カネと欲望の習近平「一帯一路」
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カネと欲望の習近平「一帯一路」

「中華民族の復興」を旗印に掲げる中国の習近平国家主席にとって、ユーラシア大陸に広域経済圏をつくる「一帯一路」構想は己の野望を具現化する最大のチャンスだ。反面、カネと欲望にまみれた巨大プロジェクトは、さながら「中華思想の遺伝子」である。懸念材料が尽きないとはいえ、日本はどう立ち向かうべきか。

「中華民族の復興」を旗印に掲げる中国の習近平国家主席にとって、ユーラシア大陸に広域経済圏をつくる「一帯一路」構想は己の野望を具現化する最大のチャンスだ。反面、カネと欲望にまみれた巨大プロジェクトは、さながら「中華思想の遺伝子」である。懸念材料が尽きないとはいえ、日本はどう立ち向かうべきか。

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要は中国企業のための構想

 「一帯一路サミット」と称する国際会議が北京で開かれた。「一帯一路」とは習近平中国共産党総書記・国家主席が唱道する欧州、中東、アフリカ、中央アジア、東南アジアを陸と海のインフラで結びつける経済圏構想だ。会議では習氏が合計7800億元(約12兆8千億円)のインフラ整備資金を追加拠出すると表明した。同構想の推進を自身の権力基盤固めの手段にしているだけに、習氏はロシアのプーチン大統領らの出席者に気前のよいところをみせた、というところだろうが、ちょっと待て。そんなカネをどう捻出するのか。
 通常、海外向け投融資はドル建てで行われる。プロジェクトを実行する国も受注企業もドルを選ぶからだ。7800億元はドル換算で約1100億ドル相当だ。中国の外貨準備は3兆ドル、世界一の規模であり、その一部を充当できるから問題ない、と見る向きもあるだろうが、外貨準備は無きに等しい。中国の外準は対外負債4・6兆ドル、すなわち外からの借金によって支えられている。最近はかなり落ち着いてきたが、中国はことし初めまで巨額の資本逃避に悩まされ、外準は急減してきた。習政権は資金流出を食い止めようとして、企業や個人の外貨持ち出しを厳しくチェックしている。習氏が外貨を大盤振る舞いできるはずはない。
 そこで、追加資金の内訳をよくみると、大半は人民元である。インフラ投資基金を1000億元増額、政策投融資機関である中国国家開発銀行と中国輸出入銀行が合計3800億元を融資、大手国有銀行が人民元建ての3千億元規模の基金を設立するという。何のことはない。党が支配する中国人民銀行が人民元を刷って、国有銀行が融資すればよいだけだ。この手口は本来、国内向けに限られてきた。2008年9月のリーマン・ショック後、党中央は人民銀行に命じて人民元を大増刷させ、国有銀行には融資を一挙に3倍程度まで増やさせた。その結果、国内のインフラや不動産開発投資が活発化して、世界でもいち早く不況から立ち直り、高度成長軌道に復帰した。同じ手を今度は「一帯一路」沿線国・地域に使おうという魂胆だ。
 ではだれがそんな資金を受けとるのか。上記の通り、外国企業は「ドルでよこせ」と要求するだろうが、中国企業なら人民元で構わない。グラフの国内総生産(GDP)を見ても、融資を受ける国の経済力は弱く、人民元でなくてもカネは欲しい。人民元建て債務返済に縛られる政治的代償を払う羽目になる。「一帯一路」とは、習氏の「党による党と中国企業のため」のプロジェクト、ビジネスモデルなのだ。それでも欲に目のくらんだ欧米企業は北京詣でに余念がない。欧米メディアによれば、米国のゼネラル・エレクトリック(GE)、ハネウエルやドイツのシーメンスなどは主契約者が中国企業でも、その下請けで受注できると踏んでいるというが、ちょっと情けない。(産経新聞特別記者・田村秀男「『お金』は知っている」 zakzak 2017.05.19

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「一帯一路」は夢の計画か

 中国の現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」が活況を帯びている。5月、北京で開かれた国際会議には130カ国以上の代表が参加し、中国は約14兆円の援助を表明した。今から20年前、東南アジアの多くの国は、道路が貧弱で長距離を移動するのが大変だった。幹線道路すら穴ぼこだらけで、中古車がほこりを巻き上げながら、車体を上下左右に揺らして走っていた。港は寂しい寒村だった。
 そこに中国が巨大なマネーを注入してインフラを整備し、開発を推し進めるプロジェクトが提唱されたのが4年前だ。習近平国家主席は国際会議の演説で「道路インフラがしっかりしていれば産業も盛んになる」と意義を説いた。しかし「一帯一路」がユーラシア大陸に中華経済圏を形成し、軍事拠点化を目指す「地政戦略」であることに疑いはない。
 中国の道路建設で想起するのは、冷戦時代にラオス北部に建設した「ラオス中国友好道路」だ。1963年に竣工(しゅんこう)したこの道路は、ラオスを影響下に引き込む狙いで同国に無償供与され、ベトナム牽制(けんせい)を狙う中国のインドシナ戦略の一端を担った。習主席は「中国は地政学ゲームのような古いやり方は繰り返さない」と強調したが、真の狙いは米国主導の国際秩序への挑戦であろう。米紙『ウォールストリート・ジャーナル』は「インフラ整備は常に力の反映だ。ローマ時代の道路は貿易と文化のためだけでなく軍隊を進軍させるためにも使われた」と論評した。
パキスタン北部フンザと中国を結ぶ道路に建設されたトンネルの入り口=2016年8月4日(共同)
パキスタン北部フンザと中国を結ぶ道路に建設されたトンネルの入り口=2016年8月4日(共同)
 中でも注目されているのが、パキスタンのグワダル港と中国のカシュガルとを結ぶ「中国・パキスタン経済回廊」だ。約2千キロにわたり高速道路などを整備する計画で、急ピッチで建設が進んでいる。そのグワダル港には、インドに対する「勢力均衡装置」として、中国の海軍基地建設が検討されているという(『ニューズウィーク』日本版)。
 こうした動きは「中国式グローバル化」とよばれる。もともとグローバル化は米国がユーラシア大陸で覇権を確立するために、大国出現の阻止を目指した戦略だ。しかし、自国中心主義のトランプ政権が「内向き」姿勢を強める中で、逆に中国がグローバル化の「旗振り役」に転じた。米国が孤立主義的傾向を強めれば、アジアの国々の中国傾斜はますます進むに違いない。
 安倍晋三首相は6月、「一帯一路」構想への協力に前向きの姿勢を示したが、日本の参加は中国の「地政戦略」への加担にもつながる。構想の中に隠された狙いを見据えた慎重な判断が求められる。(「一筆多論」産経ニュース 2017.07.08

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