イスラム移民とヨーロッパの苦悩
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イスラム移民とヨーロッパの苦悩

米の国際政治学者、サミュエル・P・ハンティントンの「文明の衝突」論から約20年。パリの仏風刺週刊紙襲撃事件を発端に反イスラム、移民排斥運動が拡大するヨーロッパ。いま起きているのは「原理主義」の衝突ではないだろうか。

米の国際政治学者、サミュエル・P・ハンティントンの「文明の衝突」論から約20年。パリの仏風刺週刊紙襲撃事件を発端に反イスラム、移民排斥運動が拡大するヨーロッパ。いま起きているのは「原理主義」の衝突ではないだろうか。

大江紀洋の視線

 2015年1月に発生した仏シャルリー・エブド紙襲撃事件がヨーロッパに与えたインパクトを私たち日本人はどう理解すればよいのだろうか。デモ行進に370万人もの人々が繰り出したという、その危機感を、心から共有できた日本人は少なかったのではないだろうか。 
 「表現の自由」という、西欧の人々にとっての根源的な価値観に対するテロだから、という解説があちこちでなされた。もちろんそれはその通りだろう。しかし、フランスではその後、国会で100年ぶりに国歌が大斉唱されたり、左派の首相が右と見紛うほどの大演説をぶったり、「テロ擁護罪」の適用でイスラム移民(ムスリム)の少年が大勢逮捕されたりしている。右から左まで一斉に「イスラムフォビア(嫌イスラム感情)」を高めるその姿は、「表現の自由」を侵害されたその一点だけで説明がつくのだろうか。 
 私たちはまず、ヨーロッパが戦後、どのような考え方に基づいて、国家と民族の融合・統合を進めてきたかを知る必要がある。ムスリムに対する統合政策は、日本の外国人労働者に対するそれに比べて、比較にならないほど丁寧に実施されてきたとされる。それでもなお、西欧とイスラムの間に深刻な相克が横たわるのはなぜなのか。どちらの世界も日本人にとって縁遠い。 
 当然、テロリストを容認することは許されない。西欧とイスラムの「文明の衝突」と解するのも安直だ。もっと奥底にあるヨーロッパの苦悩を知りたい。そんな思いから編集したWedge3月号特集記事の一部をお届けしたい。(Wedge編集長 大江紀洋) 

行き詰まった欧州政治

強まるイスラム排斥

共和国という理念

テロ続発 緊張する欧州

「国籍剥奪」“自国育ちテロ”を食い止めよ

 フランス連続テロの発端となった風刺週刊紙シャルリエブド銃撃から7日で1カ月。欧州では「ホームグロウン(自国育ち)」のテロリスト対策として、テロ事件の容疑者や被告の国籍を剥奪する動きが広がっている。警官殺害テロを企てていたとされる過激派グループを1月に摘発したベルギーでは、政府が事件翌日に新たなテロ対策を発表。同国では既にテロで有罪となった被告が二重国籍者で、国籍取得から10年未満の場合、裁判所の判断で国籍を剥奪できる。政府はこれを移民の第2、第3世代まで適用する案を検討中だ。フランスではイスラム過激派活動に関わったとして有罪判決を受け昨年5月に国籍を剥奪されたモロッコとの二重国籍者への処分が違憲か否かが問われ、今年1月、憲法会議が合憲との判断を示した。連続テロ事件を受け、有罪判決がなくても剥奪を可能にすべきだとの議論も出ている。
論争続く仏ブルカ禁止法 女性の顔や全身を覆うブルカを公共の場で着用することを、フランスが全面的に禁じたのは11年。「女性隷属の象徴」であるブルカを禁じるのは当然で、フランスの政教分離の伝統にのっとった判断だとする賛成派と、ブルカ着用は女性の自発的な選択であり、着用禁止は信教の自由の侵害だと訴える反対派の論争は今も続いている。(ニューズウィーク日本版 2014.7.10)

他人事ではない欧州の今

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