カリスマか狂人か「買収王」孫正義の正体
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カリスマか狂人か「買収王」孫正義の正体

いったい、あの御仁は何を考えているのか。ソフトバンクグループ社長、孫正義氏のことである。米次期大統領、トランプ氏と電撃会談したかと思えば、来日したロシアのプーチン大統領とも意気投合する様子が伝えられた。電光石火のごとく動き回り、強烈な存在感を放つ「買収王」。その真意やいかに。

いったい、あの御仁は何を考えているのか。ソフトバンクグループ社長、孫正義氏のことである。米次期大統領、トランプ氏と電撃会談したかと思えば、来日したロシアのプーチン大統領とも意気投合する様子が伝えられた。電光石火のごとく動き回り、強烈な存在感を放つ「買収王」。その真意やいかに。

トランプ会談のナゾ

リーダーを惹きつける「大風呂敷」

大胆さの裏にある緻密な情報戦略

カリスマに備わる嗅覚

 孫正義氏がアメリカに5.7兆円投資することをトランプ氏との会談で明かし、大きなニュースとなりました。この資金は別に新たに5.7兆円を新規に投じるのではなく、先日ニュースにあったサウジアラビアとのファンドを通じた資金が主体でそれ以外にソフトバンクからスプリント向け追加資金を合わせた数字と思われます。上手なプレゼンテーションです。
 言い換えれば孫氏はサウジのムハンマド副皇太子とディールし、その資金をトランプ氏の元に投資するというまさに地球を股にかけて動き回る策士であります。孫正義氏のことを受けつけない方も多いと思いますが、これは好きとか嫌いといったレベルではなく、明らかに日本の経営史に残る大人物になると考えています。日本の大経営者には本田宗一郎、松下幸之助、豊田喜一郎などいわゆる製造業に携わった人が歴史上の人物として取り上げられます。
 一方、最近のカリスマ三羽烏といえば孫正義、柳井正、永守重信各氏ですが、製造業というより経営的工夫でのし上がった人たちです。孫氏は資金量と驚きのスキーム、柳井氏は失敗だらけから掘り出す糧、永守氏はボロ会社を安く買収するという独特の経営思想を根底にお持ちです。その中で孫氏は次の飛躍である地球レベルでの影響力をいち早く視野に入れ始めたと思います。
 いわゆるカリスマ的経営者には嗅覚が備わっています。多くの社員にとっては「えっ」と思うことをいつの間にかやってしまうその判断力や行動力にはいつも驚かされますが、大体において事前に種まきはしているものなのです。
 ソフトバンクが英国のアームを買収した時もある日、突然やったのではなく、ずっと前から「いい会社だ」と恋い焦がれていたのであります。好きだった相手にアプローチするタイミングが動物的嗅覚で見事だ、というところがカリスマである所以ではないでしょうか?(岡本裕明「外から見る日本、見られる日本人」2016.12.08

ソフトバンク成功の理由

豪運の自覚なし?

「三菱、三井を超えたい」

 時代の風をつかめば、経営者はゼロからでも驚くべき企業をつくれる。ただし石橋をたたいてばかりいては難しい。大胆さが要る。ソフトバンクグループの孫正義社長が格好の例である。
 孫社長は綱渡りともいえるリスキーな経営を続けてきたこともあり、メディアからは長い間うさん臭く見られてきた。それが先日、英国のメイ首相と会談した。英半導体設計大手アーム・ホールディングスを約240億ポンド(3兆3000億円強)で買収することを決め、歓迎されたからだ。孫社長はこれまでインドのモディ首相や韓国の李明博前大統領とも会談している。経団連などの経済団体によるバックはない。一人の企業家として意見を交わす機会を得た。
 孫社長は経済界主流の秩序におとなしく収まっていない。いわば異端児ゆえに、こうした主要国のトップリーダーと会える実力を独力で蓄えられた。パソコン、インターネットなどによる情報通信革命の可能性に早くから賭けて、その時代の風を大胆にとらえたおかげである。
1983年に日本警備保障(現セコム)の
副社長から日本ソフトバンクの社長に
なった大森康彦氏(右)と孫正義会長
 35年前に24歳で会社を設立して、まずパソコンソフトの卸業から始めた。東京都千代田区四番町の本社を訪ねた当時、30歳前後の孫社長は既に若手創業経営者の有望株として注目されていた。狭い事務所で会った孫社長は折り目正しい好青年で、論理的な語り口が印象的だった。1980年代に、パソコンソフトの卸業では過半のシェアを占め、それなりに成功していたが、ソフトバンクが本格的に成長しだしたのは90年代からである。その90年代の初め、再び会うと礼儀正しさは変わらないが、大きな夢を語っていた。「巨大な財閥を作り、21世紀には三菱、三井のグループを超えたい」。実現するための「事業のイメージは頭の中にある」と明言し、自信に満ちた表情を見せた。その時は、勢いのある創業経営者にありがちな大望と受け止めた。
 94年に株式を公開すると成長に弾みがつく。思い切った資金調達をてこに、内外で企業買収に大々的に乗り出した。いったんはテレビ朝日や日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)の買収に動き、手放すということもあった。経済界やメディアの間に、ソフトバンクをいぶかしむ空気が広がる。一体何を考えているのかというわけだ。一見、無鉄砲な行動だが、気まぐれではない。19歳で起業を志し「ライフプラン50カ年計画」を立てている。
 もっとも失敗もある。最近ではスカウトしたニケシュ・アローラ前副社長への社長交代を取り消し、契約金や報酬、関連会社株の買い取りなどで同氏への支払いは400億円を超す。失策には違いないけれど、この“気前の良さ”は、買収するアームの高度人材の流出を防ぐのに一定の効果があるかもしれない。
 あらゆる機器がインターネットでつながるIoT分野の成長をにらんで、基幹技術を握るアームに目を付けた。孫社長の行動原理は一貫している。将来の風向きを独自の嗅覚(きゅうかく)で判断すると、躊躇(ちゅうちょ)なく動く。規模が大きくなったにすぎない。
 リスクは膨れ上がる一方だが、過去にも「危うい野望」などとメディアから散々指摘されてきた。内部留保をため込み安全運転に徹していては「三菱、三井を超えたい」孫社長の夢は単なる妄想で終わってしまう。旧財閥グループに取って代わるには、引退はやはりまだ早すぎる。(ジャーナリスト・森一夫、フジサンケイビジネスアイ 2016.08.03

歴史の狭間で産み落とされた男

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