「この世界の片隅に」をとことん語り尽くす
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「この世界の片隅に」をとことん語り尽くす

異例の大ヒットとなった邦画アニメ「この世界の片隅に」が、ジブリアニメ「となりのトトロ」以来、28年ぶりとなるキネマ旬報ベストテン第一位に選ばれた。SNSで評判が広がり、観客動員数は130万人を突破。アニメの力を見せつけたこの作品の魅力をとことん語り尽くす。

異例の大ヒットとなった邦画アニメ「この世界の片隅に」が、ジブリアニメ「となりのトトロ」以来、28年ぶりとなるキネマ旬報ベストテン第一位に選ばれた。SNSで評判が広がり、観客動員数は130万人を突破。アニメの力を見せつけたこの作品の魅力をとことん語り尽くす。

「他者」ではないあの戦争

「神話」は強さと危うさをもっている

邦画アニメは絶好調なのか

すずさんのありがとう


ほのぼのと描くほど切ない

 僕が今年後半に見た映画の中でナンバーワンの作品を、今回ご紹介させていただきます。公開中のアニメーション映画「この世界の片隅に」。戦時中の広島県呉市を舞台に、18歳で嫁いだ少女が激化する戦禍の中、懸命に生きていく姿を描いています。「マイマイ新子と千年の魔法」の片渕須直監督。「夕凪の街 桜の国」の、こうの史代さん原作です。
(C)こうの史代・双葉社/
「この世界の片隅に」製作委員会
 昭和19年の広島。絵が得意でちょっとのんびりした18歳のすずは、顔も見たことのない若者と結婚、呉へとやってきます。少しずつ戦争の影響が激しくなる中で創意工夫をし、日々食事を作っていますが、呉は軍港の街。アメリカ軍からの容赦ない空爆があり、街が破壊されていきます。負けじと生きていくすずでしたが、20年8月6日を迎えることとなります。
 今作最大の見どころは、戦争を背景にして、庶民の暮らしにフォーカスを当てたこと。今までに多くの戦争映画を拝見しましたが、ここまで市井の人々の生活を描いた作品はなかったと思います。のんちゃんが声を担当する主人公のすずは、食べ物がなければ、絵を描いて空腹をごまかす。野草を採って料理をアレンジする。戦争映画でありながら、ほのぼのと描き切る手法に驚嘆しました。
 後半、呉が空襲に遭いますが、「絵の具で、すずちゃんだったら、こう描く」という発想にも驚きました。目の前にある現実が地獄のようで、空想をしなければ、正気を保てないというのも切なかったです。8月6日、呉から広島に向かおうとするすず。観客の僕らは、その日に起こることを知っているから、行かないでほしいと思う。現在、大ヒット中のアニメ映画「君の名は。」に近い“現象”も、物語の求心力を高めています。
 監督は、「いつ晴れていたのか?」「街並みの様子は?」など、当時を徹底的にリサーチされたそうで、細部まで見事に再現されています。アニメの中で、すずはたくましく生きています。(「映画コメンテーター、有村昆のキネマの献立」産経ニュース 2016.11.26

際立つ作家性

監督より重視される製作委員会

地上波はアニメを見習ってほしい

 時々、地上波テレビの「悪口」(笑)を書くが、それだけ、未だに重要なメディアであり、しかもメディアとしてはまだ存在しているのだから、できるだけ良くなってほしい、という思いからである。一種の「応援」だと思って欲しい。
インタビューに答える
片渕須直監督
 最近つくづく思うのは、日本のアニメ>>>日本の地上波テレビ(特に民放のバラエティ)ということである。同じ国で、なぜ、これだけクオリティの違うものができるのか不思議なくらい、前者は最近めざましく素晴らしく、後者は惨憺たるありさまである。
 民放のバラエティがダメになった理由はいくつかあると思うけれど、一つは、常々指摘している、馴れ合い、ゆるさで席巻しているお笑いの文化のせいだろう。社会的な批評性を伴わないゆるい笑いは、一つのあり方だが、それがモノカルチャーになるとさすがにきつい。
 グラミー賞やアカデミー賞の授賞式を見ていればわかるように、向こうのコメディアンは、エンタメのど真ん中でも、きちんとその時々の社会状況や普遍的価値を背景にした批評性を決めてくる。これが日本の地上波テレビにないのは、ほんとうにキツイ。
 もう一つ、最近の日本のテレビでどうしても理解できないのは、画面、音の「汚さ」である。なぜ、あのように、字幕やテロップを多用して、画面を「汚す」のか、芸人さんたちの、つまらぬ間の手や笑い声を強調するのか、全くよくわからない。
 映画『君の名は。』が、あれほど画面の隅々まで心を配って絵作りをして、音楽も美しく作り上げているのに、同じ日本の地上波テレビが、なぜ、あれほど汚い画面作り、音作りをしているのか、私には一秒たりとも理解できないのである。
 民放のバラエティなどは、以前から公言しているように一秒も見ないが(すぐれたドラマや、ニュース、スポーツ中継などは見ることもある)、たまたま食堂などでかかっていると、絵の汚さ、音の汚さですぐわかるのは、さすがというか、悲しい話だと思う。
 民放の制作担当者の方々だって、『君の名は。』とか、『この世界の片隅に』を見て感動したのだろうから、それならば、同じクリエーターとして、誇りを持って、良いものをつくっていただきたい。汚い大文字のテロップや、タレントさんの馴れ合いなんて、視聴者は別にテレビに期待していないと思う。(茂木健一郎公式ブログ 2016.11.26

魅力を増すアニメ映画

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