「情報小国」ではニッポンは守れない
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「情報小国」ではニッポンは守れない

パリの大規模テロを契機に日本でも対外情報活動の重要性が叫ばれている。 安倍首相は一昨年、外交・安保の司令塔となる「国家安全保障会議(NSC)を創設したが、 情報収集能力や縦割り行政の弊害が指摘され、実効性は今も疑問視される。 情報なき国家がたどった運命を振り返れば、自ずとわが国の危機がみえてくる。

パリの大規模テロを契機に日本でも対外情報活動の重要性が叫ばれている。 安倍首相は一昨年、外交・安保の司令塔となる「国家安全保障会議(NSC)を創設したが、 情報収集能力や縦割り行政の弊害が指摘され、実効性は今も疑問視される。 情報なき国家がたどった運命を振り返れば、自ずとわが国の危機がみえてくる。

無期限の戦いに備えよ

起死回生のクーデター

生き馬の目を抜く国際社会

国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部の会合であいさつする菅官房長官(手前)。その右は河野国家公安委員長=12月4日午前、首相官邸
国際組織犯罪等・国際テロ対策推進
本部の会合であいさつする菅官房長
官(手前)。その右は河野国家公安
委員長=12月4日午前、首相官邸
 言うまでもなく特定秘密保護法案とは、日本版NSC(国家安全保障会議)のために不可欠なものである。各国が持つテロ情報をはじめとする「機密情報」がスパイ天国の日本には提供されない事態が長くつづいた。
 法案は、そういう事態にピリオドを打つためのものでもあるが、野党が反対するようにこれが情報を独占的に持つ官僚たちを“委縮”させ、国民の知る権利が不当に害されることがあってもならない。
 かつて1980年代にスパイ防止法の攻防を取材していた私にとっては、国家の安全を脅かす「機密情報」と国民の「知る権利」との線引きの難しさを久しぶりに感じさせてくれる問題である。この攻防は30年前にも見たものだと、思い出される。
 だが、国際情勢は明らかに80年代とは変わっている。今や紛争の火種として世界から注目されているのは、中国の覇権主義である。東シナ海でも南シナ海でも、領土的野心を剥き出しにする中国とどう対峙するかは、周辺国にとって最大の問題となっている。
 そして、その中国は、前回のブログでも書いたように中国共産党系の新聞が社説で「闘いのターゲットは日本に絞るべきだ」と広言して憚らないのである。
 私は、かつて当時の竹下登首相の秀和TBRビルの個人事務所に中国の人民解放軍総参謀部第二部の人間が正体を隠して「私設秘書として入り込んでいた」ことを思い出す。それが生き馬の目を抜く国際社会の最前線の現実なのだ。(門田隆将ブログ 2013.12.05

籠絡された陸自将補

防衛省 揺れる

日本版CIAを作るなら

 海外で日本人が狙われるような事件は、増えることはあっても減ることはないだろう。今からでも遅くない。本格的な対外情報機関を持つべきだ。本格的な情報機関を作るなら、2つの部門が必要となる。1つは工作・情報収集班。これは鵜(う)飼いの鵜のようなもので「情報」という魚を取る。ただし、魚を食べるには刺し身にしたり、焼き魚にするなど料理が必要となる。これをやるのが分析班だ。集めた情報を分析して「諜報」を作成する役割を担う。
記者会見で「国際テロ情報収集ユニット」設置を表明した安倍首相=11月22日、クアラルンプール(共同)
記者会見で「国際テロ情報収集ユニット」設置を表明した安倍首相=11月22日、クアラルンプール(共同)
 工作・情報班は、場合によっては海外での非合法活動にも従事しなければならない。その国で捕まれば死刑となるかもしれない厳しい職務だが、少なくとも日本に帰ってくれば合法にしなければいけない。国のために情報を集めたんだから免責しなければ報われない。そのための法整備が必要となる。
 海外諜報員を免責にする情報機関がメジャーリーグとしたら、免責しなければマイナーリーグですよ。ないよりはましだけど二流の機関にすぎない。理想をいえば、警察庁が責任を持つ工作・情報班と、外務省が中心となる分析班を対等で合体させるべきだ。両省庁は「帯に短し、たすきに長し」だから、どちらかがすべてを仕切るのは無理だ。それぞれが理想を求めるとけんかになってしまう。だから両省庁に属さぬ組織を新たに作るしかない。
 ただ、新しい組織は内閣官房に置いてはいけない。対外的な非合法活動が官房長官の責任に直結してしまうからだ。「問題があれば、諜報機関トップのクビを切ればよい」という体制にすべきだ。
 また、情報機関は政策に関わってはならない。政策に関わる人が情報を分析すると、先の大戦のように判断を間違えてしまうからだ。そういう意味でも内閣官房に置くべきではない。最初は即戦力の人たちを集めるしかないだろうが、それでは関係省庁のひも付きになってしまう。
 一人前のインテリジェンス・オフィサー(諜報員)を育てるには10年かかる。しかも100人養成して10人が使いものになるかどうかだ。残りの90人も処遇しなければ組織に人材は集まらない。情報機関は、そういう組織論も考えて中長期的な視点で作らねばならない。
 また、国に複数の情報機関があるのはよいが、情報機関は分析のレベルを競い合うべきで情報の速度を競うべきではない。にもかかわらず、今の日本はそれぞれの省庁が情報を囲い込み、分析もせずに情報を首相に上げてしまう。
 情報機関をいかに議会のコントロール下に置くかというのも重要な問題だ。チェック・アンド・バランスが利かない組織を作ってはならない。それに「優秀なトップがいるから大丈夫」などという人物本位ではなく、制度として担保しなければならない。
 日本には米国のような情報特別委員会はなく、国会議員に守秘義務も課せられていない。そんな議員に一体誰が説明するのか。議員がもしも秘密を漏らせば厳罰に処して失職させるべきだろう。日本版CIAを作るならば国会法を変えなければ意味がない。そうでなければ役に立たない情報機関になるか、暴走する情報機関になるかのどちらか。それでは戦前の日本の二の舞いになる。
(宮家邦彦・キヤノングローバル戦略研究所・研究主幹 産経新聞2015.02.28

対外情報機関は必要か

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