新聞、テレビではわからないテロの脅威
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新聞、テレビではわからないテロの脅威

IS(イスラム国)による日本人殺害事件の報道で、日本の新聞、テレビなどの大メディアは、テロリストの宣伝活動に体よく利用されてしまった。欧米ではテロの報じ方についてガイドラインが存在するが、日本のメディアにはそれがない。メディアとテロの関係を危機管理の観点から明らかにする。

IS(イスラム国)による日本人殺害事件の報道で、日本の新聞、テレビなどの大メディアは、テロリストの宣伝活動に体よく利用されてしまった。欧米ではテロの報じ方についてガイドラインが存在するが、日本のメディアにはそれがない。メディアとテロの関係を危機管理の観点から明らかにする。

機能硬直したジャーナリズム

見えにくい脅威

花田紀凱の「天下の暴論」

 「イスラム国」による日本人人質殺害事件真っ最中の1月26日、官邸前で「官邸前DISCO化計画」というイベントに参加。ビール片手に「楽しく、戦争反対を叫んでた」社民党の福島みずほ前党首(それにしても社民党に誰かとめる奴はいなかったのか)。
 「こういうこと(安倍総理の中東歴訪、人道支援)がなければもっと常識的な金額で話がついていた。人質を救うためには安倍総理が辞任すべきだ」などというトンデモ発言をした柳澤協二氏(小泉内閣時代の内閣官房副長官=安全保障担当)。
 こんな無責任かつ無知な連中は、ま、どうでもいい。勝手に言わせ、歌わせておけばいいのだ。自らの無知をさらすだけだから。
米ワシントンの報道博物館「ニュージアム」に展示された
後藤健二さんの写真(共同)
 しかし朝日新聞の社説が、彼らのレベルでは困る。いや、困りはしないが呆れる。2月16日「人質事件は終わらない」と題した社説。抽象論に逃げ、結論をハッキリ書かないのは、ま、朝日に限らず社説の通弊だが、それにしても今回はひどい。
 〈今回の事件を機に、「イスラム国」による恐怖支配の下で暮らす彼ら(拘束されているジャーナリストや地元の何百万人もの市民)にも思いをはせたい。その苦悩を共有してこそ、国境を超えた連帯が生まれ、「イスラム国」壊滅への道が開けるに違いない〉
 「市民と苦悩を共有」すれば「『イスラム国』壊滅の道が開ける」なら、何も苦労はない。相手は残虐極まりない、法もへったくれもないテロ集団だ。そんな甘い対応が通じる相手ではなかろう。で、社説の結論。
 〈彼女ら彼ら(「ボコ・ハラム」によって誘拐された女子生徒ら)もKenjiやHarunaと同様、一人ひとりがかけがえのない名前と人生を持つ。一日も早い解放に向けて何ができるか、模索したい〉
 朝日はいったい、いつまで「模索」しているつもりか。「模索」したら何かいい方法を思いつくのか。そんな悠長なことを言ってる間にも人質はどんどん増え、次々に殺害されているのだ。「イスラム国」との戦闘で多くの市民、兵士が犠牲になっているのだ。これぞまさしくおためごかし社説の典型だ。
 「イスラム国」というテロ集団は取り敢えず力で征圧するしかない。そのためには本来なら自衛隊法を改正し、人道支援のみならず、自衛隊の派遣さえ検討しなければならない局面なのだ。
 「火事が起きた家に、消防士が入らなければ、救出されない人は命を落とす」
 1月29日、安倍総理は国会でそう言って自衛隊法改正を示唆した。それに対しても朝日は7日の社説「邦人救出 地に足のついた議論を」でこう言っている。
 〈自衛隊法を改正しても、今回の人質事件のようなケースでの適用は困難だ〉
 〈海外での武力行使にあたり、憲法違反となる〉
 で、その日の社説の結論は、〈短兵急な議論は危険だ〉
 繰り返すが、相手は無法なテロ集団なのだ。しかも日本人人質が2人捕まっていた。「短兵急」にやらなければ間に合わない。実際に2人は殺害された。「模索」しているヒマはない。

報ステはISのプロパガンダなのか

 テレビ朝日系「報道ステーション」で1月27日に放映された「『イスラム国』の隠れた野望」と題した報道特集をめぐり、その内容がまるで「イスラム国のプロパガンダのようだ」とネット上で話題となった。
 16分間にも及ぶ特集では、イスラム国が急速に拡大した背景を現地リポートなどに基づいて分析。アメリカによる中東政策の失敗や、第一次大戦後に西洋列強が設定した中東諸国の国境線の不自然さが要因になったと指摘した上で、アルカイダなど他の過激派組織とは異なり、イスラム国は他国から領土を奪って国家の樹立を目指す組織だと強調した。
 特集の中では、テロ資金に詳しいという政治アナリスト、ロレッタ・ナポリオーニ氏へのロングインタビューもあり、「テロリストとは何でしょうか? 『自由を求める義勇兵』と何が違うのでしょうか?」「残念ながら歴史の中で政治と暴力が一体となることがありました」などと熱弁をふるう彼女の言葉を紹介。特集の最後には、コメンテーターとして出演する朝日新聞論説委員、恵村順一郎氏が「イスラム国の土壌を育てたのは幾重にも重なった人々の怒り」などと発言し、キャスターの古舘伊知郎氏が同調する意見を寄せた。
 放送終了後、番組を見たネットユーザーも反応し、「まさかのイスラム国の正当性をアピールする報ステ」「テロリストの側からも見なきゃダメってことですか?」などと批判的なコメントが集まり、炎上した。

ISが投げかけたもの

渡世人の方がまだまし

 これは『アサヒ芸能』ならではの特集だ。2月12月号の「イスラム国邦人拘束殺害事件 右翼民族派とヤクザが読み解く極悪テロ」。
 関東広域組織の3次団体組長の話。
 まずIS国とヤクザの「交渉」の違い。
 〈恐怖を利用する点では同じだけど、ガラ(身柄のこと)をさらうのはまだしもカネ要求は最低だな。人質交換の要求も卑怯。我々の感覚的には恥ずかしいやり方だ。任侠に生きる人間は侍という自負を持っている。力で奪い取るのは誉れになるが、“泥棒”は蔑まれて、この世界では生きていけない〉
 人質を取って交渉してくる相手に対してどう対応するか。
 〈さらわれたらうちの組では『戸板に乗せて返してこいよ』ってことになるよ。煮るなり焼くなり好きにしろ。その代わり戦争だぞって。抗争時には盛り場に行かないように通達が出るし、殺されても自己責任という部分もある。組員とはいえ、何としても助けるという発想はない。日本もやられたら戦争するくらいの気概がないと、交渉は話にならないだろう〉
 ヤクザ渡世の人々の方が、よほど腰が据わっている。(花田紀凱)
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