真珠湾慰霊でみせた安倍外交のしたたかさ
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真珠湾慰霊でみせた安倍外交のしたたかさ

オバマ大統領の広島訪問に続き、安倍首相の真珠湾訪問は、日米にとって歴史的な1ページとなった。戦後70年の節目以降、日米関係の再構築を急ピッチで進めてきた2人。ただ、日本側は「謝罪」ではない巧みな慰霊訪問を演出し、安倍外交の「したたかさ」も垣間見えた。

オバマ大統領の広島訪問に続き、安倍首相の真珠湾訪問は、日米にとって歴史的な1ページとなった。戦後70年の節目以降、日米関係の再構築を急ピッチで進めてきた2人。ただ、日本側は「謝罪」ではない巧みな慰霊訪問を演出し、安倍外交の「したたかさ」も垣間見えた。

日本はここまで変わった

対等な真の日米同盟のために

「歪んだナショナリズム」への警告

「日本悪者」史観からの脱却

「勇者は、勇者を敬う」

オバマの決断に応えた安倍首相

 安倍首相がハワイの真珠湾を訪問することに決まった。75年前の1941年12月8日、太平洋戦争は日本の真珠湾攻撃で始まった。この攻撃についてアメリカは長年、「日本のだまし討ち」としてきた。日本の宣戦布告がアメリカ側に届いたのが、真珠湾攻撃の数時間後になったからだ。
安倍晋三首相とオバマ米大統領が合同慰霊する予定のアリゾナ記念館=ハワイ・オアフ島(鈴木健児撮影)
安倍晋三首相とオバマ米大統領が合同
慰霊する予定のアリゾナ記念館=ハワ
イ・オアフ島(鈴木健児撮影)
 しかし、実は、日本の暗号をすべて解読していたアメリカは、攻撃されることを事前に察知していながら、真珠湾に駐留していた部隊には知らせなかった、というのが近年の定説だ。そして、それを「だまし討ち」だと喧伝し、アメリカ国民、そして世界に対して、日本は「ずるい国」だと印象づけた。これはルーズベルト大統領の陰謀だったと言われている。「Remember Pearl Harbor」は狙い通り、アメリカの兵士と国民の戦意をかき立てたのだ。
 その真珠湾を、日本の首相が公式に訪問することになった。もちろん、今回の真珠湾訪問は、5月のオバマ大統領の広島訪問と、おおいに関連があるのは間違いない。アメリカでは、いまなお、「原子爆弾が戦争終結を早め、多くの人々の命を救った」という見かたが根強く残っている。そのアメリカの大統領が、原爆投下の地、広島を訪問したのだ。大きな決断だったことは間違いない。安倍首相の真珠湾訪問は、オバマ大統領の決断に応えた、と言ってもいいかもしれない。
 オバマ大統領は、広島でのスピーチで、このように語った。「もはやこれ以上、私たちは戦争は望んでいません」「国家や国家のリーダーが選択をするとき、また反省するとき、そのための知恵が広島から得られるでしょう」
 安倍首相は真珠湾で、何を語るのか。僕は、安倍首相に昭和の戦争の「総括」をしてほしい、と強く願う。「真珠湾=だまし討ち」説が、ルーズベルト大統領の陰謀かどうかは関係ない。満州事変、日中戦争に続く新たな戦争を、日本が真珠湾から始めたことは、まぎれもない事実だ。
 戦後70周年の昨年8月15日、安倍首相の談話では、村山談話を踏襲しながらも、「主語」がすっぽりと抜けていた。開戦75周年の今年、真珠湾で、必ず「主語」を入れて、あの戦争を総括してほしい、と僕は思うのだ。(田原総一朗公式ブログ 2016.12.19

日米の新章開けよ

同盟強化と追悼は切り離すべき

「戦後レジームの総決算」になるか

 安倍晋三首相は、12月26、27日にハワイの真珠湾を訪問する。5月の伊勢志摩サミットの際、オバマ米大統領が広島平和記念公園を訪れ、原爆慰霊碑に献花したことは記憶に新しい。そのときから、安倍首相の真珠湾訪問は時間の問題であったとはいえ、日米両国の間で歴史問題を終わりにして、未来志向の同盟関係をしっかりアピールできる格好の舞台になる。このため、日米から訪問を評価する声が出ている。
 歴史的な意義も大きい。戦後処理というのは古今東西どの国でも大変である。戦争責任や謝罪が伴うためだ。第一次大戦と第二次大戦を経た欧州では、戦争責任も謝罪もなく、敵と味方がともに犠牲者を追悼するという和解方式をとっている。1995年に米英とドイツが共同で犠牲者を追悼した「ドレスデン和解」が代表例である。これに対し、アジアでは、中国と韓国のように、日本の戦争責任を主張し、まず謝罪せよ、という古いタイプの言い方がまかり通っている。今年は日本だけがいち早く欧州型の和解(戦争責任・謝罪なしで、ともに追悼)を取り入れた記念すべき年になるだろう。
アリゾナ記念館にある戦没者の名前が刻まれた碑
アリゾナ記念館にある戦没者の名前
が刻まれた碑
 安倍首相は、歴代首相の誰よりも外交に力を入れている。延べ訪問国数は100カ国を超え、歴代トップだ。その思いは「戦後」を終わらせることだろう。第1次安倍政権で「戦後レジームの総決算」という言葉が使われていたが、今は聞かれない。言葉よりも行動で実践しているのだ。
 オバマ大統領の広島訪問、安倍首相の真珠湾訪問によって、日米同盟は揺るぎなく新時代に入った。と同時に、12月にはプーチン大統領の訪日もあり、日露平和条約が俎上にのぼろうとしている。日露間でも戦後は終わっていない。マスコミは、北方四島が返還されるかどうかだけに関心があるようだが、注目すべきなのは平和条約だろう。北方四島で旧ソ連の行った行動はひどいものだったが、まず平和条約がなければ、しっかりした話し合いすらできない。日本がこれまで北方四島で強い姿勢を示してきたのは、ソ連を敵国と認定してきたことの裏返しでもある。しかも、北方四島への移住を希望する人は少ない。ここは、1956年の日ソ共同宣言の通りに、平和条約の締結後、歯舞群島と色丹島を日本に返還するということで国益にかなうのではないだろうか。
 日米、日露で戦後を終わらせることができると、安倍首相の「戦後レジームの総決算」が見えてくる。筆者は、米露に加えて、インドが重要なカギであると思っている。これらの国は民主主義、自由主義を背景とする国家群である。日本が米露印と良好な関係を持っていれば、今揺れている欧州も日本についてくるだろう。民主主義を基調とする世界の平和構造を日本が主導して構築しようとしている。これも、安倍政権が民主主義国家の中で長期政権であるからこそできることだ。得意の外交成果をひっさげて、来年1月解散があるかもしれない。(ZAKZAK「日本の解き方」高橋洋一 2016.12.10

「真珠湾」訪問の波紋

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