「核のごみ」から目を背ける日本人
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「核のごみ」から目を背ける日本人

いま日本には原発から出る「核のごみ」がどれだけあるのかご存じだろうか。福島原発事故以降、原発再稼働をめぐる議論は活発だが、既に生じた核のごみをどう処分するのか、この議論が決定的に欠けている感は否めない。日本人よ、もうこれ以上核のごみから目を背けてはならない。

いま日本には原発から出る「核のごみ」がどれだけあるのかご存じだろうか。福島原発事故以降、原発再稼働をめぐる議論は活発だが、既に生じた核のごみをどう処分するのか、この議論が決定的に欠けている感は否めない。日本人よ、もうこれ以上核のごみから目を背けてはならない。

その気になれば絶対決まる

50年以上続く異常事態

適地選定 待ったなし

「核のごみ」こう処分する

 5月22日、政府が高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針を7年ぶりに改定した。最終処分地に自治体が応募する方式から、国が地震や火山の影響を受けにくい複数の「科学的有望地」を示し、選定を主導する形に転換する。
 Q 他に何が変わるのか。
 A 高レベル放射性廃棄物を地下に埋めた後でも、将来的に政策の変更や技術的問題が発生した場合、処分を中止し回収できるようにした。自治体の負担を軽減し、受け入れやすくする狙いがある。
 Q 高レベル放射性廃棄物はどれほどあるのか。
 A 日本には現在、使用済み核燃料が約1万7千トン保管されている。既に再処理した分を含めると、約2万5千本のガラス固化体がある計算だ。
 Q ガラス固化体とは何か。
 A 国は使用済み燃料を再処理してプルトニウムやウランを取り出し、原発で再利用する核燃料サイクルを推進している。再処理後に残る廃液をガラスと高温で融かし合わせて固めたものがガラス固化体で、管理や処分に適している。
 Q どのように処分するのか。
 A 政府は平成12年「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」を定め、地下300メートルより深く安定した地層に処分する「地層処分」を決めた。しかし、14年から原子力発電環境整備機構(NUMO)が行ってきた公募に手を挙げる自治体はなかなか現れなかった。19年に高知県東洋町が立候補した後に撤回してからは一向に進展していない。
 Q なぜ進展しないのか。
 A 核のごみは数万~10万年にわたり、生活環境から隔離する必要がある。ガラス固化体を鉄の容器に封入し、さらに締め固められた粘土の緩衝材で覆う人工バリアを施すことで、地中に放射性物質が漏れ出さない対策を取るが、地震などの自然災害による影響を不安視する住民などの声が根強い。
 Q 選定の流れは変わるか。
 A 国が前面に出るようになっても流れが変わるかどうかは不透明だ。最終処分地が決まっているのはフィンランドとスウェーデンのみで、世界各国で選定は難航している。長い時間をかけて、国民の理解を得られるような継続的な努力が必要だ。

日本に埋める場所はあるのか

「原発」をどうするのか? 政府は国民に真正面から語れ

 2014年10月20日、小渕優子さんが経済産業大臣を辞任した。実は、まさにその日、僕は小渕さんを取材することになっていたのだ。もちろん取材は取りやめになり、僕はがっかりした。小渕さんにどうしても聞きたいことがあったからだ。「原発」についてである。
 僕はこの1年間、原子力行政に関わる政治家、官僚、学者、そしてメーカーを取材してきた。賛成、反対を超えて、さまざまな立場の数多くの人たちに話を聞いてきた。そして、この取材を通して実感したのは、政府は原発に対して、つまりはエネルギー問題に対して、腰が引けているということだった。
 政府は「エネルギー基本計画」のなかで、「原発依存度を可能な限り低減する」としながらも、「重要なベースロード電源」と位置づけている。そして、石油、石炭などの火力、水力、原子力発電、そして再生可能エネルギーなどの、目標とするエネルギーの割合が、そこには一切記されていないのだ。
 現状で具体的な数字を出すのは難しいだろう。だが、「基本計画」なのだから、いつまでに「ベストミックス」を発表する、という目標があってしかるべきだ。反原発の世論に遠慮している、としか僕には思えない。
ガラス固化体が貯蔵されている青森県六ケ所村の高レベル放射性廃棄物管理センター
 日本が原発事故を起こしたのは、変えようのない事実だ。あれだけの大事故だったのだから、反原発、脱原発の空気が国民の間で広まるのは自然な流れだ。しかし、だからこそ、これから原発をどうするのかを、政府は国民と真っ向から向き合って議論し合い、エネルギー戦略を決めていかなければならないのだ。ところが、政府ははっきりと方針を示さない。そして、世論を気遣うあまり、「基本計画」も何を言いたいのか、さっぱりわからないものになっている。
 現在、エネルギー問題に関わるのは、経産省、環境省、文科省などだ。完全な縦割りだ。だから、そこには総合戦略がない。省庁を超えたエネルギー対策の組織が必要なのである。
 そのうえで、原発事故を起こした日本は、「原発事故先進国」になるべきだ、と僕は思っている。現在、世界には400基以上の原発が稼働している。とくに中国、ベトナムなどアジアで、今後、原発は増えていく。だが、どんな分野の技術でも「完全」はない。事故が起こる可能性は十分にある。そのような事態になったとき、技術的な対応、住民の避難誘導、事故後の復興、廃炉などのあらゆるノウハウを、多角的に提供できる国に日本はなるべきなのだ。
 いま僕は、とても懸念していることがある。原発事故が起きる前、政府や電力会社、自治体などは、「難しい説明をしても住民にはわからない」と、とにかく安全だと説明した。そうして「安全神話」ができあがった。安全だから事故の心配はない。だが避難訓練をすると、事故の可能性があると言ってしまうことになり、住民が不安に思うかもしれない。このような理屈で、原発のある自治体は避難訓練さえ行わなかった。そして、いつしかこの安全神話に、電力会社も政府も、自治体も、どっぷりはまってしまったのだ。
 いま、政府は「脱原発」の世論を恐れるあまり、国民と真っ向から向き合っていないと、僕は感じている。その象徴が「エネルギー基本計画」である。そして、「住民にはどうせわからない」といって安全神話を生み出した、「事故前の空気」と同じものを僕は感じるのである。
 小渕大臣には、こうした提案や意見を直接ぶつけたいと思っていた。だが、その機会は失われてしまった。とても残念だ。小渕さんとの議論は叶わなかったが、この問題については、もっと議論を尽くすことが大事だと思っている。(田原総一朗公式ブログ 2014.11.4)
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