自衛隊はイスラム国の人質を救出できたか
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自衛隊はイスラム国の人質を救出できたか

イスラム国による邦人人質事件は最悪の結末を迎えた。事件を機に、邦人救出を目的とする自衛隊の海外派遣をめぐる議論がにわかに注目されている。国の責務である邦人保護。テロによる蛮行が起きたとき、自衛隊の特殊部隊を海外に派遣できる日は来るのか。改めて特殊部隊の存在に焦点を当てたい。

イスラム国による邦人人質事件は最悪の結末を迎えた。事件を機に、邦人救出を目的とする自衛隊の海外派遣をめぐる議論がにわかに注目されている。国の責務である邦人保護。テロによる蛮行が起きたとき、自衛隊の特殊部隊を海外に派遣できる日は来るのか。改めて特殊部隊の存在に焦点を当てたい。

小島新一のズバリ正論

 イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国(ISIL)」による日本人人質事件は2月1日、ISILがジャーナリストの後藤健二さん(47)を殺害したとする映像をISILが公開したことで、最悪の結末を迎えた。
 ISILが1月20日に後藤さんと湯川遙菜さんの映像とともに日本政府に身代金を要求して以降、事件をめぐってさまざまな議論がなされた。中には中東を訪れていた安倍晋三首相の演説や人道目的の支援表明が事件を招いたとして専ら日本政府、安倍政権を批判する声もある。これなどは「悪しき国家、日本さえおとなしければ世界は平和だ」という歪んだ戦後の歴史観・憲法観に洗脳され、ことの善悪さえ冷静に判断できなくなっている議論であろう。
 だが、そうした倒錯した議論を笑って済ませるわけにはいかない。今回の事件に限らず、海外で邦人が誘拐されたり拉致されたりする事件が起きたとき、情報収集も人質救出も事実上、他国に頼りきりになるのが戦後の日本の常ではなかったか。自国民の生命・安全を守るのは国家の最大の責務であり、自力での解決手段をはなから放棄せざるを得ない日本は、国家の在りようからして倒錯しているといえる。
 今回の事件で成功の可能性があったかどうかは別として、事件を機に邦人救出のため海外派遣した自衛隊の武器使用が議論され始めている。そこで実効性のある法整備がなされれば、戦後の歪んだ体制から日本が脱却する重要な一歩になると期待される。
 ここでは、「そのとき」に海外に派遣される可能性の高い自衛隊の特殊部隊に焦点をあてたい。ベールに包まれた隊員たちの肉声が明かにされることはほとんどなく、今回の人質事件について語られたものでもないが、部隊創設時の元リーダーたちの貴重な声である。彼らの想像を絶する「覚悟」は、彼らに任務を命じる国家の姿や国民の意識を改めて問い直すものとなっている。

国家の意思と向き合う男たち

首相、法整備に意欲

 安倍晋三首相は1月29日の衆院予算委員会で「自衛隊の持てる能力を生かし、救出に対応できるようにすることは国の責任だ」と述べ、自衛隊による在外邦人救出を可能とする法整備に意欲を示した。さらに、2月2日の参院予算委でも「海外で邦人が危険な状況に陥ったときに輸送はできるが、救出も可能にするという議論をこれから行っていきたい」と強調した。
 政府は、集団的自衛権の行使を容認した昨年7月の閣議決定の中で「武器使用を伴う在外邦人の救出についても対応する必要がある」との方針を打ち出したが、閣議決定は邦人救出を行う自衛隊の活動範囲を領域国政府の「権力が維持されている範囲」などと限定。このため法整備が実現しても、今回のように国家組織ではない「イスラム国」の支配地域からの人質奪還は困難とみられ、今後の議論でも焦点となりそうだ。
「邦人救出に自衛隊を送り込む」前に議論すべきこと。(BLOGOS 2015年2月2日)
■ 特殊部隊使えぬ邦人救出 幻のアルジェリア派遣(産経新聞 2014年3月22日)

危険思想か 世界標準か

救出に厚い壁

 イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」が邦人2人を殺害したとみられる事件を受け、政府が今国会に提出する安全保障法制では邦人救出のあり方も焦点となる。政府は昨年7月1日の閣議決定を受け、受け入れ国の同意に基づき邦人救出の際に武器使用できるよう法整備を目指す考えだ。しかし、新しい法律ができても、自衛隊を人質救出作戦に投入するためには高いハードルがある。
 政府は平成25年1月のアルジェリア人質事件を受け、緊急時に在外邦人の陸上輸送を可能とするよう自衛隊法を改正。自衛隊員が戦車を攻撃できる無反動砲などを携行できるよう閣議決定もしたが、現行法では陸上自衛隊特殊作戦群が現地で人質を奪還するような作戦は行えない。
 こうした中、政府は昨年7月の閣議決定で自衛隊による邦人救出を認めた。関連法整備では、集団的自衛権の行使や集団安全保障への参加とは関係なく、警察権の行使として武器使用を認める方針だ。閣議決定では自衛隊による邦人救出の条件として、(1)領域国政府の同意(2)自衛隊を投入する地域に領域国政府の権力が及んでいる(3)「国家に準ずる組織(国準(くにじゅん))」が当該地域にいない―を挙げている。

在外邦人をどう守るか

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