軽減税率が新聞、テレビを自殺に追い込む
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軽減税率が新聞、テレビを自殺に追い込む

「軽減税率」一色だった12月の新聞、テレビだったが、この政策は全く国民の為にならないと言ったら驚く人も多かろう。軽減税率の導入で、社会保障に充てられるはずの財源は減り、財政の健全化も遠のく。そのわけを知りながら報道しなかった大メディアの罪はもっと重い。

「軽減税率」一色だった12月の新聞、テレビだったが、この政策は全く国民の為にならないと言ったら驚く人も多かろう。軽減税率の導入で、社会保障に充てられるはずの財源は減り、財政の健全化も遠のく。そのわけを知りながら報道しなかった大メディアの罪はもっと重い。

安倍宏行の視線

 「軽減税率」一色だった12月の新聞・テレビだったが、この政策は全く国民の為にならないと言ったら驚く人も多かろう。最初から結論ありき、官邸主導で進められたこの政策は、低所得者対策を謳ってはいるが将来に禍根を残す「筋悪」なものだ。
 「軽減税率」導入で、社会保障に充てられるはずの財源は減り、財政の健全化も遠のく。そのわけを知りながら報道しなかった大メディアの罪は重い。(Japan In-depth編集長・安倍宏行)

「四方良し」の良くない政策

世界の潮流にあらず

「低所得対策」効果はあるのか

 消費税10%への引き上げに伴って導入が検討されている軽減税率について、自民・公明の両党は最終合意に達しました。低所得者対策として浮上した軽減税率ですが、果たして効果はあるのでしょうか。
 軽減税率は、一部の品目に限って消費税の税率を引き下げる措置です。生活必需品などを軽減税率の対象とすることによって、低所得者の消費税負担を減らそうという狙いです。与党内では主に公明党が軽減税率の導入を強く主張していましたが、税収減への懸念から財政当局が難色を示しているほか、中小零細企業が事務作業に対応できないといった課題を指摘する声が出ており、与党内で調整が進められていました。
 最終的には、対象品目について「外食」を除いた「生鮮食品」と「加工食品」とする形で軽減税率の導入が決定しました。しかし、軽減税率の導入によって失われてしまう税収1兆円について、代替の財源をどうするのか見通しは立っていません。
 当初から軽減税率には、本当に低所得者対策になるのか不透明だとの意見もありました。外食まで含めてしまうと、高級店に来店する富裕層にも恩恵が及んでしまい、かえって格差を拡大させてしまう可能性があります。一方、低所得者層は、家で調理する割合が少ない可能性もあり、どこまでを軽減税率の対象とするのかは容易に決められません。さらに言えば、同じ外食でも店内で飲食せず持ち帰った場合の扱いや、店舗での飲食(いわゆるイートイン)をどうするのかなど細かい部分をあげればキリがありません。とりあえずは、おおざっぱに加工食品までを対象とすることで落ち着きましたが、効果の程は実際に導入してみなければなんともいえないでしょう。
 今のところ消費税が10%に引き上げられる2017年4月に導入される可能性が高いですが、そうなると、各店舗は品目別にバラバラの税率を設定しなければなりません。事業者が納める消費税額を正確に把握するためには、税率や税額を記載した公式の請求書(インボイス)を発行する必要があります。これについては2021年をメドに導入を検討することになりました。
 とりあえずは1兆円の財源をどう確保するのかが最大の課題となりそうです。国債を発行するということになると、政府が掲げる財政再建目標がさらに遠のくことになります。一方で別の税率を上げるとなると、反対の声が出てくることは必至でしょう。
(The Capital Tribune Japan THE PAGE、2015.12.17

百害あって一利なし

まず抜本的な変革を

余りにも露骨な話

 安倍政権の経済ブレーンの一人の本田悦郎内閣官房参与は、次のように言っているのです。「軽減税率をどうするかというのは、理屈じゃない。理屈ならしないほうがいい」。
 軽減税率は理屈ではないのですって。つまり合理的なことではない、と。理屈で考えると軽減税率は支持できないが、政治の論理に従えば…ということなのでしょう。
 つまり、全く非合理なのが軽減税率だということです。で、それだけでもおかしいのに、まさかという展開になってきています。何かと言えば、新聞にも軽減税率が適用される方針なのだ、と。
 毎日が報道しています。「自民、公明両党は消費税増税と同時に導入する軽減税率制度の対象に新聞、書籍も含める方向で最終調整に入った。政府関係者が10日夜、「新聞、書籍への適用を考えている」と東京都内で記者団に語った」。
 理屈から考えたらおかしいという軽減税率ですが、それが新聞の購読料金に適用されるということになれば、どうして新聞社は軽減税率が理屈に合わないなどと言うことなどできるでしょう? 違いますか?
 新聞の使命は何か? 真実を報道することでしょう? そのためには、時には新聞業界の不利益になることがあるかもしれないが、不利益を承知で報道してこそ新聞の信頼性が高まるのです。
 それが常に自分たちの都合ばかり考えて報道内容を決めるようなことをしていては、面白い記事が書ける筈がありません。
 これだけ経済界、特に流通業界の人々が反対し、そして、経済学者の殆どが反対していても、軽減税率がおかしいとは言わない新聞社。おかしいなんて言ったら、新聞に軽減税率を適用してくれなんてことは言えませんものね。
 軽減税率の導入を主張する政治家たちに聞きたい!軽減税率は何のために導入するのか、と。低所得者層の保護のためなのか、と。
 だとしたら、新聞は貧しい人が生活していく上で必ず必要なものと言えるのか? 違うでしょう? 少なくても、貧しい人が日経新聞など読むはずがない。絶対とは言わないまでも99%ない。
 新聞協会は、新聞に軽減税率を導入する理由を、活字文化の維持普及にとって必要だと言っているが、そんなことを言い出したら、芸術の振興のために絵具や楽器に軽減税率を適用すべきだという要望が出てもおかしくはないのです。東京オリンピックもあることだし、スポーツ振興のためにスポーツ用具を軽減税率の対象にすべきだとも。或いは、ノーベル賞を取る科学者が増えるように、理科の実験用具は軽減税率の対象にすべきだとも。
 新聞社で働いている人々は、自分たちの言っていることが本当に理に適っていると思うのかと言いたい! 仮に、新聞の購読部数を下げたくないというのであれば、だったら値下げすればいいだけの話。それに、新聞社の収入は何も購読料だけではなく、広告料からも得られるので、広告代を上げる手段もある筈。
 いずれにしても、余りにも露骨な話ではないですか。新聞を軽減税率の対象にすれば、軽減税率を批判することなどできないのです。(経済コラムニスト・小笠原誠治、2015.12.11

ジャーナリズムのゆくえ

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