「核なき世界」オバマの覚悟は本物か
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「核なき世界」オバマの覚悟は本物か

「深く考えるためにここに来た」。米国の現職大統領として史上初めて被爆地・広島を訪問したオバマ氏。「謝罪」なき訪問に込められた真の狙いは何か。「核なき世界」の覚悟はどこまで本気なのか。iRONNA編集部がオバマ大統領の広島訪問という歴史的瞬間を総力特集でお届けする!

「深く考えるためにここに来た」。米国の現職大統領として史上初めて被爆地・広島を訪問したオバマ氏。「謝罪」なき訪問に込められた真の狙いは何か。「核なき世界」の覚悟はどこまで本気なのか。iRONNA編集部がオバマ大統領の広島訪問という歴史的瞬間を総力特集でお届けする!

「謝罪」よりも「我慢」

 あの瞬間、彼は何を想ったのだろう。献花後、原爆死没者慰霊碑の前にたたずみ、ふと目をつぶったオバマ米大統領の表情がなぜか気になった。
 現職大統領としては史上初の被爆地・広島の訪問。その歴史的瞬間を前に、日米両国内は大統領の「謝罪」をめぐってぎりぎりまで議論が過熱した。世界で唯一の被爆国である日本は、世界で唯一の核使用国の元首をどう迎えるべきなのか。私自身、複雑な思いを抱きながら「その瞬間」を取材していたが、原爆ドームの前でオバマ氏が被爆者の一人、森重昭さんの肩を優しく抱きしめ、背中をさすった姿は、それまでのモヤモヤを忘れさせるほど心打たれるものだった。
スピーチをした後に被爆者の森重昭さんと抱き合う
オバマ米大統領=5月27日午後6時8分、広島市中区の
平和記念公園(鳥越瑞絵撮影)
 オバマ氏の電撃訪問が決定してから、日米両政府による政治的駆け引きに注目が集まった。米側は早々と大統領が謝罪しない方針を表明し、日本側も謝罪を求めない方針を決定。被爆者の全国組織「日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)」でさえ、オバマ大統領に宛てた要望書に「謝罪」を求める言葉を盛り込まなかった。「謝罪よりも非核化」。そんなムードが日本中を支配した。オバマ氏が掲げる「核なき世界」のためとはいえ、それは本当に正しいことなのか、正直懐疑的な気持ちもあった。
 「確かに私たちも要望者の中ではっきりと謝罪を求めませんでした。なぜだか分かりますか? それは私たちに残された時間があまりに少ないからです」。日本被団協事務局次長の木戸季市さん(76)が「謝罪」に固執しなかった理由を語ってくれた。
 日本被団協は、原爆投下から11年後の1956年8月に結成された。84年の基本要求で「米国への謝罪要求」を明記し、90年代には米国を相手取った訴訟も検討したことがある。
 しかし、原爆投下から70年が過ぎ、被爆者の平均年齢は昨年、初めて80歳を超えた。高齢化という避けようのない現実と直面し、核廃絶が進まないことへの焦りだけが募る。今は「謝罪」にこだわるよりも「我慢」。そんな苦渋の選択が被爆者たちの間にはあったという。
 「オバマ氏に宛てた要望書では『生きているうちに核兵器のない世界をとの意欲を持つよう希望します』との文言がありますが、これには2つの意味があります。オバマ大統領は核廃絶の目標を示したプラハ演説で『自分が生きているうちに核廃絶は実現しないかもしれない』と言っている。オバマ大統領、そして私たち被爆者が生きているうちに核兵器がない世界を実現してほしいという願いが込められているんです」(iRONNA編集部、川畑希望)

日米の外交努力の跡

米国人が考える原爆の正当性

武田邦彦が斬る!

米国のタブーを破ったオバマの広島訪問

 アメリカのバラク・オバマ大統領の広島訪問が決まった。この報道を聞いたとき、僕は約20年前に開かれた、ある公開討論会を思い出した。メンバーはキッシンジャー元米国務長官、旧ソ連のゴルバチョフ元大統領、中曽根康弘元首相。そうそうたる顔ぶれだった。
 司会を務めた僕は、キッシンジャー氏に「アメリカは1945年8月、広島と長崎に原子爆弾を落とし、20万人以上の犠牲者を出した。その責任についてどう考えているか」と、尋ねた。キッシンジャー氏はしばらく考えたあと、「トルーマン大統領がもし原爆を投下しなかったら、日本は本土決戦になるまで降伏しなかっただろう。その場合、日本人は数百万人、アメリカ側にも多くの犠牲者が出たはずだ。原爆を投下したことで、終戦を早め、犠牲者を減らすことができたのだ」と答えたのだ。
 僕は、さらに質問を重ねて、「早く終わらせることができたかもしれない。しかし原爆投下によって、何の罪もない一般市民が少なくとも20万人以上死んだ。その責任はどうするのか」と尋ねたところ、キッシンジャー氏は困惑した表情を見せ、結局、何も答えなかった。
 アメリカは歴史上唯一、核兵器を戦争で使用した国だ。アメリカにとって「ヒロシマ」と「ナガサキ」はタブーなのだ。原爆が戦争終結を早め、多くの人を救ったのだというキッシンジャー氏の説明は、アメリカでは決して暴論ではない。いまだアメリカの多くの人たちが支持をするアメリカの「常識」なのだ。
 これまでアメリカ大統領は誰一人、広島と長崎を訪問していない。今回のオバマ大統領の広島訪問も、米国内の反対は相当強かったようだ。そんな事情もあり、外交筋によると、「謝罪はしない」「被爆者とも会わない」という2点は決まっているという。
 しかし、それでもオバマ氏の広島訪問は、米国政治のタブーに対する挑戦である。これは大きな前進だと、僕は思う。オバマ大統領が広島で何を語るのか、思いをどう表現するのか、僕たちは見守らないとならない。(田原総一朗公式ブログ2016.05.23

何のための本格政権か

弱肉強食の国際政治

負の遺産に区切り

謝るべきだがもっと大事なこと

 バラク=オバマ・米大統領が、今月27日に広島を訪問することが日米双方から正式に発表されました。伊勢志摩サミット参加の後に広島に足を運ぶそうです。安倍晋三・総理は「すべての犠牲者を日米でともに追悼する機会としたい」「人の中に巣くう『争う心』と決別するため」というコメントを出しています。
オバマ米大統領の広島
訪問を伝えるニュース
に見入る人たち=5月
27日午後、三重県伊勢市
の国際メディアセンター
(竹川禎一郎撮影)
 今回の訪問は良い意味に捉えていますが、オバマ大統領が広島に足を運ぶことには因縁もあります。オバマ大統領は平成21(2009)年に「核廃絶を主張」してノーベル平和賞を受賞しましたが、現実には核の廃絶は何ら進んでいません。
 日本側の特にマスコミは、大統領が原爆投下の謝罪をするかしないかに注目していますが、謝る気はないでしょう。アメリカの世論への配慮もあるでしょうし、アメリカにはアメリカの言い分があるということでしょう。それでも今回の訪問は今後の日米関係をより深めていくために重要ですし、そうしていかなければなりません。
 ただし、日本人として忘れてはならないことがあります。それは原爆は明らかに「国際法違反」だということです。広島と長崎では20万人以上が亡くなりました。戦争にもルールはあります。ハーグ条約では、戦争において戦闘員と非戦闘員を分けています。しかし原爆では非戦闘員も無差別で殺したし、不必要な苦痛を与える兵器の使用禁止にも違反していますから、アメリカは謝るべきだとは思います。
 一方で、謝罪がない時に日本人的に単に「水に流す」のではなく、日米同盟の深化・進化のために今回の広島訪問は重要な位置づけにすべきです。なぜなら日本がいま置かれている国際関係は厳しいなど、例えばアメリカ大統候補のドナルド・トランプ氏などもさまざまな発言をしていますが、日米同盟を強固なものにして戦争をしない世界を作っていかなければなりません。
 今回の大統領広島訪問に対して、中国や韓国は「日本は被害者ヅラするな」などといった言い方をしていますが、日本は謝るべきは謝ってきておりそのようなことを言われる筋合いはありません。仮に日本がアメリカに謝罪を求めなくても韓国や中国が同様となることもないでしょうし、またアメリカに恩を着せることもできないでしょう。それでも日米同盟の深化・進化のために役立たせていくことが重要です。
 現地、広島の原爆死没者慰霊碑にはこう書かれています。「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」。これが一体誰に向けたものなのかは議論がありますが、誰も戦争をしたくないのは事実です。
 私も戦争は絶対に反対です。戦争をしない世界を作るために日米同盟をより強固にする必要があり、そのために今回のオバマ大統領の広島訪問は重要です。(「中田宏ブログ」2016.05.20

許しでも未来志向でもない

死ぬ前に探し出す

あきらめなかった街の姿

被爆地訪問で変わる認識

「核なき世界」への決意は本物なのか

 そんな被爆者たちの「非核化」への強い願いとは裏腹に、日本は昨年11月、核兵器の非人道性を強調し核廃絶に向けた国連の「人道の誓約」決議案の採択で、反対する米国に追随、決議を棄権した。日本国内には非核三原則の形骸化を懸念する声が高まり、残りの任期が半年となったオバマ氏の今回の訪問を誰もが歓迎したわけではない。「歴史に名を残したい」オバマ氏と、国政選挙を控え「政治的アピールをしたい」安倍晋三首相の思惑が合致し、訪問が実現したという批判的な見方がくすぶっていることも忘れてはならない。
森下弘さん
 「閃光と炎の壁が都市を破壊し、人類が自らを破滅させる手段を手に入れた。私たちは、そう遠くない過去に解き放たれた恐ろしい力に思いをめぐらすために来た。広島の記憶によって自分たちは独善と戦える。広島の記憶が自分たちの道徳的想像力をかきたて、変化を促してくれる。恐怖の論理にとらわれない勇気を持ち、核兵器のない世界を追求しなければならない」
 オバマ氏はこの日の演説でも「核なき世界」へ取り組む決意を強調した。そして、「広島と長崎が『核戦争の夜明け』として知られる未来ではなく、私たち自身の道徳の目覚めの始まりである」というオバマ氏のメッセージを耳にしたとき、今回の取材で出会った被爆者の一人、森下弘さん(85)の顔がふと浮かんだ。
森下弘さん画/広島平和記念資料館所蔵
 森下さんは14歳の時、広島で被爆した。爆心地からはわずか1・5キロ。母親は焼け死に、森下さん自身も大やけどを負い、生死の境をさまよった。あの日から19年後の1964年5月には、アメリカの平和活動家、バーバラ・レイノルズさんの仲介で原爆投下時の大統領、トルーマン氏と米国で面会する機会を得たが、今回のオバマ氏訪問の歓迎ぶりとはまるで違った対応が今でも忘れられないという。
 「彼は最後まで私たちと目を合わせようともしなかった。『原爆投下によって多くの兵士の命が犠牲になるのを食い止めることができた』と繰り返し、私たちは屈辱感でいっぱいだった。それだけに今回の米大統領の広島訪問には格別な思いがあるのも事実です」
 オバマ氏が今回の訪問で被爆者と直接対面し、彼らの思いを受け止めた意義は大きい。だが、人類が一度手にした「核」を手放すことは、とてつもなく遠い道のりであることに変わりはない。誰もが願う世界平和も「理想」を語るだけでは前に進まない。もう二度と広島、長崎のような悲劇を繰り返さない。その強い決意を示すことが核廃絶の未来の一歩になると信じたい。(iRONNA編集部、川畑希望)
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