「こち亀」が日本人に愛され続けた理由
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「こち亀」が日本人に愛され続けた理由

秋本治氏の人気マンガ「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の連載が最終回を迎えた。単行本200巻はギネス世界記録に認定され、連載開始から40年の間、一度の休載もなかった偉業を称える声はやまない。「こち亀」はなぜ日本人に愛され続けたのか。その理由を読み解く。

秋本治氏の人気マンガ「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の連載が最終回を迎えた。単行本200巻はギネス世界記録に認定され、連載開始から40年の間、一度の休載もなかった偉業を称える声はやまない。「こち亀」はなぜ日本人に愛され続けたのか。その理由を読み解く。

『マンガ夜話』で扱えなかった作品

トラブルになったペンネーム

舞台の「葛飾区」がカギ

郷愁と愛情で下町を描いた「こち亀」

 「こち亀」が終了する。漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」である。昭和51(1976)年に「週刊少年ジャンプ」で連載がスタートして40年。1960話に達し、単行本は全200巻、累計発行部数は1億5000万部を超える。まさに国民的漫画である。型破りな警察官・両津勘吉(愛称・両さん)が巻き起こすハチャメチャな騒動は現実離れしているが、荒唐無稽(こうとうむけい)に感じられないのは、時代の流行を巧みに取り入れ、さらに舞台がしっかりしているからだろう。
(C)秋本治・アトリエびーだま/集英社
 作者の秋本治さんは、自分が生まれ育った東京の下町を、郷愁と愛情をもって描く。そこには失われつつある「昭和」がある。東京に単身赴任していた10年ほど前、秋本さん著「両さんと歩く下町-『こち亀』の扉絵で綴る東京情景」(集英社新書)をガイドブックにして街歩きを楽しんだ。本の順に従うと、亀有はJR常磐線の駅で、駅前のあちこちに両さんや漫画の他の登場人物の銅像がある。葛飾区といえば、映画「男はつらいよ」の柴又が有名だが、今や亀有も知名度では負けていない。「寅さん」と「両さん」。どちらも人情味あふれる憎めないキャラクターである。
 続いて「おばけ煙突」があった千住、浅草へ。そこから隅田川を下ると、それぞれ意匠の異なる橋が架かっている。月島をとりあえずのゴールにしたのは、当時、そこに住んでいたからだ。歩いていて、懐かしい気分にひたった。東京に下町は関東大震災や大空襲で何度も被災した。古いものはあまりない。一方で、超高層ビルが建ち並んでがらりと姿を変えた都心に比べ、開発も遅れている。だから街並みや入り組んだ狭い路地などのいたるところに「昭和」が残っている。
 少年時代のガキ大将の両さんが遊んでいそうな、いや両さんその人がヒョイと姿を現しそうな、そんな雰囲気である。東京には、いつでもタイムスリップできる「こち亀」があって幸せだ。大阪にもこんな漫画があったらなあ、と思って、ふと気づいた。あったのだ。「じゃりン子チエ」である。昭和53年から19年間にわたって「漫画アクション」に連載され、アニメにもなった。実家のホルモン焼き屋を手伝う、というより切り盛りする元気な小学生、竹本チエ。舞台は「大阪市頓馬区西萩」となっているが、もちろん実在しない。通天閣が見え、新世界が近く、茶臼山を遊び場にしていることから、西成区の花園北か萩之茶屋あたりらしい。ろくに仕事をせずにケンカっぱやい父親のテツ、しっかり者で美人の母、ヨシ江、それに猫の小鉄が主な登場人物である。ドタバタぶりは「こち亀」と同じだが、もっと生活感がある。大阪臭も強い。新世界や阿倍野は外国人観光客にも人気のスポットになっているが、じゃりン子チエが話題にならないのは寂しい。下町のヒロインとして銅像でも建ててはどうか。(鹿間孝一 産経ニュース 2016.09.09

警察官像をガラリと変えた

続けていいのか自問したことも

さいとう・たかを「仲間がいなくなった」

「ゴルゴ13」作者、さいとう・たかを氏
 私たち作家というのは、常に新しいものを描きたいと思うものだ。しかし、連載が長くなると作品は自分のものであっても自分のものでなくなり、やめるにやめられなくなる。特に『こち亀』は、ジャンプの顔にもなっていたのだから、よく決断されたなと思う。
 『こち亀』は一話読み切りで笑いを取るスタイル。そこが長く続いた一つの理由でもあるのだろうが、40年間続けるのは相当の苦労があったはず。つまり、練って練ってドラマ(ストーリー)を作るというよりも、秋本さんの作品は読者の感性に訴える笑いと風刺であり、より一層作家の感性が大事になる。
 感性を使い続ければ疲弊しやすく、神経をすり減らす。同じようなオチに思えても、毎回違う花を咲かせているようなもの。こんなに真面目な男から、よくも次々と面白い話が出てくるものだと感心していた。私は私で、これからも描き続けるしかないが、『こち亀』が終わるというのは、仲間がいなくなったというか、不思議な気持ちだ。(劇画家 さいとう・たかを 産経ニュース 2016.9.14

マンガは老後を豊かにする

「こち亀」が日本人に愛され続けた理由

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