「走る凶器」老人運転は防げない?
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「走る凶器」老人運転は防げない?

ブレーキとアクセルの踏み間違え、高速道路の逆走…。超高齢社会が加速する日本で、老人運転による痛ましい事故が後を絶たない。抜本的な対策として高齢者の免許を強制的に取り上げるべきとの意見もにわかに活気づくが、これにはやはり難題も多い。老人運転を「走る凶器」にしない方法はあるのだろうか。

ブレーキとアクセルの踏み間違え、高速道路の逆走…。超高齢社会が加速する日本で、老人運転による痛ましい事故が後を絶たない。抜本的な対策として高齢者の免許を強制的に取り上げるべきとの意見もにわかに活気づくが、これにはやはり難題も多い。老人運転を「走る凶器」にしない方法はあるのだろうか。

事故する人としない人

日本でまかり通る自動車優先

進まない免許の自主返納

危険な自動ブレーキ依存

 横浜市では通学途中の小学1年生が高齢者(87歳)の運転する軽自動車の事故に巻き込まれ亡くなりました。本当にいたたまれない事故です。この運転者ですが、2年前の認知症検査では問題なく、次回の検査は間もなくの時期だったということです。夜通し運転していたとも報じられており、京都で起きた少年による無免許運転による暴走により、これも通学途中の小学生が犠牲になった事件が思い起こされます。
 高齢者の運転で問題になるのは、何も認知症によるものばかりではありません。認知症が発症していなくても判断能力は年齢とともに衰えます。報道では、意思疎通が困難であるから認知症の検査を行うそうです。夜通し走っていればどこをどのように走ってきたのかなど覚えていなくてもそれほど不思議はありませんが、何のために運転していたのかということもわからないということであれば判断能力には厳しいものがあります。
国土交通省が初めて自動車アセスメントで
評価を行った対歩行者自動ブレーキ
(車両はトヨタ・クラウン、後藤徹二撮影)
 しかし、問題はそれだけではありません。高齢になれば判断能力だけではなく、運動神経そのものが衰え、反射神経などは絶望的に衰えることになります。自動車の運転は、発進させて停止させることができるだけでは足りません。幼児などの飛び出してきた場合などに急制動処置をとれるのかどうかです。ただ、この点でいえば高齢者でなくても急制動がとれない運転者も少なくありません。とっさにブレーキが踏めない、しかも力一杯、これだとそもそも運転技能を持ち合わせているのかどうかという点からも疑問です。
 現在、高齢運転者による死亡事故が増加傾向にあります。今後、ますます増加するということは誰の目から見てもわかりきったことです。自動制御装置をつけた車がいずれ義務化されることになるでしょうが、根本的に適正に運転できるだけの技量がないままに運転するのでは、自動制御装置に依存するだけという危険極まりないものになります。
 車を発進させ、停止させるだけで運転できると思い込んでいるドライバーも少なくありません。危険予知を前提とした運転もできず見通しの悪い交差点を徐行もせずに通過する車、一時停止ラインがありながら平気でオーバーする車、横断歩道があっても停車しない車、未だに車優先という発想が蔓延した状態であり、この状態のまま、運転者たちが高齢化を迎えるのです。考えただけでも恐ろしい。いつ何時、自分がその被害者になるのかという視点で考えるべき時期です。
 高齢者の定期的な技能試験を実施するか、一定年齢以上の高齢者の免許は取り消すべきということです。認知症になった高齢者から運転免許を取り上げることに苦労している家族にとっても朗報になります。車が売れなくなると、運転者たちの反発だとか、そのようなもの本当に配慮しなければならないことですか。明日は我が身ですよ。(猪野亨公式ブログ 2016.11.01

マスメディアの情報に踊らされるな

不公平解消にはこれしかない

高齢ドライバー対策は社会ニーズ

 広島でのトラックの衝突事故は鳥肌が立ちます。トラックの運転手は居眠り運転だったのでしょうか、それとも脇見運転なのか、捜査を待たないといけませんが、次々に車を跳ね飛ばしていったのは尋常ではありません。軽井沢のスキーバス転落事故、大阪の梅田の交差点で乗用車が歩道に突っ込んで11人が死傷した事故、そして今回の事故など、つくづく車は一瞬に凶器になることを思い知らされます。
 とくに、トラックやバスの事故は甚大な結果を引き起こすことがあり、記憶に残りますが、警察庁による「平成26年中の交通死亡事故の特徴及び道路交通法違反取締り状況について」を見ると、全死亡事故4013件のうち、バスやトラックなどの営業用の自動車が起こした死亡事故は408件で、実は普通の車などによる事故のほうが圧倒的に多いようです。
 大きな事故が起こると、事故が絶えないように感じてしまいますが、実際には交通死亡事故は減ってきています。ただ減少幅が小さくなり下げ止まりはじめています。そもっとも大きな原因は高齢者の死亡事故です。ひとつは歩行中の高齢者が事故に巻き込まれる事故が増えているというのと、高齢者のドライバーが引き起こす事故も全体の4割以上を占めています。
高齢運転者の交通事故防止対策に関する
関係閣僚会議に臨む安倍首相(右から2人目)ら
=2016年11月15日(斎藤良雄撮影)
 すでに大型のトラックやバスに関しては新車に限って、自動ブレーキ装備が義務化されていますが、高齢者のドライバーに対しての義務化をより積極的に進めたほうがよさそうです。自動ブレーキは米国やEUでも義務化に向かってきていますが、こういった規制は、自動ブレーキなどの安全補助システムの市場を拡大させ、自動車また部品産業の技術開発競争を促します。しかもセンサーや制御といった、デジタルとアナログのハイブリッドな世界なので日本が優位に立つことも可能だと感じます。センサーは、日本が未だに50%を超えるシェアを持っていますが、排出ガス規制とともに、システム産業化していくための切り口にもなってくることは間違いありません。
 高齢化による事故増加を防ぐ必要があるという社会ニーズと、新たな市場を拓き、産業の進化を狙うということが一致してきます。社会が豊かになればなるほど「安全」へのニーズが高まり、また「安全の価値」も高まるので、そこに投資することは意味があるようにも思います。経済効果が薄く、将来世代に維持コスト負担を残す公共工事ではなく、教育やこういった分野への公共投資へ大きくシフトしていく時期になってきていますが、そんなリーダーシップを発揮する政治の登場を望みたいものです。(「大西宏のマーケティング・エッセンス」 2016.03.18

返納問題の裏で語られない現実

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