老人の老人による老人のための政治
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老人の老人による老人のための政治

大阪都構想に関する住民投票の結果からにわかに巻き起こった「シルバーデモクラシー」論争。将来に責任を持つ有権者層の意見を政治に反映できないと言われて久しいが、高齢者の発言力が強すぎるのか、それとも若者があまりに政治に無関心すぎるだけなのか。

大阪都構想に関する住民投票の結果からにわかに巻き起こった「シルバーデモクラシー」論争。将来に責任を持つ有権者層の意見を政治に反映できないと言われて久しいが、高齢者の発言力が強すぎるのか、それとも若者があまりに政治に無関心すぎるだけなのか。

負担と給付の格差解消は

「シルバーデモクラシー」論考

 5月17日、橋下徹大阪市長の看板政策「大阪都構想」が否決された住民投票。「シルバーデモクラシー」論がにわかに起こったのは50代以下の有権者が賛成が5割を超えたものの、60代、70代が反対多数だったという出口調査の結果がきっかけとなった。現役世代よりも高齢者の意見が政治に過剰に反映されるという問題提起に対してインターネット上で様々な反響があがった。
 次世代の意見がより政治に反映されやすくするにはどうしたらよいのか。6月18日、改正公職選挙法の成立による選挙権年齢を「18歳以上」への引き下げ効果も期待されているが、早くから年齢構成による「一票の格差是正」解決策を主張する識者もいる。人口統計学者のポール・ドメイン氏は投票権を有していない未成年に投票権を与え、親が代理投票するという「ドメイン投票法」を提唱する。また「年齢別選挙区」の導入を主張するのは井堀利宏東大大学院教授だ。青年・中年・老年の3つのグループに分け、ぞれぞれのグループから有権者の数に比例した定数の議員を選ぶというものだ。
■「ドメイン投票法」の衝撃(総合研究開発機構、2011.04)
■井堀利宏氏「年齢階層別選挙区制の導入を」(日本経済研究センター『斎藤主幹が聞く 暴論?正論?』、2015.03.23)

若者たちの焦燥

若者の政治離れ 顕著に

 総務省が衆院選実施後に公表している「年齢別投票状況」によると、若者の関心低下と高齢者の投票率の高さが顕著に表れている。73.31%の投票率を記録した平成2(1990)年の第39回総選挙では一番低い20~24歳でも52.85%と2人に1人が投票した計算になるが、戦後最低(52.66%)を記録した直近の第49回(平成26年)では29.72%まで低下。10人に7人が棄権したことになった。
 若年層とは対象的に、第39回で最も投票率の高かった年齢層は60~64歳の87.40%で、65~69歳も86.96%と60歳台が最も関心が高かった。14年が経った昨年の総選挙でも70~74歳(72.16%)、65~69歳(70.11%)の順で高かった。

大胆な提言

高齢者に手厚い社会保障費

 2014年11月、国立社会保障・人口問題研究所は平成24年度の「社会保障費用統計」を公表。2011年度におけるOECD(経済協力開発機構)基準に基づく社会支出の国際比較統計によると、日本と諸外国(米国、英国、ドイツ、フランス、スウェーデン)の政策分野別社会支出の割合を比較すると日本の高齢・遺族分野での支出は52.6%と、他の5カ国の平均を15%以上も上回った。
 一方で家族分野の支出割合は5カ国平均では10%を超えているが、日本は約半分の5.7%どまりで、社会保障費の分配に関して日本の高齢者優遇が見て取れる。
■社会保障費用統計(平成24年度)(国立社会保障・人口問題研究所、2014.11.11)

真の敗因は

若者よ、とにかく選挙に行け!

 老人の老人による老人のための政治。19世紀、奴隷解放宣言で知られる米大統領、リンカーンが民主政治の原則を大衆の前で訴えた演説をもじり、最近こんな言葉をよく耳にする。高齢者の意見が過剰に政治に反映される「シルバーデモクラシー」とも揶揄されるが、先の大阪都構想をめぐる住民投票の結果を受けて、このフレーズがメディアでも頻繁に使われるようになった。
 65歳以上の高齢者が総人口に占める割合が25%となり、「超高齢化社会」の進行著しいわが国にあって、全有権者に占める高齢者の割合が高くなるのは当然だ。多数意見が政治を動かす民主主義国家であればなおのこと、高齢者を優遇する政策が政治に反映されやすくなるのも自然な流れと言えるだろう。
 国立社会保障・人口問題研究所が昨年11月に公表した社会保障費用統計によると、2012年度の政策分野別の社会支出(OECD基準)のうち高齢者政策の割合は、全分野の中で最も高い47・6%、金額にして53兆6272億円に上る。他の先進国と比較しても群を抜いて高く、この数字だけをみればわが国の高齢者政策の優遇ぶりがうかがえる。大阪都構想の否決をめぐっても、敬老パスの廃止がクローズアップされたが、こうしたお年寄りへの優遇策を「老害」と批判する声は決して少なくない。
 ただ、社会支出が高齢者に偏っていることと、「老害」批判をごちゃ混ぜにする議論はいささか的外れである。政治の方向性を決定するのは、あくまで有権者の意思であり、その意思を表明する場として投票という機会が与えられているからに他ならない。
 この手の議論でいつも引っ掛かるのは、「政治に関心がない」とか「投票しても何も変わらない」といった無関心、無気力の若者による「選挙離れ」の原因をすべて政治不信に擦り付けてしまう風潮である。
 確かに、日々政局ばかりに明け暮れる政治家の言動や、最初は「若者目線だ」と調子の良いことを言いながら、いつしか長老議員の意見に流されていく体たらくをみせられると、一票を投じる行為自体、バカバカしくなることもある。だからといって、選挙で「白紙委任」してしまえば、ますますお年寄りの政策を優遇することになることも肝に銘じるべきだろう。
衆院選、大阪市内の投票所で投票をする人たち=2014年12月14日午前
 我々は一票を投じることでしか政治を変えることができない。投票しないことは現状を受け入れたに等しい。選挙にも行かず、ただ「老害」ばかりをあげつらうのは、それこそただのわがままに過ぎない。無責任に駄々をこねるのは子供だけでいい。現状を憂い、自分の生活やこの国の未来を少しでも案じているならば、やはり選挙に行くしかない。
 くしくもつい先日、選挙年齢が18歳以上に引き下げられる法案が成立した。これをチャンスに変えるのも変えないのも、彼ら若者たちの意欲次第である。むろん、お年寄りがもっと将来世代に配慮すべきだという意見も忘れてはならない。だが、他人任せで甘えていても結局は同じことの繰り返しだ。いま必要なのは、自分たちの意識改革しかない。
 「せっかく選挙権を与えても…」とお年寄りたちに「バカ者」扱いされないためにも、投票できる権利を目いっぱい行使しよう。すぐにはダメでも、近い将来、君たちの選択がきっと大きなうねりとなる日が来る。(iRONNA編集長、白岩賢太)
老人の老人による老人のための政治

みんなの投票

井堀利宏氏が提唱する「年齢別選挙区」の導入についてどう思いますか?

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