平・中国国家主席の首脳会談について、「会談の成功をお祝いします」と祝辞を述べた。 この中韓首脳会談は朴大統領が中国の「抗日戦争勝利記念式典」(9月3日)に出席するため訪中した際に行なわれた。しかも、現地で朴大統領は「歴史は永遠に残るものなので、それを認めないのは手のひらで空を隠すのと変わらない」と安倍批判を展開していたからだ。日本バッシングで一致した中韓首脳会談を「お祝い」するのは奇異に映る。 これまでの安倍首相は、「中国や韓国に下手には出ない」という強い外交姿勢を取ってきたことを考えると、これでは“安倍首相らしくない”弱腰であり、こうした点から「燃え尽き症候群」ではないか、との声が出ているのだ。このままでは韓国や中国からも押されまくられることになる。 安倍首相が訪米する直前の9月22日には、サンフランシスコ市議会が「慰安婦記念碑」を建立する決議を可決した。記念碑をめぐっては、韓国側と日本政府が互いにロビー活動を展開したものの、全会一致で可決されて日本は惨敗、市内の公園や広場に記念碑が建てられることになった。韓国側は米国全土での慰安婦像・記念碑建設を戦略的に進めている。米サンフランシスコ市議会で従軍慰安婦の碑建設を促す決議採択を喜ぶ中国や韓国系の住民ら=2015年9月22日(共同) 日本政府がインフラ輸出をテコに進める中国包囲網も次々に食い破られそうだ。ベトナム新幹線の凍結に続いてインドネシアでも計画が撤回、今後、マレー半島新幹線計画やインド新幹線計画でも「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)の資金力を武器にする中国に巻き返される可能性が高い。 安倍首相が安保法制で「日米同盟が強化された」と気を緩めれば中韓にいいようにやられて、世界中に中国製新幹線が走り、米国全土に慰安婦像が立てられるのは時間の問題だろう。関連記事■ 安倍首相 オバマ氏会談後「遠くから来たのに冷たい」と愚痴■ 安倍首相側近 韓国と首脳会談しても国益上さほど得はしない■ 米に促された岸田外相の韓国外相への平身低頭握手は屈辱的敗北■ 安倍首相 オバマ氏に米中会談の話聞くどころか会うのやっと■ 靖国参拝しなかった安倍首相 中国との関係修復に腐心との評

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    賭けに出る韓国  北朝鮮包囲か米韓関係か

    0日付ウォールストリート・ジャーナル紙掲載の論説にて、中韓の緊密化は中国の対北朝鮮政策を変えるために韓国が取った手だと考えることもできる、と述べています。 すなわち、28日の国連演説で朴槿恵大統領は、北朝鮮の核開発に国際社会が注意を払うよう訴えた。世界第4位の軍隊の7割が南方に前方展開しているほか、北は世界最大の特殊部隊を保有している。近々打ちあげるとしている衛星ミサイルに核、化学兵器を装着すれば韓国にとり大きな脅威になる。対日政策ではなかった中韓緊密化 このような状況で中韓関係は緊密化している。多くの者が中韓接近は両国共通の反日姿勢の結果であり、中国による日韓離反策であると考えている。そういうことかもしれないが、南北関係に注目すると、韓国が半島での特異な機会を見出し中国に手を打っていると説明することもできる。 北朝鮮支持をやめるほどではないが、中朝の外交乖離は明らかだ。昨年習近平は北朝鮮ではなく韓国を訪問し、金正恩とは未だ会っていないのに朴槿恵とは6回も会談している。先の抗日戦勝利式典で朴槿恵は主要な招客だった。 中国は、北朝鮮の挑発的な行動が海軍のプレゼンスやミサイル防衛の強化等当該地域での米の役割拡大に繋がることを恐れている。そこに韓国は機会を見出している。長年、中国の北朝鮮支持政策に悩まされてきた韓国は、統一に関する韓国の考えに中国を同調させ、北の非核化への中国の支持を獲得したいと考えている。それが可能かどうかはわからない。韓国の対中接近は具体的な成果よりも希望に基づいたものだ。日本が歴史に対して充分に誠実でないとの共通の認識もあり、韓国は米の同盟国にしてはあり得ない程好意的に中国を捉えている。iStockより しかし、中韓関係の緊密化は対米関係を複雑にする。韓国関係者は厳しくなっている米中関係の中で動かねばならないことを充分理解しているが、中国の姿勢を変えることができるかどうかを試す「外交空間」が欲しいとしている。これは地勢学上の連携の変更や対米同盟からの離反を意味するものではなく、もっと狭義の外交努力だと韓国はいう。しかし、この均衡外交はトリッキーだ。既に問題が起きている。米国はTHAADミサイル防衛システムの韓国配備を求めているが、中国がこれに反対、韓国は未だ配備を受け入れていない。中国が対北政策を具体的に変更することを条件に、米国は韓国にこの外交空間を認めるかもしれない。北朝鮮の衛星発射に対する安保理での中国の対応が、韓国の賭けが功を奏しているかどうかの判断材料になる、と述べています。出典:Richard Fontaine,‘Seoul’s China Gambit’(Wall Street Journal, September 30, 2015)http://www.wsj.com/articles/seouls-china-gambit-1443627076*   *   * この記事は、韓国の対中接近につき懸念が強まるワシントンの中で、それを敢えて前向きに見てみようとしているようです。しかし、韓国の「賭け」が中国の変化をもたらすかどうかはわからない、対中接近は具体的な成果よりも希望に基づいたものだ、と冷めた見方もしています。戦術的にはともかく、中国が統一と対北政策につき戦略的に変わることは、少なくとも近い将来は考えられません。対北朝鮮戦略を見誤るな 粘り強い交渉を 韓国の対中接近外交は重要なリスクを孕んでいます。韓国は、経済の重要性の他、南北統一に当たって中国の支持を確保したいと考えています。同時に、対中接近は中国の対外関係の中で北朝鮮を出来るだけ「疎外化」することを目的にしています。更に、対中接近については中国が仕掛けている面があります。日米韓の協力体制に楔を打ちたいという中国の基本戦略があります。既にTHAADの問題に見られるように中国の戦略は功を奏しています。韓国にとってバランサー外交は、米中や日中の間にあって永遠に魅力ある外交オプションなのでしょうが、日米韓協力体制の利益を得ながらそれを追求することは、そもそも機能するものではありません。韓国には戦略的選択が求められています。 朴槿恵は南北関係に大きな関心を持っています。2002年に訪朝し金正日とも会談、2011年には米外交誌に南北信頼外交の論文を書き、2014年1月には南北統一は「大博(テバク)」だと打ちあげ、同年3月にはドイツのドレスデンで対北政策を打ち出しました。南北問題はうまくいけば政権支持率を高めることにもなります。朴槿恵は硬軟両様の対北政策をとってきましたが、北は強く反発、未だ具体的成果は出ていません。抗日戦勝式典出席の際、習近平と統一問題につき有益な協議をしたと韓国政府は「自画自賛」していますが、韓国のメディアや識者の間からも、米日との関係の手当てが先決だとか、韓国が果たして中国と南北統一を語る段階にあるのか分からない、北朝鮮の核問題を先に解決するべきではないか、といった批判が出ています。 韓国が今やるべきことは、中国ではなく、北に対して辛抱強く交流を深め、それにより北の内政に影響を与えていくことではないでしょうか。予想以上の速さで達成された東西ドイツ統一は、往来の積み重ね、ソ連の弱体化、ゴルバチョフの新思考外交などの素地があって可能となりました。 統一問題については日本も良く思考しておくことが大事です。それは同盟帰属を含む北東アジアの安全保障に大きな影響を与えます。日米協議が重要であり、日米韓で話し合うことも試みるべきでしょう。

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    韓国にとって日本はどういう国なのか

    久保田るり子(産経新聞編集局編集委員) 韓国にとって日本はどういう存在なのか。10年前、小泉純一郎首相の靖国参拝に反発した盧武鉉政権が「新対日ドクトリン」という物々しい外交原則を発表したことがあるが、そこにはこうある。「日韓関係は日本の謝罪と反省が基礎である」 韓国は憲法の前文で「悠久の歴史と伝統に輝くわが大韓国民は、3・1独立運動(1919年、朝鮮全土で人々が決起し運動家が独立を宣言)により建設された大韓民国臨時政府の法統を継承する」と明記している。この一文には、日本統治を歴史から抹殺したいという想いが詰まっている。少なくとも日本時代は日本に不法、違法に占拠されていたのであって、『我々はこれを認めない!』とする立場が示されている。「臨時政府」(1919-45年)は、李承晩や呂運亨ら独立活動家によって上海(のちに重慶)に設立された。だが連合国、枢軸国の双方から認められず、米軍に解体された。しかし韓国は、いまも「幻の政府」の正統性を国史の根幹としている。世界史的からみると、虚構を生きていることになる。 だから、日本統治は「不法」で当時を「日帝強占期」と呼ぶ。力によって強制的に占領されたと位置付ける歴史観のみが韓国にとって「正しい歴史認識」なのである。だから、日本にはいつまでも、何度でも謝ってもらわなくてはならないのだ。朴槿恵大統領の「加害者と被害者の立場は1000年過ぎても変わらない」という言葉の真意である。 しかし、日韓併合の合法・不法論争は、実はとっくに学術的な決着がついている。 不法論を国際認知させようと考えた韓国は、2001年に「韓国併合再検討国際会議」という国際会議を主催した。日韓のほか欧米からも歴史学者らが参加しハワイ、東京、ワシントンで開かれた会議で、韓国側は併合の不法性を全面展開した。 彼らが特に根拠としたのが「第二次日韓協約」(1905年)での強制性で、不法な強制(脅迫)により外交権を奪っての日韓併合は「不法であり無効」との持論を主張した。しかし日本側は皇帝(高宗)の日記などを分析して高宗が協約に賛成していたことを実証した。また英国の学者などから、当時、米英など列強が日韓併合を認めた以上「違法・無効論」は成り立たないとの見解が相次いで、韓国はこれに反論はできず論争には終止符が打たれた。 これで怯む韓国ではない。その後、今度は「反省と謝罪」の要求の矛先を日韓基本条約(1965年)に変え、これにチャレンジ(挑戦)を開始した。キーワードは「人権」である。女性の人権(慰安婦問題)、個人の賠償権(徴用工問題)である。6月22日、ソウルの日本大使館前で抗議行動をする徴用工の遺族ら(共同) 盧武鉉政権が慰安婦問題で「(基本条約の)請求権協定で解決したとみることはできず、日本の法的責任は残っている」との初めての政府見解を出した。その後、慰安婦問題は2011年、憲法裁判所が「慰安婦が(日本から)賠償請求を得られるように(韓国)政府が行動しないのは憲法違反」との賠償請求権判決を出した。徴用工問題でも、韓国大法院(最高裁に相当)が2012年、「個人の請求権は消滅していない」と判断し、これに依拠して日本企業がいまも続々と訴えられている。 併合不法論も請求権の蒸し返しも、国家のアイデンティティーとは別に、もうひとつの政治性を帯びている。つまり併合したのは現在の韓国だけではなく、北方の北朝鮮があり、未来の日朝国交正常化交渉の重要なテーマとなるからだ。韓国の併合不法論者や慰安婦・徴用工支援勢力の核心部には親北派が見え隠れしている。 もちろん韓国では、「安倍談話は村山談話、小泉談話から一歩も後退してはならない」「日本は植民地侵略や慰安婦動員に対する責任を認める謝罪を」とする声は保守、進歩を問わずにあるから、「過去」をめぐる日韓論争のなかに北朝鮮勢力の思惑を見極めるのには、それなりの眼力がいる。『和解のためにはまず侵略を認め、植民地支配に反省と謝罪を』とする日本の贖罪派の、何と平和で情緒的であることか。

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    韓国軍不祥事、今も韓国を支配する法より大義の儒教モラル

    高月靖(ノンフィクションライター) 韓国に深い傷跡を残した2014年4月のセウォル号沈没事故。この痛ましい惨事はまた韓国社会に巣食うさまざまな病弊を炙り出した。その1つが韓国軍の不正問題。きっかけは海難事故の救助を目的に約170億円を投じた韓国海軍の最新鋭救難艦「統営」が、全く役に立たなかったことだ。 2010年の韓国哨戒艇沈没事件を機に建造された「統営」は、水中探索機や最新鋭ソナーなどのハイテク救助装備が目玉。本来なら2013年に実戦配備され、翌年のセウォル号事故でも出動できたはずだった。だが2012年の進水後、装備品の欠陥が次々に発覚。そのせいでドックに塩漬けされ、出航すらできない有り様だった。 軍の装備を納入する企業に天下りした軍幹部OBが手抜きと横領で私腹を肥やし、生死のかかった現場の装備は欠陥品だらけ――。セウォル号と「統営」の問題を受けて2014年11月に発足した合同捜査団が明らかにしたのは、韓国軍のこんな実態だ。 軍の深刻な不正は社会を驚かせたが、いっぽうで「またか」というおなじみの既視感も拭えない。例えば朝鮮戦争のさなかだった1951年には、国民防衛軍事件が起こった。10年に一度の大寒波のなかを約50万の韓国兵が徒歩で行軍した際、軍幹部が食糧や装備品の予算を横領して飢餓などの大惨事を招いた事件だ。死者の数は9万人に上るともいわれる。 こうした不正の原風景は、朝鮮王朝時代末期の19世紀中頃まで遡ることも可能だ。地方の兵器庫に納められているはずの武器、武具を地方官僚たちがごっそり売り払っていたことが、フランス人宣教師の詳細な報告に記されている。 もちろん不正腐敗は日本をはじめ全ての社会にあるし、個々の事例を思い込みで結びつけるのも早計だ。ただあくまで1つのヒントとして、こうしたもろもろの既視感を手っ取り早く消化してしまえるキーワードがある。それが「儒教」だ。伝統的な儒教様式で行われた「国際花と緑の博覧会」韓国庭園の起工式=1989年10月26日、大阪・鶴見緑地 韓国の儒教といえば「女性軽視」「敬老精神」「冠婚葬祭」「男児選好」など、目に見えやすい伝統文化がよく話題にされる。またその弊害の解消を通じて「現代韓国は儒教社会から脱皮しつつある」というのも定説だ。だが500年にわたって人々を支配した伝統的思考は、彼ら自身も意識しない不可視の領域にいまも根を張っている。 明との君臣関係の上に成立した朝鮮王朝は、儒教を統治理念に据えた。その中核思想となったのは、大義名分を重視する朱子学。これに基づいて身分、年齢、性別、家族の続柄などが、全て垂直の上下関係に位置づけられた。そしてこの序列を人が生きる倫理、モラルの絶対的な根源とし、貴族から庶民まであらゆる階層が徹底的に教化されていく。 やがて朝鮮王朝の朱子学は17世紀以降、形式的な「礼学」の追究に終始して発展が停滞。また儒教の序列と相容れない西洋文明は忌避され、科学技術の進歩も道が閉ざされる。こうして儒教理念一辺倒のまま硬直化した朝鮮は、官僚、貴族たちの凄まじい不正腐敗で荒廃していった。彼ら支配層の意識にあったのは、垂直の序列に沿って上昇することだけ。地方官僚も中央政府への登庁しか視野になく、後先を顧みない収奪に明け暮れた。他人の生死を顧みず蓄財に奔走する軍幹部OBも、同じ構図に違和感なくオーバーラップする。 誰もがひたすら中央を目指す垂直型の上昇志向は、学歴偏重と受験戦争を生み出す原動力でもある。科挙試験で地方貴族が中央に任官された時代は20世紀初頭に終わったが、上昇志向の構造はいまも同じだ。その後の日本統治と朝鮮戦争を経て間もない1960年代、韓国では早くも受験戦争の過熱が社会問題化している。1969年に中学受験を廃止、1974年に全ての高校の学力を平準化するなど、対策の歩みは半世紀に及んだ。生き方、働き方の多様化も模索が重ねられているが、受験戦争は相変わらずだ。学習塾などの「私教育」費は家計を圧迫し、個人債務の膨張や少子化の要因にまでなっている。 厳しい上下の序列は、もちろん職場での人間関係も同様だ。一般論としてよく言われることだが、上司へのつけ届けなど派閥内で上昇するための気配りは日本企業の比ではない。また韓国に特徴的な企業文化として、縁故を重視する「情誼主義」も儒教社会の名残りだ。血縁、地縁、さらに学縁といった単位で集団の序列が束ねられ、縁故者に便宜を図ることを美徳とする風潮さえ伺わせる。そして血縁の序列に基づく繁栄の継承という儒教の一大テーマが、創業者一族による所有と父から子への権力継承という財閥のアウトラインを形作っている。 こうした序列を高みから俯瞰すると、見えてくるのが中華思想だ。地理的な位置関係が儒教倫理の優劣に置き換えられ、中華により近い朝鮮が辺境より道徳的に優れているという世界観を導き出す。したがって領土問題を巡る対日批判も、「倫理的に誤った状況を正さなくてはいけない」といったモラル上の使命感をしばしば漂わせる。 そのほか法律より国民感情を優先する「国民情緒法」といった概念も、儒教をふまえれば理解が容易だ。朝鮮の儒教社会において人が作る制度は、理念や倫理の下位に置かれる低次元なツールにすぎない。つまり倫理的な正統性があれば、法律など後から改変しても構わないという思考が成り立つわけだ。このように大義名分を主張することで規定のルールや約束を乗り越えようとする姿は、K-POPや韓流スターの契約騒動にさえ見受けることができる。 もちろん韓国人の思考を形作る要素は「儒教」だけではない。地理的・歴史的環境、南北のミリタリズム、また国際社会のスタンダードな価値観までが無数に絡まり合っている。だがそれらを単一の切り口で分かりやすく抜き出すキーワードとしては、まだ有効といえるだろう。

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    これぞ田舎民族主義…元毎日新聞ソウル支局長が見た韓国の歴史博物館

    ウルに出かけた。最近の僕のフィールドである「歴史ルポルタージュ」取材のためだ。1週間の滞在中、多くの韓国人に会ってインタビュー取材をしながら、韓国史に関連する6カ所の「博物館」も参観した。予想以上に惨々たる展示内容だったが、植民地時代の展示をめぐって進展している内容も見られた。しかし、総じて言えば「田舎民族主義の展示場」と言うしかない。どうしてこういうことになったか。日本側が警戒しなければならないことは何か。毎日新聞元ソウル特派員(1989~1994)の体験も踏まえて報告したい。孝昌公園(龍山区) ここにはソウルの「歴史博物館」として、代表的な「金九記念館」がある。金大中政権時代に出来た。2階建ての立派な建物だ。金九(1876~1949)は、「大韓民国臨時政府」時代からの独立運動家だ。テロリスト集団「韓人愛国団」の親玉でもある。僕がこの記念館に来たのは2度目だ。今回は、日韓間でさらに問題になりそうな「大韓民国臨時政府」に関連する展示内容を再確認するために来た。先日、パク・クネ韓国大統領が中国の「抗日勝利70周年軍事パレード」に参加した際、上海の「臨時政府庁舎跡」を訪れたのは記憶に新しい。 韓国が憲法前文に、この「臨時政府をルーツにすると記述するのは、1987年(昭和62年)の改正からである」(荒木和博「海外事情」2015年5月号)。それまでは「3・1運動」(1919年)と「4・19民主化革命」(1960年)しか書いてなかった。この憲法前文が日本で注目されたのは、2012年5月24日の大法院(最高裁に相当)判決が、以下のような判断を下したからである。 <憲法前文で「3・1運動によって建立された大韓民国臨時政府の法統」を「継承」しているとうたっている以上、1919年に起きた「3・1運動」が抗った「日帝強占」は、そもそも不当かつ不法であり、それ以降の国家総動員や戦時徴用も当然、「日本の国家権力が関与した反人道的不法行為」、あるいは「植民地支配と直結する不法行為」となる。つまり、問題は「戦時」徴用ではなく、それ以前からの「日帝強占」そのものにあるというのである。(浅羽祐樹「SYNODOS」2013・8・27)> このような韓国側の主張の根拠となるような展示が、この記念館で行なわれているのだが、日本人にとっての観覧ポイントは、臨時政府側すなわち韓国独立軍が一戦も日本軍と戦火を交えずに、1945年8月15日の「終戦」を迎えたことを示す地図が掲示されている点だ。「韓国が戦勝国になれなかった」という対日コンプレックスの根源にある歴史的事実が、ここで確認できる。「李奉昌(イ・ボンチャン)義士」の銅像(撮影:下川正晴) 記念館の外にある「李奉昌(イ・ボンチャン)義士」の銅像(写真)にも注目したい。 この人物は、1932年1月8日、東京・桜田門の警視庁前で、昭和天皇の車列に手榴弾を投げつけた。幸い、手榴弾は車列の前方に落ち、昭和天皇は難を逃れたが、随員1人が負傷した。李奉昌は金九の秘密組織「韓人愛国団」のテロリスト第1号である。 この銅像のデザインがものすごい。写真のように、まさに爆弾を投げつけようという姿だ。僕はこれを初めて見た。心底驚いた。現代韓国人は、これがいかに「国際的に無礼な銅像」であるのか、分からないのだ。駐韓日本大使館も気づかないまま「放置」してきたのだろうか。 この銅像は1995年11月6日に建てられた。「建立文」に、以下のような記述がある。 「国が日帝によって強占された時、祖国の光復のために身を投じた李奉昌義士の気高い民族魂と独立精神は、民族の胸に永遠に燃え盛っている。義士は元凶である日王・裕仁を爆殺除去することが、まさに日帝の侵略と蛮行を全世界に告発し、独立を招来する道だと信じて上海に渡り、金九先生に挙事を願い出て、許諾を得た。1932年1月8日、東京で観兵式を終えて戻る裕仁に爆弾を投ずるも、命を奪うことはできず、現場で逮捕され同年10月10日、市ヶ谷刑務所で絞首刑になり、32歳で殉国した。義士の偉大な愛国思想と独立精神を讃え、光復50周年と義挙63年を迎え、このに銅像を建立する」 昭和天皇(1989年死去)の名前を碑文に明記した上で、こんな途方もないデザインの銅像を、1995年になって建てる韓国側の無神経さ、その国際的意味はきわめて重大だ。 「建立文」には「東亜日報社」後援とある。「韓国の新聞はこんな下劣な国威発揚までやるのか」と、元同業者の僕は思った。これとは別に「銅像建立に意を集めた方」との碑文もあり、ここには「李奉昌義士義挙ならびに殉国60周年記念事業推進委員会会長」として、朴泰俊氏(元国会議員)の名前がある。これも看過できない。朴氏(2011年死去)は、浦項製鉄の創業者であり、第32代首相も務めた知日派だ。「鉄鋼王」「日韓政財界の架け橋」と呼ばれた韓国保守政界の重鎮である。日韓の「知られざる歴史」がここに脈々と波打っていることに、私たちは気がつくべきだ。尹奉吉記念館(瑞草区) 地下鉄「江南」駅から新盆唐線に乗り、次の「良才市民の森」駅で降りて、徒歩5分の場所にある。孝昌公園に高齢者が多いのと対照的に、この記念館は歴史学習のために、教師から引率されて来た中学生の姿が目立った。 「金九記念館」と同様に2階建てだが、建築はこちらが1989年と早い。ソウル五輪の翌年であることに注目したい。五輪を契機に韓国ナショナリズムが高揚した。その風潮の中で建立されたのである。韓国独立後、李承晩大統領と対立した左派の政治家である金九の記念館が、金大中政権時になって建てられたことと比較すると、尹奉吉は包括的な「国民の歴史」の中で、不動の「義士」として称揚されていることが分かる。全身に24個の弾片を浴びて死亡した白川(義則)大将 尹奉吉(ユン・ボンギル)とは何者か。1932年4月29日に上海で起きた「上海天長節爆弾事件」の犯人だ。金九の「韓人愛国団」のテロリスト第2号である。この記念館の展示も、外国人の目から見るとやり過ぎだ。1階右部屋の展示が特にひどい。 爆弾攻撃を受けて死傷した日本人の写真が、これでもかという具合に、個人別に展示されているのだ。ハングルの展示説明通りに日本語訳すると、「全身に24個の弾片を浴びて死亡した白川(義則)大将」(写真)。「片目を失明した野村(吉三郎)中将」「片方の脚を切断した植田(謙吉)中将」「重傷を負って、病院に運ばれる村井(倉松)総領事」「片足を切断した重光(葵)公使」といったありさまだ。 この「上海天長節爆弾事件」では、日本人民間人の死傷者も出た。上海日本人居留民団会長の河端貞次氏(医師)が死亡し、同書記長の友野盛氏が重傷を負った。ところが彼らの写真は展示されていない。 80年以上も昔の「テロの戦果」をいちいち写真で誇示する一方、民間人の死傷は巧妙に隠蔽されているのである。まったく無神経で、国際感覚に欠ける展示だ。これを見せられて愛国教育を受ける韓国の中学生たちは、どういう人間に育つのか。独立国家のアイデンティティを確立することと、隣国への敵愾心と復讐心を植え付けることとは、雲泥の差がある。月とスッポンだ。これでは「夜郎自大の自滅の道」を歩むしかない。元ソウル特派員の僕はそう思った。 翌日、僕は知人の韓国人歴史学者に会った。彼にiPhoneで撮影した尹奉吉記念館の展示写真を示した。「これ見てよ。どう思いますか」。僕の質問に彼は「こんな展示をしてるんですか」と驚いたように言った。数年前まで国策歴史機関のトップにいた人物だ。彼の現役時代の行動に僕はかなり批判的だが、その彼ですら知らない所で「田舎民族主義の愛国教育」が行なわれている実態がある。 爆弾事件が起きた上海.虹口公園(現在の魯迅公園)には、中韓国交樹立後、石碑と資料館「梅軒」が建てられたことも付記しておきたい。梅軒とは、尹奉吉の号である。小沢一郎氏の「贖罪史観」小沢一郎氏の「贖罪史観」金九の墓(撮影:下川正晴) ホテルに戻ってネット検索していたら、日本の野党政治家・小沢一郎氏が1999年4月18日、ソウルの孝昌公園を訪れ、金九の墓(写真)と李奉昌ら「韓国3義士」の墓に参拝していることが分かった。当時の「東亜日報」がそう書いている。「東亜日報」は先述したように、昭和天皇に向かって手榴弾を投げる李の銅像建立を後援した新聞社だ。 この記事によると、小沢氏は訪韓に先立って産経新聞とのインタビューで、「韓国人に心を開くことできる行動をまず日本人がとろう」と述べたそうだ。上記のような歴史的事実、銅像、その建立経過などを十分に事前調査したのだろうか。中途半端な「贖罪意識」が一番悪い、日韓関係を悪くする、と僕は思う。韓国は急激な経済成長に国民意識の発達がついて行けず、「夜郎自大化」しているのだから、なおさら始末が悪い。 「尹奉吉記念館」には、爆弾事件で重傷を負った村井総領事の遺族が寄贈した「事件当時の眼鏡」が展示してあった。遺族としては「友好第一」の気持ちなのだろうが、展示品を見た感じでは、韓国側は「戦利品の展示」という印象でしかなかった。島国日本には、国際感覚に欠けるところがある。自分の意志を素直に受け取ってもらえるという甘えがある。気をつけたい。「歴史的な無知」に居直るなら、小泉首相の良き先例がある。かつて彼はソウル西大門刑務所跡を参観した際、「日韓双方ともに、お互いに、過去を反省すべきですな」と言って、韓国マスコミを激怒させた。韓国メディアには「悪いのは日本だ」という固定観念があるからだ。しかし、僕には小泉首相の発言は正しい指摘だと思える。韓国側の歴史認識にも大いに間違った所がある。堂々と議論を展開すればいい。 「韓米離間策」。これが韓国人の新しい対日非難だ。今回のソウル滞在中に、この言葉を意外な友人から聞き、韓国マスコミが喧伝している「対日用語辞典」が幅広く影響を与えていることが分かった。韓米離間策とは「日本が米国と韓国の仲を引き裂こうと、いろいろ画策している」という話だ。これが「被害者」としての立場からの発想であるのが興味深い。どこの国民も自分が歴史の被害者であることを強調する。ポイントは、それが客観的に見て真実か、ということだ。 日本による「韓米離間策」が現状を的確に表現したものかどうか。悪のりする日本メディアもいるが、「韓国の中国接近への懸念」が必ずしも的外れでないことは、訪韓中に読んだソウル大教授による朝鮮日報への寄稿を読めば、明確であろう。韓国人学者が米国に行くと、米国専門家が韓国政府の対中姿勢に対して、問わず語りの不満を語っているからである。 韓国でのもうひとつの見方は「親中事大主義」。これは僕が今回長時間話し合ったジャーナリスト趙甲済さん(元「月刊朝鮮」編集長)の最新レポートの題目だ。しかし、韓国メディアに登場する用語は、圧倒的に「韓米離間策」が多い。 どうしてなのか? 理由は簡単だ。それが最近の韓国報道陣の「メディアフレーム」だからだ。自分自身がよく理解できない状況について、新聞記者は誰かが言った「現状解釈の枠組み」を援用して記事を作ってしまう。ジャーナリスト(時代を記録する者)として一番警戒しなければならない姿勢だが、どこの国のマスコミでも、これが一番多い。それが社内の安定した地位確保にもつながるからだ。つまり、新聞記者(特派員)は取材対象や読者ではなく、本社の意向を忖度しながら記事を書く。(笑) 読者としてはどうすべきか。マスコミ報道を見ていて「どこかで聞いた台詞だな」と思ったら、必ず疑ってみる姿勢が必要だ。マスコミ出身の僕が言うのだから間違いない。いや、こういう発言から疑って、自分の頭で分析してみてください。新しい視角を世界は求めています。(笑) 話が脱線したついでに、もうひとつ。訪韓中にいろいろ話し合った黒田勝弘氏(産経新聞客員論説委員)の最新刊「決定版 どうしても”日本離れ”できない韓国」(文春新書)に、安倍首相が例の「731部隊」と同ナンバーの戦闘機に乗り、韓国メディアから猛バッシングを受けた事例が書いてある。 今回の訪韓中に、僕もこの「アベ=731論」を韓国人ライターから持ち出され、大いに驚いた。こんな馬鹿げた話を信じているのか。あきれてしまい、カフェで猛烈に反論した。僕のあまりの剣幕にたじろいたライター氏は、「席を替えましょう」と言い、店の外に出た。結果的に僕は「韓国人は日本人から韓国語でシビアな反論に会うとひるんでしまう」という経験則を再確認したのだが、それほど「アベ=悪のシンボル」論は韓国社会でマンエンしているのだ。こういう時に、日本人は懇切丁寧かつ厳しく真相を話してあげないといけない。日韓は死んでも隣国同士だ。これが地政学上の運命だ。「韓国とはもう断交だ!」とプッツンしても、始まらないのである。京城の「モボ・モガ」 旧態依然たる「田舎民族主義」の展示館に混じって、ソウルの「モダンボーイ」「モダンボーイ」が登場する博物館もある。その名も「ソウル歴史博物館」。中心部・光化門交差点から西へ、徒歩5分の場所にある。入場無料。ぜひ行ってみてください。 見どころは3階の「日本統治時代のソウル」だ。ここは「奪われた京城」「抗日運動の中心」「京城都市紀行」「戦争の影」の4コーナーから構成されているが、圧巻は「京城都市紀行」のスペースだ。ここの展示を見ると、京城がとても発展した近代都市だったことが一目で分かる。こんな展示スペースは、大韓民国でここしかない。 子供向けの黄色い説明板に、以下のようなことが書いてある。見出しが「京城スタイル」。聞き慣れない言葉だが、これが世界中で大ヒットした韓国製ラップ「江南スタイル」をもじった言葉である。 「京城の人々は国を失った悲しみと、日本人の差別待遇に哀しみを感じつつも、新たに接することになった近代文物に次第に適応して行ったんだよ。(中略)京城の人々は、日本人の強圧に抵抗しつつも、一方では新しい近代文化に習熟し始めた。このような中で1920ー30年代、京城の都心で流行をリードする若者たちを『モダンガール』『モダンボーイ』と言ったんだよ。彼らは西洋式文化を受け入れるのにとても積極的で、高価な洋服にべっ甲の眼鏡、ストローハットをかぶり、京城の街通りをかっ歩したんだってさ」 堅苦しく言えば、旧来の「植民地収奪論」の包装の中に、最近の「植民地=近代化」論を内包しているのが、ここの展示の特徴だ。2002年に開館した当時から、このコーナーは京城市内を走る路面電車を再現するなどユニークな展示が見られたが、ここに来て収蔵品が増加し、展示の仕方もさらに大胆かつリラックスしたものになった。 「京城のモガ・モボ」を描いた当時の新聞挿絵(撮影:下川正晴) 「京城のモガ・モボ」を描いた当時の新聞挿絵(写真)のほか、彼らが愛用した化粧品やチョッキ、時計、ひげ剃り、さらに京城案内地図、絵はがき、「味の素」の広告、雑誌「朝鮮の自動車」、京城電話番号簿、百貨店の宣伝チラシ、有名レストランの写真、美人キーセンの絵はがき、レコード、ラジオ、映画のパンフ、雑誌、学校や「文化住宅」の写真、スポーツ大会の写真など、ありとあらゆる近代文物が展示してあって、圧倒されてしまう。植民地時代に「三越京城店」は、東京、大阪店に次いで売り上げが多かったというから、この繁栄ぶりは当然なのかもしれない。 その中でも圧巻は、本町(いまの明洞)や鐘路、光化門・太平路の街並み地図と当時の建物写真だ。これは漢陽大学建築学科の冨井正憲教授ら日韓研究者が苦労の末に作り上げた。展示には、制作者として冨井教授の名前も明記してあり、フェアな扱いである。 さらに同コーナーで上映されている動画には、京城時代の風物がどんどん出て来て、とても楽しい。10分間ほどの映像だが、よく見ていると、植民地時代に朝鮮総督府の監修で作られた劇映画の一部が収録されている。僕のような植民地映画研究者には、ことのほか興味深い。ざっと見たところ、朝鮮人特攻隊の奨励映画「愛と誓ひ」(1945)を含む数本の植民地映画から抜粋し、つなぎ合わせたようだ。 特に「迷夢」(1936)は、伝説の美人女優・文藝峰(のちに北朝鮮人民俳優)がデパートで買い物するシーンや、ヒゲの男優とレストランでデートする場面、南大門から京城駅、龍山駅まで男性ダンサーの乗った列車を追いかけるシーンなどが、かなりの時間ピックアップされていている。この映画は現存する最古の朝鮮トーキー作品だ。「女性の自立」を批判的に描いているが、当時の映画スタッフが意識しなかった京城の都市光景が、フィルムの背景に映り込んでいる。「記録としての映像」の力を、再認識させてくれる。 これらの映画は数年ほど前、北京の中国電影資料館の倉庫から見つかった。韓国映像資料院がDVD化して販売したが、現在は入手困難である。それだけに、「ソウル歴史博物館」で無料のダイジェスト版を見れるのは、なかなか貴重な機会なのだ。  「ソウル歴史博物館」は展示内容を収録した図録を、1階売店で売っている。韓国語、英語、中国語版がある。残念ながら、日本語版はない。しかし、図版をふんだんに盛り込み301ページ、約3500円。購入して帰国後、眺めていると勉強になるだろう。  ちなみに「京城」という言葉を、差別語だと言い募って来た人々がいる。慰安婦誤報で「有名」になった朝日新聞元記者の植村隆氏もその一人だ。著書「ソウルの風の中で」(1991)で、「忌まわしい名前」「都市の創氏改名」と言っている。これが全くのウソであることは、この展示内容から見ても一目瞭然だ。詳しくは、雑誌「正論」(2015年10月号)の拙稿「対韓贖罪史観に侵された『京城』問題と新聞社『内規』」を読んでほしい。ソウル駅前で爆弾を投げるソウル駅前で爆弾を投げるソウル駅前の銅像(撮影:下川正晴) ソウル駅前にもテロリストの銅像が立っているというので、見に行った。写真のように、右手に手榴弾を握りしめ、まさに投げんとする構図である。ホントに、この国の人は爆弾を投げる彫刻が好きなんだなあ(笑)。昭和天皇に向かって爆弾を投げる(桜田門事件の)銅像は、すでに紹介した通り、淑明女子大近くの孝昌公園に立っている。 ソウル駅前にあるのは、朝鮮総督に爆弾を投げて、死刑になった姜宇奎(カン・ウギュ)の像だ。1919年9月2日、第3代朝鮮総督に任命された斎藤実がソウル駅に着いた時、爆弾を投げた。しかし総督にはほとんど被害がなく、護衛の日本人警察官ら37人が死傷した事件だ。銅像が建立された2011年当時、産経の黒田勝弘特派員が反対の論陣を張ったが、他の主要紙はほとんどスルーしたので、多くの日本人は存在すら知らない。韓国がこういう無神経なことを重ねた来た延長線上に、日本大使館前の「慰安婦像」という国際条規違反がある。それが僕の見立てだ。韓国人たちにも「近隣国への配慮条項」の適用を切に要望する次第である。(笑) もちろん、韓国でも「テロリスト論争」がないわけではない。 訪韓中に書店で購入したカン・ジュンマン「韓国現代史散策」第8巻(2008)に、そのことが書いてあった。 著者は、あけすけな記述で定評がある大学教授だ。それによると問題提起したのは、ロシアから韓国国籍に帰化したパク・ノジャ氏。韓国史に関して大胆な発言をしている歴史研究者である。彼は2007年4月、上海天長節爆弾事件で「日本の民間人に数名の被害者が出たのに、侵略元凶の爆殺と負傷を喜んだ中国の世論は、これを認識しなかった」と指摘し、さらに南朝鮮労働党の指導者だった朴憲永が「ごく少数の暴力による運動は必ず敗北する」と批判した事を紹介した。「最高のパルチザン大将(金日成のこと)が結局、最悪の独裁者に変身した韓半島の現代史を念頭に置くべきだ」(「ハンギョレ21」)と述べたのである。 これに対して、伝統的右派の論客であるシン・ヨンハ氏(ソウル大名誉教授)が、朝鮮日報の紙面で「大韓民国臨時政府による特攻隊攻撃をテロと言うのは、歪曲であり誤解だ」と反論した。彼が「特攻隊」を賛美しているのが、笑止千万だ。日本軍の特攻機は体当たり攻撃によって、米国の民間人を殺傷したとでも言うのだろうか。 もうひとつ。同書によると、尹奉吉記念館を建立したのも、「東亜日報」のキャンペーンによるものだと分かった。2008年当時の「東亜日報」会長は、金学俊氏だ。つい最近まで、国策機関「東北アジア歴史財団」の理事長だった人物だ。 同書が引用した別の本には、「抗日義士」の顕彰作業が韓国内の政治に翻弄されたとの指摘もある。政権与党・民自党内の民正党系の代表人物だった朴泰俊氏(浦項製鉄会長)が、桜田門事件の李奉昌記念事業の会長であり、これに対抗して、民主党系のトップだった金泳三氏(のちに大統領)が、尹奉吉記念事業会の会長を引き受けたという指摘だ。「だから、あんな無神経な銅像と展示になっているのか」と、韓国政治状況を取材して来た僕は思った。「中興の祖」に愛情なし!? 朴正煕記念館。W杯サッカー場近くの麻浦区上岩洞にある。2012年になって、やっと出来た。3階建て。第1展示室「5・16革命と近代化」「輸出主導型、経済開発推進」「電力難解決のための苦闘」、第2展示室「高速道路建設」「セマウル運動」「産業開発」と、いかにも型通りだ。やっと第3展示室になって「人間・朴正煕大統領と陸英修夫人」となる。「まあ、なんと愛情不足の展示なのだろうか」というのが、僕の感想だ。朴正煕 朴正煕(写真)が政権を奪取した時、韓国はフィリピン、北朝鮮よりも貧しい国だった。殺された時「僕は大丈夫だ」と言った。陸英修夫人は、彼の後ろ姿を見て「この人と結婚しよう」と思った。20世紀を生きたアジアの政治家の中でも、傑出した人物だと思うのだが、現代の韓国人には、よく理解されていないようだ。その娘である現職大統領にしても、父親の偉業の真価がわかっているのかどうか、実に心もとないところがある。 「朴正煕記念館」は、階段を登って2階から入場させる。いかにも旧時代の権威主義だ。1階の黒眼鏡をかけた警備員は、公開されている私邸(東大門区)に行ったこともないという。全体的に「朴正煕が可哀想だ」と思うしかない展示だ。 初代大統領の李承晩にしても同様だ。鍾路区梨花洞にある私邸は、以前見に行った時「これが大統領の邸宅か」とは思えないほど、ぼろっちい住居だった。壁にベタベタと写真が貼付けてあり、ライバル政治家だった金九の記念館とは雲泥の差がある。2017年まで修復工事のため、いま休館中。再開館したら、期待せずに、行ってみたい。 金鍾泌(キム・ジョンピル)を、知っている日本人も少なくなった。韓国の元首相。朴正煕とともに、軍事クーデターを起こした。89歳。不倒翁。彼が「中央日報」で連載した自伝を、評価する韓国人の声を聞いた。「今の韓国を作ったプランナー」という評価だ。果たしてそうだったか。まだ読んでいない僕としては、判断のしようがない。別の信用できる韓国人は「時々読んで来た」とだけ言った。 残念ながら、金鍾泌氏とは長時間話したことがない。ただひとつ、忘れがたい記憶がある。金泳三政権がスタートした頃、毎日新聞の夕刊コラムに、僕は「韓国は人治社会だ。法治社会ではない」と書いた。彼が大統領になったとたん、野党時代には未解決だった刑事事件が、たちまち解決したからだ。 僕のコラムを読んだJP(愛称)は、出入りの韓国人記者に「毎日新聞の特派員が、こんなことを書いているよ」と紹介した。それが韓国紙の政治面に載った。JPとしては、YS(金泳三)に対する牽制球だったのだろう。国会で僕の記事が引用される騒ぎになり、少し迷惑した。「月刊朝鮮」に僕へのインタビュー記事が載ったりした。「人治の韓国。法治社会ではない」。いまではマンネリになった批評だが、当時は中国に対して使われる用語で、韓国に対しては「情の社会」(黒田勝弘さん)という言い方が一般的だった。黒田さんほど韓国に対する愛情がない(笑)僕は、ストレートに表現した。 朴正煕の娘は、韓国を日本から遠くに連れて行った。生残ったJPは、いま、「韓国の将来」をどう思っているのか?  韓国の田舎民族主義韓国の田舎民族主義  韓国の「田舎民族主義」になぜ、注目するのか!? もちろん、日韓両国にとって、危ないからだ。「田舎民族主義」とはまことに失礼な言い方だが、これ以外に的確な表現を思いつかない。 4年後は「大韓民国臨時政府」樹立100周年になる。「3・1独立運動100周年」だから、これは当然だ。「大韓民国臨時政府」が韓国内でさらに注目されそうだ。憲法前文を楯にした対日歴史攻勢も、強まるだろう。なぜなら、北朝鮮(金日成のカリスマ)に対抗して韓国政府が「政権の正統性」を主張する際、この臨時政府こそが最大の「アリバイ」だからだ。 いま韓国では「教科書問題」が火を噴いている。左派の国史教科書が氾濫したため、政府が国定教科書を復活させることにしたのだ。この場合でも「臨時政府」をどう評価するかが大きなポイントだ。 韓国の「歴史的建造物」は時間が経つにつれ、どんどん立派になって行く傾向がある。 その一例が、小泉首相も訪問した西大門刑務所跡だ。1985年、ソウルの延世大学に留学中、僕はこの近くに下宿していた。時々、刑務所跡に散歩に出かけた。約20年後、ソウルの某大学の客員教授になってソウルに住んでいたころ、この刑務所跡を再訪して驚いた。展示物が増えて、外装も立派になっていたからだ。そのころには地下鉄「独立門」駅から展示が始まり、中国からの自主独立を意味する「独立門」は、日本からの独立を意味するかのように誤解させる内容になっていた。 かつて文化広報省の建物があった光化門近くの一帯は、「大韓民国歴史博物館」に変貌していた。5階建ての近現代史博物館だ。2012年末に出来たというが、特別に目新しい展示はない。この国の人は本当に「歴史博物館」が好きだ。ソウルのど真ん中にできた「大韓民国のPR館」だが、それが外国人の目には、韓国近代史の「恥ずかしい歴史」を糊塗する建物と映っていることに、気づかないのだろうか。北品川にある「相模屋」跡(東京都品川区) 撮影:下川正晴 帰国の朝。空港に向かうバスの車窓から、写真7のような光景を見かけた。光化門から西大門に向かう途中、京郷新聞社ビルの反対側である。この周辺一帯を「歴史公園」として整備する計画があり、地元民が反対しているらしい。 数年後には、計画通りの「歴史公園」が造成され、過剰包装の「歴史」が展示されることになるのだろう。それで、いいのだろうか?! 反対者の横断幕には、ここで商売して来た住民の「歴史」をどう考えているのか、という抗議文が見えた。なんとも皮肉な光景だ。 100年、200年後の韓国民は、21世紀初期の韓国を、過去の歴史をぶち壊し、画一的な街づくりを行った時代と記憶するに違いない。すでに他の都市整備で見られるように、最近の韓国で行われている街区整備は、旧時代の良さを残さず、それを恥じるかのような、国籍不明のピッカピカで薄っぺらな街づくりで満ち満ちている。 急激な都市整備は、韓国社会の急激な民主化がもたらした弊害に通底するものを感じる。 過去の「親日」時代を恥じ、過去の「開発独裁」時代を恥じて、それらがもたらした遺産を省みることがない。国定教科書に反対する「親日・独裁の歴史を固着させるな」という横断幕が、その典型だ。薄っぺらな歴史観だ。先人たちの労苦を思い偲ぶことがない歴史観だ。韓半島に生きた人々の歩みは、そんなに価値のないものだったのか? ソウルを去る日、通り過ぎるバスから見かけた街頭の光景は、自国史を考える時にも自戒すべき点であると思った。「日韓テロリズム」を考える ソウルから帰国した4日後、品川区立「品川歴史館」(大井6丁目)に出かけた。ここでは、開館30周年記念特別展「東海道品川宿」を開催中である。北品川の遊郭旅籠「相模屋」の模型があるので、是非、行きたいと思っていた。 「相模屋」は川島雄三監督の名作「幕末太陽伝」(1957)の舞台になった遊郭だ。フランキー堺(居残り左平次役)主演、石原裕次郎(高杉晋作役)助演の楽しい映画である。模型は歴史館2階にあった。素晴らしいのは、「相模屋」の2階から外を見ている男女の人形があったことだ。これは英国公使館が燃える様子を見ていた、映画のフランキー堺と遊女そのままである。 「品川歴史館」からの帰途、北品川の「相模屋」跡に行き、写真を撮影した。そこにある小さな標識を見ながら、僕は「日韓のテロリズム」について考えた。 安重根のテロリズムに倒れた伊藤博文が、若き日はテロリストだったことは意外と知られていない。伊藤は文久2年、麹町の路上で塙次郎を殺害した。このことを伊藤は後々まで、気に病んでいた。「伊藤博文伝」に載っている事柄だ。 僕が北品川で見た「相模屋」跡地は、高杉晋作らが英国公使館の焼き討ちを謀議し、実行のために出撃した遊郭があった場所だ。いま、ここは「ファミリーマート北品川店」になっている。高杉らも幕末の攘夷テロに手を染めた「志士」だったのだ。伊藤もこの焼き打ちに参加した。 久しぶりに訪韓した僕は、ソウルのあちこちで韓国テロリストを「抗日義士」として顕彰する銅像を見た。これらが、1980年後半以降に建てられているのを見て、韓国人の無神経さに驚き、「韓国ナショナリズムの病巣」に困惑した。日韓には、歴史的事実のモニュメント表現をめぐって大きな違いがある。いま北品川のファミマ前には、英国公使館焼き討ちを記念する銅像はない。写真の小さな標識があるだけだ。事件から100余年。それが独立国家の矜持というものだろう。 弱小民族がテロリズムに訴える事は、現代世界でもありうる。しかし、それを「歴史の教訓」として、どう記録し、どう表象するかが肝要だ。経済的には立派な先進国になったのに、いまも旧植民地の過去(テロリズム)に引きずられるのは、韓国人の精神衛生と国際協調上、まことによろしくない。 元テロリスト伊藤博文は、朝鮮テロリズムに倒れた。テロリズムを称揚する大韓民国は何によって、自壊するのか。僕の推論は書かずともよいだろう。品川ーソウルー品川を往復しながら、こういうことを僕は思った。

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    軍人とお姫サマ-朴槿恵研究-

    「日本人として恥じざるだけの精神と気魄を以て一死御奉公の堅い決心でございます」。満洲国軍人を志願した朴正煕は血書をもってこの嘆願書を窓口に書き送った。軍人魂をみずから叩き込んだのが朴正煕だとすれば、娘の朴槿惠はタダのお姫サマ!? ナッツ姫ほどではないにせよ…。

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    「売国奴」と言われた朴正煕が称賛される理由

     日韓両国が基本条約に調印し、国交正常化に踏み切ってから6月22日で丸50年。韓国国内の猛反対を押し切り、正常化を決断したのが当時の大統領、朴正煕(パク・チョンヒ)だ。「売国奴」呼ばわりされた朴正煕に対する評価は、この半世紀で一変した。(韓国南東部亀尾(クミ) 藤本欣也) 寒村のイメージを抱いていたので、そのにぎわいぶりに拍子抜けしてしまった。 韓国南東部、慶尚北道(キョンサンプクド)亀尾にある朴正煕の生家。土壁の家屋自体は粗末だったが、周囲には記念館や焼香所、公園が整備され、観光客が押し寄せていた。1日平均2千人以上-。 「優れた大統領のおかげで私たちは幸せに暮らしています」「強力な改革だけが韓国を維持できる」「将来、朴正煕大統領のような政治家が再び現れたらいいのに」 寄せ書き帳を見ると、強いリーダーを求める声や賛辞であふれている。 だが、およそ半世紀前には、それからは想像もつかない光景が広がっていた。 1964年6月3日、ソウル中心部。「韓日交渉を中止せよ」「屈辱外交を許すな」「売国奴を殺せ」 催涙弾が飛び交う中、大学生ら1万5千人以上が集結し、治安当局と衝突を繰り返した。夜、戒厳令を布告したのは当時の大統領、朴正煕その人だった。 デモ隊がやり玉に挙げたのが、日韓国交正常化の秘密交渉に当たっていた朴正煕の側近で、後に首相を務める金鍾泌(キム・ジョンピル)(89)だ。61年5月16日、朴正煕が主導した軍事クーデターの中心人物の一人である。 金鍾泌は今年、韓国紙への寄稿で、日韓国交正常化を「(クーデターに続く)第2の革命だった」と振り返っている。朝鮮戦争(50~53年)で壊滅的打撃を受けた韓国経済は最貧国の水準。「近代化のための資金を何としても捻出しなければならなかったのだ」        始まりは“用日” 残された“反日”2月23日、弔問に訪れた韓国の鄭義和国会議長(左)とあいさつを交わす金鍾泌元首相(聯合=共同) 日韓国交正常化の立役者とされるのが、大統領の朴正煕(パク・チョンヒ)の命を受けて秘密交渉に当たった金鍾泌(キム・ジョンピル)である。中央情報部(KCIA)の初代部長を務めた金は「反日より、“用日”こそ困難な道である」という話をよく朴と交わしたという。 日本を用いて経済発展の道を探る-。1962年に始まった経済開発5カ年計画は莫大(ばくだい)な資金を必要としていた。 当時、ソウル大学生で学生運動のリーダーの一人だった玄勝一(ヒョン・スンイル)(73)と金道鉉(ドヒョン)(72)に、かつて学生たちがデモ隊を組織した光化門(クァン・ファムン)前の大通り沿いのホテルで会った。 「朴正煕のリーダーシップで韓国が発展を遂げたのは事実だ。が、だからといって軍事クーデター、人権・民主化弾圧などを許すことはできない」 玄は逮捕され服役した後、米国に渡った。帰国できたのは79年に朴正煕が暗殺されてからだ。その後の民主化過程で、国民大学の総長や国会議員を務めた。 「反日デモというより、クーデターで樹立された朴政権への不満、批判が爆発したデモだった」 こう振り返る金道鉉は、文民大統領の金泳三(ヨンサム)政権(93~98年)時代に文化体育省次官などを歴任した。 国交正常化の前年に起きた6月3日の騒乱は、韓国の近代化を優先する勢力と、民主化を求める勢力の衝突でもあった。 民主化勢力も反日を利用して朴政権打倒を目指した意味では、“用日”だったのである。 朴政権は、日韓国交正常化の果実である日本の資金や、米欧の援助を元手に60年代中盤以降、10%を超す高度経済成長を実現。「漢江(ハンガン)の奇跡」と評された。 その朴正煕の最大の政敵が、民主化勢力リーダーの金大中(デジュン)だった。97年の大統領選に出馬した金大中が保守派の票を取り込むために利用したのが、朴正煕の生家だ。投票の約2週間前に生家を訪れて和解を演出、劣勢を覆し勝利を収めた。いわば“用朴”である。 以後、朴人気も裾野が広がり、96年に約4万2千人だった生家の観光客数は昨年、実に69万人を数えた。 “用日”から始まった日韓国交正常化。50年がたち近代化と民主化が一通り達成された韓国に、むき出しの反日が残された。反日より困難な道、つまり新たな対日戦略を打ち出せる強いリーダーシップこそ、韓国には求められている。=敬称略(藤本欣也)【用語解説】朴正煕(1917~79年) 韓国・慶尚北道亀尾の貧しい農家に生まれる。大邱師範学校、満州国軍官学校、日本の陸軍士官学校卒。満州国軍中尉で終戦。朝鮮戦争を経て韓国軍での地歩を固め、陸軍少将だった61年、5・16軍事クーデターを主導して全権を掌握し、前年の李承晩政権崩壊に伴う内政の混乱を収拾。63年から5期にわたって大統領を務めた。開発独裁型の統治を推し進め、民主化勢力を弾圧する一方、高度経済成長を達成した。反政府暴動の高まりの中、79年に側近に暗殺された。現大統領の朴槿恵氏(63)は長女。【用語解説】日韓国交正常化 日韓両政府は14年間の交渉を経て、1965年6月22日に日韓基本条約に調印(同年12月18日に発効)、国交が正常化した。付属協定では、日本側が韓国に「無償3億ドル、有償2億ドル」を供与する一方、双方の財産・請求権については「完全かつ最終的に解決された」と明記された。しかし韓国側は近年、元慰安婦の賠償請求権は残っているとの主張を強めている。

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    本音では日本好き? 元ソウル支局長が見た朴槿恵の素顔

     行き過ぎた「反日」を改める声が韓国内からも出ている韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領だが、表面上その行動は窺えない。なぜ、そこまで日本に敵意を示すのか。 産経新聞の元ソウル支局長・黒田勝弘氏は、1980年代当時、産経ソウル支局と同じビルに朴氏の事務所があった関係で、幾度も顔を合わせていたという。「1980年代前半に彼女を招いてホテルの日本料理店で会食をしたことがありました。彼女との会話は韓国語でしたが、ある程度の日本語は理解している様子でした。 社交的な女性ですから、微妙な話はスマイルで避けてましたが、決して日本を批判したり、過去に触れることはなかった。1980年代に日本の財団の招待で、1週間ほど京都などを旅行していたこともあります。  政界入りしてからは(1998年~)、韓国の国会議事堂の近くの日本料理が行きつけで、よく日本蕎麦を注文していましたね。本音は日本を好きなはずです。彼女は、大統領という立場上、反日を唱えているに過ぎません」(黒田氏) 大統領就任にあたって朴氏は、李明博(イ・ミョンバク)前大統領の強硬反日路線(*注)を踏襲した。【*注/李明博政権は、発足当初こそ建設的な日韓外交を志したが、国内政策の失敗によって求心力が低下した政権末期に強硬な反日路線に転換。2012年8月には竹島に上陸し、日韓関係は暗転した】 朴氏が慰安婦問題において盛んに発信するのも、慰安婦問題の解決に向けて行動しなければならない法的義務を負うからだ。李明博時代の2011年、韓国の憲法裁判所は元従軍慰安婦たちが起こした憲法訴訟において、慰安婦問題の解決に向けて韓国政府が動こうとしない「不作為」は違憲である、との判断を下した。「歴史認識問題等に断固として対処する」。朴氏は就任直後から対日姿勢の原則として掲げる。その姿勢は、過去の発言とはまるで異なる。 おそらく朴氏は、父の代弁者として生きることの限界を悟ったのだろう。亡き父の復権を果たそうと努めた朴氏の前半生だったが、父・朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領も懐かしまれるだけの存在になりつつある。若年層を中心に、あの時代から形成された既得権益層への批判も根強い。 父に倣って行動することも、前政権の縛りから抜け出すことも今の朴氏からは想像できない。父が暗殺された上、「親日」の烙印を押されれたことなど、数多の悲劇が育んだ警戒心は、政治家としての「頑迷さ」となり、日韓関係に深刻な影を落としている。

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    朴槿恵大統領の妹はなぜタブーである「親日」発言に挑んだのか? 

     「私たちは親日をしなければ」。韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の妹、槿令(クンリョン)氏のこうした発言が韓国で大バッシングを浴びた。日本のインターネット番組に出演し、靖国神社参拝や慰安婦問題について日本を擁護する主張を連発したからだ。韓国でタブーとされる「親日」という言葉をあえて使い、批判覚悟で発言した真意はどこにあったのか。彼女には、韓国民が本来立ち向かうべき“敵”の存在があった。(桜井紀雄) 「元慰安婦の方々に対しても、私たち(韓国民)がもっと配慮しなければならないのに、日本ばかりを責めてきた。そんなニュースが何度も流れたことについて申し訳なく思う」 朴槿令氏は4日にネットサイト「ニコニコ動画」の特別番組でインタビューに応じ、日本人ネットユーザーらに向けてこうメッセージを送った。日本から帰国したソウルの金浦空港で、記者団に持論を語る韓国の朴槿恵大統領の妹、槿令氏=30日(聯合=共同) インタビュー冒頭から、「韓国人も日本から学んでほしい」と日本のマナーのよさを持ち上げた。50年前に父の朴正煕(チョンヒ)元大統領が成し遂げた日韓国交正常化に伴う日本からの援助が「韓国の経済発展の原動力になった」とたたえた。 朝鮮半島に対する日本による過去の支配についても、天皇陛下がかつて韓国の大統領に「痛惜の念」を表明されており、「日本の首相が替わるたびに謝罪を求め、隣人を責めるのは、恥ずかしいことだ」と語った。 靖国神社参拝についても、「子孫として父の墓を参るのを拒むことはできない」と理解を示した。「安倍晋三首相が靖国参拝をして、再び戦争を起こしたいという気持ちがあるとは思っていない」とし、「そう思う人はおかしい」とまで述べた。日本の政治家の靖国参拝をたびたび非難する自国の外務省に対しても「内政干渉になる」とたしなめた。 極め付きは、「独立前の『親日』と国交正常化した後の『親日』の概念は全く変わっている」と強調した上で、「私たちは、親日・親米をして、国を発展させなければならない」と言ってのけたことだ。 韓国では、「親日=売国奴」と認識されており、日本に好意的な人物でも自分が「親日派」と名指しされることを絶対に避けようとするにもかかわらずだ。「仲良くなるのを邪魔する人がいる」 槿令氏の発言に対しては、韓国内で当然といえるほど、大反発が巻き起こった。 インタビューは7月末に収録されたもので、ソウルの空港で帰国を待ち構えていた韓国の報道陣に、槿令氏は、番組で語った内容と同様の主張を繰り返し、韓国メディアを刺激した。 韓国世論にとって最大級といえる“妄言”を朴槿恵政権の足をすくう好材料とみて、待ってましたとばかりにやり玉に挙げたのは、野党の新政治民主連合だ。 韓国の報道によると、同党幹部は、「朴槿令氏の言葉は、口にすることさえ恥ずかしい。大統領の妹としてなおのこと不適切だ。これを親日といわずして何だというのか」と非難し、朴槿恵大統領に対しても、立場を表明するよう迫った。 与党側でも、擁護するどころか、そろって「ゆがんだ歴史認識だ」などと不快感をあらわにした。 日本政府に補償と謝罪を求め続けている元慰安婦支援団体なども、当然のごとく反発した。 親北朝鮮傾向の強い支援組織「韓国挺身隊問題対策協議会」(挺対協)代表は、「歴史をきちんと学んでいない人の発言にすぎない。植民地時代の考え方から抜け出せない一部の人たちの誤った視点をそのまま反映している」と一蹴した。 韓国メディアは、放映した「ニコニコ動画」に対しても、「日本のネット右翼が多く視聴するサイト」とこき下ろし、発言が伝わった直後に朴政権の支持率が若干低下したことについても、「発言が影響した」との分析を伝えた。 だが、槿令氏はインタビューで「日本を責めるニュースが好きな勢力と私は闘っている」と述べ、こんな言葉をいい残している。 「よいことをしようとすると、水を差す人、仲良くなることを邪魔する人がいる。そういう人を警戒しないといけない。賢い人は分かると思う」 一連の日本擁護の発言は、失言などではなく、自国で非難にさらされることを覚悟した上での主張だったことを示す言葉だ。彼女なりに日韓関係を憂えての“確信犯”だったわけだ。 では、なぜ彼女は火中の栗をあえて拾ったのか。真意を解くキーワードは、インタビューの中にちりばめられている。 槿令氏は、日韓国交正常化に道を開いた大統領の娘として、韓国の支援に尽力してきた多くの日本人に接してきたことを説明している。韓国で治療が遅れていたハンセン病患者への支援や、先の大戦での韓国人戦没者の慰霊に、私財や身をなげうって取り組んだ日本人への感謝を表明した。 つまり、“親日”発言は、一つには、自身の実体験に裏打ちされているのだ。 そうした日本人たちの献身が「韓国人には、あまり知られていない」と嘆いた上で、その原因として、一人の大統領経験者を名指しした。左派を代表し、親北朝鮮傾向の強かった盧武鉉(ノ・ムヒョン)氏だ。 「盧武鉉大統領時代、いきなり、父を含む国会議員の先祖に対して、親日的・反民族的だったとリストを作る動きを見せた」 盧元大統領は2005年に「親日反民族行為真相糾明委員会」を立ち上げ、日本統治時代に日本に協力した者の子孫を弾劾し、財産を没収するといった政策をぶち上げる。自分の政権の歴史的正統性と純血性を誇示する狙いは明白だった。 最大の標的が、槿令氏らの父、正煕氏であり、槿令氏姉妹も攻撃に巻き込まれる。野党議員時代の槿恵氏も「父が親日行為をやったとバッシングを受けた。かなりたいへんだった」と槿令氏は振り返り、「有権者の意思を反映するために対日関係を強硬にした」と説明した。 現在の朴槿恵大統領の歴史問題に絡む対日姿勢のかたくなさの底にも、過去にこうむったバッシングのトラウマがあるというのだ。 槿令氏が主張するように、韓国の「反日」の裏には、国内で執拗(しつよう)に繰り返される“親日派狩り”があるのは確かだ。韓国は、「反日」というよりむしろ、「反親日」といった方が正確だろう。 日本の首相に謝罪を何度も求めるのも、韓国で政権が替わるごとに、正統性を獲得するための国内向けの事情によるところが大きい。 韓国に対する日本人の貢献を手放しでたたえることは、「親日派」というレッテルを貼られる恐れがある。多くの人が口をつぐんだ結果、献身した日本人の存在も戦後の歴史に埋没させられてきた。 槿令氏は「父を『親日だ』と批判していた人々も経済発展の恩恵を享受している」と、国交正常化における正煕氏の努力と日本の援助を正当に評価しようとしない国内の左派勢力に向けた不満を何度か口にした。 「過去の歴史を利用」しようとした盧武鉉氏のような政治勢力に対しては、「歴史を何度も蒸し返そうとするのは、浮気をした夫とよりを戻した後も、悪い噂を立てることと同じではないか」と反論する。 日本との関係でも、朴正煕政権時代に「和解したにもかかわらず、蒸し返し責め続ければ、歴史は逆戻りし、後退させる。国益にもいいことでない」と述べた。槿令氏の主張を「歴史に反する」と非難するであろう勢力への皮肉とも聞こえる。 ここまできっぱり言い切る背景には、彼女が父同様に北朝鮮こそが、日米と協力して対峙(たいじ)すべき「民主主義国」共通の“敵”だとの強い信念があるようだ。 「私たちは親日・親米をしなければならない」と語った際も、続けて「従北はしてはいけない。親北朝鮮と言ってはならない」と強調した。それは「韓国の憲法に反し、“敵”を利することになる」と断言している。北朝鮮を「敵」だと明言してはばからないのだ。 「日本が再武装している」との韓国などで持たれる見方に対しても、「北朝鮮が核を持っているからだ。韓国にとって大きな脅威であり、沖縄などの米軍基地も韓国にとって大事だ」と述べ、日本の安全保障政策の強化にも理解を示した。 「大半の韓国の人は私と同じ考え方を持っていると分かっていただければ。韓国をもっと好きになっていただければと思う」 槿令氏は日本人にこうも訴えかけた。帰国後に彼女が大バッシングに遭ったことを考えると、信じられない日本人が多いかと思う。 しかし、筆者の経験からも、槿令氏と似た対日観を持つ韓国人は、珍しくはない。 特に、槿令氏同様に現実的脅威を直視し、北朝鮮を“敵”とみなす比較的年齢の高い人にその傾向がみられる。日本統治時代や朝鮮戦争を経験した年齢層の方がむしろ多いといえるかもしれない。 北朝鮮政権を民主主義共通の敵だとみるとき、日本は一方的に憎むだけの“他者”とはならないからだ。少なくとも、軍国主義が再び台頭する「侵略国家日本」という“フィクション”に振り回されることはない。 槿令氏も「日本は他の国を侵略する憲法でもなく、国民を天皇の『臣民』と呼んだ軍国主義の時代でもない」と現実的な認識を述べている。 逆に、北朝鮮と親和を図ろうという幻想にしがみつこうとすれば、するほど、「日帝時代」という苦難をともに乗り越えたという共通の「体験記」や「軍国主義日本」という“共通の敵”が必要になる。 慰安婦問題が日韓で大きな外交問題に浮上した1990年代初めにも、北朝鮮が狙い定めたように「20万人性奴隷」説などを喧伝(けんでん)し、韓国の挺対協などの支援団体と歩調を合わせた。槿令氏が日韓が「仲良くなるのを邪魔する人」と称した南北の勢力による共同戦線がこのとき立ち上がる。 慰安婦問題も南北に共通した苦難の歴史であり、日本を敵として、南北が共闘できるという格好の“かすがい”を提供したことになる。 同じ構図が日本による統治時代を経験した台湾にも当てはまる。「台湾は中国から独立した地域だ」と中国を“他人”扱いする台湾で生まれ育った一定数の人たちは、親日的傾向を持っていることが知られている。彼らは、自分たちの歴史の独自性を語る材料として、日本統治の影響を肯定的に持ち出しさえする。 反対に、戦後、台湾に渡った外省人の中で、中国との共通性にこだわる人々は、反日的傾向が強い。つまり、中国共産党と台湾の国民党にとって、共通の敵だった日本という「悪役」が必要不可欠なのだ。 戦後70年の今年、台湾の国民党政権が「抗日戦の主役は国民党軍だった」との色彩を全面に出した記念行事を計画したところ、「反日」が際立つことになり、台湾人意識の強い住民らから反感を買った。 一方、中国共産党政府は、国民党に統一を呼び掛ける際に、たびたび「南京大虐殺」の「史実」を誘い水に使う。ただ、現実の歴史では、民族同士血で血を洗う内戦の結果、中国に共産党政権が誕生した。 だからこそ、統一中国のためには、日本を絶対悪とした南京事件を共通の歴史として手放すわけにはいかないのだろう。国共内戦が凄惨(せいさん)であれば、あるほど、南京事件はクローズアップされ、中国と台湾の距離が離れれば、離れるだけ、中国側が示す事件での犠牲者数は10万人単位で跳ね上がっていく。 民族同士相争ったのは、なにも中国共産党と国民党だけではない。韓国と北朝鮮もまた、朝鮮戦争で戦火を交え、多くの街が焦土と化すほどの傷跡を残した。朝鮮戦争が悲惨であれば、あるほど、南北融和を訴えるには、民族の「正しい歴史」という舞台に、残忍だった日本人という共通の敵に出演してもらわなければならない。 そして、親北傾向の強い人ほど、日本に対し、繰り返し過去の歴史への懺悔(ざんげ)を請求し続ける必要性に追い立てられることになる。その中で、真っ先に標的にされるのは、正煕氏のような「親日派」であり、槿令氏のような日本擁護は「妄言」と一刀両断される。 「米国の議会がうらやましい」 槿令氏はこうも漏らした。米与党の民主党と野党の共和党ともに、福祉問題など現実的な課題で議論を戦わせるといった当たり前の光景がうらやましいという。 「国益のためには、野党でも与党でも一つのことに向かうシンガポールがうらやましい」。こう話していたという父、正煕氏の生前の言葉にも触れた。 「申し上げるのは、はばかられるが…」と断った上で、「韓国の政界では、北朝鮮にあまりに近い勢力がいて、韓国は共産化はされていないが、左翼化しているのではないかと思う」とも語った。 「建設的な論争をする米国議会とは違い、韓国国会は、北朝鮮問題といったイデオロギー論争を繰り返している」とも嘆く。高校生ら約300人が犠牲となった旅客船セウォル号沈没事故の原因究明をめぐっても、与野党が理念対立に固執し、長期間、国会が空転したことも記憶に新しい。 槿令氏は、「韓国はIT強国といわれるが、3、4カ月間、日本から部品を供給しないだけでたいへんなことになる」と、韓国経済の障害となる日韓関係の冷え込みにも懸念を示した。 経済や福祉問題という現実をほうって、不毛なイデオロギー論争と対日歴史問題に拘泥する韓国の政治状況に心底嫌気が差していたのだろう。「親日」という刺激的禁句を使ってまで、日本擁護の発言をし、注目を浴びることで、閉塞(へいそく)した国内状況に、自分なりに一石を投じるつもりだったのかもしれない。“孤独”な姉へ孤立無援のエール 姉の朴槿恵大統領に対しては、日韓国交正常化50年式典で、「日本との協力関係を強化する立場」を表明したことから、日韓関係改善に向け期待感を示した。日本の視聴者には、「新しい出発を見守ってほしい」と呼びかけ、姉にエールを送った。 だが、韓国でイデオロギー対立が解消されない限り、「親日派の娘」というレッテルを貼られ、事あるごとに攻撃にさらされてきた槿恵大統領の対日姿勢が急に改善するとは到底、予想できない。韓国野党は、妹の日本擁護発言を「妄言」として、朴政権への攻撃材料とみなしたぐらいで、槿令氏の渾身(こんしん)の主張は、火に油を注いだ逆効果だったと考えざるを得ない。 保守・左派そろって民族主義的傾向が強く、民族にとっての「正しい歴史」が政治的正義と信じられている韓国にあって、「反親日」に錦の御旗があることに変わりはない。 歴史問題を封印し、日本から巨額の援助を引き出し、祖国を経済発展に導いた正煕氏は、韓国最高の「英雄」と称賛される半面、「売国奴」だと後ろ指を指される背反する2つの評価がつきまとう。この韓国現代史上最も大きな存在を父に持つゆえ、現国家指導者の姉は、皮肉にも、自ら「正しい歴史」に絡め取られ、歴史問題で、安倍政権に繰り返し譲歩を求めるほか、身じろぎ一つできないのが現実だ。 「正しい歴史」が幅を利かせるなか、正煕氏や朴槿恵大統領の支持層であっても、槿令氏の主張に首肯するわけにはいかないのだ。 民族的正義のために振りかざされる歴史問題よりも、北朝鮮の脅威や経済問題といった現実を直視する人でも、「親日派」のレッテルを恐れ、表立って賛意を示す人はほとんどいないだろう。槿令氏がいう「私と同じ考え方」の人は、どこまでいっても声なき声の域を越えられない。 槿令氏の活動に姉が干渉することは、ほとんどないという。大統領就任と前後して槿恵氏は、家族も遠ざけてきたとされる。「最後に姉に会ったのはいつか」との質問に、槿令氏は「よく思い出せない」とも答えた。 インタビューの最後、槿令氏は「未来を背負って懸命に生きてこられた父の遺志は、何だったのかを考えて」と前置きし、日韓双方の人々に向け、こう語りかけた。 「痛みのある歴史に執着して、未来に向けて踏み出せない人々は、日韓の国益や平和を考え、もっと仲良くなれるようにベストを尽くすべきだと思う」 血を分けた妹の本音でもあり、迷惑この上なくもあろう姉に向けた“孤立無援”のエールを、家族さえ遠ざけ、“孤独”に執政に没頭する朴槿恵大統領は、どう受けとめるのだろうか。