なぜ村上春樹はノーベル賞を取れないのか

なぜ村上春樹はノーベル賞を取れないのか

今年のノーベル文学賞が発表され、日本を代表する人気作家、村上春樹氏の「落選」がまたも世間を賑わせた。本人にとってはいい迷惑に違いないが、日本メディアやハルキストと呼ばれる熱狂ファンのはしゃぎぶりは相変わらずだった。これだけ期待されながら、なぜ村上春樹はノーベル賞を取れないのか。

受賞できないのには理由がある

  • 村上春樹のノーベル賞落選が「既定の事実」だったホントの理由

    村上春樹のノーベル賞落選が「既定の事実」だったホントの理由

    村上春樹の「落選」は、大騒ぎするようなことではなく、納得できるものであった―。ノーベル文学賞は作者の文学がどんなメッセージを内包しているかが重要だと考える文芸評論家の黒古一夫が受賞出来ない理由を考察する。

村上文学が真の「世界文学」になる日

  • 村上春樹に似合うのは芥川賞ではなくノーベル文学賞だけだ

    村上春樹に似合うのは芥川賞ではなくノーベル文学賞だけだ

    村上春樹は、デビューから35年たった今でもほとんど文体の変わらない希有な作家だ―。石原千秋が村上文学の特徴からノーベル文学賞受賞の可能性を探る。

作品が「遠くに」届けば、受賞の可能性あり?

  • ノーベル文学賞はなぜ村上春樹に与えられないのか

    ノーベル文学賞はなぜ村上春樹に与えられないのか

    文学作品の普遍的な価値があるとしたら、ひとつは時間的にどれだけ遠く(未来)に届くかだー。『芥川賞はなぜ村上春樹に与えられなかったか』の著書で知られる文芸批評家、市川真人があえて、ノーベル文学賞「落選」の謎を考察する。

もう一人の「村上春樹」が現れるとき

 きっかけは87年の『ノルウェイの森』だ。本書は女性が持ち歩くことを装丁した派手なデザインでベストセラーとなるが(恋愛小説でもあった)、村上のイメージを一新するのはそれではなく、これが海外で高く評価されたことだった。海外評価というのは、言うまでもなく「権威」を身に纏うことを意味する。これで軽薄なイメージが一新され(クドいようだが、元々平明なタッチではあっても村上は軽薄な文章など書いていない。そして難解だ)、村上は「世界のHaruki Murakami」となった。ちなみに、こういった「世界の」という権威=コンテクストを身に纏ったのは前述した宇多田ヒカルしかり、たけし(=お笑いの「ビートたけし」から世界の映画監督「北野武=キタノ」へ)しかりだ。
 だが、これはやっぱり村上作品それ自体の正当評価ということにはならない。なんのことはない、「軽薄、サブカルの村上」が「世界のMurakami」という次のイメージに置き換わっただけだからだ。しかし、このコンテクストはマーケットの規模が圧倒的に違う。だから、村上の新作を欲する消費者は飛躍的に増加する。当然出し惜しみ=ハングリーマーケティングを展開すれば購買欲がよりかき立てられる前提が整う。
 そしてノーベル賞ノミネート?だ。メディアが勝手に候補としてノミネートしてしまえば、さらに村上作品に対する期待は高まる。そして、こういったコンテクストの中で『1Q84』は発表されていたのだから、これは当然「究極のハングリーマーケティング」ということになる。ということは、もし、これが毎年繰り広げられれば、ノーベル賞の季節のたびに村上の名前が挙がり、挙げ句の果てには小学校低学年の子どもですら知っている著名人になる。で、またぞろハングリーマーケティングをやってじらせば、もっともっとベストセラーとなっていく。「世界のMurakamiは次はどんなことをするんだろう?」というわけだ。
 ということは、村上がノーベル賞に毎年落選し続けるたびに、本が売れるようになるという「意図せざるハングリーマーケティング」が展開されることになるのだ。ビジネスとしては、こんなにオイシイ話はないだろう。村上は資本の側からすれば大事な大事な「商品」なのだ(まあ、その一方で消費者の側からすれば「ネタ」になっているのだけれど)。
 ただし、村上作品それ自体の評価はほとんど関係がない。ビジネスはもっぱら「村上春樹=Haruki Murakami」という記号=メディアを利用して展開していくだけだ。僕個人としては、できれば作品の議論をマトモにやって、そちらをメディアで展開してもらいたいが、おそらくそういうことにはならないだろう。メディア、そしてビジネスというものは要するに収益の問題に収斂するゆえ、儲かる分にはその中身など大した問題ではないのだから。
 こうやって小説を書いている当の人物=村上春樹とは全く関係ないところで、もう一人の「村上春樹」がマスメディア上、社会空間上に出現し続けていく。もちろん、こういった例は村上一人に限ったことではないけれど。メディアというのはそういうものだ。(関東学院大教授・新井克弥、2013.04.18

なぜ英語版に先駆けてドイツ語版だったのか

  • 村上春樹作品の独語訳に関する一考察-論争となった英語版至上主義

    村上春樹作品の独語訳に関する一考察-論争となった英語版至上主義

    村上春樹を世界的な作家にしたのは翻訳家の貢献が大きい。ドイツでは村上作品の英語版からの重訳に疑問の声も上がっている。ドイツにおける村上作品の翻訳事情に迫る。

最近は政治主張も多いようですが…

  • 「村上春樹が大江健三郎化する理由」を熱く考察してみる

    「村上春樹が大江健三郎化する理由」を熱く考察してみる

    6年前の「エルサレム賞」受賞スピーチをきっかけに、政治的主張を自ら発信するという村上春樹氏の「大江健三郎化」が始まった。おそらく心理的にはかなり無理しているように思える村上氏の言動の理由は?木走正水が考察する。

村上春樹の「異界」とは

 村上春樹はデビュー以来、“文壇付き合い”をまったくしない孤高の人だ。文学賞の選考委員もしないし、テレビにも出ないとそれは徹底している。まさに〈日本のサリンジャー〉だ。これができるのはベストセラー作家ゆえだろう。メディアで自作の宣伝をしないですむからだ。同業者にねたまれる所以(ゆえん)である。そんな村上だが、大切に交流を持っている人たちがいる。本を買ってくれる愛読者たちだ。彼らだけには自分の素顔をさらしている。
 本書=写真=は村上が今年の前半、ネットに開設した期間限定サイト「村上さんのところ」で読者(中国、ドイツなど海外も含む)の質問メール、17日間に届いた約3万7千通の中から473通を選んで収めたものだ。このサイトは話題になった。原発についての意見を求められたとき、原子力発電所の原子力は英語でnuclear=核だから核発電所というべきだと提案した。村上らしく原発を扱うことの難しさを言葉から批判したのだった。これは「敗戦」を「終戦」といって本質を誤魔化(ごまか)すことに通じる。
 面白かったことをあげる。世間では村上の愛読者を「ハルキスト」というが、チャラい印象があるので「村上主義者」といってほしい。一時期、「文章がうまい」藤沢周平にはまった。『ノルウェイの森』の緑のモデルは村上の愛妻といわれているのだが、妻本人は否定して怒っていた。あくまでフィクションとして読んでほしいと村上は望んでいる。
 回答はどれもユーモアを交えた優しいものが多い。人となりを知るには小説よりも本書の方だ。カフェで村上とコーヒーでも飲みながら気楽に人生相談をしているような親しみを覚えるからだ。それでいて村上文学の核ともいうべきことも語ってくれている。
 小説を書くときに村上は自身の内部に存在している「異界」にアクセスするという。「異界」とは深層心理に近いが、さらに奥深いものだ。そうなると『1Q84』の2つの月のある街とは「異界」だろう。軽い読み物と見えて侮れない本である。(新潮社・1300円+税) 評・小林竜雄(脚本家)

文学賞は持ち回り?

  • 「村上春樹はノーベル文学賞をいつとるのか」についての考察

    「村上春樹はノーベル文学賞をいつとるのか」についての考察

    また村上春樹氏はノーベル賞がとれなかった。可能性はあるのか。作家で人材コンサルタントの常見陽平氏が考察する。

  • ノーベル文学賞は地域の持ち回りか 村上春樹が受賞逃した理由

    ノーベル文学賞は地域の持ち回りか 村上春樹が受賞逃した理由

    2006年にノーベル文学賞に最も近い賞として知られるフランツ・カフカ賞をアジア圏で初めて受賞した村上春樹氏。富岡幸一郎・関東学院大学教授が最有力候補として名前が挙がるようになった理由を分析する。

  • 村上春樹 32年前の「最高傑作」で日中関係暗示していたとの評

    村上春樹 32年前の「最高傑作」で日中関係暗示していたとの評

    惜しくもノーベル賞は逃したものの、村上春樹氏が現代の日本文学を代表する作家であることに違いはない。世界を惹きつける村上ワールドの魅力はどこにあるのか。作家で五感生活研究所の山下柚実氏が考察する。

出版不況の救世主なのか

  • 村上春樹氏の新刊買い占めでリアル書店は本当に活性化されるのか

    村上春樹氏の新刊買い占めでリアル書店は本当に活性化されるのか

    紀伊國屋書店が8月、村上春樹氏の新刊の初版9割を出版社から買い取り、自社店舗や全国の他の書店に供給することを発表した。ネット書店に対抗するこの動きでリアル書店は活性化されるのだろうか。

  • 広がり始めた電子書籍市場  攻めるAmazon、村上春樹で挑む新潮社

    広がり始めた電子書籍市場 攻めるAmazon、村上春樹で挑む新潮社

    ノーベル文学賞に最も近いといわれている村上春樹の作品は、日本語では電子化されず紙のみで提供されており、読者層を増やすためには人気作家をいかに説得するかがポイントになる。

なぜ村上春樹はノーベル賞を取れないのか

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