復興がオーバースペックすぎる
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復興がオーバースペックすぎる

あたかも高度成長期のような枠組みのなかで、「元に戻す」復興と、「重複する」復興ばかりをやっていれば、必ず将来オーバースペックになり、維持困難という形ではね返ってくるだろう。福島・三陸のルポから考える。

あたかも高度成長期のような枠組みのなかで、「元に戻す」復興と、「重複する」復興ばかりをやっていれば、必ず将来オーバースペックになり、維持困難という形ではね返ってくるだろう。福島・三陸のルポから考える。

大江紀洋の視線

 2015年4月26日の日本経済新聞によれば、政府は2016~20年度にかけて、東日本大震災の復興に充てる予算を6兆円前後とする方針だという。15年度までの5年間を「集中復興期間」として26兆円を計上、国が全額負担してきたが、「今後5年間で総額8.4兆円の復興費用が必要」とする青森、岩手、宮城、福島の東北4県の求めに対する措置だ。
 26兆円のうち、少なくとも10兆円はインフラ復旧などの公共工事に使われた。
 震災直後、ボランティアなどで被災地を訪れた人は多いだろう。しかし、今こそ、被災地を再訪してほしい。
 三陸はどこも土埃が舞っている。被災地の道はどの道もダンプトラックだらけだ。多くの児童、教職員が津波の被害にあった石巻市立大川小学校のそばを、次々とダンプがうなりをあげて走っていくのを見ると、なんとも言えない気分になる。
設置工事が進む高台移転の宅地造成で
出る土砂を運ぶ巨大なベルトコンベヤー
=3月10日午前、岩手県陸前高田市
 ダンプの前面には事業内容を示すゼッケンがついている。よく見かけるのは「防集」だ。防集とは、防災集団移転促進事業のことで、5戸以上で合意して高台へ集団移転する事業だ。
 リアス式海岸の沿岸道路を車で走れば、山を切り出して高台をつくり、少ない海沿いの平地にはかさ上げを行う光景が延々と続く。次々と眼前に現れる漁港は、どんなに小さくとも確実に修復工事がなされ、集約されることがない。30人の漁民が使う、ある漁港の復旧には35億円の国費が投じられているという。
 圧巻は陸前高田だ。かの有名な「奇跡の一本松」のほど近く、岩手県陸前高田市の中心、高田地区には、全長3キロものベルトコンベヤーが張り巡らされている。気仙川の向こう側に見える、海伐130メートルほどの愛宕山を50メートルまで削って高台をつくる。それに伴って溢れだす大量の土砂をベルトコンベヤーで運んで高田地区のかさ上げに使う格好だ。当初5メートルなどと言われていたかさ上げが、結局12メートルになったのは「山から出る土砂が余るから」なんていう話も聞こえてくる。
 あの陸前高田の光景は、写真でも動画でも伝えることができないように感じる。空を覆うベルトコンベヤーと、12メートルという凄まじい高さ、そして、津波に流された気仙川の三角州一帯に鳴り響く「ガンガン……」という大型重機の轟音を、ぜひ五感で体感してほしいと思う。

時計の針を10年進めた大震災

オーバースペックの復興

 復興計画は、各自治体ごとに立案されるが、どの計画にも、商店街の復興、震災モニュメント、医療介護の充実……といった重複する内容が盛り込まれている。もともと震災前から人口流出と過疎に悩んでいた被災地は、「震災で人口減少が十年程度進んだ」(岩手県大槌町の人口対策計画)のだ。それを直視せず、あたかも高度成長期のような枠組みのなかで、「元に戻す」復興と、「重複する」復興ばかりをやっていれば、必ず将来オーバースペックになり、維持困難という形ではね返ってくるだろう。
 阪神淡路大震災でも、総事業費2710億円を突っ込んで44棟のビルを建てるという新長田駅南地区再開発事業が、震災から20年を経た今でも事業が完了せず、シャッター街となって多くの商店主が苦しんでいる(塩崎賢明著『復興<災害>』岩波新著)。
 自ら民間事業としてまちづくりに取り組む、一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスの代表理事を務め、内閣官房地域活性化伝道師の任命を受けている木下斉氏は、こう断ずる。
 「なぜ復興がオーバースペックになってしまうのか、そこにメスを入れなければならない。もっとも責任があるのは、学識経験者などの有識者だ。どこの自治体でも、復興計画を立てる場に有識者が関わっている。
 防潮堤でも道路でも再開発でも公共施設でも、専門家が、つくるときのコストの話だけをしていないか。大事なのは作った後の維持費だ。維持費や予想される稼働率など将来の収支を整理した上で、適切な方法を示すことをせず、『いまやれば国が全額負担だから』などと、イニシャルコストだけの話をして予算編成を組み立てる。住民を集めたワークショップを開いて『住民の総意だ』と言い放つ。そんなのはあまりに無責任で、インチキ専門家だ。結局は、地元の経済力、財政力では賄えないほどのランニングコストとなって、地方自治体の危機的な財政を今後招きかねない。
 本来は知見をもち、社会的に独立性高い研究機関などに所属する有識者こそ、このような厳しい現状を伝え、ストップをかけるだけの論理を示して、学会やメディアを巻き込んだ社会的議論を呼び起こすべきだった。
 これから訪れる、逃れることのできない縮小社会を前提に、どんな街づくりをしていくのか。専門家がモデルとなる案を示さなければならないのに、むしろ学問が最後列を走っている」(Wedge編集長 大江紀洋)
<基調講演>新潟県中越地震からの復興プロセスにみる今後の地域づくり(総務省『平成23年度第2回地域力創造セミナー』、2011.07.28)
オーバースペック等により評価しない項目の公表について(pdf、東北地方整備局 港湾空港部、2013.04)

「選択と集中」のチャンス

復興事業 地元も16年度から負担

 東日本大震災の被災地に対する2016年度から5年間の復興庁の支援方針案が、26日までに分かった。復興と深く関連する基幹的な事業、地域振興など全国共通の課題だが復興とも関連する事業、復興と関係が薄い事業に3分類し基幹的な事業は国が全額負担、他は地元負担を求める。東京電力福島第1原発事故からの復旧、復興は「国が責任を持って引き続き取り組む」と明記、全額国負担を継続する。
 政府は5月にも方針を自治体に示し、6月末をめどに財源を含めた枠組みを決定する。復興庁は、自治体の負担は限定的で財政の自立にもつながると理解を求める考えだが、被災地からは復興の障害になると反発が出ることが必至だ。
 政府は11~15年度を集中復興期間とし、復興特別会計に26兆3000億円を計上、全額国負担で被災地を支援してきた。16~20年度に復興に必要な費用について、青森、岩手、宮城、福島の4県が計8兆3900億円と試算しているのに対し、政府は復興予算として5兆円前後を想定している。
 兵庫県によると、阪神・淡路大震災では10年間の復興事業費16兆3000億円のうち約6兆円を地元自治体などが負担。政府は東日本大震災でも、全額国負担は集中復興期間だけの特例と位置付け、16年度から自治体の負担が必要と判断した。
 これまで通り国が全額負担するのは(1)集落の高台移転や災害公営住宅の建設など復興交付金の基幹事業(2)原発事故からの復旧・復興(3)中小企業復旧のためのグループ補助金(4)被災者の心のケア(5)応援職員の派遣費用-などの見通し。

復興と現実

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