なぜ「核のごみ」を地下に埋めるのか
332

テーマ

なぜ「核のごみ」を地下に埋めるのか

原発の運転から出た高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」を地下に埋めて処分する最終処分場の選定をめぐり、国が地震や火山の影響を受けにくい「科学的有望地」を示して選定を主導する基本方針に転換した。そもそも、核のごみはなぜ地下に埋めて処分するのか。地層処分の目的と課題について考えたい。

原発の運転から出た高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」を地下に埋めて処分する最終処分場の選定をめぐり、国が地震や火山の影響を受けにくい「科学的有望地」を示して選定を主導する基本方針に転換した。そもそも、核のごみはなぜ地下に埋めて処分するのか。地層処分の目的と課題について考えたい。

20歳の論客が考える

思うように進まない処分地選定

 「どんな説明を受けても、町が処分場を受け入れることはない」
 北海道の厚岸町は、国から核のごみの説明会への出席を求められたが、断固として拒否した。同町は、過去に専門家から処分場の適地として名指しされた経験がある。昨年9月には、「核廃棄物最終処分場はいらない」とする宣言を可決していた。
 核のごみの持ち込みを拒否する唯一の条例がある北海道では、6月1、2日に説明会が開かれたが、厚岸町に限らず欠席が相次ぎ、出席は半分に満たなかったという。
青森県のむつ小川原港に到着し、輸送船から陸揚げ
される高レベル放射性廃棄物=2014年4月、青森県六ケ所村
 説明会は、経済産業省資源エネルギー庁が、処分事業の実施主体の原子力発電環境整備機構(NUMO)と協力し、全国9カ所で行う一般向けのシンポジウムと並行して開催。全国47都道府県のすべての自治体が対象で、国による処分地選定の方法や、地下300メートル以深に放射性廃棄物を閉じ込める「地層処分」の安全性について周知するのが目的だが、自治体側の積極的な出席や発言を促すため、参加自治体名だけでなく、開催日時や場所まで公表していない。
 エネ庁によると、7月2日までに約40の都道府県で説明会を開催。各市町村の担当者にメールや電話などで直接参加を呼びかけたが、任意で応じたのは7割弱だった。特に福島県の反発は強く、開催すら困難な状況だ。
 岡山県で6月2日に開催された説明会ではトラブルを招いた。出席した自治体の担当者が終了後にテレビ局のインタビューに応じたところ、インターネット上で「放射性廃棄物の最終処分場ができるらしい」などと誤った情報が拡散し、自治体がホームページ上に「放射性廃棄物の最終処分場には絶対なりません!」と緊急メッセージを掲げる騒ぎとなった。担当者は「国の呼びかけに応じて参加しただけなのに、想定外の事態だった」と困惑する。
 こうした現状について、エネ庁の担当者は「説明会は、処分地選定について広く関心を持ってもらい、自治体との信頼関係を構築するためのもの。本当に残念としか言いようがない」と話す。
 一方、使用済み燃料の再処理工場を県内に抱え、核のごみの最終処分地選定について国に積極的な行動を求めてきた青森県の担当者は、「国主導で動き出したことは、前向きに受け止めている。処分場をどこで受け入れるかは別の問題として、説明会の開催には協力したい」と理解を示しており、地域による受け止め方の違いや、温度差が大きいのも現状だ。
 核のごみの最終処分地の選定は、海外でも難航している。日本を含め処分場の建設を予定する8カ国のうち、これまでに決まっているのは北欧のフィンランドとスウェーデンのみだ。いずれも選定開始からおよそ20年かけて、政府や事業者が地域住民と対話の場を設け、地域の発展に寄与することなどを前提に合意に至った経緯がある。(産経ニュース、2015.07.15

現世代が向き合うべき課題

国が前面に立った提示に期待

原発利用の是非とは別議論に

10月は「対話月間」 全国9都市でシンポ開催

 原発の運転から出た高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」を地下深くに埋める地層処分について理解を深めようと、経済産業省資源エネルギー庁は10月を「国民対話月間」と位置づけ、全国9都市でシンポジウムを開催した。
高レベル放射性廃棄物の「地層処分」に
ついて資源エネルギー庁が住民約30人
と行った意見交換会=10月24日、北九州市内
 政府は今年5月、核のごみの最終処分場の選定について、従来の自治体公募方式から、国が火山や地震の影響を受けにくい複数の「科学的有望地」を提示し、選定を主導する基本方針を7年ぶりに改定した。地層処分の必要性や安全性について国民への理解を広く呼び掛けるのが狙いだが、4年前に起きた福島第一原発事故以降、わが国では最終処分に関する議論が進まず、処分地の選定も止まったままだった。
 ただ、今年に入り、わが国では2年ぶりとなる九州電力川内原発が再稼働し、使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物が今後も増えることから、国が前面に立って最終処分場を決める方針に転換した。背景には、核のごみの最終処分場が決まってもいないのに、原発の再稼働を推進するのは無責任だとする批判がある。原発再稼働を「トイレなきマンション」にたとえた批判だが、こうした「原発アレルギー」を少しでも解消し、理解を深めてもらうために、国は各地で説明会を開いている。
 説明会では、近い将来国が提示する「科学的有望地」の条件として、火山から15キロ以内や活断層の近くは避け、輸送のしやすさから海岸から20キロ以内を目安とする国の前提条件などを説明。核のごみを長期間保管する技術的な方法や、既に最終処分地を選定した北欧のフィンランドやスウェーデンなど海外の先行事例も紹介し、「地震火山大国」の日本でも地層処分が最善の方法であることに理解を求めた。(iRONNA編集部)

議論参加が若者の責任

政府は覚悟を示し、国民の理解を得よ

 原発再稼働は速やかに進めるべき国家的課題だ。ただ、ひとたび事故が起きれば過酷な事態を引き起こすことも身をもって学んだ。国民が不安を抱く中で何より必要なのは、最終責任は自ら負うという国の明確な姿勢だろう。
 「万が一事故が起きた場合は、国が先頭に立ち責任を持って対処する」。宮沢洋一経産相は、川内1号機が再稼働した8月11日の記者会見で断言した。しかし、8月4日の会見では、再稼働の判断責任は電力事業者にあるとの考えを示したという。及び腰とも取られかねないスタンスが気がかりだ。
幌延深地層研究センター(北海道幌延町)
提供:日本原子力研究開発機構
 これまで規制委に審査が申請された15原発25基のうち、合格したのは川内と高浜の各2基、四国電力伊方3号機の計3原発5基にすぎない。再稼働を順次進めていかなければならないが、国の姿勢があいまいでは、立地自治体や周辺自治体の不安は消えない。
 高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の問題も避けては通れない。政府は5月、国として最終処分の有望地を科学的に示す方針を打ち出した。自治体への公募方式から転換し、処分地選定の手詰まり感を打開する狙いがある。
 使用済み燃料は国内に計1万7千トンあり、各原発の保管場所はすでに7割が埋まっている。国が処分地探しに主体的にかかわるとしたのは評価できるが、極めて困難な見通しに変わりはない。「現世代の責任として、国民理解を得ながら着実に進める」と言い切った宮沢経産相の覚悟が問われる。
 原発の稼働が国策である以上、国が前面に立ち、さまざまな問題と向き合うべきだろう。その上で得られた国民の理解こそ、再稼働への最大の推進力となるはずだ。(産経新聞大阪本社経済部長・内田透、2015.08.24
なぜ「核のごみ」を地下に埋めるのか

みんなの投票

原発から出た「核のごみ」を地下に埋める最終処分についてどう思いますか?

  • 地震大国の日本では無理だと思う

    166

  • 技術的に問題がなければ、地層処分すべきだ

    153

  • 新しい技術が確立するまで放置しておけばいい

    13