三浦九段独白「あいつだけは許せない」
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三浦九段独白「あいつだけは許せない」

「どうしても言いたいことがある」。インタビューの冒頭にこう語ったのは、対局中のスマホ不正使用を疑われたプロ棋士、三浦弘行九段だった。騒動の黒幕、家族への思い、復帰への決意…。iRONNAの独占取材で語り尽くした2時間半。一連の騒動後、三浦九段が初めて語ったあの疑惑の真実とは。

「どうしても言いたいことがある」。インタビューの冒頭にこう語ったのは、対局中のスマホ不正使用を疑われたプロ棋士、三浦弘行九段だった。騒動の黒幕、家族への思い、復帰への決意…。iRONNAの独占取材で語り尽くした2時間半。一連の騒動後、三浦九段が初めて語ったあの疑惑の真実とは。

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「拡散希望します」

 「無実」と「無罪」。この二つの言葉が意味するものは、まったく似て非なるものである。国語辞書をひも解くと、無実は「罪を犯してないのに、罪があるとされること」であり、無罪とは「刑事裁判で被告人の行為が罪にならないか、または犯罪が証明されないこと」。つまり、無罪は必ずしも「無実」にはならないのである。
インタビューに応じる三浦弘行九段(瀧誠四郎撮影)
 将棋スマホ不正の疑惑をかけられた三浦弘行九段は、iRONNAのインタビューの中で繰り返し「えん罪」という言葉を使った。「私の疑惑はクロでも灰色でもない。完全なシロ」。その言葉の裏に、三浦九段の苦悩が垣間見えた。
 三浦九段がしきりに「無実」を訴えるのも無理はない。疑惑を調査した第三者委員会の結論は、言うなれば「無罪」だったからである。公表された報告書概要の中身をみると、その理由は「不正と指摘された点はいずれも実質的な証拠価値に乏しく、不正行為に及んでいたと認めるに足りる証拠はない」とある。
 インタビュー記事の中でも触れたが、根拠の一つとされた「30分間の離席」は事実自体がなかった。しかも、三浦九段本人や妻、母親が提出したスマートフォンやパソコン、タブレット端末には不正の痕跡はなく、最も有力な根拠とされた将棋ソフトとの一致率についても、分析ごとに相当なばらつきがあり、三浦九段以外の他の棋士にも高い一致率を示すケースが確認され、「いずれも不正の根拠にはならない」と結論づけている。
 要するに、状況的にも物理的にも不正を裏付ける「証拠」はなかったということになる。だとすれば、三浦九段が言うようにそもそも疑惑自体が「濡れ衣だった」という結論になぜならなかったのか。報告書には次のような記述もあった。
 「本調査は、短期間で行われたものであり、電子解析、一致率等分析及び映像分析については一定の客観的証拠を用いた分析ではあるものの、客観的証拠が存在しないものに関する事実認定は、概ねヒアリングという供述証拠に依拠しており、本調査による認定、評価には限界があり、結論の完全性を確約できるものではない」
 つまり、事実認定が完全とはいえない以上、「無実」とまで結論づけるのは困難―。第三者委が「無罪」と下した裁定の背景には、上記のような事情があったことがうかがえる。ただ、「疑わしきは罰せず」の原則を無視して、出場停止処分を決めた連盟の対応を「やむを得ない」とした結論は、甚だ疑問も禁じ得ない。この裁定が、三浦九段の危惧する「灰色無罪」のイメージにいまだ影響してはいないだろうか。
 三浦九段のインタビュー記事の掲載後、ツイッターやフェースブックなどさまざまな方面で大きな反響が広がっている。この記事を読んで初めて、三浦九段の疑惑が「無実」だと知ったというコメントも多くみられた。一部週刊誌報道などが先行し、「クロ」との印象が世間に根づいてしまったことは紛れもない事実である。
 三浦九段の名誉をどう回復するか。それは将棋界だけではなく、私たちメディアも真摯に受け止めなければならない。その意味を込めて、この記事を読んでくれたであろう、羽生善治三冠の妻で元女優、畠田理恵さんのツイートを末文に紹介したい。
 「心中お察し致します。私が過去を例にお話ししたように印象操作が残す後遺症の恐さ。正しい情報を、より多くのRTで真実が広がりますように。拡散希望します」(iRONNA編集長、白岩賢太)

連盟内紛の様相も

三浦VS羽生に集まる注目

七冠を保持する羽生善治棋聖(右)に
三浦弘行五段が挑んだ第67期棋聖戦
=平成8年6月29日
 ファンならずとも注目の対局が近づいてきた。第30期将棋竜王戦の挑戦者を決める13日のトーナメント戦1組1回戦、羽生善治三冠-三浦弘行九段だ。対局中のスマホ不正使用の疑惑が晴れた三浦九段と、週刊誌で不正を告発した一人と受け取られるような報道があった羽生三冠。偶然とはいえ、うまくできた組み合わせではある。
 対局を前に「誤解を解きたい」と、羽生三冠の妻で元女優の理恵さん(旧姓畠田)が自身のツイッター『うさぎ あひる 羽生理恵』で疑惑を報じた週刊文春を批判した。「主人をあたかも三浦先生告発の一員として文春の中吊りや新聞の見出し用に名前を利用された」
 ツイッターによると連盟の理事に「(不正告発の)渡辺明竜王からお話がある」と呼び出されて一方的に説明を受け、後に「本当に事実でもグレーだが、証拠もないのに処分は全く不当」とメールで伝えた。しかし、前後の文脈が省かれ「グレー」の部分だけ焦点があてられた。「ご都合切り取り主義」と理恵さんは指摘する。
 結婚と同時に芸能界を引退し専業主婦として羽生三冠を支えてきた理恵さん。ある棋士は言う。「羽生さんを一生懸命守ろうという思いが表れている。羽生さんは将棋界の宝ともいうべき存在。こんな俗世に引っ張り込むようなことはあってはならないと、棋士仲間も思っている」
 連盟では今回の騒動で谷川浩司会長が辞任し、新会長は6日の理事会で互選される予定だ。羽生会長待望論は「火中に栗を拾わせるのか」との声にかき消されたとか。「他の何物にも惑わされず全力で戦える場になりますように」。対局に向けた理恵さんの願いがかなうか、注目したい。 (今村忠 サンケイスポーツ 2017.2.1 )
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