高齢者に群がる「情弱ビジネス」の裏側
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高齢者に群がる「情弱ビジネス」の裏側

老後に欲しいのは「幸せ」よりも「お金」。高齢者を対象にしたある意識調査で、欲しいものが「お金」と答えた人は4割に上り、「幸せ」の15%を大きく上回った。そうした心理につけ込み、老後資金を根こそぎカモにする「情弱ビジネス」と呼ばれる悪質なトラブルも横行しているという。その驚くべき実態とは。

老後に欲しいのは「幸せ」よりも「お金」。高齢者を対象にしたある意識調査で、欲しいものが「お金」と答えた人は4割に上り、「幸せ」の15%を大きく上回った。そうした心理につけ込み、老後資金を根こそぎカモにする「情弱ビジネス」と呼ばれる悪質なトラブルも横行しているという。その驚くべき実態とは。

うまい話にはくれぐれもご用心

 うまい話には裏がある──。日本人なら聞いたことのない人はいない格言だが、目の前に人参をぶら下げられた状態で、この言葉を思い出せる人は少ない、というのも一つの真理である。実は、このところ、うまい話に乗せられて大火傷してしまいそうな地主が日本中で急増しているという。
 「遊休地にアパートを建てませんか。節税になるし、家賃収入は保証しますから……」
  建設事業者がアパート全体を相場家賃の80~85%程度で借り上げる、いわゆる「サブリース契約」によって、全国的にアパート建設ラッシュが続いている。
 例えば、9000万円で地方の遊休地にアパートを2棟建てるとする。部屋数は2DKや1LDK、2LDKを合わせて10戸。全額を銀行から借りても、目下の金利なら30年ローンにすれば返済は月額30万円程度。一方の収入は、平均一部屋6〜7万円強と考えて60〜70万円。業者に10〜15%程度の手数料を払っても50万円が家賃として振り込まれ、ローンを支払っても20万円が手元に残るという計算だ。
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 営業マンに言われるがまま、アパート建設の契約書に捺印すれば、融資をしてくれる銀行もセットで、自らの出費はなし。汗をかかずに月収20万円は今時悪くない話だ。
 しかし、その黄金の方程式がやがて成り立たなくなる日がやってくる。最大の根拠は、深刻化する空き家問題。日本の津々浦々で建設されたアパートが、いずれ大問題になるというサブリース契約の危険性をレポートする。別稿として小誌連載「狙われるシルバー世代」の記事も。うまい話にはくれぐれもご用心──。(月刊ベルダ編集長 小林久支)

高齢者を狙う「情弱」ビジネス

なぜ畑がアパートに変わったのか

全国で広がる住宅市場の歪み

 人口減少で需要が減少するはずのアパートの建設が急増するという異変が起きている。2015年の相続税増税に伴い、節税策として建設業者が地主らにアパート経営を持ちかけているためだ。長期の家賃保証をうたい、銀行から融資を受ける手伝いもするなど、あの手この手でアパート建設を提案している。だが、少子高齢化を背景に全国規模で空き家が急増する中で、都心部ではない郊外にアパートを建設しても経営が長期に成り立つとは思えない。
画像はイメージです
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 東京郊外で農業を営むAさん(70)は今年春、自宅近くの土地に2階建て総戸数8戸の小さなアパートを建設した。大手の建設請負会社から熱心に建設を勧められたからだ。「このまま土地を遊ばせておくと、子供に相続税で負担がかかるといわれた」という。
 長期一括で借り上げるサブリース(転貸)という手法を提案した営業マンは、向こう30年の家賃を保証し、地元銀行から融資を受ける手続きもほぼ代行してくれた。「契約の際には都内にある本社ビルに呼ばれ、役員と大きな会議室で契約書を取り交わした。その後、ホテルで昼食もごちそうになった」とうれしそうに語る。
 しかし、家賃保証は現在の家賃収入を将来にわたって保証するものではない。その額は空室率によって最低保証額まで引き下げられる可能性がある。このほかに定期的な修繕費も必要になる。アパート経営の素人であるAさんには、こうした注意点について業者側から知らされなかったようだ。(中略)
 建設費用を賄うアパートローンも増加している。日銀によると9月末現在の国内銀行におけるローン残高は約22兆円と前年同月よりも4%増えた。マイナス金利政策で金利が低下して借りやすくなったほか、金融機関も積極的な融資の開拓に乗り出している。なかでも熱心なのが地方銀行だ。設備投資を手控える地元企業には資金需要が少なく、比較的高い金利を設定できるアパートローンが融資を増やすための有望市場と位置づけられているからだ。地銀の中には地元の地主らにアパート建設を提案するため、専門チームを設ける動きもあるという。
 節税を望む個人と利ざやを稼ぎたい金融機関の思惑が一致した格好だが、そこには罠がある。需要が増えない限り、供給が増えれば価格は落ち込む。実際、アパート建設が増えた昨夏以降、首都圏におけるアパートの空室率は上昇している。
 13年時点における日本全国の空き家は約850万戸に達するが、このうち半分は賃貸住宅が占めるという。それでも続々と新しいアパートの建設が続いており、専門家は「すでにバブルの様相を呈している」と警告する。
 地方都市の中心市街地では、閉鎖した店舗や老朽化した低層ビルをアパートに建て替える動きも広がっている。こうした無秩序に進むアパートの建設が今後のまちづくりの支障になる恐れも指摘されている。思いがけず空室が発生し、当初見込んだ家賃収入が得られなくなった大家と家賃保証をした事業者との間でトラブルも起きている。あくまでサブリースは事業者同士の契約を想定しており、消費者保護のような仕組みはなかったからだ。
 このため、国交省では業界団体に対し、サブリース契約のリスクもきちんと説明するように求める通達を出した。融資拡大に前のめりな地銀と併せ、政府による取引監視も検討すべきだろう。全国で広がる住宅市場の歪みから目を離してはならない。(産経新聞論説委員・井伊重之 産経ニュース 2016.12.25

悪質業者を処分しない金融庁

米国では多数の死亡例も

「サブリース」被害の実態

高齢者「マネー」の行方

高齢者に群がる「情弱ビジネス」の裏側

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