ご聖断下る「日本のいちばん長い日」

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ご聖断下る「日本のいちばん長い日」

「五内為に裂く」。70年前のあの日、終戦の詔勅を自ら読み上げられた昭和天皇は、この一節で語気が変わられたという。深い悲しみと嘆き。ラジオから流れる陛下のお言葉に耳を傾けた日本国民は、そのとき誰もが涙した。ご聖断と終戦に揺れた「日本のいちばん長い日」とは何だったのか。

「五内為に裂く」。70年前のあの日、終戦の詔勅を自ら読み上げられた昭和天皇は、この一節で語気が変わられたという。深い悲しみと嘆き。ラジオから流れる陛下のお言葉に耳を傾けた日本国民は、そのとき誰もが涙した。ご聖断と終戦に揺れた「日本のいちばん長い日」とは何だったのか。

戦争を終わらせたもの

玉音放送の原盤初公開

玉音放送の原盤正本。70年ぶりに
再生に成功した=皇居・宮内庁庁舎
(代表撮影)  
 宮内庁は戦後70年にあたり、昭和天皇が国民に終戦を伝えた玉音放送の原盤と再生した音声を公開した。原盤と音声の公開は初となる。玉音放送は終戦前日の8月14日、ポツダム宣言の受諾を最終的に決めた昭和天皇が同日午後11時25分から、宮内省内廷庁舎)2階の御政務室で読み、隣室で日本放送協会(NHK)の技術職員が録音。15日正午に放送されたのは2回録音が行われたうちの2回目(原盤正本)だった。(終戦を伝えた玉音放送の音声はこちら
■終戦の玉音放送 - 音声、写真、詔書(PDF)など(宮内庁)

ご聖断仰ぐ以外に道なし

利あらずとも起つ

戦時の記憶

「終戦」を語る

 「五内為に裂く」-今から70年前、終戦の詔勅を自ら読み上げた昭和天皇は、この一節で語気が変わった。深い悲しみと嘆きの思いがにじみ出ているように聞こえる。
 国民の多くが戦陣に散り、銃後にあっても戦災に斃(たお)れ、さらにその遺族の悲しみと苦労に想いを致せば―としたうえで「五臓が引き裂かれるようだ」と述べられたのだ。
 その思いがいかに深いものであったかは、肉声を聞かなければわからないだろう。別冊正論「再認識『終戦』」には、終戦の詔勅全文に加え、付録の2枚組CDに玉音放送用の録音が鮮明な音質で収録されているので、お聴きいただきたい。
 玉音の前後には国歌君が代のオーケストラ演奏が流れる。この演奏はラジオ放送では音が潰れてきれいではないが、付録CDに収録されたものは、おそらくレコード原盤から音を録ったと思われ、非常に音質が良い。
 穏やかで豊かな日本の国柄や歴史が目に浮かぶような戦前の「世界で最も美しい」といえる名演であり、戦後の「世界で最も美しい」宇宿允人指揮の「君が代」とともにお聴きいただければと思う。
終戦詔書ご署名原本
 終戦の詔勅は、内閣書記官長だった迫水久常が原案を書き、漢学者の安岡正篤(まさひろ)が監修して手直しした。その後の閣議で「義命」が「時運」に直されたことが、いかに悪影響を及ぼしたかを安岡が迫水に指摘したことなど、迫水の興味深い証言もある。
 「敗戦」という日本にとって未曽有の事態に、当時の人々はどう対処し、どんな思いを抱いていたか。同誌ではさまざまな証言や分析を紹介している。
 「終戦」を語るには、「なぜ戦争になったのか」を知らねばならないだろう。対米英宣戦の詔勅、これを受けた東條英機総理大臣の「大詔を拝し奉りて」、奥村喜和男情報局次長の「宣戦の布告に当り国民に愬(うった)ふ」など、戦後はほとんど顧みられなかった政府文書も同誌には収録した。
 GHQやソ連、中共の思想工作など〝戦後フィルター〟を排して、原点の思いを見つめ直したかったからだ。
 当時の政府中枢の主張に鮮明なのは、欧米の日本を含むアジアに対する差別、蔑視、支配欲を打破しなければならないという思いだ。
 特に日本に対する列強の差別的処遇は止まることなく繰り返された。朝鮮を清の封建支配から独立させた日清戦争の勝利では、清の日本に対する遼東半島割譲に仏、独、露が反対(三国干渉)し、返還を余儀なくされた。
 満洲に止まらず朝鮮半島にまで触手を伸ばしたロシアの南下を食い止めるための日露戦争は、勝利して最大目的は達成できたが、講和を斡旋した米国の思惑もあって、幕末から明治初頭にかけてロシアに侵奪された樺太は南側しか回復できず、戦争賠償金も取ることができなかった。
 第一次大戦の連合国として戦勝した日本は、戦後処理のパリ講和会議で、欧米のアジアに対する差別をなくすべく、世界初の「人種差別撤廃提案」を行った。しかし、賛成多数にかかわらず議長だったウィルソン米大統領の裁定で否決されてしまった。
 〝戦後フィルター〟を通せば悪魔のように言われる大東亜共栄構想だが、構想の背景には、こうした「黄色い日本」「劣ったアジア」への差別に対する積年の思いがあることが、原点の史料からわかる。
 戦争は不条理そのものであり、不条理なことが原因となって起こる。だからこそ事前に抑えなければならない。このためには何を為すべきか。敗戦=終戦の教訓を私たち自ら深く考えたい。そして、これを実行しようとしている安倍政権の努力を見守りたい。(「別冊正論」編集長 八並朋昌)
ご聖断下る「日本のいちばん長い日」