人生オワタ! バーチャル教育の危ない未来
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人生オワタ! バーチャル教育の危ない未来

「脱 ふつう」。こんなキャッチコピーを掲げて4月に開校したネット通信制の「N高等学校」。不登校の生徒らも受け入れ、IT人材などの育成を目指すという。志はごもっともだが、「人間力」の育成を軽視した型破りなカリキュラムで本当に大丈夫なのか。「N高行ったら人生オワタ」なんてオチはありませんよね?

「脱 ふつう」。こんなキャッチコピーを掲げて4月に開校したネット通信制の「N高等学校」。不登校の生徒らも受け入れ、IT人材などの育成を目指すという。志はごもっともだが、「人間力」の育成を軽視した型破りなカリキュラムで本当に大丈夫なのか。「N高行ったら人生オワタ」なんてオチはありませんよね?

可能性と課題の近未来感

不登校や中退問題だけではない

宿題は残されたまま

VRで入学式、ネット通信制の「N高校」

 Q:以前この欄で、カドカワがインターネット通信教育の高校をつくるという紹介がありましたが、無事開校したのでしょうか?
 A:出版とIT事業を展開するカドカワが設立した学校法人角川ドワンゴ学園は今年4月、「N高等学校」を開校しました。ほぼすべての授業をインターネット経由で行う通信教育制の高校です。同校のサイトでは、校名のNについて「New、Next、Necessary、Neutralなど多くの意味を込めました」「生徒の皆さん一人ひとりにとっての“N”の可能性を見つけて欲しい」とあります。
 カドカワグループのドワンゴは「ニコニコ動画」の運営で知られますが、そのドワンゴが東京・六本木で運営するイベント会場「ニコファーレ」で4月6日にN高等学校の入学式が行われました。インターネット中継とVR(バーチャル・リアリティー)技術を使った前代未聞の入学式でした。入学式は、N高等学校の所在地である沖縄県うるま市と、新入生が集合したニコファーレをネットで中継。本校にいる奥平博一校長の式辞を六本木にいる生徒たちがスクリーンで見るという形が取られました。ニコファーレの室内4面の壁を覆うLEDスクリーンには、沖縄の校庭も映し出されました。
 校旗掲揚、校長式辞、来賓の祝辞はすべて映像を介して行われ、六本木会場の壇上には同校の理事を務めるKADOKAWAの角川歴彦会長やスタジオジブリの鈴木敏夫代表が並びました。スクリーンに映し出された奥平校長に新入生代表が宣誓する場面もあり、ネットと現実が融合した近未来的な入学式でした。会場の生徒や理事たちには1人ずつVRヘッドセットも配られました。これを装着すると、沖縄の映像をより高精細に360度見渡せる仕掛けです。生徒全員がVRヘッドセットをかけた様子は、SF映画のようでした。
 1期生となる今年の入学者は1482人。会場には出席を希望した73人が参加しました。他の新入生はインターネット経由で参加し、専用のチャットツール「Slack」を使って会場の壁にメッセージを表示していました。新入生の大半は10代ですが、中には年齢が高めの人もいるようです。現役アイドルや世界的なプログラミングコンテストの入賞者、15歳の社長などもいるそうで、まさに多士済々です。
 N高等学校の生徒はスマートフォンやパソコン経由で授業を受けて、リポートを提出や年5回のスクーリングで単位を取得。最短3年間で全日制の高校卒業の資格が得られます。また、希望者は全国各地でさまざまな職業体験ができ、課外授業としてドワンゴの現役プログラマーによるプログラミング授業や、森村誠一氏ら現役人気作家による小説の授業も受けられます。提携授業として、定員30人で全寮制の東大志望者限定「N塾」も用意されています。「ネット部活」もあり、特別顧問として豪華な面々がそろっています。将棋部の阿部光瑠六段、囲碁部の藤澤一就(かずなり)八段、サッカー部の元日本代表、秋田豊さんらです。
 入学式で宣誓をした塩屋敬加(えんや・のりか)さんは、「将来は音楽クリエーターになりたい」との思いでN高等学校に入学。母親と岐阜県羽島市から始発列車に乗って入学式に参列しました。敬加さんの母は「行きたい高校が地元では見つからなかったのですが、本人がN高等学校を見つけ出し、父親も『ここならいいね』と納得しました。子供が本気でやりたいことにはダメと言わない家庭方針なんです」と話してくれました。敬加さんは、この入学式の以前から前述のSlackを介して音楽好きの新入生たちと知り合い、ネット上でバンドを組んでいました。入学式では、バンドのメンバーやプロモーションビデオを制作するメンバーと初めて出会いましたが、これまでSlackのチャットで語り合っていたので初対面とは思えない親密さでした。
 N高等学校では、4月末に開催されるニコニコ動画のイベント「超会議」を同校の「文化祭」と位置づけています。敬加さんたちのバンド演奏も超会議で聴けるかもしれません。インターネットによって、教育だけでなく人間関係も大きく変わろうとしています。
(松本佳代子、zakzak 2016.04.14

必要なのは独創性と人間的魅力

生きる力を身につける場

人間と人間、ほんとうの教育

 ぼくが最初に家庭教師をしたのはなんと高校生の時で(近所の小学生のお母さんがたのんでいらした)、それ以来、予備校や今の大学まで、いろいろな場所で教えてきたけれども、その経験から一つ言えることがある。
 それは、教育とは、教師が完全情報を持っていて、その部分集合を伝え、時にはテストしてスコアリングする限り、あまりおもしろいことが起こらないということである。ほんとうに面白いことは、生徒側がサプライズするときに起こる。
 いま注目されているアクティヴラーニングにしても、面接重視の入試にしても、あるいは志願のエッセイにしても、鍵になるのは、生徒が教師(ないしは評価者側)を驚かせることがある、ということにあるのではないか。
 たとえば、ハーバードのサンデルさんの授業はネットで公開されているけれども、あの対話の中で、サンデルさんの予想を超えた、あるいはサンデルさん自身も気づいていなかったような点を学生が発言して、サンデルさんが感動しているような雰囲気の瞬間がある。
 ハーバードやケンブリッジは入試で長時間のインタビューをするけれども、その時も、実は、志願者の発言から、評価者側が学んだり、へえ、それは、と感嘆したり、そのような瞬間が必ずあるように思う。
 今流行始めた、スクラッチをつかったプログラミングでも、子どものつくってきたものが、教師の想定しているものを超えているときに、ほんとうに教育が成功しているように思う。考えてみたら、それは、人間と人間の関係の、基本だと言えるだろう。
 このように考えると、一般に、教師が正解の完全リストを持っていて、生徒の反応をそれと照合してスコアリングするようなタイプの教育が、いかにつまらないかということが見えてくる。生徒が教師を驚かせてこそ、ほんとうの教育なのである。それは、教師にとっても同じことだろう。(茂木 健一郎 Facebook 2016年5月22日

普通じゃなくてもいい

どんな子も育て上げる

 先日、知り合いのツテで都内にある単位制の「三部制高校」へと見学にお邪魔しました。「三部制」というのは聞き慣れない方も多いと思いますが、午前部・午後部・夜間部とそれぞれ4時間ずつ1日12時間の授業を用意し、自分の所属部を基軸として通う単位制の高校です。「単位制」というのは大学でお馴染みの形式。授業が高校側によって定められているのではなく、生徒は自分たちでカリキュラムを選択して単位を取得し、卒業を目指します。
 詳しくは実際の高校のHPなどを御覧くださいませ。(千葉の高校のページですが、詳しかったので…)
 さて、この第三部はいわゆる「定時制」の一つと言えるわけですが、こうした学校の魅力はなんといっても「多様な教育機会の提供」と「再チャレンジ」です。夜間の給食があり、複雑な家庭環境や日中は仕事がある人々でも通うことができ、また少人数クラスや柔軟なカリキュラムで普通の中学・高校に馴染めなかった、課題を抱えた子どもたちにも対応していくことを目指しています。
 優秀な人材を育成することも、教育の大きな目標の一つである一方で、どんな子であっても脱落させずに社会の一員にまで育て上げるというのも、また教育の担う非常に重要な役割ではないでしょうか。
 しかしこうした定時制・三部制高校の巡る状況は、決して明るいものとは言えないのが実情です。今年は都立定時制高校四校が閉校する予定となっており、 訪れた高校でも、「定員数に対して教室数が十分ではなく、満足なカリキュラムが組めない」「老朽化して綻びが出た施設も、なかなか修理をしてもらえない」などの課題が聞かれました。
 もちろん、限りある財源を合理的に使うことは必要です。ですがこと東京都の財政差配を見ていると、どうにも腑に落ちないことが多すぎます。教室が足りない学校があるのに、都有地を都市外交に充てる。修繕費すら節約するのに、東京五輪で膨れ上がる予算に対しては「なんとしてでも捻出する」と知事が公言し、あっさりと承認される気配が漂うなど…。
 もちろん土地も財源も簡単に動かせるものではないのは承知の上ですが、教育予算に限っても「オリンピック教育」「ICT教育(あまり使われない」には億単位の支出がされる一方で、定時制や三部制高校へ回る予算は潤沢とは言えません。
 どうしても高等教育などのレベルの高い「上澄み」にばかり目が向けられがちなのは、あらゆる社会課題と共通しているのかもしれません。
 ちなみに都議会議員には都立高校から様々な式典の案内が来ますが、定時制高校や夜間部のイベントの議員出席率は有為に低いと思います。これも結局、「票の数」に依るものなんですよね…。(「おときた駿 公式ブログ」2016年5月23日
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