青林堂パワハラ訴訟、泥沼バトルの舞台裏

休刊した漫画誌『ガロ』で知られる出版社「青林堂」(東京都渋谷区)のパワハラ訴訟をめぐり、同社社長の蟹江磐彦氏がiRONNAに独占手記を寄せた。一方、会社を訴えた原告代理人からも反論手記が寄せられ、泥沼バトルの内幕がiRONNAでついに明らかになった。老舗出版社で何があったのか。

猛烈なバッシングに答える

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原告代理人が徹底反論

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「労組VS企業」の様相も

 パワハラか、それとも指導か―。小さな出版社をめぐるパワハラ訴訟が注目を集めている。訴えられたのは、かつて漫画誌「ガロ」の発行で知られる出版社「青林堂」(東京都渋谷区)の社長らだ。同社で勤務していた男性社員が今年2月、パワハラで精神疾患となり働けなくなったとして、慰謝料など計約2千万円を求める訴えを東京地裁に起こした。
 パワハラ訴訟は最近めずらしくなくなったが、今回は自社内に労働組合がある大企業ではなく、いわゆる中小零細企業が舞台だ。ゆえに原告側は男性社員のような中小企業労働者が加入する「東京管理職ユニオン」が支援。一方、被告側は元厚労省職員による著書『中小企業がユニオンに潰される日』を出版するなど、「労組VS企業」の様相もみせている。
 訴状などによると、男性社員は同社を一度退社した後、平成26年6月に再度入社したが、労働組合に加入したことを理由に解雇を通告された。ただ、男性は東京地裁で解雇無効となり、27年10月に復職したが、他の社員から隔離され、社長らから「お前はバカだからできない」、「社長に信頼されるようなこと、何した?」、「労働組合といったらみんな左翼」「スパイだ」と言われるなど嫌がらせを受けた。その後、男性は「うつ病」と診断され休職しているという。
 これに対し青林堂は、男性社員は復職後、指示した仕事をせず、社長らが指導で行った叱責のメモや録音ばかりするなど、社員と呼べる行為をしていなかった。さらに、うつ病で休職したにもかかわらず、国会前のデモなどに参加していたという。同社は正社員3人、契約社員などを含めて6人程度の零細企業であり、「権利ばかり主張して会社の利益につながることをしない社員が1人でもいれば立ち行かない」と主張。多額の和解金などを払うことになれば会社の存続にかかわるなどと反論している。(iRONNA編集部)

対策本はウソばかり

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嫌がらせはエスカレートする

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どっちが社会的弱者か

 今どき「パワーハラスメント」(パワハラ)という言葉を聞いて知らない人はほとんどいないだろう。私自身、18年前に入社した当時、パワハラという概念すらなかったと思うが、最近は日常的な会話で頻繁に飛び交うようになった。かつて司法担当記者をした際にも、いわゆるパワハラ訴訟はそれなりに多く、めずらしくなくなった。ただ、報道されるパワハラ訴訟の多くは、誰もが知っている大企業の幹部らが被告になるケースだった。
 こうした中、いま、注目されているのが、「青林堂」をめぐるパワハラ訴訟ではないだろうか。被告の青林堂は正社員3人、契約社員などを含めて10人に満たない小さな出版社である。その正社員の一人の男性社員がパワハラを理由に今年2月、社長らを提訴したが、これがTBSの報道番組「News23」などで大々的に報じられた。
東京都渋谷区にある出版社「青林堂」が入ったビル
 これまでに報道されてきたパワハラ訴訟は、被告側の企業は対応を代理人弁護士にすべて任せ、判決が出るまで静観することが多かった。だが、青林堂は男性社員だけでなく、原告に名を連ねて実質的に支援する労働組合「東京管理職ユニオン」とも闘う姿勢を鮮明にしている。理由は、男性社員への行為をパワハラではなく指導の一環であるとした上で「こんな小さな会社が労働組合に目をつけられ、多額の和解金や賠償金を払うことになれば潰れかねない」と危機感を募らせるからだ。実際に青林堂は自社から『中小企業がユニオンに潰される日』を出版するなど労働組合のあり方にも疑問を投げかける。
 一方、提訴した男性社員も、青林堂が大企業のように自社で労働組合を設置できる環境になく、ユニオンに支援を求めたのだろう。ただ、こうした現状を踏まえれば、今回の訴訟は原告も被告も社会的「弱者」といえるのではないか。ならば、どちらかの主張だけを取り上げるのはフェアではない。
 まさに青林堂訴訟は法廷バトルが始まったばかりだ。その渦中で、被告の青林堂社長の手記に端を発し、『中小企業がユニオンに潰される日』の著者、そして原告側も代理人弁護士とユニオン執行委員長という当事者双方が「iRONNA」に寄稿し、舞台裏が明かされた。東京地裁で判決が言い渡され、最終的な司法判断が確定するまで、相当の年月を要するだろうが、これを機にパワハラや労働組合について考えたい。(iRONNA副編集長、津田大資)

被害者には永遠に続く生き地獄

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