日本人はがんとどう向き合うべきか
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日本人はがんとどう向き合うべきか

今や日本人にとって、がんは最も身近な病と言える。昭和56年以降、日本人の死因のトップはがんであり、もはや世界有数の「がん大国」といっても過言ではない。がん治療は日進月歩とはいえ、私たちの死生観に今なお大きな影響を与える。日本人とがん、この重くて難しいテーマについて考えたい。

今や日本人にとって、がんは最も身近な病と言える。昭和56年以降、日本人の死因のトップはがんであり、もはや世界有数の「がん大国」といっても過言ではない。がん治療は日進月歩とはいえ、私たちの死生観に今なお大きな影響を与える。日本人とがん、この重くて難しいテーマについて考えたい。

「寿命を延ばす」からの転換

病床で見つけた「宝物」

  「私、末期がんなんでしょ。でもお客さんが待ってるから、絶対生きて帰る」
 大阪市立大病院(同市阿倍野区)の看護師、鶴田理恵さん(45)が10月に向き合った50代の女性は、強い口調で決意を語った。鶴田さんは、がん診療の地域連携拠点病院に指定されている同病院で、がん患者に寄り添うスペシャリストとしての使命をもつ唯一の専門看護師だ。
 女性は美容院を営んでおり、体調の異変を感じていたが、多忙で受診できずに時が流れた。その間に病状は進行し、病院で診察した際には、がんに全身を侵されていた。
 医師は、治療による体力の低下がかえって残された寿命を縮めると判断。鶴田さんが説明したが、女性は「お客さんに恩返しをしたい」と譲らなかった。意志を尊重し、抗がん剤治療を行ったが、女性は約1カ月後に亡くなった。
 死の間際、女性の心境に変化が感じ取れた。「大事なことを見落としていない?」。声を掛け続けた鶴田さんに、入院して2週間ほどたったある日、女性が手帳に記した文章を見せた。
 「頼りないと思っていた子供は成長し、私は多くの人に囲まれて幸せだと気づいた。宝物を見つけ、地獄にいるけど天国を見た」
 臨終の際、女性は家族に看取られながらこの世を去った。鶴田さんが手を取ると、一瞬だが力強く握り返した。「私やとわかるんやね。いつも手を握ったまま話していたもんね」
 がん看護専門看護師として、鶴田さんは命のともしびが消える瞬間にいくつも立ち会ってきた。「私たちは死ではなく、最期の瞬間まで生き抜く人をみている」と感じている。(産経新聞、2014.11.30)

死を想い、人生を変える

彼女の死に隠された驚愕の事実

5年生存率は65%

 胆管がんで死去した川島なお美さんや、胃がんが原因で32歳の若さで亡くなったフリーアナウンサーの黒木奈々さんなど、このところがんに関するニュースをよく耳にします。がんはすでに日本の国民病となっており、2人に1人が罹患し、3人に1人はがんが原因で亡くなっていますから、誰にとっても身近な問題といってよいでしょう。がんの治療は日進月歩といわれますが、実際、どの程度の治療成績が得られているのでしょうか。
5年生存率とは?
 国立がん研究センターは14日、がん患者の5年生存率(相対値)のデータを公表しました。調査対象となったのは、2007年における全国177施設の17万症例で、一般的な治療の目安とされる5年生存率(がんと診断された人のうち、5年後に生存している人の割合が、日本人全体で5年後に生存している人の割合に対してどの程度低いのかを示した数値)を算出したものです。
 今回の調査における、すべてのがんを対象とした5年生存率は64.3%でした。つまり全体的な話としては、がんにかかっても6割以上の人が5年以上生存できているわけです。1960年代の生存率は男性が30%、女性が50%程度でしたから、ここ半世紀でがんの治療成績は大きく向上したことが分かります。
部位別で生存率を見てみると
 部位別では、乳がんがもっとも生存率が高く92.2%、大腸がんは72.1%、胃がんは71.2%でした。日本人がかかりやすいのは、男性は胃がん、女性は乳がんなのですが、かかりやすいがんは比較的成績が良好ということになります。一方、肝臓がんと肺がんの治療成績は悪く、肝臓がんは35.9%、肺がんは39.4%でした。肺がんの罹患率は高いですから、要注意の部位といってよいでしょう。
 同調査では都道府県別の生存率も公表されました。もっとも高かったのは東京で74.4%、もっとも低かったのは沖縄で55.2%でした。地域によって治療成績に大きな違いがあるように見えますが、必ずしもそうとは限りません。こうした統計データは、母集団の数によって大きくブレる可能性があり、症例が少ない地域の場合には、例外的なケースが数字を引っ張っていることがあります。また、発見時のステージ、年齢、治療方法によっても生存率は変わってきますから、こうしたデータはあくまで参考程度にとどめておくのがよいと思われます。
患者のQOLも配慮に
 がんが国民病となるにしたがって、治療に対する考え方も徐々に変化しています。かつては、ひたすら生存期間を延ばすことに焦点が当てられていましたが、最近は患者の生活の質(QOL:クオリティ・オブ・ライフ)も考慮されるようになってきました。同じ5年の生存期間でも、それなりの生活水準を維持できたケースと、ほとんどの期間において苦しい治療が続いたケースでは、患者の負担は大きく異なります。どのような治療方針を選択するのかは、最終的には患者が決定すべきものです。がんは誰にとっても無関係な病気ではありませんから、わたしたちは、日頃からこうした情報と真剣に向き合っていくことが大切でしょう。(The Capital Tribune Japan THE PAGE、2015.09.25

がんの常識が非常識になる

「標準医療」=最善

「がん」とは何か

 「がん」。この単語を聞きたくもないという人がいるかもしれません。2015年、有名人のがんのニュースが相次ぎました。しかし、現代の人間をここまで苦しめるこの病気は、実は意外と知られていないことが多いのです。そこで、「がん」についてのかなり基本的な内容について、Q&Aにしてお話しましょう。
Q. 「がん」は何で出来ているの?
 がんはがん細胞からできた塊のことです。たまに、血中などに泳ぐ細胞のがんもありますが、多くは塊を作っています。
Q. 「がん細胞」はなぜできるの?みんな持ってるの?
 がん細胞は生まれたときには基本的には持っていません。そもそも「細胞」というものは、常に生まれ続け、ダメになり続けています。髪の毛や爪で考えるとわかりやすいでしょう。これらは日に日に伸び、先っぽのほうからダメになっていきますよね。皮膚も同じで、皮膚の深いところから新しい細胞が生まれ、表面にだんだんと上がってきます。すると、一番表面にいた皮膚の細胞は自ら死んで「垢」になります。女性はお化粧で「ターンオーバー」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、それと同じです。
 そんな風にして、人間の体というのはたくさんの細胞が毎日リニューアルし続け、死に続けることで常に新しい状態を保っているのです。そしてそのペースはとても精密に調整されています。
 ところでどんな風にして細胞は生まれるのでしょうか?細胞は結婚も妊娠もできません。細胞は「分裂」という方法を使って増えています。「分裂」をするときには、DNAという細胞の「設計図」のようなものが活躍します。この「設計図」が丸々コピーされて新しい細胞が出来るのです。ところが、時々このコピーの段階でミスが起こります。コピーは一文字ひともじ書き写す手作業のようにしてやっているからです。このミスが起きると、間違った細胞ができてしまいます。
 間違った細胞は、自分勝手なペースで分裂したりしてしまいます。その他の細胞はすべて、まわりの空気を読みながら分裂したり自ら死んだりしているんですが、間違った細胞は分裂も自ら死ぬペースもめちゃくちゃ。これはがんが持っている性質で、「無秩序な増殖」なんて言います。勝手に増えまくった結果、「腫瘍」という人間の目に見えるくらいの大きい塊になってしまいます。
Q. その細胞のコピーのときのミスって、誰にでも起こるの?
 はい。誰にでも、いつでも起きることがあります。原因がわかっているものもありますが、今の医学では原因不明のものがほとんどです。
 わかっているものとは、たとえばヒトパピローマウイルスというウイルスと子宮頸がん、放射線と甲状腺がんなどです。
Q. 「がん」が出来ると、なぜダメなの?
 これはとてもいい質問です。なぜ「がん」が出来るといけないのか。具体的なお話をしましょう。
 「胃がん」を例に考えましょう。まず「胃」について説明します。「胃」は、食べ物の通り道であるとともに、食べ物からエネルギーを取り出す消化センターでもあります。握りこぶしが丸々2個は入るくらいの袋の形をしています。ここに「がん」つまりデキモノができてしまう。
 そうすると、まず狭いところに出来てしまうと食べ物の通り道をふさいでしまって、ゲーゲー吐いてしまいます。
 次に「胃」は消化センターですから、消化が悪くなることがあります。それ以外にも、「胃」という袋を食い破るわけですから血が出たり、痛くなったりする。ひどいと袋に穴を開けてしまうことだってあります。
 こんな風にして、「がん」は勝手に増殖した結果、出来た場所を破壊してダメにしてしまう。その臓器の機能を低下させてしまうとともに、「痛み」「出血」などの症状を出してしまいます。
Q. では、「がん」になるとなんで死んでしまうの?
 先ほどお話した「胃がん」の例で考えると、胃だけに出来ていれば胃を手術で切り取ってやれば治るかもしれません。早期であればそれで治ることもあります。しかし、「がん」のもう一つの性質である「ほかの場所に住み着く」(=転移する)によりほかの臓器、たとえば肺や脳みそなんかにがんが住み着いているとどうでしょう。肺や脳みそでは切り取るのに限界があり、切り取れなかったがんは「無秩序な増殖」をしますから肺では息がしづらくなり、脳ではぼんやりしたり麻痺が出たりします。さらに大きくなると、肺や脳みそをダメにしてしまいます。人間にとって肺や脳みそは大切な臓器。これらがちゃんと働かなければ生きてはいけず、人間という個体の死になります。
 クルマで考えると、タイヤやバンパーは壊れても交換可能ですが、エンジンが火を吹いたらそのクルマは廃車になってしまうということです。
Q. 「がん」って、治るの?
 すごく簡単に言えば、がんの種類によって全然違います。が、多くの種類のがんでは、「早めに見つかって」「手術などで取れれば」治ることが多いです。また、個人差もかなり大きく、同じがんの同じくらいの進行ぐあいのものでも、ある人は完全に治ったり、別の人はそのせいで命を落としたりします。(外科医・中山祐次郎「Yahoo!ニュース個人」2016.01.01

最適な治療法は見つかるのか

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