朝日新聞と高野連と夏の甲子園
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朝日新聞と高野連と夏の甲子園

連日、熱戦が続く夏の甲子園だが、その経済効果は350億円にも上るという。酷暑の中でプレーする球児や学校関係者の苦労は想像に難くないが、大会を主催する朝日新聞と高野連にとってはおいしい季節である。「高校生らしさ」というアマチュアリズムを売りにする夏の甲子園は教育の一環か、それともビジネスか。

連日、熱戦が続く夏の甲子園だが、その経済効果は350億円にも上るという。酷暑の中でプレーする球児や学校関係者の苦労は想像に難くないが、大会を主催する朝日新聞と高野連にとってはおいしい季節である。「高校生らしさ」というアマチュアリズムを売りにする夏の甲子園は教育の一環か、それともビジネスか。

すべてが善意で成り立つ欺瞞

五輪にあって高校野球にないもの

最大のキラーコンテンツ

サッカーだって拡販のため

 朝日新聞がサッカーに力を入れるのは基本的に部数拡大、つまり拡販のためだろう。朝日新聞は昔からスポーツ・イベントの利用をやっており、今の高校野球は約100年前の大正4(1915)年に、全国中等学校野球大会として、朝日新聞が始めたものである。
サッカーW杯アジア最終予選、タイ戦の後半途中から出場した本田圭佑=3月28日、埼玉スタジアム(撮影・蔵賢斗)
サッカーW杯アジア最終予選、タイ戦の後半途中から出場した本田圭佑=3月28日、埼玉スタジアム(撮影・蔵賢斗)
  そもそも、サッカーW杯は、戦争の代替としての役割をはたしているのではないだろうか。つまり国と国との血を流さない戦いという意味である。五輪にも同じ面はあるが、サッカーの場合、極めて単純で、ナショナリズムを発揚する場として、ずっと優れているといえる。
 ところで、朝日新聞は、かつての本物の戦争の際においても、その報道ぶりは真に熱心だった。戦争こそ最大のイベントなのである。朝日新聞OBの今西光男氏による『新聞 資本と経営の昭和史』(2007年6月、朝日新聞社)によると、「満州事変が勃発してからの、朝日新聞の販売部数の増加はすさまじかった」「翌三二年には、(中略)全社計一八二万四三六九部(三八万八七四一部増)という驚異的な部数増を実現したのである」(119ページ)とある。
 単なるイベント以上に、読者には切実な問題があった。同書は「従軍している兵士の留守宅では、新聞は不可欠の情報源になった。肉親の安否を知るには現地の特報が載る新聞しかなかった。競うように新聞購読の申し込みが殺到した。まさに戦争は新聞にとって神風だった」(120ページ)と記している。
 サッカーW杯の大報道が、戦争ほど部数拡大につながるとも思われないから、その理由はさらに別にあるのではないか。
 それはナショナリズムでも「スポーツだけナショナリズム」であることがポイントだ。つまり、日本人の国家意識・民族意識をスポーツだけに吸収して、日本が直面している本当の危機である軍事的危機から目をそらす役割を果たしているように思えてならない。
 中華民族主義という中国の侵略的ナショナリズムや、韓国のゆがんだ怨念ナショナリズムには、驚くほど寛容な朝日新聞は、わが国のささやかな防衛的ナショナリズムに対しては、これを危険視して積極的に非難する。日本の若者も、渋谷のスクランブル交差点で大騒ぎをするエネルギーがあるなら、もっとまともな政治的行動の場でこそ、本物の大和魂を発揮してもらいたい。(元東京大学史料編纂所教授・酒井信彦、夕刊フジ 2014.07.10)

過酷だから感動するのか

今夏も大盛況のようで…

朝日新聞に疑問をぶつけてみた

甲子園球場の大型ビジョンの上にたなびく朝日新聞社の社旗(写真は第95回大会)
 
 「甲子園以外にも感動やドラマはあります」「全国大会を目指して汗を流しているのは野球部だけではありません」…。
 先月、あるスポーツライターがツイッターで高校野球の在り方について疑問を投げかけた。言われてみれば、そう感じた人も多いのではないだろうか。高校野球は数ある高校スポーツの一つに過ぎないが、その注目度の高さは他の部活動とは比べものにならない。地方予選から大々的に取り上げられ、本大会になればもうお祭り状態である。高校野球が「夏の風物詩」と呼ばれるようになって久しいが、なぜこれほど「部活格差」が広がったのか。
 むろん、高校野球の歴史と無関係ではないが、最も大きな要因は大会を主催する朝日新聞と系列テレビ局、そしてNHKをはじめとするメディアの異常な取り上げ方に尽きるのではないか。紙面では連日の大特集、テレビをつければ朝から晩まで生中継、深夜になればおなじみの『熱闘甲子園』まで流れる始末である。毎年夏が来るたびに、高校野球をこんなに報道されたら、野球に興味があろうがなかろうが、誰だって否が応でも見ざるを得ない。今風に言えば、これもれっきとした「印象操作」と言えなくもない(笑)。
 それはさておき、ただのアマチュアスポーツに過ぎない高校野球は巨大な経済効果も生み出す。「経済効果の匠」と呼ばれる関西大の宮本勝浩名誉教授=理論経済学=の試算によれば、8日に開幕した今夏の甲子園大会の経済波及効果は350億円にも上るという。その内訳は、大会期間中の入場者約85万人の入場料や交通費、宿泊費のほか、高校野球関連の雑誌やグッズ収入なども含まれるそうだが、これほどの一大イベントになれば「商業利用」を考えない方がおかしい。
 とはいえ、夏大会を主催する朝日新聞の公式見解では、高校野球による収益は本業と切り離され、共催の日本高等学校野球連盟(高野連)に入る仕組みになっているという。だが、大会運営による「直接収入」だけではなく、期間中の購読部数増や広告収入といった「間接収入」だって当然有り得る。ゆえに高校野球に関しては、その主目的が教育の一環なのか、それともビジネスなのか、という議論が昔から尽きないのも事実である。そこで今回、iRONNA編集部がこうした素朴な疑問を朝日新聞に直接問い合わせてみたところ、朝日からは下記のように回答があった。
 まず、大会開催の趣旨を「教育の一環として、若者の健全育成に資することを目的にしております」とした上で、収益は「大会会計は弊社とは切り離されており、弊社に入る収益金はありません」と否定。広告収入などの関連収益の詳細については回答しなかったものの、新聞の拡販利用については「活用例は承知している」とした上で、「高校野球が新聞の部数増につながっていると思うか?」との質問には「判断いたしかねる」と明言を避けた。
 高校野球は教育の一環か、ビジネスか。朝日の回答からは建前だけでなく、ホンネも少し垣間見えた気がするが、読者のみなさんはどう受け止めただろうか。ちなみに今年6月7日付の「高校野球、多様な視点を生かして」と題した朝日社説には、こんな一節があった。
 「時代の変化を踏まえつつ、全国の野球部をどう支え、高校野球を発展させていくか、考えるべき懸案は多い」。おっしゃる通りである。高野連にだけ「改革」を求めるのではなく、大会を主催する朝日新聞こそ、その言葉を何より真摯に受け止めてほしい。高校野球ファンの戯れ言である。(iRONNA編集部)

8つの質問、朝日の回答

 朝日新聞大阪本社広報担当がiRONNAに回答した全文は以下の通り。

―朝日新聞が高校野球を主催している趣旨は
「教育の一環として、若者の健全育成に資することを目的としています」

―高校野球の大会収益は高野連に入るとのことだが、朝日新聞には全く入らないのか
「大会の会計は弊社と切り離されており、弊社に入る収益金はありません。大会の収支決算は毎年公表しております」

―利益を上げていないのなら、高校野球関連の広告や事業収入はあるか。また、それはどのくらいか
「『高校野球関連』に限らず、広告・事業収入の詳細はお答えしておりません」

―高校野球を新聞の販売促進に活用しているか
「弊社主催の様々な行事を販売促進に活用している例があることは承知しています」

―実際に販売店員から「高校野球」の記事が他紙より充実しているなどと購読を勧誘されたことがあるが、見解は
「特段の見解はございません」

―高校野球が新聞の部数増や維持につながっていると思うか
「判断いたしかねます」

―高校野球の記事が1面などで扱いが大きすぎるとの指摘もあるが、見解は
「紙面について様々なご意見があることは承知しております」

―選手だけでなく、応援も含め夏の大会は熱中症など問題があるとの指摘もあるが、見解は
「選手にはこまめに水分をとるように呼びかけています。また、球場アナウンスなどで熱中症に対する注意喚起を頻繁に行い、救護の態勢を整えるなどの対策を講じています」

やっぱり拡販目的?

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