「イスラム国」終わりの始まり
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「イスラム国」終わりの始まり

「君たちの負けだ」。パリ同時多発テロで妻を失った現地ジャーナリストのメッセージが世界中の共感を呼んだ。過激派組織「イスラム国(IS)」による相次ぐ大規模テロに、各国は対IS包囲網の強化に乗り出し、「共通の敵」への連携も深まりつつある。無差別に人命を奪うISとの戦いに終わりは来るのか。

「君たちの負けだ」。パリ同時多発テロで妻を失った現地ジャーナリストのメッセージが世界中の共感を呼んだ。過激派組織「イスラム国(IS)」による相次ぐ大規模テロに、各国は対IS包囲網の強化に乗り出し、「共通の敵」への連携も深まりつつある。無差別に人命を奪うISとの戦いに終わりは来るのか。

シリア空爆強化

結束強める米・仏・露

犠牲者遺族「君たちの負けだ」

 パリ同時多発テロで妻を失ったジャーナリストのアントワーヌ・レリスさん(34)が11月16日、フェイスブックに載せた文章の全文は次の通り。
 君たちを憎まない。金曜日(13日)の夜、君たちは、掛け替えのない存在の命を奪った。私の人生最愛の人、私の息子の母親。だが、私が君たちに憎しみを向けることはない。君たちが誰か知らないし、知りたいとも思わない。君たちは死んだ魂だ。君たちは神の名において無差別殺りくを行った。もし、その神が自らの姿に似せて私たちを造ったのであれば、私の妻の体の中の一つ一つの銃弾が、神の心の傷となるだろう。
パリ同時多発テロ 襲撃を受けたバタクラン劇場周辺では今なおおおくの人が犠牲者をしのび訪れている=11月19日、フランス・パリ (大西正純撮影)
パリ同時多発テロ 襲撃を受けたバタクラン劇場周辺では今なおおおくの人が犠牲者をしのび訪れている=11月19日、フランス・パリ (大西正純撮影)
 だから、君たちに憎しみという贈り物をすることはない。君たちの狙い通りに、憎しみに怒りで応じてしまったら、君たちを作り上げたのと同じ無知に屈することになる。君たちは私が恐れをなし、同じ街に住む市民らに疑いの目を向け、身の安全のために自由を犠牲にすることを望んでいる。君たちの負けだ。何度やっても同じだ。
 今朝、彼女と会った。何日も何夜も待った後、ようやく。あの金曜日の夜に出掛けた時のまま、そして12年以上前、私が狂おしいほどの恋に落ちた時と同じように美しかった。もちろん悲しみに打ちのめされている。君たちの小さな勝利を認めよう。だが、それはごく短い間だけだ。彼女は毎日私たちと一緒にいて、君たちが決してたどり着けない自由な魂の天国で再び巡り合うだろう。
 息子と2人になった。だが、私たちは世界中のすべての軍隊よりも強い。もう、君たちに構っている暇はない。メルビルが昼寝から目を覚ますから一緒にいなければならない。まだ17カ月。いつものようにおやつを食べ、私たちはいつものように遊びに行く。この幼い子がずっと幸せで自由に生きていくことで、君たちは恥を知ることになる。なぜなら、彼が君たちを憎むこともないのだから。(共同)

対IS協力はあり得るか

ヒゲの隊長「ISは、戦争をしている」

パリ同時多発テロの犠牲者を悼むミサがノートルダム大聖堂で行われ、聖堂内に入りきれない参列者は寒さのなか聖堂前の広場でミサを見守り続けた=11月15日、フランス・パリ (大西正純撮影)
パリ同時多発テロの犠牲者を悼むミサがノートルダム大聖堂で行われ、聖堂内に入りきれない参列者は寒さのなか聖堂前の広場でミサを見守り続けた=11月15日、フランス・パリ (大西正純撮影)
 今回のテロやISに関連した動向をみる際に忘れてはならないことがあります。それは、「ISは、戦争をしている」という認識です。
 対IS連合諸国と“戦争”しているわけですから、今回のように“自国”で計画を練り、“敵国”で行動に出ることは、当然です。
 つまり、今後もISによる“敵国”での行動が予想されます。事実、本年2月以降、ISが犯行声明を出したテロは、バングラデシュや、レバノン、エジプト、チュニジア、サウジアラビアなど、世界各地に及びます。バングラデシュでは日本人も射殺されています。
 今回の件を機に空爆を実施している米英仏などはもとより、日本も含めた対IS連合諸国は、実はISと“戦争”状態にあることを認識せねばなりません。(佐藤正久オフィシャルブログ 2015.11.17

テロの時代

英雄となったパリ市民

 パリ同時多発テロの現場となったカフェに居合わせた人たちの中に、近くにいた見ず知らずの女性をかばい、自らが犠牲となった男性がいた。
 13日金曜日の夜。休日を前ににぎわうカフェに、テロリストが突然、銃弾を無差別に撃ち込んだ。店内には叫び声が響き、逃げ惑う人や床に倒れる人でパニック状態に陥った。
 襲撃の後、店主は、血の海の中に常連の男性客が倒れているのを見つけ、近くにいた女性から、男性が盾になってくれたので助かったという話を聞いた。店主は男性客を「市民の英雄だ」と呼んでいた。
 その後、犯人たちが襲った劇場では、殺戮(さつりく)現場から脱出しようとして窓柵にぶら下がっていた妊婦を、銃撃戦が続いている最中に路上で受け止めた男性がいた。おなかの赤ちゃんも無事だったという。
 男性はコンサートを聴きにきて命からがら脱出したが、女性の助けを求める叫び声を聞いて駆け戻った。脱出後、ツイッターでお互いの連絡先がわかり、2人は会うことができた。
 未曽有のテロの犠牲者には若者が多かった。ピアニスト、学者、学生…。それぞれに、これからの人生があったはずだ。
 彼らのためにもパリっ子には、こうした英雄伝説をぜひ語り継いでほしい。(産経新聞ロンドン支局長、内藤泰朗)
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