シャープは再建の道を誤った
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シャープは再建の道を誤った

どうもきな臭いと思ったら、やっぱりきな臭かった。シャープが台湾の鴻海精密工業の買収提案を受け入れた矢先、今度は鴻海側から契約調印をしばらく見送るとの伝達があったという。シャープの再建は本当にうまくいくのか。巨大外資による初の日本の大手電機メーカー買収劇は、早くも暗雲が立ち込めている。

どうもきな臭いと思ったら、やっぱりきな臭かった。シャープが台湾の鴻海精密工業の買収提案を受け入れた矢先、今度は鴻海側から契約調印をしばらく見送るとの伝達があったという。シャープの再建は本当にうまくいくのか。巨大外資による初の日本の大手電機メーカー買収劇は、早くも暗雲が立ち込めている。

このまま漂流するのか

上念司が「陰謀論」をぶった斬る

買収を決めたもの

松下幸之助が生きていれば…

 経営不振に陥っている「シャープ」が台湾の大手電子機器メーカー「ホンハイ精密工業」の傘下で再建を目指すことになりそうだ。一方、不正会計問題で揺れる東芝は、2016年3月期連結決算の純損益で、赤字額が7100億円に拡大する見通しだ。
 シャープ、東芝はともに日本を代表する電機メーカーである。その2社が、ここまで転落してしまったのは、なぜなのか。
 いろいろな理由があるのだろう。だが、ひとつはっきりといえることがある。どちらも大企業になってしまった。「守り」に入ってしまったのだ。
 僕は、多くの経営者に取材してきた。パナソニックの松下幸之助、ホンダの本田宗一郎、ソニーの盛田昭夫、京セラの稲盛和夫……。みな創業者であった。彼らはゼロからスタートしたし、当時の日本もゼロからのスタートだったのだ。失うものはなかった。だから「攻めの経営」になった。
松下政経塾の建設現場を
視察する松下幸之助
相談役=1979年1月、
神奈川県茅ヶ崎市
 以前、松下幸之助さんを取材した際、僕は「部下を役員などに抜擢するとき、どういった点を見るのか」という質問をした。答えは意外なことに、頭のよさでも健康でもないという。松下さんがいうには、自分は頭もよくないし、20歳のころに結核を患ったりして、とても健康とはいえないのに、こうして経営できたからだ。
 では「誠実さですか」と聞くと、それも違うという。「特別に誠実でなくても、一人ひとりにきちんと対応できていればよい」のだそうだ。では何かと問うと、「運」だという答えだった。
 よくよく聞けば、天から降ってくるような運に恵まれた人、運がいい人という意味ではない。「仕事をしていれば、難しい問題に必ず突き当たる。そのとき問題に前向きに取り組めるか」という、つまりポジティブに運を引き寄せられる資質を持っているということらしい。
 そして、その危機や難問を「隠してはいけない」とも語っていた。隠さないことで、社員全員に参加意識が生まれる。問題を「共有」できるのだ。さらに経営者は「暗くなってはいけない、おもしろがって明るく取り組む」ことが大事だとも話していた。トップが暗くなったりすると、会社全体が暗くなるからだという。加えると、ダメなものはダメと率直にいうことも大事だといっていた。
 シャープや東芝のニュースを聞いて、松下さんの言葉の重みを、僕は改めて痛感した。(田原総一朗公式ブログ、2016.02.15

「外からの技術で新陳代謝を」

経営陣の能力の問題か

人型ロボ「Pepper」も製造

懸念は中台の繋がりと技術流出

 官民ファンドの産業革新機構による支援が有力視されていたシャープ再建について、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が買収する方向で最終調整している。官主導の電機再編とどちらが妥当なのだろうか。
 鴻海は、自社ブランドはないが、電子機器受託生産では世界最大の企業グループだ。米アップルなどの大手メーカーに対し、各種パーツのOEM(相手先ブランド名製造)供給者として有名である。筆者はパソコンの自作が趣味だが、品質が良い鴻海(フォックスコン)のマザーボード(主要な電子部品を搭載した基板)を使って自作したこともある。
 シャープと鴻海は、4年前に資本・業務提携で合意したが、その後、交渉は進まず、シャープは韓国のサムスン電子からの出資を受け入れた。今回、革新機構はシャープに3000億円の出資と2000億円の融資枠を柱とした再建案を提示して有力視されていたが、鴻海は土壇場で7000億円の支援を打ち出して盛り返した格好だ。
 また、革新機構案では高橋興三社長ら現経営陣が退陣するということだったが、鴻海案では、現経営陣が引き継がれる予定という。こうした再建策の場合、現経営陣が責任を取って退陣するのが普通なので、鴻海案はかなり異様に思えてくる。現経営陣が鴻海案を選ぶうえで、この条件も影響していたとすれば、将来に禍根を残さないともかぎらない。
 しかも鴻海案は、現経営陣の残留のほか、雇用を守り、液晶パネルの技術流出も防ぐという、まさにシャープにとって至れり尽くせりである。そんなうまい話が本当にあるのだろうかというほどだ。
 はっきりいえば、鴻海がほしいのはシャープの液晶技術だろう。でなければ、シャープに、現経営陣や従業員の雇用を守りつつ、巨額な資金提供をすると言い出すはずがない。
会談を前に握手する台湾の馬英九
総統(左)と中国の習近平国家主席
=2015年11月7日、シンガポール
(共同)
 一方、経済産業省が懸念する液晶の技術流出について、現経営陣はこれまでの鴻海との液晶工場の共同運営を事例として「技術流出はなかった」としているが、説明になっていない。これまでシャープ本体と鴻海が本格的に提携していたわけではないからだ。現経営陣が技術流出を前提として、自らの保身を図るようなことはあってはならないことだ。
 というのも、表向き台湾と中国は政治的に対立しているが、経済面では人脈を通じて、かなりのつながりがある。実際、台湾企業と中国企業はかなり密接な関係を持っており、鴻海も本社は台湾にある台湾企業であるが、生産拠点として中国内に13工場を抱えている。
 こうしてみると、鴻海のシャープ支援は無条件にいいことばかりではないかもしれない。革新機構による電機再編も官主導なのでさほど期待できないが、外国資本による支援も危うい。どっちもどっちだろう。
 経済環境が電機メーカーに有利な円安になったのに、それを生かせないような経営の失敗があると、自力で再生できない企業になる。そうした企業の行く末はかなり厳しいものになるということかもしれない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一 夕刊フジ、2016.02.12

もう当事者能力はないのか

シャープは再建の道を誤った

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