山本みずきがゆく 変革のキューバ

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山本みずきがゆく 変革のキューバ

iRONNA特別編集長、山本みずきが、カリブ海に浮かぶキューバを目指して旅する企画がスタートします。今年1月、アメリカとの国交正常化交渉に入ったキューバ。長く断絶状態が続く両国の関係は、新たな局面へ動き出した。いま世界の注目を集める「変革の島」を山本みずきが訪れ、キューバの今を伝えます。

iRONNA特別編集長、山本みずきが、カリブ海に浮かぶキューバを目指して旅する企画がスタートします。今年1月、アメリカとの国交正常化交渉に入ったキューバ。長く断絶状態が続く両国の関係は、新たな局面へ動き出した。いま世界の注目を集める「変革の島」を山本みずきが訪れ、キューバの今を伝えます。

サンフランシスコでのひととき

 サンフランシスコのイタリア人街で一息つこうと名店カフェ・グレコへ足を向ける。カフェ・グレコと言えば、ローマに本店を置き、ゲーテやワーグナーも愛したとされ、1790年以来の歴史を持つ古いカフェである。昨夏、ヨーロッパを旅行したとき、ローマの本店にはよく通った。
 ところで、イタリアでは美味しいコーヒーに関して、次のような慣用句を使う。

 “Nero come notte,caldo come inferno,dolce come amore.” 夜のように黒く、地獄のように熱く、愛のように甘く…

 なんて大袈裟なんでしょう。でも、これがイタリアなんです。
 「美味しいコーヒー」と言っても、現在、世界中でどこでも提供され、いつでも暖め直せるように用意されている普通のドリップコーヒーやアメリカンコーヒーにはこの慣用句は使わない。イタリアで通常、カッフェ(コーヒー)と言えばエスプレッソを指す。しっかりローストした豆を極細挽きのパウダー状にして、エスプレッソマシーンに硬く詰めて、水蒸気圧で一気に抽出するコーヒーのうまみが凝縮されたエキス、それがエスプレッソである。苦い苦いこのエスプレッソにたっぷりと砂糖を入れてさっと飲むのが本場なのだとか。
 さて、そんな苦いエスプレッソからチョコレートの香るマロッキーノまで、カフェ・グレコでは日々さまざまな味を楽しんだ。洗練されたもてなし、タキシードを身にまとった紳士的な給仕、注文から会計までのテンポの良さ、どれもがお気に入りである。人気店だけに、客が少ない朝一の時間に利用したことも、このカフェを好きになれた理由の一つだろう。
 朝、私用の前にここでコルネットをかじり、ほんのりと口中で香り立つバターの風味、甘味が消えない内に砂糖を入れていないカプチーノをさっと一口飲む。絢爛な宮殿の一室を思わせる内装の中、いつまでもそれを繰り返す。最高のくつろぎであった。
 どうですか? 皆さんもグレコで一服したくなったのではないですか。しかし、サンフランシスコのグレコはまったくの別物でした。
 喧しいポップスの響く店内、Tシャツ姿の店員、 騒ぎまくる幼い子どもたち、とどめを刺すかのように私に差し出された巨大なアメリカンサイズのカップ。一体、この国では何を味わえばいいのだろうか。
 今回、サンフランシスコに立ち寄った最大の理由は、ギフトショーという名の展示会が催されていたからだった。世界各国の企業が自社の目玉商品を出展し、バイヤーはそれを見定めるといった感じの催しである。私は物流のトレンドに興味を持ち、これまでもいくつかの国でこうした展示会に顔を出したことがある。今回、アメリカのギフトショーには初めて足を運んだが、それぞれの国によって市場に特徴があるように、アメリカはとにかくカラフルでビッグサイズであることが最低条件のように思えた。なるべくカラフル、なるべくビックサイズ、風情も何もあったもんじゃない、これこそがアメリカ人のメンタリティなのである。
 日本企業からも数社が出展しており、備前焼のお猪口を取り扱っている会社の担当者と白人バイヤーの会話を聞いてなおさらそう思った。「これはもっと大きく、そしてカラフルにできますか」。バイヤーはそう問いかけたが、もちろん答えはノー。サイズを変えればお猪口ではないし、備前焼に鮮やかさを求める必要はない。すると、彼は続けてこう言った。「アメリカ人は日本酒も背の高い大きなカップでぐびぐび飲むんだ」と。清酒をぐびぐび飲むなんてとんでもない。やはり文化の違いには驚かされる。
 ギフトショーという名の展示会は、15年ほど前までは世界の情報交換の場として成り立っていた。東京ギフトショーやサンフランシスコ・ギフトショー、フランクフルトショー、広州交易会など、そういうところで世界の一般的な輸出入の情報交換が行われていたのである。しかし、ここ数年の目覚ましい情報革新で対話を重視するギフトショーは段々と縮小傾向にあるようだ。
 事実、かつてのサンフランシスコギフトショーには全米から企業が集まっていたそうだが、ここ数年で規模は縮小され、出品者やバイヤーをみてもカリフォルニアの一部企業による地方のショーとなっている印象を受ける。
 いま、物流の情報源は大きく様変わりしているようだ。デパートを含めた小売りの世界が前時代的なものになりつつあるのではないか。これらはより大きな世界規模の組織に集約されていっている気さえする。 カネとモノの流れは大手企業に支配され、彼らが目指しているのは、謂わば、コストコやイケアなど一極集中型の戦法なのだ。
 安倍晋三首相は一極集中の大手企業に対して零細企業・中小企業が太刀打ちできるよう、彼らを救おうとする動きをみせている。その手腕にはぜひ注目したい。
山本みずきがゆく 変革のキューバ