在外邦人をいかに守るのか
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在外邦人をいかに守るのか

安全保障関連法が3月に施行される。自衛隊と米軍は、平時から有事までさまざまなかたちで同盟を深める。一方で、テロが頻発する世界情勢のなか、在外邦人の救出に策はあるのだろうか。自衛隊の役割を論じる。

安全保障関連法が3月に施行される。自衛隊と米軍は、平時から有事までさまざまなかたちで同盟を深める。一方で、テロが頻発する世界情勢のなか、在外邦人の救出に策はあるのだろうか。自衛隊の役割を論じる。

前田守人の視線

 国論を二分した安保法制の議論から半年以上が経過した。安全保障関連法が3月に施行され、自衛隊の海外での活動範囲は広がる。「日米同盟を強固にして抑止力を高め、切れ目ない防衛体制を整備する」(安倍総理)と唱えるだけでは、日本と日本人の安全は確保できない。
 とりわけ海外で働く日本人の命はどう守られるのか。政府はこれまで武器使用のルールを定めた「部隊行動基準」の策定などを進めてきた。しかし、武器使用や情報管理のルールを定めても、実際の現場でどれほど現実的で有効な運用ができるのか疑問が残る。テロや戦闘が頻発するなかで、日本人をどう救出するのか。もちろん自衛隊にしかその役割を果たすことはできない。
 ところが、いまの自衛隊には救出部隊を現場に空輸する輸送機もなければ、十分な防弾装備もない。このままでは救出に向かう自衛隊員の命さえ危険にさらされる。そのためか、自衛隊の作戦計画の策定において、防衛省内では制服組(統合幕僚監部)が背広組中心の内局に権限の移譲を求めているという。自衛隊の作戦指揮が統幕に一元化されれば、意思決定を速くし現場感覚のある運用につながっていくのかもしれない。一方で、国民は自衛隊に過度の期待を抱かず、「できること」と「できないこと」を知っておくべきだろう。

『Voice』4月号先行配信

最強エリートの「正体」

人質救出には高いハードル

 11月13日にフランス・パリで勃発した同時多発テロは、国際社会が結束して国際テロリズムの根絶を目指すことを改めて誓わせた。イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」をはじめ、躊躇(ちゅうちょ)なく民間人を巻き添えにするテロ組織が地球規模に拡散する中、国内外の日本人をいかにして守るのかは喫緊の課題だ。9月に成立した新たな安全保障関連法で自衛隊は何ができるようになったのか。
 1月にイスラム国による日本人殺害脅迫事件が起き、安全保障関連法を審議した先の通常国会では、海外でテロに巻き込まれた日本人の救出が焦点の一つとなった。
アルジェリア人質事件の犠牲者を悼み、国会に掲げられた半旗=2013年1月25日(酒巻俊介撮影)
アルジェリア人質事件の犠牲者を悼み、国会に掲げられた半旗=2013年1月25日(酒巻俊介撮影)
 政府は平成25年1月のアルジェリア人質事件を機に、自衛隊による在外邦人の陸上輸送を認め、航空機や艦艇とともに邦人を輸送できる範囲が広がった。ただ、この時点では、より危険な任務となるテロ組織に拘束された邦人の救出任務は手付かずだった。武器使用権限が正当防衛や緊急避難など「自己保存型」に限られるからだ。
 新たな安全保障関連法は自衛隊が在外邦人を救出する任務に必要となる武器使用を認め、武装集団などを排除する「任務遂行型」として、国際標準の使用基準に近づけた。これにより、法制上は警察権行使の一環として、在外邦人の救出作戦に自衛隊を派遣することができるようになった。
 だが、安倍晋三首相が「法的要件を整えてもオペレーションができるのかという大問題もある」と指摘するように、人質救出任務のハードルはかなり高い。
 救出任務の実行には当該国が同意しているほか、当該国の権限がその地域に及んでいることなど3つの要件を満たす必要がある。米軍ですら昨年12月にイエメンで作戦に失敗しているように、運用面のハードルはさらに高い。
 救出作戦には拘束場所の特定に加え、敵勢力の規模や武器、能力の事前把握、輸送ルートの確保などが必要だ。事前にこれらの情報がなければ、作戦実行は不可能といえる。インテリジェンスがモノを言うのだ。
 政府は今月、国際テロ組織の情報を一元的に集約する「国際テロ情報収集ユニット」を外務省に設置する。イスラム国による日本人殺害脅迫事件の政府対応を検証した報告書でも、情報収集態勢の強化の必要性が指摘され、パリ同時多発テロに危機感を強めた政府が設置時期を来年4月から前倒しした。
 ただ、各国のインテリジェンスサークルで渡り合うには中長期的な人材育成が欠かせない。自衛隊には、すでにテロリスト対処を任務とする特殊部隊が存在する。陸上自衛隊の「特殊作戦群(特戦群)」や海上自衛隊の「特別警備隊(特警隊)」がそれに当たる。両部隊はあらゆる事態を想定し、過酷な訓練を積む。だが、作戦を実行するにはさまざまな条件を整えなくてはならず、リスクを伴う高度な政治判断も不可欠だ。(産経ニュース2015.12.04

ひとつの言葉では括れない

できることは限られていた

当たり前のことが許されない

安保法制で一歩前進

 『海難1890』という映画を観ました。
 パンフレットの表紙には荒れ狂う台風の海の上で木の葉のように揺れる一つの帆船が描かれています。
 日本とトルコの友好125周年記念に制作された作品です。125周年とは、1890年に日本にやってきたオスマントルコの軍艦エルトゥールル号が現在の和歌山県串本町沖で台風に巻き込まれて乗組員が532名が亡くなる惨事の際、地元住民が身を顧みずに海中に飛び込み69名を救出した事故が起きてから125年目ということです。
 この史実と、トルコの教育でこの事が感謝の念で扱われていて親日家が大変多いことは知っていましたので、この映画はぜひ見たいと思っていました。映画のストーリーでも実際の日本とトルコの関係にも続きがあります。海難事故から95年、1985年のイラン・イラク戦争時のトルコによる日本人救出劇です。
 イラクのサダム・フセイン大統領(当時)はイラン上空の航空機に対する48時間後の無差別攻撃開始を宣言し、イラン・テヘランの在留邦人は一刻も早く脱出しなければならない状況でした。しかし自衛隊は海外派遣不可の原則のために、また日本航空も空路の安全が見込めないからと救援機は向かわず(向かえず)多くの日本人が窮地に追い込まれていました。
 この窮状を知ったトルコのトゥルグト・オザル首相(当時)は95年前に日本人に受けた海難事故への恩義から自国民用の救援機を増機、200人以上の邦人をトルコ・イスタンブール経由で救ってくれたのです。
 余談ですが、この事件のあとに自衛隊法は改正され有事の際に在外邦人を「輸送」はできるようになっていましたが、安保法制で「保護」まで措置するようになったのはさらなる前進でしょう。いずれにしても過去の日本人の行いが95年後の邦人救出に繋がったことなど歴史をきちんと学ぶ大切さをあらためて思い知らされました。(中田宏ブログ2015.12.21

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