総連事件の裏で蠢く日朝の攻防
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総連事件の裏で蠢く日朝の攻防

在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)トップの許宗萬(ホジョンマン)議長の次男、許政道(ホジョンド)容疑者が逮捕された。日本の警察当局による強制捜査に対し、総連側は拉致再調査の中断も示唆したが、政府は強硬姿勢を崩していない。事件の裏で蠢く日朝攻防の深層やいかに。

在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)トップの許宗萬(ホジョンマン)議長の次男、許政道(ホジョンド)容疑者が逮捕された。日本の警察当局による強制捜査に対し、総連側は拉致再調査の中断も示唆したが、政府は強硬姿勢を崩していない。事件の裏で蠢く日朝攻防の深層やいかに。

小島新一のズバリ正論

逮捕され、自宅を出る許政道容疑者(中央)
 日本政府独自の対北朝鮮制裁で輸入が禁じられている北朝鮮産のマツタケが中国産と偽って不正輸入された事件で、5月12日、京都府警と神奈川、島根、山口県警の合同捜査本部は、外為法違反の疑いで、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の許宗萬議長の次男、許政道容疑者を逮捕した。
 北朝鮮による日本人拉致事件の「再調査」などをめぐる昨年来の日朝協議が行き詰まる中、日本国内の「事実上の北朝鮮大使館」とも称される総連トップの親族逮捕という異例の事態に発展した事件。捜査は、協議で不誠実な対応を繰り返す北朝鮮に対する日本政府の圧力という見方が浮上している。捜査の手は、総連幹部らへとさらに伸びるのか。日朝協議の行方は。許政道容疑者の逮捕を“予見”した西岡力・東京基督教大学教授の「正論」6月号への緊急寄稿を紹介する。

表舞台で火花

日朝協議「中断」

 4月3日、政府は北朝鮮が日朝政府間協議の中断の意向を通知したことに対して「受け入れられない。極めて遺憾だ」と正式に抗議した。安倍晋三首相は同日、拉致被害者家族会のメンバーと官邸で面会し、北朝鮮の通知について「全く受け入れることはできない。今後も毅然(きぜん)とした姿勢で対応に当たる」と述べた。
 菅義偉(すが・よしひで)官房長官は記者会見で、抗議について、日本が昨年5月の日朝合意を誠実に履行している点や、北朝鮮側が中断の意向を示す理由とした在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)幹部らの捜査について法と証拠に基づいて実施した点を挙げたことを明らかにした上で「拉致被害者再調査を迅速に行い、一日も早く結果を報告するよう強く求めている」と述べた。
 拉致被害者再調査に関し、北朝鮮側は拉致被害者の安否情報を欠いた初回報告を行うと日本政府に打診。政府は「拉致最優先」の基本方針に基づき拒否した。拉致被害者について誠実な報告をしない北朝鮮への圧力を強めるため制裁強化に踏み切っていた。
 首相は1年ぶりとなる家族会メンバーとの面会で、「安倍政権にとって拉致問題の解決は最重要課題だ。全ての拉致被害者が速やかに日本の地を踏むことができる結果を出すため、あらゆる手段を尽くす」と述べ、改めて意欲を示した。
 再調査の進捗(しんちょく)現状については「現在のところ北朝鮮側から具体的な情報を含む調査結果は残念ながら出てきていない」と説明した。

本気かポーズか


李英和(リ・ヨンファ)関西大教授

 日朝政府間協議中断の意向を示す通知を出したからといって、北朝鮮は決して中断する決意を固めたわけではない。今回北朝鮮の狙いの一つは、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)対策にある。朝鮮総連トップが家宅捜索を受けたのに、北朝鮮の政権が何もやらないと反発が起きる。このため、内部向けにポーズを取ったのだろう。北朝鮮は拉致問題を自分たちのペースに引き込もうとしているが、日本は脅しに屈せず、揺るがないという意思を示すことが必要だ。


辺真一(ピョン・ジンイル)コリア・レポート編集長

 今回の『協議中断』通知は意向を示しただけで、本気の度合いは低いだろう。昨年5月のストックホルムでの日朝合意、または昨年7月の制裁の一部解除から1年となるのを前に、何らかの報告があるのではないか。ただ、拉致問題に関する進展がないなど、日本が満足するような内容ではない可能性もある。この期に及んで、調査結果報告の早い遅いは問題ではない。嘘偽りのない、誠実な回答をするよう日本政府は北朝鮮に働きかけていくべきだ。

元拉致担当相の警告

捜索に憤慨

北朝鮮が捜索に非常に
怒っていると述べた
朝鮮総連の南昇祐副議長
=4月25日(共同)
 3月26日、朝鮮総連の許宗萬議長宅への家宅捜索以来、北朝鮮は日本政府への非難を繰り返した。朝鮮総連は東京の警察庁前で100人以上を動員した抗議活動などを重ねてきた。
 北朝鮮本国も朝日友好親善協会といった対外団体を駆使して対日批判を繰り広げてきた。朝鮮労働党機関紙の労働新聞は4月末、総連トップ宅などへの強制捜査に「われわれは、日本がなくとも生きてきたし、今後も生きていける」と反発をむきだしにした上で、「日本は朝日関係を最悪の事態へ追い込む愚かな自滅行為をしている」と非難した。
日本当局の不当な強制捜査に関する総聯中央常任委員会声明(pdfファイル 在日本朝鮮人総聯合会、2015.03.26)

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