『少年ジャンプ』200万部割れの深層
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『少年ジャンプ』200万部割れの深層

『週刊少年ジャンプ』の発行部数が200万部を割り込んだ。ジャンプはピーク時653万部に達し、マンガ雑誌の象徴といえるだけに衝撃が広がった。人気連載の相次ぐ終了に起因するとの見方が支配的だが、部数減の裏でマンガ全体の市場規模は昨年増加に転じた。いまマンガに何が起こっているのか。

『週刊少年ジャンプ』の発行部数が200万部を割り込んだ。ジャンプはピーク時653万部に達し、マンガ雑誌の象徴といえるだけに衝撃が広がった。人気連載の相次ぐ終了に起因するとの見方が支配的だが、部数減の裏でマンガ全体の市場規模は昨年増加に転じた。いまマンガに何が起こっているのか。

部数減のマンガ雑誌に何が起きているのか

 5月17日、読売、朝日などの全国紙がニュースとして報じたのが、『週刊少年ジャンプ』の発行部数が200万部を割ったということだった。日本雑誌協会が公表している印刷証明付き発行部数で同誌の1~3月平均が191万5000部になったというものだ。
 同誌の部数が1995年の653万部をピークに一貫して下がっていることは知られているし、この1~2年、人気連載が次々と終了したことで、1年間で250万部から200万部に部数が落ちたことも既に報じられている。だから、200万部を割ったというのは予想されたことなのだが、これが全国紙のニュースになるというのは、『週刊少年ジャンプ』が日本のマンガ雑誌のシンボルでもあるからだろう。講談社、集英社、小学館など大手出版社の屋台骨を支えるマンガがいまどうなっているかは、やはり大きな関心事といえる。
 世界に冠たる日本のマンガだが、紙の市場で見ると、1990年代半ば以降、一貫してマイナス成長だ。この20年ほど、マンガ市場は落ち込んでいるという報道ばかりがなされてきた。しかし、実は2016年の出版科学研究所のデータでは、デジタルコミックを含めて見ると、マンガ市場全体の販売金額はプラスに転じているのだ。
 さらにマンガ原作がドラマ化・映画化されるケースは非常に多くなっており、そのアニメの配信も含めて、マンガのライツビジネスは急激に拡大している。つまりマンガをめぐる市場は決して縮小しているのでなく、むしろ拡大しつつあるといえる。ただ、従来と形態が著しく変わりつつあるのだ。アニメをめぐっては、2016年に大ヒットした『君の名は。』『この世界の片隅に』など劇場アニメのブームと言える現象が続いている。従来、アニメを観に映画館に足を運ぶのは子ども連れかアニメファンとされてきたのだが、『この世界の片隅に』などは、主な客層が、それまで劇場アニメなど観たことがないような中高年だった。
 2017年に入ってからも、『ドラえもん』や『名探偵コナン』などの劇場アニメは記録的なヒットを続けている。それにディズニーなどの作品を加えると、ヒット映画の上位はアニメに独占されている。しかもこの劇場アニメのブームは世界的な現象と言われているのだ。いまやマンガやアニメ市場については、単純に紙媒体の数字だけをカウントするだけでは現実を見失うことになる。劇場アニメがブームの一方で、テレビアニメについては、『ONE PIECE』『アンパンマン』など人気アニメが平日のゴールデン枠からどんどん撤退しつつあるという現実もある。
 いったい今、マンガ・アニメをめぐって何が起きているのか。その市場はどう変わりつつあるのか。月刊『創』では1990年代半ば以降、毎年マンガ市場を定点観測して特集を組んできた。ちょうど発売中の5・6月号で「マンガ・アニメ市場の変貌」という大きな特集を組んでいるのだが、そこからエッセンスともいうべきレポートを、加筆などをしたうえで、ここに公開することにする。(月刊『創』編集長、篠田博之)

「Dr.マシリト」は何を思う

「ONE PIECE」に続くのは?

何をいまさら騒いでいるの?

第3期を迎えたマンガの歴史

 文字物の電子書籍がいまひとつ伸び悩んでいる一方で、予想を超える急成長を遂げているのがデジタルコミックだ。2016年に顕著だったのは、紙の落ち込みを電子がカバーしたことによって、両方をあわせたコミックの販売金額がプラスに転じたことだ。1995年以来、一貫して落ち込んできたコミック市場が、電子の伸びによってプラスに転じたというわけで、これはマンガの歴史を画する事態と言ってよいかもしれない。
 出版科学研究所のデータによると、2016年のコミック市場は、紙と電子をあわせて4454億円、前年比0・4%増だった。紙だけをとってみると、コミックスは1947億円で前年比7・4%減、コミック誌は1016億円で12・9%減と、落ち込みは加速している。特にコミックスの7・4%減は過去最大の落ち幅だ。ところが電子のほうはコミックスが1460億円で27・1%増、コミック誌が31億円で55・0%増。電子を加えると前年比でプラスに転じるだけでなく、コミックスについては過去最大の伸びになるという。
 雑誌の場合はまだデジタルの割合は小さいのだが、コミックスについてはデジタルの比率が急速に高くなっている。つまり既刊作品については紙のコミックスよりもデジタルで読む人が急激に増えているというわけだ。紙の既刊作品を読むために利用されていたコミック文庫はデジタルにとって代わられ壊滅的な落ち込みと言われる。そして出版科学研究所のデータは、さらに驚くべき予測を打ち立てている。現状のペースで行くと、来年には電子コミックスが紙のコミックスを上回り、1850億円前後で両者の売り上げが逆転する可能性があるというのだ。これはまさにマンガの歴史を大きく変えるものと言わざるをえない。
 日本のマンガの歴史は戦後、1959年に『週刊少年マガジン』『週刊少年サンデー』が創刊された時に大きな様変わりを遂げた。手塚治虫さんが作り上げたと言われるストーリー漫画の時代の幕開けだ。そして次に大きな転機を迎えるのは、69年の『ビッグコミック』を端緒に70年代以降、青年誌市場が急成長を遂げた時だった。それまで子ども向けとされたマンガが大人向けの新たな市場を創出し、一気に拡大。80年代に日本マンガは黄金時代を迎えることになった。雑誌で利益を上げ、連載をまとめた単行本で再び利益を上げるという「一粒で二度おいしい」構造ゆえに、マンガは大手出版社のドル箱になったのだった。
 ところが90年代半ばをピークに市場は一気に縮小していった。特にマンガ雑誌の落ち込みは深刻で、2005年には雑誌と書籍の販売金額が逆転する。その後、マンガ雑誌は赤字だが、書籍(コミックス)のヒットでそれをカバーするという構造が一般化したのだった。ただ、コミックスも雑誌よりはましだとはいえ、売り上げはマイナスになっており、その間、マンガ市場は縮小の一途をたどっていると指摘されてきたのだ。
 そうした構造的変化は、マンガの読まれ方が変わってきたことを意味していた。昔は雑誌で連載を読み、コミックスがまとまったら再び読むという読まれ方をしていたのが、この10年ほどはアニメやドラマでマンガ原作に触れ、それをきっかけにコミックスを読んでみるという読者が増えた。したがって作品が人気になっても、それが雑誌の売り上げにまでは跳ね返らないという構造が一般化した。
 いまやマンガ雑誌はほとんど全て赤字となり、雑誌はマンガのコンテンツを作り出すための媒体となった。一方で、デジタルコミックが急伸長し、マンガをスマホで読む習慣が拡大していった。コンテンツを作り出すためなら印刷費や紙代のかかる雑誌である必要はないと、近年はデジタルで連載を行い、雑誌を経由せずに単行本になるマンガ作品も増えている。週刊マンガ誌の登場を第1期とすれば、青年マンガ誌の登場による市場拡大が第2期。そして映像メディアやデジタル化がマンガの歴史の第3期といえるだろう。(月刊『創』編集長、篠田博之)

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