金正男「暗殺」衝撃の新事実
1431

テーマ

金正男「暗殺」衝撃の新事実

なぜこのタイミングだったのか。北朝鮮の最高指導者、金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏がマレーシアの空港で殺害された。実行犯の素性や動機、背後関係に至るまでいまだ謎は多いが、これまでも正男氏はたびたび命を狙われていたとされる。「金正男暗殺のなぜ」をiRONNAでも総力特集する。

なぜこのタイミングだったのか。北朝鮮の最高指導者、金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏がマレーシアの空港で殺害された。実行犯の素性や動機、背後関係に至るまでいまだ謎は多いが、これまでも正男氏はたびたび命を狙われていたとされる。「金正男暗殺のなぜ」をiRONNAでも総力特集する。

金正恩と習近平のチキンレース

正統性を失う「兄殺し」

カギを握る北朝鮮の駐チェコ大使

主犯は本当に北側か

 異国で特定の人物を暗殺する場合、実行者は必ず他国駐在、ないしは自国から直接派遣のキラーだ。具体的にいえば、北朝鮮がマレーシア訪問中の金正男氏を暗殺しようとすれば、駐マレーシアの同国外交官、工作員を動員することは絶対にない。暗殺がうまくいかなかった場合、北とマレーシア間で外交問題が生じ、最悪の場合、マレーシアは北側との外交関係を切る危険性が出てくるからだ。
マレーシア紙・スター(電子版)が報じた、金正男氏殺害で
同国警察が追っているとみられる女の映像
 マレーシアからの情報によれば、金正男氏を毒殺した可能性のある2人の女性(1人は自称、ベトナム人、もう1人はインドネシア人)と1人の男性が逮捕されたという。3人の身元を慎重に調査する必要があるだろう。明確なことは、北が外国の地で特定の人物を暗殺、ないしは危害を加えようとすれば、その国に駐在している工作員を使わないが、他国のプロのキラーに暗殺を依頼することも絶対にないことだ。キラーが捕まり、捜査官に口を割れば、誰が暗殺を依頼したかが明らかになるからだ。そのような危険を冒すことは北側は絶対ない。プロのキラーは金で動くから、金で裏切ることも十分想定できるからだ。その上、プロの外国人キラーの場合、後日、脅迫材料に利用される可能性が排除できなくなる。
マレーシア紙が電子版に掲載した金正男氏を殺害した女工作員の一人とされる人物の画像(マレー・メール紙=共同)
マレー・メール紙が電子版に
掲載した金正男氏を殺害した女
工作員の一人とされる人物の画像
(共同)
 大韓航空機爆発テロ事件(1987年11月29日)の実行犯は2人で、平壌から派遣された人物だったように、北がマレーシアで金正男氏を暗殺しようとした場合、第3国で駐在の工作員を動員するか、自国から特別訓練を受けた工作員を派遣するだろう。金でキラーを雇うことは絶対にない。北が正男氏を暗殺するために異国出身の男性や女性を利用したとは考えにくいのだ。
 そして暗殺実行犯がその命令を完遂した場合、北は実行犯を最終的には処分するだろう。大韓航空機爆発テロ事件の教訓だ。実行犯が逮捕された場合、実行犯が口を割る可能性が考えられるからだ。だから、命令を受けた実行犯が帰国した場合、最終的には処分されるだろう。
 中国工作員が正男氏暗殺に関与していた場合、考えられるシナリオは北側に正男氏の動向を伝えたことだ。中国人工作員が正男氏に直接、手を出す可能性は皆無ではないが、少ない。正男氏の詳しい動向を北側に伝えることで十分だからだ。すなわち、中国側は正男氏の暗殺を幇助した可能性が考えられるわけだ。
 「正男氏暗殺事件」の場合、北側の関与説が最も現実的だが、「北の暗殺説」にも弱点がある。16日現在、マレーシア警察の発表によると、先述の2人の女性と1人のマレーシア人の男性が逮捕され、逃走中はあと3人の男性だけとなったという。問題は、警察当局に拘束された2人の女性と1人の男性が拘束直前、自殺しようとしたといった報告がないことだ。大韓航空機爆発テロ事件でも2人の実行犯はいずれも拘束直前、毒薬を飲んで自殺しようとした(1人は自殺できずに拘束された)。北の工作員は徹底的に教育を受けたプロだ。マレーシアで逮捕された3人が自殺しようとしなかったという事実は、彼らが北から派遣された工作員ではない可能性が出てくるわけだ。換言すれば、中国人工作員の陰謀説が再び浮上してくる一方、「闇の世界」との繋がりがあった正男氏が何らかの理由でマフィア組織から報復された、といった犯罪説も出てくる。(長谷川良「ウィーン発『コンフィデンシャル』2017.02.16

脱北者たちへ恐怖

無慈悲処刑の過去

正男暗殺は中国にとってプラスか

 金正男暗殺という衝撃的な事件が起こりました。ほんとうに嫌な事件です。工作員の犯行と明らかになれば、新たな展開が起こってきそうです。
 独裁者金正恩の狂気、脅威となる存在を抹殺する執着心の異常さには、あっけにとられます。後先を考えないで、狙った敵を粛清する、暗殺することに異常に執着することは、どの独裁者にも共通していることかもしれません。かつて、ソ連のスターリンも、自らの地位を脅かしかねないトロッキーを、亡命先のメキシコに刺客を送り暗殺しています。
あきらかに、この事件は北朝鮮の国際的なイメージを致命的に悪化させます。にもかかわらず、犯行に及んだのは、後継者問題を決着する目的以外にも、なんらかの背景があったとも考えられます。
韓国メディアとのインタビュー後に手を振る、金正男氏=2010年6月、マカオ(AP=共同)
韓国メディアとのインタビュ
ー後に手を振る、金正男氏
=2010年6月、マカオ
(AP=共同)
 それを紐解くには、この事件でもっとも不利益を被ったのはどの国なのかを考えれば見えてきそうです。
 あきらかに中国です。中国は、金正男をこれまで賓客として保護してきたことが知られていますし、今回も中国のマカオに向おうとしていた金正男が暗殺されたとなると、習近平の顔に泥を塗るに等しいはずです。
 ミサイル実験、金正男暗殺と、連続して中国を挑発するかのような行動に走ったのも、おそらく、強硬なトランプ政権は、北朝鮮の核・ミサイル開発に対する中国の責任や役割を求めていますが、この流れの中で、もしかすると、中国が、金正男を後釜に政権転覆を企て、火種を消そうとするかもしれないと疑った金正恩が、そうは問屋が卸さないとばかりに暗殺を実行したのかもしれません。中国政府、米国の「中国役割論」に猛反発 : 国際 : ハンギョレ : 
 また、今回の暗殺事件は、中国と北朝鮮のパイプ役だった金正恩の叔父の張成沢を粛清して、中国は北朝鮮とのパイプを失い、コントロールする術を中国は失ってしまっていることを示しているようにも感じます。
 独裁を維持するためには手段を選ばない金正恩の暴走リスクが高まってきていますが、もし、金正男暗殺が北朝鮮工作員の犯行だと明らかになれば、中国も北朝鮮制裁に本気にならざるを得ません。場合によっては中国の北朝鮮侵攻という事態は想像したくないのですが、可能性は排除できないのでしょう。
 産経新聞の矢板論説委員は、中国が、暗殺情報を知りながら北朝鮮との関係修復のため金正男を見捨てた可能性も否定できないとされていますがどうでしょうね。近々に金正恩の中国訪問があれば、産経新聞の見方が正しかったということになります。
 しかし、韓国紙東亜日報によれば、すでに中国が「マカオにいる長男のキム・ハンソル氏と家族、そして北京にいる最初の夫人の2つの家族が現在中国の保護を受けている」と明らかにしているようです。金正恩に対する中国の外交カードを持っておきたいということでしょうか。金正恩との関係修復を狙うなら、たとえ保護していても公表しないはずです。金正男氏の長男、中国当局が保護 : 東亜日報 :
 いずれにしても、日本は、中国に対して北朝鮮の核とミサイル開発抑止の役割や責任を問い続け、拉致問題解決についても、粘り強く主張し、交渉の手がかりを探っていくしかないのでしょうが、金正恩は、ほんとうに困った存在になってきました。(「大西宏のマーケティング・エッセンス」2017.2.16

暴走する恐怖統治

金正男「暗殺」衝撃の新事実

みんなの投票

マレーシアで殺害された金正男氏の事件に関心がありますか?

  • ある

    1284

  • ない

    75

  • どちらでもない

    72