地方をダメにする「ふるさと納税」を正せ!
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地方をダメにする「ふるさと納税」を正せ!

この2年で激増した「ふるさと納税」は、地方自治体と生産者を「下りると損」のチキンレースに追い込んでいる。返礼品、おみやげ競争が地方の生産者にとって大きなインセンティブとなり競争を歪め、地方の力は逆にどんどん失われている。

この2年で激増した「ふるさと納税」は、地方自治体と生産者を「下りると損」のチキンレースに追い込んでいる。返礼品、おみやげ競争が地方の生産者にとって大きなインセンティブとなり競争を歪め、地方の力は逆にどんどん失われている。

大江紀洋の視線

 確定申告シーズンが終わりました。作業された読者の皆さま、おつかれさまでございました。 
 ふるさと納税は、選択されたでしょうか? 2008年度から始まったこの制度、当初は使いづらいなどと言われて盛り上がりに欠けましたが、14年度から大きく実績が伸びています。ことし、16年度は1000億円をゆうに超す規模になると言われています。 
 「納税先を選べる」「個人が故郷の自治体を応援できる」「人口を吸い上げる都市部、とくに東京から税源が移管されるから地方創生につながる」。そんなふるさと納税は、国が一律に地方に配る地方交付税制度に比べ民主的・競争的であり、これまで日本に根付かなかった寄付制度がようやく定着すると概ね前向きに受け止められているように見えます。 
 しかし、実態をよく見ると、全くそんな綺麗事ではありません。14年度から大きく伸びたのは、受け取った自治体が個人にお返しする返礼品、いわゆる「おみやげ」が充実してきたからに他なりません。「あそこの自治体にふるさと納税すれば、美味い肉がもらえる」というような話をよく耳にするようになったのは私だけではないでしょう。 
 そんなことなら構わないじゃないか、そう思う人が多いかもしれませんが、問題は深刻になってきています。返礼品競争、おみやげ競争が、地方の生産者にとって大きなインセンティブとなり、競争が歪み、地方の力が逆にどんどん失われている事態に陥っているのです。 
地方活性化の現場を歩き、実践の中から教訓を見出し、辛口を恐れず提言を続ける木下斉さんに、ふるさと納税の「見たくない現実」を赤裸々に描いていただきましたので、ぜひご覧ください。 (Wedge編集長)

見たくない現実

「税金でカタログ通販」

不公平でなくて何ぞや

なぜ魅力ある政策で競わないのか

 ふるさと納税はますます活気づいています。本来の趣旨とは異なり、地域の名産品を得るための税金の有効利用のような感じになっています。ちょっとおかしいことは確かです。総務省は「ふるさと納税」の2015年4~9月の寄付額が、前年同期比約4倍となる約454億円に上ったと発表しました。この調子だと2015年度は1000億円をゆうに超えそうですね。かなり実質的です。今年度から寄付先が5自治体までは減税手続きの確定申告が不要となるなど、制度が拡充されたことが影響していると考えられています。
 形式は寄付ですが、減税になるのですから、全体としてどのように使われるべきかは考える必要があります。なにか、名産品の競争となっているようで大丈夫かな、と思います。ふるさと納税を受ける側の自治体のことが話題になりますが、その資金は主に都会の市民の税金として支払われるべきものでした。都会の自治体では減収が実質的になっているところもあります。さらに大きな額のふるさと納税となるなら、制度設計も見直すべきでしょう。
 私は、地域の必要なプロジェクトに対して寄付するというのが本筋と考えています。たとえば、洪水に見舞われた自治体なら、その復興予算として寄付を受けたいという意思表示をすべきです。千枚田を守るためのプロジェクトや里山を守るためのプロジェクトなどに寄付を募るのもありでしょう。お城の再建、バイオマス発電の建設、海岸の清掃などなど、様々なプロジェクトが考えられます。魅力的なプロジェクトを作り、それに対して寄付を募るというのがいいと思っています。一種の社会的なクラウドファンディングですね。
 ちなみに2014年1月から12月にふるさと納税の寄付金が多かった自治体は以下の通りです。
長崎県平戸市のふるさと納税特典。近海で獲れた旬の魚を厳選し、新鮮さをそのままに手造りで加工。長崎産の塩を使用(同市HPより)
長崎県平戸市のふるさと納税特典。近海で
獲れた旬の魚を厳選し、新鮮さをそのまま
に手造りで加工(同市HPより)
1.長崎県平戸市  12億7884万円  さざえやエビなどの海産物など
2.佐賀県玄海町   9億3205万円  山の幸、海の幸など
3.北海道上士幌町  9億1097万円  和牛、出張気球体験プランなど
4.宮崎県綾町     8億3247万円  地元産の豚や牛の肉など
5.島根県浜田市   6億2170万円  のどぐろ一夜干しなど
6.鳥取県米子市   4億9511万円  大山ハムとソーセージセットなど
7.山形県天童市   4億7537万円  さくらんぼ、ラフランスなどの果物
8.佐賀県小城市   4億2821万円  佐賀牛、ブラックモンブランなど
9.宮崎県都城市   4億 121万円  肉や霧島焼酎飲み比べセット
10.大阪府泉佐野市  3億8976万円  格安航空会社のポイント、水なすなどの農産物など
 確かに魅力的なものが並びます。ただこれだけの額の寄付を獲得するには職員の人件費や広告費などもかなりかかります。それに実際には返礼品代や送料がかかりますから、純粋に自治体に入るお金はさらに小さくなります。それ以上の額の税収が寄付する人の自治体からは消えています。この制度は確かに面白いですが、全体としては社会に本当にプラスとなるのかどうかは考えてみる必要があります。
 私は、上記のように自治体の魅力ある政策プロジェクトに対して寄付するのが本道であると思っています。返礼品の競争が激化するのはおかしいはずなのです。(児玉克哉のブログ「希望開発」2015年10月24日

納税か寄付か

ますます地方が衰退する

 ふるさと納税 果実で返礼品切れ続出 農家所得増に貢献 (2015/12/20)

 >ふるさと納税

 出身地や応援したい都道府県、市区町村に寄付すると、所得税や居住地の住民税が減額される制度。08年  に創設された。自治体がお礼に特産品などを贈ることで認知度が高まり、寄付額は141億9000万円(13年実績、総務省調べ)に上る。今年から減税対象の寄付上限を2倍に引き上げた他、5市町村まで特例で確定 申告が不要になり、申し込みが増えている。

 >サクランボ主産地の山形県。東根市は11月下旬に16年産「佐藤錦」1キロを登場させたところ、3週間で5000件に到達。桃「川中島白桃」は予定数量の300ケース(1ケース=5キロ)に達した。返礼品の果実を提供するJAさくらんぼひがしねは「市場出荷より高い単価で取引され、生産者の励みになる」と歓迎する。

 こんなことで喜んでいるから、地方はダメなんでしょうね。麻雀荘で仲間内で賭け麻雀しているようなものです。仲間ウチのカネが回っているだけで、しかもその中から雀荘に対する支払いも発生するから手持ち金額の総額が減るだけ。
 単に徴税コストを引き上げているだけです。税金を使って通常より高いレートで農産物を買っているわけですから、農家に対する補助金をばらまいていることになります。まあ、通常と同じレートで買っても、その分のコストがかかることに変わりはありませんんが。
 安易に地方自治体が高値で買い上げてくれるのなら農家は努力しないでしょう。それは地場産業の競争力を強化し、売上を上げていくことにはならず、むしろ競争力を弱まることになるでしょう。過去も安易に公共事業やら補助金に頼って、自立自助の方策を考えなかったから、地方が衰退していったのではないでしょうか。
 1万円払って、1万2千円分とかのクーポンが貰える地方振興券と同じ構図です。単に徴税コストをあげているだけですから、税金の無駄遣いです。安倍政権のアベノミクスってこれじゃないですかね。公共事業でバラマキ、地域振興券でバラマキ、定率減税でバラマキ。
 それで「儲かった、儲かった」と喜んでいるわけです。ふるさと納税でますます地方は衰退すると思います。(清谷信一公式ブログ  2015年12月29日)

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