米大統領選で危険な候補がウケる理由
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米大統領選で危険な候補がウケる理由

ほぼ1年をかけた長期レースの幕が開いた米大統領選。ブッシュ家とクリントン家の「王朝対決」と言われた当初の見方から一転、2つの異変が起きている。大本命のヒラリー・クリントン氏の失速と大富豪、トランプ氏の快進撃だ。なぜ、トランプ氏のような危険な主張を掲げる候補が支持されるのか。

ほぼ1年をかけた長期レースの幕が開いた米大統領選。ブッシュ家とクリントン家の「王朝対決」と言われた当初の見方から一転、2つの異変が起きている。大本命のヒラリー・クリントン氏の失速と大富豪、トランプ氏の快進撃だ。なぜ、トランプ氏のような危険な主張を掲げる候補が支持されるのか。

米国の次の指導者はだれなのか

 米国内は来年11月8日に予定されている大統領選の話題で早くも盛り上がっている。いまマスメディアで何かと取り上げられるのは共和党の候補者指名を目指すと目されている大富豪ドナルド・トランプ氏の少々、奇矯な言動なのだが、トランプ氏が米国の次の指導者になることを本気で期待する人は、実は米国内でも極めて少数でしかないだろう。では、だれが…となると、壮大な政治ショーでもある米国の指導者選びが、今回はいささか色あせて見えてもくる。(宮田一雄)

国民に夢を抱かせる候補者がいない

噴出した潜在的な不信感

なぜ「旋風」が起きたのか

なぜ長期レースなのか

 米国の大統領選挙は、それぞれの政党が正副大統領候補を絞り込むため州ごとに行われる党員集会(合議で党大会に送り込む代議員を選出)や予備選(投票で選出)を経て、党指名の候補者が11月の第一月曜日の翌日の火曜日(2016年の場合は11月8日)に行われる本選挙に臨む。つまり党の指名候補を選ぶ第一ラウンドとその候補者の中から大統領を選出する第二ラウンドの二段階方式になる。
 第一ラウンドは2016年2月1日のアイオワ州党員集会からスタートし、ほぼ半年間、続く。ここで選ぶのは7月の全国党大会に出席する代議員で州ごとに割当数があり、勝った候補者が割当数分を総取りするか、あるいは得票数に比例して配分される(獲得する)仕組みだ。
 全国党大会は共和党が7月18日~21日、民主党が7月25日~28日の予定で、このあとがいよいよ両党(あるいは第三の党を含む)候補者の選挙戦となる。
 ほぼ1年をかけた長期レースになるのは各州の意見を反映させる党の候補者選定プロセスが重視されているからであり、逆にその長期レースを戦い抜くには周到な準備が必要なことから、前哨戦も次第に前倒しされる傾向になっている。

サバイバル・レースの勝者は

「トランプ現象」が示していること

 ともあれ、「またもクリントン家とブッシュ家の戦いか?」などと言われていた2016年選挙の序盤戦を盛り上げてくれたことは、トランプ旋風の功績と言えよう。それ以上に、今の米国における「怒れる有権者」の気分を掘り当てた意義は大きい。 景気指標から言えば、「米国経済は好調だ」ということになっている。だが、普通の国民が好況に沸いているかといえば、けっしてそんなことはあるまい。企業業績が好調であっても、失業率が5.1%まで下がっていても、景気信頼度は低く、ワシントン政治に対する信認は地を這うような水準である。だからこそ、「この国は日に日に偉大でなくなりつつある」「中国の指導者は、われわれの指導者よりも賢い」といったトランプ氏のメッセージがリアルに響くのであろう。
米共和党の大統領選候補者による討論会
=2015年9月16日、カリフォルニア州
シミバレー(ロイター=共同)
 もうひとつ、「政治家の言葉」に対する信頼が極端に低下していることも明らかになったと言えよう。普通の政治家が問題発言をすれば、非難を受けて支持率は下落する。しかし政治家ではない――暴言が売りのテレビタレントと思われている――候補者が口にすれば、いくらマスコミが叩いてもほとんど効果がないのである。
 ことによると米国政治には、オバマ大統領という見た目がカッコよく、言葉が巧みで、けっして失言しない大統領の時代が6年半も続いたことによる反動が生じているのかもしれない。プロ政治家の美辞麗句に信用がおけなくなり、有名人のぶっちゃけ本音トークに人気が出ているようなのである。わが国における一時期の橋下徹大阪市長人気にちょっと似ている。
 2016年選挙の序盤戦の焦点は、このトランプ現象をうまく解析し、有権者に対して「解決策」を提示することであろう。それはプロ政治家の仕事でなければならない。共和党の候補者選びにおいては、アウトサイダー候補の優勢が当面は続くだろうが、2016年に入って予備選挙の日程が近づくと、「勝ち目のある候補者」に目が向くようになる。雰囲気は一変するはずである。(双日総合研究所副所長・吉崎達彦、2015.09.11
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