サラリーマンの発明は誰のものか

サラリーマンが発明した特許をめぐる議論が政府内で本格化している。青色発光ダイオード(LED)を発明した日本の研究者3人が、今年のノーベル物理学賞に選ばれたのを機に、わが国の特許制度について改めて考える。

問題の焦点

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職務発明をめぐる論議


企業などに勤務する研究者や従業員が、その業務範囲の中で職務上行った発明。職務上ではないが、勤務する企業などの業務範囲に入るような発明は業務発明。職務にも業務にも関係のない発明は自由発明という。特許法第35条は、職務発明について、使用者(企業など)に通常実施権(自由に利用できる権利)を認めているほか、「相当の対価」の支払いによる権利の譲り受けを認めている。しかし、特許法改正前の規定には「相当の対価」についての確たる判断基準がなかったため、低額なケースが多かった。このために、青色発光ダイオードを巡る日亜化学工業と中村修二・カリフォルニア大教授との巨額な訴訟のほか、日立製作所や味の素などでも職務発明者による高額な提訴が相次いだ。2004年の特許法改正では、「相当の対価」を使用者と発明者(従業員)が個別に合理的な基準で決めることが明記され、個々の企業における発明報奨制度は大幅に改善されることとなった。ただし、発明の価値評価、発明者の貢献割合や貢献範囲(海外収益にも及ぶか否か)の算出など難しい課題もあり、金銭面のみでの解決には限界がある。


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成果と報酬めぐっては議論も噴出

2005年に中村氏と日亜化学との間で和解が成立した際には、和解の内容をどのように位置づけるかでさまざまな意見が出された。下に再録している哲学者・山崎行太郎氏の寄稿は当時、産経新聞に掲載されたもので、共同研究者への配慮を強く求めているもの。一方では、地裁判決で「200億円」と認定された支払額が、和解の結果8億4000万円にまで減額されたことには、中村氏や開発者側から、算定基準の曖昧さなどへの不信感が高まった。

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受賞者はどんな人?

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あらゆるところにLED

ノーベル物理学賞の受賞につながった青色発光ダイオード(LED)は、照明や家電製品などに使われており、われわれの生活を大きく変えた。消費電力が少なく、寿命の長いLEDは、家庭用の照明やスマートフォンなどのバックライトといった用途に使われているほか、従来のDVDよりも記憶容量が大幅に増えたブルーレイディスクなどの普及にもつながった。
 

 電機製品の大幅な発展を促し、日本や世界の経済を大きく変えた発明だった。家庭用の照明だけでなく、スマートフォンでは、画面を表示する液晶ディスプレーのバックライトにLEDが使われている。蛍光管では消費電力が大きく、小型化にも限界があったためだ。平成24年5月に開業した東京スカイツリーでは、夜間のライトアップを全てLEDによる照明で行っている。

 さらに、青色LEDの原理を応用した家電のひとつが、ブルーレイディスクのような光ディスク製品だ。赤色LEDをレーザー読み取り装置に応用したコンパクトディスク(CD)やDVDに比べ、青色の光は波長が短いことから、4倍以上の情報量が伝達できる特性を活用した。このほか、競技場などの大型ディスプレー、自動車のウインカー、ブレーキランプといった車載照明、普及が進む植物工場用の照明などにも使われている。発熱が少ないため植物に与える影響が少ないほか、電球に比べ点灯速度が速いなど、LEDの特性を生かした用途は広がりつつある。

 富士キメラ総研の調査によると、25年のLEDの世界市場は1兆5729億円。32年までに2・4倍の3兆7588億円になると予測している。