ニッポンの宅配危機はアマゾンのせい?
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ニッポンの宅配危機はアマゾンのせい?

宅配最大手のヤマト運輸が、インターネット通販の増加と人手不足を理由に運賃値上げを発表した。「当日配送」や「再配達」といった過剰サービスが限界に達したとの指摘もあるが、やはり最も影響が大きいのは米ネット通販大手、アマゾンの存在である。変わる流通業界、ニッポンの宅配危機を考える。

宅配最大手のヤマト運輸が、インターネット通販の増加と人手不足を理由に運賃値上げを発表した。「当日配送」や「再配達」といった過剰サービスが限界に達したとの指摘もあるが、やはり最も影響が大きいのは米ネット通販大手、アマゾンの存在である。変わる流通業界、ニッポンの宅配危機を考える。

真の脅威は「自社配送」

騒動の背景に過剰サービス

正直、妙案はない

客も配達員も幸せになるには

 筆者は、企業の経営者を人間的にも優れていると思って尊敬することがほとんどない。立志伝中の名経営者であっても、私生活が乱れていたり、政治家や役所に取り入っていたり、社員に対して理不尽な服従を求めたりと、実はイマイチな人物が少なくない。企業だけの評価なら、むしろ感じの悪い経営者が信頼できる。そうした中、例外的に素晴らしいと思う経営者が、ヤマト運輸を創業した故・小倉昌男氏だ。規制と戦いつつ、宅配便という新しいサービス(今では生活に不可欠だ)を創造して成功し、さらに晩年には障害者の福祉に尽力した。
業界最大手のヤマト運輸が
試練に直面している
 しかし、今、小倉氏が創ったヤマト運輸がピンチにある。セールスドライバーの労働が過重になり、限界に達したようなのだ。主な理由はネット通販大手アマゾンのビジネスを、宅配二番手の佐川急便から奪って引き受けたことによって、予想以上の負荷が発生したことにあるようだ。
 ヤマトの労働組合は荷物の引き受けの総量を抑制することを求めている。加えて、経営陣は料金を値上げし、数百億円に上る未払いの残業代を調査した上で支払う意向だ(正しい!)。
 状況を見るに、これまで社員のサービス残業的な働きにぎりぎり支えられてきた状況で、限界を超えるシェア拡大を急いだことがつまずきの元だった。加えて、全般的な人手不足の中、セールス・ドライバーの追加採用には数・コスト両面で制約が生じ、他方、大手の荷主であるアマゾンは需要家として競争力が強い。本来なら、絶対に必要な商品・サービスの供給者であって、シェア・競争力が一番のヤマト運輸には活路があるはずなのだが、供給側と需要側の両方で予定外に厳しい競争にさらされたことで、今日の苦境を招いた。
 「荷物を運ぶ」という新規参入者にもまねがしやすいサービスで戦っているので、競争の罠(わな)を抜け出すことは簡単ではないが、冷静に考えると、ヤマトにはライバルに対して有効に使える競争力があるはずだ。ヤマトの競争力は、一つにはシェア第1位の規模の利益によるコスト競争力であり、もう一つにはきめ細やかな再配達に象徴される丁寧さとセールスドライバーの感じの良さだ。実はコストが掛かっているはずの後者を安価に提供しすぎたことがまずかったのではないか。感謝とともに過剰サービスを感じることがある。
 日に1回配達でも安価で競合に楽をさせないサービスと、細かな再配達に応じる高価なサービスに価格差を作ってはどうか。例えば後者が200円高くても同日に再配達を望む人は、追加料金を払って再配達を頼む条件はどうか。100円は会社に、100円はドライバーに配分する感じで客・会社・社員がハッピーにならないか。 (経済評論家・山崎元「経済快説」zakzak、2017.03.09

ブチギレ「佐川男子」

修正迫られる「お客様第一主義」

一社で日本全体を超える?

アマゾンの驕りと甘え

 日本では労働力がどんどん減少していきます。減る労働力に対して企業が成長戦略を得る方法は限られます。徹底的な効率化か資本力を生かして海外に打って出ることでしょう。海外の話はともかく、国内における徹底的効率とは何でしょうか?
米アマゾンのベゾスCEO
 効率化が進む中で労働力に頼らなくてはいけないのが流通会社。そしてその雄、ヤマト運輸は次々と「流通新ルール」を打ち出していますが、今度は同社のお得意様であるアマゾンの当日配達から撤退することにしました。あの3900円アマゾンプライムの危機でありますが、当面は日本郵政でカバーできるようです。
 配達サービスが過剰になれば顧客は甘えます。自分で取りに行くのが当たり前だったあの時代から玄関先まで指定時間にピンポーンと配達に来てくれるその仕組みの元祖といえば宅配ピザ屋でありましょう。その宅配ピザ、価格表を見るとかなり高いのに閉口している方も多いでしょう。4-5000円もするピザなんて私は頼めません。私がたまに行くスーパーでは30センチ近い冷凍ピザが1枚200円以下で売っています。「粉ものビジネス」なので原価率は知れているのです。宅配ピザ屋は宅配のバイクスタッフにお金を払っているようなものであり、その配達サービスで儲けているようなものでしょう。その証拠に店に買いに行ってもほとんど値引きはありません。宅配が減るからです。
 つまり、アマゾンが自社で宅配部門を持っていれば逆立ちしても3900円のアマゾンプライムという商品は開発されなかったはずで、ヤマトが市場価格の半額程度で請けているところにアマゾンの驕りと甘えがあったのです。
 ヤマトの窮状は宅配に対する世の中の姿勢が変わるきっかけになるかもしれません。いや、それだけではありません。宅急便につきもののあのしっかりした梱包は何でしょう?「もったいない」だけど転用も利かないのがあの段ボール。この辺りになると日本人はおもてなされすぎて甘えているようにすら感じます。(岡本裕明「外から見る日本、見られる日本人」2017.04.11

重荷になる「最後の1マイル」

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