誰が川島なお美の命を奪ったのか

誰が川島なお美の命を奪ったのか

今年9月、胆管がんで急逝した女優の川島なお美さんは、抗がん剤による治療を最期まで拒んだ。54歳という早すぎる死に衝撃が広がったが、一方で医師が患者にがん放置療法を勧める「セカンドオピニオン」という診断方法が物議を醸した。もし、がんと診断されたら、私たちはがんとどう向き合えばいいのか。

近藤誠医師に反論する

  • 川島なお美さんの命を奪った「セカンド・オピニオン」

    川島なお美さんの命を奪った「セカンド・オピニオン」

    『文藝春秋』の近藤誠医師による記事からわかった信じ難い多くの問題。外科医と腫瘍内科医を兼ねる大場大が近藤氏の医学的な誤りを糾す。

彼女らしい自然な選択

  • 川島なお美さんが選んだ「がん治療」は間違っていなかった

    川島なお美さんが選んだ「がん治療」は間違っていなかった

    川島なお美さんの闘病生活は、彼女の価値観が最優先された素晴らしいものだった。がん検診、治療、民間療法の三つの論点に上昌広が迫る。

川島さんの選択が投げかけたもの

 《自分で作ってしまった腫瘍は自分で治すしかないのです》
2007年11月、解禁された
ボジョレーヌーヴォーを
テイスティングする川島
なお美さん
 2014年3月、川島なお美さんは自身のブログでがんとどう向き合うか、その心情を赤裸々に綴っていた。
 《去年の8月に人間ドックで小さな腫瘍が見つかってから葛藤の毎日 血液検査はまったく異常なし 良性か悪性かわからず手術すべきか切らないで治せないものかずいぶん悩みました 舞台を降板すること主演映画が別の意味で注目されてしまうことは嫌だったので内密にしてきました》
 ある日突然、がんの疑いと診断されたときの心境をこう振り返り、《医者任せではダメ 言われるがままわけもわからずただ切られる、とか 不必要な抗がん治療を受ける、とか私は反対です》とがん治療に対する自身の考えをはっきり記している。
 また、ブログには、外科手術をするまでに《とんでもない医者もいました》と不満もつづり、この医師とのやりとりを詳細に記している。

医師「とりあえず切りましょう」

「いいえ良性かもしれないのに外科手術はイヤです」

医師「ならば抗がん剤で小さくしましょう」

「悪性と決まってないのに?仕事が年末まであるのでそれもできません」

医師「ならば仕事休みやすいように悪性の診断書を書いてあげましょう」

 は~~???(病理検査もしてないのに!) もうここには任せられない!! すたこらさっさと逃げてきました

 しきりに切除手術と抗がん剤治療を勧める担当医師に対し、いずれの治療も拒否した川島さんのブログからは、この医師に対する不信感だけでなく、女優業を優先したいという強い決意とがん治療への複雑な思いがにじみ出ており、《自分のかかった病をよく研究し戦略をじっくり練りベストチョイスをすべき お医者様とも相性があります 「この人になら命を預けられる」 そう思える先生と出会うまで手術はしたくありませんでした》と本音も垣間見えた。
 月刊誌『文藝春秋』の2015年11月号には、川島さんが近藤誠医師の「セカンドオピニオン」外来に訪れていたことを告白するインタビュー記事が掲載されている。記事によれば、川島さんは2013年9月に近藤医師のもとを訪れ、別の医師から「余命1年」と宣告されていたことを明かし、川島さんは「舞台の仕事があるので、抗がん剤治療は受けたくない。仮に手術を受けるとしても、ミュージカルの舞台を終えてからにしたい」と相談を持ち掛けられたことを告白。近藤医師は川島さんに「このまま1年放っておいても1年で死ぬことはありません」と伝えた上で、切除手術や抗がん剤治療ではなく、別の治療法を提案し、川島さん本人も承諾したという。
 近藤医師は「がん放置療法」を提唱したことで知られ、著書には『がんと闘うな』『がん治療で殺されない七つの秘訣』などのベストセラーもあるが、現代医学のがん治療を否定する「近藤理論」には医学界からも反発は多い。(iRONNA編集部)

最適な治療法という迷路

  • 川島さんはもっと生きられたか 手術すべきか否かは運みたいなものだ

    川島さんはもっと生きられたか 手術すべきか否かは運みたいなものだ

    「がんもどき」の区別ができない以上、手術すべきか否かは運みたいなものだ。池田清彦が考える最適な治療法とは。

重要な「第2の意見」

 川島なお美さんにがん治療の意見を求められた近藤誠医師が放置を勧めたことを『文藝春秋』上で明らかにし、波紋を呼んだ「セカンドオピニオン」。文字通り「第2の意見」と呼ばれ、主治医からがんなどの診断を受け今後の治療方針を示された患者が、治療方針を決めるために別の医師に意見を求めることを指す。「主治医との関係が悪くなる?」と思う人がいるかもしれないが、2002年の医療法改定以来、病院に「セカンドオピニオン外来」が設置されるなど、最近の医療現場ではセカンドオピニオンを求められることは珍しいことではなく「かかりつけ医に気まずい」などと遠慮する必要はない。
 国立がん研究センターがん対策情報センターは、セカンドオピニオンについて、担当医の変更や転院を求めるものではなく、あくまで他の医師に意見を聞くことだと定義。実際に東大病院のセカンドオピニオン外来では最初から転医、転院を希望する患者に対しては診察を断る場合があるという。また受診の目的について、同センターでは担当医の意見が違う角度から検討できることや、別の治療法が提案された場合には意思決定の幅が広がるため、より納得して治療に臨むことが可能となることを挙げている。
 今年5月、大腸がんで闘病し54歳で亡くなった俳優の今井雅之さんのケースでは、昨年8~9月体調に異変を感じ通院、11月セカンドオピニオンで診てもらった病院で検査を受け、他の臓器への転移がみられる「ステージIV」の大腸がんと診断されたという。スポーツ紙などの報道によると、夏に最初に訪れた病院で「腸の風邪」と診断され薬を処方されただけだったといい、「第2の意見」を求めることの重要性が話題になった。
 しかし、2013年4月に近藤誠氏が開設したセカンドオピニオン外来では、日本の固形がん手術と抗がん治療を否定する独自の「がん放置療法」に基づき、近藤氏が患者のほとんどに「現在受けている、あるいは主治医に勧められている治療法は受けないほうがいい、もしくは別の治療にしたほうがいい」と提案しているため、医学界では、医療を否定し患者が根拠なき情報を信じかねないと危惧し、がん専門医の勝俣範之氏(日本医科大腫瘍内科教授)のように近藤氏の治療法を反論する医師も現れている。(iRONNA編集部)

すぐに手術すべきだったのか

  • 川島なお美さんの死から考える 「がんによる死」に向き合うこと

    川島なお美さんの死から考える 「がんによる死」に向き合うこと

    川島なおみさんの死を決して他人事と考えてはいけない。病理専門医の榎木英介が自らの経験をもとに「がんによる死」について考察する。

  • 川島なお美さん 手術遅かったとの指摘は間違いと近藤誠医師

    川島なお美さん 手術遅かったとの指摘は間違いと近藤誠医師

    近藤誠医師といえば、手術も抗がん剤も患者にとって有害だとする「がん放置療法」で知られる。川島さんはどんなセカンドオピニオンを受けたのだろうか。

  • 「すぐに手術していたら…」長尾和宏医師が川島なお美さんの闘病を解説

    「すぐに手術していたら…」長尾和宏医師が川島なお美さんの闘病を解説

    早すぎる川島なお美さんの死。長尾和宏医師はがん発見後、すぐに手術していたら経過が異なっていた可能性があると指摘する。

日本人の2人に1人が「がん」にかかる時代

 厚生労働省などの統計によると、がんが結核や脳卒中を抑えて日本人の死因第1位になったのは昭和56年。高齢化によりがんで死亡する人は増加を続け、国立がん研究センターの推計によると、日本人男性の60%、女性の45%が死ぬまでにがんにかかるとされる。帝京大医学部の渡辺清高准教授(腫瘍内科)は「身近にがんで亡くなる人を目にする機会は、団塊世代の高齢化を控えて今後も増えていくだろう」と予測する。
 ただ、高齢化の影響を取り除くと、がん死亡率は低下している。75歳未満のがん死亡率は、平成17年には人口10万人当たり92・4人だったが、25年には80・1人に低下。医療の進歩によりがんになった人の5年後の生存率も、約20年前の53・2%から10年間で58・6%に上がった。厚労省研究班の調査では、がん患者の8割が「がん医療は数年前と比べて進歩した」と答えている。
 とはいえ、がんの部位によって生存率は異なる。前立腺や甲状腺、乳房のがんの5年生存率が約9割なのに対し、膵臓、肝臓、胆嚢(たんのう)、肺などのがんは予後が悪い。
雑誌「ヴァンサンカン」の
イベントに、愛犬ココナツを
伴い出席した川島なお美さん
=2015年4月18日、東京・六本木
 年齢によっても特徴は異なる。大部分のがんは年齢とともに発症リスクが高くなるが、タレントの北斗晶さん(48)が摘出手術を受けた乳がんや2月に61歳で亡くなったロックバンド「シーナ&ロケッツ」のシーナさんがかかった子宮頸(けい)がんは働く世代に多い。逆に、川島さんがかかった胆管がんや黒木さんがかかった胃がんは若年での発症頻度は極めて低く、進行した状態で見つかることが多い。渡辺准教授は「これらのがんを早期発見をしようと多くの人を検査しても患者を見つける効率が悪く、がんがないのに検査で陽性とする可能性が高くなってしまう。現状では、有効な検診方法は残念ながらない」と語る。
 もちろん検診が有効ながんも多いが、経済協力開発機構(OECD)のデータによると、そもそも日本はがん検診の受診率が低い。50~69歳の乳がん検診の受診率は、米国80・4%、フランス75・4%、韓国74・1%などに対し、日本(22年)は36・4%。20~69歳の子宮頸がん検診受診率も米国85%、ドイツ78・7%、フランス71・1%などに比べ、日本(同)は37・7%にとどまっている。
 こうした現状に、国も対策に本腰を入れる。厚労省はがんの予防、治療・研究、共生の3本柱からなる「がん対策加速化プラン」を今年中にも策定。来年からは、全国で新たに「がん」と診断された全患者のデータを登録する「全国がん登録」も始まる。
 がん登録を担当する国立がん研究センターの松田智大室長は「たばこが影響する肺がんやピロリ菌が影響する胃がんなど、ある程度発生要因が分かっているがんに対しては対策の指標となる。実態がなかなかつかめなかった希少がんや小児がんの患者数の把握や治療法の解明にもつながることが期待される」と話す。(産経ニュース2015.09.26)
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