井山裕太は人類最強の囲碁棋士になれるか
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井山裕太は人類最強の囲碁棋士になれるか

前人未踏の7冠制覇まであと一勝。日本囲碁界の歴史を塗り替える井山裕太6冠の挑戦がいよいよ始まる。囲碁七大タイトルの最後に立ちはだかるのは十段戦。3年前は同じタイトル戦で敗れ、7冠達成を逃しただけに悲願のリベンジでもある。26歳の天才棋士が「人類最強」の称号を手にする日は近い?

前人未踏の7冠制覇まであと一勝。日本囲碁界の歴史を塗り替える井山裕太6冠の挑戦がいよいよ始まる。囲碁七大タイトルの最後に立ちはだかるのは十段戦。3年前は同じタイトル戦で敗れ、7冠達成を逃しただけに悲願のリベンジでもある。26歳の天才棋士が「人類最強」の称号を手にする日は近い?

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名人(碁所)の資格あり!

 井山裕太がとうとう七冠タイトルに王手をかけた。この時点で囲碁史上初めての出来事である。ただ「王手をかける」という言葉は将棋用語なので、囲碁の「アタリにする」という言葉があればぴったりくるのだが、それはさておき、もし実現すれば大変な偉業である。
 現在、日本プロ囲碁界のタイトルは、女流や年齢制限のあるものやローカルやマイナーなものも含めると約20あるが、全棋士参加の挑戦手合によるビッグタイトルは七つ。棋聖、名人、本因坊、王座、天元、碁聖、十段である。井山はこのうち十段を除く六冠を獲得している。つまり3月8日から始まる十段戦の五番勝負に勝てば、これまで誰も為(な)しえなかった全冠制覇を達成することになる。
 将棋界では平成8年に羽生善治が七冠制覇して社会的事件となった。同じことが囲碁界にも起きようとしているのだ。囲碁や将棋に詳しくない方はピンとこないかもしれないが、これは想像を絶するほどの難事である。現代はスポーツを含むあらゆる競技の選手レベルが上がり、他を隔絶するほどの桁(けた)外れの強者は現れにくくなっている。かつては野球の大リーグに何人もいた4割バッターが70年以上出ていないのもその一例だ。
 囲碁界にも過去、無敵時代を築いた棋士が何人か現れたが、七冠制覇を成し遂げた者はいない。抜きんでた実力に加えて、運にも恵まれないと達成できないことだからだ。しかし、現在の井山は幸運に恵まれてここまで来たとは思えない。というのも、ここ最近の勝ちっぷりが凄(すさ)まじいの一語に尽きる。直近5回の挑戦手合の結果を記すと、碁聖戦○×○○、名人戦○○○○、王座戦○○○、天元戦○○○、棋聖戦○○○○となる。なんと挑戦手合16連勝中なのである。
 戦った相手はタイトルホルダーおよび挑戦者であるから、(井山を除いて)約460人の全棋士の中で最強の棋士である。その相手に対して16局打って一つも負けないなどというのは、これはもう神懸かり的な強さと言える。たとえば三大タイトルと言われる棋聖・名人・本因坊は七番勝負で、四番勝てばタイトルを取れるが、現在の井山に七局中四局勝つというのは至難であるのは容易に理解できるだろう。
 江戸時代、棋士たちは幕府から扶持(ふち)を与えられ、4つの家元がひたすら技芸に励んだ。中国で生まれた囲碁が飛躍的に進化したのは、江戸時代の棋士たちのおかげである。当時は「名人」という神格化された位があった。現在、「名人」はあらゆるジャンルに使われる一般名詞となっているが、もともとは囲碁の最強者を表す言葉であった。「名人」は「碁所」という役職に就き、囲碁界を支配できる立場にあったが、「名人碁所」になるには、他を隔絶した技量が必要とされ、そのため江戸時代の約260年間でわずかに8人しか生まれなかった。今回、井山が七冠制覇を成し遂げれば、これはもう江戸時代の厳しい基準で言っても、十分「名人(碁所)」の資格ありと言える。
 まもなく行われる伊田篤史十段と井山六冠が戦う十段戦の五番勝負は、囲碁ファンだけでなく世間が注目する大一番となる。(百田尚樹 産経新聞 2016.2.29

「ミスがないのに負けた」

強い棋士がまた一人現れた

7冠達成はどれほどの偉業なのか

 日本には、約460人の囲碁棋士がいる。彼らの頭の中は一体どうなっているのか。その一人だった故中山典之さんは、自著の『囲碁の世界』(岩波新書)に若手時代の逸話を紹介している。碁の試合で遅くなり、仲間の棋士数人と日本棋院に泊まりこんだ。
 「眠れんなあ。一局並べるから、誰の碁か当ててみるかい」。声が聞こえて、一同が賛成する。並べるといっても、頭の中の碁盤である。暗闇のなかで、古今300年の碁を片っ端から当てていったというのだ。
 現在、そんな天才たちの頂点に立つのはもちろん、井山裕太六冠(26)である。6冠とは、棋聖、名人、本因坊、王座、天元、碁聖の6タイトルを指す。最後のビッグタイトル、十段の獲得を懸けて、伊田篤史(あつし)十段(21)に挑戦する五番勝負が、来週8日から始まる。
 7冠達成はどれほどの偉業か。作家の百田尚樹さんは小紙への寄稿で、野球の大リーグの4割バッターを例に挙げていた。それに倣えば、日本ハムの二刀流、大谷翔平選手(21)による、投手、打者すべてのタイトル獲得に匹敵するだろうか。
 ともあれ、世間の注目を集めることは間違いない。関係者としては、なんとか囲碁ブームにつなげたいところだ。幸い、若い女性の間で囲碁への関心が高まっていると聞く。十段戦同様に小紙が主催する女流名人戦も、昨日から始まった。こちらは、女性棋士のトップ、謝依旻(しぇい・いみん)女流名人(26)の9連覇が懸かっている。
 中山さんによれば、『源氏物語』の紫式部や『枕草子』の清少納言は、かなりの打ち手だった。NHKの連続テレビ小説『あさが来た』のヒロインのモデル、広岡浅子も囲碁好きで知られる。残っている棋譜から、今のアマチュア三段レベルの腕前らしい。(産経ニュース2016.03.04

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