山口組動乱、テロと化した近代ヤクザ
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山口組動乱、テロと化した近代ヤクザ

日本最大の暴力団、山口組が分裂し、各地で抗争とみられる事件やトラブルが相次いでいる。警察当局は抗争の激化を食い止めようと徹底攻勢に打って出るが、テロ活動にも似た水面下での動きが絶えることはない。かつての抗争とは一線を画す近代ヤクザの「戦争」はどこへ向かうのか。

日本最大の暴力団、山口組が分裂し、各地で抗争とみられる事件やトラブルが相次いでいる。警察当局は抗争の激化を食い止めようと徹底攻勢に打って出るが、テロ活動にも似た水面下での動きが絶えることはない。かつての抗争とは一線を画す近代ヤクザの「戦争」はどこへ向かうのか。

「テロ組織」の資金源を断て

角突き合いが始まる

米財務省、山口組の資産凍結

暴力団の資金獲得活動の変遷
(全国暴力追放運動推薦センターのHPより)
暴力団の資金獲得活動の変遷
(全国暴力追放運動推薦センター
のHPより)
 オバマ米政権は2012年、薬物の密輸や人身売買など国際的な組織犯罪に関与しているとして、指定暴力団山口組と、山口組の篠田建市(通称司忍)組長ら幹部2人を経済制裁の対象に指定し、米国内の資産凍結や商取引停止などの処分を科した。米財務省によると、国境を越えた犯罪組織の撲滅を狙う昨年7月の大統領令に基づく初の措置だったが、同省は今年5月にも指定暴力団山口組弘道会(本部・名古屋市)と竹内照明会長を金融制裁の追加対象にしている。
 山口組について、当時の米財務次官(テロ・金融犯罪担当)が「多岐にわたる深刻な国際犯罪」に関わっていると非難。弘道会についても「山口組の中で最も暴力的な組織」として、当局が警戒を強めている。
 また、米財務省は、「ヤクザ」である山口組が「暴力団」や「極道」の名前でも知られると紹介。「ゴッドファーザー」である組長を筆頭にピラミッド型の組織を持ち、日本や海外で薬物密輸や人身売買のほか「恐喝や売春、詐欺、資金洗浄に関与している」と指摘した。
 オバマ政権は、国際的な組織犯罪への対策を強化する「国際組織犯罪に対する戦略」を推進しており、米財務省によると、これまでに山口組のほか、住吉会や稲川会など日本の暴力団5団体と幹部15人を金融制裁の対象にしたという。(iRONNA編集部)

「YAKUZA」の姿を外国メディアはどう報じたのか

 世界各国のメディアが30年ぶりに分裂した指定暴力団山口組(総本部・神戸市灘区)について注目し日本の「Yakuza」騒動を報じている。「ヤクザ」は「スシ」や「ゲイシャ」などと同様、世界共通語の一つ。これまでも度々、日本映画やアニメ作品などで取り上げられており、外国人にとって、現実の世界に表面化した「Yakuza-War」(ヤクザの戦い)は、日本社会の裏側を知る上で関心の高いテーマのようだ。

 報道ぶりには、日本の暴力団の実態をその歴史とともにひもといて伝える説明型のリポートがある一方、専門家らにインタビューし、分裂の背景と今後の見通しについて詳しく分析しているメディアもある。

 象徴的なのは、記事に合わせ、全身に入れ墨を入れた暴力団組員の写真や動画を一緒に報じていることだ。

 ロシアのメディア、ロシアン・トゥディは、桜模様の入れ墨を入れた男性の後ろ姿だけでなく、短刀を口にくわえた芸者の模様を入れ墨にあしらった若い女性のセミヌード写真を掲載。その上で山口組について、アジア諸国や米国などでも裏ビジネスを展開し、「総資産は800億ドル(約9兆6000億円)にもなり、世界で最もリッチな犯罪組織だ」と紹介した。

 ドイツの国際報道局ドイチェ・ヴェレもニュースを速報する際、やはり、全身に入れ墨を入れた、ふんどし姿の男性4人組の写真を一緒に用いた。

 しかし、この写真は、3年前の2012年5月、東京の日本外国特派員協会で「日本の入れ墨第一人者」とされる三代目彫よし氏(横浜市)が外国プレス向けにプレゼンテーションした際に撮影されたものだ。この時は「日本の伝統芸術」の入れ墨の作品を紹介しただけで、山口組の分裂や暴力団抗争とはまったく関係がない。他のメディアでも、山口組騒動のニュースに3年前のこの写真が用いられており、外国では日本の暴力団組員=入れ墨のイメージが定着していることがわかる。

新たな“ワル”台頭

抗争Xデーは12月13日?

 波紋を広げる日本最大の指定暴力団山口組(総本部・神戸市灘区)の分裂。残留組と離脱した神戸山口組の小競り合いをはじめ、関係団体の組長の不審死が相次ぐなど不穏な情勢が続いている。現段階では大規模な抗争には発展していないが、捜査関係者は「来月に入ると事態が動く恐れがある」と警戒する。危険視されるのは12月13日とその前後で、抗争のXデーになりかねないというのだ。
 「2つの組織がこの状態のままで、新年度を迎えるとは思えない。今年中に大きな動きがあるかもしれない」
 在京の暴力団関係者は山口組と神戸山口組の動向について、こう声を潜める。危機感が広がる背景には、暴力団社会特有のしきたりが関係している。
 「ヤクザの世界では、年度納めが11月末で、江戸時代から吉日とされる12月13日が新年度の『事始め』になる。その日には各事務所で『事始め式』と呼ばれる正月行事が行われる。1つの区切りとなる日だけに、ここに合わせて膠着(こうちゃく)状態の打開に動くのではないかとみられている」(先の関係者)
 「事始め式」には、傘下組織の幹部らが一堂に会し、今後の組の運営方針なども示される。捜査当局は、分裂後初めて迎えるこの節目に警戒心を高めている。
 「警察にとっては、年内での立件が可能な日から逆算して、12月10日前後が実質的な『仕事納め』となる。分裂後初の『事始め』と時期が重なるだけに現場は例年にない緊張感に包まれている」(捜査関係者)
 8月末の分裂以降、各地で両組織の関係団体による小競り合いが散発している。今月9日には、東北最大の歓楽街・国分町(仙台市青葉区)で山口組と神戸山口組の中核組織、山健組(神戸市中央区)双方の系列組員40~50人が集まり、乱闘寸前のにらみ合いが起きた。15日には山口組の直系団体「愛桜(あいおう)会」(三重県四日市市)の会長が何者かに撲殺されている。
 「組織同士の切り崩し工作も激化し、その影響で、傘下団体の中でも、組員がどちらにつくか割れるケースが少なくない。組長と組員で意見が分かれて組が分裂するなど混乱しきった状態だ。大規模な衝突がないままで抗争が集結するとは考えにくい」(先の関係者)
 “Xデー”に向けて緊張感が高まりつつある。(夕刊フジ 2015年11月20日)

抗争勃発の危機

義理とは無縁の「カネ」に走る近代ヤクザ

 神戸・新開地からまっすぐ海側に延びた道は国道2号をまたぐと、川崎本通りとなる。飲食店などがならぶが、店じまいをした店も目立つ。通りの正面には、川崎重工の正門があり、その向こうには緑色のガントリークレーンが鈍色の空を突き刺していた。
 昭和2(1927)年の春、15歳の田岡少年(山口組三代目組長、田岡一雄)は毎朝、この道を通って、川重の前身である川崎造船所に通いはじめた。旋盤見習工として入社したが、ケンカっ早く、まもなく現場主任を殴ってやめてしまう。
指定暴力団山口組総本部に家宅捜索に入る捜査員ら=10月2日午後、神戸市灘区
指定暴力団山口組総本部に家宅捜索に入る捜査員ら=10月2日午後、神戸市灘区
 界隈にはゴンゾウ部屋という、港湾の荷揚げ労働者の寄せ場が、びっしりと建ちならんでいた。田岡が転がりこんだのは、初代山口組が仕切るゴンゾウ部屋だった。「自伝」には「わたしの極道渡世へはいる第一歩だった」とある。
 ケンカや博打に明け暮れたが、田岡が大切にしたのは「義理と人情」であり、とりわけ「義理」を重んじた。見習ったのは江戸期の侠客、幡随院長兵衛(ばんずいいんちょうべえ)である。
 義理堅さによって、若くして三代目組長となり、港湾荷役と芸能興行を2本柱とした「正業」を発展させた。もちろん背景には、武闘集団が持つ威嚇力がひそんでいた。俳優の鶴田浩二襲撃事件はその典型である。
 「義理」とは、いったいなにか。アメリカの人類学者、ルース・ベネディクトはいまも読みつがれている『菊と刀』で、「義理」は翻訳不可能としたうえ、「人類学者が世界の文化のうちに見いだす、あらゆる風変わりな道徳的義務の範疇(はんちゅう)の中でも、最も珍しいものの一つである」と困惑したように書いている。
 社会学者や民俗学者もさまざまに分析しているが、ここでは「倫理性を帯びた義務」とでも解しておく。借りたモノを返すのは万国共通の義務だが、それだけではない倫理性をおびた精神的な賦課(ふか)のようなものであろう。
 その「義理」も、当局による相次ぐ壊滅作戦によって、徐々にすたれていった。隠れ蓑(みの)の企業舎弟やフロント企業なども摘発され、財政が逼迫(ひっぱく)してきたからである。
 かわって迫りだしたのが、「義理」とはまったく無縁の「カネ」である。今回の分裂も、上納金の多寡(たか)が原因だともいわれる。(福嶋敏雄、産経ニュース2015.11.25
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