「限界マンション」に日本の絶望を見た

「限界マンション」に日本の絶望を見た

少子高齢化による過疎の波が都心にも迫っている。いま老朽化や空き家の増加により、廃墟と化したマンションが首都圏で急増し、防災上のリスクなどから将来的には公費解体せざるを得ない事態に陥っている。都心に増える「限界マンション」。日本の危機的未来を暗示した「縮図」がそこにあった。

「血税」が解体費用に

  • 放置された「限界マンション」は公費で解体するしかない 

    放置された「限界マンション」は公費で解体するしかない 

    老朽化したマンションが放置された場合、最終的には公費で解体しなければならない―。富士通総研上席主任研究員の米山秀隆が「限界マンション」に待ち受ける最悪のシナリオを紹介する。

「持ち家信仰」の終焉

 「ウダツが上がらない」という言葉がある。「仕事ができない」「稼ぎが悪い」といった意味で使われている。
 しかし、「うだつ」とはもともと隣家との間に設ける1、2階間の屋根付きの壁のことである(諸説あり)。つまり、うだつを上げられるというのは「立派な家を建てた」という意味になる。
 日本人は家を買うのが好きである。まとまったお金が入ってきたり、収入が増えたりすると必ず家を買う。あるいは新築する。都会に住んでいれば新築マンションを買うということになる。40歳を過ぎて子供が学校に通っているのに、持ち家ではなくて賃貸に住んでいると「まだ買っていないの?」という目で見られる。一人前の大人は持ち家に住んでいなければいけないというのが日本社会の「空気」なのだ。
 だから「うだつが上がらない」という価値観は、今も濃厚に生きている。しかし、果たしてこの価値観はこれからの日本人を幸せにするだろうか。私のところには、マンションの購入や売却について多くの方が相談にみえる。特に購入を考えている方の発想は「家賃を払っているよりも買った方が得だろう」というベクトルが多い。
 これは、その通りである場合もあれば、そうでない結果になることもある。エリアや物件、その時の市場の状況などによる。今の東京の都心エリアのように、購入価格が家賃の30年分以上にもなるバブル状態の場合は、賃貸にしておいた方が無難だ。
(総務省より)
(総務省より)
 日本は今、全国的に家が余っている状態だ。空家率は2013年の調査で13・5%。賃貸住宅の空室率も、現在は約20%だとみなされている。東京や大阪、名古屋といった大都市でも、今後人口は減っていき、世帯数の増加も止まる。住宅に対する需要は細る一方だ。
 ところが、「うだつを上げたい」日本人が多いので、毎年80万戸から100万戸の住宅が新築されている。この需給ギャップは住宅価格や家賃の下落となって表面化する。現に地方の住宅には値段が付かないほど下落したものが多い。東京の郊外でも老朽化した戸建てやマンションは数百万円で売買されている。
 こういった下落の波はいずれ、今はバブル化している東京の都心や、価格上昇の圧力がかかっている大阪市の中心エリアにも及んでくるはず。この先、若者たちは住宅価格や家賃が上がるのではなく下がるのを目の当たりにしていくことになる。そういった時代になっても、日本人は依然として「うだつを上げよう」とするだろうか。
 特に、都会人の住形態の主役である分譲マンションについては、今後老朽化やスラム化、廃虚化が社会問題となる。賃貸ならば、引っ越せば問題は100%解決するが、所有者はそういうわけにいかない。管理組合の一員として、この厄介な問題に向き合うしかない。
 若者が車を買わなくなったと言われて久しい。次は「家を買わなくなる」時代が、もうそこまでやってきている。(榊淳司 夕刊フジ 2015年12月13日)
ゴーストタウンがあちこちに? 空き家が蝕む日本の未来(読売新聞 2015年12月18日)

現代では「永住する」資産に

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「そんなの聞いてない」では済まない

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地域経済にも影響

 全国に約5000カ所ある分譲団地のうち、築45年超の団地が2025年には現在の約5倍になるとの試算を、国土交通省がまとめた。老朽化した団地は空き家となるケースが多いほか、地域経済に影響を及ぼす可能性もあるが、建て替えは進んでいない。国交省は建て替え要件の緩和を含め、対策の検討を進めている。
(国土交通省HPより)
(国土交通省HPより)
 試算では築45年超となる団地は現在291カ所で、25年に1551カ所、35年に2769カ所、30年後の45年には4093カ所と現在の約14倍になる見通し。試算は建て替えがまったく進まない前提条件だが、13年末現在の住宅団地数4970カ所に比べ、建て替え工事が完了している物件は15年4月段階で114カ所とわずかだ。
 老朽化の弊害は少なくない。分譲マンション全体の空き家の割合は平均約6%だが、築年数が増えるごとに空き家率が増える傾向があり、1970年以前に建てられた物件では約11%にまで高まる。国交省の調査では、近隣商店数や販売額の減少傾向もみられ、地域経済への影響も出ている。
 建て替えが進まない背景として指摘されるのは、建て替えの際の住民合意について定めた区分所有法のハードルの高さだ。同法は全棟建て替えに所有者の5分の4、さらに団地は棟ごとに3分の2の合意が必要とされるが、入居者の経済状況や家庭環境は一様ではなく、合意形成は容易ではない。
 国交省は今後、有識者会議で区分所有法の要件緩和も含めた住民合意をしやすくする仕組み作りのほか、入居者に対する費用補助などを含めた制度設計について検討していく方針。(SankeiBiz 2015年12月8日)
建て替えか保存かで揺れる、 黒川紀章設計の前衛マンション(ダイヤモンド・オンライン 2015年7月23日)

空き家の連鎖が生む悲劇

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