太陽光、破綻のカウントダウン
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太陽光、破綻のカウントダウン

経済産業省が太陽光発電の買い取り価格を1キロワット時あたり29円へ3年連続で引き下げる案を公表した。再生エネ全体を増やす政策が見えないまま、先行する抑制策。国民負担はもう取り返しがつかない状態に陥っている。太陽光破綻へのカウントダウンが始まった。

経済産業省が太陽光発電の買い取り価格を1キロワット時あたり29円へ3年連続で引き下げる案を公表した。再生エネ全体を増やす政策が見えないまま、先行する抑制策。国民負担はもう取り返しがつかない状態に陥っている。太陽光破綻へのカウントダウンが始まった。

国民負担として適切か

価格見直し 新聞はどう伝えた

 経済産業省は2月24日、2015年度の再生可能エネルギーの買い取り価格案を示した。その内容の骨子は、大半を占める出力10kW以上の太陽光発電で、1kWhあたり32円だった2014年度から29円(15年6月まで)、7月からは27円に引き下げるというものだ(太陽光に比べ普及が遅れる風力、地熱、バイオマスなどは価格を据え置いた)。
 このニュースを大手5紙がどう取りあげたのか、読み比べをしてみよう。
 詳しくは上記の弊誌Wedge記事「太陽光買い取り 『29円』でも高すぎる」を見ていただきたいが、今回の引き下げのポイントは次の2点である。
・引き下げたといっても、世界各国の買い取り価格に比べれば異常に高いこと
・すでに認定された(=買い取り価格が決定した)太陽光発電設備だけで膨大であり、国民負担はもう取り返しがつかない状態に陥っていること
 この2点について5紙がどのように触れたかという視点で読んでいくと大変興味深い。
 ダントツで奇異に映るというか、出色なのは東京新聞。「買い取り価格また引き下げ 太陽光に偏り抑制策」と題し、タイトルから今回の引き下げがいかに気にいらないかが伝わってくる。
 本文には「再生エネを全体的に増やす長期展望がないまま、制約ばかりが先行する格好になっている」とあり、Q&A欄の最後は「政府が再生エネを増やす姿勢を示さなければ、事業者が参入をあきらめてしまう」という“とある有識者の批判コメント”で締める形。価格を引き下げていくのはどこの国でもやっているし、固定価格買い取り制度(FIT)としてあたり前のことなのだが、引き下げることは「制約」で、「再生エネを増やす展望や姿勢がない」ことになるという理解はかなり違和感がある。そもそも、買い取り価格が付いている時点で、立派な導入優遇政策なのだ。この買い取り価格は、所得によらず、どんなに貧しい人でも電気を使ったら上乗せで徴収されてしまう性質のものである。その価格の絶対値が、諸外国と比べてどうなのか、あるいは、国民負担として適切かという視点がまったくないのは、庶民派の東京新聞としてどうなのだろうか。
 毎日新聞は「太陽光 3年で33%下げ」と題し、そのタイトルからわかるように、フラットさを意識した記述ぶりだ。
 「再生エネ導入で先行するドイツでは、太陽光の買取価格が4年前に当初から約15%下落し、現在は日本の半額程度の水準」ときちんと海外との比較を行っているのは適切だ。
再生可能エネルギーの受け付け中断をめぐり九州電力が開いた説明会
=2014年10月1日午後、福岡市中央区
 しかしそのあとはやや引っかかる。「日本はドイツを上回るペースで値下がりしており、将来的には国民負担の抑制につながりそうだ」としているが、すでに国民負担が膨れ上がってしまっていることへの言及があるとさらに良かったのではないだろうか。
 日本経済新聞は、産業界に立脚した、日経らしい記述である。「太陽光優遇、転機に 買取価格下げ 採算厳しく」と題からわかるように、太陽光事業者の視点を中心に据える。「12年7月の制度開始以来続いた太陽光への政策誘導は転機を迎える」という評価だ。
 「『太陽光の20円台は採算上厳しく、新規開発する事業者は激減する』。太陽電池メーカー大手でメガソーラーの発電事業者でもある京セラ幹部は今回の買い取り価格改定を厳しく受け止める」というコメントは実に興味深い。京セラ、と具体名があるのも良い。しかし、日本の太陽光のシステム価格は世界標準に比べ異常に割高で、それが買い取り価格を押し上げてしまっていることへの言及がないのはもったいない。世界標準とは要するに、世界最大の太陽光生産国になっている中国である。京セラも中国で生産しているのだから、もっと企業努力が必要ではないか、3年間も優遇措置があったのだから、と奮起を促すスタンスがあってもよかったのではないか。
 また、産業界に立脚するなら、本来は負担側の視点も欠かせない。日本の産業界を支える数多の中堅中小企業にとって、電力料金負担はいかに切実か。再生可能エネルギーや太陽光の優遇による賦課金の徴収で、利益が吹っ飛ぶ状態になっている町工場の声などを紹介してもいいように思う。
 「太陽光偏重に歯止め」と題した産経新聞は、「太陽光の急増に一定の歯止めがかかり、偏った再生エネのバランスが是正され」と前文で前向きに評価している。太陽光だけ引き下げたというところは確かにそう評価できるのだが、本文は「太陽光の普及ペースが鈍化しても、再生エネ全体の導入が進めば、国民の負担は増えることに変わりはなく、政府は今後も慎重な判断が求められそうだ」と締められており、その視点に基づくもう少し突っ込んだ分析が欲しかったところだ。
 もっとも適切な分析で適切な評価を下していたのは読売新聞だろう。「太陽光偏重是正図る」と産経新聞と同様の中立的タイトルではあるものの、「太陽光に偏った現状を改善するのが狙いだ。だが、今回の引き下げで、太陽光発電の急増に歯止めがかかるかどうかは見通せない」と前文で適切な要旨を示している。本文では「ただ、27円でも欧州に比べれば高く、太陽光の増加を食い止めるのは難しいとの見方が多い」「買い取り価格を引き下げても、太陽光発電の急増などによる消費者負担の拡大は避けられそうにない」との記述がみられ、固定価格買い取り制度の問題点を端的に示していた。
 朝日新聞は価格だけを示すベタ記事扱いだったので評価を省略したい。(Wedge編集長 大江紀洋)
   

スペインの失敗から学ぶこと

偏り是正 太陽光に北風

 経済産業省は2月24日、平成27年度の再生可能エネルギーの買い取り価格を示す有識者会議を開き、大半が事業用の出力10キロワット以上の太陽光発電で1キロワット時当たり29円を提示した。32円だった26年度から3円の下げ幅で、太陽光は3年連続の引き下げとなった。太陽光に比べて普及が遅れている風力や地熱などは買い取り価格を26年度から据え置き、導入拡大を後押しする。
 10キロワット以上の太陽光の価格は、再生エネの固定価格買い取り制度の規定で上乗せされていたが、7月以降はこの適用を見直し、買い取り価格をさらに2円下げ、27円とする。家庭用の10キロワット未満の太陽光は33円とし、26年度の37円から4円引き下げる。ただし、九州電力や東北電力など7電力管内では、設置が義務づけられる出力制御装置の費用を上乗せし35円とした。

高騰した電気料金

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