天皇陛下「生前退位」ご意向の波紋
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天皇陛下「生前退位」ご意向の波紋

天皇陛下が存命中に皇位を譲る「生前退位」の意向を示されていると報道され、驚きが広がった。陛下のご意思を尊重し、皇位継承の在り方を慎重に議論する必要があるが、実現にはハードルも高い。一連の「ご意向」報道を読み解く。

天皇陛下が存命中に皇位を譲る「生前退位」の意向を示されていると報道され、驚きが広がった。陛下のご意思を尊重し、皇位継承の在り方を慎重に議論する必要があるが、実現にはハードルも高い。一連の「ご意向」報道を読み解く。

竹田恒泰はこう見る

民主主義的な議論は馴染まない

重視すべきは皇室の尊厳

皇室典範は「皇室の家訓」

 この度、天皇陛下の生前退位の報道が騒々しく飛び交い、あたかもこの問題が、国会で議論して決定される単なる「法律改正問題」であるかのように扱われているので、一言申しておきたい。
 本来、皇室典範とは、明治二十二年二月十一日、「大日本帝国憲法発布の勅語」と同時に発布された「皇室典範制定の勅語」によって明らかにされた「皇家の成典」である。その勅語に次のように述べられている。 
 「天佑を享有したる我が日本帝国の寶祚(ほうそ)は、万世一系、歴代継承し、以て朕が躬(み)に至る。惟ふに祖宗肇國(そそうちょうこく)の初(はじめ)、大憲一たひ定まり、昭(あきらか)なること日星の如し。今の時に當り、宜く遺訓を明徴し、皇家の成典を制立し、以て丕基(ひき)を永遠に鞏固にすへし。ここに枢密顧問の諮詢を経、皇室典範を裁定し、朕が後嗣及び子孫をして、遵守する所あらしむ。」
昼食会で安倍晋三首相とご歓談される天皇陛下=2015年12月、皇居・宮殿「連翠」
昼食会で安倍晋三首相とご歓談される天皇陛下=2015年12月、
皇居・宮殿「連翠」
 以上が本来の皇室典範である。即ち、皇室典範とは、神武創業以来明らかに定まっている皇家の遺訓を成典にしたものである。従って、本来、皇室典範は、「法律」ではなく「皇家の成典」つまり「天皇家の家訓」である。しかるに、この皇室典範が、当時我が国を占領統治していたGHQの強い意向により昭和二十二年、国会で法律として制定されたのである。
  ここにおいて、皇室典範は、本質は、皇紀とおなじ二千六百七十六年の歴史を貫く「皇室の家訓」であるが、形式は、「法律」として存在しているということになる。
 では、我らはこの「皇室典範」を、「皇室の家訓」として扱うべきか「法律」として扱うべきか。私は、その本質に即して「皇室の家訓」として遇し、単なる「法律」として扱ってはならないと考えている。従って、天皇を廃止することによって日本を解体しようとする共産党や尊皇の思いを全く有しない徒党を含めて、天皇陛下の生前退位及び皇位継承の問題を、単なる「法律問題」として「国会で議論して決めようとする現在の風潮」に異議を投げかける次第である。
  安倍内閣総理大臣や内閣官房長官は、天皇陛下の生前退位に関し、「コメントを控える」という態度をとっているが、これが現在、妥当な態度である。 (西村眞悟公式ブログ 2016.07.15

賢哲の深き洞察

皇室典範改正が先

人権上問題なのは皇室典範

使命感へのこだわり

 このニュースを聞いた瞬間、天皇陛下のお体のことを考え、ようやく激務からひとまず退かれることができるのではないかと、ほっとした。同時に残念でもある。戦後に誕生した新憲法での象徴天皇の試みに対し、ご自身の体験と思索をふまえて真摯(しんし)に考えてこられた。また、震災など自然災害の被災者への励ましやお見舞い、ハンディキャップのある人々へ向けられた温かいまなざしなど、天皇陛下でなければできない使命やお仕事が数々あるからだ。
 今回のご意向のポイントは3つある。第1は天皇の職務についてだ。大変責任感と義務感の強い方であり、老いにより課せられた職務を全うできず、不十分な結果になることを何よりも恐れられたのだろう。陛下は神話の時代から2千年以上続く、日本最古の家系に生まれた方であり、その威厳や伝統に障りがあってはならないというお考えもあったのではないかと思う。ご高齢のため、思うような行動や言語表現がなされないまま、天皇でいることがいいのかという問いなのだ。私自身は、陛下ご自身で責任を全うできないと判断された使命感へのこだわりを尊重したい。
フィリピンに到着し、アキノ大統領らの出迎えを受けられる天皇、皇后両陛下=1月26日、ニノイ・アキノ国際空港
フィリピンに到着し、アキノ大統領らの出迎えを受けられる天皇、
皇后両陛下=1月26日、ニノイ・アキノ国際空港
 第2のポイントは、ご自分の課題への達成感や満足感による生前退位のご意向ではないかという点だ。陛下は、わが国にとって大事な日を4つあげておられた。広島、長崎への原爆投下、沖縄戦終結、そして終戦の日だ。陛下は長年、先の大戦で犠牲になった人々を悼む慰霊の旅を続け、昨年はパラオ、今年はフィリピンを訪問された。戦後の歩みのなかで、海外で慰霊の旅を実現された達成感による退位のご意向であり、むしろ前向きにとらえるべきだ。
 第3のポイントは、皇太子さまへの父としての思いだ。陛下のご発言をうかがうにつけて、父として子に対する愛情をひしひしと感じることが多い。即位されたからといって、即時に天皇としての存在感が生じるものではない。ご自身がご存命のうちに皇太子さまが即位することで、皇位の継承をソフトランディングさせ、知識やノウハウを伝えたいと思われたのだろう。
 生前退位の実現には皇室典範の改正や関係諸法令との調整などが不可欠だ。国民の合意も必要になる。皇室典範には、摂政を置く規定があるが、退位についてはない。陛下は憲法や現行法のことを誰より尊重する方であり、ご自身の意思がそのまま反映されるとは考えておられないだろう。ただし、陛下に無理をしていただきたくないという思いは、政治家も国民も共通に抱いている。失礼ながら、あえて企業との類比で考えるなら、82歳という高齢まで現役の社長を続け、世界中で一番精力的に働かれた方だ。普通であれば、会長や顧問になる年齢以上であり、その激務を考えるなら、ひとまず退かれ、新天皇に助言などをされることに国民の異論はまずなく、世論も納得するのではないだろうか。(談:東大名誉教授・山内昌之、産経新聞 2016.07.15

生前退位をめぐる議論の本質は?

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