芸能コピペ記事なんていらない!
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芸能コピペ記事なんていらない!

「記者ならちゃんと取材しろよ」「ヤフーニュースだって責任あるだろ!」。インタビューで熱く語ったのは、お笑いコンビ、ロンドンブーツ1号2号の田村淳さんである。彼の怒りの矛先は、世に氾濫する芸能コピペ記事の数々。その真意を尋ねてみると、現代メディアが抱える大きな弱点も浮かび上がった。

「記者ならちゃんと取材しろよ」「ヤフーニュースだって責任あるだろ!」。インタビューで熱く語ったのは、お笑いコンビ、ロンドンブーツ1号2号の田村淳さんである。彼の怒りの矛先は、世に氾濫する芸能コピペ記事の数々。その真意を尋ねてみると、現代メディアが抱える大きな弱点も浮かび上がった。

拡散したものが「事実」になる

最大の武器であり最強の敵でもある

何を言ったか分かればいいという心理

芸能コピペ記事の是非を考えたい

 「芸能コピペ記事」というものをご存じだろうか。簡単に言えば芸能人がテレビやラジオ番組内での発言のほか、SNSに書き込んだ文章の一部を切り取って作成した記事のことだ。芸能コピペ記事の多くはインターネットサイトにアップされ拡散する。どこのメディアがいつごろ始めたのか定かではないが、今ではあらゆるニュースサイト、スポーツ紙、雑誌などが取り入れており、だれもが一度ぐらいは見たことがあるだろう。
コピペ記事に言及した田村淳氏のツイート
 この芸能コピペ記事について明確に批判しているのがお笑いコンビ「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳さんだ。iRONNAのインタビューの中で淳さんは、特にテレビやラジオ番組の中での発言は、その場の独特の雰囲気の中で出てくるものであり、短い文章(記事)で表現することは不可能であることを強調。「発言した人の真意が伝わらない記事は読者にとって有益ではない」と理由を語り、大いに納得させられた。
 芸能事務所関係者によると、芸能人の多くはこうした芸能コピペ記事に快く思っていないという。ビートたけし氏が著書『テレビじゃ言えない』(小学館新書)の中で芸能コピペ記事に触れた部分をNEWSポストセブンが「テレビのコメントをパクるネットは恥を知れ」というタイトルで掲載。出演する情報番組やバラエティ番組で発言した内容をニュースにすることに嫌悪感を示し、「別に悪いことじゃないのかもしれないけど、テレビ番組のコメントを拝借するだけなんて、取材とは言えないだろう。プロとしてのプライドはないのかって話でさ」としている。
 確かにたけし氏が言う通り、取材のない「記事」を掲載するメディアに疑問を感じる人がいてもおかしくない。その一方で、メディアを介した職業である芸能人の発言を記事にしたところで何の問題がるのかという考え方もあるだろう。
 そもそも、芸能コピペ記事が横行する背景には、新聞や雑誌、テレビといった既存メディアの「疲弊」が大きい。ネットメディアが台頭し、紙媒体や映像媒体の影響力は縮小の一途をたどり、販売部数や視聴率も低下を続ける。既存メディアはいずれもネット事業に軸足を置くようになったが、恒常的なマンパワー不足が続く。つまり、ネットは儲からないのである。儲からないから、人手を補うこともできない。だから、既存メディアも含めてネットメディアを運営する側は、手っ取り早く注目記事を量産できる芸能コピペ記事を重宝する。ここに問題の根本原因は集約されているといっても過言ではないだろう。
 ただ、昨年DeNAの「まとめサイト」による無断転用や真偽が不明な情報を掲載していたことが発覚し問題となった。芸能コピペ記事と同じ次元ではないが、いずれもメディア全体が疲弊して弱点が露見した結果であり、もちろん、iRONNAも他人事では済まされない。それだけに今回は淳氏のインタビューを中心に芸能コピペ記事をあえてテーマに据え、みなさんとともにその是非を考えたい。(iRONNA副編集長、津田大資)

それが生き残る道だ

検索エンジンがコピペを生む?

ネットメディアは信頼を確立できるか

 ネットゲームのDeNAが新規事業として展開していた複数のキュレーション(まとめ)メディアが全面的に公開停止に追いこまれた。この事件の概要は既報ゆえに繰り返さないが、ここではこれまでに欠けていた論点を補っておきたい。(中略)
 お粗末な記事はネットメディア登場前にももちろん存在していた。ただそれが人目に触れる機会が限られていた。というのも知名度の高いマスメディアはいわば「狭き門」であり、お粗末な記事は様々な選別のふるいにかけられてお蔵入りとなる可能性が高かった。それは逆に言えば、著名なマスメディアが報じている情報が一定の信頼を得られた理由でもあった。それに対しインターネット上では選別のふるいを経ない情報も公開される。キュレーションメディアは、実はそうした玉石混交の情報量爆発的状況の中で、有用な情報を選別する役割を期待されて登場した。
 だが、それは「正常進化」しなかった。著作権を侵害しつつネット上から様々な情報を集めて表示するだけのキュレーションメディアが現れ、それでもアクセスが稼げれば広告収入が得られてしまうので、悪質なサイトは後を絶たなかった。
 とはいえ有用情報の選別を目指したのはキュレーションメディアが最初ではない。お粗末な内容のWEBでも自前の工夫で検索にかかり易くなることを問題視したスタンフォード大学の学生たちは他者の評価を検索結果に反映させる方法を求めた。
 そしてそのWEBが重要だと多くの人が考えている集合意識がWEBへのリンクの数におよそ反映されると気づいた彼らは、被リンク数の多い順に検索結果を表示する「ページランク」という方法を編み出す。その方法を実装したGoogleは、まともなWEBを真っ先に表示するとの評判を得て、検索最大手の地位を確立するに至った。
 しかし今回の件では、信頼性を欠く記事を載せたDeNAのキュレーションサイトはみなGoogle検索で上位に表示されていた。これはGoogleの方法が破られたことを意味する。だとすればキュレーションメディア運営者のモラルを問うだけでなく、信頼に足る情報にアクセスできるネット環境をもう一度、構築する必要があるだろう。
 かつて個人ブログが相互にリンクを大量に貼ったことで被リンク数相場が変わり、ブログばかりがGoogle検索で上位に表示されたことがあったが、すぐに是正された。今回、キュレーションメディア側が施していたなんらかの検索対策についてもGoogleは対抗措置を打ってくるとは思う。しかしネット情報の信頼性を向上させるアプローチがGoogle頼みというのは不自然だし、危うくもある。たとえばキュレーションサイトを仕切るキュレーターに公認資格を設定するなど、機械任せではなく、制度設計の工夫を含めて信頼性を回復する様々な試みがありえよう。
 マスメディアの情報空間が物理的に有限であった時期には、情報を選別する必然性があり、それが結果的に情報の信頼性を担保していた。対してインターネットの情報空間は事実上無限なので、選別を機能させ、信頼性を確立するには、より意図的かつ主体的な「環境」作りが求められる。今回のDeNAの事件をきっかけに、モラルを欠落させた犯人探しだけでなく、ネット社会全体を相手取るアプローチの必要性が意識されるとよいと思う。(ジャーナリスト・武田徹  産経新聞 2016.12.19)

苦悩するメディア

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