大義なき「何のため解散」を問う

大義なき「何のため解散」を問う

安倍晋三首相は18日夜、来年10月に予定されている消費税率10%への引き上げを1年半先送りし、その判断について信を問いたいとして衆院解散を表明した。「大義がない」「党利党略だ」。批判が渦巻く中で踏み切った衆院解散。なぜこのタイミングなのか。解散の是非を問う。

解散に大義はあるか

 消費税増税以後、国内総生産(GDP)が2四半期連続でマイナスとなる中で、安倍晋三首相が21日、衆院を解散することになった。消費税率を8%から10%に引き上げる時期を1年半、先送りすべきかどうか。この点については、予定通りの引き上げを強く求める政党はなさそうなので、総選挙の争点とはならない。
臨時役員会に出席するため、総裁応接室に入る安倍晋三首相=18日午後、東京都千代田区の自民党本部
 それならば、どうしてこの12月のくそ忙しい時期に選挙をやらなければならないのか。そうした疑問は巷にも充ち満ちていたが、解散をめぐる是非論とは別に、政権主導の解散総選挙はもう走り出している。自民党が大勝した前回総選挙からは2年が経過している。国内の大方の人にとって少々、迷惑な時期ではあるが、この時期に改めて一強他弱構造の2年間を問い直し、新たな状況を生み出すこと自体は、与野党にとっても、有権者にとっても忌避すべきことでは少なくともない。
 とりわけアベノミクスをめぐる評価は重要だ。かりに増税は1年半、先送りすることになるとしても、それで社会保障改革の重要性、緊急性までもが薄れるわけでもない。さらには安倍政権の安全保障政策や原発再稼働に信を問うことも大きな争点になる。これから総選挙に臨む以上、この選挙で何を選択するのか。それを明確にするアジェンダ(課題)設定の機能は選挙戦を戦う与野党だけでなく、マスメディアにも強く求められている。
 やや、迂遠な印象になるかもしれないが、個人的にはこの選挙を通じ、不安や恐怖、あるいは信頼の喪失といったものに社会はどう対応できるのかといったことを課題として考えてみたい。
 内閣府が17日に発表した7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は年率換算で1.6%減だった。安倍首相自身もよい数字ではないと認めたほどだが、同時に「長く続いたデフレから脱却できるチャンスを手放すわけにいかない」とも語っている。ここが正念場との認識だろう。
 なぜこれほど悪い結果だったのか。18日付産経新聞の1面で島田耕経済部長は、その要因として、個人消費の停滞が長引いていることに加え、業績が好転し内部留保が増加しているにもかかわらず大企業が設備投資を抑える慎重な経営姿勢をとっていることをあげた。そのうえで《15年におよぶデフレからの脱却が容易ではなく、景気はすぐに回復しないという不安があるからかもしれない》と指摘している。
 同日付の産経新聞主張(社説)の一節も紹介しておこう。
 《首相に求めたいのは、自らの経済運営で景気回復が思うように進まない現実を真摯に受け止め原因を分析することだ。その上で消費を増やす不安心理の解消へ経済再生を急ぐことが責務である》
 不安が数字というかたちをとることで、新たな不安心理の要因がまた生まれる。こうした中で数値化、情報化された現実にどう対応するのか。それは21世紀の社会が抱えた大きな課題でもある。(産経新聞論説委員 宮田一雄)

4人の論客に問う

  • 首相の決断は正しいと言えますか?

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    安倍晋三首相がついに衆院解散を決断した。「国民生活にとって重い重い決断をする以上、速やかに国民に信を問うべきだと決心した」。消費増税の延期について信を問う必要はあるのか。iRONNA編集部が18日、4人の論客に解散の是非を聞いた。

沖縄の声は本土に届くのか

  • 「金で動くと思ったら大間違いだ」 沖縄の声は届くか 

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    「ヤマトンチュになりたくて、なりきれない心」という言葉の意味はあまりにも深い。この傷つきの深さに我々日本人は今一度正面から向き合う必要があるのではないか。写真家、初沢亜利が見た「真実」の沖縄とは。

  • 写真家が見た「沖縄の心」

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    東京から沖縄に移住して1年。初沢亜利がカメラに収めた「沖縄の心」を読者にお届けする。(来春発売される写真集のカット候補の中から15点を掲載)

「理由なき解散」の問題点とは

  • 衆院解散は憲法上重大な問題がある

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    昨年末の総選挙で大勝し、国民から支持を受け圧倒的な多数で信任されて成立した安倍内閣。民意を問うべき重大な争点もなく、任期半ばで衆院を解散するのは、憲法上大きな問題がある。弁護士、郷原信郎が「理由なき解散」の問題点を指摘する。

与野党キーマンの2人はどうみる

  • 石破氏、「地域再生」キーワードは自立

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    「財政再建と経済再生の二兎を追う政権」を標榜する以上、道筋だけは示さなければはならないし、そうであってこそはじめて国民に信を問う意義がある。衆院解散・総選挙について石破茂地方創生担当相は強調する。

  • 江田氏、「増税失敗解散」 誰のための解散か

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    驚きの数字が出た。完全に4月の消費税増税が失敗した──。維新の党の江田憲司共同代表は、マイナス成長となったGDP速報値を受け「アベノミクスというアクセルを踏みながら、増税というブレーキをかけた」と政府の経済政策を問題視する。

大義なき「何のため解散」を問う

安倍首相が表明した衆院解散についてどう思いますか?

  • 486

    解散して信を問う首相の判断は理解できる

  • 133

    解散に大義はなく、首相の判断は理解しかねる

  • 23

    首相の判断に興味はない

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