橋下徹とデモクラシー
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橋下徹とデモクラシー

僅差の都構想否決という民意を現状肯定と受け取り、また「だんだん悪くなる大阪」を続けていく時間は、どのくらい残されているのだろうか。大阪の地盤沈下に、政令市と地方議会の限界。都構想が投げかけた大都市の課題は置き去りのままだ。

僅差の都構想否決という民意を現状肯定と受け取り、また「だんだん悪くなる大阪」を続けていく時間は、どのくらい残されているのだろうか。大阪の地盤沈下に、政令市と地方議会の限界。都構想が投げかけた大都市の課題は置き去りのままだ。

大江紀洋の視線

 キタの梅田地区は再開発された駅ビルや百貨店が林立し、ミナミの難波地区を歩けば外国人旅行者の数に圧倒される。大阪の景気は、表面的には悪くないようにも感じられる。
 しかし、10年前、20年前の記憶を思い出しながら、街の奥へと歩みを進めれば、その風景は過去とは大きく異なっている。落書きされたシャッターが続く活気のない街。浮浪者の数は明らかに増えた。「全国的にも有名な西成だけではありません。大阪の人間でも歩くと怖いと感じる地区が増えました」(ある大阪市民)。
あべのハルカス。左下は通天閣
 大阪の存在感は、他の地方中核都市と何ら変わらなくなってきた。業績絶好調のトヨタ自動車のお膝元である名古屋や、アジアとの結びつきを強める福岡のほうが、街として元気がある。
 統計にもはっきり現れている。1人あたり所得は東京から大きく離され、愛知を下回る。生活保護は全国的に見て突出して多い。若年層の失業率も他の政令市よりかなり高く、女性就業率は47都道府県中45位。治安は悪く、離婚率は高く、学力テストの成績は低い。悲しいのは、もうこの種の情報を聞き飽きて、ニュースだと感じなくなっていることだろうか。
「慰安婦問題をはじめとする橋下さんの奇をてらった発言には感心しないし、都構想で何がどう良くなるのか具体的には見えてこない。でも、あれほど現状を変えようとする政治家はこれまでいなかった。都構想には不安もあるが、廃藩置県だって明確な絵図面があったわけではないでしょ。まずは枠組みを変えてみて、新しいことにチャレンジする雰囲気を創ることは、大阪にとって最も必要なことではないか」
 大阪在住のある女性経営者はこんなふうに語ったが、現役世代のサイレントマジョリティ―の最大公約数はこんなところではないだろうか。
 あれだけ舌禍を起こす橋下徹市長が、まだ選挙にめっぽう強いのは、東京などから見れば奇異かもしれない。横山ノック知事を生んだ関西気風もあるだろうが、横たわっているのは、時間が経つに連れ深まるばかりの将来不安だろう。都構想否決の民意を現状肯定と受け取り、また「だんだん悪くなる大阪」を続けていく時間は、どのくらい残されているのだろうか。
 Wedgeでは、有識者たちに「ポスト大阪都構想」を論じてもらったが、賛成派、反対派にかかわらず共通していたのは、大阪に典型的に表れている「大都市問題」を、大阪市民が判断する大阪の問題として放置した中央政府の無責任さである。
 「都構想は終わった。橋下市長も引退か」という程度の認識で眺めているようだと、東京はいずれ大きなしっぺ返しを食らうだろう。
(Wedge編集長)
   

稀代の「嘘つき」

存在感 呟き再開

 橋下徹大阪市長が12月の任期満了まで半年となった18日、維新の党最高顧問として国政課題についても「自由に発言していく」と述べた。安倍晋三首相と14日に会談して以降、衆院で審議中の安全保障関連法案に対する持論をツイッターに頻繁に投稿。政界引退の意向は変わらないとするが、19日開催の政治資金パーティーは約千人の来客を見込んでおり、“橋下劇場”と呼ばれた存在感を取り戻しつつある。
「自由な身になりたかったので最高顧問を辞めたいと伝えたら、松野さんから『発言は自由だ』と言われた。安全保障は見直しの時期に来ているので、自由に言わせてもらっている」
 橋下氏は18日の定例記者会見で、安倍首相と菅義偉官房長官との会談前、約2時間半にわたり維新の松野頼久代表や柿沢未途幹事長と面談した際、「発言の自由」を確約されたことを明かした。
 5月の住民投票で「大阪都構想」が頓挫(とんざ)した後、橋下氏は登退庁時の取材対応をやめ、動向が報じられる機会は激減した。ツイッターも途絶えていたが、松野氏らとの面談をきっかけに本格的に再開。「民主党とは一線を画すべき」と書き込み、維新の是々非々路線を堅持させた。

無策の政府

失われた4年

都構想対案「大阪会議」

 大阪府と大阪、堺の両政令市の首長や議員が広域的な行政課題を話し合う「大阪戦略調整会議」(大阪会議)の設置条例案が府、大阪市の両議会に続いて24日、堺市議会で可決・成立し、設置が確定した。これまで、府と大阪市の間には両自治体にまたがる政策課題について協議する「府市統合本部会議」があったが、堺市も加えた協議の場ができることに期待する声がある。一方で、大阪会議での議題をめぐり、提案した自民党と大阪維新の会の間に認識のずれがあり、実効性のある会議になるかどうかは不透明だ。(産経新聞 2015.6.25)

大都市と二重行政 指定都市市長会は11年に、道府県のような広域自治体には包含されず、旅券発給や警察も含め地方の事務をすべて担う特別自治市の創設と、対応する税財政制度の構築を提案。国は昨年、地方自治法を改正し、政令市と都道府県が事務処理について協議する調整会議や、政令市で現在の行政区に代わり総合区を設け、議会同意を得て特別職の総合区長を置ける仕組みを導入した。(時事ドットコム 2015.03.27

■「静岡型県都構想」- 大都市行政、広域行政の新たな方向性(Blogos 2015.05.30)


都構想が突きつけたもの

不真面目な分権論

 振り返れば、「都構想」に対する中央政党の中途半端な対応も目についた。
 自民党は都構想に反対する大阪府連とはやや距離を置いていた。だが住民投票が近づくと、橋下氏にシンパシーを持つ官邸サイドと、共産党とまで反対で共闘した府連に同情する党本部との温度差が拡大した。
 民主党は政権担当時、今回の住民投票に道を開く大都市地域特別区設置法を成立させた。住民投票の賛否は「大阪府連が判断すること」と態度を曖昧にした。
 国政選挙のたび、地方にこびを売るように分権への積極姿勢を示すのは与野党を問わない。民主党は地域「主権」をいまも掲げている。
 だが、自民、公明、維新などが熱心だった道州制の議論は低調だ。自民党は道州制基本法を制定し、5年以内の導入を目指すという公約を掲げていたが、店じまいしたようだ。
 維新が今後、与党寄りになるか、野党共闘に引き込まれるかに焦点は移った。だが、住民投票が残した宿題はそんなことではなかろう。国が果たすべき役割はどこまでかなどの具体論を尽くし、言葉先行の地方分権から脱却してはどうなのか。(産経新聞 2015.5.26)
橋下徹とデモクラシー

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