沖縄ヘイトの現実
2485

テーマ

沖縄ヘイトの現実

「沖縄はゆすりの名人」。基地問題で揺れる沖縄だが、差別と偏見によるバッシングはいまだ後を絶たない。その一方で高江のヘリパッド建設をめぐり地元住民と機動隊が衝突を繰り返している事実を本土の人間はどれほど知っているだろうか。そう、この「温度差」こそが沖縄蔑視の現実なのである。

「沖縄はゆすりの名人」。基地問題で揺れる沖縄だが、差別と偏見によるバッシングはいまだ後を絶たない。その一方で高江のヘリパッド建設をめぐり地元住民と機動隊が衝突を繰り返している事実を本土の人間はどれほど知っているだろうか。そう、この「温度差」こそが沖縄蔑視の現実なのである。

無関心になっていく沖縄

 沖縄の高江でヘリパッド建設をめぐって住民と機動隊とが激しくぶつかっていることが伝えられている。在京のメディアも断片的に報じてはいるが、東京では「高江」といっても知らない人が多い。
 沖縄というのは、今、日本を考えるうえで極めて独特な位置にある。日本全体が右傾化しつつあると言われるなかで、沖縄はそうでない。基地反対の住民運動や、選挙で示される民意を見ていると、安倍政権のもとで日本が辿っている方向と沖縄の現状がねじれているような印象さえ受ける。
 沖縄の地元紙、沖縄タイムスと琉球新報もまた日本のメディア界で独特の立ち位置にいる。右の人たちは、その2紙が偏向していると激しく攻撃する。でも沖縄では、その2紙が住民の意向を離れて突っ走っているわけではない。地元の人たちは、2紙の背中を押しているのは沖縄の民意だという。確かに今の沖縄は、民意とそれを伝えるメディアとが同じ方向を向いているという、ある意味では稀有な状況だ。
 だから沖縄及び沖縄の2紙のあり方を考えることは、本土にいる私たちが自分の立ち位置を考えることでもある。沖縄と東京の温度差をどう考えるのか、沖縄の現実を地元紙と在京メディアはそれぞれどう伝えているのか。それを考えることは大事なことだ。
 8月20日、高江で取材を行っていた沖縄2紙の記者が機動隊に取材妨害され一時拘束された。この事件をめぐっては、幾つかの新聞などが紙面で抗議の意思表示をしたが、新聞界全体で何らかの意思表明をするということになっていないのは、沖縄の問題をどう取り上げていくべきかについて、メディア界の対応が割れているためだろう。
 右と左がそれぞれの主張を声高に叫んでいると前述したが、では大半の主要なメディアや論者はどうしているかというと、めんどうなテーマなのでできれば避けようという意識が働いているように見える。実際、大手メディアでは今、沖縄の問題は、企画をあげてもなかなか通らなくなりつつあるという。
 沖縄をどう見るかという以前に、人々が無関心になっていくというのは決して良いことではない。きちんとした議論をどうやって起こしたら良いか、今その知恵と工夫が求められている。(月刊『創』編集長、篠田博之)

沖縄は第三の道を探れ

激化する沖縄地元紙批判

深まる本土と沖縄の溝

伝えるべき沖縄がある

「標的の村」は今

沖縄の人は、本当は何に怒っているのか

 沖縄で痛ましい事件が、また起きた。沖縄県うるま市で、4月28日夜から行方不明になっていた女性が、遺体で発見されたのだ。5月19日、沖縄県警に死体遺棄容疑で逮捕されたのは、元米海兵隊員で米軍嘉手納基地で働く、32歳のアメリカ人男性だった。女性を暴行し死亡させ、死体を遺棄したことを認めた。容疑者は「軍人」ではないが、軍で働いている「軍属」だ。
6月23日、沖縄全戦没者追悼式で
献花したケネディ駐日米大使(手前)。
右は沖縄県の翁長雄志知事
 国土のわずか0.6%の面積に、在日米軍専用施設の74%が集中する沖縄では、米軍人や軍属の犯罪が後を絶たない。なかでも1995年におきた、「沖縄米兵少女暴行事件」は沖縄県民の間にくすぶっていた不満を一気に爆発させた。海兵隊員2名と海軍軍人1名による、12歳の女子小学生への集団暴行という、あまりにもむごたらしい事件だ。
 そして、沖縄県民をさらに怒らせたのは、「日米地位協定」の存在だった。「米軍人・軍属が事件や事故を起こしても、被疑者が公務中の場合、捜査権と第1次裁判権は米軍側にある」というものだ。事件への関与が明らかであっても、起訴されるまで、日本の警察は容疑者を拘束できない。この少女暴行事件の場合、日本側で裁判は行われた。だが、容疑者たちの身柄は日本側に引き渡されなかった。そのことが、沖縄の怒りに油を注ぐことになったのだった。今回の事件の場合、容疑者は軍属だ。公務外ではあるが、もし米軍基地内に容疑者が逃げ込んでいたら、身柄が渡されなかった可能性もあるという。
 翁長雄志沖縄県知事は、安倍首相に日米地位協定の見直しを求めた。伊勢志摩で行われるサミットの際、オバマ大統領に直接、要請してほしいと述べたのである。だが安倍首相は、米国側に抗議はしたものの、地位協定改定に触れることはなかった。今回の事件で、地位協定は適用されていないため、官邸は、協定の改定まで求めるのは不適切だという政治判断をしたのだろう。これは常識的な判断かもしれない。しかし、翁長知事にとってはそうではなかった。この安倍首相の対応に、知事は、そして多くの沖縄県民は、本土と沖縄との感情のかい離を感じたことだろう。ますます広まってしまった、政府と沖縄との距離に僕は強い懸念を感じるのである。
 自民党で幹事長まで務めた野中広務さんは、橋本内閣、小渕内閣のとき、沖縄のすべての島を訪ね歩いた。そして、地元の人と何度も何度も酒を酌み交わしながら、とことん話し合ったという。このようにして、沖縄の人たちの信頼を勝ち取っていったのだ。いま、野中さんのように、沖縄に足しげく通って、基地問題に腰を据えて取り組む国会議員がなぜ出てこないのか。(「田原総一朗 公式ブログ」2016.06.06

怒りに左右なし

海兵隊撤退に言及した翁長氏

関心が低すぎる沖縄基地問題

終わりのない「沖縄」の攻防

かみ合わない議論が続く言論界

 私はiRONNAで記事を書き始めてもう1年くらいになる。基本的にアウェイな場と思っているが(笑)、イロンナ言論を闘わせる場を作りたいという編集部の意図に賛同して協力することにしたものだ。ただネットでの言論戦というのは、参加者の大半が匿名だし、消耗戦を避ける工夫は必要だ。そう思ってきたのだが、今回、沖縄をテーマにすることにした。このテーマは、まさにホットなテーマで、きちんとかみ合った議論にするためにはエネルギーが必要だ。なのになぜそういうテーマを扱うことになったかというと、産経新聞大阪からサイトの強化拡充のために先頃赴任したという副編集長から、改めてiRONNAの編集理念を熱く聞かされて、「一緒にやりましょう!」と言われたりして、ちょっとその気になったためだ(笑)。
ヘリパッド建設に反対し、警官隊の
前で座り込む人々=7月22日、沖縄県東村高江
 沖縄の問題というのは、今の日本の言論界にあっては、奇妙で特別なテーマになっている。右の論者と左の論者で正反対と言えるような言説が、それぞれ声高に叫ばれながら、双方で噛み合った議論がほとんどなされていない。
 その典型は、昨年、「沖縄の2紙は潰さないかん」という百田尚樹さんらの発言をきっかけにした騒動だ。ある意味ではあの局面は、沖縄をめぐる論争ができるいいタイミングだったと思う。百田さんらの批判に2紙が紙面やホームページで反論するなど、それは一部なされたのだが、本当なら、沖縄2紙と百田さんが公開の場で論争するなど、もっと市民を巻き込んだ形でなされた方が良かったと思う。私はそう思って、当時、呼びかけの申し入れを双方にしたのだが、実現しなかった。
 だから、今、辺野古や高江をめぐって沖縄がホットな議論の的になっているこの時期に、このサイトで沖縄をテーマにしてみようと思った。必要があればこのテーマ、継続的に取り上げてみようかとも思う。(月刊『創』編集長、篠田博之)
沖縄ヘイトの現実

みんなの投票

沖縄・高江のヘリパッド建設問題に関心がありますか?

  • ある

    1770

  • ない

    611

  • どちらでもない

    104