さらば、「ピケティ」
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さらば、「ピケティ」

昨年末の日本語版発売以降、国内でもブームに火がついた仏経済学者トマ・ピケティ氏の世界的ベストセラー「21世紀の資本」。案の定、ブームに乗っかって政治的に利用する胡散臭い人々が現れた。彼らが大騒ぎするときこそご用心。まさに「ピケティブームの正体、みたり」である。

昨年末の日本語版発売以降、国内でもブームに火がついた仏経済学者トマ・ピケティ氏の世界的ベストセラー「21世紀の資本」。案の定、ブームに乗っかって政治的に利用する胡散臭い人々が現れた。彼らが大騒ぎするときこそご用心。まさに「ピケティブームの正体、みたり」である。

小島新一のズバリ正論

 昨年末の日本語版発売以降、国内でもブームに火がついた仏経済学者トマ・ピケティ氏の世界的ベストセラー『21世紀の資本』。700頁以上もある分厚い高価な専門書であるにもかかわらず、発売後2カ月足らずで13万部を発行、内容を解説する関連書籍の出版や雑誌の特集掲載も相次いだ。1月末の本人来日時にはメディアがこぞって取り上げ、国会論戦でも名前が挙がったことは記憶に新しい。
 しかし常々「歪み」や「偏向」が指摘されているのが、我が国のメディアである。彼らが大騒ぎするこんなときこそご用心、とばかりに本誌4月号では、眉に唾をつけてこのブームを眺めてみた(特集「哀れなり、『ピケティ』騒動」)。
 「資本主義の下では、必然的に格差が拡大する」(NHK、2月13日「くらし☆解説」)などといった、ピケティの言説を単純化させたキャッチフレーズに、資本主義打倒を掲げた革命の“理想”に胸を躍らせた昔を懐かしむ人々。ピケティ自身が否定していないことが明らかな資本主義やアベノミクス=安倍首相への批判に政治的に利用する人々。案の定、ブームの牽引者の中には胡散臭い人々が多数、いる。
 日本でピケティがもてはやされる背景に、近年言われる「格差の増大」への不安感があることは多くの識者が指摘する通りであろう。だが、日本で問題視されるべき「格差」とは、ピケティのいう「格差」なのか。「格差」とは何か、それは全否定されるべきものなのか。そもそもピケティ理論の核心は、人口に膾炙する「r>g」なのか――。
 こうした根本的な命題についてのコンセンサスや議論を抜きにした社会的言説は、特定のイデオロギーや価値観に流されがちだ。おそらくは本人の思考ともかけ離れてしまった日本のピケティ・ブームの「正体、みたり」である。

ピケティ理論の弱点

ピケティとは何者か

 資本主義社会における格差の拡大を論じたフランスの経済学者、トマ・ピケティ氏(43)の著書「21世紀の資本」が快進撃を続けている。2013年8月に出版された「21世紀の資本」は昨年、米国でベストセラーとなるなど、すでに世界で約150万部が発行された。昨年12月には日本版も発行され、税込み5940円の高価な専門書としては異例の13万部を突破した。著書の内容は国会でも議論され、格差解消の処方箋として富裕層に対する資産課税強化を訴えていることについて、安倍晋三首相が「執行面でなかなか難しい面もある」と発言している。
 著書が注目を集めたのは、「資本主義の発展とともに富が多くの人に行き渡って所得分配は平等化する」という、従来の経済学の定説を覆したためだ。ピケティ氏は新たに、株式、預金、不動産などの資本の収益率(r)は、所得や産出の年間増加率である経済成長率(g)を上回る「r>g」という不等式が成り立つと主張。親からの相続などで得た資本を持つ人ほど収入が増え、そうでない人は不利になるとした。解決には、世界規模で富裕層に対する資産課税を強化することを提案する。
 ピケティ氏は、パリ郊外生まれの43歳。米マサチューセッツ工科大の助教授などを経てパリ経済学校教授。2007年の大統領選では、社会党のロワイヤル氏の経済顧問を務めた。
実はみんな読み切れない トマ・ピケティ『21世紀の資本』を簡単図解(週刊現代 2015年02月22日)

本当の問題は「貧困」

ピケティを悪用する人々

富の一極集中、何が問題か

 富める者はますます富み、資本主義に任せれば格差はどんどん拡大する―。過去300年の統計分析による論考が、世界に衝撃を与えたフランスの経済学者、トマ・ピケティ。今年1月に来日した彼は、アベノミクスの柱である異次元緩和による株価や地価上昇がさらなる富の偏在をもたらし、格差拡大につながると警鐘を鳴らしたことでも知られる。
 安倍晋三首相はこれまで「富める者がさらに富めば、貧しい人にも富がしたたり落ちる」というトリクルダウン理論を採用しており、ピケティ氏の言説は安倍政権への批判だと受け止める向きもある。
 市場の自由な競争原理を肯定する「新自由主義」が世界的な潮流となる中、「富の一極集中」は資本主義社会が抱える新たな課題とも言える。世界的ベストセラーを生んだピケティ氏の忠告は今後、日本経済に何をもたらすのか。ブームが去ろうとしている今だからこそ、注目していく必要がある。
「富の集中? もっと重要な問題がある!」トマ・ピケティ教授×吉川洋教授 特別対談(日経ビジネスオンライン2015.2.6)

ブームをどうみる

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