日本は「魔人」トランプとこう戦え
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日本は「魔人」トランプとこう戦え

第45代米大統領に就任したトランプ氏が早くも牙をむいた。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の離脱表明に加え、自動車市場をめぐり日本にも批判の矛先を向けた。徹底した保護主義を貫くトランプ流。日本にとっては厄介な存在だが、超大国に突如として現れた「魔人」と戦う術がないわけではない。

第45代米大統領に就任したトランプ氏が早くも牙をむいた。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の離脱表明に加え、自動車市場をめぐり日本にも批判の矛先を向けた。徹底した保護主義を貫くトランプ流。日本にとっては厄介な存在だが、超大国に突如として現れた「魔人」と戦う術がないわけではない。

楽観視は危険すぎる

砕け散る既存の秩序

「悪いインフレ」の到来

ハマった「失われた20年」の罠

やはりトランプ氏は「ジョーカー」

 世界が悲鳴を上げていると言っても良いでしょう。確実なことは、不確実性が高まり、この先どうなるのかが見通せないということです。注目されていたトランプ米新大統領の就任演説でした。選挙中に過激発言を繰り返した「悪いトランプ」ではなく、当選直後に融和を呼びかけたような「良いトランプ」が顔を出すのではないかと期待されていました。しかし、トランプをめくってみても「ハートのエース」は出てきませんでした。やはり顔を出したのは「ジョーカー」だったようです。ジョーカーと言えば、映画「バットマン」の悪役でした。大統領就任式に登場したのは、「バットマン」ならぬ「バッドマン」だったのです。
 アメリカのドナルド・トランプ新大統領は20日正午ごろ、連邦議会議事堂前で就任宣誓し、第45代大統領に就任しました。この場所は私も訪れたことがありますが、それは2001年のブッシュ大統領就任式の前、2001年1月1日のことでした。実業家出身のトランプさんは政治や行政経験、軍歴のない米国史上初の大統領で、1期目としては最高齢での就任になります。共和党は8年ぶりの政権奪還で、任期は2021年までの4年間ですが、果たしてこの任期を全うできるのでしょうか。
トランプ大統領の反対派に燃やされた車
=1月20日、ワシントン(AP=共同)
 「アメリカ第一主義」を掲げてこれまでの政治からの大転換を目指し、超大国アメリカのかじとりを担うことになりますが、その前途には暗雲が漂っています。トランプ大統領の就任に反対する全米での抗議デモには数百万人が参加するなど、分断と不安がアメリカ社会を覆い、切り裂くような形になっているのですから。トランプ新政権の政策は、選挙中での公約をほぼ踏襲するものになっています。この点でも、「良いトランプ」に変わるのではないかという期待は真っ向から裏切られてしまいました。
 就任演説では、通商政策を大きく転換して自由貿易から貿易や税制などあらゆる分野でアメリカの利益を最優先し、環太平洋連携協定(TPP)からの離脱と北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を宣言しました。大統領令では、医療保険制度改革(オバマケア)の見直しを指示しています。また、「イスラム過激派によるテロを地球上から根絶させる」と約束し、積極的に軍事行動をとることも表明しました。「私たちは国境を守らなければならない」と呼びかけ、メキシコ国境への壁建設を伴う不法移民対策に乗り出す構えです。
 まるで、これまでの世界秩序を脅かす「怪物」の登場のようなものです。この「怪物」を「信頼できる指導者」だと請合ったのが安倍首相でした。通常国会冒頭の施政方針演説で、TPPを「今後の経済連携の礎」と位置付けた安倍首相ですが、その直後にトランプ新大統領によって真っ向から否定される結果になりました。いかに人を見る目がなかったか、ということでしょう。(「五十嵐仁の転成仁語」2017.01.22

新大統領はナルシスト?

共和党保守派が創り上げた政権

「アメリカ・ファースト」は当たり前

 ワシントンの米連邦議会議事堂で20日、第45代米大統領ロナルド・トランプ氏(70)の就任式が行われた。ワシントンは生憎の雨模様だったが、多くの国民が新大統領の就任式をみようと集まった。当方もウィーンの自宅でCNN放送を見ながら就任式をフォローした。就任式のハイライトはもちろん、新大統領の就任演説だが、トランプ新大統領は選挙戦の演説の延長のように単刀直入な表現と言葉で語りかけた。トランプ大統領の演説テキストは「小学校の作文レベルの文法だ」と冷笑していたメディアがいたが、分かりやすいという点では新大統領の演説は模範的だ。新大統領の就任演説のエッセンスは、演説の中で2度飛び出した「アメリカ・ファースト」だろう。
大勢の聴衆の前で就任演説をする
トランプ米大統領(中央)
=1月20日、ワシントン(UPI=共同)
 ポピュリズムが席巻している欧州に住んでいると、「〇〇ファースト」という表現は政治家の口から頻繁に飛び出す。もはや、珍しくもなく、新鮮な感動もなくなった。ただメイフラワー号のピルグリム・ファーザーズの建国時の話を聞いている米国の国民にとって、「アメリカ・ファースト」はかなり刺激的な表現ではないだろうか。「アメリカ・ファースト」は自国の利益を最優先するという意味だからだ。次世代が生き延びていくために目の前の穀物を食べることなく忍耐したピルグリム・ファーザーズの話は米国の「神の下で一つ」という建国精神の基ともなっているが、トランプ新大統領の「アメリカ・ファースト」はその建国精神に相反するのではないかという一抹の懸念が湧いてくるからだ。
 オーストリアでは「オーストリア・ファースト」は極右政党「自由党」のキャッチフレーズだ。外国人排斥、自国優先の政策は有権者の心をつかみ、「自由党」は選挙の度にその得票率を増やしていった、次期総選挙では「自由党」が第1党に躍進する、という世論調査結果が報じられているほどだ。ここでは「〇〇ファースト」の専売特許がトランプ氏ではなく、欧州のポピュリストにあると主張する気持ちはない。「〇〇ファースト」という言葉には国民の心をつかむ魔力があるのというのは国の違いを超えて同じだということだ。
 さて、「アメリカ・ファースト」について考えてみたい。少し、冷静に考えれば、どの国の政治家が「わが国はラースト」と叫ぶだろうか。トランプ新大統領も演説の中で言及していたが、どの国も結局は自国の国益優先の路線を行く。国民の生命と財産の保護者として選出された政治家からは「わが国がファースト」以外に他の選択肢がないからだ。その意味で、トランプ新大統領の「アメリカ・ファースト」は批判を受けたり、逆に評価されるべき内容ではない。余りにも当然過ぎることだ。レトリックを駆使した演説を得意としたオバマ前大統領やヒラリー・クリントン氏の演説と比較すると、トランプ氏のそれは余りにも単刀直入で飾りっ気がない。物足りなさを感じる国民もいただろうと推測する。ツイッターを駆使するトランプ氏は140文字以上長いテキストには慣れていないだけだ。
 トランプ新大統領の「アメリカ・ファースト」は華やかな就任式を飾るのには少々デコレーション不足だが、繰り返すが、間違いではない。新大統領が伝えたかった内容は全て盛られていたからだ。問題は、新大統領自身が演説の中で述べていたが、「もはや語るのではなく、アクション」だからだ。政治は商談ではない。ディ―ルだけで事が済むわけではない。妥協も和解もそして時には譲歩も必要だ。そのような指摘はトランプ新大統領自身がこれから学んでいかなければならないことであり、就任式を終えたばかりの新大統領に、あれこれ注文をつけても余り意味がないだろう。ただし、当方にとって少し寂しい点は、新大統領の哲学、理念が見えないことだ。新大統領が尊敬するロナルド・レーガン大統領のような明確な世界観、人生観がトランプ氏の口からはまだ聞かれないからだ。(長谷川良「ウィーン発『コンフィデンシャル』2017.01.22

トランプにすり寄るのは誰だ

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